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  • 特開-摩耗検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068691
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】摩耗検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20220427BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
G01N33/38
G01B7/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177505
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】520413139
【氏名又は名称】株式会社アート・レーザー福岡
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】野口 断男
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA30
2F063BA30
2F063BB07
2F063BC02
2F063BD12
2F063CA13
2F063DA01
2F063DC08
2F063FA08
2F063ZA01
(57)【要約】
【課題】内側に空洞を有するセラミック体の空洞を囲む壁部の摩耗を、セラミック体を具備する設備や装置の運転を続けながら検知可能な摩耗検出装置を提供する。
【解決手段】内側に空洞を有するセラミック体の空洞を囲む壁部の摩耗を検知する摩耗検出装置10であって、セラミック体の壁部に形成され外側に開口する穴に設置されて、壁部の空洞に露出する内壁面から所定の距離を有する位置Mに配される穴内設置部11と、穴内設置部11の破損を検出してセラミック体が内側から所定量以上摩耗したのを検知する摩耗判定部12とを備え、穴内設置部11は、空洞を移動する移動物がセラミック体を内側から削って穴内設置部11に接触することにより破損する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に空洞を有するセラミック体の前記空洞を囲む壁部の摩耗を検知する摩耗検出装置であって、
前記セラミック体の壁部に形成され外側に開口する穴に設置されて、該壁部の前記空洞に露出する内壁面から所定の距離を有する位置Mに配される穴内設置部と、
前記穴内設置部の破損を検出して前記セラミック体が内側から所定量以上摩耗したのを検知する摩耗判定部とを備え、
前記穴内設置部は、前記空洞を移動する移動物が前記セラミック体を内側から削って該穴内設置部に接触することにより破損することを特徴とする摩耗検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の摩耗検出装置において、前記穴内設置部は、導電性部材からなり、前記摩耗判定部は、通電されている前記穴内設置部の通電状態が解除されたことを基に、前記移動物による該穴内設置部の破損を検出することを特徴とする摩耗検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の摩耗検出装置において、一部領域が前記穴内設置部である導電線を有することを特徴とする摩耗検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の摩耗検出装置において、前記導電線が掛止されて前記穴内設置部が取り付けられた絶縁部材を更に備え、前記絶縁部材は、一部又は全体が前記穴内に嵌入されて、前記穴内設置部を前記位置Mに配することを特徴とする摩耗検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックの摩耗を検知する摩耗検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体や粒状物等の流路として機能するセラミック管は利用されることによって内側が摩耗する。セラミック管は、摩耗により薄くなると破損等が生じる可能性が高まることから、一定以上薄くなる前に新しいものに交換される。そのため、セラミック管を具備する設備や装置においては、セラミック管の内側の摩耗量を検知することが求められる。
【0003】
この点、特許文献1には、セラミック製の管本体に管本体とは異なる色のリングや錐形物を挿入したセラミック管が記載されている。当該セラミック管は、セラミック管の内側が摩耗するとリング又は錐形物の露出量が変わるように設計されており、点検者は、リング又は錐形物の露出量を基にセラミック管の摩耗量を知ることができる。特許文献1に記載された当該技術は、その利用がセラミック管のみに限定されず、内側に空洞部が設けられたセラミック体全般(例えば、セラミック製の容器)に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-007219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術の利用は、セラミック体の摩耗量を目視するために、セラミック体を具備する設備や装置の運転を止める必要があるという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、内側に空洞を有するセラミック体の空洞を囲む壁部の摩耗を、セラミック体を具備する設備や装置の運転を続けながら検知可能な摩耗検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る摩耗検出装置は、内側に空洞を有するセラミック体の前記空洞を囲む壁部の摩耗を検知する摩耗検出装置であって、前記セラミック体の壁部に形成され外側に開口する穴に設置されて、該壁部の前記空洞に露出する内壁面から所定の距離を有する位置Mに配される穴内設置部と、前記穴内設置部の破損を検出して前記セラミック体が内側から所定量以上摩耗したのを検知する摩耗判定部とを備え、前記穴内設置部は、前記空洞を移動する移動物が前記セラミック体を内側から削って該穴内設置部に接触することにより破損する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る摩耗検出装置は、セラミック体の壁部に形成され外側に開口する穴に設置されて、セラミック体の内壁から所定の距離を有する位置Mに配される穴内設置部と、穴内設置部の破損を検出してセラミック体が内側から所定量以上摩耗したのを検知する摩耗判定部とを備え、穴内設置部が、空洞を移動する移動物がセラミック体を内側から削って穴内設置部に接触することにより破損するので、セラミック体の内側を視認することなくセラミック体の壁部の摩耗を検知することができ、セラミック体を具備する設備や装置の運転(移動物の移動)を続けながらセラミック体の内壁の摩耗を検知可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る摩耗検出装置の説明図である。
図2】同摩耗検出装置の使用状態を示す説明図である。
図3】セラミック管が内側から摩耗した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る摩耗検出装置10は、セラミック管(内側に空洞が設けられたセラミック体の一例)Cの空洞を囲む壁部C1の摩耗を検知する装置であって、セラミック管Cの壁部C1の空洞に露出する内壁面C2から所定の距離を有する位置Mに配される穴内設置部11と、穴内設置部11の破損を検出する摩耗判定部12を備えている。
【0010】
摩耗検出装置10は、図1に示すように、円柱状の絶縁部材13と、絶縁部材13に掛止された導電線14と、導電線14が接続された摩耗判定部12を有している。
導電線部材からなる穴内設置部11は、導電線14の一部領域であり、導電線14において絶縁部材13の底面に形成された溝15内に配された領域である。導電線14は、穴内設置部11が露出状態であるのに対し、それ以外の領域は図示しない絶縁性チューブで覆われている。
【0011】
溝15は、絶縁部材13の底面の直径方向に直線的に設けられ、両端が絶縁部材13の側面に形成された溝16、17にそれぞれ連続している。溝16、17は共に絶縁部材13の軸心方向に平行であり、それぞれ絶縁部材13の側面において周方向0°位置及び周方向180°位置に設けられている。
【0012】
従って、導電線14が絶縁部材13に掛止されて、穴内設置部11が絶縁部材13に取り付けられることになる。
本実施の形態では、絶縁部材13がセラミック製であり、導電線14が銅製である。導電線14は、穴内設置部11の両端にそれぞれ連続する2つの領域が溝16、17内に配置されている。
【0013】
摩耗判定部12は、外部電源から電力を供給され、導電線14(穴内設置部11)に通電することができ、穴内設置部11が通電状態であることを検出する図示しない電気回路を具備している。本実施の形態では、導電線14の両端部が連結されたコネクタ18を摩耗判定部12の図示しない接続口に差し込まれて、導電線14が摩耗判定部12に接続されている。
【0014】
本実施の形態において、摩耗検出装置10によって摩耗が検知されるセラミック管Cは、図2に示すように、ステンレス管Sの内側に固定されている。セラミック管C及びステンレス管Sはそれぞれ湾曲領域を有し、ステンレス管Sの湾曲領域の外周側には貫通孔S1が形成され、セラミック管Cの湾曲領域の外周側には貫通孔S1に連通する穴C3が形成されている。穴C3は、セラミック管Cの壁部C1に、外側に開口して設けられ、穴C3の底部が壁部C1の内壁面C2から距離を有する位置に設けられている。本実施の形態では、セラミック管C及びステンレス管Sは粒状物(セラミック管Cの内側に設けられた空洞内を移動する移動物の一例)の流路として使用され、セラミック管Cの内側を粒状物が移動する。
【0015】
穴内設置部11は、絶縁部材13が貫通孔S1及び穴C3に嵌入され、絶縁部材13の底面が穴C3の底部に近接されることによって、穴C3に設置されて、セラミック管Cの壁部C1の内壁面C2から所定の距離の位置Mに配される。穴内設置部11はセラミック管Cの軸心方向に沿うように、絶縁部材13がセラミック管C及びステンレス管Sに取り付けられる。
本実施の形態では、絶縁部材13の一部が穴C3内に嵌入されるが、絶縁部材13全体が穴C3内に嵌入されるように絶縁部材13を設計してもよい。
【0016】
セラミック管C及びステンレス管Sに取り付けられた絶縁部材13は、螺子部材P1、P2によりステンレス管Sの湾曲領域の外周側に固定される板状部材Qによって位置決めされ、これによって、穴内設置部11がセラミック管Cの内壁面C2から所定の距離を有する位置Mに配される。なお、板状部材Qには、導電線14が通される貫通孔Hが形成されている。
【0017】
位置Mに穴内設置部11が配置され、摩耗判定部12が穴内設置部11(導電線14)への通電を開始することによって、摩耗判定部12はセラミック管Cが内側から所定量以上摩耗したのを検知可能となる。
具体的には、セラミック管Cの内側の空洞を移動する粒状物は、セラミック管Cの壁部C1に衝突することにより壁部C1を内側から削り取る。摩耗量が所定値に達すると、図3に示すように、穴内設置部11が絶縁部材13の底部と共にセラミック管Cの内側の空洞に露出する。
【0018】
セラミック管Cの内側の空洞に露出した穴内設置部11は、セラミック管Cの内側の空洞を移動する粒状物によって断線され、穴内設置部11の通電状態が解除される(穴内設置部11が通電されなくなる)。即ち、穴内設置部11は、セラミック管Cの内側の空洞を移動する粒状物がセラミック管Cの壁部C1を内側から削って穴内設置部11に接触することにより断線(破損)する。
【0019】
摩耗判定部12は、穴内設置部11の通電状態が解除されたことを基に、穴内設置部11の破損を検出し、セラミック管Cが内側から所定量以上摩耗したのを検知する。本実施の形態では、摩耗判定部12は、セラミック管Cが内側から所定量以上摩耗したのを検知すると、摩耗判定部12に接続された図示しないデバイスに対し所定の出力を行い、デバイスを作動させる(例えば、発光ダイオードを点灯させる)。従って、点検者は、デバイスの作動から、セラミック管Cが内側から所定量以上摩耗したのを検知することができる。よって、セラミック管Cの壁部C1の摩耗検査のために、セラミック管Cの内側を視認する必要はない。
【0020】
セラミック管Cが内側から所定量以上摩耗すると、セラミック管C及びステンレス管Sが新しいものに取り替えられ、新たな導電線14の穴内設置部11が新たな絶縁部材13と共に、新しいセラミック管C及びステンレス管Sに取り付けられ、新たな導電線14に連結されているコネクタ18が摩耗判定部12の接続口に差し込まれる。
【0021】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、穴内設置部は導電線の一部領域である必要はなく、穴内設置部として長尺の導電性シート、導電性のコイル及び導電性の網等も採用可能である。また、穴内設置部の破損とは断線以外も含む概念であり、例えば、穴内設置部に長尺の導線性シートを採用する場合、破損は切断を意味する。
【0022】
そして、摩耗判定部による穴内設置部の破損の検出は、穴内設置部の通電状態の解除を基にする必要はない。例えば、通電状態の穴内設置部に導電性の網を採用した場合、摩耗判定部は、穴内設置部の部分的な切断による電気抵抗値の変化を基に穴内設置部の破損を検出することができる。
穴内設置部を通電状態にする機器を摩耗判定部とは別に設けてもよい。
【0023】
また、穴内設置部は導電性部材でなくてもよく、例えば、光ファイバーであってもよい。穴内設置部が光ファイバーである場合、摩耗判定部は、光信号の受信が途切れたことを基に、穴内設置部の破損を検出することができる。
そして、外部電源から電力を供給される摩耗判定部の代わりに、電池を内蔵した摩耗判定部を採用可能である。
【0024】
一部領域が穴内設置部である導電線を採用する場合、導電線が掛止された絶縁部材を設ける必要はない。当該絶縁部材を設ける代わりに、例えば、ピンを用いて絶縁部材をセラミック体に形成された穴内に固定することができる。
ステンレス管と一体となっていない単独のセラミック管やセラミック管以外のセラミック体(例えば、セラミック容器)に対しても本発明を適用できること、並びに、1つの摩耗判定部に対して複数の穴内設置部を接続するようにできることは言うまでもない。ここで、天井部及び底部を有する中空のセラミック容器に対して本発明を適用する場合、セラミック容器の壁部は側壁部、天井部及び底部を意味する(即ち、セラミック容器の壁部は空洞を囲む部位全体を意味する)。
【符号の説明】
【0025】
10:摩耗検出装置、11:穴内設置部、12:摩耗判定部、13:絶縁部材、14:導電線、15、16、17:溝、18:コネクタ、C:セラミック管、C1:壁部、C2:内壁面、C3:穴、H:貫通孔、M:位置、P1、P2:螺子部材、Q:板状部材、S:ステンレス管、S1:貫通孔
図1
図2
図3