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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068706
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】液状組成物、金属光沢膜及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 273/00 20060101AFI20220427BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C08F273/00
C08F2/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177527
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】兼子 奈都実
(72)【発明者】
【氏名】星野 勝義
【テーマコード(参考)】
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
4J011PA83
4J011PA98
4J026AA62
4J026AC33
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA50
4J026BB01
4J026BB03
4J026CA07
4J026DA02
4J026DA17
4J026DB02
4J026DB12
4J026DB32
4J026GA07
(57)【要約】
【課題】インクジェット吐出性に優れ、耐傷性に優れる金属光沢膜を形成する液状組成物を提供する。
【解決手段】液状組成物は、チオフェン重合体と、モノマー及びオリゴマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合成分と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオフェン重合体と、
モノマー及びオリゴマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合成分と、
を含む液状組成物。
【請求項2】
前記重合成分が連鎖重合性の重合成分を含む、請求項1に記載の液状組成物。
【請求項3】
さらに重合開始剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の液状組成物。
【請求項4】
前記重合開始剤が、熱ラジカル発生剤及び光ラジカル発生剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載の液状組成物。
【請求項5】
さらに非プロトン性極性溶媒を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項6】
前記非プロトン性極性溶媒が、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項5に記載の液状組成物。
【請求項7】
前記チオフェン重合体の重量平均分子量が200以上30000以下である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項8】
前記チオフェン重合体の重量平均分子量が500以上20000以下である、請求項7に記載の液状組成物。
【請求項9】
前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェン、アルキルチオフェン、アミノチオフェン及びヒドロキシチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体を含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項10】
前記チオフェン重合体が、少なくともアルコキシチオフェンが重合した重合体を含み、
前記アルコキシチオフェンが、アルコキシ基の炭素数が1以上8以下であるアルコキシチオフェンを含む、請求項9に記載の液状組成物。
【請求項11】
前記チオフェン重合体が、少なくともアルキルチオフェンが重合した重合体を含み、
前記アルキルチオフェンが、アルキル基の炭素数が1以上8以下であるアルキルチオフェンを含む、請求項9又は請求項10に記載の液状組成物。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の液状組成物が硬化してなる金属光沢膜。
【請求項13】
請求項12に記載の金属光沢膜を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液状組成物、金属光沢膜及び物品を提供する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チオフェンモノマーを電位掃引法によって導電体上に電解重合することでチオフェン重合体からなる金属光沢膜を製造する方法が開示されている。
特許文献2には、チオフェン重合体を含む金属光沢を有する膜が開示されている。
特許文献3には、ポリチオフェンを含有し、ポリチオフェンに塩化物イオン又は過塩素酸イオンがドーピングされたメタリック調塗膜形成用塗工液が開示されている。
特許文献4には、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、塩化物イオン及びパラトルエンスルホン酸イオンの少なくともいずれかがドーピングされたチオフェン重合体を含む金色又は銅色の光沢を有する膜が開示されている。
特許文献5には、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂及びスチレンアクリル共重合体樹脂の少なくともいずれかと、チオフェン重合体と、溶媒とを含む、金属光沢を有する物品を製造するための溶液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-052856号公報
【特許文献2】特開2017-110232号公報
【特許文献3】特許第6031197号公報
【特許文献4】特許第6308624号公報
【特許文献5】特開2018-012831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チオフェン重合体と樹脂と溶媒とを含む液状組成物は、インクジェット吐出性に劣る場合があった。一方、チオフェン重合体と溶媒のみからなる液状組成物を用いて形成した金属光沢膜は、耐傷性に劣る場合があった。
【0005】
本開示の実施形態は、上記状況のもとになされた。
本開示の実施形態は、チオフェン重合体と樹脂と溶媒とを含む液状組成物と比較してインクジェット吐出性に優れ、チオフェン重合体と溶媒のみからなる液状組成物と比較して形成した金属光沢膜の耐傷性に優れる液状組成物を提供することを目的とし、これを達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> チオフェン重合体と、モノマー及びオリゴマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合成分と、を含む液状組成物。
<2> 前記重合成分が連鎖重合性の重合成分を含む、<1>に記載の液状組成物。
<3> さらに重合開始剤を含む、<1>又は<2>に記載の液状組成物。
<4> 前記重合開始剤が、熱ラジカル発生剤及び光ラジカル発生剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、<3>に記載の液状組成物。
<5> さらに非プロトン性極性溶媒を含む、<1>~<4>のいずれか1項に記載の液状組成物。
<6> 前記非プロトン性極性溶媒が、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1種を含む、<5>に記載の液状組成物。
<7> 前記チオフェン重合体の重量平均分子量が200以上30000以下である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の液状組成物。
<8> 前記チオフェン重合体の重量平均分子量が500以上20000以下である、<7>に記載の液状組成物。
<9> 前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェン、アルキルチオフェン、アミノチオフェン及びヒドロキシチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体を含む、<1>~<8>のいずれか1項に記載の液状組成物。
<10> 前記チオフェン重合体が、少なくともアルコキシチオフェンが重合した重合体を含み、前記アルコキシチオフェンが、アルコキシ基の炭素数が1以上8以下であるアルコキシチオフェンを含む、<9>に記載の液状組成物。
<11> 前記チオフェン重合体が、少なくともアルキルチオフェンが重合した重合体を含み、前記アルキルチオフェンが、アルキル基の炭素数が1以上8以下であるアルキルチオフェンを含む、<9>又は<10>に記載の液状組成物。
<12> <1>~<11>のいずれか1項に記載の液状組成物が硬化してなる金属光沢膜。
<13> <12>に記載の金属光沢膜を有する物品。
【発明の効果】
【0007】
<1>、<2>、<3>、<4>、<5>、<6>、<9>、<10>、<11>によれば、チオフェン重合体と樹脂と溶媒とを含む液状組成物と比較してインクジェット吐出性に優れ、チオフェン重合体と溶媒のみからなる液状組成物と比較して形成した金属光沢膜の耐傷性に優れる液状組成物が提供される。
<7>によれば、チオフェン重合体の重量平均分子量が200未満又は30000超である液状組成物と比較して、形成した金属光沢膜の光沢に優れる液状組成物が提供される。
<8>によれば、チオフェン重合体の重量平均分子量が500未満又は20000超である液状組成物と比較して、形成した金属光沢膜の光沢に優れる液状組成物が提供される。
<12>によれば、チオフェン重合体と溶媒のみからなる液状組成物で形成した金属光沢膜と比較して、耐傷性に優れる金属光沢膜が提供される。
<13>によれば、チオフェン重合体と溶媒のみからなる液状組成物で形成した金属光沢膜を有する物品と比較して、耐傷性に優れる金属光沢膜を有する物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0009】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0012】
<液状組成物>
本実施形態に係る液状組成物は、チオフェン重合体と、モノマー及びオリゴマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合成分とを含む。
【0013】
本実施形態において、重合成分であるオリゴマーは、分子量が10000未満であり、5000未満であることが好ましく、3000未満であることがより好ましい。本実施形態において、重合成分であるオリゴマーは、分子量が500以上であることが好ましい。
【0014】
本実施形態に係る液状組成物は、チオフェン重合体以外のポリマー(オリゴマーに当たらない重合体であり、分子量が10000以上の重合体をいう。)の含有量が、液状組成物の全固形分に対して、30質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましい。
【0015】
本実施形態に係る液状組成物は、重合成分がモノマー及びオリゴマーの少なくとも1種であるので、粘度が適度な範囲に収まり、インクジェット吐出性に優れる。
そして、本実施形態に係る液状組成物は、チオフェン重合体を含む金属光沢膜を形成するところ、当該金属光沢膜は、重合成分が重合してなる重合体を含む硬化膜であるので、耐傷性に優れる。
【0016】
[チオフェン重合体]
チオフェン重合体は、2個以上のチオフェン類が重合した重合体である。チオフェン重合体を含む膜は、層状に配向したチオフェン重合体が特定の波長の光を反射することにより、金属光沢を呈する。
【0017】
チオフェン重合体は、1種のチオフェン類が重合した重合体でもよく、複数種のチオフェン類が重合した重合体でもよい。チオフェン重合体の実施形態例として、下記の一般式で表される重合体が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
上記一般式において、Rは置換基であり、mは1又は2であり、nは2以上の整数である。Rは、1種でもよく、複数種でもよい。mが2の場合、1個のチオフェン環が有する2個のRは、同種でもよく、異種でもよい。mが2の場合、1個のチオフェン環において、2個のRが連結して環状基を形成していてもよい。
【0020】
Rは、例えば、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、アリル基、シアノ基、ハロゲノ基を示す。Rは、チオフェン重合体を含む膜がより確実に金属光沢を呈する観点から、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシ基が好ましく、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基がより好ましく、アルコキシ基、アルキル基が更に好ましい。
【0021】
Rがアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、チオフェン重合体が層状に配向しやすい観点から、1以上8以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
アルコキシ基を少なくとも1個有するチオフェン類としては、3-メトキシチオフェン、3,4-ジメトキシチオフェン、3-エトキシチオフェン、3,4-ジエトキシチオフェン、3-プロポキシチオフェン、3-ブトキシチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3,4-プロピレンジオキシチオフェン等が挙げられる。
【0022】
Rがアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、チオフェン重合体が層状に配向しやすい観点から、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上6以下が更に好ましく、1以上4以下が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
アルキル基を少なくとも1個有するチオフェン類としては、3-メチルチオフェン、3,4-ジメチルチオフェン、3-エチルチオフェン、3,4-ジエチルチオフェン、3-ブチルチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘプチルチオフェン、3-オクチルチオフェン、3-ノニルチオフェン、3-デシルチオフェン、3-ウンデシルチオフェン、3-ドデシルチオフェン、3-ブロモ-4-メチルチオフェン等が挙げられる。
【0023】
Rがアミノ基である場合、アミノ基は、第1級アミノ基(-NH)でもよく、第2級アミノ基(-NHR、Rはアルキル基又はアリール基であり、アルキル基が好ましい。)でもよく、第3級アミノ基(-NR、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基であり、アルキル基が好ましい。)でもよい。第2級アミノ基又は第3級アミノ基におけるアルキル基の炭素数は、チオフェン重合体が層状に配向しやすい観点から、1又は2が好ましい。
アミノ基を少なくとも1個有するチオフェン類としては、3-アミノチオフェン、3,4-ジアミノチオフェン、3-メチルアミノチオフェン、3-ジメチルアミノチオフェン等が挙げられる。
【0024】
チオフェン重合体としては、チオフェン重合体を含む膜がより確実に金属光沢を呈する観点から、アルコキシチオフェン、アルキルチオフェン、アミノチオフェン及びヒドロキシチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体が好ましく、アルコキシチオフェン及びアルキルチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体がより好ましく、アルコキシチオフェンのみが重合したポリ(アルコキシチオフェン)、アルキルチオフェンのみが重合したポリ(アルキルチオフェン)又はアルキルチオフェンとアルコキシチオフェンのみが重合したポリ(アルキルチオフェン)(アルコキシチオフェン)が更に好ましい。アルコキシチオフェンにおけるアルコキシ基の炭素数は、1以上8以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。アルキルチオフェンにおけるアルキル基の炭素数は、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上6以下が更に好ましく、1以上4以下が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0025】
チオフェン重合体は、チオフェン重合体が層状に配向しやすい観点から、重量平均分子量が200以上30000以下であることが好ましく、500以上20000以下であることがより好ましく、1000以上10000以下であることが更に好ましい。
【0026】
チオフェン重合体の分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定する。測定装置に東ソー(株)製HPLC1100を使用し、カラムに東ソー(株)製TSKgel GMHHR-M(内径7.8mm、長さ30cm)を2本直列に配置して使用し、溶媒にクロロホルムを使用し、標準試料に単分散ポリスチレンを使用する。
【0027】
本実施形態に係る液状組成物におけるチオフェン重合体の含有量は、液状組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上99.9質量%以下が好ましく、0.5質量%以上99質量%以下がより好ましく、10質量%以上95質量%以下が更に好ましい。
【0028】
チオフェン重合体は、例えば、酸化重合法によって合成する。酸化重合法は、酸化剤を用いて液相又は固相においてチオフェン類を重合する方法である。
【0029】
酸化剤としては、例えば、第二鉄塩、第二銅塩、セリウム塩、二クロム酸塩、過マンガン酸塩、過硫酸アンモニウム、三フッ化ホウ素、臭素酸塩、過酸化水素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0030】
酸化剤としては、第二鉄塩が好ましい。第二鉄塩は、水和物であってもよい。
第二鉄塩の対イオンとしては、例えば、塩化物イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等が挙げられる。第二鉄塩の対イオンとして、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン及びテトラフルオロホウ酸イオンの少なくとも1種を用いると、金色に近い光沢を呈する膜を形成することができる。
【0031】
対イオンが過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン又は塩化物イオンである酸化剤を用いた場合、これら対イオンはチオフェン重合体に安定的に結合されて残留し、金属光沢の状態を安定的に維持することができる。
【0032】
酸化重合は、溶媒中において行うことが好ましい。溶媒は、チオフェン類及び酸化剤を溶解し、チオフェン類を効率的に重合させる溶媒が好ましい。溶媒としては、高い極性を有し、ある程度の揮発性を有する有機溶媒であることが好ましい。
【0033】
溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、1-メチル-2-ピロリジノン、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、アニソール、クロロホルム、酢酸エチル、ヘキサン、トリクロロエチレン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、ブタノール、ピリジン、ジオキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
溶媒としては、チオフェン重合体を含む膜がより確実に金属光沢を呈する観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましく、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0035】
溶媒とチオフェン類との質量比は、溶媒:チオフェン類=1:0.00007~1:7が好ましく、1:0.0007~1:0.7がより好ましい。
溶媒と酸化剤との質量比は、例えば、酸化剤が過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕の場合、溶媒:過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕=1:0.0006~1:6が好ましく、1:0.006~1:0.6がより好ましい。
チオフェン類と酸化剤との質量比は、チオフェン類:酸化剤=1:0.1~1:1000が好ましく、1:1~1:100がより好ましい。
【0036】
酸化重合の手技は特に制限されない。チオフェン類と酸化剤とを溶媒に一度に加え溶解させて酸化重合を行ってもよく、溶媒にチオフェン類を溶解させた溶液と溶媒に酸化剤を溶解させた溶液とを別々に作製し、両溶液を混合して酸化重合を行ってもよい。
【0037】
酸化重合におけるチオフェン類の濃度、反応温度及び反応時間を変更することで、チオフェン重合体の分子量を調整することができる。
【0038】
酸化重合法で合成したチオフェン重合体は、溶液のまま使用してもよいし、溶媒を除去して粉末状のチオフェン重合体として使用してもよい。
【0039】
粉末状のチオフェン重合体は、酸化重合の際に使用した酸化剤に由来する不純物を含有することがある。不純物を除去する目的で、下記の(a)、(b)及び(c)の少なくとも1つの処理を行ってもよい。
(a)貧溶媒を用いてチオフェン重合体の洗浄を行う。
(b)チオフェン重合体を良溶媒に溶解させた溶液を、貧溶媒に滴下し、チオフェン重合体を沈殿させる。
(c)チオフェン重合体を良溶媒に溶解させた溶液に、貧溶媒を滴下し、チオフェン重合体を沈殿させる。
貧溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが好ましく、良溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が好ましい。
【0040】
チオフェン重合体の合成方法として、電解重合法も挙げられる。電解重合法によって得たチオフェン重合体を溶媒に溶解し、本開示の実施形態に使用することができる。
電解重合法は、モノマーを支持電解質を含む溶媒に溶解してなる電解溶液中において、モノマーを電極酸化することにより、不溶性重合体からなる膜を導電体上に形成する方法をいう。
【0041】
電解重合における溶媒としては、例えば、水、アルコール、これらの混合溶媒が挙げられる。また、「電気化学測定法 上巻」107~114頁(藤島昭、相澤益男、井上 徹、技報堂出版、1984年)に記載の溶媒を使用してもよい。
【0042】
支持電解質は、溶媒に十分溶解し且つ電気分解されにくい電解質が好ましい。支持電解質としては、カチオンに注目すれば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩が好ましく、アニオンに注目すれば、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、三フッ化ホウ素塩、六フッ化リン酸塩が好ましい。
【0043】
電解溶液におけるチオフェン類の濃度は、0.1mmol/L以上溶解度以下であることが好ましく、1mmol/L以上1mol/L以下であることがより好ましい。
電解溶液における支持電解質の濃度は、0.001mol/L以上溶解度以下であることが好ましく、0.01mol/L以上1mol/L以下であることがより好ましい。
【0044】
電解重合法は、動作電極として機能させる導電体と、対向電極と、電位の基準となる参照電極とを用いる3電極式、又は、動作電極として機能させる導電体と、対向電極とを用いる2電極式が好ましい。3電極式は、望むチオフェン重合体を再現性よく重合できる観点から好ましい。
【0045】
動作電極として機能させる導電体の材質は、3電極式及び2電極式のいずれにおいても、電極酸化に対して安定な物質であることが好ましい。例えば、酸化インジウムスズ、酸化スズ等の導電膜が塗布された電極(透明ガラス電極、金属電極、グラッシーカーボン電極等)が好ましい。対向電極としては、上記の電極、ステンレス、銅板等の金属電極が好ましい。参照電極は、Ag/AgCl電極、飽和カロメル電極が好ましい。
【0046】
電解重合法において陽極酸化させる際、電位掃引法を用いることが好ましい。電位掃引法とは、一定の速度で電位を変化させつつ印加する処理をいう。
【0047】
電位掃引法は、負電位と正電位の間で掃引することが好ましい。この場合、負電位は、-1.5V以上-0.01V以下の範囲が好ましく、より好ましくは-1.0V以上-0.1V以下の範囲、更に好ましくは-0.7V以上-0.2V以下の範囲である。正電位は、+1.0V以上+3.0V以下の範囲が好ましく、より好ましくは+1.0V以上+2.0V以下の範囲、更に好ましくは+1.0V以上+1.5V以下の範囲である。
電位掃引法の掃引速度は、0.1mV/秒以上10V/秒以下の範囲が好ましく、より好ましくは1mV/秒以上1V/秒以下の範囲、更に好ましくは2mV/秒以上300mV/秒以下の範囲である。
【0048】
電解重合の時間は、1秒以上5時間以下の範囲が好ましく、10秒以上1時間以下の範囲がより好ましい。
電解重合時の電気分解の温度は、-20℃以上60℃以下の範囲が好ましい。
【0049】
電解重合時の電気分解は、大気中の成分物質が関与することの少ない反応でありまた比較的低電位で行われるため、大気中で行うことができる。電解液中の不純物の酸化など、生成した膜を汚染する可能性を回避する観点から、窒素ガスやアルゴンガス雰囲気中で行うことが好ましいが、汚染の心配はほとんどない。それでもやはり、電解溶液中に酸素が多く存在すると電極反応に影響を与えるおそれがあるため、不活性ガス(窒素ガスやアルゴンガス)によるバブリングを行うことも有用である。
【0050】
[重合成分]
重合成分は、重合性基を有する化学物質であり、モノマー及びオリゴマーの少なくとも1種である。モノマー及びオリゴマーは、単官能でもよく、多官能でもよい。モノマー及びオリゴマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
単官能モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとしては、カプロラクトン(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルフリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-コハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-フタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本開示において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれでもよいことを意味する。
【0052】
二官能モノマーとしては、二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。二官能(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
重合性基を有するオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
重合成分としては、硬化膜を形成する際の重合反応を促進する観点から、多官能であることが好ましい。重合成分としては、硬化膜を形成する際の重合反応を促進する観点から、連鎖重合性の重合成分が好ましい。
【0055】
本実施形態に係る液状組成物が重合成分としてモノマーを含みオリゴマーを含まない場合、モノマーの含有量は、硬化膜が耐傷性に優れる観点から、液状組成物の全固形分に対して、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。本実施形態に係る液状組成物が重合成分としてモノマーを含みオリゴマーを含まない場合、モノマーの含有量は、液状組成物のインクジェット吐出性の観点から、液状組成物の全固形分に対して、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
【0056】
本実施形態に係る液状組成物が重合成分としてオリゴマーを含みモノマーを含まない場合、オリゴマーの含有量は、硬化膜が耐傷性に優れる観点から、液状組成物の全固形分に対して、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。本実施形態に係る液状組成物が重合成分としてオリゴマーを含みモノマーを含まない場合、オリゴマーの含有量は、液状組成物のインクジェット吐出性の観点から、液状組成物の全固形分に対して、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0057】
本実施形態に係る液状組成物における重合成分の含有量は、液状組成物の全固形分に対して、20質量%以上70質量%以下が好ましく、25質量%以上65質量%以下がより好ましく、30質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
【0058】
本実施形態に係る液状組成物におけるチオフェン重合体と重合成分との質量比は、チオフェン重合体:重合成分=1:0.01~1:100が好ましく、1:0.05~1:50がより好ましく、1:0.1~1:5が更に好ましい。
【0059】
[重合開始剤]
本実施形態に係る液状組成物は、硬化膜を形成する際の重合反応を促進する観点から、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0060】
重合開始剤としては、硬化膜を形成する際の重合反応を促進する観点から、熱ラジカル発生剤及び光ラジカル発生剤の少なくとも1種が好ましい。重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
熱ラジカル発生剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物が挙げられる。
光ラジカル発生剤としては、例えば、ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキサイド類、ベンゾイン類、ベンジルケタール類、アミノケトン類、チタノセン類、ビスイミダゾール類、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物が挙げられる。
【0061】
本実施形態に係る液状組成物に含まれる重合開始剤の量は、重合成分の量に応じて設定すればよい。重合開始剤の量は、液状組成物の全固形分に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましく、3質量%以上6質量%以下が更に好ましい。
【0062】
[溶媒]
本実施形態に係る液状組成物は、物質濃度及び粘度を調整する観点から、溶媒を含むことが好ましい。本実施形態において、液状組成物の「溶媒」とは、金属光沢膜の形成過程において揮発し、金属光沢膜に実質的に残留しない成分をいう。
【0063】
溶媒は、少なくともチオフェン重合体を溶解する溶媒が好ましく、例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、1-メチル-2-ピロリジノン、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、アニソール、クロロホルム、酢酸エチル、ヘキサン、トリクロロエチレン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、ブタノール、ピリジン、ジオキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
溶媒としては、チオフェン重合体を含む膜がより確実に金属光沢を呈する観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましく、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0065】
本実施形態に係る液状組成物に含まれる溶媒の量は、液状組成物全体に対して、0質量%以上99.9質量%以下が好ましく、1質量%以上99質量%以下がより好ましく、5質量%以上95質量%以下が更に好ましい。
【0066】
本実施形態に係る液状組成物の粘度は、1mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、2mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。本実施形態において液状組成物の粘度は、TV-20形粘度計(東機産業)を測定装置として用い、温度23±0.5℃、せん断速度1400s-1の条件で測定する。
【0067】
[その他の成分]
本実施形態に係る液状組成物は、各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、還元防止剤、消泡剤、浸透剤、レベリング剤、界面活性剤、分散安定剤、粘度調整剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤等が挙げられる。
【0068】
<金属光沢膜>
本実施形態に係る金属光沢膜は、本実施形態に係る液状組成物が硬化してなる膜である。本実施形態に係る金属光沢膜は、耐傷性に優れる。
【0069】
本実施形態に係る金属光沢膜は、例えば、物品上に本実施形態に係る液状組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜に熱及び光の少なくとも一方を印加することで形成することができる。
【0070】
塗膜の形成には、インクジェット法が好適である。塗膜の形成に、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、バーコート法、ディップコーティング法、ドロップキャスト法等を適用してもよい。
【0071】
塗膜に印加する熱の温度又は光の周波数及び強度は、本実施形態に係る液状組成物が含有する重合成分の種類及び量、並びに、重合開始剤の種類及び量に応じて選択することが好ましい。
【0072】
金属光沢膜を形成後、金属光沢膜を物品上に固着させる観点から、金属光沢膜を加圧することが好ましい。加圧には、擦ることも含まれる。
【0073】
金属光沢膜の厚さは、金属光沢を呈する厚さであることが好ましく、具体的には、0.01μm以上200μm以下が好ましい。
【0074】
金属光沢膜に含まれるチオフェン重合体は、重量平均分子量が200以上30000以下であることが好ましく、500以上20000以下であることがより好ましく、1000以上10000以下であることが更に好ましい。
金属光沢膜に含まれるチオフェン重合体の分子量測定は、例えば、金属光沢膜を溶剤で溶かしチオフェン重合体を抽出して行う。
【0075】
<物品>
本実施形態に係る物品は、本実施形態に係る金属光沢膜を有する。
【0076】
本実施形態に係る物品は、物品上に本実施形態に係る金属光沢膜を形成して製造する。金属光沢膜を形成する対象の物品としては、家具、建築部材、玩具、雑貨、衣類、紙製品、包装等が挙げられる。ただし、これらは例示であり、金属光沢膜が形成できる物品であれば特に制限はない。物品の材質は、金属光沢膜の形成しやすさの観点から、樹脂、ガラス、紙等が好ましい。
【実施例0077】
以下、実施例を例示することで本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。合成、処理、製造などは、特に断りのない限り、室温(25℃±3℃)で行った。
【0078】
<実施例1>
[チオフェン重合体の合成]
3-メトキシチオフェン11.4gを三つ口フラスコに入れ、アセトニトリル0.5Lを入れ、アセトニトリルに3-メトキシチオフェンを溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕101gをアセトニトリル0.5Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール1Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体10.5gを得た。
【0079】
[メタノール洗浄]
合成したチオフェン重合体2.0gをビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.8gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3000であった。
【0080】
[液状組成物の調製]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体100mgと、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(商品名ABE-300、新中村化学工業社製)100mgとを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解した。ここに、熱ラジカル発生剤(商品名AIBN、大塚化学社製。10時間半減期温度65℃)20mgを溶解させ、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過した。濾液にArバブルを30分間行って酸素を除去し、液状組成物を得た。
【0081】
[金属光沢膜の形成]
洗浄したガラス基板上に液状組成物をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、ガラス製の密閉容器に入れた。密閉容器内を乾燥Arで置換し、密閉容器内の酸素濃度を100ppmになるまで置換した(ppmは、parts per million(百万分率)の略であり、酸素濃度については体積基準である。)。次いで、温度45℃下に20分間、温度100℃下に20分間置いた。こうして塗膜を硬化させ、金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0082】
[金属光沢参照膜の形成]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体100mgを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、チオフェン重合体溶液を得た。洗浄したガラス基板上にチオフェン重合体溶液をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、温度45℃下に20分間、温度100℃下に20分間置いた。こうして金属光沢参照膜を形成した。金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0083】
<実施例2~7>
実施例1と同様にして、ただし、チオフェン重合体の合成における3-メトキシチオフェンの濃度、反応温度及び反応時間を変更することで、重量平均分子量の異なるチオフェン重合体を合成し、実施例1と同様のメタノール洗浄を施した。こうして、表1に記載の重量平均分子量を有するチオフェン重合体をそれぞれ得た。そして、実施例1と同様にして、液状組成物を調製し、金属光沢膜を形成した。また、実施例1と同様にして、チオフェン重合体溶液を調製し、金属光沢参照膜を形成した。金属光沢膜及び金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0084】
<比較例1>
実施例1において合成及びメタノール洗浄したチオフェン重合体を使用し、実施例1の[金属光沢参照膜の形成]と同様にして金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0085】
<比較例2>
[液状組成物の調製]
実施例1において合成及びメタノール洗浄したチオフェン重合体100mgと、ポリエステル樹脂100mgとを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、液状組成物を得た。
【0086】
[金属光沢膜の形成]
洗浄したガラス基板上に液状組成物をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、温度45℃下に20分間置いた。こうして塗膜を乾燥させ、金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0087】
[金属光沢参照膜の形成]
実施例1の[金属光沢参照膜の形成]と同様にして金属光沢参照膜を形成した。金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0088】
<実施例8>
[液状組成物の調製]
実施例1において合成及びメタノール洗浄したチオフェン重合体100mgと、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名SR344、サートマージャパン社製)50mgと、3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名CN929:サートマージャパン社製)50mgとを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解した。ここに、光ラジカル発生剤(商品名ダロキュア1173)20mgを溶解させ、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過した。濾液にArバブルを30分間行って酸素を除去し、液状組成物を得た。
【0089】
[金属光沢膜の形成]
洗浄したガラス基板上に液状組成物をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、下記の条件で紫外線を照射した。こうして塗膜を硬化させ、金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0090】
-紫外線照射条件-
・ランプ種類:メタルハライドランプ
・照度:200mW/cm
・照射回数:30回
・照射高さ:5mm
【0091】
[金属光沢参照膜の形成]
実施例1の[金属光沢参照膜の形成]と同様にして金属光沢参照膜を形成した。金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0092】
<実施例9>
[液状組成物の調製]
実施例1において合成及びメタノール洗浄したチオフェン重合体100mgと、ポリエチレングリコールジアクリレート(サートマージャパン(株)製)5mgと、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート95mgとを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解した。ここに、熱ラジカル発生剤(商品名AIBN、大塚化学社製。10時間半減期温度65℃)20mgを溶解させ、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過した。濾液にArバブルを30分間行って酸素を除去し、液状組成物を得た。
【0093】
[金属光沢膜の形成]
洗浄したガラス基板上に液状組成物をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、ガラス製の密閉容器に入れた。密閉容器内を乾燥Arで置換し、密閉容器内の酸素濃度を100ppmになるまで置換した。次いで、温度45℃下に20分間、温度100℃下に20分間置いた。こうして塗膜を硬化させ、金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0094】
[金属光沢参照膜の形成]
実施例1の[金属光沢参照膜の形成]と同様にして金属光沢参照膜を形成した。金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0095】
<実施例10>
[液状組成物の調製]
γ-ブチロラクトンの代わりに炭酸プロピレンを用いたほかは実施例1の[液状組成物の調製]と同様にして液状組成物を得た。
【0096】
[金属光沢膜の形成]
上記の組成物を用いて、実施例1の[金属光沢膜の形成]と同様にして、金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0097】
[金属光沢参照膜の形成]
γ-ブチロラクトンの代わりに炭酸プロピレンを用いたほかは実施例1の[金属光沢参照膜の形成]と同様にして金属光沢参照膜を形成した。金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0098】
<実施例11>
[液状組成物の調製]
γ-ブチロラクトンの代わりにγ-ブチロラクトン/アセトニトリル=1/1の混合溶剤を用いたほかは実施例1の[液状組成物の調製]と同様にして液状組成物を得た。
【0099】
[金属光沢膜の形成]
上記の組成物を用いて、実施例1の[金属光沢膜の形成]と同様にして、金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0100】
[金属光沢参照膜の形成]
γ-ブチロラクトンの代わりにγ-ブチロラクトン/アセトニトリル=1/1の混合溶剤を用いたほかは実施例1の[金属光沢参照膜の形成]と同様にして金属光沢参照膜を形成した。金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0101】
<実施例12>
[チオフェン重合体の合成]
3-ブトキシチオフェン3.1gを三つ口フラスコ入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルに3-ブトキシチオフェンを溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕20gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0102】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.9gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3200であった。
【0103】
[液状組成物の調製]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体100mgと、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(商品名ABE-300、新中村化学工業社製)100mgとを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解した。ここに、熱ラジカル発生剤(商品名AIBN、大塚化学社製。10時間半減期温度65℃)20mgを溶解させ、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過した。濾液にArバブルを30分間行って酸素を除去し、液状組成物を得た。
【0104】
[金属光沢膜の形成]
洗浄したガラス基板上に液状組成物をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、ガラス製の密閉容器に入れた。密閉容器内を乾燥Arで置換し、密閉容器内の酸素濃度を100ppmになるまで置換した。次いで、温度45℃下に20分間、温度100℃下に20分間置いた。こうして塗膜を硬化させ、金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0105】
[金属光沢参照膜の形成]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体100mgを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、チオフェン重合体溶液を得た。洗浄したガラス基板上にチオフェン重合体溶液をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、温度45℃下に20分間、温度100℃下に20分間置いた。こうして金属光沢参照膜を形成した。金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0106】
<実施例13>
[チオフェン重合体の合成]
3-メチルチオフェン0.02gと3-メトキシチオフェン2.05gとを三つ口フラスコ入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルにチオフェン類を溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕20gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0107】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.9gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3300であった。
【0108】
[液状組成物の調製]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体100mgと、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(商品名ABE-300、新中村化学工業社製)100mgとを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解した。ここに、熱ラジカル発生剤(商品名AIBN、大塚化学社製。10時間半減期温度65℃)20mgを溶解させ、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過した。濾液にArバブルを30分間行って酸素を除去し、液状組成物を得た。
【0109】
[金属光沢膜の形成]
洗浄したガラス基板上に液状組成物をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、ガラス製の密閉容器に入れた。密閉容器内を乾燥Arで置換し、密閉容器内の酸素濃度を100ppmになるまで置換した。次いで、温度45℃下に20分間、温度100℃下に20分間置いた。こうして塗膜を硬化させ、金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0110】
[金属光沢参照膜の形成]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体100mgを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、チオフェン重合体溶液を得た。洗浄したガラス基板上にチオフェン重合体溶液をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、温度45℃下に20分間、温度100℃下に20分間置いた。こうして金属光沢参照膜を形成した。金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0111】
<実施例14>
[チオフェン重合体の合成]
3,4-エチレンジオキシチオフェン0.03gと3-メトキシチオフェン2.05gとを三つ口フラスコ入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルにチオフェン類を溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕20gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0112】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.9gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3100であった。
【0113】
[液状組成物の調製]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体100mgと、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(商品名ABE-300、新中村化学工業社製)100mgとを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解した。ここに、熱ラジカル発生剤(商品名AIBN、大塚化学社製。10時間半減期温度65℃)20mgを溶解させ、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過した。濾液にArバブルを30分間行って酸素を除去し、液状組成物を得た。
【0114】
[金属光沢膜の形成]
洗浄したガラス基板上に液状組成物をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、ガラス製の密閉容器に入れた。密閉容器内を乾燥Arで置換し、密閉容器内の酸素濃度を100ppmになるまで置換した。次いで、温度45℃下に20分間、温度100℃下に20分間置いた。こうして塗膜を硬化させ、金属光沢膜を形成した。金属光沢膜の厚さは約1.0μmであった。
【0115】
[金属光沢参照膜の形成]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体100mgを、γ-ブチロラクトン10mLに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、チオフェン重合体溶液を得た。洗浄したガラス基板上にチオフェン重合体溶液をドロップキャストし、塗膜を形成した。塗膜を有するガラス基板を室温に10分間置き、次いで、温度45℃下に20分間、温度100℃下に20分間置いた。こうして金属光沢参照膜を形成した。金属光沢参照膜の厚さは約1.0μmであった。
【0116】
<性能評価>
[金属光沢膜の光沢]
紫外可視分光光度計UV-2600(株式会社島津製作所)を用いて、波長600nmの光を照射し、金属光沢膜及び金属光沢参照膜それぞれの正反射率(%)を測定した。また、約500ルクスの蛍光灯の下、肉眼で金属光沢膜及び金属光沢参照膜の色味を観察した。正反射率及び色味から、光沢性を下記のとおり分類した。表1に結果を示す。
【0117】
A:金属光沢膜と金属光沢参照膜との正反射率の差が5%以下であり、金属光沢膜と金属光沢参照膜との色味が同等である。
B:金属光沢膜と金属光沢参照膜との正反射率の差が5%超10%以下であり、金属光沢膜と金属光沢参照膜との色味が同等である。
C:金属光沢膜と金属光沢参照膜との正反射率の差が5%超10%以下であり、金属光沢膜の色味がやや黒みがかっている(実用に耐える)。
D:金属光沢膜と金属光沢参照膜との正反射率の差が10%超であり、金属光沢膜と金属光沢参照膜との色味が同等とはいえない(実用に耐えない)。
【0118】
[金属光沢膜の耐傷性]
金属光沢膜の膜強度を、JIS K5600-5-4:1999「引っかき硬度(鉛筆法)」に従って評価した。鉛筆は、三菱鉛筆ハイユニ(硬度は、10H、9H、8H、7H、6H、5H、4H、3H、2H、H、F、HB、B、2B、3B、4B、5B、6B、7B、8B、9B、10B)を使用した。金属光沢膜に傷跡が生じなかった最も硬い硬度を表1に示す。
【0119】
[液状組成物のインクジェット吐出性]
インクジェットプリンタ「EPSON PX-1004」を用意し、吐出ヘッドをそれぞれの実施例又は比較例で使用した溶媒で洗浄したあと、インクカートリッジに各実施例又は各比較例の液状組成物を注入した。インクジェットプリンタで普通紙上に600dpiの直線を形成し、直線の縁を観察し、下記のとおり分類した。表1に結果を示す。
【0120】
A:拡大鏡で100部に拡大して観察しても、直線の縁に欠けがみられない。
B:肉眼の観察では直線の縁に欠けがみられないが、拡大鏡で100部に拡大して観察すると直線の縁に欠けがみられる。拡大鏡で欠けがみられる頻度は長さ1cmあたり1箇所~5箇所であり、実使用上問題ない。
C:肉眼の観察で直線の縁に欠けがみられる。肉眼で欠けがみられる頻度は長さ1cmあたり1箇所~5箇所である。
D:肉眼の観察で直線の縁に欠けがみられる。肉眼で欠けがみられる頻度は長さ1cmあたり6箇所以上である。
F:吐出できず。
【0121】
【表1】