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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068707
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/30 20140101AFI20220427BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20220427BHJP
   B42D 25/373 20140101ALI20220427BHJP
【FI】
B42D25/30 100
B41M3/14
B42D25/373
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177528
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 智雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】星野 勝義
(72)【発明者】
【氏名】田村 理人
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005KA49
2H113AA03
2H113BB02
2H113BB22
2H113BC10
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA45
2H113CA46
2H113DA02
2H113DA04
2H113DA57
2H113EA13
2H113EA17
2H113FA56
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原物と複写物との判別が容易な記録媒体を提供する。
【解決手段】記録媒体10は、基材12と、該基材12上に設けられた、チオフェン重合体を含有する金属光沢層14と、を有し、該金属光沢層14に含まれる該チオフェン重合体の重量平均分子量が200以上30000以下であり、該金属光沢層14におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量が該チオフェン重合体に対して1500ppm以下であるものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられた、チオフェン重合体を含有する金属光沢層と、を有し、
前記金属光沢層に含まれる前記チオフェン重合体の重量平均分子量が200以上30000以下であり、
前記金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量が前記チオフェン重合体に対して1500ppm以下である、
記録媒体。
【請求項2】
前記基材と前記金属光沢層との間に金属層をさらに有する、請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記金属層が、Au、Ag、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する、請求項2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量が前記チオフェン重合体に対して500ppm以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項5】
前記金属光沢層に含まれる前記チオフェン重合体の重量平均分子量が500以上20000以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項6】
前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェン、アルキルチオフェン、アミノチオフェン及びヒドロキシチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の記録媒体。
【請求項7】
前記チオフェン重合体が、少なくともアルコキシチオフェンが重合した重合体を含み、
前記アルコキシチオフェンが、アルコキシ基の炭素数が1以上6以下であるアルコキシチオフェンを含む、請求項6に記載の記録媒体。
【請求項8】
前記チオフェン重合体が、少なくともアルキルチオフェンが重合した重合体を含み、
前記アルキルチオフェンが、アルキル基の炭素数が1以上6以下であるアルキルチオフェンを含む、請求項6又は請求項7に記載の記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、記録媒体を提供する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可視光線及び赤外線のいずれも透過する性能を有した多層真珠光沢フィルム(1)の片方の面に、赤外線を吸収する性能を有した図柄や文字等の印刷層(3a)、赤外線を透過する性能を有した図柄や文字等の印刷層(3b)が設けられており、印刷層(3a)と印刷層(3b)とが通常光のもとで同色に見え、かつ赤外線領域での分光反射率が相違しているフィルムが開示されている。
特許文献2には、全面若しくは一部に光沢面が形成されている基材上に個別情報表示を行い、且つ、光沢面の少なくとも一部を目視可能とした印刷物が開示されている。
【0003】
特許文献3には、チオフェンモノマーを電位掃引法によって導電体上に電解重合することでチオフェン重合体からなる金属光沢膜を製造する方法が開示されている。
特許文献4には、チオフェン重合体を含む金属光沢を有する膜が開示されている。
特許文献5には、ポリチオフェンを含有し、ポリチオフェンに塩化物イオン又は過塩素酸イオンがドーピングされたメタリック調塗膜形成用塗工液が開示されている。
特許文献6には、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、塩化物イオン及びパラトルエンスルホン酸イオンの少なくともいずれかがドーピングされたチオフェン重合体を含む金色又は銅色の光沢を有する膜が開示されている。
特許文献7には、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂及びスチレンアクリル共重合体樹脂の少なくともいずれかと、チオフェン重合体と、溶媒とを含む、金属光沢を有する物品を製造するための溶液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-142129号公報
【特許文献2】特開平10-850号公報
【特許文献3】特開2017-052856号公報
【特許文献4】特開2017-110232号公報
【特許文献5】特許第6031197号公報
【特許文献6】特許第6308624号公報
【特許文献7】特開2018-012831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子写真式複写機、パソコン用スキャナー又は多色印刷機の性能向上が進むと、紙幣、有価証券、クレジットカード等の偽造が従来よりも簡単に且つ精巧に行われるおそれがある。
【0006】
本開示の実施形態は、上記状況のもとになされた。
本開示の実施形態は、金属光沢層に含まれるチオフェン重合体の重量平均分子量が200未満又は30000超である場合に比較して、又は、金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量がチオフェン重合体に対して1500ppm超である場合に比較して、原物と複写物との判別が容易な記録媒体を提供することを目的とし、これを達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基材と、
前記基材上に設けられた、チオフェン重合体を含有する金属光沢層と、を有し、
前記金属光沢層に含まれる前記チオフェン重合体の重量平均分子量が200以上30000以下であり、
前記金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量が前記チオフェン重合体に対して1500ppm以下である、
記録媒体。
<2> 前記基材と前記金属光沢層との間に金属層をさらに有する、<1>に記載の記録媒体。
<3> 前記金属層が、Au、Ag、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する、<2>に記載の記録媒体。
<4> 前記金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量が前記チオフェン重合体に対して500ppm以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の記録媒体。
<5> 前記金属光沢層に含まれる前記チオフェン重合体の重量平均分子量が500以上20000以下である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の記録媒体。
<6> 前記チオフェン重合体が、アルコキシチオフェン、アルキルチオフェン、アミノチオフェン及びヒドロキシチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体を含む、<1>~<5>のいずれか1項に記載の記録媒体。
<7> 前記チオフェン重合体が、少なくともアルコキシチオフェンが重合した重合体を含み、前記アルコキシチオフェンが、アルコキシ基の炭素数が1以上6以下であるアルコキシチオフェンを含む、<6>に記載の記録媒体。
<8> 前記チオフェン重合体が、少なくともアルキルチオフェンが重合した重合体を含み、前記アルキルチオフェンが、アルキル基の炭素数が1以上6以下であるアルキルチオフェンを含む、<6>又は<7>に記載の記録媒体。
【発明の効果】
【0008】
<1>、<6>、<7>、<8>によれば、金属光沢層に含まれるチオフェン重合体の重量平均分子量が200未満又は30000超である場合に比較して、又は、金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量がチオフェン重合体に対して1500ppm超である場合に比較して、原物と複写物との判別が容易な記録媒体が提供される。
<2>、<3>によれば、基材と金属光沢層との間に金属層を有しない記録媒体に比較して、原物と複写物との判別が容易な記録媒体が提供される。
<4>によれば、金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量がチオフェン重合体に対して500ppm超である場合に比較して、原物と複写物との判別が容易な記録媒体が提供される。
<5>によれば、金属光沢層に含まれるチオフェン重合体の重量平均分子量が500未満又は20000超である場合に比較して、原物と複写物との判別が容易な記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る記録媒体の一例を示す概略断面図である。
図2】本実施形態に係る記録媒体の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0011】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本開示において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0014】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
<記録媒体>
本実施形態に係る記録媒体は、当該記録媒体が特定の価値を有することを示す情報が記録される予定の記録媒体(つまり、前記情報が記録される前の記録媒体)と、当該記録媒体が特定の価値を有することを示す情報が記録された記録媒体とを含む。
記録媒体が特定の価値を有することを示す情報(以下、単に「情報」という。)は、例えば、「株券」「証券」等の単語、金額、シリアルナンバー、商標、シンボル、ロゴ、エンブレム、バーコード、QRコード(登録商標)、国名、会社名、所在地、電話番号、氏名、生年月日、年齢、生体情報(例えば、指紋形状、静脈形状)、保証期限、保証内容、使用方法などを含む。
情報の記録の方式は、人間の知覚が認識できる方式と、人間の知覚が認識できない方式(例えば、電子的方式、磁気的方式)とを含む。
【0016】
情報が記録された本実施形態に係る記録媒体としては、例えば、紙幣、印紙、証紙、切手、はがき;商品券、株券、債券、手形、小切手、保険証書、宝くじ等の有価証券;クレジットカード、キャッシュカード、デビットカード、プリペイドカード;旅券、査証、健康保険証、運転免許証、IDカード;切符、乗車券、航空券、乗船券、入場券、観覧券;などの物品が挙げられる。
情報が記録される前の本実施形態に係る記録媒体は、換言すれば、上記物品を製造する材料である。
【0017】
本実施形態に係る記録媒体は、基材と、基材上に設けられた、チオフェン重合体を含有する金属光沢層と、を有し、金属光沢層が下記の(1)及び(2)の特徴を有する。
(1)金属光沢層に含まれるチオフェン重合体の重量平均分子量が200以上30000以下である。
(2)金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量がチオフェン重合体に対して1500ppm以下である。
ppmは、parts per million(百万分率)の略であり、上記(2)は質量基準である。
【0018】
チオフェン重合体は、2個以上のチオフェン類が重合した重合体である。チオフェン重合体を含有する膜は、層状に配向したチオフェン重合体が特定の波長の光を反射することにより、金属光沢を呈する。チオフェン重合体を含有する金属光沢膜は、電子写真式複写機又は多色印刷機によっては金属光沢の再現が困難であることから、有価証券等の偽造防止用画像として期待されている。本実施形態に係る記録媒体は、チオフェン重合体を含有する金属光沢層が上記(1)及び(2)の特徴を有することによって、金属光沢層が金属光沢に優れ光沢ムラも少ないので、電子写真式複写機又は多色印刷機による金属光沢の再現がより困難であり、原物と複写物との判別が容易である。
【0019】
図1は、本実施形態に係る記録媒体の一例を示す概略断面図である。図1に示す記録媒体10は、基材12上に金属光沢層14を有する。金属光沢層14は、その一方の面が露出しており、人間の視覚によって認識される。金属光沢層14は、図1に示すように基材12の片面にあってもよく、基材12の両面にあってもよい。金属光沢層14は、基材12の少なくとも片面において、面の一部にあってもよく、面全体にあってもよい。基材12上には情報が記録されていてもよい。金属光沢層14の上に情報が記録されていてもよい。
【0020】
図2は、本実施形態に係る記録媒体の他の一例を示す概略断面図である。図2に示す記録媒体20は、基材22上に金属層23を有し、金属層23上に金属光沢層24を有する。金属光沢層24は、その一方の面が露出しており、人間の視覚によって認識される。金属層23と金属光沢層24とが積層している部位は、金属光沢がより強く発現されるので、電子写真式複写機又は多色印刷機による金属光沢の再現がより困難となる。金属層23及び金属光沢層24は、図2に示すように基材22の片面にあってもよく、基材22の両面にあってもよい。金属層23及び金属光沢層24は、基材22の少なくとも片面において、面の一部にあってもよく、面全体にあってもよい。基材22上には情報が記録されていてもよい。金属光沢層24の上に情報が記録されていてもよい。
【0021】
図1及び図2には図示しないが、金属光沢層14又は金属光沢層24の上には、透明な保護層が積層していてもよい。透明な保護層としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂シートが挙げられる。記録媒体10又は記録媒体20は、片面又は両面の全体に透明な保護層を有していてもよい。
【0022】
図1及び図2には図示しないが、記録媒体10又は記録媒体20は、電磁波で検知可能なコード又はタグを有していてもよい。コード又はタグは、例えば、基材12(又は基材22)上の金属光沢層14(又は金属光沢層24)が無い位置に設けられる。
【0023】
本実施形態に係る記録媒体は、図1に示す形態と図2に示す形態とを両方備えていてもよい。例えば、基材の一方の面が図1に示す形態であり、基材の他方の面が図2に示す形態であってもよい。
【0024】
金属光沢層14は、少なくとも、記録媒体10のおもて面(主要な情報を有する面)にあることが好ましい。金属光沢層14は、記録媒体10の裏面(おもて面と反対側の面)にあってもよく、記録媒体10の両面にあってもよい。金属光沢層14の面積は、特に制限されない。
金属光沢層24の形態も、金属光沢層14の上記形態と同様である。
【0025】
金属光沢層14の形状は、特に制限されない。金属光沢層14は、情報であってもよく、情報でない図形又は文様でもよい。金属光沢層14が構成する情報としては、例えば、金額、商標、シンボル、ロゴ、エンブレムが挙げられる。金属光沢層14が情報でない図形又は文様である場合、情報の読み取りを妨げないために、金属光沢層14は情報とは別の位置又は情報の下にあることが好ましい。
金属光沢層24の形態も、金属光沢層14の上記形態と同様である。
【0026】
金属光沢層14は、金属光沢層14が切り取られたり付け替えられたりすることを防止する観点から、記録媒体10のおもて面全体又は裏面全体に適度な間隔をおいて複数配置してもよい。金属光沢層14は、例えば、記録媒体10の縁部に沿った枠状の形状でもよい。
金属光沢層24の形態も、金属光沢層14の上記形態と同様である。
【0027】
以下、基材、金属光沢層及び金属層について詳細に説明する。以下の説明においては符号を省略する。
【0028】
[基材]
記録媒体の基材としては、例えば、紙、コート紙、布、樹脂製のシート、フィルム又は板、金属製のシート、フィルム又は板、ガラス板、セラミック板、磁性体を塗布又は蒸着した樹脂シート、これらの複合物が挙げられる。基材は、その内部又は表面に、電子的方式又は磁気的方式によって情報を記録する部材(例えば、集積回路、磁気テープ)を有していてもよい。
【0029】
基材の材質、形状及び厚さは、記録媒体の目的に応じて選択してよい。基材には、金属光沢層の形成より前に情報が記録されていてもよい。
【0030】
[金属光沢層]
金属光沢層は、少なくともチオフェン重合体を含有する。金属光沢層は、さらに、樹脂、フィラー等を含有していてもよい。
【0031】
チオフェン重合体は、2個以上のチオフェン類が重合した重合体である。チオフェン重合体は、1種のチオフェン類が重合した重合体でもよく、複数種のチオフェン類が重合した重合体でもよい。チオフェン重合体の実施形態例として、下記の一般式で表される重合体が挙げられる。
【0032】
【化1】
【0033】
上記一般式において、Rは置換基であり、mは1又は2であり、nは2以上の整数である。Rは、1種でもよく、複数種でもよい。mが2の場合、1個のチオフェン環が有する2個のRは、同種でもよく、異種でもよい。mが2の場合、1個のチオフェン環において、2個のRが連結して環状基を形成していてもよい。
【0034】
Rは、例えば、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、アリル基、シアノ基、ハロゲノ基を示す。Rは、金属光沢層が金属光沢により優れる観点から、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシ基が好ましく、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基がより好ましく、アルコキシ基、アルキル基が更に好ましい。
【0035】
Rがアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、チオフェン重合体が層状に配向しやすい観点から、1以上8以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
アルコキシ基を少なくとも1個有するチオフェン類としては、3-メトキシチオフェン、3,4-ジメトキシチオフェン、3-エトキシチオフェン、3,4-ジエトキシチオフェン、3-プロポキシチオフェン、3-ブトキシチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3,4-プロピレンジオキシチオフェン等が挙げられる。
【0036】
Rがアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、チオフェン重合体が層状に配向しやすい観点から、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上6以下が更に好ましく、1以上4以下が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
アルキル基を少なくとも1個有するチオフェン類としては、3-メチルチオフェン、3,4-ジメチルチオフェン、3-エチルチオフェン、3,4-ジエチルチオフェン、3-ブチルチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘプチルチオフェン、3-オクチルチオフェン、3-ノニルチオフェン、3-デシルチオフェン、3-ウンデシルチオフェン、3-ドデシルチオフェン、3-ブロモ-4-メチルチオフェン等が挙げられる。
【0037】
Rがアミノ基である場合、アミノ基は、第1級アミノ基(-NH)でもよく、第2級アミノ基(-NHR、Rはアルキル基又はアリール基であり、アルキル基が好ましい。)でもよく、第3級アミノ基(-NR、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基であり、アルキル基が好ましい。)でもよい。第2級アミノ基又は第3級アミノ基におけるアルキル基の炭素数は、チオフェン重合体が層状に配向しやすい観点から、1又は2が好ましい。
アミノ基を少なくとも1個有するチオフェン類としては、3-アミノチオフェン、3,4-ジアミノチオフェン、3-メチルアミノチオフェン、3-ジメチルアミノチオフェン等が挙げられる。
【0038】
チオフェン重合体としては、金属光沢層が金属光沢により優れる観点から、アルコキシチオフェン、アルキルチオフェン、アミノチオフェン及びヒドロキシチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体が好ましく、アルコキシチオフェン及びアルキルチオフェンからなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体がより好ましく、アルコキシチオフェンのみが重合したポリ(アルコキシチオフェン)、アルキルチオフェンのみが重合したポリ(アルキルチオフェン)又はアルキルチオフェンとアルコキシチオフェンのみが重合したポリ(アルキルチオフェン)(アルコキシチオフェン)が更に好ましい。アルコキシチオフェンにおけるアルコキシ基の炭素数は、1以上8以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。アルキルチオフェンにおけるアルキル基の炭素数は、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上6以下が更に好ましく、1以上4以下が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0039】
金属光沢層に含まれるチオフェン重合体は、チオフェン重合体が層状に配向しやすい観点から、重量平均分子量が200以上30000以下であり、500以上20000以下であることが好ましく、1000以上10000以下であることがより好ましい。
【0040】
金属光沢層に含まれるチオフェン重合体の分子量測定は、チオフェン重合体が溶解可能な溶剤で金属光沢層を溶かし、チオフェン重合体を抽出して行う。
チオフェン重合体の分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定する。測定装置に東ソー(株)製HPLC1100を使用し、カラムに東ソー(株)製TSKgel GMHHR-M(内径7.8mm、長さ30cm)を2本直列に配置して使用し、溶媒にクロロホルムを使用し、標準試料に単分散ポリスチレンを使用する。
【0041】
金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量は、金属光沢層の光沢ムラを抑制する観点から、チオフェン重合体に対して1500ppm以下である。上記金属原子の合計含有量が過剰であると、チオフェン重合体の層状配向が乱れ、金属光沢に光沢ムラが発生しやすい。金属光沢層におけるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量は、チオフェン重合体に対して、500ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。
ただし、チオフェン重合体のドーピング状態を安定させるために、チオフェン重合体は上記金属原子を少し含むことが好ましく、Fe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量は、チオフェン重合体に対して、1ppm以上が好ましく、5ppm以上がより好ましい。
【0042】
チオフェン重合体に対するFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量(ppm)の求め方は、下記のとおりである。
金属光沢層を硝酸に溶解し、硝酸溶液を得る。硝酸溶液をマイクロ波照射による加熱(最高到達温度260℃)で灰化し、灰化物を水に溶解又は分散させた液体組成物を得る。この液体組成物を試料にして、誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively coupled plasma optical emission spectrometry,ICP-OES)により、上記金属原子及びS原子を定量し、S原子と各金属原子の比率を求める。単位量の金属光沢層に含まれるチオフェン重合体量(S原子量から換算)と金属原子量とから、チオフェン重合体に対するFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量(ppm)を算出する。
【0043】
金属光沢層の厚さは、金属光沢を呈する厚さであることが好ましく、具体的には、0.01μm以上200μm以下が好ましい。
【0044】
金属光沢層は、例えば、金属光沢層を形成するための組成物を用いて形成することができる。金属光沢層を形成するための組成物としては、例えば、チオフェン重合体を溶媒に溶解したインク;チオフェン重合体が内添又は外添されたトナー;が挙げられる。金属光沢層の形成方法は、例えば、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、電子写真法である。
【0045】
金属光沢層を基材上又は金属層上に形成後、金属光沢層を基材上又は金属層上に固着させる観点から、金属光沢層を加圧することが好ましい。加圧には、擦ることも含まれる。
【0046】
金属光沢層を形成するための組成物の製造用のチオフェン重合体は、例えば、酸化重合法によって合成する。酸化重合法は、酸化剤を用いて液相又は固相においてチオフェン類を重合する方法である。
【0047】
酸化剤としては、例えば、第二鉄塩、第二銅塩、セリウム塩、二クロム酸塩、過マンガン酸塩、過硫酸アンモニウム、三フッ化ホウ素、臭素酸塩、過酸化水素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0048】
酸化剤としては、第二鉄塩が好ましい。第二鉄塩は、水和物であってもよい。
第二鉄塩の対イオンとしては、例えば、塩化物イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン等が挙げられる。第二鉄塩の対イオンとして、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン及びテトラフルオロほう酸イオンの少なくとも1種を用いると、金色に近い光沢を呈する膜を形成することができる。
【0049】
対イオンが過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン又は塩化物イオンである酸化剤を用いた場合、これら対イオンはチオフェン重合体に安定的に結合されて残留し、金属光沢の状態を安定的に維持することができる。
【0050】
酸化重合は、溶媒中において行うことが好ましい。溶媒は、チオフェン類及び酸化剤を溶解し、チオフェン類を効率的に重合させる溶媒が好ましい。溶媒としては、高い極性を有し、ある程度の揮発性を有する有機溶媒であることが好ましい。
【0051】
溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン、ニトロメタン、1-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、2-ブタノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、アニソール、クロロホルム、酢酸エチル、ヘキサン、トリクロロエチレン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、エタノール、ブタノール、ピリジン、ジオキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
溶媒としては、金属光沢層が金属光沢により優れる観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましく、アセトニトリル、ニトロメタン、γ-ブチロラクトン及び炭酸プロピレンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0053】
溶媒とチオフェン類との質量比は、溶媒:チオフェン類=1:0.00007~1:7が好ましく、1:0.0007~1:0.7がより好ましい。
溶媒と酸化剤との質量比は、例えば、酸化剤が過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕の場合、溶媒:過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕=1:0.0006~1:6が好ましく、1:0.006~1:0.6がより好ましい。
チオフェン類と酸化剤との質量比は、チオフェン類:酸化剤=1:0.1~1:1000が好ましく、1:1~1:100がより好ましい。
【0054】
酸化重合の手技は特に制限されない。チオフェン類と酸化剤とを溶媒に一度に加え溶解させて酸化重合を行ってもよく、溶媒にチオフェン類を溶解させた溶液と溶媒に酸化剤を溶解させた溶液とを別々に作製し、両溶液を混合して酸化重合を行ってもよい。
【0055】
酸化重合におけるチオフェン類の濃度、反応温度及び反応時間を変更することで、チオフェン重合体の分子量を調整することができる。
【0056】
酸化重合法で合成したチオフェン重合体は、溶液のまま使用してもよいし、溶媒を除去して粉末状のチオフェン重合体として使用してもよい。
【0057】
粉末状のチオフェン重合体は、酸化重合の際に使用した酸化剤に由来する不純物を含有することがある。不純物を除去する目的で、下記の(a)、(b)及び(c)の少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。下記の(a)、(b)及び(c)の少なくとも1つの処理を行うことによって、金属光沢層に含まれるFe原子、Cu原子、Mn原子、Cr原子及びCe原子の合計含有量を低減することができる。
(a)貧溶媒を用いてチオフェン重合体の洗浄を行う。
(b)チオフェン重合体を良溶媒に溶解させた溶液を、貧溶媒に滴下し、チオフェン重合体を沈殿させる。
(c)貧溶媒を、チオフェン重合体を良溶媒に溶解させた溶液に滴下し、チオフェン重合体を沈殿させる。
貧溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが好ましく、良溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が好ましい。
【0058】
金属光沢層の形成方法としては、電解重合法も挙げられる。電解重合法は、モノマーを支持電解質を含む溶媒に溶解してなる電解溶液中において、モノマーを電極酸化することにより、不溶性重合体からなる膜を導電体上に形成する方法をいう。電解重合法によれば、チオフェン類を原料にして、導電性の基材上に、又は、基材上に設けた金属層上に、チオフェン重合体を含有する金属光沢層を直接形成することができる。
【0059】
電解重合における溶媒としては、例えば、水、アルコール、これらの混合溶媒が挙げられる。また、「電気化学測定法 上巻」107~114頁(藤島昭、相澤益男、井上 徹、技報堂出版、1984年)に記載の溶媒を使用してもよい。
【0060】
支持電解質は、溶媒に十分溶解し且つ電気分解されにくい電解質が好ましい。支持電解質としては、カチオンに注目すれば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩が好ましく、アニオンに注目すれば、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、三フッ化ホウ素塩、六フッ化リン酸塩が好ましい。
【0061】
電解溶液におけるチオフェン類の濃度は、0.1mmol/L以上溶解度以下であることが好ましく、1mmol/L以上1mol/L以下であることがより好ましい。
電解溶液における支持電解質の濃度は、0.001mol/L以上溶解度以下であることが好ましく、0.01mol/L以上1mol/L以下であることがより好ましい。
【0062】
電解重合法は、動作電極として機能させる導電体と、対向電極と、電位の基準となる参照電極とを用いる3電極式、又は、動作電極として機能させる導電体と、対向電極とを用いる2電極式が好ましい。3電極式は、望むチオフェン重合体を再現性よく重合できる観点から好ましい。
【0063】
動作電極として機能させる導電体の材質は、3電極式及び2電極式のいずれにおいても、電極酸化に対して安定な物質であることが好ましい。例えば、酸化インジウムスズ、酸化スズ等の導電膜が塗布された電極(透明ガラス電極、金属電極、グラッシーカーボン電極等)が好ましい。対向電極としては、上記の電極、ステンレス、銅板等の金属電極が好ましい。参照電極は、Ag/AgCl電極、飽和カロメル電極が好ましい。
【0064】
電解重合法において陽極酸化させる際、電位掃引法を用いることが好ましい。電位掃引法とは、一定の速度で電位を変化させつつ印加する処理をいう。
【0065】
電位掃引法は、負電位と正電位の間で掃引することが好ましい。この場合、負電位は、-1.5V以上-0.01V以下の範囲が好ましく、より好ましくは-1.0V以上-0.1V以下の範囲、更に好ましくは-0.7V以上-0.2V以下の範囲である。正電位は、+1.0V以上+3.0V以下の範囲が好ましく、より好ましくは+1.0V以上+2.0V以下の範囲、更に好ましくは+1.0V以上+1.5V以下の範囲である。
電位掃引法の掃引速度は、0.1mV/秒以上10V/秒以下の範囲が好ましく、より好ましくは1mV/秒以上1V/秒以下の範囲、更に好ましくは2mV/秒以上300mV/秒以下の範囲である。
【0066】
電解重合の時間は、1秒以上5時間以下の範囲が好ましく、10秒以上1時間以下の範囲がより好ましい。
電解重合時の電気分解の温度は、-20℃以上60℃以下の範囲が好ましい。
【0067】
電解重合時の電気分解は、大気中の成分物質が関与することの少ない反応でありまた比較的低電位で行われるため、大気中で行うことができる。電解液中の不純物の酸化など、生成した膜を汚染する可能性を回避する観点から、窒素ガスやアルゴンガス雰囲気中で行うことが好ましいが、汚染の心配はほとんどない。それでもやはり、電解溶液中に酸素が多く存在すると電極反応に影響を与えるおそれがあるため、不活性ガス(窒素ガスやアルゴンガス)によるバブリングを行うことも有用である。
【0068】
電解重合法によって金属光沢層を形成後、金属光沢層を基材上又は金属層上に固着させる観点から、金属光沢層を加圧することが好ましい。加圧には、擦ることも含まれる。
【0069】
[金属層]
本実施形態に係る記録媒体は、基材と金属光沢層との間に金属層を有することが好ましい。金属光沢層の下に金属層があることによって、金属光沢層の金属光沢がより優れる。
【0070】
金属層は、金属層及び金属光沢層の金属光沢を増す観点から、Au、Ag、Cu及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する金属層であることが好ましい。
【0071】
金属層は、少なくとも金属を含有する。金属層は、さらに、樹脂、フィラー等を含有していてもよい。
【0072】
金属層の形成には、公知の成膜方法が適用できる。例えば、無電解めっき、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のめっき;金属粉末と樹脂とを含む塗液を用いた塗工;金属粉末を含むメタリックトナーを用いた画像形成;などの方法が挙げられる。
【0073】
金属層の厚さは、0.02μm以上200μm以下が好ましい。
【0074】
金属光沢層の厚さと金属層の厚さとの比は、金属光沢層の厚さ:金属層の厚さ=1:0.001~1:2000が好ましく、1:0.05~1:20がより好ましい。
【実施例0075】
以下、実施例を例示することで本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。合成、処理、製造などは、特に断りのない限り、室温(25℃±3℃)で行った。
【0076】
<実施例1>
[チオフェン重合体の合成]
3-メトキシチオフェン11.4gを三つ口フラスコに入れ、アセトニトリル0.5Lを入れ、アセトニトリルに3-メトキシチオフェンを溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕101gをアセトニトリル0.5Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール1Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体10.5gを得た。
【0077】
[メタノール洗浄]
合成したチオフェン重合体2.0gをビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.8gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3000であった。
【0078】
[塗工液の調製]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体1.0gをニトロメタン99gに溶解し、スターラーにて1時間攪拌したのち、22時間静置し、塗工液を得た。
【0079】
[金属光沢層の形成]
塗工液を普通上質紙(C2紙、富士ゼロックス株式会社)に、一辺10mmの正方形に塗布したのち、温度25℃下に45分間置いて乾燥させ、金属光沢層を形成した。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0080】
<実施例2~5、比較例1~2>
実施例1と同様にして、ただし、チオフェン重合体の合成における3-メトキシチオフェンの濃度、反応温度及び反応時間を変更することで、重量平均分子量の異なるチオフェン重合体を合成し、実施例1と同様のメタノール洗浄を施した。こうして、表1に記載の重量平均分子量を有するチオフェン重合体をそれぞれ得た。そして、実施例1と同様にして、塗工液を調製し、金属光沢層を形成した。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0081】
<比較例3>
実施例1と同様にして、ただし、合成後のチオフェン重合体にメタノール洗浄を施さないで塗工液の調製に使用し、金属光沢層を形成した。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0082】
<比較例4>
実施例1と同様にして、ただし、メタノール洗浄を下記のとおり変更し、塗工液の調製及び金属光沢層の形成を行った。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0083】
[メタノール洗浄]
合成したチオフェン重合体2.0gをビーカーに取り、メタノール50mLを加え、1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.8gを得た。
【0084】
<実施例6>
実施例1と同様にして、ただし、メタノール洗浄を下記の沈殿処理に変更し、塗工液の調製及び金属光沢層の形成を行った。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0085】
[沈殿処理]
合成したチオフェン重合体2.0gをビーカーに取り、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液をイソプロピルアルコール500mLに30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.85gを得た。
【0086】
<実施例7>
実施例1と同様にして、ただし、メタノール洗浄を下記の沈殿処理及びメタノール洗浄に変更し、塗工液の調製及び金属光沢層の形成を行った。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0087】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
合成したチオフェン重合体2.0gをビーカーに取り、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.8gを得た。
【0088】
<実施例8>
[チオフェン重合体の合成]
3-メトキシチオフェン2.28gを三つ口フラスコに入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルに3-メトキシチオフェンを溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、テトラフルオロほう酸銅(II)6水和物24.5gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0089】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体2.0gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3200であった。
【0090】
[塗工液の調製]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体1.0gをニトロメタン99gに溶解し、スターラーにて1時間攪拌したのち、22時間静置し、塗工液を得た。
【0091】
[金属光沢層の形成]
塗工液を普通上質紙(C2紙、富士ゼロックス株式会社)に、一辺10mmの正方形に塗布したのち、温度25℃下に45分間置いて乾燥させ、金属光沢層を形成した。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0092】
<実施例9>
[チオフェン重合体の合成]
3-メトキシチオフェン3.1gを三つ口フラスコに入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルに3-メトキシチオフェンを溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、過マンガン酸カリウム15.8gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0093】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体2.0gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3300であった。
【0094】
[塗工液の調製]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体1.0gをニトロメタン99gに溶解し、スターラーにて1時間攪拌したのち、22時間静置し、塗工液を得た。
【0095】
[金属光沢層の形成]
塗工液を普通上質紙(C2紙、富士ゼロックス株式会社)に、一辺10mmの正方形に塗布したのち、温度25℃下に45分間置いて乾燥させ、金属光沢層を形成した。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0096】
<実施例10>
3-メトキシチオフェン3.1gを三つ口フラスコに入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルに3-メトキシチオフェンを溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、二クロム酸カリウム19.7gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0097】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体2.0gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3400であった。
【0098】
[塗工液の調製]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体1.0gをニトロメタン99gに溶解し、スターラーにて1時間攪拌したのち、22時間静置し、塗工液を得た。
【0099】
[金属光沢層の形成]
塗工液を普通上質紙(C2紙、富士ゼロックス株式会社)に、一辺10mmの正方形に塗布したのち、温度25℃下に45分間置いて乾燥させ、金属光沢層を形成した。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0100】
<実施例11>
3-メトキシチオフェン3.1gを三つ口フラスコに入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルに3-メトキシチオフェンを溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、硝酸セリウム(IV)アンモニウム54.8gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0101】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体2.0gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3100であった。
【0102】
[塗工液の調製]
メタノール洗浄後のチオフェン重合体1.0gをニトロメタン99gに溶解し、スターラーにて1時間攪拌したのち、22時間静置し、塗工液を得た。
【0103】
[金属光沢層の形成]
塗工液を普通上質紙(C2紙、富士ゼロックス株式会社)に、一辺10mmの正方形に塗布したのち、温度25℃下に45分間置いて乾燥させ、金属光沢層を形成した。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0104】
<実施例12>
[チオフェン重合体の合成]
3-ブトキシチオフェン3.1gを三つ口フラスコ入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルに3-ブトキシチオフェンを溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕20gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0105】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.9gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3200であった。
【0106】
メタノール洗浄後のチオフェン重合体を用いて、実施例1と同様にして塗工液の調製及び金属光沢層の形成を行った。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0107】
<実施例13>
[チオフェン重合体の合成]
3-メチルチオフェン0.02gと3-メトキシチオフェン2.05gとを三つ口フラスコ入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルにチオフェン類を溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕20gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0108】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.9gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3200であった。
【0109】
メタノール洗浄後のチオフェン重合体を用いて、実施例1と同様にして塗工液の調製及び金属光沢層の形成を行った。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0110】
<実施例14>
[チオフェン重合体の合成]
3,4-エチレンジオキシチオフェン0.03gと3-メトキシチオフェン2.05gとを三つ口フラスコ入れ、アセトニトリル0.1Lを入れ、アセトニトリルにチオフェン類を溶解した。次いで、三つ口フラスコ内を窒素で置換し、0℃に冷却した。次いで、過塩素酸鉄(III)n水和物〔第二〕20gをアセトニトリル0.1Lに溶解させた容液を、当該溶液及び反応系内を5℃以下に保ちながら滴下した。次いで、室温まで温度を上げ室温にて15時間攪拌した。次いで、メタノール0.2Lを加え1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取した。
【0111】
[沈殿処理及びメタノール洗浄]
採取した固形分を、ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた。この溶液を攪拌しながら、イソプロピルアルコール1Lを30分間かけて滴下し、固体を徐々に析出させた。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分をビーカーに取り、メタノール50mLを加え、液温を45℃に調整し1時間攪拌した。次いで、遠心分離機を用いて固液分離し、固形分を採取し、減圧下60℃で16時間乾燥し、チオフェン重合体1.9gを得た。メタノール洗浄後のチオフェン重合体の重量平均分子量は3100であった。
【0112】
メタノール洗浄後のチオフェン重合体を用いて、実施例1と同様にして塗工液の調製及び金属光沢層の形成を行った。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0113】
<実施例15>
Alフレーク(東洋アルミニウム株式会社)5部及びポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡株式会社)8部をトルエンに分散し、普通上質紙(C2紙、富士ゼロックス株式会社)に塗布したのち、温度60℃下に15分間置いて乾燥させ、厚さ約5.0μmの金属層を形成した。この金属層上に金属光沢層を形成した以外は実施例1と同様にして金属光沢層を形成した。金属光沢層の厚さは約1.0μmであった。
【0114】
<参考例>
金色の折り紙(紙の上にアルミニウム箔及び黄色セロハンを積層した物品。サンノート株式会社)を一辺10mmの正方形に切り出し、普通上質紙(C2紙、富士ゼロックス株式会社)に接着し、金属光沢層を形成した。
【0115】
<性能評価>
電子写真方式の複写機DocuCentre-V C6685(富士ゼロックス株式会社)と、トナーカートリッジ「CT202676」(イエロー色)、「CT202675」(マゼンタ色)、「CT202674」(シアン色)、「CT202673」(黒色)及び「CT203318」(金色)(以上、富士ゼロックス株式会社)を用いて、普通上質紙(C2紙、富士ゼロックス株式会社)に各実施例及び各比較例の金属光沢層を複写した。
【0116】
[正反射率の測定]
紫外可視分光光度計UV-2600(株式会社島津製作所)に積分球を取り付け、アルミニウム蒸着ミラーを基準にして、金属光沢層の原物と複写物それぞれの正反射スペクトルを測定した。波長600nmの正反射率(%)を表1に記載する。
【0117】
[拡散反射率の測定]
紫外可視分光光度計UV-2600(株式会社島津製作所)に積分球を取り付け、硫酸バリウム白板を基準にして、金属光沢層の原物と複写物それぞれの拡散反射スペクトルを測定した。波長600nmの拡散反射率(%)を表1に記載する。
【0118】
[光沢感]
金属光沢層の複写物を目視で観察し、光沢感を下記のとおり分類した。
G1:光沢感がまったくない。
G2:見る角度によっては光沢感がある。
G3:見る角度によらず光沢感がある。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例は、原物と複写物との間で正反射率の差が大きかった。実施例の複写物を目視観察した色味は、黒色に近かった。
比較例は、原物の光沢を複写物が再現しており、複写物の色味は金色から黄色を呈していた。
参考例は、原物の光沢を複写物が再現しており、複写物の色味は金色であった。
【符号の説明】
【0121】
10,20 記録媒体
12,22 基材
14,24 金属光沢層
23 金属層
図1
図2