(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068724
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】柱体及びこれを用いた畜舎
(51)【国際特許分類】
A01K 1/00 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
A01K1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177561
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】506310050
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】内海 洋
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA01
2B101DA03
2B101EB09
(57)【要約】
【課題】所望の強度を確保しつつ細柱化を図ることができる柱体を提供する。
【解決手段】畜舎用の柱体2は、家畜側空間11と餌側空間12とを仕切る仕切壁部13の上部に立設する。この柱体2は、内部空間25を有する金属製の管状部材26と、この管状部材26の内部空間25に充填した充填補強部であるコンクリート部27とを備える。それゆえ、柱体2の細柱化によって仕切壁部13の厚さ寸法を小さくでき、よって、家畜aが餌bを食べやすくなり、家畜aへのストレスを抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜側空間と餌側空間とを仕切る仕切壁部に立設される柱体であって、
内部空間を有する管状部材と、
前記管状部材の前記内部空間に充填された充填補強部と
を備えることを特徴とする柱体。
【請求項2】
開口部を開閉する扉体を支持する柱体であって、
内部空間を有する管状部材と、
前記管状部材の前記内部空間に充填された充填補強部と
を備えることを特徴とする柱体。
【請求項3】
管状部材の内部空間に配置された補強部材を備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の柱体。
【請求項4】
家畜が存在する家畜側空間と、
前記家畜側空間の家畜が食べる餌が供給される餌側空間と、
前記家畜側空間と前記餌側空間とを仕切る仕切壁部と、
前記仕切壁部に立設された柱体と、
前記柱体に取り付けられ、前記家畜側空間の家畜が前記家畜側空間から前記餌側空間に移動するのを規制する規制手段とを具備し、
前記柱体は、
内部空間を有する管状部材と、
前記管状部材の前記内部空間に充填された充填補強部とを備える
ことを特徴とする畜舎。
【請求項5】
仕切壁部の厚さ寸法は、柱体の太さ寸法よりも少し大きい
ことを特徴とする請求項4記載の畜舎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細柱化を図れる柱体及びこれを用いた畜舎に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された牛舎が知られている。
【0003】
この従来の牛舎は、床面に左右の内側支柱と左右の外側支柱とを互いに間隔をおいて立設して建屋を形成し、左右の内側支柱間の床面は飼育管理通路を構成し、内側支柱と外側支柱との間にはそれぞれ飼育柵を設けて飼育管理通路の両側に複数の飼育室を対設し、飼育室の床面全体には多数のスノコを糞尿落下空間が形成されるように敷設し、飼育室の床面下部には尿溝に向けて傾斜させた固液分離床面を設け、飼育室の前面の飼育管理通路の両側には飼槽を形成し、飼育室の外側である建屋の軒下部には水呑み容器を設置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、上記従来の牛舎の支柱(柱体)としては、例えば内部空間を有する中空状の管状部材である角パイプが用いられるが、所望の強度を確保するためには、ある程度太い角パイプを用いなければならない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、所望の強度を確保しつつ細柱化を図ることができる柱体及びこれを用いた畜舎を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の柱体は、家畜側空間と餌側空間とを仕切る仕切壁部に立設される柱体であって、内部空間を有する管状部材と、前記管状部材の前記内部空間に充填された充填補強部とを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の柱体は、開口部を開閉する扉体を支持する柱体であって、内部空間を有する管状部材と、前記管状部材の前記内部空間に充填された充填補強部とを備えるものである。
【0009】
請求項3記載の柱体は、請求項1又は2記載の柱体において、管状部材の内部空間に配置された補強部材を備えるものである。
【0010】
請求項4記載の畜舎は、家畜が存在する家畜側空間と、前記家畜側空間の家畜が食べる餌が供給される餌側空間と、前記家畜側空間と前記餌側空間とを仕切る仕切壁部と、前記仕切壁部に立設された柱体と、前記柱体に取り付けられ、前記家畜側空間の家畜が前記家畜側空間から前記餌側空間に移動するのを規制する規制手段とを具備し、前記柱体は、内部空間を有する管状部材と、前記管状部材の前記内部空間に充填された充填補強部とを備えるものである。
【0011】
請求項5記載の畜舎は、請求項4記載の畜舎において、仕切壁部の厚さ寸法は、柱体の太さ寸法よりも少し大きいものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所望の強度を確保しつつ細柱化を図ることができる。また、本発明によれば、柱体の細柱化によって仕切壁部の厚さ寸法を小さくでき、よって、家畜が餌を食べやすくなり、餌を食べる際の家畜へのストレスを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る畜舎の要部斜視図である。
【
図4】同上畜舎における作用効果を説明するための図である。
【
図5】(a)ないし(g)は柱体の変形例を示す図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る畜舎の正面視の部分断面図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態に係る扉装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について
図1ないし
図4を参照して説明する。
【0015】
図中の1は畜舎で、この畜舎1は、複数頭の飼育動物である家畜(例えば牛)aを飼育するための建物(例えば牛舎)である。
【0016】
畜舎1は、
図1ないし
図3に示すように、上下方向長手状の複数本の柱体2を備え、これら複数本の柱体2によって屋根3が支持され、また、柱体2と壁4との間には梁5が架設されている。なお、複数本の柱体2は互いに等間隔をおいて並設され、互いに隣り合う柱体2は所定の距離Lをもって互いに離間対向した状態で配置されている(
図3参照)。
【0017】
柱体2は、家畜側空間11と餌側空間12とを仕切る水平方向長手状の壁部である仕切壁部13に、この仕切壁部13の複数の所定箇所における上面から上方に向かって垂直状に突出するように立設されている。
【0018】
餌側空間12は、家畜aの餌bが置かれる餌側床部(飼槽床部)15の上方空間であり、この餌側空間12には家畜側空間11の家畜aが食べる所定量の餌bが自動給餌機等によって自動的に供給される。他方、家畜側空間11は、自動給餌機等で供給された餌側空間12の餌b(餌側床面上の餌)を食べる家畜aがその上に立って載る家畜側床部16の上方空間であり、この家畜側空間11には複数頭の家畜aが存在する。
【0019】
餌側床部15の上面(餌側床面15a)と家畜側床部16の上面(家畜側床面16a)とは同一面上には位置せず、餌側床面15aが家畜側床面16aよりも高い位置に位置している。
【0020】
仕切壁部13は、餌側空間12に臨んだ鉛直面状の餌側側面17と、この餌側側面17よりも大きく形成され、家畜側空間11に臨んだ鉛直面状の家畜側側面18と、これら両側面17,18の上端間に位置する水平面状の上面19とを有している。なお、図示した例では、仕切壁部13の上部の2つの角部は、尖った形状であるが、例えば面取り等して円弧状に形成してもよい。
【0021】
また、仕切壁部13は、上方に向かって開口する上面開口状の孔部20を複数の所定箇所に有し、この各孔部20に柱体2の下端部(挿入部)が嵌合(嵌合挿入)されて固定されている。各孔部20は、柱体2に対応した形状で、仕切壁部13の上面19において両側面17,18の上端から等しい距離の位置に形成されている。なお、餌側床部15と、家畜側床部16と、これらの間に位置する仕切壁部13とは、例えばレジンコンクリートやセメントコンクリート等のコンクリートで構成されている。
【0022】
そして、このような上方突出状のコンクリート製の仕切壁部13によって、互いに隣り合う家畜側空間11と餌側空間12とが仕切られている。つまり、餌側床部15と家畜側床部16との間に長手状の仕切壁部13が立設され、この仕切壁部13の存在によって餌側空間12の餌bが家畜側空間11側に向かって移動しないようになっている。なお、仕切壁部13の上方の空間によって、家畜側空間11と餌側空間12とが互いに連通している。
【0023】
また、畜舎1は、家畜側床部16の上にいる家畜aが家畜側空間11から餌側空間12へ移動するのを規制する規制手段21を備えている。規制手段21は、例えば水平方向長手状の2本の金属製の規制棒(飼槽パイプ)22である。なお、丸軸状の規制棒22の直径寸法(太さ寸法)は、例えば48mmであるが、この太さには限定されず、これよりも太いパイプでもよい。
【0024】
そして、互いに平行な2本の規制棒22は、固定手段によって複数本の柱体2に固定的に取り付けられてこれら柱体2で水平状に支持されている。なお、この図示した例では、規制棒22は、上下2本であるが、必ずしも2本である必要はなく、例えば下側の1本だけでもよく、また、その形状等に関してもなるべく細い丸パイプが好ましいが、角パイプ等を用いてもよい。
【0025】
ここで、畜舎1に用いられた畜舎用の柱体2の具体的構成について説明する。
【0026】
柱体(畜舎用の通し柱)2は、
図1に示すように、内部空間25を有する断面正方形状の金属製の管状部材(例えば角パイプ)26と、この管状部材26の内部空間25に充填されたコンクリート製の充填補強部であるコンクリート部27とを有している。すなわち例えば、柱体2は、細長い四角筒状の鋼管(管状部材)内にコンクリート(仕切壁部13のコンクリートと同じ種類でも異なる種類でもよい)を充填したコンクリート充填鋼管(コンクリート充填管)で構成されている。なお、充填するのはコンクリートが好ましいが、それ以外でもよい。
【0027】
それゆえ、
図4(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る柱体2の太さ寸法Aは、比較例に係る中空状の角パイプである鋼管のみからなる柱体2´の太さ寸法A´(150mm以上)に比べて小さく、例えば100mm~130mm、好ましくは100mmである。
【0028】
また、柱体2の太さ寸法Aよりも少し大きな値である仕切壁部13の厚さ寸法Bも、比較例として示す中空状の鋼管のみからなる柱体2´を立設した仕切壁部13´の厚さ寸法B´(200mm以上)に比べて小さく、例えば120mm~150mm、好ましくは120mmである。仕切壁部13,13´の高さ寸法Hは、いずれも同じで例えば250mmである。仕切壁部13の厚さ寸法Bは、仕切壁部13の餌側空間側の高さ寸法H(餌側側面の高さ寸法)の半分以下が好ましい。
【0029】
なお、本実施形態に係る柱体2の鋼管の厚さは例えば2.3mmであり、比較例に係る柱体2´の鋼管の厚さは例えば4.5mmである。また管状部材26の厚さは2.3mmには限定されず、また例えば管状部材26のうち規制手段21が取り付けられる被取付部分のみを他の部分よりも肉厚に形成してもよい。
【0030】
次に、上記畜舎1の作用効果等について説明する。
【0031】
図4に示すように、本実施形態の柱体2の太さ寸法Aは比較例の柱体2´の太さ寸法A´よりも小さく、かつ、本実施形態の仕切壁部13の厚さ寸法Bは比較例の仕切壁部13´の厚さ寸法B´よりも小さい。つまり、この畜舎1では、複数本の各柱体2が管状部材26とこの管状部材26内に充填されたコンクリート部27とを備えるものであるから、十分に剛性が高く、所望の強度を確保しつつ各柱体2の細柱化を図ることができる。
【0032】
それゆえ、このような畜舎1によれば、柱体2の細柱化によって仕切壁部13の厚さ寸法Bを小さくでき、よって、家畜側空間11の家畜aが餌側空間12の餌bを食べやすくなり、餌bを食べる際の家畜aへのストレスを効果的に抑制できる。
【0033】
つまり、比較例の場合には、仕切壁部13´が厚いため、家畜aは、首をのばす必要があり餌bを食べにくく、また口の下側が仕切壁部13´の上部の角部に繰り返して接触してしまうこともあり、さらに仕切壁部13´付近の餌bを食べることができず、餌bが残って無駄になる。
【0034】
これに対し、本実施形態の場合には、仕切壁部13が薄いため、そのような問題がなく、家畜aは、首をのばすことなく左右に動かしながら容易に餌bを残すことなく食べることができ、口の下側が仕切壁部13の上部の角部に繰り返し接触することもなく、仕切壁部13付近の餌bを含めてストレスなく容易に餌bを全部食べることができる。
【0035】
また、柱体2の細柱化によって互いに隣り合う柱体2間の距離Lを大きくできるため、スペースの有効利用を図れるばかりでなく、例えば
図3の如く端に位置する家畜aが首を左右に動かしながら餌bを食べる際に柱体2に接触するのを防止でき、また、仮に家畜aが柱体2に接触しても十分に剛性が高い柱体2は変形しない。
【0036】
さらに、柱体2が管状部材26とこの管状部材26内に充填されたコンクリート部27とを有するものであるから、規制手段21を柱体2に容易かつ強固に取り付けることができる。
【0037】
なお、柱体2は、
図1に示すものには限定されず、
図5(a)ないし(g)に示すように、例えばプレート、Cチャンネル、H鋼、或いは複数本の鉄筋等の長手状の金属製の補強部材30を管状部材26の内部空間25に当該管状部材26の全長(一部でもよい)にわたってその長手方向に沿ってコンクリート部27に埋設固定した状態で配置した構成でもよく、また断面円形状の丸パイプ等の管状部材26を用いた構成等でもよい。
【0038】
また、例えば
図6に示すように、上述した補強部材30の下端部を管状部材26の下面開口26aから下方に突出させ、この突出部分(下端突出部)30aを仕切壁部13の孔部20に嵌合固定(嵌合挿入)するようにしてもよい。
【0039】
この孔部20は、柱体2の管状部材26の下端部に対応した形状をなす上側の第1孔部分(管状部材26の下端部と嵌合する部分)20aと、柱体2の補強部材30の突出部分30aに対応した形状をなす下側の第2孔部分(補強部材30の下端部と嵌合する部分)20bとを有している。つまり、この
図6に図示した例では、管状部材26の下端部が第1孔部分20aに嵌合固定され、かつ、補強部材30の下端突出部が第2孔部分20bに嵌合固定されている。なお、この
図6に図示した補強部材30はプレートであるが、これには限定されず、Cチャンネル、H鋼、鉄筋等でもよい。
【0040】
また、規制手段21は、規制棒22には限定されず、例えば
図7及び
図8に示すスタンション31でもよい。このスタンション31は、例えば連動スタンションで、固定柵棒32、この固定柵棒32とともに家畜aの首を挟持する回動柵棒33、この回動柵棒33を回動可能に支持する屈曲柵棒34、及び回動柵棒33を作用状態にロックするロック手段35等を有している。また、ロック手段35は、ロック解除用のハンドルを有し、このハンドルの操作によって複数の回動柵棒33が自重で一斉に回動して非作用状態となる。なお、スタンション31は、図示した連動タイプ以外のものでもよい。
【0041】
さらに、柱体2は、例えば
図9に示すように、扉装置である畜舎用扉装置41に用いてもよい(例えば特開2017-225382号公報等)。この畜舎用扉装置41の柱体2は、畜舎1に対して家畜aが出入りする開口部である出入口(畜舎の動物用の出入口)42を開閉する扉体43を接続部材44を介して回動可能に支持する扉装置用の支持柱である。
【0042】
柱体2は出入口42に対して固定されているが、扉体43は、出入口42に対して水平軸線Xを中心に上下方向に回動可能で、かつ、出入口42に対して鉛直軸線Yを中心に水平方向に回動可能となっている。そして、扉体43の上下方向及び水平方向への回動に基づいて出入口42が開閉される。
【0043】
つまり、扉体43は、出入口42を開口させる場合には水平軸線Xを中心に上方へ回動しながら鉛直軸線Yを中心に水平方向の一方側へ回動し、出入口42を閉鎖する場合には水平軸線Xを中心に下方へ回動しながら鉛直軸線Yを中心に水平方向の他方側へ回動する。なお、扉体43は、作業者の人力に基づいて回動する構成、付勢手段の付勢力に基づいて回動する構成、モータやシリンダ等の駆動手段の駆動力に基づいて回動する構成等、いずれの構成でもよい。また、畜舎用扉装置41は、扉体43の上下回動と水平回動とを連動させるとともにその水平回動の範囲を制限する制限手段45を備える。
【0044】
そして、扉体43は複数本の長手状の構成部材等からなる比較的重いものであるが、それを支持する柱体2は管状部材26とこの管状部材26内に充填されたコンクリート部27とを備えるものであって十分に剛性が高いことから、比較的細い柱体2であっても扉体43の重さで変形するようなことがない。なお、例えば図示しないが、扉体は、水平方向のみに回動する構成や上下方向のみに回動する構成等でもよい。また、畜舎の他の柱部材に柱体2を用いてもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、前記各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 畜舎
2 柱体
11 家畜側空間
12 餌側空間
13 仕切壁部
21 規制手段
25 内部空間
26 管状部材
27 充填補強部であるコンクリート部
30 補強部材
42 開口部である出入口
43 扉体
a 家畜
b 餌