(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068756
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】バッテリモジュール、バッテリ装置およびバッテリモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/20 20210101AFI20220427BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220427BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220427BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20220427BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20220427BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20220427BHJP
【FI】
H01M2/10 S
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6555
H01M10/6556
H01M10/6567
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177608
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柳原 康宏
(72)【発明者】
【氏名】中井 昌之
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK01
5H031KK08
5H040AA28
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT04
5H040AY04
5H040CC20
(57)【要約】
【課題】冷却性能の向上を図ることができるバッテリモジュールの提供。
【解決手段】バッテリモジュールは、積層された複数のバッテリセル10と、バッテリセル10の端部に設けられるスペーサ12と、積層された前記複数のバッテリセル10の間に配置されてバッテリセル10の熱を吸熱する吸熱部20a、および、前記吸熱部20aで吸熱した熱を外部に放熱する放熱部20bを有する伝熱板20と、を備える。放熱部20bは、吸熱部20aに対して屈曲してバッテリセル10の間から露出すると共にスペーサ12に当接する。スペーサ12は、放熱部20bに当接する当接面260を有する当接部126と、当接面260と逆向きであってスペーサ12の位置を規定する面270を有する位置決め部127aとを備える。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のバッテリセルと、
前記バッテリセルの端部に設けられるスペーサと、
積層された前記複数のバッテリセルの間に配置されて前記バッテリセルの熱を吸熱する吸熱部、および、前記吸熱部で吸熱した熱を外部に放熱する放熱部を有する伝熱板と、を備え、
前記放熱部は、前記吸熱部に対して屈曲して前記バッテリセルの間から露出すると共に前記スペーサに当接し、
前記スペーサは、
前記放熱部に当接する当接面を有する当接部と、
前記当接面と逆向きであって前記スペーサの位置を規定する面を有する位置決め部とを備える、バッテリモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリモジュールにおいて、
前記吸熱部には孔が形成され、
前記スペーサは、前記吸熱部の方向に突出し、かつ、前記孔に隙間を空けて挿通される凸部を備える、バッテリモジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバッテリモジュールにおいて、
前記吸熱部は、前記バッテリセルに接着剤で接着されている、バッテリモジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のバッテリモジュールにおいて、
前記スペーサは、前記吸熱部と前記放熱部との接続領域と対向する位置に、テーパ面が形成されている、バッテリモジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のバッテリモジュールにおいて、
前記吸熱部と前記放熱部との成す角度は、90度よりも大きく、かつ、100度よりも小さく設定されている、バッテリモジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のバッテリモジュールにおいて、
前記スペーサは、積層方向上層側の第1の端面と積層方向下層側の第2の端面とを有し、かつ、前記第1の端面と前記第2の端面との間隔がバッテリセルの積層間隔に設定された積層部をさらに備え、
積層された前記スペーサは、前記第1の端面が上層側のスペーサの前記第2の端面に当接し、前記第2の端面が下層側のスペーサの前記第1の端面に当接している、バッテリモジュール。
【請求項7】
請求項6に記載のバッテリモジュールにおいて、
上層側のスペーサの前記第2の端面と、下層側のスペーサの前記第1の端面とが当接した状態で、上下のスペーサの隙間に、伝熱板が配置される空間が形成されるバッテリモジュール。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールに設けられた複数の伝熱板の各放熱部に熱伝導シートを介して押圧され、前記放熱部の熱を吸熱する冷却部材と、を備えるバッテリ装置。
【請求項9】
積層された複数のバッテリセルと、
積層された前記バッテリセルの間に配置される複数の伝熱板と、
前記バッテリセルの端部に設けられるスペーサとを備え、
前記伝熱板は、積層された前記バッテリセルの間に配置される吸熱部と、積層されたバッテリセルの外部に屈曲するように露出して前記スペーサと対向する放熱部を有する、バッテリモジュールの製造方法であって、
複数の前記バッテリセルおよび複数の前記伝熱板を積層する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、押圧治具により複数の前記放熱部を一括して前記スペーサの方向に押圧して、複数の前記放熱部の各々を対向する前記スペーサに当接させ、複数の前記スペーサの位置を揃えると共に複数の前記放熱部の位置を揃える第2の工程と、を含むバッテリモジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のバッテリモジュールの製造方法において、
前記スペーサは、前記放熱部が当接される第1の面と、前記第1の面に対して面の向きが逆向きである第2の面とをさらに備え、
前記第2の工程において、
複数の前記スペーサの前記第2の面と対向するように位置決め治具を配置し、
複数の前記スペーサの前記第2の面のそれぞれが前記位置決め治具に当接するまで、前記押圧治具により前記放熱部を前記スペーサの方向に押圧する、バッテリモジュールの製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載のバッテリモジュールの製造方法において、
前記第1の工程では、複数の前記バッテリセルおよび複数の前記伝熱板は、所定時間経過後に硬化する接着剤を介して積層され、
前記第2の工程は、前記接着剤の硬化前に行われる、バッテリモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリモジュール、バッテリ装置およびバッテリモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、セルホルダに保持された電池セルを複数有し、それらの電池セルが伝熱プレートを介して配列された電池モジュールが開示されている。伝熱プレートは、隣接する電池セルの間に挿入される介在する第1の部分と、電池モジュールの外部に露出してセルホルダの側壁と対向する第2の部分とを有している。伝熱プレートの第1の部分は、第2の部分がセルホルダの側壁に当接するような配置で、セルホルダに設けられた電池セルに貼り付けられる。そして、伝熱プレートが設けられたセルホルダを積層するように配列して拘束部材で拘束することで、一体となった配列体が得られる。
【0003】
配列体は、熱伝導部材を介して電池モジュールを収容する金属製の筐体の壁部に固定されている。熱伝導部材は、配列体と筐体の壁部とによって圧縮されており、伝熱プレートの第2の部分および壁部に密着している。電池セルで発生した熱は、伝熱プレートおよび熱伝導部材を介して筐体へ放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電池モジュールでは、セルホルダを積層する前に、伝熱プレートの第2の部分をセルホルダの側壁に当接するように位置決めし、その後で、伝熱プレートが設けられたセルホルダを複数積層するようにしている。そのため、複数のセルホルダを積層する際に、セルホルダ同士に位置ずれが生じるおそれがあり、複数の伝熱プレートの第2の部分の位置が、対向する熱伝導部材に対して不揃いとなり易い。熱伝導部材に押圧される第2の部分の位置が不揃いであると、第2の部分の面圧がばらついて、セルホルダごとに冷却性能が異なってしまうという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の第1の態様によるバッテリモジュールは、積層された複数のバッテリセルと、前記バッテリセルの端部に設けられるスペーサと、積層された前記複数のバッテリセルの間に配置されて前記バッテリセルの熱を吸熱する吸熱部、および、前記吸熱部で吸熱した熱を外部に放熱する放熱部を有する伝熱板と、を備え、前記放熱部は、前記吸熱部に対して屈曲して前記バッテリセルの間から露出すると共に前記スペーサに当接し、前記スペーサは、前記放熱部に当接する当接面を有する当接部と、前記当接面と逆向きであって前記スペーサ12の位置を規定する面を有する位置決め部とを備える。
(2)本発明の第2の態様によるバッテリ装置は、前記バッテリモジュールと、前記バッテリモジュールに設けられた複数の伝熱板の各放熱部に熱伝導シートを介して押圧され、前記放熱部の熱を吸熱する冷却部材と、を備える。
(3)本発明の第3の態様によるバッテリモジュールの製造方法は、積層された複数のバッテリセルと、積層された前記バッテリセルの間に配置される複数の伝熱板と、前記バッテリセルの端部に設けられるスペーサとを備え、前記伝熱板は、積層された前記バッテリセルの間に配置される吸熱部と、積層されたバッテリセルの外部に屈曲するように露出して前記スペーサと対向する放熱部を有する、バッテリモジュールの製造方法であって、複数の前記バッテリセルおよび複数の前記伝熱板を積層する第1の工程と、前記第1の工程の後に、押圧治具により複数の前記放熱部を一括して前記スペーサの方向に押圧して、複数の前記放熱部の各々を対向する前記スペーサに当接させ、複数の前記スペーサの位置を揃えると共に複数の前記放熱部の位置を揃える第2の工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッテリモジュールの冷却性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施の形態のバッテリモジュールの斜視図である。
【
図2】
図2は、バッテリモジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、バッテリ装置の一部を示す図である。
【
図4】
図4は、スペーサが取り付けられたバッテリセルの斜視図である。
【
図5】
図5は、スペーサの上面側を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、セル本体と、一対のスペーサとを示す図である。
【
図8】
図8は、バッテリセルの裏面側に装着された伝熱板を示す図である。
【
図9】
図9は、伝熱板の粗い位置決めを説明する図である。
【
図10】
図10は、バッテリセル積層の際の、スペーサの粗い位置決めを説明する図である。
【
図11】
図11は、複数のバッテリセルを積層した状態における、スペーサおよび伝熱板の位置の不揃いの一括修正方法を説明する図である。
【
図15】
図15は、バッテリモジュールの製造工程の第1の工程を示す図である。
【
図16】
図16は、バッテリモジュールの製造工程の第2の工程を示す図である。
【
図17】
図17は、バッテリモジュールの製造工程の第3の工程を示す図である。
【
図18】
図18は、バッテリモジュールの製造工程の第4の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面における各部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。なお、各図に示したXYZ座標の、X方向はバッテリモジュールに設けられたバッテリセルの長手方向に沿った方向を示し、Y方向はバッテリセルの短手方向に沿った方向を示し、Z方向はバッテリセルの積層方向を示している。
【0010】
図1は、本実施の形態のバッテリモジュール1の斜視図である。
図2は、
図1に示したバッテリモジュール1の分解斜視図である。
図1に示すバッテリモジュール1を、例えば、電気自動車等の車両に搭載する場合には、車両に応じた個数のバッテリモジュール1と、各バッテリモジュール1を監視し制御するためのセンサおよびコントローラ等とを、車両に応じたケースに収納した電源装置(バッテリパックとも呼ばれる)として、車両に搭載される。
【0011】
バッテリモジュール1は積層された複数のバッテリセル(単電池とも呼ばれる)10を備える。
図1、2に示す例では、10個のバッテリセル10がZ方向に積層されているが、バッテリセル10の数はこれに限定されない。バッテリセル10は、セル本体100と、正極タブ101と、負極タブ102とから構成されている。バッテリセル10の長手方向の一端にはスペーサ11が、長手方向の他端にはスペーサ12が、それぞれ取り付けられている。バッテリセル10に取り付けられた一対のスペーサ11、12は、バッテリセル10の積層間隔、すなわち、Z方向の間隔を規定する部材である。以下では、バッテリセル10のスペーサ11が取り付けられている側をフロント側と呼び、スペーサ12が取り付けられている側をリア側と呼ぶことにする。スペーサ11,12の詳細は後述する。
【0012】
バッテリモジュール1のY方向の両側面には、側壁板13がそれぞれ設けられている。バッテリモジュール1のZ方向の上面には加圧板14aが設けられ、Z方向の下面には加圧板14bが設けられている。バッテリモジュール1の、スペーサ11が設けられているフロント側の面には、バスバモジュール15が設けられている。加圧板14a,14bには、バッテリモジュール1を電源装置筐体に固定する際の通しボルト22(
図3参照)が挿通される4つの貫通孔140が形成されている。バッテリモジュール1の筐体の一部を構成する側壁板13は、スペーサ11、12が取り付けられた複数のバッテリセル10と複数の伝熱板20との積層体を上下の加圧板14a,14bで加圧した状態で、加圧板14a,14bの側面に溶接される。
【0013】
バスバモジュール15は、バッテリセル10の積層体に設けられた複数のバスバ(不図示)に接続される。なお、バスバの詳細は後述する。バスバモジュール15のフロント側にはターミナル17が設けられ、さらに、ターミナル17のフロント側には樹脂カバー18が取り付けられる。ターミナル17の上面には、一対のターミナルカバー19が設けられている。バッテリセル10の積層体には、バッテリセル10を冷却するための伝熱板20が複数設けられている。伝熱板20はL字形状をしており、バッテリセル10間に挿入される吸熱部20aと、バッテリセル10の積層体のリア側に露出した放熱部20bとを備えている。吸熱部20aは、上下のバッテリセル10のセル本体100に挟まれるように配置されており、セル本体100で生じた熱は、セル本体100から吸熱部20aに伝達される。
【0014】
バッテリモジュール1が設けられた電源装置を車両に搭載する際には、各伝熱板20から熱を奪うための冷却部材が設けられる。
図3はバッテリ装置400の一部を示す図であり、バッテリ装置400においては、冷媒により冷却される冷却プレート21がバッテリモジュール1に取り付けられる。
図3に示すように、バッテリモジュール1には10個のバッテリセル10が積層され、積層されたバッテリセル10の間には伝熱板20が4つ配置されている。伝熱板20は、下から2段目のバッテリセル10と3段目のバッテリセル10との間、4段目のバッテリセル10と5段目のバッテリセル10との間、6段目のバッテリセル10と7段目のバッテリセル10との間、および、8段目のバッテリセル10と9段目のバッテリセル10との間にそれぞれ設けられている。なお、図示は省略しているが、上下に積層されたバッテリセル10同士、および、バッテリセル10と伝熱板20の吸熱部20aとは、接着剤により接着されている。L字形状の伝熱板20は、その放熱部20bが図示上方に屈曲するように積層領域から露出し、スペーサ12の伝熱板当接部126と対向するように配置されている。伝熱板20は、放熱部20bが伝熱板当接部126の当接面260に密着するように位置決めされている。なお、伝熱板20の数や積層位置については、
図3の構成に限定されない。
【0015】
バッテリモジュール1は、通しボルト22によって不図示の電源装置筐体に固定されている。冷却プレート21は、リテーナ27によって伝熱板20の放熱部20bの方向に押圧される。リテーナ27は、ボルト25およびナット26によりブラケット24に固定され、そのブラケット24は、通しボルト22によってバッテリモジュール1に固定されている。冷却プレート21と伝熱板20の放熱部20bとの間には、それらに挟まれるように厚さが1~2mm程度の熱伝導シート23が設けられている。熱伝導シート23は、複数の放熱部20bのX方向の不揃いを吸収するための熱伝導部材であり、一般にサーマル・インターフェース・マテリアルと呼ばれ、熱伝導性に優れた弾性材料が用いられる。
【0016】
冷却プレート21を、熱伝導シート23を介して伝熱板20の放熱部20bに押圧することで、伝熱板20の熱を、熱伝導シート23を介して冷却プレート21へ逃がすようにしている。冷却プレート21には冷媒流路210が形成されており、伝熱板20から冷却プレート21へと移動した熱は、冷媒流路210を流れる冷媒へと放熱される。
【0017】
図4は、スペーサ11,12が取り付けられたバッテリセル10の斜視図である。上述したように、バッテリセル10は、セル本体100と、セル本体100のフロント側に露出するように設けられた正極タブ101および負極タブ102とを備えている。バッテリセル10のフロント側端部にスペーサ11が取り付けられ、リア側端部にスペーサ12が取り付けられる。スペーサ11,12は、樹脂部材で形成されている。
【0018】
図5,6は、スペーサ11,12を示す図である。
図5は、スペーサ11,12の上面側を示す斜視図である。
図6は、スペーサ11,12の裏面側を示す図である。スペーサ11は、Y方向に延在するセル支持部110と、セル支持部110の両端に設けられた一対の積層部112とを備えている。セル支持部110の上面には、一対の連結ピン111が形成されている。各積層部112には、貫通孔113aが形成された金属カラー113がインサートされている。バッテリモジュール1を電源装置筐体に固定するための通しボルト22(
図3を参照)は、この金属カラー113の貫通孔113aに挿通される。
【0019】
スペーサ11のY方向両端の上面側には、凹部114a,114bが形成されている。また、スペーサ11の裏面側のY方向両端には、凹部114a,114bに対応するように凸部115a,115bが形成されている(
図6参照)。凹部114aと凸部115aとは、Z方向に関してほぼ同軸上に形成されている。同様に、凹部114bと凸部115bとは、Z方向に関してほぼ同軸上に形成されている。スペーサ11が取り付けられたバッテリセル10を積層する際には、凹部114aに凸部115aが挿入され、凹部114bに凸部115bが挿入される。
【0020】
スペーサ12は、Y方向に延在するセル支持部120と、一対の積層部123とを備えている。セル支持部120の上面には、一対の連結ピン121と、10個の連結ピン122とが形成されている。各積層部123には、貫通孔124aが形成された金属カラー124がインサートされている。
図3に示した通しボルト22は、この金属カラー124の貫通孔124aに挿通される。
図5に示すように、スペーサ12のXプラス方向の端部には、一対の伝熱板当接部126が形成されている。
図3に示すように、伝熱板20は、放熱部20bの立上がり壁の内面が伝熱板当接部126の外壁面である当接面260に密着するように位置決めされている。
【0021】
スペーサ12の上面側には、凹部125a,125bが形成されている。また、
図6に示すように、スペーサ12の裏面側には、凹部125a,125bに対応するように凸部128a,128bが形成されている。凹部125aと凸部128aとは、Z方向に関してほぼ同軸上に形成されている。同様に、凹部125bと凸部128bとは、Z方向に関してほぼ同軸上に形成されている。バッテリセル10を積層する際には、凹部125aに凸部128aが挿入され、凹部125bに凸部128bが挿入される。また、スペーサ12の裏面側には、伝熱板20の粗い位置決めに用いられる凸部129a,129bが形成されている。
【0022】
スペーサ12の外周面には、一対の突起127a,127bが、スペーサ12のY軸方向両側に突出するように形成されている。
図5において、突起127aは、スペーサ12の中央から見てY軸プラス方向に突出している。突起127bは、スペーサ12の中央から見てY軸のマイナス方向に突出している。突起127a,127bは、複数のバッテリセル10を積層した状態で各スペーサ12の位置を揃える際に用いられる位置決め用の突起である。突起127a,127bを用いた位置決め方法については後述する。
【0023】
図6に示すように、突起127a,127bのフロント側(X軸マイナス方向)の面270の向き、すなわち、面270の法線ベクトルの方向は、伝熱板20の放熱部20bが当接する当接面260の向きとは逆向きになっている。後述するように、積層されたバッテリセル10の各スペーサ12の面270のそれぞれに、位置決め用治具を当接させることによりスペーサ12の位置を揃える。すなわち、面270は、積層状態におけるスペーサ12の位置決め基準面として機能する。面270のフロント側(X軸マイナス方向)には、治具を配置するスペースS1が確保されている。
【0024】
図7は、セル本体100と、セル本体100の長手方向の両端に取り付けられる一対のスペーサ11,12とを示す図である。セル本体100は、発電要素をラミネートフィルム袋内に封止した扁平なリチウムイオン二次電池である。セル本体100には、発電要素に電気的に接続され、セル本体100のラミネートフィルム容器から外部に導出された薄板状の正極タブ101および負極タブ102が設けられている。
【0025】
セル本体100のラミネートフィルム袋のフロント側端部には一対の連結孔103が形成され、フロント側のスペーサ11に形成された連結ピン111が連結孔103にそれぞれ挿通される。セル本体100のラミネートフィルム袋のリア側端部には一対の連結孔104が形成され、リア側のスペーサ12の両端に形成された一対の連結ピン121がそれぞれ挿通される。さらに、セル本体100のラミネートフィルム袋のリア側端部の中央部には10個の連結孔105が形成されており、各連結孔105には、スペーサ12の中央部分に形成された連結ピン122がそれぞれ挿通される。
【0026】
スペーサ11,12は樹脂部材で形成されており、セル本体100の連結孔103に挿通された連結ピン111を熱カシメすることにより、セル本体100のフロント側にスペーサ11が固定される。同様に、セル本体100の連結孔104に挿通される連結ピン121および連結孔105に挿通される連結ピン122を熱カシメすることにより、セル本体100のリア側にスペーサ12が固定される。正極タブ101および負極タブ102は、スペーサ11側に露出している。
【0027】
図3に示した例では、伝熱板20は、下から2段目のバッテリセル10と3段目のバッテリセル10との間、4段目のバッテリセル10と5段目のバッテリセル10との間、6段目のバッテリセル10と7段目のバッテリセル10との間、および、8段目のバッテリセル10と9段目のバッテリセル10との間にそれぞれ設けられている。伝熱板20は、バッテリセル10を積層する前に、吸熱部20aがバッテリセル10のセル本体100の裏面側(図示下側の面)に接着される。
【0028】
図8は、セル本体100の裏面側に装着された伝熱板20を示す図である。伝熱板20は、銅やアルミのような熱伝導性に優れた金属で形成される。前述したように、L字形状の伝熱板20は、バッテリセル10間に挿入される吸熱部20aと、積層体のリア側に露出され、スペーサ12の伝熱板当接部126に当接する放熱部20bとを備えている。伝熱板20の吸熱部20aには、位置決め用の貫通孔200a,200bが形成されている。これらの貫通孔200a,200bにスペーサ12の裏面側に形成された凸部129a,129bが挿通されることで、スペーサ12に対する伝熱板20の粗い位置決めが行われる。
【0029】
[バッテリモジュール1における位置決め機構]
次に、本実施の形態のバッテリモジュール1における位置決め機構について説明する。バッテリモジュール1の性能を発揮するためには、セル本体100の発熱による熱を、効率よく放熱することが望まれる。本実施の形態では、バッテリセル10の積層体に設けられた伝熱板20の一部(放熱部20b)を積層体の外部に露出させ、熱伝導シート23を介して放熱部20bから冷却プレート21へと放熱を行わせるようにしている。前述したように、熱伝導シート23は一般にサーマル・インターフェース・マテリアルと呼ばれるものであり、サーマル・インターフェース・マテリアルは、発熱デバイスとヒートシンクとの間の小さな隙間や凸凹を埋め、効率よく熱をヒートシンクに伝えるという機能を有するものである。本実施の形態における熱伝導シート23は、複数の放熱部20bのX方向の不揃いを吸収して、伝熱板20の熱を冷却プレート21へ効率よく熱を伝えるものである。熱伝導シート23の厚さは、放熱部20bの不揃いを吸収可能な厚さに設定されるが、熱伝導シート23自身の熱抵抗を小さく抑えるためにより薄い方が好ましい。本実施の形態では、熱伝導シート23の厚さは1~2mm程度とされる。
【0030】
ところで、積層される各バッテリセル10間のX方向の位置ずれ、および、バッテリセル10に対する伝熱板20のX方向の位置ずれが大きいと、熱伝導シート23に対して各放熱部20bの位置が不揃いとなる。各放熱部20bの位置が不揃いであった場合、各放熱部20bと熱伝導シート23との間の接触圧がばらついたり、一部の放熱部20bの接触状態が不十分になったりする。その結果、バッテリセル10毎の放熱性能がばらつくという問題を招きやすい。
【0031】
本実施の形態のバッテリモジュール1では、下記の(1)~(3)に示すような位置決めを行うようにしている。
(1)バッテリセル10に伝熱板20を装着する際の、スペーサ12に対する伝熱板20の粗い位置決め。
(2)バッテリセル10を積層する際の、上下のスペーサ同士の粗い位置決め。
(3)複数のバッテリセル10を積層した状態における、スペーサ12および伝熱板20の位置の不揃いの、治具を用いた一括修正。
【0032】
(1.スペーサ12に対する伝熱板20の粗い位置決め)
図9は、上記(1)の伝熱板20の粗い位置決めを説明する図である。伝熱板20をバッテリセル10の裏面側に装着する際には、スペーサ12の裏面に形成された円柱状の凸部129a,129bを、伝熱板20の対応する貫通孔200a,200bに挿通させることにより、スペーサ12およびスペーサ12が取り付けられたバッテリセル10に対する伝熱板20の粗い位置決めを行う。
【0033】
図8,9に示したように、貫通孔200a,200bはX方向に長い長孔であって、X方向寸法がAでY方向寸法がBである。寸法A,Bと凸部129a,129bの外径Dとの関係はA>B>Dとされ、凸部129a,129bと貫通孔200a,200bとの間に隙間が生じるように設定されている。例えば、A-D=1.6mm程度、B-D=0.6mm程度に設定される。凸部129a,129bおよび貫通孔200a,200bによる位置決め機構を設けたことにより、
図9の二点鎖線で示すような伝熱板20の回転ずれを小さく抑えることができ、かつ、伝熱板20のおおまかな位置決めを簡単に行うことができる。伝熱板20の回転ずれをできるだけ抑制するためには、位置決め箇所は少なくとも二か所とする必要があり、伝熱板20のY方向の両サイドに配置するのが望ましい。
【0034】
ここで、凸部129a,129bと貫通孔200a,200bとの間にクリアランスを設けて、伝熱板20の位置決めを高精度な位置決めではなく粗い位置決めとしている理由は以下の通りである。クリアランスを設けたことにより、組立作業性が向上する。スペーサ12は樹脂成型により形成され、伝熱板20は金属板をL字状に曲げ加工して形成される。そのため、スペーサ12および伝熱板20は加工誤差が生じやすく、位置決め精度を高く設定すると加工誤差によって組み付け難くなり、作業性が悪化する。
【0035】
また、後述するように、バッテリセル10を積層した後に、伝熱板20の放熱部20bの位置を揃える作業を行う。その際に、治具により放熱部20bをX軸プラス方向に加圧し、放熱部20bをスペーサ12の伝熱板当接部126の当接面260に当接させて位置揃えを行う。そのため、放熱部20bが伝熱板当接部126に当接する前に凸部129a,129bが貫通孔200a,200bの縁に当たらないように、貫通孔200a,200bをX方向に長い長孔としている。もちろん円形の貫通孔でも良いが、X方向のクリアランスを長孔と同一とした場合、Y方向のクリアランスが長孔に比べて大きくなり、伝熱板20の回転ずれ(
図9参照)が長孔の場合よりも大きくなる。すなわち、貫通孔200a,200bをX方向に長い長孔とすることで、X方向のクリアランスを確保しつつ回転ずれをより小さく抑えることができる。
【0036】
(2.上下のスペーサ同士の粗い位置決め)
図10は、上記(2)のバッテリセル10を積層する際の、上下のスペーサ12同士の粗い位置決めを説明する図であり、上下2段のバッテリセル10に関して、
図4のE-E断面を示したものであり、
図10(a)は積層する前の2つのバッテリセル10を示し、
図10(b)は積層後を示す。いずれの場合も、上段側のバッテリセル10に伝熱板20(二点鎖線で示す)が取り付けられている。
【0037】
スペーサ12の裏面側に形成される凸部128aは、例えば円柱状の凸部である。一方、スペーサ12の上面側に形成されている凹部125aは、矩形状の凹部である。凸部128aの直径D1と凹部125aの一片の長さHは、H>D1の関係に設定されており、例えば、H-D1=0.6mm程度に設定される。
図10(a)のように下側のバッテリセル10の上に上側のバッテリセル10を積層すると、下側のスペーサ12の積層部123の上面123aと上側のスペーサ12の積層部123の下面123bとが接触すると共に、凸部128aの先端部分が凹部125aの内部に挿入される。H>D1に設定されているので、
図10(b)に示すように、凸部128aの側面と凹部125aの側面との間にはクリアランスが生じる。そのため、積層時に上下のスペーサ12がX方向およびY方向にクリアランスの範囲内でずれていても、凸部128aと凹部125aとを係合させることができ、クリアランスの範囲内で粗い位置決めを行うことができる。
【0038】
バッテリセル10同士の位置決めに関して、バッテリセル10に取り付けられたスペーサ12同士の位置決め機構をこのような粗い位置決め機構とすることで、組立作業性の向上を図ることができる。さらに、凸部128aと凹部125aとの間にX方向およびY方向にクリアランスがあることにより、後述するように治具を用いてスペーサ12のX方向位置を揃えることによりバッテリセル10のX方向位置を揃える際に、クリアランスの範囲内で位置調整が可能となる。例えば、凸部128aの軸芯から伝熱板当接部126(
図5参照)の当接面260までの距離にバラツキがあっても、X方向のクリアランスによってばらつきを吸収して、バッテリセル10のセル本体100と一体化されているスペーサ12のX方向位置、すなわち、当接面260のX方向位置を揃えることができる。
【0039】
さらに、本実施の形態では、バッテリモジュール1におけるバッテリセル一層分の積層方向の厚さ寸法は、スペーサ12に形成された積層部123の高さh、すなわち、上面123aと下面123bとの間隔hによって規定される。上面123aは伝熱板当接部126の上端よりも上方に突出し、また、下面123bは吸熱部20aが接する伝熱板当接部126の下端よりも下方に突出している。伝熱板20は、上下の伝熱板当接部126の隙間に配置されており、放熱部20bはこの隙間から外部に露出している。そのため、複数のバッテリセル10と複数の伝熱板20との積層体の高さ寸法、すなわち、バッテリモジュール1の高さ寸法は、伝熱板20の厚さや枚数に関係せず一定となり、バッテリモジュール1の高さ寸法を抑えることができる。
【0040】
また、伝熱板20の枚数によらずバッテリモジュール1の高さ寸法が一定となるので、用途に応じて伝熱板20の枚数を変更したり、または伝熱板20を使用しなかった場合でも、バッテリモジュール1の高さに依存する部品を共有可能とする。高さに依存する部品としては、
図2に示す側壁板13、バスバモジュール15、ターミナル17、樹脂カバー18等がある。
【0041】
なお、フロント側のスペーサ11に関しても、上下のスペーサ11の粗い位置決めを行う構成を備えている。
図5,6に示すように、スペーサ11の裏面側には円柱状の凸部115a,115bが形成されており、スペーサ11の上面側には矩形状の凹部114a,114bが形成されている。そのため、スペーサ11を上下に積層すると、下側のスペーサ11の凹部114a,114bに上側のスペーサ11の凸部15a,115bがそれぞれ係合する。この場合も、凹部114a,114bの矩形断面の一辺の長さは、凸部115a,15bの直径よりも大きく設定され、凸部115a,15bの側面と凹部114a,114bによってスペーサ11同士の粗い位置決めが行われる。
【0042】
(3.スペーサ12および伝熱板20の位置の不揃いの一括修正)
図11~13は、複数のバッテリセル10を積層した状態における、スペーサ12および伝熱板20の位置の不揃いの一括修正方法を説明する図である。なお、
図11~13に示す例では、積層された3段分のバッテリセル10を示した。前述したように、上下に積層されたバッテリセル10同士、および、バッテリセル10と伝熱板20の吸熱部20aとは、接着剤により接着されているが、位置不揃いの一括修正は接着剤が未硬化状態において行われる。以下では、3段分のバッテリセル10を積層上側から上段、中段、下段と呼ぶことにする。
図11~13のいずれにおいても、(a)はZ軸プラス方向から見た図であり、(b)はY軸マイナス方向から見た図である。
【0043】
図11は、不揃いの修正を行う前の位置状態を示す図である。
図11(b)に示すように、伝熱板20は上段のバッテリセル10の底面、および、下段のバッテリセル10の底面に設けられている。なお、
図11(a)に限らず、Z軸プラス方向から見た図である
図11(a),12(a),13(a)においては、下段のバッテリセル10および下側の伝熱板20は上段及び中段のバッテリセル10に遮られて見えていない。また、中段のバッテリセル10に取り付けられたスペーサ12については、スペーサ12に設けられた突起127a,127bのみを図示した。
【0044】
図11(b)に示すように、中段のバッテリセル10に対して、上段のバッテリセル10はX軸プラス方向にずれ量ΔX2だけ位置ずれしており、下段のバッテリセル10はX軸プラス方向にずれ量ΔX4だけ位置ずれしている。上側の伝熱板20は、上段のバッテリセル10に取り付けられたスペーサ12に対してX軸プラス方向にずれ量ΔX1だけ位置ずれしており、スペーサ12の当接面260と伝熱板20の放熱部20bとの間には、ずれ量ΔX1に等しい隙間が生じている。また、下側の伝熱板20は、下段のバッテリセル10に取り付けられたスペーサ12に対してX軸プラス方向にずれ量ΔX3だけ位置ずれしており、スペーサ12の当接面260と伝熱板20の放熱部20bとの間には、ずれ量ΔX3に等しい隙間が生じている。
【0045】
なお、積層状態においては、上段のスペーサ12の裏面に形成された凸部128a,128b(
図6参照)が中段のスペーサ12の上面に形成された凹部125a,125bに挿入されている。そのため、ずれ量ΔX2は、凸部128a,128bと凹部125a,125bとの間のクリアランスにより許容される大きさに制限される。中段のスペーサ12と下段のスペーサ12との関係も同様であり、ずれ量ΔX4についてもずれ量ΔX2と同様の制限がある。また、スペーサ12に対する放熱部20bのずれ量ΔX1,ΔX3についても、スペーサ12の裏面に形成された凸部129a,129bと、それらが挿通される伝熱板20の貫通孔200a,200bとの間のクリアランスにより許容される大きさに制限される。
【0046】
本実施の形態では、スペーサ12が取り付けられたバッテリセル10および伝熱板20の位置不揃いを積層状態において一括修正する工程は、
図2に示す側壁板13を加圧板14a,14bの側面に溶接する作業の前に行われる。すなわち、複数のバッテリセル10と複数の伝熱板20との積層体を上下の加圧板14a,14bで加圧する前の、セル本体100同士およびセル本体100と吸熱部20aとを接着する接着剤が未硬化のときに行われる。位置不揃いの一括修正は、位置決め治具T1および押圧治具T2を用いて行われる。
【0047】
先ず、位置決め治具T1を、
図11(a),11(b)に示すように、各スペーサ12の突起127a,127bのフロント側(X軸マイナス方向の側)のスペースS1に配置する。治具T1は積層方向(Z方向)に延在するように配置され、積層されている全てのスペーサ12のスペースS1を貫通するように配置される。
図11(a),11(b)では、治具T1を、中段のスペーサ12の突起127a,127bのフロント側の面270に密着させて配置しているが、隙間を空けて配置しても良い。
【0048】
次いで、押圧治具T2を上側の放熱部20bのリア側(X軸プラス方向の側)の当接面260に押し当てて、X軸マイナス方向に付勢する。この段階では、積層された伝熱板20とセル本体100との間、および、セル本体100とセル本体100との間に配設される接着剤は未硬化状態なので、押圧治具T2をX軸マイナス方向に付勢することで、伝熱板20をX軸マイナス方向に移動させることができる。押圧治具T2により上側の伝熱板20を移動させた場合、その伝熱板20の上下にあるバッテリセル10も接着剤の粘着力により、伝熱板20に引きずられるようにX軸マイナス方向に移動する可能性がある。
図11(b)の配置の場合、中段のバッテリセル10はスペーサ12の突起127a,127bが位置決め治具T1に当接しているので移動できないが、上段のバッテリセル10は移動する可能性がある。ここでは、説明を簡単にするために、押圧治具T2の付勢力Fによって上側の伝熱板20のみが移動する場合を例に説明する。
【0049】
押圧治具T2の付勢力によって上側の伝熱板20がX軸マイナス方向に移動すると、移動量に応じてずれ量ΔX1が小さくなる。そして、
図12(a),12(b)に示すように放熱部20bが上段のスペーサ12の当接面260に当接すると、ずれ量ΔX1がゼロとなる。上側の伝熱板20の放熱部20bが当接面260に当接した後も、さらに付勢力Fを加え続けると、上側の伝熱板20および上段のバッテリセル10が一体にX軸マイナス方向に移動し、押圧治具T2が下側の伝熱板20の放熱部20bに当接する。さらに付勢力Fを加え続けると、上側の伝熱板20、上段のバッテリセル10および下側の伝熱板20が一体にX軸マイナス方向に移動し、下側の伝熱板20の放熱部20bが下段のスペーサ12の当接面260に当接すると、ずれ量ΔX3がゼロとなる。
【0050】
そして、さらに付勢力Fを加え続けると、上側の伝熱板20、上段のバッテリセル10、下側の伝熱板20および下段のバッテリセル10が一体にX軸マイナス方向に移動し、上段および下段のスペーサ12の各突起127a,127bの面270が治具T1に当接する。その結果、上段、中段および下段のバッテリセル10と上側および下側の伝熱板20の配置は、
図13(a),13(b)に示すような配置となる。
【0051】
以上のようにして、上段、中段および下段のバッテリセル10に取り付けられた各スペーサ12は、突起127a,127bの面270が位置決め治具T1に当接することで、X方向位置が精度良く揃う。上側および下側の伝熱板20は、放熱部20bがスペーサ12の伝熱板当接部126に当接するように位置決めされるので、各放熱部20bのX方向位置が精度良く揃う。
【0052】
図11~13では上中下3段のバッテリセル10を例に説明したが、治具T1,T2用いたスペーサ12および伝熱板20の位置の不揃いの修正は、積層されている複数のスペーサ12および伝熱板20の全てに対して一括して行われる。その結果、全ての伝熱板20の放熱部20bは、X方向位置が揃っているスペーサ12の伝熱板当接部126に当接するように位置決めされ、放熱部20bのX方向位置が確実に精度良く揃うことになる。それにより、各放熱部20bと熱伝導シート23との間の接触圧がばらついたり、一部の放熱部20bの接触状態が不十分になったりするのを防止することができ、放熱部20bから冷却プレート21への放熱性能の向上を図ることができる。
【0053】
一方、特許文献1に記載の電池モジュールでは、セルホルダを積層する前に、伝熱プレートの第2の部分をセルホルダの側壁に当接するように位置決めし、その後で、伝熱プレートが設けられたセルホルダを複数積層するようにしている。そのため、複数のセルホルダを積層する際に、セルホルダ同士に位置ずれが生じるおそれがあり、複数の伝熱プレートの第2の部分の位置が、対向する熱伝導部材に対して不揃いとなり易い。
【0054】
なお、放熱部20bをスペーサ12の伝熱板当接部126に当接させる構成とする場合、放熱部20bのY方向全領域をスペーサ12に当接させる必要はない。
図11~13に示した例では、放熱部20bのY方向の両端領域がスペーサ12に当接するような構造となっており(例えば、
図11(a)参照)、スペーサ12は、伝熱板当接部126が放熱部20bの方向に突出するような形状となっている。そのような形状とするとで、スペーサ樹脂材料が削減され、スペーサ12の質量低減とコスト低減とを図ることができる。
【0055】
図14は、伝熱板20の屈曲角等を説明する図である。伝熱板20の放熱部20bは、放熱面積を十分に確保するために、放熱部20bの上端がスペーサ12の上端よりもZプラス方向に突出するように設定されている。そのため、バッテリセル10の積層作業時に上段側のスペーサ12が放熱部20bの上端と干渉して作業性が低下しないように、吸熱部20aと放熱部20bとの成す角度θは90deg+α(αは1degよりも大きく10degよりも小さい程度)に設定されている。これにより、バッテリセル10の積層作業時におけるスペーサ12と放熱部20bとの干渉を低減することができ、生産性の向上を図ることができる。もちろん、組立作業性に劣るという欠点はあるが、θ=90degであっても構わない。
【0056】
また、伝熱板当接部126の下端、すなわち、吸熱部20aと放熱部20bとの接続領域201と対向する位置に、テーパ面261を形成するようにしても良い。積層時に放熱部20bの上端が上段のスペーサ12のテーパ面261に当接した場合、放熱部20bは角度が大きくなる方向に変形し、スペーサ12にはXマイナス方向に導かれるような力が働くことになる。放熱部20bの先端とスペーサ12との干渉による作業性低下を抑制することができる。なお、角度θを90deg+αに設定する構成と、スペーサ12にテーパ面261を形成する構成とを、両方適用しても良いし、いずれか一方のみを適用するようにしても良い。
【0057】
図14のように、放熱部20bの角度θを90deg+αに設定した場合は、
図13(a)、13(b)の状態から押圧治具T2を外すと、放熱部20bがスペーサ12の当接面260に当接した状態(θ=90deg)から、θ=90deg+αの状態に戻る。しかし、その場合であっても、伝熱板当接部126の少なくとも一部(例えば、当接面260の下端部分)が放熱部20bに当接し、放熱部20bのスペーサ12に対する位置決めが伝熱板当接部126によって行われる。
【0058】
次に、
図15~17を参照してバッテリモジュール1の製造方法(製造工程)について説明する。バッテリモジュール1の製造工程には、概略、バッテリモジュール1を構成する積層部材を積層する第1の工程、伝熱板20の放熱部20bの位置を揃える工程、積層部材を積層してなる構造体を圧縮しつつ側壁板13を溶接する工程、バスバ150(150A,150B)を溶接する工程、および、バスバモジュール15、ターミナル17および樹脂カバー18等を取り付ける工程がある。積層する工程においては、
図15に示すような載置台70が用いられる。載置台70には4本のロケートピン71が設けられており、積層の際には、スペーサ11,12の貫通孔113a,124a、加圧板14a,14bの貫通孔140にロケートピン71が挿通される。
【0059】
図15に示す第1の工程では、10段のバッテリセル10、4つの伝熱板20および加圧板14a,14bを積層する。各バッテリセル10には、スペーサ11、12が取り付けられている。具体的には、
図3に示すように、下層から順に、加圧板14b、1段目のバッテリセル10、2段目のバッテリセル10、伝熱板20が設けられた3段目のバッテリセル10、4段目のバッテリセル10、伝熱板20が設けられた5段目のバッテリセル10、6段目のバッテリセル10、伝熱板20が設けられた7段目のバッテリセル10、8段目のバッテリセル10、伝熱板20が設けられた9段目のバッテリセル10、10段目のバッテリセル10、加圧板14bの順に積層される。伝熱板20は、接着剤500によりバッテリセル10のセル本体100の裏面に取り付けられている。
【0060】
また、バッテリセル10を積層する際には、接着するセル本体100同士の片方の面、接着するセル本体100および伝熱板20の片方の面に接着剤500が塗布される。接着剤500には、例えば、2液反応型アクリル嫌気性樹脂等が用いられ、塗布後、所定時間の経過後に硬化する。後述する第2の工程は接着剤500が硬化する前(所定時間が経過する前)に行われる。接着剤500としては、硬化した後においても粘弾性を有し、ゲル状態を維持している接着剤を使用するのが好ましく、セル本体100の膨張時に接着剤からセルへの反力を発生させることができる。後述する第3の工程では積層された構造体を積層方向に加圧される。それにより、バッテリセル10同士の間、バッテリセル10と伝熱板20との間において接着剤500が広い範囲に拡がり、接着面積が大きくなる。このように、バッテリセル10同士や、バッテリセル10と伝熱板20とは接着剤500介して熱接触しており、セル本体100の熱は接着剤500を介して伝熱板20に伝えられる。
【0061】
図16に示す第2の工程では、接着剤500が硬化する前の積層状態において、複数の伝熱板20の放熱部20bの位置、および、複数のバッテリセル10のスペーサ12の位置を揃える。以下では、
図11~13も参照して説明する。まず、各スペーサ12に形成された突起127bの背面側(図示左側)に、各突起127bの面270と対向するように位置決め治具T1を配置する。同様に、Y方向反対側の各突起127aの背面側(図示左側)にも、各突起127aの面270と対向するように別の位置決め治具T1を配置する。このように、各突起127a,127bの背面側に、一対の位置決め治具T1を配置する(
図11参照)。
【0062】
次いで、押圧治具T2を各伝熱板20の放熱部20bに押し当てて、X軸マイナス方向に力Fで付勢する。そのような付勢力Fにより、
図11、12に示すように位置ずれしているバッテリセル10および伝熱板20がX軸マイナス方向に移動し、最終的には、各バッテリセル10のスペーサ12の突起127a,127bが位置決め治具T1に当接する。その結果、放熱部20bが当接する各伝熱板当接部126のX方向位置が揃えられ、かつ、放熱部20bのX方向位置が揃えられる。このように、積層状態における押圧治具T2による押圧動作により、スペーサ12同士(すなわち、バッテリセル10同士)の位置揃えと、放熱部20b同士の位置揃えとを一括で行うことができる。もちろん、スペーサ12同士のX方向の位置不揃いが小さい場合には、上述したように各突起127a,127bが位置決め治具T1に当接するまで付勢しなくとも、放熱部20b同士の位置揃えを行わせることができる。
【0063】
図17に示す第3の工程では、積層された構造体を積層方向に加圧して、加圧板14a,14bの側面に側壁板13を溶接する。加圧により、バッテリセル10同士の間、バッテリセル10と伝熱板20との間に配設された未硬化状態の接着剤500が、より広い範囲に拡がることになる。
図16に示すように、加圧板14aの上面を加圧治具T3によりZマイナス方向に加圧すると、フロント側の各スペーサ11の積層部112(
図5参照)の上面とその上段にあるスペーサ11の下面とが密着するとともに、リア側の各スペーサ12の積層部123(
図5参照)の上面とその上段にあるスペーサ12の下面とが密着する。そして、加圧状態において、加圧板14a,14bのY方向の両方の側面に、側壁板13をレーザ溶接等によりそれぞれ接合する。
【0064】
図18に示す第4の工程では、積層されたバッテリセル10の正極タブ101および負極タブ102にバスバ150(150A,150B)を溶接して、対応するバッテリセル10同士を接続する。
図18は、バスバによる接続形態の一例を示したものであり、10個のバッテリセルを2並列5直列で接続する場合の接続例を示す。
図18は3~8段目のバッテリセル10を示したものであり、3段目と4段目、5段目と6段目、7段目と8段目とがそれぞれ並列接続され、かつ、並列接続された3~4段目と5~6段目とが直列接続され、5~6段目と7~8段目とが直列接続される。
【0065】
図18では、バッテリセル10の正極タブ101にハッチングを施して示した。3~4段目および7~8段目のバッテリセル10は、図示左側に正極タブ101が設けられており、図示右側に負極タブ102が設けられている。一方、5~6段目のバッテリセル10は図示右側に正極タブ101が設けられ、図示左側に負極タブ102が設けられている。
図18では、5~6段目のバッテリセル10と3~4段目のバッテリセル10とを接続するバスバを符号150Aで示し、5~6段目のバッテリセル10と7~8段目のバッテリセル10とを接続するバスバを符号150Bで示す。バスバ150A,150Bは、バッテリセル10の正極タブ101および負極タブ102に接続される一対の接続部151を備えている。
図18では、正極タブ101に接続される接続部151にハッチングを施して示した。
【0066】
バスバ150Aの一対の接続部151の内、ハッチングを施した一方の接続部151は5~6段目のバッテリセル10の各正極タブ101に接続され、他方の接続部151は、5~6段目のバッテリセル10の下側に配置される3~4段目のバッテリセル10の各負極タブ102に接続される。また、バスバ150Bの一対の接続部151の内、ハッチングを施した一方の接続部151は7~8段目のバッテリセル10の各正極タブ101に接続され、他方の接続部151は、5~6段目のバッテリセル10の各負極タブ102に接続される。その結果、3~4段目のバッテリセル10同士、5~6段目のバッテリセル10同士、および7~8段目のバッテリセル10同士は並列接続され、それぞれ並列接続された3~4段目のバッテリセル10、5~6段目のバッテリセル10および7~8段目のバッテリセル10が、順に直列接続されることになる。
【0067】
なお、
図18では1~2段目のバッテリセル10、9~10段目のバッテリセル10の図示を省略したが、1~2段目および9~10段目のバッテリセル10は、5~6段目のバッテリセル10と同様に図示右側に正極タブ101が設けられ、図示左側に負極タブ102が設けられている。1~2段目のバッテリセル10の各負極タブ102は、バスバ150によって3~4段目のバッテリセル10の各正極タブ101に接続される。9~10段目のバッテリセル10の各正極タブ101は、バスバ150によって7~8段目のバッテリセル10の負極タブ102に接続される。さらに、図示は省略するが、1~2段目のバッテリセル10の一対の正極タブ101にはそれらを接続するバスバが設けられ、9~10段目のバッテリセル10の一対の負極タブ102にはそれらを接続するバスバが設けられる。その結果、並列接続された5組のバッテリセル10の対が、直列接続されることになる。
【0068】
次いで、第5の工程では、
図2に示すように、積層されバスバ(不図示)が接続されたバッテリセル10のフロント側にバスバモジュール15が取り付けられ、そのバスバモジュール15のフロント側にはターミナル17が設けられる。さらに、ターミナル17の上面には一対のターミナルカバー19が設けられ、ターミナル17のフロント側には樹脂カバー18が取り付けられる。その結果、
図1に示すバッテリモジュール1が完成する。
【0069】
なお、上述したバッテリモジュール1の製造工程では、
図15に示すようなロケートピン71が設けられ載置台70を用いた。ロケートピン71は、バッテリセル10を積層する際の大まかな位置決めをするために設けられたものであるが、積層時の上下のバッテリセル10の粗い位置決めは、
図10に示した凸部128a,128bと凹部125a,125bとによって行うことが可能なので、ロケートピン71を省略しても構わない。
【0070】
(変形例)
(a)セルは、扁平形状のラミネートセルとして説明したが、立方体形状の角形セルにも本発明を適用できる。この変形例では、角形セルの外装部材の一端側に当接面260と面270と伝熱板当接部126を設ける。
(b)スペーサ12の形状も、当接面260と面270と伝熱板当接部126とを備えるスペーサであれば、どのような形状でもよい。
【0071】
以上説明した実施の形態の作用効果を説明する。
(1)実施の形態のバッテリモジュールは、積層された複数のバッテリセル10と、バッテリセル10の端部に設けられるスペーサ12と、積層された複数のバッテリセル10の間に配置されてバッテリセル10の熱を吸熱する吸熱部20a、および、吸熱部20aで吸熱した熱を外部に放熱する放熱部20bを有する伝熱板20と、を備える。放熱部20bは、吸熱部20aに対して屈曲してバッテリセル10の間から露出すると共にスペーサ12に当接する。スペーサ12は、放熱部20bに当接する当接面260を有する伝熱板当接部126と、当接面260と逆向きであってスペーサ12の位置を規定する面270を有する位置決め部である突起127aとを備える、バッテリモジュール。
【0072】
実施の形態のバッテリモジュールによれば、スペーサ12には、放熱部20bに対向する当接面260と、当接面260と反対の方向を向く位置決め面270とが設けられている。そのため、積層されたバッテリセル10のスペーサ12の各面270に位置決め治具T1を当接させることで、バッテリセル10の位置を規制することができる。また、位置決め治具T1でバッテリセル10の位置が規制された状態において、放熱部20bの立ち上がり壁の外面に押圧治具T2を当接させることで、伝熱板20を位置決め治具T1の方向に押圧することができる。このように、スペーサ12は反対方向を向く2つの面260と270を有し、これらの面260,270を利用してスペーサ12に対する伝熱板20の位置をすべてのバッテリセル10に対して揃えることができる。換言すると、全ての放熱部20bがほぼ同一面上に揃うように位置決めすることができる。それにより、放熱部20bから冷却プレート21への放熱性能の向上を図ることができる。
【0073】
(2)上記(1)のバッテリモジュールにおいて、吸熱部20aには貫通孔(孔)200a,200bが形成され、スペーサ12は、吸熱部20aの方向に突出し、かつ、貫通孔(孔)200a,200bに隙間を空けて挿通される凸部129a,129bを備える。例えば、
図8に示すように、凸部129a,129bと貫通孔200a,200bとの間に隙間が生じるように、寸法A,B,DをA>B>Dのように設定することで、
図9の二点鎖線で示すような伝熱板20の回転ずれを極力抑えつつ、バッテリセル10のセル本体100に対する伝熱板20の大まかな位置決めを簡単に行うことができる。
【0074】
(3)上記(1)または(2)に記載のバッテリモジュールにおいて、吸熱部20aは、バッテリセル10に接着剤500で接着されている。接着剤が硬化した後は、吸熱部20aがセル本体100に対して位置ずれせず密着しているので、吸熱部20aとセル本体100との間の伝熱性能が低下するのを防止できる。
【0075】
(4)上記(1)から(3)までのいずれか一項に記載のバッテリモジュールにおいて、スペーサ12は、吸熱部20aと放熱部20bとの接続領域201と対向する位置に、テーパ面261が形成されている。その結果、バッテリセル10の積層時に放熱部20bの先端がテーパ面261に干渉した場合でも、放熱部20bの角度θが大きくなる方向に変形し、積層作業性の低下を防止できる。
【0076】
(5)上記(1)から(4)までのいずれか一項に記載のバッテリモジュールにおいて、吸熱部20aと前記放熱部20bとの成す角度θ(
図14参照)は、90度よりも大きく、かつ、100度よりも小さく設定されている。このように角度θを設定することで、バッテリセル10の積層作業時におけるスペーサ12と放熱部20bとの干渉を低減することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0077】
(6)上記(1)から(5)までのいずれか一項に記載のバッテリモジュールにおいて、スペーサ12は、積層方向上層側の上面(第1の端面)123aと積層方向下層側の下面(第2の端面)123bとが形成され、かつ、上面123aと下面123bとの間隔がバッテリセル積層厚さhに設定された積層部123をさらに備え、積層されたスペーサ12は、上面123aが上層側のスペーサ12の下面123bに当接し、下面123bが下層側のスペーサ12の上面123aに当接している。そのため、複数のバッテリセル10と複数の伝熱板20との積層体の高さ寸法、すなわち、バッテリモジュール1の高さ寸法は、伝熱板20の厚さや枚数に関係せず一定となり、バッテリモジュール1の高さ寸法を抑えることができる。
【0078】
(7)上記(6)に記載のバッテリモジュールにおいて、上層側のスペーサ12の第2の端面123bと、下層側のスペーサ12の前記第1の端面123aとが当接した状態で、上下のスペーサの隙間に、伝熱板20が配置される空間が形成されるバッテリモジュール。伝熱板20は、積層部123と干渉することなく、積層体の外部に露出することができる。
【0079】
(8)実施の形態のバッテリ装置は、上記(1)から(7)までのいずれか一項に記載のバッテリモジュール1と、バッテリモジュール1に設けられた複数の伝熱板20の各放熱部20bに熱伝導シート23を介して押圧され、放熱部20bの熱を吸熱する部材である冷却プレート21と、を備える。その結果、複数の伝熱板20の熱は効率良く冷却プレート21に伝達され、バッテリモジュール1の冷却を効果的に行うことができる。
【0080】
(9)実施の形態のバッテリモジュールの製造方法は、積層された複数のバッテリセル10と、積層されたバッテリセル10の間に配置される複数の伝熱板20と、バッテリセル10の端部に設けられるスペーサ12とを備え、伝熱板20は、積層されたバッテリセル10の間に配置される吸熱部20aと、積層されたバッテリセル10の外部に屈曲するように露出してスペーサ12と対向する放熱部20bを有する、バッテリモジュールの製造方法である。そして、複数の前記バッテリセル10および複数の前記伝熱板20を積層する第1の工程と、第1の工程の後に、押圧治具T2により複数の放熱部20bを一括してスペーサ12の方向に押圧して、複数の放熱部20bの各々を対向するスペーサ12に当接させ、複数のスペーサ12の位置を揃えると共に複数の放熱部20bの位置を揃える第2の工程と、を含む。
【0081】
第2の工程では、押圧治具T2により複数の放熱部20bを一括してスペーサ12の方向に押圧して、複数の放熱部20bの各々を対向するスペーサ12に当接させているので、押圧により放熱部20bが当接している複数のスペーサ12の位置が揃い、それに伴って、複数の放熱部20bの位置も揃うことになる。その結果、熱伝導シート23に対する各放熱部20bの面圧を揃えることができ、複数のバッテリセル10の放熱性能のバラつきが抑えられバッテリモジュール1の放熱性能の向上を図ることができる。
【0082】
(10)上記(9)に記載のバッテリモジュールの製造方法において、スペーサ12は、放熱部20bが当接される第1の当接面260と、第1の当接面260に対して面の向きが逆向きである第2の面270とをさらに備え、第2の工程において、複数のスペーサ12の第2の面270と対向するように位置決め治具T1を配置し、複数のスペーサ12の第2の面270のそれぞれが位置決め治具T1に当接するまで、押圧治具T2により放熱部20bをスペーサ12の方向に押圧する。このように、位置決め治具T1を用いて積層されたスペーサ12の位置を揃えることにより、放熱部20bの位置揃えをより高精度に行うことができる。
【0083】
(11)上記(9)または(10)に記載のバッテリモジュールの製造方法において、第1の工程では、複数のバッテリセル10および複数の伝熱板20は、所定時間経過後に硬化する接着剤500を介して積層され、第2の工程は、接着剤500の硬化前に行われる。そのため、複数のスペーサ12の位置を揃えおよび複数の放熱部20bの位置を揃えを、容易に行うことができ、位置揃え後に接着剤500が硬化することで、複数のスペーサ12および放熱部20bの位置は揃った状態に保持される。
【0084】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1…バッテリモジュール、10…バッテリセル、11,12…スペーサ、13…側壁板、14a,14b…加圧板、15…バスバモジュール、150,150A,150B…バスバ、17…ターミナル、18…樹脂カバー、19…ターミナルカバー、20…伝熱板、20a…吸熱部、20b…放熱部、21…冷却プレート、23…熱伝導シート、100…セル本体、101…正極タブ、102…負極タブ、112,123…積層部、123a…上面、123b…下面、126…伝熱板当接部、125a,125b…凹部、127a,127b…突起、128a,128b,129a,129b…凸部、200a,200b…貫通孔、201…接続領域、270…面、260…当接面、261…テーパ面、400…バッテリ装置、500…接着剤、T1…位置決め治具、T2…押圧治具、T3…加圧治具