(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068761
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】アミジネート金属錯体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/68 20060101AFI20220427BHJP
C07C 211/09 20060101ALI20220427BHJP
C07C 211/65 20060101ALI20220427BHJP
C07F 15/06 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
C07C209/68
C07C211/09
C07C211/65
C07F15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177613
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】509182010
【氏名又は名称】気相成長株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(72)【発明者】
【氏名】町田 英明
(72)【発明者】
【氏名】石川 真人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 弘
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC52
4H006BB11
4H006BD70
4H050AA02
4H050AD11
4H050AD17
4H050BB11
4H050WB14
4H050WB21
(57)【要約】
【課題】低コストで、簡単に、[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体の製造方法を提供することである。
【解決手段】 [R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体の製造方法であって、RXと金属Liとを溶媒中で反応させてLiXが懸濁したRLi溶液を得る第1の工程と、LiXが存在するRLi溶液とR1-N=C=N-R2とを反応させてLiXが懸濁した[R1-N-C(R3)-N-R2]Liの溶液を得る第2の工程と、LiXが存在する[R1-N-C(R3)-N-R2]Liの溶液とMXとを反応させてLiXが懸濁した前記[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体の溶液を得る第3の工程と、前記第3の工程で得た溶液中のLiXを除去する第4の工程とを具備する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体の製造方法であって、
R3Xと金属Liとを溶媒中で反応させてLiXが懸濁したR3Li溶液を得る第1の工程と、
LiXが存在するR3Li溶液とR1-N=C=N-R2とを反応させてLiXが懸濁した[R1-N-C(R3)-N-R2]Liの溶液を得る第2の工程と、
LiXが存在する[R1-N-C(R3)-N-R2]Liの溶液とMXとを反応させてLiXが懸濁した前記[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体の溶液を得る第3の工程と、
前記第3の工程で得た溶液中のLiXを除去する第4の工程
とを具備する
アミジネート金属錯体の製造方法。
(但し、R1,R2は、炭素数2~4のアルキル基、又はSiを持つ炭素数2~4のアルキル基である。R3は-C2H5又は-C3H7である。nは2又は3である。Mは、Mg,Ca,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Ag又はRuである。XはCl,Br又はIである。前記LiXのXと前記MXのXとは同じでも異なっていても良い。)
【請求項2】
前記第1の工程で得られた溶液から前記LiXが実質的に残されたままの状態にて前記第2の工程が行われる
請求項1のアミジネート金属錯体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程で得られた溶液から前記LiXが実質的に残されたままの状態にて前記第3の工程が行われる
請求項1又は請求項2のアミジネート金属錯体の製造方法。
【請求項4】
前記第3の工程で得た溶液中の溶媒を炭化水素系溶媒に置き換えて前記LiXの除去が行われる
請求項1~請求項3いずれかのアミジネート金属錯体の製造方法。
【請求項5】
前記LiXの除去は、濾過、遠心分離、デカント、蒸留の何れか一種または二種以上の操作によって行われる
請求項1~請求項4いずれかのアミジネート金属錯体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程から前記第3の工程までは同一容器で行われる
請求項1~請求項5いずれかのアミジネート金属錯体の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程で用いられるR1-N=C=N-R2が、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド又はN,N’-ジターシャリーブチルカルボジイミドである
請求項1~請求項6いずれかのアミジネート金属錯体の製造方法。
【請求項8】
前記第3の工程で用いるMXが、YCl3,MnCl2,FeCl2,CoCl2,NiCl2,CuCl,AgCl,YBr3,MnBr2,FeBr2,CoBr2,NiBr2,CuBr,AgBr,YI3,MnI2,FeI2,CoI2,NiI2,CuI,又はAgIである
請求項1~請求項7いずれかのアミジネート金属錯体の製造方法。
【請求項9】
前記[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体はM系膜形成用に用いられるものである
請求項1~請求項8いずれかのアミジネート金属錯体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミジネート金属錯体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体分野における金属膜の形成に原子層堆積法(ALD)が用いられている。しかし、どのような金属化合物(金属錯体)でもALDに用いられる訳ではない。例えば、β-ジケトン金属錯体は或る程度の蒸気圧を持つものの、金属膜や窒化金属膜を形成するのは困難であった。N,N’-ジアルキルアミジネート金属錯体が用いられた場合には、前記問題が解決できた。すなわち、N,N’-ジアルキルアミジネート金属錯体を用いてALD法により成膜した場合には、金属膜や窒化金属膜が得られた。銅アミジネート錯体が超臨界堆積法に適用された場合には、バルク銅に近い銅薄膜が成膜できた。
【0003】
N,N’-ジアルキルアミジネート金属錯体は次の方法で合成できる。N,N’-ジアルキルアミジネートリチウムと金属ハロゲン化物の反応により得られる。金属ハロゲン化物は市販されている。しかし、N,N’-ジアルキルアミジネートリチウムは市販されていない。
【0004】
N,N’-ジアルキルアミジネートリチウムは次の方法で合成できる。
一つの合成方法は次の通りである。ノルマルブチルリチウムの溶液とN,N’-ジアルキルアミジンとの反応で得られる。ノルマルブチルリチウムは市販されている。しかし、N,N’-ジアルキルアミジンは市販されていない。しかも、N,N’-ジアルキルアミジンは保存安定性が悪い。
他の合成方法は次の通りである。アルキルリチウムとN,N’-ジアルキルカルボジイミドとの反応で得られる。N,N’-ジアルキルカルボジイミドはペプチド合成試薬として市販されている。メチルリチウムやノルマルブチルリチウムは工業的に市販されている。しかし、前記以外のアルキルリチウムは工業的に市販されていない。
【0005】
例えば、N,N’-ジアルキルプロピオンアミジネート金属錯体またはN,N’-ジアルキルブタナアミジネート金属錯体の合成には、エチルリチウム又はノルマルプロピルリチウムが必要である。しかし、これ等は工業的に市販されていない。
エチルリチウム(又は、ノルマルプロピルリチウム)の溶液は、リチウムとエチルクロリド(又は、ノルマルプロピルクロリド)とを反応させて不要な副生物である塩化リチウムを取り除いて得られる。
R-Cl+2Li→RLi+LiCl
【0006】
従って、N,N’-ジアルキルプロピオンアミジネート金属錯体(又は、N,N’-ジアルキルブタナアミジネート金属錯体)の合成には、第1工程でエチルリチウム(又は、ノルマルプロピルリチウム)の合成と塩化リチウムの除去、第2工程でN,N’-ジアルキルアミジネートリチウムの合成、第3工程でN,N’-ジアルキルプロピオンアミジネート金属錯体の合成と塩化リチウムの除去が行われる。これは、操作が煩瑣で、量産性が低く、コストが嵩む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は前記の問題点を解決することである。すなわち、低コストで、簡単に、[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決する為の検討が、鋭意、推し進められて行った。
すなわち、前記アミジネート金属錯体を合成する段階、例えばエチルリチウム(又は、ノルマルプロピルリチウム)の合成工程において生じる塩化リチウムを取り除かないままでエチルリチウム(又は、ノルマルプロピルリチウム)とN,N’-ジアルキルカルボジイミドとを反応させても、N,N’-ジアルキルプロピオンアミジネートリチウム(又は、N,N’-ジアルキルブタナアミジネートリチウム)が合成でき、又、反応系に存在する塩化リチウムを取り除かないままで金属塩化物とN,N’-ジアルキルプロピオンアミジネートリチウム(又は、N,N’-ジアルキルブタナアミジネートリチウム)とを反応させても、N,N’-ジアルキルプロピオンアミジネート金属錯体(又は、N,N’-ジアルキルブタナアミジネート金属錯体)を合成できることが判った。特に、前記反応に際して、副生成物である塩化リチウム(LiX)が前記合成反応に大きな悪影響を及ぼさない事が判った。尚、反応工程aで生成した生成物A1が次の反応工程bにおいて用いられる場合、前記反応工程aで生成した副生成物A2は通常は除去されている。なぜならば、前記副生成物A2が前記反応工程bの反応を阻害する場合が多いからである。すなわち、前記の反応においても、従来では、塩化リチウム(副生成物)が取り除かれていた。しかし、本発明者による研究の結果、副生成物である塩化リチウム(LiX)が前記合成反応に大きな悪影響を及ぼさない事が判った。大きな悪影響を及ぼさないのであれば、前記反応の前反応に際しての副生成物を、予め、除去しなくても良かろうとの啓示が得られた。
【0010】
本発明は斯かる知見に基づいてなされた。
【0011】
本発明は、
[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体の製造方法であって、
R3Xと金属Liとを溶媒中で反応させてLiXが懸濁したR3Li溶液を得る第1の工程と、
LiXが存在するR3Li溶液とR1-N=C=N-R2とを反応させてLiXが懸濁した[R1-N-C(R3)-N-R2]Liの溶液を得る第2の工程と、
LiXが存在する[R1-N-C(R3)-N-R2]Liの溶液とMXとを反応させてLiXが懸濁した前記[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体の溶液を得る第3の工程と、
前記第3の工程で得た溶液中のLiXを除去する第4の工程
とを具備する
アミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0012】
前記R1,R2は、炭素数2~4のアルキル基、又はSiを持つ炭素数2~4のアルキル基である。前記R3は-C2H5又は-C3H7である。前記nは2又は3である。前記Mは、Mg,Ca,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Ag又はRuである。XはCl,Br又はIである。前記LiXのXと前記MXのXとは同じでも異なっていても良い。
【0013】
本発明は、前記アミジネート金属錯体の製造方法であって、前記第1の工程で得られた溶液から前記LiXが実質的に残されたままの状態にて前記第2の工程が行われるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0014】
本発明は、前記アミジネート金属錯体の製造方法であって、前記第1の工程で得られた溶液から前記LiXを除去する為の作業が行われずに(前記LiXが残されたままの状態にて)前記第2の工程が行われるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0015】
本発明は、前記アミジネート金属錯体の製造方法であって、前記第2の工程で得られた溶液から前記LiXが実質的に残されたままの状態にて前記第3の工程が行われるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0016】
本発明は、前記アミジネート金属錯体の製造方法であって、前記第2の工程で得られた溶液から前記LiXを除去する為の作業が行われずに(前記LiXが残されたままの状態にて)前記第3の工程が行われるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0017】
本発明は、前記アミジネート金属錯体の製造方法であって、前記第3の工程で得た溶液中の溶媒を炭化水素系溶媒に置き換えて前記LiXの除去が行われるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0018】
本発明は、前記アミジネート金属錯体の製造方法であって、前記LiXの除去は、濾過、遠心分離、デカント、蒸留の群の中から選ばれる一種または二種以上の操作によって行われるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0019】
本発明は、前記アミジネート金属錯体の製造方法であって、前記第1の工程から前記第3の工程までは同一容器で行われるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0020】
本発明は、前記アミジネート金属錯体の製造方法であって、前記第2の工程で用いられるR1-N=C=N-R2が、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド又はN,N’-ジターシャリーブチルカルボジイミドであるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0021】
本発明は、前記アミジネート金属錯体の製造方法であって、前記第3の工程で用いられるMXが、YCl3,MnCl2,FeCl2,CoCl2,NiCl2,CuCl,AgCl,YBr3,MnBr2,FeBr2,CoBr2,NiBr2,CuBr,AgBr,YI3,MnI2,FeI2,CoI2,NiI2,CuI又はAgIであるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【0022】
本発明は、前記[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体はM系膜形成用に用いられるものであるアミジネート金属錯体の製造方法を提案する。
【発明の効果】
【0023】
前記[R1-N-C(R3)-N-R2]nMの製造が簡単になった。製造コストが低廉である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は[R1-N-C(R3)-N-R2]nMの製造方法である。前記化合物{[R1-N-C(R3)-N-R2]nM}はM系膜形成用に用いられる化合物である。前記M系膜はM金属膜である。或いは、窒化M金属膜である。又は、酸化M金属膜である。前記種類には限られない。例えば、炭化M金属膜である。前記化合物は、特にALD法での成膜に用いられるアミジネート金属錯体である。前記方法は、R3Xと金属Liとを溶媒中で反応させてLiXが懸濁したR3Li溶液を得る第1の工程を具備する。前記方法は、LiXが存在する(残存する:懸濁した)R3Li溶液とR1-N=C=N-R2とを反応させてLiXが存在する(残存する:懸濁した)[R1-N-C(R3)-N-R2]Liの溶液を得る第2の工程を具備する。前記方法は、LiXが存在する(残存する:懸濁した)[R1-N-C(R3)-N-R2]Liの溶液とMXとを反応させてLiXが存在する(残存する:懸濁した)前記[R1-N-C(R3)-N-R2]nMで表されるアミジネート金属錯体の溶液を得る第3の工程を具備する。前記方法は、前記第3の工程で得た溶液中のLiXを除去する第4の工程を具備する。前記R1,R2は、各々、炭素数2~4のアルキル基、又はSiを持つ炭素数2~4のアルキル基である。前記R3は-C2H5又は-C3H7である。nは2又は3である。前記Mは、Mg,Ca,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Ag又はRuである。前記LiXのXと前記MXのXとは同じでも異なっていても良い。
【0025】
前記第1の工程は下記の反応式(1)で表される。
R3X+2Li→R3Li+LiX (1)
前記第2の工程は下記の反応式(2)で表される。
R3Li+LiX+R1-N=C=N-R2→[R1-N-C(R3)-N-R2]Li+LiX (2)
前記第3の工程は下記の反応式(3)で表される。
n{[R1-N-C(R3)-N-R2]Li+LiX}+MXn→[R1-N-C(R3)-N-R2]nM+nLiX+nLiX (3)
上記式(2)(3)において、従来では、前段階(1)(2)の反応で生成した副生物LiXが反応を阻害すると思われ、前記副生物LiXが除去されていた。すなわち、前記(2)(3)式が下記の(2-1)(3-1)式で表される通り、従来では、前記副生物LiXが除去されていた。従来では、前記第1の工程である反応[(1)式]で生成した副生物LiXが、前記第2の工程(反応)が始まる前に、除去されていた。従来では、前記第2の工程である反応[(2)式]で生成した副生物LiXが、前記第3の工程(反応)が始まる前に、除去されていた。これでは煩瑣である。しかし、本発明にあっては、前記第2の工程(反応)に前以って前記第1の工程で生成した副生物LiXを除去する事が無く、かつ、前記第3の工程(反応)に前以って前記第2の工程で生成した副生物LiXを除去する事が無い。これは作業性が良い。
R3Li+R1-N=C=N-R2→[R1-N-C(R3)-N-R2]Li (2-1)
n[R1-N-C(R3)-N-R2]Li+MXn→[R1-N-C(R3)-N-R2]nM+nLiX (3-1)
【0026】
前記第2の工程は、好ましくは、前記第1の工程で得られた溶液から前記LiXが実質的に残されたままの状態にて行われる。更に好ましくは、前記第1の工程で得られた溶液から前記LiXを除去する為の作業が行われずに(前記LiXが残されたままの状態にて)前記第2の工程が行われる。特に好ましくは、前記第1の工程で得られた溶液から前記LiXを除去する為の作業が全く行われずに(前記LiXが残されたままの状態にて)前記第2の工程が行われる。従って、作業が簡単である。LiX除去をしないので、煩瑣な作業が無い。前記LiXが除去されないままで前記第2の工程(反応)が行われても支障が無かった。
【0027】
前記第3の工程は、好ましくは、前記第2の工程で得られた溶液から前記LiXが実質的に残されたままの状態にて行われる。更に好ましくは、前記第2の工程で得られた溶液から前記LiXを除去する為の作業が行われずに(前記LiXが残されたままの状態にて)前記第3の工程が行われる。特に好ましくは、前記第2の工程で得られた溶液から前記LiXを除去する為の作業が全く行われずに(前記LiXが残されたままの状態にて)前記第3の工程が行われる。従って、作業が簡単である。LiX除去をしないので、煩瑣な作業が無い。前記LiXが除去されないままで前記第3の工程(反応)が行われても支障が無かった。
【0028】
前記第3の工程で得た溶液中の溶媒が炭化水素系溶媒に置き換えられて前記LiXの除去が行われる。前記炭化水素系溶媒は、例えばノルマルヘキサンである。前記LiXの除去は、濾過、遠心分離、デカント、蒸留の群の中から選ばれる一種または二種以上の操作によって行われる。
【0029】
前記第1の工程から前記第3の工程までは同一容器で行われる。要するに、前記第1の工程から前記第3の工程までの全工程は同一の反応容器(反応釜)内で行われる。従って、作業が簡単である。
【0030】
前記第2の工程で用いられるR1-N=C=N-R2は、例えばN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド又はN,N’-ジターシャリーブチルカルボジイミドである。
【0031】
前記第3の工程で用いるMXは、例えばYCl3,MnCl2,FeCl2,CoCl2,NiCl2,CuCl,AgCl,YBr3,MnBr2,FeBr2,CoBr2,NiBr2,CuBr,AgBr,YI3,MnI2,FeI2,CoI2,NiI2,CuI又はAgIである。
【0032】
以下、具体的な実施例が挙げられる。但し、本発明は以下の実施例にのみ限定されない。本発明の特長が大きく損なわれない限り、各種の変形例や応用例も本発明に含まれる。
【0033】
[実施例1]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)コバルト〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのエチルクロリドがゆっくり滴下された。エチルクロリドは冷却によって液化していた。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化コバルト(CoCl2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molが濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)蒸留が行われた。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)コバルトの収率は約90%であった。
上記にあっては、全てのLiが消費された後で、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミドが滴下された。しかし、Liが多少残った状態で、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミドが滴下されても問題は認められなかった。
【0034】
[実施例2]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)コバルト〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのノルマルプロピルクロリドがゆっくり滴下された。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化コバルト(CoCl2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molが濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)蒸留が行われた。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)コバルトの収率は約89%であった。
【0035】
[実施例3]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)コバルト〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのノルマルプロピルブロマイドがゆっくり滴下された。反応の進行に伴って生成した臭化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化コバルト(CoCl2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記臭化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。臭化リチウムと塩化リチウム(共に不溶物)が濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)蒸留が行われた。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)コバルトの収率は約53%であった。
【0036】
[実施例4]
〔ビス(N,N’-ジターシャリブチルブタナアミジネート)コバルト〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのノルマルプロピルクロリドがゆっくり滴下された。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジターシャリーブチルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化コバルト(CoCl2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molが濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)昇華が行われた。得られたビス(N,N’-ジターシャリーブチルブタナアミジネート)コバルトの収率は約35%であった。
【0037】
[実施例5]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)鉄〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのエチルクロリドがゆっくり滴下された。エチルクロリドは冷却によって液化していた。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化鉄(FeCl2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molがデカントにより除去された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)蒸留が行われた。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)鉄の収率は約92%であった。
【0038】
[実施例6]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)鉄〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのノルマルプロピルクロリドがゆっくり滴下された。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化鉄(FeCl2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molが濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)蒸留が行われた。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)鉄の収率は約91%であった。
【0039】
[実施例7]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)マンガン〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのエチルクロリドがゆっくり滴下された。エチルクロリドは冷却によって液化していた。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化マンガン(MnCl2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molが濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)蒸留が行われた。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)マンガンの収率は約70%であった。
【0040】
[実施例8]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)マンガン〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのノルマルプロピルクロリドがゆっくり滴下された。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化マンガン(MnCl2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molが濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)蒸留が行われた。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)マンガンの収率は約76%であった。
【0041】
[実施例9]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)マグネシウム〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのエチルクロリドがゆっくり滴下された。エチルクロリドは冷却によって液化していた。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に臭化マグネシウム(MgBr2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)蒸留によって、塩化リチウム及び臭化リチウムと、ビス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)マグネシウムとが分離された。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)マグネシウムの収率は約63%あった。
【0042】
[実施例10]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)マグネシウム〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのノルマルプロピルクロリドがゆっくり滴下された。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に臭化マグネシウム(MgBr2)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム及び臭化リチウム(共に副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム及び臭化リチウム(共に不溶物)が濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)蒸留が行われた。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)マグネシウムの収率は約79%であった。
【0043】
[実施例11]
〔ビス(N,N’-ジイソプロピルブタンアミジネート)ニッケル〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのノルマルプロピルクロリドがゆっくり滴下された。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化ニッケルジメトキシエタン付加体(NiCl2・DME)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molが濾過された。溶媒留去後、減圧(0.1torr)蒸留が行われた。得られたビス(N,N’-ジイソプロピルブタナアミジネート)ニッケルの収率は約80%であった。
【0044】
[実施例12]
〔(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート銅)2〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのエチルクロリドがゆっくり滴下された。エチルクロリドは冷却によって液化していた。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化銅(CuCl)0.2molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molが濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)昇華行われた。得られた二量体である(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート銅)2の収率は約50%であった。
【0045】
[実施例13]
〔(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート銀)2〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.4molのリチウムとジエチルエーテル250mlが入れられたフラスコ内に、0.2molのエチルクロリドがゆっくり滴下された。エチルクロリドは冷却によって液化していた。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.2molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に臭化銀(AgBr)の0.2molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム及び臭化リチウム(共に不溶物物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.4molが濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)昇華行われた。得られた二量体である(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート銀)2の収率は約53%であった。
【0046】
[実施例14]
〔トリス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)イットリウム〕
反応は不活性ガス雰囲気下で行われた。0.6molのリチウムとジエチルエーテル300mlが入れられたフラスコ内に、0.3molのエチルクロリドがゆっくり滴下された。エチルクロリドは冷却によって液化していた。反応の進行に伴って生成した塩化リチウム(副生物:不溶物:白色固体)が懸濁した。滴下後に全てのリチウムは消費された。この懸濁溶液に0.3molのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドがゆっくり滴下された。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。室温で4時間の撹拌が行われた。この懸濁した反応混合液に塩化イットリウム(YCl3)0.1molが入れられた。反応熱が発生してジエチルエーテルが還流した。24時間の撹拌が行われた。上記工程において、前記塩化リチウム(副生物)の除去作業は全く行われなかった。上記工程における全ての反応は前記同じフラスコ内で行われた。溶媒が留去された。500mlのノルマルヘキサンが加えられた。塩化リチウム(不溶物)0.6molが濾過された。溶媒が留去された。減圧(0.1torr)昇華が行われた。得られたトリス(N,N’-ジイソプロピルプロピオンアミジネート)イットリウムの収率は約55%であった。