(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068772
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】油圧機器制御装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/683 20060101AFI20220427BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B66C23/683 A
B66C23/88 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177631
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋憲
(72)【発明者】
【氏名】小野 正人
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205AC02
3F205CA07
3F205CA09
3F205DA04
3F205DA20
(57)【要約】
【課題】構成部材にオペレータの意図と異なる挙動が発生することを抑制することが可能な油圧機器制御装置を提供する。
【解決手段】伸長又は縮小することで起伏ブームを変位させる起伏ブーム起伏用油圧シリンダに供給する圧油を制御する油圧制御部を備え、油圧制御部は、オペレータによる折曲げブームの操作に応じて折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ及び折曲げブーム起伏用油圧シリンダへ圧油を供給する作業モードの実施中に予め設定した条件である自動加圧条件が成立すると、オペレータによる折曲げブームの操作に応じた折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ及び折曲げブーム起伏用油圧シリンダへの圧油の供給よりも優先させて、起伏ブーム起伏用油圧シリンダを伸長させるように起伏ブーム起伏用油圧シリンダへ圧油を供給する自動加圧モードへ移行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の基台へ変位可能に取り付けられている構成部材の動作を制御する油圧機器制御装置であって、
伸長又は縮小することで前記構成部材を変位させる油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに供給する圧油を制御する油圧制御部と、を備え、
前記油圧制御部は、オペレータによる前記構成部材の操作に応じて前記油圧シリンダへ圧油を供給する作業モードの実施中に予め設定した条件である自動加圧条件が成立すると、前記オペレータによる前記構成部材の操作に応じた前記油圧シリンダへの圧油の供給よりも優先させて、前記油圧シリンダを伸長させるように油圧シリンダへ圧油を供給する自動加圧モードへ移行し、
前記構成部材は、前記自動加圧モードにおいて圧油が供給される第一油圧シリンダによって変位する第一構成部材と、前記作業モードの実施中に前記オペレータによる操作に応じて圧油が供給され、且つ前記第一油圧シリンダとは別の油圧シリンダである第二油圧シリンダによって変位する第二構成部材と、を含む油圧機器制御装置。
【請求項2】
前記第一油圧シリンダを伸長させることで前記第一構成部材が変位する方向への第一構成部材の変位を規制するストッパ部材を備える請求項1に記載した油圧機器制御装置。
【請求項3】
前記第一構成部材は、前記基台へ起伏可能に取り付けられている起伏ブームであり、
前記第二構成部材は、前記起伏ブームの先端部へ起伏自在に取り付けられている折曲げブームである請求項1又は請求項2に記載した油圧機器制御装置。
【請求項4】
前記自動加圧条件は、前記折曲げブームに加わる荷重が予め設定した荷重以下であるときに成立する条件を含む請求項3に記載した油圧機器制御装置。
【請求項5】
前記油圧制御部は、前記作業モードの実施中に前記折曲げブームの停止命令が自動的に出力されている状態では、前記自動加圧モードへ移行しない請求項3又は請求項4に記載した油圧機器制御装置。
【請求項6】
前記油圧制御部は、前記自動加圧モードの実施中に前記折曲げブームの起立動作を検出すると、前記自動加圧モードによる前記第一油圧シリンダへの圧油の供給を停止する請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載した油圧機器制御装置。
【請求項7】
前記自動加圧条件は、前記起伏ブームの起伏角度が予め設定した角度以上であるとともに前記圧油を供給する圧油供給装置の駆動源であるエンジンが停止している状態において、前記エンジンが始動するとともにパワーテイクオフが作動するときに成立する条件を含む請求項3から請求項6のうちいずれか1項に記載した油圧機器制御装置。
【請求項8】
前記自動加圧条件は、停止している前記エンジンの始動が遠隔操作装置による前記オペレータの遠隔操作により行われるときに成立する条件を含む請求項7に記載した油圧機器制御装置。
【請求項9】
前記自動加圧条件は、前記作業モードに移行してから予め設定した第一時間が経過したときに成立する条件を含む請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した油圧機器制御装置。
【請求項10】
前記自動加圧条件は、前記自動加圧モードに移行してから予め設定した第二時間が経過したときに成立する条件を含む請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した油圧機器制御装置。
【請求項11】
前記自動加圧条件は、前記作業モードの実施中に前記オペレータによる操作が行われていない時間が予め設定した第三時間に亘って継続したときに成立する条件を含む請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載した油圧機器制御装置。
【請求項12】
前記第一油圧シリンダへ圧油を供給する圧油供給源と第一油圧シリンダとの油路を開放又は閉鎖するストップバルブと、前記ストップバルブと並列に配置され、且つ前記第一油圧シリンダから前記圧油供給源への前記圧油の逆流を防止するチェックバルブと、を備え、
前記油圧制御部は、前記第一構成部材を変位させた後は前記ストップバルブにより前記油路を閉鎖させる請求項1から請求項11のうちいずれか1項に記載した油圧機器制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン装置が備える起伏ブーム等、構成部材の動作を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧により作動する構成部材としては、例えば、タワークレーン等が備えるクレーン装置がある。クレーン装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、クレーンの基台上に、水平な第1の軸回りに起伏自在に支持される起伏ブームと、起伏ブームの先端部に、水平な第2の軸回りに起伏自在に支持された折曲げブームとを備える構成のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているクレーン装置のように、従来の構成部材では、長時間の運転を行うと、油圧シリンダ(例えば、起伏ブームを起伏させるための起伏ブーム起伏用油圧シリンダ)の内圧が徐々に減少する。このため、例えば、起伏ブームをある程度の角度(吊り荷を扱う作業を行う角度等)まで起伏させた状態で、吊り荷を上下させると、油圧シリンダの内圧が減少することで、圧力が低下して起伏ブームの起立状態が不安定となり、オペレータの意図と異なる挙動が構成部材に発生するという問題が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点を鑑み、構成部材にオペレータの意図と異なる挙動が発生することを抑制することが可能な、油圧機器制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る油圧機器制御装置は、作業機の基台へ変位可能に取り付けられている構成部材の動作を制御する油圧機器制御装置であって、油圧シリンダと、油圧制御部を備える。油圧シリンダは、伸長又は縮小することで構成部材を変位させる。油圧制御部は、油圧シリンダに供給する圧油を制御する。これに加え、油圧制御部は、作業モードの実施中に予め設定した条件である自動加圧条件が成立すると、自動加圧モードへ移行する。作業モードは、オペレータによる構成部材の操作に応じて油圧シリンダへ圧油を供給するモードである。自動加圧モードは、オペレータによる構成部材の操作に応じた油圧シリンダへの圧油の供給よりも優先させて、油圧シリンダを伸長させるように油圧シリンダへ圧油を供給するモードである。さらに、構成部材は、第一構成部材と、第二構成部材とを含む。第一構成部材は、自動加圧モードにおいて圧油が供給される第一油圧シリンダによって変位する。第二構成部材は、作業モードの実施中にオペレータによる操作に応じて圧油が供給され、且つ第一油圧シリンダとは別の油圧シリンダである第二油圧シリンダによって変位する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る油圧機器制御装置によれば、第一油圧シリンダの内圧が減少した状態であっても、自動加圧条件が成立すると、第一油圧シリンダを伸長させるときと同じ方向で第一油圧シリンダへ圧油を供給する。このため、第一油圧シリンダの内圧が減少した状態であっても、第一油圧シリンダを伸長させるときと同じ方向で第一油圧シリンダへ圧油を供給することによって、第一油圧シリンダの内圧が回復する。これにより、第一構成部材に、オペレータの意図と異なる挙動が発生することを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るタワークレーンの走行姿勢を示す側面図である。
【
図3】タワークレーンの作業時における姿勢の一例を示す斜視図である。
【
図5】コントローラに対する信号の入出力関係を示すブロック図である。
【
図6】ブーム起伏動作制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る油圧機器制御装置を備える作業車両の一実施形態であるタワークレーンについて、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚さと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0010】
(実施形態)
(構成)
図1から
図3に示すように、タワークレーン1(作業機)は、シャーシフレーム2と、走行装置3と、ベース4と、コラム5と、クレーン装置6と、アウトリガ装置9とを備える。これに加え、タワークレーン1は、運転席10と、操作部11と、ウインチ12と、ワイヤロープ13と、フック14と、原動部15と、コントロールボックス16と、フック格納ブラケット17とを備える。
【0011】
さらに、タワークレーン1は、油圧アクチュエータとして、
図4に示すように、旋回用油圧モータ30と、起伏ブーム伸縮用油圧シリンダ31と、折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ32と、ウインチ用油圧モータ33を備える。これに加え、タワークレーン1は、油圧アクチュエータとして、
図1と
図4に示すように、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34と、折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35と、走行用モータ38を備える。
なお、
図1から
図3では、タワークレーン1が前進する方向を、車両前後方向の「前方」と示し、タワークレーン1が後退する方向を、車両前後方向の「後方」と示す。また、
図3では、タワークレーン1が前進する状態を基準として、タワークレーン1の右側を車幅方向の「右側」と示し、タワークレーン1の左側を車幅方向の「左側」と示す。したがって、
図1及び
図2は、タワークレーン1の右側面図となる。
【0012】
走行装置3は、シャーシフレーム2の下部に設けられている。また、走行装置3は、例えば、ゴム製の履帯が左右に装着されたクローラ式の走行装置である。
ベース4は、シャーシフレーム2の上部に連結されている。
コラム5は、ベース4の上部へ、旋回自在に取り付けられている。
クレーン装置6は、起伏ブーム7と、折曲げブーム8とを備える。
起伏ブーム7は、伸縮式のブームであり、コラム5の上端へ、起伏自在に取り付けられている。また、起伏ブーム7は、入子式の箱型ブームで構成されている。
折曲げブーム8は、伸縮式のブームであり、起伏ブーム7の先端部へ、起伏自在に取り付けられている。
【0013】
また、
図3に示すように、起伏ブーム7の後端面には、ウインチ12が配置されている。
ウインチ12に巻かれているワイヤロープ13は、第1シーブ44及び第2シーブ45を介して、折曲げブーム8の先端部に導かれ、第3のシーブ46と、第4のシーブ(図示略)とを介して、フック14に取り付けられている。これにより、フック14は、折曲げブーム8の先端部から吊り下げられている。なお、第3のシーブ46は、折曲げブーム8の先端部において、折曲げブーム8の上部に配置されている。また、第4のシーブは、第3のシーブ46の下方において、折曲げブーム8の内部に配置されている。
【0014】
アウトリガ装置9は、右前アウトリガ9RFと、右後アウトリガ9RRと、左前アウトリガ9LFと、左後アウトリガ9LRとを備える。
右前アウトリガ9RF、右後アウトリガ9RR、左前アウトリガ9LF及び左後アウトリガ9LRは、それぞれ、基端側アームと、先端側アームとを備える。基端側アームは、シャーシフレーム2の上部へ、旋回自在且つ起伏自在に設けられている。先端側アームは、伸縮式のアームであり、基端側アームの先端に対して、起伏自在に設けられている。
【0015】
右前アウトリガ9RFは、シャーシフレーム2の上部において、車幅方向の右側且つ車両前後方向の前方に配置されている。また、右前アウトリガ9RFは、右前横アウトリガシリンダ36RFと、右前縦アウトリガシリンダ37RFとを備える(
図4参照)。
右前横アウトリガシリンダ36RFは、先端側アームを起伏動作及び伸縮動作させる油圧アクチュエータである。右前縦アウトリガシリンダ37RFは、基端側アームを起伏動作させる油圧アクチュエータである。
【0016】
右後アウトリガ9RRは、シャーシフレーム2の上部において、車幅方向の右側且つ車両前後方向の後方に配置されている。また、右後アウトリガ9RRは、右後横アウトリガシリンダ36RRと、右後縦アウトリガシリンダ37RRとを備える(
図4参照)。
右後横アウトリガシリンダ36RRは、先端側アームを起伏動作及び伸縮動作させる油圧アクチュエータである。右後縦アウトリガシリンダ37RRは、基端側アームを起伏動作させる油圧アクチュエータである。
【0017】
左前アウトリガ9LFは、シャーシフレーム2の上部において、車幅方向の左側且つ車両前後方向の前方に配置されている。また、左前アウトリガ9LFは、左前横アウトリガシリンダ36LFと、左前縦アウトリガシリンダ37LFとを備える(
図4参照)。
左前横アウトリガシリンダ36LFは、先端側アームを起伏動作及び伸縮動作させる油圧アクチュエータである。左前縦アウトリガシリンダ37LFは、基端側アームを起伏動作させる油圧アクチュエータである。
【0018】
左後アウトリガ9LRは、シャーシフレーム2の上部において、車幅方向の左側且つ車両前後方向の後方に配置されている。また、左後アウトリガ9LRは、左後横アウトリガシリンダ36LRと、左後縦アウトリガシリンダ37LRとを備える(
図4参照)。
左後横アウトリガシリンダ36LRは、先端側アームを起伏動作及び伸縮動作させる油圧アクチュエータである。左後縦アウトリガシリンダ37LRは、基端側アームを起伏動作させる油圧アクチュエータである。
【0019】
以降の説明では、右前アウトリガ9RF、右後アウトリガ9RR、左前アウトリガ9LF及び左後アウトリガ9LRを、「各アウトリガ9RF~9LR」と記載する場合がある。また、以降の説明では、右前横アウトリガシリンダ36RF、右後横アウトリガシリンダ36RR、左前横アウトリガシリンダ36LF及び左後横アウトリガシリンダ36LRを、「各横アウトリガシリンダ36RF~36LR」と記載する場合がある。同様に、以降の説明では、右前縦アウトリガシリンダ37RF、右後縦アウトリガシリンダ37RR、左前縦アウトリガシリンダ37LF及び左後縦アウトリガシリンダ37LRを、「各縦アウトリガシリンダ37RF~37LR」と記載する場合がある。
【0020】
アウトリガ装置9は、
図1に示す格納状態から、各アウトリガ9RF~9LRを手動で水平方向に回転させることで、
図2及び
図3に示すように、機体に対して放射状の張り出し位置に移動させることが可能な構成である。なお、
図2及び
図3には、アウトリガ装置9を展開し、起伏ブーム7及び折曲げブーム8を起立させた状態を示す。
各アウトリガ9RF~9LRを張り出し位置に移動させた後は、操作部11の操作、又は、後述する遠隔操作装置の操作によって、各横アウトリガシリンダ36RF~36LRを駆動させる。各横アウトリガシリンダ36RF~36LRを駆動させることにより、各アウトリガ9RF~9LRの先端側アームを、起方向に動作させると共に伸長させることが可能である。
また、各アウトリガ9RF~9LRを張り出し位置に移動させた後は、各縦アウトリガシリンダ37RF~37LRを駆動させて、各アウトリガ9RF~9LRの基端側アームを伏方向に動作させ、先端側アームの下部を地上に接地させる。これにより、機体の全周に対して同一の吊上げ性能を確保しつつ、機体の安定を図る。
【0021】
運転席10は、タワークレーン1の走行操作時等にオペレータ(運転者)が座る。また、運転席10は、リンク機構を介して、シャーシフレーム2の後方から突出して設けられている。
操作部11は、シャーシフレーム2の後端部に設けられている。また、操作部11は、左右一対の走行操作レバー11aと、操作パネル(図示略)と、複数の制御弁操作レバー(図示略)とを有している。
走行操作レバー11aは、運転席10の前方に配置されている。
操作パネルには、複数の操作スイッチが配置されている。
複数の操作スイッチは、操作対象切換スイッチと、起伏ブーム切換スイッチと、伸縮ブーム切換スイッチと、フック固定スイッチと、アウトリガ選択スイッチと、アウトリガ操作スイッチ等を含む。
【0022】
操作対象切換スイッチは、クレーンモードとアウトリガモードとを切り換えるためのスイッチである。クレーンモードは、クレーン装置6を操作可能とするためのモードである。アウトリガモードは、アウトリガ装置9を操作可能とするためのモードである。
起伏ブーム切換スイッチは、操作対象切換スイッチによって切り換えたクレーンモードにおいて、起伏ブーム起伏操作モードと折曲げブーム起伏操作モードとを切り換えるためのスイッチである。起伏ブーム起伏操作モードは、起伏ブーム7を起伏操作可能とするためのモードである。折曲げブーム起伏操作モードは、折曲げブーム8を起伏操作可能とするためのモードである。
伸縮ブーム切換スイッチは、操作対象切換スイッチによって切り換えたクレーンモードにおいて、起伏ブーム伸縮操作モードと折曲げブーム伸縮操作モードとを切り換えるためのスイッチである。起伏ブーム伸縮操作モードは、起伏ブーム7を伸縮操作可能とするためのモードである。折曲げブーム伸縮操作モードは、折曲げブーム8を伸縮操作可能とするためのモードである。
【0023】
なお、操作対象切換スイッチと、起伏ブーム切換スイッチと、伸縮ブーム切換スイッチによって、走行装置3、クレーン装置6及びアウトリガ装置9と、クレーンモードにおける起伏ブーム7及び折曲げブーム8とを、同時に作動させることは不可能である。
アウトリガ選択スイッチは、各アウトリガ9RF~9LRから操作するアウトリガを選択するためのスイッチである。
アウトリガ操作スイッチは、アウトリガ選択スイッチによって選択したアウトリガを操作するためのスイッチである。
【0024】
複数の制御弁操作レバーは、操作パネルの右側に設けられている。また、複数の制御弁操作レバーは、アウトリガ用切換制御弁82、旋回用切換制御弁83、ブーム伸縮用切換制御弁84、ウインチ用切換制御弁85、ブーム起伏用切換制御弁86がそれぞれ有するスプールを作動させる。
また、各制御弁操作レバーは、各種の油圧アクチュエータにそれぞれ対応して設けられており、中立位置から機体に対して接近又は離間する方向へ倒すことで、制御弁操作レバーに対応する油圧アクチュエータを駆動させることが可能となっている。
具体的に、各制御弁操作レバーは、クレーン装置6の左側への旋回動作及び右側への旋回動作を操作するレバーと、起伏ブーム7及び折曲げブーム8の伸縮動作を操作するレバーを含む。これに加え、各制御弁操作レバーは、フック14の巻上動作及び巻下動作を操作するレバーと、起伏ブーム7及び折曲げブーム8の起伏動作を操作するレバーを含む。
【0025】
<原動部>
以下、
図1から
図3を参照しつつ、
図4及び
図5を用いて、原動部15の詳細な構成について説明する。
原動部15は、
図4に示すように、エンジン15aと、圧油供給装置15bと、コントロールバルブ15cとを備える。エンジン15aと、圧油供給装置15bと、コントロールバルブ15cは、筐体の内部に収容されている。
【0026】
エンジン15aは、例えば、ディーゼルエンジンであり、タワークレーン1の駆動力発生源を構成する。
圧油供給装置15bは、
図4に示すように、エンジン15aを駆動源として駆動する油圧ポンプ60と、左吐出ポート61Lと、右吐出ポート61Rと、主管路62と、戻り管路63と、タンク64とを備える。
コントロールバルブ15cは、圧油供給装置15bから供給される圧油の油路を切換制御するバルブである。
【0027】
また、コントロールバルブ15cは、クレーン用切換制御弁80と、アクセルシリンダ81と、アウトリガ用切換制御弁82と、旋回用切換制御弁83と、ブーム伸縮用切換制御弁84と、ウインチ用切換制御弁85と、ブーム起伏用切換制御弁86とを備える。さらに、コントロールバルブ15cは、横アウトリガシリンダ切換弁87と、縦アウトリガシリンダ切換弁88と、走行用切換制御弁89と、第1電磁切換弁820と、第2電磁切換弁840と、第3電磁切換弁860とを備える。
クレーン用切換制御弁80は、主管路62と戻り管路63との間に配置されている。また、クレーン用切換制御弁80は、メインリリーフ弁(アンロード弁)180と、アンロード弁作動用ソレノイド181と、フック固定用リリーフ弁182とを備える。
【0028】
アンロード弁作動用ソレノイド181は、コントローラ160から入力された作動信号Uo(
図5参照)に応じて、ON状態又はOFF状態となる。そして、アンロード弁作動用ソレノイド181は、ON状態のときにメインリリーフ弁180を開状態とし、主管路62と戻り管路63とを連通させる。
図4に示す例では、油圧ポンプ60から吐出した圧油を、クレーン用切換制御弁80と走行用切換制御弁89以外の切換制御弁(アウトリガ用切換制御弁82、旋回用切換制御弁83、ブーム伸縮用切換制御弁84、ウインチ用切換制御弁85、ブーム起伏用切換制御弁86、横アウトリガシリンダ切換弁87、縦アウトリガシリンダ切換弁88)を介さずに、戻り管路63を介してタンク64に戻す。すなわち、ON状態のアンロード弁作動用ソレノイド181は、油圧ポンプ60の運転状態を、圧油を無負荷で循環するアンロード状態(無負荷運転状態)にさせることが可能である。
【0029】
フック固定用リリーフ弁182は、フックリリーフソレノイド182aと、フックリリーフ弁182bとを備える。
フックリリーフソレノイド182aは、コントローラ160から入力された作動信号Hr(
図5参照)に応じて、ON状態又はOFF状態となる。作動信号Hrは、操作部11又は遠隔操作装置162におけるフック固定スイッチの操作に応じた信号である。そして、フックリリーフソレノイド182aは、ON状態のとき、主管路62からの圧油の油路を、フックリリーフ弁182bに圧油が流れる油路へと切り換える。
【0030】
ここで、フックリリーフ弁182bは、設定リリーフ圧が低設定圧Psとなっている。低設定圧Psは、通常作動時のリリーフ圧であるメイン設定圧Pmよりも低い圧力である。したがって、フックリリーフソレノイド182aをON状態として、フックリリーフ弁182bを作動させることで、圧油の圧力上限を低設定圧Psに制限することが可能である。これにより、フック固定スイッチがON状態の間は、フック14の巻上げ作動圧力を低圧に制限し、フック14を固定するフック格納ブラケット17の損傷を防ぐことが可能となる。
【0031】
アクセルシリンダ81は、コントローラ160から入力されたアクセル制御信号Vctr(
図5参照)に応じて、アクセルシリンダ81のピストンロッドを作動させる。アクセル制御信号Vctrは、遠隔操作装置162又は操作部11のアクセル操作量に応じた信号である。ピストンロッドの作動位置信号L6(
図5参照)は、コントローラ160に入力される。これにより、コントローラ160は、アクセルシリンダ81の作動位置(ピストンロッドの作動位置)に応じて、エンジン15aの回転数を、所望の回転数に制御可能である。なお、油圧ポンプ60からの圧油の吐出量は、アクセル操作によってエンジン15aの回転速度を上げるほど多くなる。
また、アクセルシリンダ81は、アクセルシリンダ81の切換位置を検出する差動トランス(図示略)を備える。
図5に示すように、差動トランスで検出された切換位置を示す切換位置信号L6は、コントローラ160へと入力される。すなわち、コントローラ160は、切換位置信号L6によって、アクセルシリンダ81の作動内容(切換位置)を把握することが可能である。
【0032】
アウトリガ用切換制御弁82は、コントローラ160から入力された作動信号Actr1(
図5参照)に応じて、第1電磁切換弁820に圧油を流入させる。作動信号Actr1は、制御弁操作レバーの操作、又は、遠隔操作装置162から入力された操作信号Rctr(
図5参照)に応じた信号である。
また、アウトリガ用切換制御弁82は、アウトリガ用切換制御弁82の切換位置を検出する差動トランス(図示略)を備える。
図5に示すように、差動トランスで検出された切換位置を示す切換位置信号L1は、コントローラ160へと入力される。すなわち、コントローラ160は、切換位置信号L1によって、アウトリガ用切換制御弁82の作動内容(切換位置)を把握することが可能である。
【0033】
第1電磁切換弁820は、アウトリガ用切換制御弁82から流入した圧油の給油先として、各横アウトリガシリンダ36RF~36LR、又は、各縦アウトリガシリンダ37RF~37LRを選択する制御弁である。
具体的に、第1電磁切換弁820は、コントローラ160から入力された切換制御信号Actr2(
図5参照)に応じて、各横アウトリガシリンダ36RF~36LR、又は、各縦アウトリガシリンダ37RF~37LRに対する圧油の油路を切り換える。切換制御信号Actr2は、操作部11が有するアウトリガ切換スイッチ(図示略)の操作に応じて出力される信号である。
【0034】
旋回用切換制御弁83は、操作部11が有する制御弁操作レバーの操作量に応じて、又は、遠隔操作装置162の操作に応じてコントローラ160から入力された作動信号Tctr(
図5参照)に応じて、旋回用油圧モータ30に圧油を流入させる。
また、旋回用切換制御弁83は、旋回用切換制御弁83の切換位置を検出する差動トランス(図示略)を備える。
図5に示すように、差動トランスで検出された切換位置を示す切換位置信号L2は、コントローラ160へと入力される。すなわち、コントローラ160は、切換位置信号L2によって、旋回用切換制御弁83の作動内容(切換位置)を把握することが可能である。
【0035】
ブーム伸縮用切換制御弁84は、操作部11が有する制御弁操作レバーの操作量に応じて、又は遠隔操作装置162の操作に応じてコントローラ160から入力された作動信号Bctr1(
図5参照)に応じて、第2電磁切換弁840に圧油を流入させる。
また、ブーム伸縮用切換制御弁84は、ブーム伸縮用切換制御弁84の切換位置を検出する差動トランス(図示略)を備える。
図5に示すように、差動トランスで検出された切換位置を示す切換位置信号L3は、コントローラ160へと入力される。すなわち、コントローラ160は、切換位置信号L3によって、ブーム伸縮用切換制御弁84の作動内容(切換位置)を把握することが可能である。
【0036】
第2電磁切換弁840は、圧油の給油先として、起伏ブーム伸縮用油圧シリンダ31、又は、折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ32を選択する制御弁である。
具体的に、第2電磁切換弁840は、コントローラ160から入力された切換制御信号Bctr3(
図5参照)に応じて、起伏ブーム伸縮用油圧シリンダ31、又は折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ32に対する圧油の油路を切り換える。切換制御信号Bctr3は、操作部11が有する伸縮ブーム切換スイッチ(図示略)の操作、又は操作信号Rctrに応じて出力される信号である。
【0037】
ウインチ用切換制御弁85は、操作部11が有する制御弁操作レバーの操作量、又は、遠隔操作装置162の操作に応じてコントローラ160から出力される作動信号Wctr(
図5参照)に応じて、ウインチ用油圧モータ33に圧油を流入させる。
また、ウインチ用切換制御弁85は、ウインチ用切換制御弁85の切換位置を検出する差動トランス(図示略)を備える。
図5に示すように、差動トランスで検出された切換位置を示す切換位置信号L4は、コントローラ160へと入力される。すなわち、コントローラ160は、切換位置信号L4によって、ウインチ用切換制御弁85の作動内容(切換位置)を把握することが可能である。
【0038】
ブーム起伏用切換制御弁86は、コントローラ160から入力された作動信号Bctr2(
図5参照)に応じて、第3電磁切換弁860に圧油を流入させる。作動信号Bctr2は、操作部11が有する制御弁操作レバーの操作量、又は、遠隔操作装置162の操作に応じて出力される信号である。
また、ブーム起伏用切換制御弁86は、ブーム起伏用切換制御弁86の切換位置を検出する差動トランス(図示略)を備える。
図5に示すように、差動トランスで検出された切換位置を示す切換位置信号L5は、コントローラ160へと入力される。すなわち、コントローラ160は、切換位置信号L5によって、ブーム起伏用切換制御弁86の作動内容(切換位置)を把握することが可能である。
【0039】
第3電磁切換弁860は、ブーム起伏用切換制御弁86から流入した圧油の給油先として、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34、又は、折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35を選択する制御弁である。
具体的に、第3電磁切換弁860は、コントローラ160から入力された切換制御信号Bctr4(
図5参照)に応じて、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34、又は折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35に対する、圧油の油路を切り換える。切換制御信号Bctr4は、オペレータの手動操作による、操作部11が有する起伏ブーム切換スイッチ(図示略)の操作、又は操作信号Rctrに応じて出力される信号である。
【0040】
また、第3電磁切換弁860と起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34とを接続する油路には、ストップバルブSBと、チェックバルブCBが配置されている。
ストップバルブSBは、オペレータ等による手動操作によって、開放状態、又は、閉鎖状態となる。
ストップバルブSBの開放状態では、第3電磁切換弁860から起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34への圧油の油路が開放される。したがって、ストップバルブSBの開放状態では、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34へ圧油を供給する圧油供給源を形成する油圧ポンプ60と、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34との油路を開放することとなる。
【0041】
一方、ストップバルブSBの閉鎖状態では、第3電磁切換弁860から起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34への圧油の油路が閉鎖される。したがって、ストップバルブSBの閉鎖状態では、油圧ポンプ60と起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34との油路を閉鎖することとなる。
すなわち、手動操作によってストップバルブSBを閉鎖状態とすることにより、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34を伸長させることで起伏ブーム7が変位する方向への、起伏ブーム7の変位を規制することが可能となる。
チェックバルブCBは、ストップバルブSBと並列に配置されており、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34から第3電磁切換弁860への圧油の移動を防止する。したがって、チェックバルブCBは、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34から油圧ポンプ60への圧油の逆流を防止する。
【0042】
横アウトリガシリンダ切換弁87は、各横アウトリガシリンダ36RF~36LRに対し、圧油を給油するか否かを選択する制御弁である。
具体的に、横アウトリガシリンダ切換弁87は、コントローラ160から入力された作動信号Actr3~6(
図5参照)に応じて、各横アウトリガシリンダ36RF~36LRに対する圧油の油路を切り換える。作動信号Actr3~6は、操作部11が有する横アウトリガシリンダ選択スイッチ(図示略)の操作に応じて出力される信号である。
【0043】
縦アウトリガシリンダ切換弁88は、各縦アウトリガシリンダ37RF~37LRに対し、圧油を給油するか否かを選択する制御弁である。
具体的に、縦アウトリガシリンダ切換弁88は、コントローラ160から入力された作動信号Actr7~10(
図5参照)に応じて、各縦アウトリガシリンダ37RF~37LRに対する圧油の油路を切り換える。作動信号Actr7~10は、操作部11が有する縦アウトリガシリンダ選択スイッチ(図示略)の操作に応じて出力される信号である。
【0044】
走行用切換制御弁89には、油圧ポンプ60から吐出された圧油が供給される。走行用切換制御弁89に供給された圧油は、走行操作レバーがニュートラルの状態のときに、走行用切換制御弁89を素通りして、主管路62に流れ込み、主管路62を介してコントロールバルブ15cへと向けて供給される。また、油圧ポンプ60から吐出された圧油は、戻り管路63を介してタンク64に戻る。
【0045】
<コントロールボックス>
以下、
図1から
図4を参照しつつ、
図5を用いて、コントロールボックス16の詳細な構成について説明する。
コントロールボックス16は、
図5に示すコントローラ160を収容している。また、コントロールボックス16には、タワークレーン1の動作状態を示す数字コードを表示することが可能な、コード表示部(図示略)が取り付けられている。
コード表示部は、例えば、二桁の数字を表示することが可能な7セグメントLED(Light Emitting Diode)を用いて形成されている。7セグメントLEDに表示する数字は、コントローラ160から出力される指令信号に応じて表示される。
【0046】
コントローラ160には、信号線(図示略)を介して受信機161が接続されている。
受信機161は、コントロールボックス16の上部に配置されている。また、受信機161は、遠隔操作装置162から無線送信された遠隔操作信号Rctrを受信する。そして、受信機161は、受信した遠隔操作信号Rctrを、信号線を介してコントローラ160に入力する。
【0047】
遠隔操作装置162は、図示を省略するが、遠隔操作装置162の筺体に設けられた各種操作レバーや各種操作スイッチにより、操作部11の操作レバー及び操作スイッチと同等の操作が可能に構成されている。また、遠隔操作装置162は、操作レバー及び操作スイッチの操作に応じた遠隔操作信号Rctrを、無線送信するように構成されている。これにより、遠隔操作装置162は、クレーンの操作を遠隔で行うことが可能である。
また、コントローラ160には、操作部11からの操作信号Ctr、遠隔操作装置162からの遠隔操作信号Rctr、各種切換制御弁82~86及びアクセルシリンダ81からの切換位置信号L1~L6等が入力される。そして、コントローラ160は、入力された信号に応じて、タワークレーン1が備える油路切換用の電磁弁等、各種の電気装置を作動制御する。
【0048】
また、コントローラ160は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、時間計測用のタイマとを備える。CPUは、所定の制御プログラムに基づいて、各種演算処理を行う。ROMは、制御プログラムを含む各種データを格納している。RAMは、ROM等から読み出したデータやCPUの演算過程で必要な演算結果を格納する。
さらに、コントローラ160は、入出力I/F(インターフェース)と、データ転送用の各種内外バスとを備える。入出力I/Fは、操作部11、受信機161、遠隔操作装置162、コントロールバルブ15c等を含めた各装置に対して、データの入出力を媒介する。各種内外バスは、CPU、ROM、RAM及びタイマとの間を接続する。また、各種内外バスには、入出力I/Fを介して各装置が接続されている。
【0049】
そして、電源を投入すると、ROM等に記憶されたBIOS等のシステムプログラムが、ROMに予め記憶された各種の制御プログラムをRAMにロードする。さらに、CPUが、RAMにロードされたプログラムに記述された命令にしたがって、各種リソースを駆使して演算処理を行うことで、各装置を作動制御するための各機能を、ソフトウェア上で実現する。
また、コントローラ160には、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を経由して、荷重検出部90が検出した、折曲げブーム8に加わる荷重が入力される。なお、折曲げブーム8に加わる荷重は、タワークレーン1の吊上げ荷重に対応する値である。荷重検出部90は、例えば、ロードセルを用いて形成されている。
【0050】
さらに、コントローラ160には、例えば、CAN通信を経由して、折曲げブーム角検出部92が検出した、折曲げブーム8の角度が入力される。折曲げブーム角検出部92は、例えば、折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ32の変位を検出するポテンショメータを用いて形成する。
また、コントローラ160には、例えば、CAN通信を経由して、第1近接スイッチ56Rから検知信号SW1、第2近接スイッチ57Rから検知信号SW2、第3近接スイッチ58Rから検知信号SW3が入力される。同様に、第4近接スイッチ56Lから検知信号SW4、第5近接スイッチ57Lから検知信号SW5、第6近接スイッチ58Lから検知信号SW6が入力される。
【0051】
検知信号SW1及び検知信号SW4は、起伏ブーム7の起立角度を95°に設定した場合において、コラム5及び起立角度規制部材20のうち、起伏ブーム7の起立角度95°に対応する位置に形成されたピン穴(図示略)に、角度規制ピン(図示略)が差し込まれている状態で出力される信号である。
検知信号SW2及び検知信号SW5は、起伏ブーム7の起立角度を90°に設定した場合において、コラム5及び起立角度規制部材20のうち、起伏ブーム7の起立角度90°に対応する位置に形成されたピン穴(図示略)に、角度規制ピン(図示略)が差し込まれている状態で出力される信号である。
検知信号SW2及び検知信号SW5は、起伏ブーム7の起立角度を85°に設定した場合において、コラム5及び起立角度規制部材20のうち、起伏ブーム7の起立角度85°に対応する位置に形成されたピン穴(図示略)に、角度規制ピン(図示略)が差し込まれている状態で出力される信号である。
【0052】
なお、起立角度規制部材20は、起伏ブーム7の格納状態において、二つのプレートが、連結部を中心として「くの字」状に折れ曲がった状態となるように構成されている。そして、例えば、起伏ブーム7の起立角度が95°である場合、格納状態の起伏ブーム7を起立させるとともに連結部を中心として形状が変化し、起伏ブーム7の起立角度が95°となると、直線状に形状が変化する。このとき、コラム5と起伏ブーム7との間で斜めに突っ張り、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34の伸長動作に対して、二つのプレートが変位しない状態となるため、起伏ブーム7が95°の起立角度に規制される。なお、起伏ブーム7の起立角度が90°である場合と、起伏ブーム7の起立角度が85°である場合についても、同様である。
【0053】
<油圧アクチュエータ>
以下、
図1から
図5を参照して、油圧アクチュエータ(旋回用油圧モータ30、起伏ブーム伸縮用油圧シリンダ31、折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ32、ウインチ用油圧モータ33、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34、折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35、走行用モータ38)について説明する。
油圧アクチュエータは、それぞれ、
図4に示すように、圧油供給装置15bからコントロールバルブ15cを介して供給された圧油により作動する。
【0054】
旋回用油圧モータ30は、コラム5の旋回を行うための油圧アクチュエータである。
起伏ブーム伸縮用油圧シリンダ31は、起伏ブーム7の伸縮を行うための油圧アクチュエータである。
折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ32は、例えば、チルトシリンダを用いて形成されており、折曲げブーム8の伸縮を行うための油圧アクチュエータである。
ウインチ用油圧モータ33は、ウインチ12の巻上げ及び巻下げを行うための油圧アクチュエータである。
【0055】
起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34は、例えば、デリックシリンダを用いて形成されており、起伏ブーム7を伸縮させるための油圧アクチュエータである。
また、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34は、
図4に示すように、第1起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34Rと、第2起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34Lとの、一対の油圧シリンダから構成される。
折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35は、例えば、チルトシリンダを用いて形成されており、折曲げブーム8を伸縮させるための油圧アクチュエータである。
また、折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35は、第1折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35Rと、第2折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35Lとの、一対の油圧シリンダから構成される。
【0056】
走行用モータ38は、走行装置3を駆動するための油圧アクチュエータである。
また、走行用モータ38は、
図4に示すように、走行用モータ38Lと、走行用モータ38Rを備える。走行用モータ38Lは、走行装置3に装着された左の履帯を回転させるモータである。走行用モータ38Rは、走行装置3に装着された右の履帯を回転させるモータである。走行用モータ38L及び走行用モータ38Rは、圧油供給装置15bから、走行用切換制御弁89を介して、圧油を個別に供給することにより、それぞれが独立して作動する。
これにより、タワークレーン1は、圧油供給装置15bを作動させ、左右一対の走行操作レバーを同時に前進又は後退操作することで、走行装置3を駆動させて前進方向又は後退方向への走行が可能である。また、右折又は左折する場合、左右一対の走行操作レバーを個別に前進又は後退操作することで、対応する左右の履帯を個別に回転させ、左右の履帯に発生させる速度差によって旋回が可能である。
【0057】
(起伏ブーム7の起立動作)
以下、車幅方向の右側から見た場合における、起伏ブーム7がブーム格納状態から起立状態へと移行する動作である起立動作について説明する。なお、実施形態では、起伏ブーム7の起立角度として、3種類の起立角度(95°、90°、85°)を設定した場合について説明する。
起伏ブーム7を起立させる際には、第3電磁切換弁860を、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34の側へ切り換える。第3電磁切換弁860の切換操作は、オペレータが、操作部11の起伏ブーム切換スイッチ(図示略)を、起伏ブーム起伏操作モード側に切り換えることで行う。
そして、起伏ブーム7の起立角度を、3種類の起立角度から、作業環境に合った起立角度に選択する。
【0058】
図2に示すように、起立角度90°のときは、起伏ブーム7が前後方向へ傾斜せずに直立し、起立角度95°のときは、起伏ブーム7が前方へ5°傾斜して起立し、起立角度85°のときは、起伏ブーム7が後方へ5°傾斜して起立した状態となる。なお、
図2には、起立角度95°における起伏ブーム7の起立状態を実線で示し、起立角度90°と起立角度85°における起伏ブーム7の起立状態を二点鎖線で示す。
【0059】
そのため、起立角度90°を基準として、起立角度95°の状態では、折曲げブーム8の先端部が、起立角度90°の状態よりも前方へと届くため、吊荷作業時においては、起立角度90°の状態よりも前方で荷を吊ることが可能となる。また、起立角度85°の状態では、起伏ブーム7が、コラム5の旋回中心の真上に位置する。そのため、建物の中にタワークレーン1を配置して、屋根に設けた開口部からブームを突き出して作業を行う場合に、開口部の径を小さくすることが可能となる。また、起立角度85°の状態では、起立角度95°及び90°の状態よりも大きい質量の荷を吊ることが可能である。
なお、タワークレーン1は、例えば、
図3に示す作業姿勢において、フック14を介して荷を吊るして荷役作業を行う。そのため、荷を吊った際に、起伏ブーム7には、車両前後方向の前方に引っ張られる力が加わる。なお、
図3には、起伏ブーム7及び折曲げブーム8を、最も伸長させた状態を示す。
【0060】
タワークレーン1を
図3に示す作業姿勢とするまでには、まず、
図1に示す走行姿勢で走行モードを実施して、タワークレーン1を作業現場へ移動させる。なお、走行モードとは、走行装置3により、タワークレーン1を走行させるモードである。次に、アウトリガモードを実施して各アウトリガ9RF~9LRを設置する。なお、アウトリガモードとは、各横アウトリガシリンダ36RF~36LRと、各横アウトリガシリンダ36RF~36LRを駆動させるモードである。その後、Zモードを実施して、起伏ブーム7を起立させ、さらに、折曲げブーム8を水平以上の仰角まで起立させて、タワークレーン1を作業姿勢とする。なお、Zモードとは、起伏ブーム7と折曲げブーム8を、オペレータによる操作に応じて変位させるモードである。
また、クレーン装置6を用いた作業を終了した後、Zモードを実施して、作業姿勢に展開していた起伏ブーム7と折曲げブーム8を格納する。その後、脱出モードを実施して、走行装置3により、タワークレーン1を作業現場から脱出させるために、自動で走行させる。なお、脱出モードとは、走行装置3により、自動で走行させるモードである。
【0061】
(自動加圧処理)
以下、
図1から
図5を参照しつつ、
図6を用いて、コントローラ160で実行する自動加圧処理について説明する。自動加圧処理は、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34へ供給する圧油を制御する処理であり、所定のサンプリング周期で繰り返し行われる処理である。
また、自動加圧処理は、作業モードの実施中に、予め設定した条件である自動加圧条件が成立すると、作業モードから自動加圧モードへ移行する処理である。
作業モードは、起伏ブーム7の起立動作を完了した後に、オペレータによる折曲げブーム8の操作に応じて、折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ32及び折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35へ、圧油を供給するモードである。
【0062】
自動加圧モードは、オペレータによる折曲げブーム8の操作に応じた折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ32及び折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35への圧油の供給よりも優先させて、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34を伸長させるように、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34へ圧油を供給するモードである。
なお、自動加圧モードの実施中は、遠隔操作装置162から遠隔操作信号Rctrが送信された場合であっても、遠隔操作信号Rctrに応じた動作は実施しない。また、自動加圧モードの実施中は、アウトリガ用切換制御弁82、旋回用切換制御弁83、ブーム伸縮用切換制御弁84、ウインチ用切換制御弁85、ブーム起伏用切換制御弁86がそれぞれ有するスプールの位置を中立位置に維持するために、手動操作を不可能とする。
【0063】
自動加圧処理は、
図6に示すように、メインループ(エンジン15aの駆動中等、タワークレーン1を作動させている状態における、各種装置を制御する処理)の実施中に実行する。
まず、ステップS10において、作業モードの実施中であるか否かを判定する。
そして、作業モードが実施中であると判定した場合(Yes)は、ステップS11に移行する。一方、作業モードが実施中ではないと判定した場合(No)は、メインループに戻る。
【0064】
なお、「作業モードが実施中ではないと判定した場合」とは、アウトリガモード、脱出モード、Zモード、走行モードのいずれかが実施中の場合である。
ステップS11では、タイマにより、作業モードに移行した時点から経過した時間、または、以前に自動加圧モードへ移行した時点から経過した時間を計測する。さらに、ステップS11では、作業モードに移行してから予め設定した第一時間が経過しているか否かの判定、又は、以前に自動加圧モードに移行してから予め設定した第二時間が経過しているか否かの判定を行う。
【0065】
なお、実施形態では、一例として、第一時間及び第二時間を、30分とした場合について説明する。したがって、ステップS11では、作業モードへ移行した時点から経過した時間、又は、以前に自動加圧モードへ移行した時点から経過した時間が、30分に達しているか否かを判定する。
そして、作業モードへ移行した時点から経過した時間が30分に達している、又は、以前に自動加圧モードへ移行した時点から経過した時間が30分に達していると判定した場合(Yes)は、ステップS12に移行する。一方、作業モードへ移行した時点から経過した時間が30分に達しておらず、また、以前に自動加圧モードへ移行した時点から経過した時間が30分に達していないと判定した場合(No)は、メインループに戻る。すなわち、自動加圧条件は、作業モードに移行してから第一時間が経過したときに成立する条件を含む。これに加え、自動加圧条件は、自動加圧モードに移行してから第二時間が経過したときに成立する条件を含む。
【0066】
ステップS12では、タイマにより、操作部11又は遠隔操作装置162が操作されていない時間が、予め設定した第三時間に亘って継続しているか否かを判定する。すなわち、ステップS12では、作業モードの実施中に、オペレータによる操作が行われていない時間が第三時間に亘って継続しているか否かを判定する。
なお、実施形態では、一例として、第三時間を、30秒とした場合について説明する。したがって、ステップS12では、操作部11又は遠隔操作装置162が操作されていない時間が、30秒継続しているか否かを判定する。
そして、操作部11又は遠隔操作装置162が操作されていない時間が、30秒継続していると判定した場合(Yes)は、ステップS13に移行する。一方、操作部11又は遠隔操作装置162が操作されていない時間が、30秒未満であると判定した場合(No)は、メインループに戻る。すなわち、自動加圧条件は、作業モードの実施中に、オペレータによる操作が行われていない時間が第三時間に亘って継続したときに成立する条件を含む。
【0067】
ステップS13では、折曲げブーム8に加わっている荷重が、予め設定した荷重以下であるか否かを判定する。すなわち、ステップS13では、タワークレーン1の吊上げ荷重が予め設定した荷重以下であるか否かを判定する。
なお、実施形態では、一例として、予め設定した荷重を、無負荷の状態と同等である重さを想定して、30kgとした場合について説明する。したがって、ステップS13では、折曲げブーム8に加わっている荷重が、30kg以下であるか否かを判定する。
そして、折曲げブーム8に加わっている荷重が、30kg以下であると判定した場合(Yes)は、ステップS14に移行する。一方、折曲げブーム8に加わっている荷重が、30kgを超えていると判定した場合(No)は、メインループに戻る。すなわち、自動加圧条件は、折曲げブーム8に加わる荷重が予め設定した荷重以下であるときに成立する条件を含む。したがって、折曲げブーム8に加わる荷重が予め設定した荷重以下であるときに成立する条件とは、折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35が縮小する方向とは逆方向に加わる圧力が、予め設定した一定の圧力以下に減圧したときに成立する条件である。
【0068】
ステップS14では、遠隔操作装置162から、エンジン15aの停止指令が入力されているか否かを判定する。
そして、遠隔操作装置162から、エンジン15aの停止指令が入力されていると判定した場合(Yes)は、メインループに戻る。一方、遠隔操作装置162から、エンジン15aの停止指令が入力されていないと判定した場合(No)は、ステップS15に移行する。
したがって、自動加圧処理では、遠隔操作装置162から入力されている指令によってエンジン15aを停止している間は、自動加圧モードには移行しない。すなわち、ブーム起伏用切換制御弁86は、作業モードの実施中に、起伏ブーム7の停止命令が自動的に出力されている状態では、自動加圧モードへ移行しない。
【0069】
ステップS15では、異常が発生している状態であるか否かを判定する。なお、異常が発生している状態とは、安全装置が解除されている状態で作業モードが実施中である状態や、エラーが発生している状態で作業モードが実施中である状態を含む。
また、異常が発生している状態には、Zモードの実施中、アウトリガモードの実施中、走行モードの実施中、脱出モードの実施中、非常操作スイッチON時、安全装置解除スイッチON時、停止命令が発生している状態を含む。非常操作スイッチON時とは、非常操作スイッチが操作されており、非常操作が許容されている状態である。安全装置解除スイッチON時とは、安全装置解除スイッチが操作されており、安全装置が解除されている状態である。停止命令とは、タワークレーン1に対し、動作を停止する命令である。
【0070】
そして、異常が発生している状態であると判定した場合(Yes)は、メインループに戻る。一方、異常が発生している状態ではないと判定した場合(No)は、ステップS16に移行する。すなわち、自動加圧処理では、Zモードの実施中、アウトリガモードの実施中、走行モードの実施中、脱出モードの実施中、非常操作スイッチON時、安全装置解除スイッチON時、停止命令が発生している状態では、自動加圧モードには移行しない。
【0071】
ステップS16では、作業モードから自動加圧モードへ移行させる。その後、ステップS17に移行する。
また、自動加圧モードの実施中には、7セグメントLEDに「24」を点灯させることで、自動加圧モードの実施中であることを示す数字コードを表示する。
ここで、上述したように、チェックバルブCBは、ストップバルブSBと並列に配置されており、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34から油圧ポンプ60への圧油の逆流を防止する。すなわち、ストップバルブSBとチェックバルブCBは、ストップバルブSBを閉鎖状態としたときに、自動加圧モードにおいて起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34へ圧油を送るバイパス回路を形成する。
【0072】
ステップS17では、作業モードから自動加圧モードへ移行した時点から、予め設定した第四時間が経過しているか否かを判定する。
なお、実施形態では、一例として、第四時間を、2秒とした場合について説明する。したがって、ステップS17では、作業モードから自動加圧モードへ移行した時点から経過した時間が、2秒に達しているか否かを判定する。
そして、作業モードから自動加圧モードへ移行した時点から、2秒が経過していると判定した場合(Yes)は、ステップS22に移行する。一方、作業モードから自動加圧モードへ移行した時点から、2秒が経過していないと判定した場合(No)は、ステップS18に移行する。
【0073】
なお、ステップS17で判定する2秒は、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34に圧油を供給することで、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34の内圧が回復し、起伏ブーム7の起立状態を回復させるために必要十分な時間である。
ステップS18では、起伏ブーム切換スイッチの操作状態に関わらず、起伏ブーム起伏操作モードに切り換える。すなわち、自動加圧モードの実施中には、起伏ブーム切換スイッチの操作状態に関わらず、折曲ブーム起伏操作モード及び起伏ブーム起伏操作モードのうち、起伏ブーム起伏操作モードへ強制的に切り換える。その後、ステップS19に移行する。
【0074】
ステップS19では、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34へ、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34を伸長させるように圧油を供給する指令信号を出力し、他の油圧アクチュエータへ出力する指令信号は全て「0」とする。すなわち、ステップS19では、複数の油圧アクチュエータのうち、起伏ブーム7のみへ、操作指令を出力する。その後、ステップS20に移行する。
ステップS20では、オペレータによる手動操作が行われたか否かを判定する。
そして、オペレータによる手動操作が行われたと判定した場合(Yes)は、ステップS21に移行する。一方、オペレータによる手動操作が行われていないと判定した場合(No)は、ステップS17に移行する。
【0075】
ステップS21では、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34への圧油の供給を中断する。さらに、7セグメントLEDに「25」を点灯させることで、自動加圧モードの実施中に手動操作が行われたことに対する警告を示す数字コードを表示する。その後、ステップS22に移行する。
ステップS22では、自動加圧モードを終了させる。その後、ステップS23に移行する。
ステップS23では、起伏ブーム7の操作量を「0」とする。すなわち、ステップS23では、起伏ブーム7の動作を停止させる。その後、ステップS24に移行する。
ステップS24では、オペレータによる折曲げブーム8の操作が可能な状態に切り換える。その後、メインループに戻る。
【0076】
なお、自動加圧処理では、ステップS10からステップS20の処理に加え、自動加圧モードの実施中に、折曲げブーム角検出部92によって検出した折曲げブーム8の角度が、予め設定した角度(例えば、5°)増加した場合には、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34への圧油の供給を中断する。これに加え、自動加圧モードを終了させるまで、7セグメントLEDに「25」を点滅させることで、折曲げブーム8の角度が増加したことに対する警告を示す数字コードを表示する。
折曲げブーム8の角度が増加したことを検出する理由は、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34を伸長させるように、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34へ圧油を供給すると、相対的に、折曲げブーム8の角度が伏方向に推移するためである。
【0077】
また、折曲げブーム8の角度が増加したときに、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34への圧油の供給を中断する理由は、電源の断線等によって、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34及び折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35への油路切換用の電磁弁が作動しなかった場合、自動加圧モードを実施することで、折曲げブーム8が意図せずに起き上がることになり、作業の危険性が増加する可能性があるためである。
以上により、自動加圧処理において、ブーム起伏用切換制御弁86は、自動加圧モードの実施中に折曲げブーム8の起立動作を検出すると、自動加圧モードによる起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34への圧油の供給を停止する。
【0078】
また、自動加圧処理では、ステップS10からステップS20の処理に加え、起伏ブーム7の起伏角度が予め設定した角度(例えば、85°)以上であるとともに、エンジン15aが停止している状態において、エンジン15aが始動するとともにパワーテイクオフが作動すると、作業モードから自動加圧モードへ移行させる。
したがって、自動加圧条件は、起伏ブーム7の起伏角度が予め設定した角度以上であるとともに、圧油を供給する圧油供給装置の駆動源であるエンジン15aが停止している状態において、エンジン15aが始動するとともにパワーテイクオフが作動するときに成立する条件を含む。
【0079】
さらに、自動加圧処理では、ステップS10からステップS20の処理に加え、停止しているエンジン15aの始動が、遠隔操作装置162によるオペレータの遠隔操作により行われると、作業モードから自動加圧モードへ移行させる。
したがって、自動加圧条件は、停止しているエンジン15aの始動が、遠隔操作装置162によるオペレータの遠隔操作により行われるときに成立する条件を含む。
なお、自動加圧モードの実施中に、オペレータによる操作入力が行われた場合に、オペレータによる操作入力と、自動加圧モードによる圧油の供給とを、エラー扱いとして共にキャンセルする構成としてもよい。
【0080】
<請求項と実施形態との対応>
タワークレーン1は、作業機に対応する。起伏ブーム7は、タワークレーン1の基台へ変位可能に取り付けられている第一構成部材に対応する。起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34は、伸長又は縮小することで起伏ブーム7を変位させる第一油圧シリンダに対応する。折曲げブーム8は、起伏ブーム(第一構成部材)の先端部へ起伏自在に取り付けられている第二構成部材に対応する。折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ32及び折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35は、伸長又は縮小することで折曲げブーム8を変位させ、第一油圧シリンダとは別の油圧シリンダである第二油圧シリンダに対応する。ブーム起伏用切換制御弁86は、油圧制御部に対応する。コントローラ160と、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34と、ブーム起伏用切換制御弁86は、起伏ブーム7の動作を制御する油圧機器制御装置に対応する。
【0081】
<実施形態の作用及び効果>
実施形態の油圧機器制御装置であれば、以下の作用及び効果を奏することが可能である。
(1)伸長又は縮小することで構成部材を変位させる油圧シリンダと、油圧シリンダに供給する圧油を制御する油圧制御部を備える。そして、油圧制御部は、オペレータによる構成部材の操作に応じて油圧シリンダへ圧油を供給する作業モードの実施中に、予め設定した条件である自動加圧条件が成立すると、自動加圧モードへ移行する。自動加圧モードは、オペレータによる構成部材の操作に応じた油圧シリンダへの圧油の供給よりも優先させて、油圧シリンダを伸長させるように、油圧シリンダへ圧油を供給するモードである。これに加え、構成部材は、自動加圧モードにおいて圧油が供給される第一油圧シリンダによって変位する第一構成部材と、作業モードの実施中にオペレータによる操作に応じて圧油が供給され、且つ第一油圧シリンダとは別の油圧シリンダである第二油圧シリンダによって変位する第二構成部材とを含む。
【0082】
このため、第一油圧シリンダの内圧が減少した状態であっても、自動加圧条件が成立すると、第一油圧シリンダを伸長させるときと同じ方向で、第一油圧シリンダへ圧油を供給する。これにより、第一油圧シリンダの内圧が減少した状態であっても、第一油圧シリンダを伸長させるときと同じ方向で第一油圧シリンダへ圧油を供給することによって、第一油圧シリンダの内圧が回復する。
その結果、第一構成部材に、オペレータの意図と異なる挙動が発生することを抑制することが可能となる。
【0083】
(2)第一油圧シリンダを伸長させることで第一構成部材が変位する方向への第一構成部材の変位を規制する、ストッパ部材を備える。
その結果、第一油圧シリンダのストロークエンドにて、第一油圧シリンダに引っ張り方向への荷重が加わることを防止することが可能となり、第一構成部材の過度な変位を規制して、第一構成部材の破損を抑制することが可能となる。
【0084】
(3)第一構成部材が、基台へ起伏可能に取り付けられている起伏ブーム7であり、第二構成部材が、起伏ブーム7の先端部へ起伏自在に取り付けられている折曲げブーム8である。
その結果、起伏ブーム7に、オペレータの意図と異なる挙動が発生することを抑制することが可能となる。
【0085】
(4)自動加圧条件が、折曲げブーム8に加わる荷重が予め設定した荷重以下であるときに成立する条件を含む。
その結果、タワークレーン1の吊上げ荷重が大きい場合には、自動加圧モードへ移行しないため、安全性を向上させることが可能となる。
【0086】
(5)油圧制御部は、作業モードの実施中に折曲げブーム8の停止命令が自動的に出力されている状態では、自動加圧モードへ移行しない。
その結果、クレーン装置6の作動が許可されていない状態では、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34を伸長させないため、作業等の安全性を向上させることが可能となる。
【0087】
(6)油圧制御部は、自動加圧モードの実施中に折曲げブーム8の起立動作を検出すると、自動加圧モードによる第一油圧シリンダへの圧油の供給を停止する。
その結果、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34及び折曲げブーム起伏用油圧シリンダ35への油路切換用の電磁弁に作動不良が発生した場合であっても、電磁弁の作動不良によって発生する折曲げブーム8の誤動作を防止することが可能となる。
【0088】
(7)自動加圧条件は、起伏ブーム7の起伏角度が予め設定した角度以上であるとともにエンジン15aが停止している状態において、エンジン15aが始動するとともにパワーテイクオフが作動するときに成立する条件を含む。
その結果、エンジン15aが再始動するとともにパワーテイクオフが作動した状態であっても、起伏ブーム7の起伏角度が予め設定した角度から増加することを抑制することが可能となるため、安全性を向上させることが可能となる。
【0089】
(8)自動加圧条件は、停止しているエンジン15aの始動が、遠隔操作装置162によるオペレータの遠隔操作により行われるときに成立する条件を含む。
その結果、安全性を向上させることが可能となる。
【0090】
(9)自動加圧条件は、作業モードに移行してから、予め設定した第一時間が経過したときに成立する条件を含む。
その結果、作業モードに移行してから第一時間が経過すると、第一油圧シリンダの内圧が低下している状態で、オペレータによる第二構成部材の操作に応じた第二油圧シリンダへの圧油の供給よりも優先させて、第一油圧シリンダを伸長させるように、第一油圧シリンダへ圧油を供給する。これにより、第一構成部材に、オペレータの意図と異なる挙動が発生することを抑制することが可能となる。
【0091】
(10)自動加圧条件は、自動加圧モードに移行してから、予め設定した第二時間が経過したときに成立する条件を含む。
その結果、自動加圧モードに移行してから第二時間が経過すると、第一油圧シリンダの内圧が低下している状態で、オペレータによる第二構成部材の操作に応じた第二油圧シリンダへの圧油の供給よりも優先させて、第一油圧シリンダを伸長させるように、第一油圧シリンダへ圧油を供給する。これにより、第一構成部材に、オペレータの意図と異なる挙動が発生することを抑制することが可能となる。
【0092】
(11)自動加圧条件は、作業モードの実施中にオペレータによる操作が行われていない時間が、予め設定した第三時間に亘って継続したときに成立する条件を含む。
その結果、オペレータによる折曲げブーム8の操作中に、起伏ブーム7にオペレータの意図とは異なる挙動が発生することを防止することが可能となり、荷役作業が妨げられることを防止することが可能となる。
【0093】
(12)第一油圧シリンダへ圧油を供給する油圧ポンプ60と第一油圧シリンダとの油路を開放又は閉鎖するストップバルブSBと、ストップバルブSBと並列に配置され、且つ第一油圧シリンダから油圧ポンプ60への圧油の逆流を防止するチェックバルブCBを備える。これに加え、油圧制御部は、第一構成部材を変位させた後は、ストップバルブSBにより、油圧ポンプ60と第一油圧シリンダとの油路を閉鎖させる。
その結果、第一構成部材を変位させた後は、オペレータ等による手動操作によって、ストップバルブSBにより油圧ポンプ60と第一油圧シリンダとの油路を閉鎖させる。これに加え、チェックバルブCBによって、第一油圧シリンダから油圧ポンプ60への圧油の逆流を防止することが可能となる。これにより、第一構成部材を変位させた後に、第一構成部材がさらに変位することを防止することが可能となり、安全性を向上させることが可能となる。
【0094】
<変形例>
(1)実施形態では、油圧機器制御装置を備える作業機として、タワークレーン1を例に説明したが、これに限定するものではない。すなわち、油圧機器制御装置は、例えば、起伏ブーム7等の起伏動作をすると共に、作業時に起立状態となる構成部材を備えた作業機であれば、タワークレーン1に限らず、他のクレーンやクレーン以外の種々の作業機に適用可能である。なお、作業機としては、照明装置等、目的地に移動して設置した状態で作業(例えば、対象物に照明を当てるという作業)が行われるものや、据え置きした状態で作業(例えば、対象物を支持する作業)が行われるもの等も含む。
【0095】
(2)実施形態では、構成部材として、起伏ブーム7を例に説明したが、これに限定するものではない。すなわち、構成部材は、油圧シリンダが伸長又は縮小することで変位する部材であればよく、例えば、折曲げブーム8としてもよい。
また、構成部材は、例えば、タワークレーン1が備えるアウトリガ装置9でもよい。
なお、これらのアウトリガ装置9には、通常、ストッパ部材は備えていないが、例えば、アウトリガ装置9には、アウトリガ装置9が備える各横アウトリガシリンダ36RF~36LR、各縦アウトリガシリンダ37RF~37LRを伸長させたときに、構成部材が変位する方向への可動を規制するストッパ部材を備えていてもよい。
よって、構成部材は、タワークレーン1が備えるアウトリガ装置9で説明したが、これに限定するものでなく、例えば、ラフタークレーンが備えるアウトリガ装置にも適用が可能である。
【0096】
(3)実施形態では、油圧機器制御装置が、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34を伸長させることで起伏ブーム7が変位する方向への、起伏ブーム7の変位を規制するストッパ部材として、ストップバルブSBを備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、ストッパ部材として、起伏ブーム7の起立角度を規制する起立角度規制部材20(ロックプレート)を用いる構成としてもよい。
【0097】
(4)実施形態では、オペレータ等による手動操作によって、ストップバルブSBを、開放状態、又は、閉鎖状態とする構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、ストップバルブSBを、コントローラ160から入力された切換制御信号(図示略)によって、開放状態、又は、閉鎖状態とする構成としてもよい。この場合、コントローラ160から切換制御信号を入力してストップバルブSBを閉鎖状態とすることにより、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34を伸長させることで起伏ブーム7が変位する方向への、起伏ブーム7の変位を規制することが可能となる。
この構成であれば、コントローラ160と、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34と、ブーム起伏用切換制御弁86は、起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34を伸長させることで起伏ブーム7が変位する方向への、起伏ブーム7の変位を規制するストッパ部材を形成する。
【0098】
また、コントローラ160が、ストップバルブSBを閉鎖状態とする切換制御信号を出力するタイミングは、起伏ブーム7の状態を、格納状態等から、予め設定した起立角度の起立状態とした後である。すなわち、コントローラ160は、起伏ブーム7を変位させた後は、ストップバルブSBにより、油圧ポンプ60と起伏ブーム起伏用油圧シリンダ34との油路を閉鎖させる。
また、ストップバルブSBを、コントローラ160から入力された切換制御信号によって、開放状態、又は、閉鎖状態とする構成とした場合、自動加圧のタイミングのみ、ストップバルブSBを開放状態とすることで、チェックバルブCBを備えない構成とすることが可能となる。これにより、構成を簡略化することが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
1 タワークレーン(作業機)
2 シャーシフレーム
3 走行装置
4 ベース
5 コラム
6 クレーン装置
7 起伏ブーム
8 折曲げブーム
11 操作部
15a エンジン
15b 圧油供給装置
15c コントロールバルブ
32 折曲げブーム伸縮用油圧シリンダ
34 起伏ブーム起伏用油圧シリンダ
35 折曲げブーム起伏用油圧シリンダ
60 油圧ポンプ
62 主管路
63 戻り管路
64 タンク
80 クレーン用切換制御弁
81 アクセルシリンダ
82 アウトリガ用切換制御弁
83 旋回用切換制御弁
84 ブーム伸縮用切換制御弁
85 ウインチ用切換制御弁
86 ブーム起伏用切換制御弁
87 横アウトリガシリンダ切換弁
88 縦アウトリガシリンダ切換弁
90 荷重検出部
92 折曲げブーム角検出部
160 コントローラ
161 受信機
162 遠隔操作装置
180 メインリリーフ弁(アンロード弁)
181 アンロード弁作動用ソレノイド
SB ストップバルブ
CB チェックバルブ