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特開2022-68775荷受台を有する車両の安全装置、車両、並びに車両の荷受台昇降装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068775
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】荷受台を有する車両の安全装置、車両、並びに車両の荷受台昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/24 20060101AFI20220427BHJP
   B60P 1/44 20060101ALI20220427BHJP
   B60P 1/34 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B60Q1/24 C
B60P1/44 E
B60P1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177640
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】清藤 英樹
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA17
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA03
3K339BA09
3K339BA10
3K339BA30
3K339CA30
3K339EA01
3K339EA05
3K339EA09
3K339FA01
3K339FA04
3K339GA01
3K339GA03
3K339GB21
3K339GB22
3K339KA11
3K339KA37
3K339MC77
(57)【要約】
【課題】荷受台の展開時に、周囲に注意を喚起することができる荷受台を有する車両の安全装置、車両、並びに車両の荷受台昇降装置を提供することである。
【解決手段】荷受台7は、荷物の積み卸しをするときには車体1aの後方に張り出した状態で地面Gを占有する稼働姿勢を呈し、荷物の積み卸しをしないときには、車体1aの後方の地面Gを占有しない退避姿勢を呈する。この荷受台7が少なくとも退避姿勢を呈するときに、車両1の後方で占有する地面Gの領域に光線を照射する光線照射装置8を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台に対する荷物の積み卸し時に、荷台の後方に配置される荷受台を有する車両の安全装置であって、
前記荷受台は、荷物の積み卸しをするときには荷台の後方に張り出した状態で地面を占有する稼働姿勢を呈し、荷物の積み卸しをしないときには、荷台の後方の地面を占有しない退避姿勢を呈し、
当該荷受台が車両の後方で占有する地面の領域を示す光線を照射する光線照射装置を有することを特徴とする荷受台を有する車両の安全装置。
【請求項2】
前記光線照射装置は、前記荷受台が退避姿勢から稼働姿勢に姿勢を変更する直前に光線を照射することを特徴とする請求項1に記載の荷受台を有する車両の安全装置。
【請求項3】
前記光線照射装置は、荷受台が占有する地面の全領域、又は、荷受台が占有する地面の領域と、その他の地面の領域の境界に光線を照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の荷受台を有する車両の安全装置。
【請求項4】
前記光線照射装置は、照射した光線によって地面に文字を表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の荷受台を有する車両の安全装置。
【請求項5】
前記光線照射装置は、点滅する光線を照射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の荷受台を有する車両の安全装置。
【請求項6】
前記車両は荷箱を有し、前記荷箱に前記光線照射装置が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の荷受台を有する車両の安全装置。
【請求項7】
前記光線照射装置が、荷台の複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の荷受台を有する車両の安全装置。
【請求項8】
荷受台と、当該荷受台を昇降させる荷受台昇降装置を有し、
前記荷受台昇降装置によって前記荷受台を昇降させ、荷台に対して荷物を積み卸しする車両であって、
前記荷受台は、荷物の積み卸しをするときには荷台の後方に張り出した状態で地面を占有する稼働姿勢を呈し、荷物の積み卸しをしないときには荷台の後方の地面を占有しない退避姿勢を呈し、
光線照射装置を有し、当該光線照射装置は、稼働姿勢の荷受台が占有する領域の地面に光線を照射することが可能であることを特徴とする車両。
【請求項9】
荷受台と、当該荷受台を昇降させる荷受台昇降装置を有し、
前記荷受台昇降装置によって前記荷受台を昇降させ、荷台に対して荷物を積み卸しする車両であって、
前記荷受台昇降装置は、荷台と荷受台を連結する平行リンク機構を有しており、
荷受台は、荷受台昇降装置によって起立状態の待機姿勢と、水平状態の稼働姿勢を呈することができ、
光線照射装置を有し、当該光線照射装置は、地面における稼働姿勢の荷受台が占有する全領域に光線を照射することが可能であることを特徴とする車両。
【請求項10】
前記平行リンク機構は、所定の高さ位置で前記荷台側に固定されており、
前記平行リンク機構は、前記荷台側に固定された部位を中心に回動し、
前記平行リンク機構の回動中心の高さ位置にある稼働姿勢の前記荷受台の地面への平面視投影した領域に光線を照射することを特徴とする請求項9に記載の車両。
【請求項11】
荷台を有する車両に搭載され、前記車両の荷台に対する荷物の積み卸しに使用される荷受台を昇降させる車両の荷受台昇降装置であって、
前記荷受台は、荷物の積み卸しをするときには荷台の後方に張り出した状態で地面を占有する稼働姿勢を呈し、荷物の積み卸しをしないときには、荷台の後方の地面を占有しない退避姿勢を呈し、
当該荷受台が車両の後方で占有する地面の領域を示す光線を照射する光線照射装置を有することを特徴とする車両の荷受台昇降装置。
【請求項12】
前記荷受台昇降装置は、荷台と荷受台を連結する平行リンク機構を有しており、
前記平行リンク機構は、所定の高さ位置で前記荷台側に固定されており、
前記平行リンク機構は、前記荷台側に固定された部位を中心に回動し、
前記平行リンク機構の回動中心の高さ位置にある稼働姿勢の前記荷受台の地面への平面視投影した領域に光線を照射することを特徴とする請求項11に記載の車両の荷受台昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台に対して荷物を積み卸しすることができる荷受台を有する車両の安全装置に関するものである。また、本発明は、安全装置を備えた車両、並びに車両の荷受台昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷台に荷箱を搭載しており、荷箱に対して荷物を積み卸しすることができる荷受台を有する車両が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されているような従来の荷受台昇降装置を有する車両では、荷物の積み卸し時には荷受台が水平状態となる稼働姿勢を呈し、水平状態の荷受台上に荷物を載せて荷物を荷受台毎昇降させることができる。
【0003】
また、荷物の積み卸しをしないときには、荷受台は、起立した鉛直状態となり、さらに荷受台を荷箱の後面に近接させた待機姿勢を呈することができる。待機姿勢では、荷受台が車両の後方に突出しておらず、車両の後方の空間が開放されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-114114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、待機姿勢から稼働姿勢に姿勢変更する際には、荷受台は、車体の後方に配置されるため、周囲の人が荷受台の動作を予測できなかった場合、荷受台に人が接触する恐れがある。また、荷受台が配置される領域内に物が存在する場合があり、荷受台を稼働姿勢に展開すると、荷受台が当該物に接触してしまう。
【0006】
そこで本発明は、荷受台の展開時に、周囲に注意を喚起することができる車両の安全装置を提供することを課題としている。また、本発明は、周囲に注意を喚起することができる安全装置を備えた車両を提供することを課題としている。さらに、本発明は、周囲に注意を喚起することができる安全装置を備えた車両の荷受台昇降装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第一の様相は、荷台に対する荷物の積み卸し時に、荷台の後方に配置される荷受台を有する車両の安全装置であって、前記荷受台は、荷物の積み卸しをするときには荷台の後方に張り出した状態で地面を占有する稼働姿勢を呈し、荷物の積み卸しをしないときには、荷台の後方の地面を占有しない退避姿勢を呈し、当該荷受台が車両の後方で占有する地面の領域を示す光線を照射する光線照射装置を有することを特徴とする荷受台を有する車両の安全装置である。
【0008】
荷受台は、荷物の積み卸しをするときには荷台の後方に張り出した状態で地面を占有する稼働姿勢を呈し(稼働位置に配置され)、荷物の積み卸しをしないときには、荷台の後方の地面を占有しない退避姿勢を呈する(退避位置に退避する)。すなわち、荷受台が退避姿勢を呈した状態(退避位置に退避した状態)では、荷台の後方側には空間が形成される。そのため、その形成された空間に人が入ったり、物を配置することも可能である。このような状態で、仮に荷受台を稼働位置に配すると、荷受台が人や物に接触してしまう恐れがある。
そこで本様相によると、荷受台が車両の後方で占有する地面の領域を示す光線を照射する光線照射装置を有するので、車両の周囲の人は、光線が照射された地面を視認することができ、荷台の後方の当該空間内に進入することを避けることができる。
すなわち、地面に光線が照射されることにより、光線が照射された当該地面の領域について、周囲の人に注意を喚起することができ、荷受台が稼働位置への移動を開始すると、荷受台が、光線が照射された領域に配されることを周囲の人は認識することができる。よって、荷受台が稼働位置への移動を完了する前に、周囲の人は、荷受台7に接触しないように光線の照射された領域から退避することができる。
また、車両の乗員または作業者は、照射された光線に照らされた物があるか否かを視認することができる。そして、光線が照射された領域内から当該物を移動させる、又は車両を移動させて光線に照らされる物が存在しない場所で荷物の積み卸し作業を実施することができる。
すなわち、本様相の車両の安全装置によると、荷受台が稼働姿勢に姿勢変更する前に、荷受台の移動先となる領域の範囲を把握することができるので、荷受台の待機姿勢から稼働姿勢への展開時の安全を確保することができる。
【0009】
前記光線照射装置は、前記荷受台が退避姿勢から稼働姿勢に姿勢を変更する直前に光線を照射するのが好ましい。
【0010】
この構成によれば、光線照射装置は、荷受台が退避姿勢から稼働姿勢に姿勢を変更する直前に光線を照射するので、車両の周囲の人は、荷受台が待機姿勢から稼働姿勢に展開することを事前に知ることができ、展開した荷受台が占有する地面の領域を避けることができる。
【0011】
前記光線照射装置は、荷受台が占有する地面の全領域、又は、荷受台が占有する地面の領域と、その他の地面の領域の境界に光線を照射するのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、光線照射装置は、荷受台が占有する地面の全領域、又は、荷受台が占有する地面の領域と、その他の地面の領域の境界に光線を照射するので、荷受台が待機姿勢から稼働姿勢に姿勢変更する前に、荷受台が占める領域の範囲が示される。これにより、荷受台が周囲の人や物と接触する事態を確実に回避することができる。
【0013】
前記光線照射装置は、照射した光線によって地面に文字を表示するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、地面に文字を表示することにより、周囲の人にメッセージを伝えることができる。
例えば、「キケン」という文字列を表示すれば、周囲の人に注意を喚起し、当該領域に進入することを思い留まることができる。
【0015】
前記光線照射装置は、点滅する光線を照射するのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、光線照射装置は、点滅する光線を照射するので、周囲の人の注意を喚起し易い。
【0017】
前記車両は荷箱を有し、前記荷箱に前記光線照射装置が設けられているのが好ましい。
【0018】
この構成によれば、車両は荷箱を有し、荷箱に光線照射装置が設けられることにより、待機姿勢の荷受台に干渉されずに、荷受台の展開先の地面に光線を照射し易い。
【0019】
前記光線照射装置が、荷台の複数箇所に設けられているのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、光線照射装置が、荷台の複数箇所に設けられているので、荷受台の移動先の地面に確実に光線を照射することができる。
【0021】
本発明の第二の様相は、荷受台と、当該荷受台を昇降させる荷受台昇降装置を有し、前記荷受台昇降装置によって前記荷受台を昇降させ、荷台に対して荷物を積み卸しする車両であって、前記荷受台は、荷物の積み卸しをするときには荷台の後方に張り出した状態で地面を占有する稼働姿勢を呈し、荷物の積み卸しをしないときには荷台の後方の地面を占有しない退避姿勢を呈し、光線照射装置を有し、当該光線照射装置は、稼働姿勢の荷受台が占有する領域の地面に光線を照射することが可能であることを特徴とする車両である。
【0022】
本様相の車両の荷受台は、荷物の積み卸しをするときには荷台の後方に張り出した状態で地面を占有する稼働姿勢を呈し、荷物の積み卸しをしないときには荷台の後方の地面を占有しない退避姿勢を呈する。すなわち、荷受台が退避姿勢から稼働姿勢に姿勢を変更する際には、荷台の後方の空間に荷受台が移動してくる。そのため、荷受台が退避姿勢のときに、荷台の後方の空間は空いており、人が往来したり、物を置くこともできる。
しかし、このような状態で荷受台を稼働姿勢に変更すると、荷受台が人や物に接触する恐れがある。
そこで本様相によれば、光線照射装置を有し、当該光線照射装置は、少なくとも荷受台が退避姿勢時に、稼働姿勢の荷受台が占有する領域の地面に光線を照射することが可能であるので、車両の後方側にいる人は、光線が照射された地面を見て、荷受台が移動してくることを予め認識することができる。そのため、周囲の人に注意を喚起することができ、荷受台が稼働姿勢に展開する前に、周囲の人は当該領域周辺から退避することができる。また、荷物の積み卸しを行う作業者は、光線が照射された範囲に、物が存在するか否かを、荷受台が稼働姿勢になる前に確認することができる。そして、仮に、光線に照射された領域に物が存在すれば、当該物は稼働姿勢の荷受台が占有する領域の地面上に存在することになり、当該物は光線に晒される。よって、作業者は、光線に晒された物が存在することに気付き、当該物を稼働姿勢の荷受台が占有する領域(光線が照射された領域)から撤去する(移動させる)ことができる。
稼働姿勢の荷受台が占有する領域(光線が照射された領域)の地面上に存在する物が撤去できない場合には、作業者は、車両を移動させて、荷物の積み卸し作業を実施する場所を変更する等の安全対策を講じることができる。光線照射装置によって光線を照射することにより、作業者はこのような判断を行うことができ、荷受台が人や物に接触する事態を回避することができ、極めて安全である。
【0023】
本発明の第三の様相は、荷受台と、当該荷受台を昇降させる荷受台昇降装置を有し、前記荷受台昇降装置によって前記荷受台を昇降させ、荷台に対して荷物を積み卸しする車両であって、前記荷受台昇降装置は、荷台と荷受台を連結する平行リンク機構を有しており、荷受台は、荷受台昇降装置によって起立状態の待機姿勢と、水平状態の稼働姿勢を呈することができ、光線照射装置を有し、当該光線照射装置は、地面における稼働姿勢の荷受台が占有する全領域に光線を照射することが可能であることを特徴とする車両である。
【0024】
本様相の車両は、荷受台と、荷受台を昇降させる荷受台昇降装置を有し、荷受台昇降装置によって荷受台を昇降させ、荷台に対して荷物を積み卸しする車両である。
荷受台昇降装置は、荷台と荷受台を連結する平行リンク機構を有しており、荷受台は、荷受台昇降装置によって起立状態の待機姿勢と、水平状態の稼働姿勢を呈することができる。そのため、待機姿勢の荷受台は、起立状態を呈するので占有面積が極めて小さく、稼働姿勢の荷受台は、水平状態を呈し占有面積が大きく、荷物を載置し易い。
すなわち、荷受台が待機姿勢から稼働姿勢に姿勢変更(展開)する際には、起立状態から水平状態に変化する。換言すると、待機姿勢時には荷受台が占有していなかった車両の後方の領域に、稼働姿勢時には荷受台が配置されて当該領域を占有する。
そのため、当該領域内に人が往来したり、物が配置されていた場合には、人や物に荷受台が接触する恐れがある。
ところが本様相の車両では、光線照射装置を有し、当該光線照射装置は、地面における稼働姿勢の荷受台が占有する全領域に光線を照射することが可能であるので、車両の後方側にいる人は、光線が照射された地面を見て、荷受台が移動してくることを予め認識することができる。そのため、周囲の人は注意を喚起され、荷受台が稼働姿勢に展開する前に、当該領域周辺から退避することができる。また、荷物の積み卸しを行う作業者は、光線が照射された範囲に、物が存在するか否かを、荷受台が水平状態の稼働姿勢になる前に確認することができる。そして、仮に、光線が照射された領域に物が存在すれば、当該物は光線に晒されるので、作業者は当該物を撤去しなければならないことに気付き、当該物(障害物)を撤去する(移動させる)ことができる。光線に晒された物を、稼働姿勢の荷受台が占有する領域(光線が照射された領域)から撤去できない場合には、作業者は車両を移動させて、荷物の積み卸し作業を実施する場所を変更するなどの安全対策を講じることができる。光線照射装置によって光線を照射することにより、作業者はこのような判断を行うことができ、荷受台が人や物に接触する事態を回避することができ、極めて安全である。
【0025】
前記平行リンク機構は、所定の高さ位置で前記荷台側に固定されており、前記平行リンク機構は、前記荷台側に固定された部位を中心に回動し、前記平行リンク機構の回動中心の高さ位置にある稼働姿勢の前記荷受台の地面への平面視投影した領域に光線を照射するのが好ましい。
【0026】
この構成によれば、平行リンク機構は、所定の高さ位置で荷台側に固定されており、平行リンク機構は、荷台側に固定された部位を中心に回動し、平行リンク機構の回動中心の高さ位置にある稼働姿勢の荷受台の地面への平面視投影した領域に光線を照射するので、地面に配置された荷受台が占める領域よりも広い領域に光線が照射される。
その光線の照射された領域内に人や物が入らなければ、降下する荷受台が地面に達するまでの間に、人や物が荷受台に接触又は衝突することがなく、安全である。
【0027】
本発明の第四の様相は、荷台を有する車両に搭載され、前記車両の荷台に対する荷物の積み卸しに使用される荷受台を昇降させる車両の荷受台昇降装置であって、前記荷受台は、荷物の積み卸しをするときには荷台の後方に張り出した状態で地面を占有する稼働姿勢を呈し、荷物の積み卸しをしないときには、荷台の後方の地面を占有しない退避姿勢を呈し、当該荷受台が車両の後方で占有する地面の領域を示す光線を照射する光線照射装置を有することを特徴とする車両の荷受台昇降装置である。
【0028】
本様相の車両の荷受台昇降装置は、荷台を有する車両に搭載され、車両の荷台に対する荷物の積み卸しに使用される荷受台を昇降させるものである。
荷受台は、荷物の積み卸しをするときには荷台の後方に張り出した状態で地面を占有する稼働姿勢を呈し、荷物の積み卸しをしないときには、荷台の後方の地面を占有しない退避姿勢を呈する。
すなわち、荷受台が退避姿勢から稼働姿勢に姿勢を変更する際には、荷台の後方の空間に荷受台が移動してくる。そのため、荷受台が退避姿勢のときに、荷台の後方の空間は空いており、人が往来したり、物を置くこともできる。
しかし、このような状態で荷受台を荷台の後方に張り出す稼働姿勢に変更すると、荷受台が人や物に接触する恐れがある。
そこで本様相によれば、荷受台が車両の後方で占有する地面の領域を示す光線を照射する光線照射装置を有するので、当該光線照射装置が、地面における稼働姿勢の荷受台が占有する領域に光線を照射することにより、車両の後方側にいる人は、光線が照射された地面を見て、荷受台が移動してくることを予め認識することができる。そのため、荷受台が稼働姿勢に展開する前に、周囲の人は注意が喚起されて、当該領域周辺から退避することができる。また、荷物の積み卸しを行う作業者は、光線が照射された範囲に、物が存在するか否かを、荷受台が水平状態の稼働姿勢になる前に確認することができる。
そして、仮に、光線が照射された領域に物が存在すれば、当該物(障害物)は光線に晒されるため、作業者は当該物の存在に気付き、当該物を撤去する(移動させる)ことができる。光線に晒された物が撤去できない場合には、作業者は、車両を移動させて、荷物の積み卸し作業を実施する場所を変更するなどの安全対策を講じることができる。光線照射装置によって光線を照射することにより、作業者はこのような判断を行うことができ、荷受台が人や物に接触する事態を回避することができ、極めて安全である。
【0029】
前記荷受台昇降装置は、荷台と荷受台を連結する平行リンク機構を有しており、前記平行リンク機構は、所定の高さ位置で前記荷台側に固定されており、前記平行リンク機構は、前記荷台側に固定された部位を中心に回動し、前記平行リンク機構の回動中心の高さ位置にある稼働姿勢の前記荷受台の地面への平面視投影した領域に光線を照射するのが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の車両の安全装置、車両、並びに、車両の荷受台昇降装置では、荷受台を退避姿勢から稼働姿勢に姿勢変更する際に、車両の周囲の人に注意を喚起することができ、荷受台が人や物に接触する事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係る安全装置を備えた車両の側面図であり、(a)は、荷受台が待機姿勢の場合を示し、(b)は、荷受台が稼働姿勢の場合を示す。
図2図1の車両の後部を上方から見た部分斜視図である。
図3】(a)~(c)は、図1の車両の平面図であり、光線照射装置が光線を照射した状態を示す。
図4】本実施形態に係る安全装置を備えた車両の後部の部分側面図であり、(a)は、稼働姿勢の荷受台が、荷箱の床面高さに配置されている状態を示し、(b)は、(a)の荷受台が、下降する途中の状態を示し、(c)は、(b)の荷受台が着地した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1(a)、図1(b)、図2に示すように、車両1は、車体1a(荷台)に荷箱2を搭載している。車体1aの後部には、バンパ装置3及び荷受台昇降装置4が取り付けられている。荷受台昇降装置4は、平行リンク機構4aを有する。荷受台昇降装置4の基部側(前端側)は車体1aに取り付けられており、自由端である先端側(後端側)には荷物を載置可能な荷受台7が取り付けられている。
【0033】
平行リンク機構4aは、駆動シリンダ5を備えており、駆動シリンダ5の伸縮に応じて荷受台7の高さ位置を、地面Gと荷箱2の床面(図示せず)の高さの間で変更することができる。また、平行リンク機構4aにおける荷受台7を接続した部位には、図示しない駆動シリンダが設けられている。この図示しない駆動シリンダを駆動することにより、荷受台7の姿勢を、起立状態(退避姿勢)又は水平状態(稼働姿勢)に切り換えることができる。
【0034】
ここで稼働姿勢とは、荷受台7が水平状態を呈すると共に、荷箱2の床面高さと地面Gの間に配置された状態を指している。また、退避姿勢とは、荷箱2の床面高さと地面Gの間から荷受台7が移動した状態を指す。
平行リンク機構4aを有する荷受台昇降装置4は、従来周知のものであり、その他の詳細な説明は省略する。
【0035】
荷箱2の上部(鴨居部分)には、光線照射装置8(安全装置)が設けられている。光線照射装置8は、LEDランプで構成されており、例えば小糸製作所製の「LED描画ランプ」を採用することができる。
【0036】
図1(a)、図1(b)に示すように、光線照射装置8は、照射光線9を照射する。照射光線9は、光線照射装置8から所定の範囲に照射される。図1(b)に示すように、照射光線9の範囲は、稼働姿勢の荷受台7が占める面積と同じか、又は若干大きい(広い)。
【0037】
すなわち、光線照射装置8は、地面G上に配置された荷受台7が占める領域と同じ大きさの領域、又は荷受台7が占める領域よりも若干広い領域に対して光線を照射することができる。換言すると、図2に示すように、光線照射装置8から照射された照射光線9は、地面Gの光線照射領域10に広がり、この光線照射領域10の面積は、水平姿勢の荷受台7が地面G上で占める面積と同じか、又は若干大きい。
【0038】
本実施形態では、好ましい実施形態として、光線照射領域10が、荷受台7が地面G上で占める面積と同じか、又は若干大きい例を示したが、光線照射領域10の方が、荷受台7が占める面積より小さくてもよい。
【0039】
光線照射領域10が、荷受台7が地面G上で占める面積と一致している場合では、光線照射領域10の輪郭は、地面Gにおける荷受台7が占める領域と、その他の領域の境界を示す。すなわち、この場合の光線照射領域10の外側であれば、待機姿勢の荷受台7が稼働姿勢に姿勢変更しても、荷受台7と接触することはない。
【0040】
また、「若干」とは、荷受台7が地面G上で占める面積に対して、プラス・マイナス30%程度以下を意味している。実際には、荷受台7が地面G上で占める領域と照射光線9の照射される領域とを一致させたり、照射光線9の照射される領域の方を若干狭くするよりは、照射光線9の照射される領域の方を若干広くするのが安全上好ましい。
【0041】
光線照射装置8は、指向性を有する光線を照射することができ、図3(a)に示すように、光線照射範囲10a内に文字を描いたり、図3(b)に示すように、光線照射範囲10bに枠状に光線を照射し、光線照射範囲10bに枠を描いたり、図3(c)に示すように、光線照射範囲10cの全領域に光線を照射する等、地面Gに任意の文字や形状を描画することができる。また、図3(a)~図3(c)において、光線照射装置8は、点滅する光線を照射し、地面Gに描画する文字や形状を点滅する光線によって示してもよい。
【0042】
本実施形態では、光線照射装置8は、荷受台昇降装置4の電源ONと同時に光線の照射を開始する。すなわち、退避姿勢の荷受台7が、水平状態の稼働姿勢に姿勢変更(展開)する前に、光線照射装置8は照射光線の照射を開始する。そして、荷受台7が稼働姿勢を呈すると、光線照射装置8は、照射光線の照射を停止する。このように、光線照射装置8の照射光線9の照射の開始及び停止のタイミングは、荷受台昇降装置4の動作と連動するように構成されている。照射の指示に伴い、稼働姿勢の荷受台7が占有する領域の地面(光線照射領域10)に照射光線を照射することが可能である。
【0043】
ここで、光線照射装置8の照射光線9の照射及び照射の停止は、荷受台昇降装置4の動作とは無関係に、専用のスイッチを設けて手動で行ってもよい。
さらに、光線照射装置8は、照射光線9を常時照射するようにしてもよい。
【0044】
本実施形態では、光線照射装置8は、荷受台7が地面Gに配置された際に、地面Gを占有する領域(面積)に応じて照射光線9を照射する例について説明したが、照射光線9は、荷受台7が退避姿勢から稼働姿勢に姿勢変更する際に、荷受台7が描く軌跡の最大面積範囲(荷受台7が昇降する際の、荷受台7の地面Gに投影した最も広い面積)とすることもできる。
【0045】
すなわち、図4(a)~図4(c)に示すように、荷受台7は、車体1aと一体の連結部材6(車体1a(荷台)側に固定された部位)を中心に回動し、荷箱2の床面高さ(図4(a))から地面G(図4(c))まで移動する。その際、荷受台7が平行リンク機構4aの回動中心の高さ位置(所定の高さ位置)に来たとき(図4(b))、荷受台7の端辺7aは、車体1aから最も突出する。すなわち、図4(a)及び図4(c)に示す高さ位置における荷受台7の端辺7aの前後方向の位置(地面Gに投影したA部、C部)にはほとんど差がない。ところが図4(b)に示すように、荷受台7が平行リンク機構4aの回動中心の高さ位置にきたときには、端辺7aはA部を投影する位置を越えてB部を投影する位置まで後方に突出する。
【0046】
そのため、仮に、人や物が、地面GのB部より車体1aに近づくと、荷受台7が連結部材6の高さ位置にきたときに、荷受台7が人や物に接触又は衝突してしまう。
そこで、光線照射装置8の照射範囲を、地面Gの少なくともB部(荷受台7の移動軌跡であって、車両1の後方への荷受台7の最大突出範囲)まで拡げる。
すなわち、平行リンク機構4aの回動中心(連結部材6)の高さ位置にある稼働姿勢の荷受台7の地面Gへの平面視投影した領域OBに照射光線9を照射する。ここでO部は、車体1aの後部近傍の部位であり、荷受台7の投影領域の前端部であって、光線照射装置8によって照射される照射光線の最も車体1a側の位置を示す。
【0047】
これにより、人や物が、昇降時に荷受台7が描く移動軌跡の範囲内に入ることを回避することができ、荷受台7と接触又は衝突する事態を回避することができる。すなわち、光線照射装置8は、車両1の前後方向のOAの領域のみならず、OBの領域に照射光線9を照射するのが好ましい。
【0048】
領域OAと領域OCの大小関係は、荷受台7の床面高さと連結部材6の高さによって変化するが、領域OBは、必ず領域OA、領域OCよりも大きくなる。すなわち、領域OBに照射光線9を照射し、領域OBの範囲内に人や物が侵入しなければ、昇降する荷受台7は、何にも接触又は衝突することがない。
【0049】
本実施形態では、光線照射装置8は、荷箱2の鴨居部分(上部)に設けた例を示したが、光線照射装置8の設置位置は、荷箱2の鴨居部分以外であっても差し支えはない。例えば、光線照射装置8は、荷箱2の敷居部分(下部)や、バンパ装置3、ナンバープレート(図示せず)、車体1a(シャシフレーム)に設けてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、光線照射装置8を一つ設ける例を示したが、光線照射装置8は、複数設けてもよい。例えば、荷箱2の鴨居部分や敷居部分、バンパ装置3、ナンバープレート(図示せず)、車体1a(シャシフレーム)等の内のいくつか(複数箇所)に設けてもよい。
【0051】
照射光線9の色は、任意であり、何色であってもよい。光線照射装置8を複数設ける場合には、照射光線の色の種類を単一色に揃えたり、それぞれ別の色を使用してもよい。
【0052】
本実施形態では、荷受台7は、平行リンク機構4aで昇降すると共に、水平姿勢と起立姿勢とを切り換える形式の場合について説明したが、荷受台7は、垂直昇降式、床下格納式であっても、本発明は同様に実施可能である。垂直昇降式とは、車両(車体1aまたは荷箱2)に設けた支柱に沿って荷受台7が昇降する形式である。荷受台7の鉛直姿勢から水平姿勢(又はその逆)を手動で行うものであってもよい。また、床下格納式とは、荷受台が、車体1a(荷台)の下方に格納(退避)され、稼働時には後方に突出する形式である。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
1a 車体
2 荷箱
4 荷受台昇降装置
4a 平行リンク機構
7 荷受台
8 光線照射装置(安全装置)
9、9a~9c 照射光線
10、10a~10c 光線照射領域
G 地面
図1
図2
図3
図4