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特開2022-68780複数施設連携標準化ストレージシステム
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  • 特開-複数施設連携標準化ストレージシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068780
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】複数施設連携標準化ストレージシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20220427BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20220427BHJP
【FI】
G16H10/00
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177647
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】519150094
【氏名又は名称】株式会社日本地域総合診療サポート
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】北田 祥人
(72)【発明者】
【氏名】増田 光弘
(72)【発明者】
【氏名】寄藤 博輝
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】通信障害が生じている間も、医療情報が連携して使用できるクラウド型医療情報連携蓄積システムを提供する。
【解決手段】複数の医療施設のそれぞれで生成された患者毎の診療情報をクラウド内に構成された連携用標準化ストレージにアップロードして蓄積させる一方、前記複数施設のそれぞれに配置された表示端末では指定された患者の診療情報を前記連携用標準化ストレージからダウンロードして表示させるように構成された複数施設連携標準化ストレージシステムにおいて、各患者には所定容量の書換可能メモリを有しかつ患者識別情報が記録されたた患者用ICカードが配布されており、前記表示端末は、前記患者用ICカードに対応したカードリーダーを備えており、前記患者用ICカードから読取った患者識別情報に基づいて前記連携用標準化ストレージから目的の診療情報をダウンロードして表示するとともに、そのダウンロードした診療情報を該患者用ICカードに記憶させることが可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医療施設のそれぞれで生成された患者毎の診療情報をクラウド内に構成された連携用標準化ストレージにアップロードして蓄積させる一方、前記複数施設のそれぞれに配置された表示端末では指定された患者の診療情報を前記連携用標準化ストレージからダウンロードして表示させるように構成された複数施設連携標準化ストレージシステムにおいて、
各患者には所定容量の書換可能メモリを有しかつ患者識別情報が記録されたた患者用ICカードが配布されており、
前記表示端末は、前記患者用ICカードに対応したカードリーダーを備えており、前記患者用ICカードから読取った患者識別情報に基づいて前記連携用標準化ストレージから目的の診療情報をダウンロードして表示するとともに、そのダウンロードした診療情報を該患者用ICカードに記憶させることが可能に構成されていることを特徴とする複数施設連携標準化ストレージシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記患者用ICカードに直近又は所定期間の診療情報を記憶させていることを特徴とする複数施設連携標準化ストレージシステム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記表示端末は、前記患者用ICカードに記憶されている診療情報を読みだして表示することが更に可能に構成されていることを特徴とする複数施設連携標準化ストレージシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記表示端末は、ネットワーク通信が可能なセットトップボックスと、テレビジョン受信機とで構成されていることを特徴とする複数施設連携標準化ストレージシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記患者用ICカードは、キャッシュレス支払機能を備えており、
前記医療施設に対する診療料金、又は調剤料金をキャッシュレスで支払えるようにしていることを特徴とする、
複数施設連携標準化ストレージシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数施設連携標準化ストレージシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば次の特許文献には、各薬局にレセプトコンピュータを設置し、統括本部あるいはサーバ管理会社にそれらのレセプトコンピュータからアクセス可能なサーバを設けた薬局支援システムが記載されている。このようなサーバを用いることの主な利点は、薬局毎のレセプトコンピュータが省メモリ容量にできコストアップが抑えられることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-079441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近時、各種コンピュータサービスにおいて、専用サーバ装置を構築せずにクラウドを利用することが可能になりつつある。十分なセキュリティを有する専用サーバを独自に構築することは技術的にも費用的にも非常に大変であるが、クラウドの場合は予め十分なセキュリティが確保されており、メンテナンスも簡単である。
しかしながらこのようなクラウドを用いたコンピュータサービスであっても、災害発生時などでは通信障害等によってクラウドが一時的に利用できなくなることもあり得る。
そこで本発明は、通信障害が生じている間も、医療情報が連携して使用できるクラウド型医療情報連携蓄積システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の医療施設のそれぞれで生成された患者毎の診療情報をクラウド内に構成された連携用標準化ストレージにアップロードして蓄積させる一方、前記複数施設のそれぞれに配置された表示端末では指定された患者の診療情報を前記連携用標準化ストレージからダウンロードして表示させるように構成された複数施設連携標準化ストレージシステムにおいて、各患者には所定容量の書換可能メモリを有しかつ患者識別情報が記録されたた患者用ICカードが配布されており、前記表示端末は、前記患者用ICカードに対応したカードリーダーを備えており、前記患者用ICカードから読取った患者識別情報に基づいて前記連携用標準化ストレージから目的の診療情報をダウンロードして表示するとともに、そのダウンロードした診療情報を該患者用ICカードに記憶させることが可能に構成されていることを特徴とする複数施設連携標準化ストレージシステムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、クラウド内に構成された複数施設連携標準化ストレージが通信障害等で参照できないときでも、患者用ICカードに保存されている診療情報を閲覧できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】複数施設連携標準化ストレージシステムの基本的な構成図である。
図1A】複数施設連携標準化ストレージシステムの詳細な構成図である。
図2】病院における基本処理手順の一例を示すフロー図である。
図3図2の基本処理手順に対応した診療情報のデータフロー図である。
図4】基本処理手順の他例を示すフロー図である。
図5図4の処理手順に対応した診療情報のデータフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明による複数施設連携標準化ストレージシステムの基本的な構成図、図1Aはその詳細な構成図である。
複数施設連携標準化ストレージシステムAは、病院H、検査センターM、薬局P等の複数の医療施設のそれぞれで生成された患者毎の診療情報をクラウドC内に構成された連携用標準化ストレージ10にアップロードして蓄積させる一方、施設のそれぞれに配置された表示端末25では指定された患者の診療情報を連携用標準化ストレージ10からダウンロードして表示させるように構成される。なお医療施設の連携に限定せず、ドラッグストアや介護施設等も連携に含めてもよい。
【0009】
そして本発明の特徴として、各患者には、所定容量の書換可能メモリを有しかつ患者識別情報が記録されたた患者用ICカード2が配布される。患者用ICカード2の配布は、医療施設のそれぞれで行うことができるが、同一患者に複数の患者用ICカード2が配布されないように、配布時に当該患者について複数施設連携標準化ストレージシステムAに対して登録の有無が問い合わせられる。患者用ICカード2は、配布時、未使用カードに患者識別情報等が書き込まれるとともに、患者番号等がカード表面に印刷されてその患者専用のものになる。表示端末25は、患者用ICカード2に対応したカードリーダー26を備えており、患者用ICカード2から読取った患者識別情報に基づいて連携用標準化ストレージ10から目的の診療情報をダウンロードして表示するとともに、そのダウンロードした診療情報をその患者用ICカード2に記憶させることが可能に構成されている。また患者用ICカード2から診療情報を読み出して表示することも可能である。つまり通信障害等により連携用標準化ストレージ10から診療情報が読み出せない場合であっても、患者用ICカード2からその情報を読み出すことが可能である。
【0010】
患者用ICカードに書き込む診療情報は、直近の又は所定期間の診療情報が基本である。しかしながらこれに限定されない。例えば、申し送り事項、注意事項、医療従事者のコメント等、所望の情報も患者用ICカードに書き込むことができる。その場合、連携用標準ストレージ10に記憶させる情報させるべき情報の種別を拡大して、患者用ICカードに書き込み可能な情報を包含させると利便性がよい。
【0011】
なおこの複数施設連携標準化ストレージシステムAでは、全ての医療施設が、患者の診療情報を他の医療施設と共有することに同意していること、更に、患者自身も診療情報が複数の診療施設で共有されることに同意していることを前提としている。
【0012】
クラウドC、すなわちクラウドコンピューティングは、その提供企業がデータセンター等に配置した多数のサーバ群を用い、インターネットWを経由して、利用者のパーソナルコンピューターやスマートフォン等に各種サービスを提供するサービスである。クラウドCでは、アカウント毎に基本的なOS機能、データベース機能、認証機能等をインストールした仮想コンピュータが利用可能である。クラウドCの代表的な例としては、Microsoft社(登録商標)のAzure(登録商標)、Amazon社(登録商標)のAWS(登録商標)、Google社(登録商標)のGCP(登録商標)等がある。本発明には、これらのクラウドサービスが利用できる。
【0013】
複数施設連携標準化ストレージシステムAは、クラウドC内において、連携用標準化ストレージ10、VPNゲートウェイ11、データ受信アプリケーション12、標準化ストレージビューワ13、患者ポータル14等が構成される。
連携用標準化ストレージ10は、医療施設毎にアップロードされてきた医療情報を蓄積するための記憶領域である。
VPNゲートウェイ11は、連携用標準化ストレージ10と医療施設との暗号化通信のためのものである。
データ受信アプリケーション12は、医療施設からアップロードされてきた診療情報を受信して連携用標準化ストレージ10に蓄積させるプログラムであって、医療施設側のデータ送信プログラム23に対応している。
標準化ストレージビューワ13は、例えば患者を指定した診療情報の閲覧要求に対して連携用標準化ストレージ10から対応する診療情報をダウンロードさせるプログラムである。標準化ストレージビューワ13は、連携用標準化ストレージ10において医療施設毎に分散して蓄積されている診療情報を患者毎に名寄せするための名寄データベース13a等を備えている。
患者ポータル14は、患者自身がスマートフォンやタブレット等の情報端末3を用いて自身の診療情報を閲覧するためのホームページを提供するウェブサーバである。そのホームページでは患者は自身の診療情報を閲覧したり、施設間の診療情報の共有を許可、禁止したりできる。
【0014】
連携用標準化ストレージ10に蓄積される診療情報は、例えば従来医療施設で独自に生成、蓄積されていた患者基本情報、患者移動情報、処方情報、検体検査情報、画像検査情報、紹介情報等を連携のために標準化したものである。標準化の形式としては、例えば厚生労働省電子的診療情報交換推進事業(SS-MIX)で規定された標準化ストレージに対応したSS-MIX2ファイル形式を用いることができるが、これに限定されない。
【0015】
一方医療施設の一例である病院Hや専門クリニックは、電子カルテシステム20、レセプトシステム21、標準化ストレージ22、データ送信アプリケーション23、VPNゲートウェイ24、表示端末25等を備える。
電子カルテシステム20、レセプトシステム21は従来と同様のものでよい。
標準化ストレージ22は、電子カルテシステム20やレセプトシステム21から自動抽出された患者毎の診療情報を蓄積するように構成されている。
データ送信アプリケーション23は、標準化ストレージ22に蓄積された診療情報を連携用標準化ストレージ10にアップロードするプログラムである。
表示端末25は、患者の指定操作等に基づいて標準化ストレージビューワ13から診療情報をダウンロードして表示する。このとき同一患者について全ての医療施設の診療情報を一括してダウンロードできる。表示端末25は、例えばパーソナルコンピューターによって構成され、かつ患者用ICカード2に対応したカードリーダー26が設けられており、患者用ICカード2から患者識別情報等を読みだして、標準化ストレージビューワからその患者に対応した診療情報をダウンロードすることができる。そのダウンロードしてきた診療情報を患者用ICカード2に記憶させることもできる。また患者用ICカード2に記憶されている診療情報を読み出して表示することもできる。
【0016】
また検査センターMは、画像蓄積システム27(PACKS)、データ送信アプリケーション23、VPNゲートウェイ24等を備える。検査の結果として画像蓄積システムに蓄積された検査画像は、データ送信アプリケーション23によって連携用標準化ストレージ10にアップロードされる。
【0017】
また薬局Pは、レセプトシステム21、データ送信アプリケーション23、VPNゲートウェイ24、表示端末25等を備える。表示端末25は、医療施設と同様のものでよい。データ送信アプリケーション23は、レセプトシステム21から自動抽出された患者毎の医療情報を連携用標準化ストレージ10にアップロードする。また薬局Pでは、いわゆるお薬手帳の内容を患者用ICカード2に記憶させてもよい。
【0018】
なお介護施設を複数施設連携標準化ストレージシステムAに含めた場合、病院や薬局等の診療情報、介護施設での介護情報等を互いに共有できるので、より患者に適した診療や介護が可能になる。ここで介護施設用の表示端末25は、ネットワーク通信が可能なセットトップボックスと、テレビジョン受信機とで構成してもよい。セットトップボックスはガードリーダ26を備えることが望ましいが、患者用ICカード2に印字された患者番号を操作入力させるようにしてもよい。
【0019】
患者の各々には、医療施設のいずれかにおいて患者用ICの発行を受ける。このとき患者に、自身の診療情報が複数の診療施設で共有されることに同意させるとよい。
患者用ICカード2は、直近又は所定期間の診療情報等が保存できるように所定容量の書換可能なメモリが内蔵されている。なお患者用ICカード2は、必要な情報を電子的に記録する携帯可能な情報蓄積手段であればよく、磁気カード等で代用してもよい。またICカード機能を備えたスマートフォンで代用してもよい。
【0020】
患者用ICカード2はキャッシュレス支払機能を備えてもよい。キャッシュレス支払い機能は、プリペイドであってもポストペイであってもよい。そして病院Hに対する診療料金、薬局Pに対する調剤料金をキャッシュレスで支払えるようにすれば、患者にとって利便性が高く、患者の囲い込みにも役立つ。また患者用ICカード2に、クレジットカード機能を持たせることもできる。
【0021】
なお患者用ICカード2の記憶内容は、患者自身もカードリーダーやパーソナルコンピューター等を用いて確認できる。また企業の担当者が社員の健康管理のために患者用ICカード2の記憶内容を確認してもよい。
【0022】
次いで複数施設連携標準化ストレージシステムAの基本処理手順を説明する。
図2は病院Hにおける基本処理手順の一例を示すフロー図である。
ステップ10は、診察室等で患者用ICカード2から患者識別情報を読取る処理である。
ステップ11は、患者用ICカード2から読み取った患者識別情報に基づいて連携用標準化ストレージ10から直近の診療情報や調剤記録をダウンロードして表示端末25に表示させる処理である。
ステップ12は、ダウンロードした診療情報を患者用ICカード2に保存する処理である。
ステップ13は、医師が診療を行う処理である。
ステップ14は、診療に関する診療情報を作成する処理である。
ステップ15は、生成した最新の診療情報を複数施設連携標準化ストレージ10にアップロードする処理である。
【0023】
図3は、診療情報のデータフロー図であり、図2の基本処理手順に対応している。
フローF10は、前記ステップ11に対応したデータフローを示す。すなわち診療情報を連携用標準化ストレージ10からダウンロードして表示端25末に表示させている。
フローF11は、前記ステップ12に対応したデータフローを示す。すなわちダウンロードした診療情報を患者用ICカード2に保存している。
フローF12は、前記ステップ14に対応したデータフローを示す。すなわち生成した最新の診療情報を連携用標準化ストレージ10にアップロードしている。
【0024】
図4は、連携用標準化ストレージと医療施設との間で通信ができないときの処理手順である。
ステップ20は、診察室で患者用ICカード2から患者識別情報を読取る処理である。
ステップ21は、患者用ICカード2から診療情報を読み出して表示端末25に表示させる処理である。
ステップ22は、読みだした診療情報を医師が閲覧して診療を行う処理である。
ステップ23は、診療に関する診療情報を作成する処理である。
ステップ24は、通信障害の復旧後に連携用標準化ストレージ10に自動的にアップロードする処理である。
【0025】
図5は、診療情報のデータフロー図であり、図2の基本処理手順に対応している。
フローF20は、前記ステップ21に対応したデータフローを示す。すなわち直近の診療情報を患者用ICカード2から読み出して表示端末25に表示させている。
【0026】
本発明では、各医療機関で作成された診療記録や、調剤情報、お薬手帳の内容、診療計画書の情報等をクラウドCの連携用標準化ストレージ10に保存して共有できるので、患者は、それらの医療機関が連携した総合的な地域医療サービスを受けることが可能になる。また患者用ICカード2にもそれらの記録が保存されるので、医療機関が通信障害によってクラウドCの連携用標準ストレージ10に一時的にアクセスできない状態になっても、患者用ICカード2からその記録を読み出して適切な診療を続けることができる。
【符号の説明】
【0027】
A 複数施設連携標準化ストレージシステム
C クラウド
H 病院
P 薬局
W インターネット
2 患者用ICカード
10 連携用標準化ストレージ
25 表示端末
26 カードリーダー
図1
図1A
図2
図3
図4
図5