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  • 特開-可変指向性コンデンサマイクロホン 図1
  • 特開-可変指向性コンデンサマイクロホン 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068795
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】可変指向性コンデンサマイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20220427BHJP
   H04R 19/01 20060101ALI20220427BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20220427BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R19/01
H04R19/04
H04R1/32 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177677
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】池田 達也
【テーマコード(参考)】
5D021
5D220
【Fターム(参考)】
5D021CC03
5D220BA01
5D220BA23
5D220BC05
(57)【要約】
【課題】回路規模の増大を抑制しつつ、指向性の調整が容易な可変指向性コンデンサマイクロホンを得る。
【解決手段】本発明に係る可変指向性コンデンサマイクロホン(1)は、第1方向に向けて配置される第1コンデンサマイクロホンユニット(11)と、第1方向の逆方向である第2方向に向けて配置される第2コンデンサマイクロホンユニット(12)と、第2コンデンサマイクロホンユニットに供給される成極電圧を生成する成極電圧生成回路(14)と、第2コンデンサマイクロホンユニットへの成極電圧の供給のオン・オフを切り替えるスイッチ(15)と、を有してなる。第1コンデンサマイクロホンユニットは、エレクトレット方式のコンデンサマイクロホンユニットである。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に向けて配置される第1コンデンサマイクロホンユニットと、
前記第1方向の逆方向である第2方向に向けて配置される第2コンデンサマイクロホンユニットと、
前記第2コンデンサマイクロホンユニットに供給される成極電圧を生成する成極電圧生成回路と、
前記第2コンデンサマイクロホンユニットへの前記成極電圧の供給のオン・オフを切り替えるスイッチと、
を有してなり、
前記第1コンデンサマイクロホンユニットは、エレクトレット方式のコンデンサマイクロホンユニットである、
ことを特徴とする可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項2】
前記第1コンデンサマイクロホンユニットは、
第1固定極と、
前記第1固定極と対向して配置され、所定の電荷が蓄えられる第1振動板と、
を備え、
前記第2コンデンサマイクロホンユニットは、
第2固定極と、
前記第2固定極と対向して配置され、前記成極電圧が供給される第2振動板と、
を備える、
請求項1記載の可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項3】
前記成極電圧生成回路は、
所定の範囲で発振周波数を可変可能な発振回路と、
前記発振回路の出力を整流する倍電圧整流回路と、
を備える、
請求項1記載の可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項4】
前記成極電圧の極性は、前記第1振動板に蓄えられる前記電荷の極性と同じである、
請求項2記載の可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項5】
前記成極電圧の極性は、前記第1振動板に蓄えられる前記電荷の極性と異なる、
請求項2記載の可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項6】
前記第1固定極は、前記第2固定極と共通する共通電極である、
請求項2記載の可変指向性コンデンサマイクロホン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変指向性コンデンサマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサマイクロホンは、音波に応じて振動する振動板と、振動板と対向して配置される固定極と、を備えるコンデンサマイクロホンユニットを有してなる。コンデンサマイクロホンユニットは、振動板が振動したときに生ずる振動板と固定極との間の静電容量の変化に基づいて、音声信号を生成する。
【0003】
コンデンサマイクロホンユニットへ電荷を供給する方式は、直流バイアス方式と、エレクトレット方式と、の2つの方式に大別される。直流バイアス方式は、例えば、ファントム電源から供給される直流電圧に基づいて生成された成極電圧をコンデンサマイクロホンユニットに供給する方式である。成極電圧は、例えば、発振回路により生成された交流電圧を倍電圧整流回路で昇圧すると共に直流に整流することにより生成される。直流バイアス方式では、発振回路や倍電圧整流回路などの成極電圧生成回路が必要であるが、コンデンサマイクロホンユニットへ供給する電荷の加減・調整が容易である。一方、エレクトレット方式は、例えば、振動板または固定極のいずれかに電荷が蓄えられたエレクトレット誘電体膜を配置する方式である。エレクトレット方式では、成極電圧生成回路が不要であるが、コンデンサマイクロホンユニットへ供給する電荷の調整が容易でない。
【0004】
このようなコンデンサマイクロホンにおいて、2つのコンデンサマイクロホンユニットを備え、指向性を変更可能な可変指向性コンデンサマイクロホンが、提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1は、2つの直流バイアス方式のコンデンサマイクロホンユニットと、一方のコンデンサマイクロホンユニットに供給される成極電圧を選択可能な成極電圧選択手段と、を備えるコンデンサマイクロホンを開示する。同コンデンサマイクロホンは、成極電圧選択手段により一方のコンデンサマイクロホンユニットに供給される成極電圧(極性、電圧値)が選択されることにより、指向性を変化させる。
【0006】
また、特許文献1は、2つのエレクトレット方式のコンデンサマイクロホンユニットと、一方のコンデンサマイクロホンユニットの位相の反転・非反転を調整する位相調整手段と、を備えるコンデンサマイクロホンも開示する。同コンデンサマイクロホンは、位相調整手段により一方のコンデンサマイクロホンユニットの出力のオン・オフおよび位相の反転・非反転が選択されることにより、指向性を変化させる。
【0007】
可変指向性コンデンサマイクロホンは、ライブステージや録音ステージだけでなく、会議室においても使用されている。近年、会議室で使用されるマイクロホン(例えば、机に埋め込まれるタイプのマイクロホンや、机上に設置されるバウンダリマイクロホンなど)には、小型化が要求される。
【0008】
ここで、2つの直流バイアス方式のコンデンサマイクロホンユニットが使用される場合、それぞれのコンデンサマイクロホンユニットに対応する2つの倍電圧整流回路が必要となる。また、それぞれのコンデンサマイクロホンユニットに供給される成極電圧の調整により、サブカーディオイドやスーパーカーディオイドなどの中間の指向性を得るためには、各倍電圧整流回路に対応する2つの発振回路が必要となる。このように、2つの倍電圧整流回路および発振回路が必要となる場合、回路規模が増大する。そのため、これらの回路が実装される回路基板は大きくなる。また、2つの発振回路同士が干渉するため、ノイズが生じ易い。
【0009】
一方、2つのエレクトレット方式のコンデンサマイクロホンユニットが使用される場合、発振回路と倍電圧整流回路とが不要となり、回路規模は縮小する。そのため、回路基板は小さくなる。しかしながら、2つのコンデンサマイクロホンユニット相互間のバランス(感度のバランス)が悪いと、指向性にばらつきが生じる。エレクトレット方式において、同バランスを調整するためには、コンデンサマイクロホンユニットの分解、蓄えられる電荷の量の調整、組み立て、感度の測定、が繰り返し行われる。また、エレクトレット方式では、電荷の量が容易に調整できない。そのため、指向性の調整(例えば、ハイパーカーディオイド寄りの単一指向性から単一指向性への調整など)が容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-065147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、回路規模の増大を抑制しつつ、指向性の調整が容易な可変指向性コンデンサマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る可変指向性コンデンサマイクロホンは、第1方向に向けて配置される第1コンデンサマイクロホンユニットと、第1方向の逆方向である第2方向に向けて配置される第2コンデンサマイクロホンユニットと、第2コンデンサマイクロホンユニットに供給される成極電圧を生成する成極電圧生成回路と、第2コンデンサマイクロホンユニットへの成極電圧の供給のオン・オフを切り替えるスイッチと、を有してなり、第1コンデンサマイクロホンユニットは、エレクトレット方式のコンデンサマイクロホンユニットである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可変指向性コンデンサマイクロホンにおいて、回路規模の増大を抑制しつつ、指向性の調整が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る可変指向性コンデンサマイクロホンの実施の形態を示す回路図である。
図2図1の可変指向性コンデンサマイクロホンの指向性の組み合わせの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る可変指向性コンデンサマイクロホン(以下「本マイクロホン」という。)は、以下の実施の形態と図面とにより説明される。
【0016】
●可変指向性コンデンサマイクロホン●
●可変指向性コンデンサマイクロホンの構成
図1は、本マイクロホンの実施の形態を示す回路図である。
【0017】
本マイクロホン1は、音源(不図示)からの音波を収音する。本マイクロホン1は、指向性を変更可能な可変指向性コンデンサマイクロホンである。本マイクロホン1は、第1コンデンサマイクロホンユニット11と、第2コンデンサマイクロホンユニット12と、インピーダンス変換回路13と、成極電圧生成回路14と、スイッチ15と、を有してなる。
【0018】
第1コンデンサマイクロホンユニット11は、第1方向(本実施の形態では、前方)に向けて配置されるエレクトレット方式のコンデンサマイクロホンユニットである。第1コンデンサマイクロホンユニット11の指向性は、例えば、単一指向性である。第1コンデンサマイクロホンユニット11は、振動板111と固定極112とを備える。振動板111は本発明における第1振動板の例であり、固定極112は本発明における第1固定極の例である。
【0019】
振動板111は、音波に応じて振動する。振動板111は、例えば、合成樹脂製の薄膜である。固定極112は、平板状で、例えば、アルミニウムなどの導電性の金属製である。固定極112は、振動板111の後方に、振動板111と対向して配置される。その結果、固定極112は、振動板111と共に第1コンデンサを構成する。振動板111は、電荷(例えば、正の電荷)が半永久的に蓄えられた(保持された)エレクトレット誘電体膜により構成されるエレクトレット層を備える。
【0020】
なお、本発明における第1コンデンサマイクロホンユニットの固定極がエレクトレット層を備えていてもよい。
【0021】
第2コンデンサマイクロホンユニット12は、第1方向の逆方向である第2方向(本実施の形態では、後方)に向けて配置される直流バイアス方式のコンデンサマイクロホンユニットである。第2コンデンサマイクロホンユニット12の指向性は、例えば、単一指向性である。第2コンデンサマイクロホンユニット12は、前後方向において、第1コンデンサマイクロホンユニット11と背中合わせに配置される。第2コンデンサマイクロホンユニット12は、振動板121と固定極122とを備える。振動板121は本発明における第2振動板の例であり、固定極122は本発明における第2固定極の例である。
【0022】
振動板121は、音波に応じて振動する。振動板121は、例えば、金属製の薄膜である。固定極122は、平板状で、例えば、アルミニウムなどの導電性の金属製である。固定極122は、振動板121の前方に、振動板121と対向して配置される。その結果、固定極122は、振動板121と共に第2コンデンサを構成する。
【0023】
インピーダンス変換回路13は、第1コンデンサマイクロホンユニット11と第2コンデンサマイクロホンユニット12それぞれからの出力信号のインピーダンスを変換する。インピーダンス変換回路13は、例えば、FET(Field Effect Transistor)を備える公知のマイクロホン用のインピーダンス変換回路である。インピーダンス変換回路13は、固定極112,122に接続される。
【0024】
成極電圧生成回路14は、第2コンデンサマイクロホンユニット12に供給される成極電圧を生成する。成極電圧生成回路14は、電源入力端子TDCと、定電流ダイオードCRDと、定電圧ダイオードZDと、電解コンデンサC1と、発振回路141と、倍電圧整流回路142と、平滑回路143と、を備える。
【0025】
発振回路141は、例えば、ファントム電源からの直流電圧に基づいて、交流の高周波信号(交流電圧)を生成する。発振回路141は、トランジスタTRと、2つのコンデンサC2,C3と、抵抗R1と、可変抵抗VRと、2つのコイルL1,L2と、を備える公知の発振回路である。
【0026】
倍電圧整流回路142は、発振回路141で生成された交流電圧を昇圧すると共に直流に整流して成極電圧を生成する。倍電圧整流回路142は、4つのダイオードD1,D2,D3,D4と、3つのコンデンサC4,C5,C6と、を備える公知の4倍電圧整流回路である。
【0027】
なお、本発明における倍電圧整流回路は、4倍電圧整流回路に限定されない。
【0028】
平滑回路143は、倍電圧整流回路142により生成された成極電圧を平滑する。平滑回路143は、コンデンサC7と抵抗R2とを備える公知の平滑回路である。
【0029】
電源入力端子TDCは、定電流ダイオードCRDと可変抵抗VRとを介して、トランジスタTRのコレクタに接続される。その結果、トランジスタTRには、例えば、1mA程度の定電流が供給される。定電流ダイオードCRDと可変抵抗VRとの接続点とトランジスタTRのエミッタとの間には、コンデンサC2が接続される。すなわち、トランジスタTRのコレクタ-エミッタ間には、可変抵抗VRとコンデンサC2とが接続される。トランジスタTRのコレクタ-ベース間には、抵抗R1が接続される。トランジスタTRのエミッタとアースとの間には、コイルL1が接続される。トランジスタTRのエミッタ-ベース間には、コイルL2とコンデンサC3とが直列に接続される。定電流ダイオードCRDと可変抵抗VRとの中間とアースとの間には、定電圧ダイオードZDと電解コンデンサC1とが並列に接続される。
【0030】
コイルL1,L2は、電磁的に誘導結合される。コイルL1に対するコイルL2の巻数比は、例えば、8倍である。そのため、例えば、電源入力端子TDCから入力される約5Vの直流電圧は、発振回路141を介して、約40Vの交流電圧に昇圧される。発振回路141の出力(発振周波数)は、可変抵抗VRにより所定の範囲内で可変可能である。すなわち、成極電圧の値は、可変抵抗VRにより可変可能である。
【0031】
4つのダイオードD1-D4は、アースと倍電圧整流回路142の出力端子Toutとの間に、アース側からダイオードD1、ダイオードD2、ダイオードD3、ダイオードD4の順に順方向に直列接続される。すなわち、ダイオードD1のアノードがアースに接続され、ダイオードD4のカソードが出力端子Toutに接続される。ダイオードD1,D2の接続点とコンデンサC3とコイルL2との接続点との間には、コンデンサC4が接続される。ダイオードD1,D2の接続点とダイオードD3,D4の接続点との間には、コンデンサC5が接続される。ダイオードD2,D3の接続点と出力端子Toutとの間には、コンデンサC6が接続される。出力端子Toutとアースとの間には、コンデンサC7と抵抗R2とが並列に接続される。
【0032】
このように、倍電圧整流回路142は、発振回路141から出力される約40Vの交流電圧を約160Vに昇圧すると共に直流に整流して、成極電圧を生成する。成極電圧は、平滑回路143により平滑されて、スイッチ15へ出力される。
【0033】
ここで、本実施の形態において、成極電圧の極性は「正」である。成極電圧の極性(正・負)は、倍電圧整流回路142の4つのダイオードD1-D4が逆向きに接続されることにより、逆向きに変更できる。すなわち、例えば、4つのダイオードD1-D4は、アース側からダイオードD1、ダイオードD2、ダイオードD3、ダイオードD4の順に逆方向に直列接続されると、成極電圧の極性は「負」となる。
【0034】
スイッチ15は、第2コンデンサマイクロホンユニット12への成極電圧の供給のオン・オフを切り替えることにより、本マイクロホン1の指向性を選択するためのスイッチである。スイッチ15は、例えば、c接点スイッチである。スイッチ15は、共通接点151と第1接点152と第2接点153とを備える。共通接点151は、第2コンデンサマイクロホンユニット12の振動板121に接続される。第1接点152は、倍電圧整流回路142の出力端子Toutに接続される。第2接点153は、固定極112,122とインピーダンス変換回路13との接続点に接続される。
【0035】
共通接点151は、第1接点152と第2接点153とのいずれかに接続される。すなわち、共通接点151が第1接点152に接続されたとき、成極電圧生成回路14からの成極電圧は、第2コンデンサマイクロホンユニット12の振動板121に供給される(成極電圧の供給オン)。その結果、第2コンデンサマイクロホンユニット12は、音波を収音可能となる。この場合、第1コンデンサマイクロホンユニット11と第2コンデンサマイクロホンユニット12それぞれの出力信号は、重畳されて(加算されて)インピーダンス変換回路13に出力される。一方、共通接点151が第2接点153に接続されたとき、成極電圧生成回路14からの成極電圧は、第2コンデンサマイクロホンユニット12の振動板121に供給されない(成極電圧の供給オフ)。その結果、第2コンデンサマイクロホンユニット12は、音波を収音不可能となる。この場合、第1コンデンサマイクロホンユニット11の出力信号のみが、インピーダンス変換回路13に出力される。
【0036】
●可変指向性コンデンサマイクロホンの指向性
次に、本マイクロホン1の指向性は、以下に説明される。以下の説明において、図1も併せて参照される。
【0037】
本マイクロホン1の指向性は、第1コンデンサマイクロホンユニット11の指向性と、振動板111に帯電される電荷の極性(正・負)と、第2コンデンサマイクロホンユニット12の指向性と、振動板121に供給される電圧の極性(正・負)と、第1コンデンサマイクロホンユニット11の感度(以下「S1」と表記される)と第2コンデンサマイクロホンユニット12の感度(以下「S2」と表記される)との大小関係(感度比:S1/S2)と、に基づいて、決定される。
【0038】
以下の説明において、第1コンデンサマイクロホンユニット11と第2コンデンサマイクロホンユニット12それぞれの指向性は単一指向性であり、振動板111に蓄えられる電荷の極性は「正」であるものとする。
【0039】
図2は、本マイクロホン1の指向性の組み合わせの例を示す模式図である。
【0040】
先ず、前述のとおり、共通接点151が第2接点153に接続されたとき、成極電圧生成回路14からの成極電圧は、第2コンデンサマイクロホンユニット12の振動板121に供給されない。この場合、本マイクロホン1の指向性は、第1コンデンサマイクロホンユニット11の指向性である単一指向性となる。
【0041】
次いで、前述のとおり、共通接点151が第1接点152に接続されたとき、成極電圧生成回路14からの成極電圧は、第2コンデンサマイクロホンユニット12の振動板121に供給される。この場合、振動板121に供給される成極電圧が「正」であり、感度比S1/S2が「1」のとき、本マイクロホン1の指向性は、無指向性となる。また、振動板121に供給される成極電圧が「正」であり、感度比S1/S2が「1<」のとき、本マイクロホン1の指向性は、サブカーディオイドとなる。すなわち、感度比S1/S2が「1」となる電圧値から、成極電圧を低下させると、本マイクロホン1の指向性は、無指向性からサブカーディオイドに変化する。
【0042】
一方、振動板121に供給される成極電圧が「負」であり(ダイオードD1-D4の向きが図1の逆方向のとき)、感度比S1/S2が「1」のとき、本マイクロホン1の指向性は、双指向性となる。また、振動板121に供給される成極電圧が「負」であり、感度比S1/S2が「1<」のとき、本マイクロホン1の指向性は、ハイパーカーディオイドまたはスーパーカーディオイドとなる。すなわち、感度比S1/S2が「1」となる電圧値から、成極電圧を低下させると、本マイクロホン1の指向性は、双指向性からハイパーカーディオイド、スーパーカーディオイドの順で変化する。
【0043】
このように、本マイクロホン1では、エレクトレット方式の第1コンデンサマイクロホンユニット11と、直流バイアス方式の第2コンデンサマイクロホンユニット12と、が組み合わせられる。その結果、本マイクロホン1は、成極電圧生成回路14の回路規模を最小限としつつ、2つの指向性の切り替えを実現する。さらに、本マイクロホン1は、可変抵抗VRの抵抗値を変更することにより、成極電圧を調整可能である。その結果、本マイクロホン1は、2つの指向性のうち、一方の指向性を容易に調整可能である。
【0044】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、本マイクロホン1は、前方に向けて配置される第1コンデンサマイクロホンユニット11と、後方に向けて配置される第2コンデンサマイクロホンユニット12と、第2コンデンサマイクロホンユニット12に供給される成極電圧を生成する成極電圧生成回路14と、第2コンデンサマイクロホンユニット12への成極電圧の供給のオン・オフを切り替えるスイッチ15と、を有してなる。第1コンデンサマイクロホンユニット11はエレクトレット方式のコンデンサマイクロホンユニットであり、第2コンデンサマイクロホンユニット12は直流バイアス方式のコンデンサマイクロホンユニットである。この構成によれば、本マイクロホン1は、成極電圧生成回路14の回路規模を最小限としつつ、2つの指向性の切り替えを実現する。また、本マイクロホン1は、成極電圧を調整することにより、第2コンデンサマイクロホンユニット12の指向性を容易に調整可能である。
【0045】
また、以上説明した実施の形態によれば、成極電圧生成回路14は、所定の範囲で発振周波数を可変可能な発振回路141と、発振回路141の出力を整流する倍電圧整流回路142と、を備える。この構成によれば、本マイクロホン1は、発振回路141の出力周波数を変更することにより成極電圧を容易に調整可能である。
【0046】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、成極電圧の極性が振動板111に蓄えられる電荷の極性と同じとき、本マイクロホン1の指向性は、単一指向性と、無指向性またはサブカーディオイドと、に切替可能である。一方、成極電圧の極性が振動板111に蓄えられる電荷の極性と異なるとき、本マイクロホン1の指向性は、単一指向性と、双指向性、ハイパーカーディオイドまたはスーパーカーディオイドと、に切替可能である。
【0047】
なお、第1コンデンサマイクロホンユニットの固定極は、第2コンデンサマイクロホンユニットの固定極と共通していてもよい。この構成によれば、本マイクロホン1では、マイクロホンユニットの構造が簡素化できる。
【0048】
また、本発明における第1コンデンサマイクロホンユニットの指向性は、単一指向性に限定されない。すなわち、例えば、第1コンデンサマイクロホンユニットの指向性は、ハイパーカーディオイドでもよい。この場合、本マイクロホンの指向性は、例えば、ハイパーカーディオイドと双指向性とに切替可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 可変指向性コンデンサマイクロホン
11 第1コンデンサマイクロホンユニット
111 振動板(第1振動板)
112 固定極(第1固定極)
12 第2コンデンサマイクロホンユニット
121 振動板(第2振動板)
122 固定極(第2固定極)
14 成極電圧生成回路
141 発振回路
142 倍電圧整流回路
15 スイッチ

図1
図2