(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068798
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】羽根板位置姿勢自律変更風車
(51)【国際特許分類】
F03D 3/02 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
F03D3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020186838
(22)【出願日】2020-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】592040815
【氏名又は名称】木内 学
(72)【発明者】
【氏名】木内 学
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA12
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC05
(57)【要約】
【課題】 本発明は、中小型風車に適する“周転羽根板方式”風車の抜本的改革と顕著な高能率化を実現した新形式風車に関するものであり、従来の同方式風車が内包する根本的問題、即ち、向い風による該風車の回転阻害作用、を回避できる機構と機能を考案し、それらを具備する羽根板位置姿勢自律変更風車を提示したものである。
【解決手段】本発明による“羽根板位置姿勢自律変更風車”は、風向きに応じて、装備している該羽根板の位置および姿勢を該風車自体が自律的に変更し得る2軸周回転羽根板方式と名付けた新たな機構および機能を具備しており、追い風を十分に取込み、向い風は全て逃がすための該羽根板の位置および姿勢の変更を、風の力のみにより自律的に行う機構と機能を有している。該機構および機能により、該風車は、同程度の規模を持つ従来型風車に比較して、風力を回転力に転換する能率を大幅に高め、大きな回転力を得ることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要の長さと太さおよび横断面形状と寸法を有する中実又は中空の軸であって、自らの軸心周りに回転可能であるように、両端部位又は所要の中間部位を所要の軸受等を用いて支持されている主回転軸があり、該主回転軸の長手方向の所要の単一又は複数の部位に、該主回転軸の回転半径方向即ち該主回転軸と直交する方向に向けて所要数の腕木が取付け固定されており、且つ、該腕木は所要の形状寸法を持ち該主回転軸と一体となって回転可能であり、それぞれの該腕木の先端部位又は所要の複数部位に、該主回転軸と平行又は該主回転軸と所要の角度を持つように所要数の副回転支持軸が取付けられており、且つ、それぞれの該副回転支持軸は所要の形状寸法を有して単独の該腕木に取付けられている場合と複数の該腕木を連結して取付けられている場合があり、更に、該主回転軸の回転に伴って、該副回転支持軸が該腕木と共に該主回転軸の周りを周転するように取付けられており、更に、それぞれの該副回転支持軸には所要数の羽根板が取付けられており、該羽根板は所要の形状寸法を有し該副回転支持軸と共に該主回転軸周りを周転可能であるように取付けられており、加えて、それぞれの該羽根板はその周縁の一部部位又は周縁の一辺部位が該副回転支持軸に取付けられており、且つ、該羽根板の全部位がそれぞれ取付けられている該副回転支持軸を回転軸心としてその回りを回転することが可能であるように取付けられており、該羽根板の空間的位置と姿勢が、該羽根板の該主回転軸周りの周転および該副回転支持軸回りの回転からなる2軸周回転運動によって定まり、且つ、該羽根板の該2軸周回転運動が吹き付ける風の力によって自律的に起こる機能を持つことを特徴とする羽根板位置姿勢自律変更風車。
【請求項2】
該副回転支持軸を回転中心として回転可能であるように取付けられている該羽根板が、該副回転支持軸と共に該主回転軸周りを周転する過程で、追い風を受ける過程では、該副回転支持軸への取付け部位が該周転運動の外周側を周転する位置姿勢にあり、即ち、該羽根板が該副回転支持軸への取付け部位を外周側とし、他の回転可能部位が該腕木の取付け根元方向へ向かって該腕木に重なるようにたたみこまれた位置姿勢を保ち、風圧を受け止めつつ周転し、他方、向い風を受ける過程では、風の力により該羽根板が自律的に該腕木から離れ、該副回転支持軸回りを最大180度回転し、該取付け部位を風上とし、他の該回転可能部位を風下側にして、風の流れる方向に自律的に整列して風を逃がす位置姿勢を保ち、更に、該羽根板の該主回転軸周りの周回が進むとともに、該腕木から離れた位置姿勢にあった該羽根板が自律的に該腕木に近づき、風が向い風から再び追い風に変わる周回位置で、該羽根板が再び該腕木に重なる位置姿勢にたたみ込まれた状態になり、風圧を受け止める位置姿勢に戻ることを特徴とする[請求項1]に示す該羽根板位置姿勢自律変更風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記周転羽根板方式の風車の革新的能率向上に関わる発明であり、追い風又は向い風に応じて、風の圧力を受ける羽根板の取付け位置と姿勢を、風車自体が風の力そのものを利用して自律的に変更し、追い風を効果的に取込んで回転力を獲得し、向い風を逃がして回転阻害抵抗を回避し、結果、同一の風から得られる回転力を、同程度の大きさを持つ従来の風車に比較して大幅に増大した高能率風車の発明である。
【背景技術】
【0002】
風のエネルギーを利用して風車を回し、その回転力を利用して、井水や河川水の汲み上げ、穀物の脱穀および製粉等を行うことは、古来より実施されてきたが、近年では、地球環境保護の観点から、風力を利用した発電が注目され、大型風力発電施設が世界各所に設置され、更に拡大する動きが強まっている。発電分野での風車の活用は、風エネルギーの利用効率および発電効率を高める観点から、回転羽根の長さ、あるいは、回転羽根車の直径が数10m~100m以上にも至る大型風車の利用が先行している。しかし、大型風車の建設運用には、陸上又は海上の設置場所の確保、高度な設計および製作技術の獲得、建設技術の整備、建設費用の調達、管理技術の修得等様々の面からの問題や制約が多い。
【0003】
他方、回転羽根車又は周転羽根板車の直径が数m以下の中小型の効率的な風車があれば、個々の工場や一般家庭、電力網が未整備な地方あるいは地域など、必要な場所における必要な規模の独立型又は分散型の自立発電システムの建設が可能になり、社会機能の拡充や多様化、市民生活の質的向上ばかりでなく、再生循環型社会の建設推進など、多くの分野で活用できる。本発明は、我国が目指す持続可能な社会におけるエネルギー供給問題に貢献する技術に関わるものであり、地球環境保護の有力手段の一つとして注目されている風力発電を更に普及させるために有効な中小型風車、とりわけ、社会のより広い分野や地域での風力発電の利用拡大に柔軟に寄与し得る中小型高能率風車に関する発明である。
【0004】
現行の風車技術では、風力を利用して回転力を生み出す機構は、風圧即ち風の流れを受け止める羽根又は羽根板の働きおよびその使い方によって、大きく2種類に分けられる。
第1の方式は、“プロペラー方式”又は“回転羽根方式”であり、用いる回転羽根としては、理論的に設計された翼形の横断面形状又は特定の横断面形状を有し、長手方向には同じく理論的に計算された特定の捩れを付与された羽根を用いる風車であり、風の流れ方向と平行に設置された該風車の主回転軸に、該回転羽根の根元を取付け固定し、前方から吹き付ける風によって該羽根に発生する揚力を回転モーメントに変換して該風車主回転軸を回す方式である。なお、この方式では、該回転羽根とそれらを取付けた該主回転軸が、風の流れを正面から受ける必要があるので、風の流れ方向の変化に応じて、該主回転軸と該回転羽根を支持する該風車の躯体一部部位が、該風車台座の上で風に正面から向き合う方向に回転し、該躯体部位の方向を変更する機構と機能が必要である。
【0005】
第2の方式は、周転羽根板方式と呼ぶことが出来る風車であり、該風車の中心に風の流れ方向と直交する方向又は所要の角度で交わる方向に主回転軸を配設し、該主回転軸に対して、その回転半径方向に伸びる腕木を取付け固定し、取付けられた該腕木の所要の部位に風を受け止めるための所要の羽根板を取付け固定し、該主回転軸に向かって横から吹き付ける風の圧力を該羽根板を利用して直接的に受け、得られた風の力を該腕木によりモーメントに転換して該主回転軸に伝え、該主回転軸を回す方式である([
図1]]参照)。
【0006】
この方式は簡易であるが、該羽根板の該主回転軸周りの周転運動に際して、追い風となる周転位置では、該羽根板に対して、該主回転軸の回転を促進する方向に風力が作用するが、向い風となる周転位置では、該主回転軸の回転を阻止する方向に風力が作用する。即ち、該主回転軸周りを周転する該羽根板に作用する風力は、半周転の過程では回転促進力、残り半周転の過程では回転阻止力となり、矛盾する風力効果が発生する。この矛盾を回避するため、該羽根板の取付け方や形状寸法などに関して、多くの工夫がなされ提案されてきたが、その効果には限界があり、適切な解決策には至っていない。
【0007】
該周転羽根板方式の風車を有効ならしめるためには、イ)該風車の前に集風ダクトを配設し、該風車の半分の該羽根板にだけ集中的に追い風を当て、残りの半分の該羽根板を風遮断壁で覆い、向い風が当らないように対策する、又は、ロ)該風車全体を円筒状隔壁で周囲から遮断し、集風ダクトを用いて該風車を覆う円筒状隔壁の一部部位から中へ向かって風を吹き込み、該円筒状隔壁の内面に沿って風が周回状に流れるように仕向けて、全ての該羽根板に対して追い風となって吹き付けるように対策する、等が必要である。但し、該風車および該集風ダクトは、該回転羽根方式の風車の場合と同じように、風向きの変化に対応して、配設方向を変化させ得る機構および機能を持たなければならない。
【0008】
本発明は、[0005]に示した該周転羽根板方式の風車の革新に関する発明であるが、[0006]において指摘した問題、即ち、該羽根板の周転運動に際し、前半周では追い風が、後半周では向い風が吹き付け、該羽根板の該周転運動に対し、それぞれ周転促進力又は周転阻害力が加わる、という矛盾する風力問題を解決できる新たな機構と機能を考案し、それらを組み込むことにより、追い風による該周転促進力を効果的に獲得すると同時に、向い風による該周転阻害力を抜本的に回避できる新形式の高能率風車を提示したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、[0005]に述べた該周転羽根板方式風車を抜本的に改革した新形式の風車に関するものであり、従来風車の周転部位、即ち、該主回転軸、該腕木、該羽根板により構成される該“周転羽根板車”が内包する根本問題を解決できる新たな機構と機能を持つ風車、即ち、羽根板位置姿勢自律変更風車を提案する発明である。従来技術に基づく該周転羽根板車では、該主回転軸に該腕木を取付け、該腕木に該羽根板を取付け固定し、故に、該羽根板が該主回転軸周りを周転する際に、前半周転では追い風を受け、残り半周転では向い風を受け、該主回転軸に対して、該前半周転では回転促進モーメント、該後半周転では回転阻止モーメントが加わるという矛盾が発生し、この矛盾に有効に対応出来なかった。即ち、従来の設計および製作法に基づいて、該腕木に該羽根板を直接的に取付け固定する構造を採用する限り、避けられない矛盾が発生する。この矛盾の解決には、該周転羽根板車における該羽根板の取付け方に関する新たな機構および機能の考案と導入が不可欠である。
【0010】
通常予想される該周転羽根板方式の風車の稼働形態の下では、所定の設置位置を維持し、該羽根板が該風車の該主回転軸周りを周転すること、また、風は一方向から吹き付けること、故に、該周転羽根板車が1回転する、即ち、該羽根板が1周転する間に、該羽根板に対する風の吹き付けは、追い風から向い風へ、向い風から追い風へと、繰り返し変化すること、などが必然的事象として起る。
【0011】
本発明では、該周転羽根板車に対する該羽根板の取付け方法として、一定の位置および姿勢を以て固定的に取付ける条件の下では、向い風に起因する該周転羽根板車に対する該周転阻害問題の解決はあり得ないと結論づけ、その上で、該主回転軸すなわち該周転羽根板車の1回転又は該羽根板の1周転の間に、追い風の力を直接的且つ十分に取込み、他方、向い風に対しては、該羽根板の該周転羽根板車上の位置および姿勢を、該風車自体が自律的に変更し、向い風の該周転阻害作用を回避し得る機構および機能を持つ該羽根板位置姿勢自律変更方式の風車を考案した。結果、該羽根板位置姿勢自律変更方式の風車により、同程度の規模を持つ従来型の該周転羽根板方式の風車に比較して、風力を回転力に転換する能率を大幅に高めることに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0005]で説明した該周転羽根板方式による従来型の風車では、回転中心に配設した該主回転軸に対して、回転半径方向に該腕木を取付け、更に、該腕木に風力を受ける該羽根板を取付け、受けた風圧を該腕木によりモーメントに転換して、該主回転軸に伝え、該風車即ち該周転羽根板車を回転させる仕組が採用されている。この方式の風車における回転運動は、回転中心に設置されている該主回転軸の回転運動のみであり、該腕木および該羽根板は、該主回転軸と共に、該主回転軸の周りを周転運動するだけである。その意味で、この方式は、“1軸周転羽根板方式”と呼べる回転であり、この方式を採用している限り、[0006]で説明した矛盾の発生は避けられない。
【0013】
本発明では、該主回転軸周りを周転中の該羽根板が、風の流れに対する位置および姿勢を変更することを可能ならしめるため、該腕木に対する該羽根板の取付け方法を抜本的に改め、該腕木には先ず副回転支持軸を取付け、該副回転支持軸に該羽根板を回転可能に取付けるという、2軸周回転羽根板方式を考案した。この2軸周回転羽根板方式に依れば、該主回転軸回りを周転中の該羽根板が、風向きの変化に対応して位置および姿勢を変更し、向い風による該主回転軸に対する回転阻止モーメントの発生と云う阻害作用を回避できること、しかも、その位置および姿勢の変更を、風の力のみを利用して該風車自体が自律的に行い得ることを見出した([
図2]参照)。
【0014】
[0013]に示した該2軸周回転羽根板方式を導入することにより、周転中の該羽根板が、追い風又は向い風に応じて、自らの位置および姿勢を自律的に変更し、追い風を効率的に取込み、向い風を可能な限り逃がして、該主回転軸の円滑かつ高能率の回転を実現できることが可能になり、結果、かかる新たな機構および機能を持つ高能率風車、即ち、該羽根板位置姿勢自律変更風車を発明するに至った。
【0015】
本発明による該2軸周回転羽根板方式に基づく該羽根板位置姿勢自律変更風車の構造、機構、機能、および、特徴は、以下の通りである。即ち、
1)所要の形状寸法の横断面と長さを持ち、軸心回りの回転が可能な方式により両端部位又は所要中間部位を支持されている中実又は中空の主回転軸があり([
図2]、[
図3]参照)、
2)該主回転軸の長手方向所要の部位に、その回転半径方向又は接線方向に向けて、所要の形状寸法を有する所要の本数の該腕木が取付け固定されており([
図3]、[
図5]参照)、
3)各々の該腕木の先端部位あるいは所要部位に、所要の形状寸法を有する所要本数の該副回転支持軸が取付けられており、その際必要に応じて、1本の該副回転支持軸が1本の該腕木に取付けられている場合と、1本の該副回転支持軸が複数本の該腕木を連結する形で取付けられている場合があり([
図3]、[
図6]参照)、
4)該副回転支持軸は、該腕木への所要取付け位置において、該副回転支持軸自体が回転できる機構、又は必要に応じて、該副回転支持軸が該腕木に固定され自身の回転は不可の構造、を以て取付けられており([
図4]参照)、
5)各々の該副回転支持軸には、所要の形状および寸法を有する所要数の該羽根板が、該腕木と平行となる姿勢又は該腕木と所要の角度をなす姿勢を以て、該副回転支持軸に対して回転可能に取付けられており、且つ、取付け形態としては、該羽根板が周転運動をする際に外周側を周る該羽根板の周縁一端部位又は周縁一辺部位が該副回転支持軸に対して回転可能に取付けられており、即ち、該羽根板の該取付け部以外の自由部位が該副回転支持軸を回転中心として回転できるように取付けられており([
図2]、[
図3]、[
図4]参照)、
6)該羽根板の回転許容方向および許容角度の範囲としては、該主回転軸および該腕木の回転方向、即ち、該副回転支持軸の周転方向と逆の方向には、該羽根板の該副回転支持軸回りの回転の際の該羽根板自由部先端が該主回転軸の方を向く位置姿勢、即ち、該羽根板が該腕木と平行になり、風を直接受けとめる位置姿勢以上には回転は不可とされており、他方、該副回転支持軸の周転方向と同じ方向には180度回転可能であり、風の方向に整列して風を逃がすことが可能とされており、それぞれの方向の回転許容限界を実効ならしめるために、該腕木の所要部位に所要のストッパーが設置されており([
図2]、[
図4]参照)、
7)該腕木および該副回転支持軸が1回転又は1周転して元の位置へ戻り、風の向きが向い風から追い風へ変わる位置まで来ると、該羽根板は、該腕木と平行な元の位置および姿勢角度に自律的に戻ってくる機構と機能を有しており([
図2]参照)、
以上の如く、本発明では、上述の構造と機構および機能を有する該主回転軸、該腕木、該副回転支持軸、該羽根板から構成される該2軸周回転羽根板方式の羽根車を考案し、周転中の羽根板の位置姿勢を風の力そのものを利用して自律的に変更する機能により、風の力を著しく効率的に活用することを可能とする該羽根板位置姿勢自律変更風車を発明した。
【発明の効果】
【0016】
現在、発電に供されている風車は、効率性や経済性の理由から大型風車であり、風車方式としては、[0004]で説明したいわゆる該回転羽根方式である。他方、[0005]で説明した従来型の該周転羽根板方式の風車は、平板状の羽根板を採用する限り、風車としての有用な回転力を獲得できる可能性は少ないので、風圧を受ける羽根板の形状を工夫する多くの試みがなされた。それらの中で代表的な方策は、追い風の場合と向い風との場合とで該羽根板の受風能力に差を持たせる、即ち、該羽根板の形状を曲面とし、周回時の追い風過程では受風面を凹形状としてより多くの風を取り込み、向い風過程では受風面を凸形状として風を逃がし易くするなどして、両過程での受風量の違いを発生させ、その違いから回転力を生み出す努力が為された。しかしながら、そのようにして生み出すことが出来る回転力は、追い風効果と向い風効果の差を引き出そうとする手法であるが故に、さほど大きな力にはなり得ず、効果的に発電機を駆動して有用な発電量を得る水準にまでは至らなかったのが実情である。本発明による該2軸周回転羽根板方式に基づく該羽根板位置姿勢自律変更風車は、[0005]で説明した該周転羽根板方式の従来型の風車とは全く異なる機構および機能を具備しており、極めて能率的に風の力を採り入れて該2軸周回転羽根板車を回転できる。本発明の効果・利点をまとめると以下の様に説明できる。
【0017】
本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車では、周転中の追い風過程と向い風過程とで、風を受ける該羽根板の実質取付け位置および姿勢が自律的に変化し、追い風は全面的に取込んで有効活用し、向い風は全面的に逃がして、その該主回転軸に対する回転阻害作用を回避できる機構と機能を有している。これにより、本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車が風力によって発生する回転力は、従来型の固定羽根板型の風車に比して、少なくとも数倍になり、従来の固定羽根板型の風車に比して著しく低い風速によっても、該主回転軸の安定した回転を確保できる。
【0018】
本発明に依る該羽根板位置姿勢自律変更風車の標準的な使用形態は、該主回転軸を垂直に設置するいわゆる縦型又は立型風車としての使用形態であり、狭い設置面積であっても、必要な高さを与えることにより、所要の回転出力を獲得し易い。又、その形態および構造から稼働時の安全を確保し易い。
【0019】
本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車は極めて簡素な構造をしており、主な部品は、該主回転軸、所要の数の該腕木、所要の数の該副回転支持軸および該羽根板、並びに、風車全体を支える躯体、である([
図7]参照)。素材としては、金属材料だけでなく、木材、布、紙、その他の自然環境への負荷が低く再生可能な材料を用いることも可能である。又、製作が容易であり、僅かな資材と手段があれば製作できる。したがって、維持管理や部材の交換、万一の場合の修復も容易であり、製作、建設、運用、管理の全般にわたって、実用化していく上での特別な問題要因は見当たらない。
【0020】
本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車が具備する該羽根板の位置姿勢の変更には、変更のための駆動装置や外部からの駆動力の注入が一切不要であり、風の力のみを利用して全て自律的に行われる。換言すれば、風の流れに調和しつつ該羽根板の位置姿勢の変化が起こるので、特段の付加的装置や仕組みは不要である。従って、故障等の問題発生の可能性は極めて低い。
【0021】
本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車の構造は上述したように簡易であるが故に、設計・製作・組立ばかりでなく、建設に際しての部材運搬や基礎工事が簡素化できる。それ故、堅牢な風車を少ない費用で建設することが可能であり、自然環境の厳しい立地条件下であっても、信頼性の高い風車を建設し稼働できる。また、保守・管理が容易であることから、機械設備の導入が難しい山間部、僻地、乾燥地帯等への導入も十分可能であり、耐久性も高い。
【0022】
本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車は、製作および建設が容易であり、製作費および建設費が低いため、任意の場所で、任意の大きさおよび数の風車を建設し、自立型、あるいは、地域連結ネットワーク型の電力システムの建設や運用が可能であり、社会インフラの充実に貢献できる。
【0023】
本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車の出力あるいは回転力を高めるには、イ)該風車各部位の寸法を適宜拡大し、可能な範囲で大型化する、ロ)該羽根板の受風面積を増やす、ハ)該羽根板の全体形状や表面形状を最適化して受風能力を高める、ニ)適当な規模の該風車を並立し、回転力を連結する、などが可能であるが、いずれにせよ、該羽根板位置姿勢自律変更風車は、その場の状況や事情・条件に応じて、柔軟に対応し易い構造、機構、機能を有している。
【0024】
本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車に取付ける該羽根板としては、平坦な板状の羽根板ばかりでなく、所要の曲面形状を持つ曲板状羽根板、羽根板の外縁周に沿って羽根板面と垂直又は所要の角度をなすリブ又は立壁を持つ箱状又は容器状の羽根板、表面に吹き付ける風の流れを制御する凹凸形状等を付与した羽根板、更に、上記複数種類の羽根板を組合せて構成される複合形状をもつ羽根板などが利用できる([
図8]参照)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】横断面図 周転羽根板方式の羽根板固定型風車の横(水平)断面から見た基本構造を概念的に示す。
【
図2】横断面図 本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車の横(水平)断面から見た基本的構造と機構を概念的に示す。
【
図3】縦断面図 本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車の縦(垂直)断面から見た基本的構造と機構を概念的に示す。
【
図4】部分縦断面図 本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車の核となる2軸周回転羽根板方式を支える2種類の軸、即ち、該主回転軸および該副回転支持軸の支持方法の事例を示す。
【
図5】部分横断面図 本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車における各部品間の結合方法について事例を示す。第1は、該主回転軸と該腕木との結合、第2は、該腕木と該副回転支持軸との結合である。
【
図6】部分組立図 本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車において、該主回転軸の長手方向に異なる複数の部位にそれぞれ複数の該腕木を取付け、更に、複数の該腕木を連結する形態に該副回転支持軸を取付け、それぞれの該副回転支持軸に複数の該羽根板を取付ける構造、即ち、複層羽根板構造を持つ該2軸周回転羽根板車の基本概念を示す。
【
図7】部品図:立体図、縦断面図 本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車を構成する主要部品を示す。
【
図8】羽根板図 本発明に依る該羽根板位置姿勢自律変更風車において風圧を受ける羽根板の2、3の事例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車の実施形態および留意点を取りまとめて以下に示す。
本発明による該羽根板位置姿勢自律変更風車を構成する主たる部品および部材は、[
図3]~[
図8]に示すように、該風車本体躯体、該主回転軸、および、所要の数の該腕木、所要の数の該副回転支持軸および該羽根板であるが、いずれも極めて簡素な形状および構造を有するものであり、設計、製作、組立、建設は、工学や技術に関する基本的な知識や技術力を用いて容易に実施できる。特別の知識あるいは特殊の技能を必要とせず、通常の設備機械等製造現場で用いられる手順・方法によって製作可能である。
【0027】
上記各部品に加えて、該羽根板位置姿勢自律変更風車を建設するために、該主回転軸および該副回転支持軸を支えて滑らかな回転を可能とするための支持台座およびスラスト軸受および回転軸受、該腕木を主回転軸に取付け固定するためのダイヤフラム等結合部材、該副回転支持軸を該腕木に取付けるための結合部材、該羽根板を該副回転支持軸へ回転可能に取付けるための軸受台および回転軸受、該風車の全体形状を構成する構造部材、必要強度を持つ本体躯体を組上げるための結合部材、などが必要となるが、これらはいずれも一般機械部品や一般建築部材として用いられている汎用品を直接的または必要な加工を加えて利用できるので、入手や製作に問題は無い([
図7]、[
図8]参照)。
【0028】
該羽根板位置姿勢自律変更風車の基本的な使用形態は、該主回転軸を垂直に立てた形態での使用であるが、該主回転軸を水平に設置する、あるいは、傾斜した状態に置く、などの使用形態も採用可能であり、そのような設置使用形態を採用した場合であっても、本願書で説明した該羽根板位置姿勢自律変更風車の利点や特性が失われることは無い。
【0029】
該羽根板位置姿勢自律変更風車の製作および利用に際して、大きさや出力に関する特別の制約や限定条件は無い。建設に際しては、設置予定場所、年間を通しての風向・風速・風量に関するデータ、想定される最大および最小風速、狙いとする回転出力あるいは発電量、等を考慮して、該風車全体躯体の大きさ、接地面積、高さ、該主回転軸の長さ・太さ、該腕木の回転半径、太さ、該羽根板の形状と寸法、それぞれの必要数、必要強度、更に加えて、各部材および軸受等部品、結合用部品、等の形状、寸法、数を決定する。設計及び製作の自由度は高く、設置場所、周囲の環境条件、気候、その他様々な要求や希望に柔軟に対応することが可能である([
図2]~[
図7]参照)。
【0030】
該腕木は、該主回転軸の長手方向所要の部位に所要の本数を取付けるが、該主回転軸の複数の部位に決められた本数の該腕木を取付ける場合や、長手方向に異なる複数部位にそれぞれ異なる数の該腕木を取付ける場合がある([
図2]、[
図6]参照)。
【0031】
該副回転支持軸は、各該腕木の半径方向の先端部位、又は、所要の複数部位に取付けるが、それぞれの該副回転支持軸をそれぞれの該腕木に独立して取付ける場合と、各々の該副回転支持軸が複数の該腕木を連結する形態で取付ける場合もある([
図6]参照)。
【0032】
該羽根板位置姿勢自律変更風車の出力は、該腕木長さと数、該羽根板の受風面積とその数、各回転支持部における摩擦損失等によって影響される。該2軸周回転羽根板車の軽量化や各回転支持部の摩擦損失の低減などにより、能率的な稼働が可能になる。
【0033】
該羽根板位置姿勢自律変更風車を構成する部材・部品に用いる材料としては、金属材料に限定する必要は無く、木質材、紙・布材、高分子材、等を適宜活用して、回転部および周転部の重量を出来る限り軽量化することが、風の持つエネルギーの利用効率を高める上で有効である。
【0034】
該羽根板位置姿勢自律変更風車の機構および機能の利用に際して、それぞれの該羽根板は、該主回転軸周りを周転中に該副回転支持軸回りを回転するので、他の該羽根板や該副回転支持軸および該腕木と接触あるいは衝突等の干渉を起こさないよう、予め、模擬検証しておく必要がある([
図2]、[
図6]参照)。
【0035】
該羽根板位置姿勢自律変更風車において、該主回転軸に取付けた該腕木の先端部位又は所要の部位を所要の形状寸法を有する連結材を用いて周回方向に連結して環状構造を構成し、該2軸周回転羽根板車の該主回転軸周りの該周回転運動並びに該副回転支持軸回りの該回転運動に必要十分な構造強度を付与すると同時に、該連結材の取付け位置および形状寸法や重量を調節して、該2軸周回転羽根板車の固有振動数を調節し、該2軸周回転羽根板車の稼働時の自励振動の発生を回避することができる。
【0036】
該“羽根板位置姿勢自律変更風車”は、強度と使用素材材質について適切な配慮を加えれば、該風車が持つ構造、機構、機能をそのままに、何らの変更を加えること無く、水車としても使用できる。小規模河川の流れを利用しての発電も十分可能である。
【符号の説明】
【0037】
[
図1]~[
図8]において示した番号が意味する内容は以下の通りである。
1 主回転軸
2 腕木
3 副回転支持軸
4 羽根板
5 腕木取付け部
6 羽根板取付け部
7 風の流れ方向
8 主回転軸回転促進モーメント
9 主回転軸回転阻止モーメント
10 主回転軸周り副回転支持軸および羽根板周転
11 副回転支持軸回り羽根板回転
12 風車躯体
13 主回転軸支持台
14 副回転支持軸取付け台
15 回転力伝達用歯車又はプーリー
16 羽根板回転ストッパー
17 副回転支持軸取付け台内装回転軸受
18 主回転軸支持台内装回転軸受
19 主回転軸支持台内装スラスト軸受
20 周縁リブ付羽根板の事例
21 曲板型羽根板の事例
22 羽根板の副回転支持軸への取付け部位
23 風が衝突
24 風は通り抜け
25 取付けボルト