(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068839
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】凝集性供給原料の選択的焼結のための材料
(51)【国際特許分類】
B22F 10/16 20210101AFI20220427BHJP
B22F 12/17 20210101ALI20220427BHJP
B22F 12/20 20210101ALI20220427BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20220427BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20220427BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20220427BHJP
B22F 10/34 20210101ALI20220427BHJP
B22F 10/66 20210101ALI20220427BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20220427BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20220427BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20220427BHJP
B29C 64/135 20170101ALI20220427BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220427BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220427BHJP
B29C 64/371 20170101ALI20220427BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B22F10/16
B22F12/17
B22F12/20
B22F3/10 B
B22F3/105
B22F3/24 D
B22F3/10 C
B22F10/34
B22F10/66
B29C64/112
B29C64/165
B29C64/295
B29C64/135
B33Y10/00
B33Y70/00
B29C64/371
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】43
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021164562
(22)【出願日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】17/077,062
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】マハティ・チンタパリ
(72)【発明者】
【氏名】アン・プロコヴィエッツ
(72)【発明者】
【氏名】アシシュ・パテッカー
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ピン・ル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン・ジャクソン
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL16
4F213WL22
4F213WL32
4F213WL73
4F213WL74
4F213WL75
4G052DA02
4G052DA08
4G052DB12
4G052DC06
4K018CA09
4K018DA01
4K018DA03
4K018FA01
4K018KA63
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三次元オブジェクトを形成する方法の提供。
【解決手段】焼結可能な材料及びバインダを含む焼結可能な高密度供給原料を表面上に堆積させることと、パターンに従って焼結選択性材料を堆積させることと、バインダを除去することと、焼結可能な高密度供給原料を焼結して三次元焼結オブジェクトを形成することと、焼結オブジェクトを仕上げることと、を含む。焼結選択性材料は、溶媒と、溶媒中の焼結選択性材料と、を含み、焼結選択性材料は、高密度供給原料に浸透することができる特性を有する。システムは、表面と、焼結可能で高密度の供給原料を表面上に堆積するように配置された供給原料堆積ヘッドと、表面及び供給原料のうちの少なくとも1つに焼結選択性材料を堆積するように配置された焼結選択性堆積ヘッドと、バインダから供給原料を脱バインダするように配置されたデバインド機構と、脱バインダ後に供給原料を焼結する焼結チャンバと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元オブジェクトを形成する方法であって、
焼結可能な材料及びバインダを含む焼結可能な高密度供給原料を表面上に堆積させることと、
パターンに従って焼結選択性材料を堆積させることと、
前記バインダを除去することと、
前記焼結可能な高密度供給原料を焼結して、三次元焼結オブジェクトを形成することと、
前記焼結オブジェクトを仕上げることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記焼結可能な高密度供給原料が、凝集性でもある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バインダを有する前記焼結可能な供給原料を堆積させることが、バインダを有する前記焼結可能な供給原料を、液体、懸濁液、スラリー、溶液、エマルション、又は固体として堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記焼結可能な材料が、金属、セラミック、炭素質材料、及びポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バインダが、ポリマー、溶媒、界面活性剤、可塑剤、及び接着剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記供給原料が、金属射出成形、先細キャスティング、スリップキャスティング、及び押出に基づくプロセスのうちの少なくとも1つに使用される供給原料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記表面が、平坦な、湾曲した、静的な、移動する、加熱された、冷却された、及び室温にあるのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
焼結可能な供給原料を堆積させることが、スプレーコーティング、ドクターブレード、ローラーコーティング、スロットダイコーティング、共押出、ディップコーティング、スピンコーティング、圧延、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、転写圧延、又は支持されている層若しくは自立している層のうちの1つの前記表面上への転写のうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記焼結選択性材料を堆積させることが、パターンごとのプロセス、スプレー、スクリーン印刷、デジタル印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷のうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記焼結選択性材料を堆積させることが、焼結阻害剤、焼結促進剤、前記供給原料中の焼結阻害剤を不活性化するための不活性化剤、焼結阻害剤の前駆体、又は焼結促進剤の前駆体のうちの少なくとも1つを堆積させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記供給原料を堆積させた後に、前記供給原料を固定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記焼結選択性材料を堆積させることが、前記供給原料を堆積させた後かつ前記供給原料を固定する前、前記供給原料を固定した後、又は前記供給原料を固定している間のうちの1つで生じる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記供給原料を固定することが、前記供給原料からの溶媒の乾燥、紫外線硬化、及び前記供給原料の冷却のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記供給原料を堆積させ、前記焼結選択性材料を堆積させた後に、前記供給原料をプライミングすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記供給原料をプライミングすることが、焼結選択性材料が浸透する領域にレーザを適用すること、酸素プラズマを適用すること、前記供給原料にイオンをボンバード処理すること、及び溶媒を適用することのうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記焼結選択性材料を活性化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記焼結選択性材料を活性化することが、前記焼結選択性材料を乾燥させること、前記焼結選択性材料の成分を沈殿させること、化学反応、又は分解反応のいずれかのうちの1つを引き起こすための、熱、紫外線、又はエネルギー源のうちの少なくとも1つの適用のうちの1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記バインダを除去する前、又は前記供給原料を焼結する前のポストシェーピングを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ポストシェーピングが、成形、切断、減法製造(subtractive manufacturing)、旋削、スタンピング、及びダイシングのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記バインダを除去することが、加熱による熱的脱バインダ、燃焼、気化、又は分解のうちの1つによって前記バインダを除去すること、不活性ガス又は反応性ガス雰囲気中で加熱すること、真空中で加熱し、焼結温度未満の温度に加熱すること、溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン、キシレン、アルカン溶媒、ジメチルスルホキシド、有機アルコール、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、トリクロロエタン、ハロゲン化有機溶媒、トルエン、水、ヘプタン、又は超臨界CO2のうちの1つに前記ビルドを浸漬して溶媒脱バインダすること、からなる群から選択されるものを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ビルドを仕上げることが、焼結領域と非焼結領域との分離、表面仕上げの生成、精密な許容差を達成するためのシェーピング、及び機械加工のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
焼結選択性材料であって、
溶媒と、
前記溶媒中の焼結選択性材料であって、高密度供給原料に浸透することができる特性を有する、焼結選択性材料と、を含む、焼結選択性材料。
【請求項23】
前記焼結選択性材料が、焼結阻害剤を含む、請求項22に記載の材料。
【請求項24】
前記焼結選択性材料が、焼結促進剤を含む、請求項22に記載の材料。
【請求項25】
前記焼結選択性材料が、供給原料中の焼結阻害剤を不活性化するための不活性化剤を含む、請求項22に記載の材料。
【請求項26】
焼結選択性材料が、粘度調整剤及び界面活性剤のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項22に記載の材料。
【請求項27】
前記粘度調整剤及び前記界面活性剤のうちの少なくとも1つが、グリセリン、前記溶媒に可溶性のポリマー、ゲル化剤、前記溶媒に可溶性のオリゴマー、前記供給原料中のバインダとして使用される材料、ステアリン酸、及びドデシル硫酸ナトリウムからなる群から選択されるものを含む、請求項26に記載の材料。
【請求項28】
焼結選択性材料が、共溶媒を更に含む、請求項22に記載の材料。
【請求項29】
前記材料が、活性化可能である、請求項22に記載の材料。
【請求項30】
前記焼結選択性材料を活性化することが、前記焼結選択性材料を乾燥させること、前記焼結選択性材料の成分を沈殿させること、化学反応、又は分解反応のいずれかのうちの1つを引き起こすための、熱、不活性ガス若しくは反応性ガス雰囲気中の熱、真空、200~500℃の熱、焼結温度未満の温度への加熱、紫外線、又はエネルギー源のうちの少なくとも1つの適用のうちの1つを含む、請求項29に記載の材料。
【請求項31】
前記焼結選択性材料が、焼結温度よりも高い温度で焼結する材料である、請求項22に記載の材料。
【請求項32】
前記焼結選択性材料が、耐火性セラミック、耐火性セラミックの前駆体、焼結される前記材料をより高い焼結温度を有する材料に変換することができる酸化剤、1500℃よりも高い焼結温度を有する材料、1500℃よりも高い焼結温度を有する材料に変換する材料、並びに焼結される前記材料よりも高い焼結温度を有する金属酸化物を分解及び形成する材料のうちの1つである、請求項31に記載の材料。
【請求項33】
前記焼結選択性材料が、アルミノケイ酸塩鉱物、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄、クロマイト、セリア、イットリア、炭化ケイ素、酸化カルシウム含有セラミック、酸化マグネシウム含有セラミック、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、鉄、セリウム、バナジウム、タングステン、ランタン、ハフニウム、タンタル、ニオブ、及びクロムの元素のうちの少なくとも1つを含有するセラミック、並びにこれらの混合物からなる群のうちの1つからなる、請求項31に記載の材料。
【請求項34】
分解する前記材料が、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、モノステアリン酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ジルコン酸アンモニウム、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、炭酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、鉄アセチルアエトナート(iron acetyl aetonate)、フェロセン、クエン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄、シュウ酸鉄、リン酸鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、臭化セリウム、塩化セリウム、水酸化セリウム、硝酸セリウム、シュウ酸セリウム、硫酸セリウムからなる群のうちの1つを含む塩を含み、前記元素を含有する塩が、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、鉄、セリウム、バナジウム、タングステン、ランタン、ハフニウム、タンタル、ニオブ、及びクロム、並びにセリウム硝酸アンモニウムを含む、請求項32に記載の材料。
【請求項35】
分解する前記材料が、硫酸塩、硝酸アンモニウム、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、過硫酸塩、セリウム、及び硝酸塩からなる群から選択される酸化剤を含む、請求項32に記載の材料。
【請求項36】
前記焼結選択性材料が、供給原料中で使用されるセラミックの焼結温度よりも高い温度で焼結する材料である、請求項22に記載の材料。
【請求項37】
前記焼結選択性材料が、焼結を促進するように選択された材料を含む、請求項22に記載の材料。
【請求項38】
焼結を促進する前記材料が、グラファイトの粒子、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、sp2結合を有する炭素の形態、水素化ホウ素ナトリウム、還元糖、グルコース、スズ(II)を含有する化合物、鉄(II)を含有する化合物、シュウ酸、ギ酸、アスコルビン酸、アセトール、アルファヒドロキシケトン、リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ホウ砂、塩化アンモニウム、及び塩酸からなる群のうちの1つを含む、請求項37に記載の材料。
【請求項39】
焼結を促進する前記材料が、セラミックフラックス又はセラミックフラックスの前駆体のうちの1つを含む、請求項37に記載の材料。
【請求項40】
前記セラミックフラックスが、鉛、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、ストロンチウム、及びマンガン、長石、ホウ素、及び低いガラス転移を有するガラスフリット粒子からなる群のうちの1つの、酸化物、又はそれを含有する化合物を含む、請求項39に記載の材料。
【請求項41】
供給原料が、バインダ中に埋め込まれて焼結されるポリマーを含み、前記焼結選択性材料が、潤滑剤、結合を防止する界面活性剤、前記供給原料ポリマーに対して選択的な可塑剤/溶媒、粒子間の接着を促進するための化学的リンカー及び選択的接着剤、からなる群のうちの1つを含む、請求項22に記載の材料。
【請求項42】
前記溶媒が、水、有機溶媒、揮発性溶媒、高沸点溶媒、極性溶媒、非極性溶媒、トルエン、キシレン、アルカン、デカン、ヘキサン、アイソパー、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及びアセトフェノンからなる群のうちの1つを含む、請求項22に記載の材料。
【請求項43】
システムであって、
表面と、
焼結可能な高密度供給原料を前記表面上に堆積するように配置された供給原料堆積ヘッドと、
焼結選択性材料を前記表面及び前記供給原料のうちの少なくとも1つの上に堆積するように配置された焼結選択性堆積ヘッドと、
前記バインダから前記供給原料を脱バインダするように配置された脱バインダ機構と、
脱バインダ後に前記供給原料を焼結するための焼結チャンバと、を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連するケース)
本出願は、2020年11月10日出願の同時係属中の米国特許出願第17/094,506号に関連している。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、3D印刷に関し、より具体的には、焼結可能な、凝集性の高密度供給原料の3D印刷に関する。
【背景技術】
【0003】
3Dオブジェクトを製造する特定の方法は、三次元オブジェクトをビルドするための層ごとの印刷を含む。供給原料を層ごとに印刷する際、オブジェクトをビルドするために使用される材料は、典型的には、ビルドプラットフォーム、タンク、ボックス、又はベッドからの支持を有する。いくつかの用途は、異なる種類の供給原料を必要とするそれらの要素を有さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3D印刷で現在使用されている焼結可能な供給原料は、典型的には、固まっていない粉末、又は溶融堆積モデリング(FDM)若しくは押出印刷などの、バインドされたフィラメント若しくは供給原料から堆積されたもののいずれかである。多孔質供給原料又は固まっていない粉末は、支持されていないビルドアーキテクチャでは機能しない。
【0005】
本明細書に示される態様によれば、焼結可能な材料及びバインダを含む焼結可能な高密度供給原料を表面上に堆積させることと、パターンに従って焼結選択性材料を堆積させることと、バインダを除去することと、焼結可能な高密度供給原料を焼結して三次元焼結オブジェクトを形成することと、焼結オブジェクトを仕上げることと、を含む、三次元オブジェクトを形成する方法が、提供される。
【0006】
本明細書に示される態様によれば、溶媒と、溶媒中の焼結選択性材料とを含む焼結選択性材料が提供され、焼結選択性材料は、高密度供給原料に浸透することができる特性を有する。
【0007】
本明細書に示される態様によれば、表面と、焼結可能な高密度供給原料を表面上に堆積するように配置された供給原料堆積ヘッドと、表面及び供給原料のうちの少なくとも1つに焼結選択性材料を堆積するように配置された焼結選択性堆積ヘッドと、バインダから供給原料を脱バインダするように配置された脱バインダ機構と、脱バインダ後に供給原料を焼結する焼結チャンバと、を有するシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、三次元円筒形堆積システムの実施形態を示す。
【0009】
【
図2】
図2は、三次元堆積システムにおける堆積を受ける基材の実施形態を示す。
【0010】
【
図3】
図3は、焼結可能な凝集性供給原料の三次元堆積プロセスの実施形態のフロー図を示す。
【0011】
【
図4】
図4は、潜在的な焼結選択性材料の相図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態は、選択的阻害焼結機構(SIS)に基づいて、連続的で凝集性の高密度で焼結可能な供給原料を選択的にパターン化するための材料及び方法を使用する。本明細書で使用するとき、「高密度」供給原料は、30%以下の気孔率を有するものである。材料が、10%以下、5%以下、又は1%以下を含む、10%以下の気孔率を有するであろう可能性は、大いに高い。「凝集性」供給原料は、堆積又は固定された後、100kPa以上、10kPa以上、1kPa以上、100Pa以上、又は50Pa以上の引張降伏応力を有する供給原料である。「凝集性」供給原料はまた、流動性粉末ではなく、堆積された後に流動粉末ではなく、堆積直前に流動性粉末ではない。一般に、本明細書の実施形態では、焼結のための選択的パターン化はまた、例えば、ポジティブパターングを使用すること、焼結促進剤を使用すること、又は焼結阻害剤を不活性化するための材料を使用することなどによって、選択的阻害焼結以外の機構によっても生じ得る。本発明が克服する高密度の凝集性供給原料を使用する際の課題は、一般に、ポジティブ及びネガティブパターン化実施形態の両方に存在する。
【0013】
本明細書に開示される材料は、従来のXY-Z印刷を含む加層、EHTALなどの3D印刷のための組み込み型高速旋盤に適用可能である。SISにおいて、焼結阻害剤は、ポジティブスペースパターンの境界で、又はパターンの周囲のネガティブスペースに、ビルド層上に選択的に堆積される。層がビルドアップされ、部品が焼結されると、阻害領域はバインドされないままであり、部品の縁部を画定する。SISは、固まっていない粉末で実証されているが、バインダを含有する自己支持型高密度供給原料を有するSISを使用する固有の課題が存在し、このプロセスは、高密度供給原料含有バインダではこれまでに実証されていない。
【0014】
SISの焼結防止剤及び供給原料バインダの成分は、焼結前にビルド円筒が十分な強度を持つように慎重に選択される。焼結阻害剤は、阻害剤を高密度供給原料の蓄積層内に担持することができ、ビルド層は薄く、ピンホールを含まず、急速に堆積させることができる。阻害剤がビルド層に容易に浸透することができるバインダ阻害剤系を選択することは、複雑であり、革新を必要とする。阻害剤のいずれかは、イオン種及び疎水性種の両方を同時に溶媒和することができなければならないか、又は供給原料は、層堆積に適切な粘弾性特性を有する強力な親水性バインダと共に配合される必要がある。本明細書の実施形態は、これらの2つの広範なクラス及び他のクラスの材料について説明する。
【0015】
三次元印刷(3D)で現在使用されている焼結可能な供給原料は、典型的には、固まっていない粉末、又は溶融堆積モデリング(FDM)若しくは押出印刷などのバインドされたフィラメント若しくは供給原料から選択的に堆積される。多孔質供給原料又は固まっていない粉末は、支持されていないビルドアーキテクチャに積層することができないため、支持されていないビルドでの3D印刷には適していない。高密度セラミック又は金属供給原料では、ビルド外形によって円筒の角運動量が変化するため、FDMタイプのプロセスは支持されていないプロセスでの焼結可能な供給原料には適していない。これにより、回転制御システムがより複雑になり、最大回転速度が本質的に遅いFDMタイプの材料堆積プロセスに制限されてしまう。加えて、FDMプロセスでは、合理的な材料流量を可能にするために押出ヘッド又はノズルの開口部が大きく、張り出しを生成するために別個の支持材料を必要とするため、典型的には比較的低い分解能の部品が得られる。
【0016】
実施形態は、高密度の凝集性供給原料の選択的焼結を可能にすることにより、円筒形外形の金属及びセラミック部品の連続的な3D印刷を可能にする。金属又はセラミック部品を生成するために付加製造を使用する以前の方法は、選択的レーザ焼結(SLS)又はXY-Z外形のFDMプロセスに依存しており、このようなプロセスに関する材料要件は、支持されていない供給原料上の三次元印刷とは異なる。選択性の機構は、欧州特許第1534461(B1)号、米国特許第6589471号、米国特許第9403725号、米国特許第10232437号、米国特許出願第2018/0304361(A1)号、国際公開第2018/173048(A1)号、国際公開第2018/173050(A1)号、及び韓国特許第100659008(B1)号などの特許及び出願によって示されるように、当該技術分野において既知である。これらは、高密度供給原料に適用されない。XY-Z 3D印刷のためのSLSプロセスは、ポジティブ又はネガティブパターン化を含む。
【0017】
ポジティブパターンを有するSLSでは、粉末層が選択的に圧縮され、高密度の凝集非焼結生層に形成されるか、又は高密度部分に直接焼結される。ネガティブパターンを有するSLSでは、焼結阻害剤は、パターンの境界又はネガティブスペースに堆積されるか、又は粉末は、焼結される固まっていない粉末の固体封入容積を形成するように、境界で圧縮/バインド/固化される。ネガティブパターン化SLSの一形態は、選択的阻害焼結(SIS)である。焼結は層ごとに行われるか、又は部品は焼結前にビルドから分離されてもよく、その後、全体として焼結されてもよい。ビルドとは、最終部品及び他の材料に保持される形状を含む、印刷プロセス中に堆積された構築プロセス及び材料の両方を指す。これらのXY-Z SLSプロセスの全てにおいて、供給原料は、純粋な粉末、又は粉末状活性材料と粉末状のバインダとの混合物のいずれかの粉末である。印刷開発システムが各層の開始及び終了時に逆方向に減速しなければならないため、XY-Zプロセスは、支持されていない供給原料上の3D印刷と比較して、基本的に速度が制限される。
【0018】
支持されていない供給原料に3D印刷する場合、高密度で自己支持型の凝集性供給原料のために、これらの以前のSLSアプローチはいずれも好適ではない。高密度供給原料上での焼結の選択的パターン化は、ビルドのポジティブ及びネガティブの部分が単一のモノリスに埋め込まれており、阻害剤を高密度層に浸潤させることがより困難であるため、粉末の場合よりも複雑である。更に、疎水性バインダと組み合わされた親水性阻害剤に関して議論された材料適合性の課題が存在する。本明細書の実施形態は、高密度の自己支持型供給原料の選択的パターン化を可能にするために、これらの全ての固有の課題を克服する。
【0019】
高密度供給原料の選択的パターン化は、円筒形3D印刷を可能にすること以外の更なる利益を有することができる。例えば、パターン化されたモノリスは、ダイ成形又は従来の減法製造(subtractive manufacturing)などの二次プロセスを使用して機械加工することができる。パターン化材料は、構造的に複雑な多材料及び複合部品を生じさせる追加の種類の材料のための前駆体を担持することができる。これらの利点は、円筒形外形の印刷及びXY-Z印刷の両方に適用される。
【0020】
図1及び
図2は、支持されていない円筒形体積上の印刷の異なる実施形態を示しており、
図3はプロセスの説明を提供する。円筒が「支持」であると考えることができるが、円筒の回転性質のために、結果として生じるビルドは、基材がその上に堆積する材料を有し、基材がブロック又は他の表面によって支持されるプロセスと同じ方法で支持されない。
【0021】
図1では、回転円筒は、ドクターブレード12などの堆積ヘッドによってそれに適用される供給原料を有する。円筒が回転すると、最も最近適用された供給原料層は、堆積ヘッド10から焼結選択性材料のパターンを受容し、脱バインダ(焼結可能な材料をバインダから分離するプロセス)を受けることができる。バインダは、粉末状の焼結可能な材料が高密度の凝集形態で存在することを可能にし、これはまた、円筒14への適用のためにペースト、溶融物、エマルション、又はスラリーとも称され得る。焼結選択性材料は、部品を画定するために、ポジティブ又はネガティブのいずれかの境界をマークする。いくつかの実施形態では、焼結選択性材料は、インク又は流体と称され得る。
【0022】
円筒が堆積ヘッドを通過するとき、焼結選択性材料の堆積/脱バインダは、次の層が適用される前に、供給原料の現在の層に作用する。ビルド18が成長するにつれて、少なくとも焼結可能な材料とバインダの供給原料に焼結選択性材料を加えたものになり、その中に16のような部品が画定される。ビルドが右端に完成されると、ビルドは焼結及び分離を受け、以下に示す16などの個々の部品が得られる。
【0023】
図2は、更なる構成要素を有する第1の実施形態でもあり得るシステムの代替的な実施形態を示す。この実施形態では、供給原料の堆積は、ドクターブレード又は他のディスペンサなどの堆積機構22によって生じる。供給原料は、液体、ペースト、又はゲルなどの容易に適用された状態から半固体又は固体状態に供給原料を変換するための固定プロセスを受けることができる。固定ステーション32の下を通過した後、堆積ヘッド20は、固定された供給原料上に焼結選択性材料を堆積させる。焼結選択性材料は活性化を必要とし得るため、活性化装置34は、材料を活性化するように動作することができる。上記のシステムと同様に、ビルド28は、その内部に画定された26などの部品を有し、それらは焼結後にそこから分離する。
【0024】
図3は、
図1~
図2の、又はそれらと同様のシステムを動作させるプロセスのフロー図を示しており、ここでは供給原料は堆積されるa 40。一実施形態では、供給原料は、焼結される材料及びバインダを含む、30体積%未満、20体積%未満、10体積%未満、5体積%未満、又は1体積%未満の気孔率を有する高密度複合相を含む。実施形態におけるプロセスにおけるこのような供給原料の使用は、先行技術に対して新規性がある。供給原料は、液体、懸濁液、スラリー/ペースト、溶液、エマルションであってもよく、これらは全て本明細書では溶液又は固体と称される。
【0025】
高密度の凝集性供給原料は、焼結される材料(複数可)、例えば、金属、セラミック、炭素質材料、及び/又はポリマーを含有し、これらは、ポリマー、溶媒、界面活性剤、可塑剤、及び/又は接着剤などのバインダを含むことができる。焼結される材料は、粉末、粉末というよりむしろバインダ中の可溶性若しくは乳化された成分として、繊維、板状物として、又は他の種類の粒子として存在し得る。焼結される材料は、粒子の形状及びサイズ、又は材料の種類/化学組成の範囲からなり得る。実施形態のプロセスに好適な供給原料は、先細鋳造、スリップ鋳造、又は押出に基づくプロセスのための金属射出成形(MIM)供給原料又は供給原料など、商業的に見出すことができる。
【0026】
供給原料堆積プロセスは、高密度供給原料の薄層を、平坦、湾曲、静的、又は運動中、加熱、冷却、又は室温であり得る表面に広げることを含む。表面は、EHTALシステムなどの回転しながら外に向かって成長する円筒であってもよい。供給原料は溶融され、剪断応力を受けるか、又は表面上への付着/接着を促進するためにプレスされてもよい。堆積は、様々な方法:スプレーコーティング、ドクターブレード、ローラーコーティング、スロットダイコーティング、共押出、ディップコーティング、スピンコーティング、圧延、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、転写圧延、又は供給原料を支持層又は自立層に予形成し、表面上に転写する、様々な方法によって達成することができる。堆積のための表面は、部品と一体ではない支持体であるか、又は前のビルド層であってもよい。
【0027】
図3では、プロセスの主要部分は、プロセス40~42~44の流れに示される。プロセスは、50、52、54~56の流れにおける任意選択のプロセスを含んでもよい。これらのプロセスの各々は、任意選択的に、他の任意選択のプロセスと組み合わされるか、又はそれ自体のいずれかで、任意選択である。
【0028】
このような任意選択のプロセスの1つは、層が固定プロセスを受ける50において生じる。固定プロセスの目標は、供給原料を層として適用しやすい状態から、供給原料が固体又は半固体の自己支持型構造体を形成する状態に変換することである。固定プロセスは、1mm未満、500ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、10ミクロン未満、したがってより高解像度の部品など、より薄い層を適用することを促進することができる。固定プロセスの例は、低粘度の液体から乾燥した、高密度の固体粉末バインダ複合体になるように、供給原料から溶媒を乾燥させることと、紫外線硬化性液状バインダ樹脂を含有する供給原料を紫外線硬化させることと、室温以上の液体として供給原料を適用し、その後冷却して、室温以下で固体を形成することと、である。
【0029】
層は、52での焼結選択性材料堆積のためのプライミングの別の任意選択のプロセスを受けることができる。これにより、供給原料はインクとより適合する。プライミング工程の一例は、レーザを使用して焼結選択性材料が浸透するエリアのバインダをアブレート/蒸発/変換すること、酸素プラズマやイオンボンバードメントを適用してバインダをより親水性にすること、溶媒系の焼結選択性材料配合物を適用して焼結選択性材料が浸透するエリアのバインダを溶解することなどであり得る。プライミング工程は、焼結選択性材料堆積工程がパターン化されていない間にパターン化することができ、焼結選択性材料は、プライミングが生じたエリアのみを濡らし、プライミング工程はパターン化され得ず、焼結選択性材料の堆積工程がパターン化されるか、又は両方がパターン化され得る。
【0030】
本明細書では焼結選択性材料と呼ばれる、流体、インク、又は液体などの選択的焼結を促進する材料が、42の層に堆積される。堆積は、パターンごとのプロセスを通して、又は選択的にプライミングされた表面上にコーティングすることによって実行することができる。堆積は、スプレー、スクリーン印刷、デジタル印刷、焼結選択性材料ジェット印刷、オフセット印刷、又は他のパターン化された堆積方法によって生じ得る。供給原料固定がこのプロセスにおいて実行される場合、供給原料固定後、又は供給原料固定中に、供給原料堆積と供給原料固定との間で、焼結選択性材料の堆積を実行することができる。
【0031】
焼結選択性材料は、パターンのネガティブスペース又は境界上に堆積される焼結阻害剤を担持することができ、又は、パターンのポジティブスペースに堆積される焼結促進剤を担持することができる。代替的な実施形態では、供給原料バインダは、焼結阻害剤を含有してもよく、焼結選択性材料は、阻害剤を不活性化するための薬剤を含有し得る。焼結選択性材料は、溶媒と、活性な焼結選択性材料と、任意選択的に、印刷を可能にするための界面活性剤、共溶媒、及び粘度調整剤を含有してもよい。共溶媒及び界面活性剤は、供給原料バインダとの焼結選択性材料の相溶性を増加させる。
【0032】
焼結選択性材料が堆積された後、焼結選択性材料は、任意選択的に、54で活性化されてもよい。活性化工程の目的は、焼結選択的性材料中の活性選択焼結材料を、溶液又はエマルションとして焼結選択性材料によって容易に担持された状態から、堆積後に浸出又は拡散しない状態に変換することである。活性化は、熱又はガス流を適用して焼結選択性材料を乾燥させ、活性物質の固体残留物を残すことを伴うことがある。活性化は、熱、紫外線、又はエネルギー源を適用して、化学反応又は分解反応を生じさせて、前駆体を焼結選択性材料中の前駆体を完全に機能する焼結阻害剤、又は焼結選択性剤に変換することを含み得る。熱を加えることは、不活性ガス又は反応性ガス雰囲気、真空、200~500℃の熱を適用すること、及び焼結温度未満の温度に加熱することを含んでもよい。活性材料を固定化する活性化と、前駆体を化学的に変換する化学変換の2つの機能は、同じ工程で実施することもできるし、別々の活性化工程で実行することもできる。活性化は、
図3に示すようにビルドプロセス中に実行することができ、又はビルドプロセスが完了してから最終焼結温度に到達するまでの間に実行することができる。例えば、焼結プロセスの初期段階では、温度は、活性化を実行するために最終焼結温度よりも低い温度に保持されてもよい。
【0033】
更に別の任意選択のプロセスでは、パターン化された供給原料は、成形、切断、又は従来の減法製造技術を介して、ポストシェーピングを受けることができる。粉末供給原料が使用される他のSLSプロセスとは異なり、本明細書に開示されるプロセスを使用した回転円筒形アーキテクチャのビルドは、従来の製造プロセスを通じて容易に成形することができるモノリスをもたらす。パターン化後、
図1及び
図2の円筒は、従来の旋盤上で回転され、金型でスタンピングされ、円盤にダイシングされることができるか、又は任意の他の従来の形成プロセスであり得る。
【0034】
44での供給原料からのバインダの除去は、溶媒脱バインダ、又は熱バインドの2つのプロセスによって生じ得る。熱的脱バインダ工程では、ビルドモノリスを加熱して、燃焼、気化、又は分解を通じて、液体又はガスとして供給原料バインダを除去する。熱的脱バインダ工程は、広範囲のバインダ、熱硬化性、親水性熱可塑性樹脂、及び疎水性熱可塑性樹脂と適合性がある。空気中、N2若しくはアルゴンなどの不活性雰囲気中、又は真空中、あるいはH2含有還元性雰囲気中で、100~500℃で加熱することは、一般的である。典型的には、最低温度は、供給原料が金属である場合に酸化などの供給原料の不必要な化学的変化を引き起こすことなく、バインダを除去するように選択される。熱的脱バインダは、不活性ガス又は反応性ガス雰囲気中で加熱することと、真空内で加熱し、焼結温度未満の温度へ加熱することと、を含み得る。
【0035】
溶媒脱バインダでは、バインドを溶媒又は超臨界CO2に浸漬してバインダを溶解させる。溶媒としては、アセトン、テトラヒドロフラン、キシレン、アルカン溶媒、ジメチルスルホキシド、有機アルコール、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、トリクロロエタン、ハロゲン化有機溶媒、トルエン、水、ヘプタン、又は超臨界CO2を挙げることができる。通常、溶媒脱バインダは、薬剤が脱バインダ溶媒中に溶解及び浸出することができるため、選択的焼結剤の脱パターン化をもたらし得る。この実施形態は、活性化工程、例えば、選択的焼結剤が、脱バインダ前に不溶性種に変換され得る工程を組み込むことによってこの課題を克服する。活性化工程において、供給原料及び/又は焼結選択性材料は、このプロセスにおける焼結選択性を促進するために化学的又は物理的変化を受ける。溶媒脱バインダは、選択的焼結剤が、供給原料バインダ、例えば、疎水性供給原料バインダを有するイオン性塩選択的焼結剤などの、供給原料バインダに対する反対の溶解挙動を有する、焼結選択性材料-供給原料系に特に適している。このような系では、脱バインダに好適な溶媒は、選択的焼結剤を浸出させる傾向がより低い。溶媒脱バインダ又は熱バインドのいずれかにおいて、バインダの一部又は全部が除去される。溶媒を脱バインダし、熱バインドを組み合わせて、段階的にバインダ含有量を除去することができる。部品内の高い生強度(すなわち、3重量%未満のバインダ)を維持するために残留バインダが望ましい場合がある。生強度とは、焼結前又は脱バインダ前の供給原料又は部品の強度である。脱バインダ後かつ焼結前の部品の特性は、「ブラウン」と称され得る。
【0036】
焼結は、46における供給原料の要件に従って実行される。金属供給原料の場合、焼結は、フォーミングガス、アルゴン中の2~4%のH2、又は純粋なH2などの還元環境で実行されることが多い。焼結プロセスパラメータは、供給原料の最適な焼結、及び選択的焼結剤の最適な阻害を提供するように選択される。金属供給原料の場合、選択的焼結阻害剤は、典型的には、金属前駆体よりもはるかに高い温度で焼結する、前駆体である耐火性セラミックである。市販の供給原料では、最適な脱バインダ及び焼結プロセスは、典型的には当該技術分野において既知である。本明細書の実施形態は、確立された脱バインダ及び焼結プロトコルに選択性を導入するための材料及びプロセスの選択を説明する。
【0037】
48での焼結後の仕上げは、焼結領域と非焼結領域とを分離することを含み、表面仕上げを行うこと、及び高い耐性を必要とする領域を加工することを含むことがある。分離は、ハンマーで叩く、割る、凍結破壊する、サンドブラストする、ノミで削るなど、かなりの力が必要になる場合がある。表面仕上げ及び機械加工は、当該技術分野において既知である。本明細書に記載されるプロセスは、典型的には、ほぼネットシェイプの部分をもたらし、精密寸法は仕上げ工程を通じて達成される。
【0038】
一実施形態では、選択的パターン化剤は、供給原料中の活性材料の焼結というよりむしろ、供給原料中のバインダの凝集又は脱バインダ活性に作用する。これにより、焼結前に部品を分離することが可能となり、仕上げ工程の手間が省ける。このようなシステムの例は、可塑剤を熱可塑性バインダを有する供給原料に導入し、その融解温度をTm,newに低下させる、ネガティブパターン化焼結選択性材料である。室温での印刷中、ビルドモノリス全体は固体である。ビルドが完了した後に部品を分離するために、ビルドされたモノリスを、Tm,newを超える温度、元の供給原料融点Tm未満の温度まで上昇させる。部品は分離され、次いで、更なるプロセス工程(脱バインダ、焼結など)に進む。
【0039】
このようなシステムの別の例は、ラジカル開始剤を含有するポジティブパターン化焼結選択性材料を、熱可塑性の架橋可能なバインダを用いて供給原料に印刷することである。供給原料は、Tmの融点を有し、開始剤は、Tm未満の分解温度Tiを有する。未架橋及び架橋された供給原料は、Tm及びTiを超える温度Tdで揮発性成分に熱分解され得る。ビルドされたモノリスは、Tiを超えかつTm未満に加熱されて、選択的架橋を引き起こす。架橋領域は、Tmに加熱されるともはや液体にならず、溶媒中で浸出しなくてもよい。残りの材料は、Tmを上回る温度及びTdを下回る温度で熱的脱バインダされるか、又は溶媒脱バインダされるいずれかである。部品を分離し、次いで、架橋バインダを、Tdを上回る温度で熱的脱バインダし、その後焼結する。
【0040】
図3に示されるビルド工程は、XY-Zビルド構成のように連続して実行することも、回転円筒形ビルド構成のように並行して実行することもできる。回転円筒形の例では、ビルド工程は、時間的に分離されるというよりむしろ、空間的に分離される。ビルド工程を繰り返して、追加の層を生成する。全ての層が生成された後、後処理を実行する。
【0041】
次に、このプロセスにおいて使用可能な材料の例を説明する。焼結され得る材料のいくつかの例は、17-4PH、カルボニル鉄、316、磁気合金、銅-ニッケル合金、チタン、銅、アルミナ、ジルコニア、アルミノシリケート鉱物及びガラス、ポリマー粒子、並びに様々な金属、金属合金、セラミック、及びプラスチック/ポリマーを含む多くの他の合金などのステンレス鋼合金である。
【0042】
供給原料用のバインダは、疎水性又は親水性であってもよく、熱可塑性又は熱硬化性成分を含有してもよい。いくつかの活性バインダ材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、パラフィン、カルナバワックス、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド(疎水性熱可塑性樹脂)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、アルギネート、寒天、セルロース、メチルセルロース、メチルセルロース系化合物、リグノスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート塩、ポリ乳酸、(親水性熱可塑性樹脂)、並びに疎水性又は親水性の紫外線硬化性アクリレート及びメタクリレート樹脂(熱硬化性樹脂)を挙げることができる。
【0043】
バインダとしては、焼結可能な成分との接着を促進するための界面活性剤などの追加成分を含有することができ、これらは、ステアリン酸、オレイン酸、オレイルアミン、魚油、プルロニック界面活性剤、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、ドデシル硫酸ナトリウム、疎水性部分及び親水性部分を含有する分子を挙げることができる。これらの分子は、リン酸塩、硫酸塩、アンモニウム、カルボキシレート、又は他の両親媒性分子を含んでもよい。バインダは、粘度調整剤、例えば、ポリマーの短鎖ポリマーを意味するオリゴマー、典型的には5kg/mol未満又は1kg/mol未満の、グリセリン、フタル酸含有分子、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル若しくは溶媒、例えば、水、又は有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、アルカン、デカン、ヘキサン、イソパラフィン材料、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及びアセトフェノンなどを挙げることができる。
【0044】
焼結選択性材料成分の選択は、焼結される活性材料に依存し、焼結選択性材料がネガティブパターン化又はポジティブパターン化されるべきかどうかに依存する。金属供給原料のネガティブパターン化では、活性焼結選択性材料は、金属よりも高い温度で焼結する材料、多くの場合、耐火性セラミック、耐火性セラミックの前駆体、又は金属を耐火性セラミックに選択的に変換する酸化剤である。阻害材料は、パターンの焼結可能な粒子の上に、又はそれらに隣接して、別の粒子を形成するいずれかである。青銅、真鍮、アルミニウム合金、及び鋼などの大部分の工学的金属を上回る温度で焼結する材料の例としては、アルミノケイ酸塩鉱物、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄、クロム酸塩、セリア、イットリア、炭化ケイ素、酸化カルシウム含有セラミック、酸化マグネシウム含有セラミック、元素を含有する材料又はセラミックであり、これらの元素には、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、及びクロム(Cr)、又はこれらの混合物/固溶体が挙げられる。金属の焼結温度としては、温度500℃超、600℃超、900℃超、1100℃超、及び1400℃超が挙げられる。
【0045】
活性物質は、インクに懸濁したこれらの材料のナノ粒子若しくは微粒子、又は熱脱バインダ、早期焼結、溶媒-脱バインダ工程での溶液との反応などのプロセス工程にさらされると分解して金属酸化物を形成する塩などのセラミックの化学的前駆体であってもよい。好適な塩としては、硝酸アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、モノステアリン酸アルミニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ジルコン酸アンモニウム、塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、炭酸イットリウム、塩化イットリウム、硝酸イットリウム、鉄アセチルアエトナート(iron acetyl aetonate)、フェロセン、鉄クエン酸鉄、臭化鉄、シュウ酸鉄、リン酸鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、臭化セリウム、塩化セリウム、水酸化セリウム、硝酸セリウム、シュウ酸セリウム、硫酸セリウム、硝酸セリウムアンモニウム、塩化バナジウム、塩化バナジウムテトラヒドロフラン、オキシ塩化バナジウム、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、及びクロム(Cr)などの元素の塩が挙げられる。
【0046】
金属塩中の非金属イオンは、焼結疎外効果を高めるために、硫酸塩、硝酸アンモニウム、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、過硫酸塩、又は硝酸塩などの酸化剤であるように選択することができる。いくつかの金属イオンはまた、セリウムイオンなどの酸化挙動を増強する。これらの酸化イオンはまた、金属イオンを含有しない化合物の一部であってもよく、それにより、焼結選択性材料は、阻害パターン内の焼結金属を単に酸化するように作用する。
【0047】
ポジティブパターン化された金属では、材料の活性成分は、焼結を促進するための還元剤又はフラックスである。還元剤は、グラファイトの粒子、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、sp2結合を有する他の形態の炭素、水素化ホウ素ナトリウム、還元糖、グルコース、スズ(II)を含有する化合物、鉄(II)を含有する化合物、シュウ酸、ギ酸、アスコルビン酸、アセトール、アルファヒドロキシケトン、リン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ホウ砂、塩化アンモニウム、及び塩酸などであり得る。
【0048】
ネガティブパターン化されたセラミックの活性焼結選択性材料は、焼結されるセラミックよりも高い焼結温度を有する材料を、粒子を通じて直接的に、又は化学的前駆体を通じて間接的にのいずれかで導入することにより、ネガティブパターン化金属と同様の活性選択的焼結剤戦略を使用することができる。焼結阻害のための酸化的戦略は、一般に使用されない。ポジティブパターン化セラミックの活性焼結選択性材料は、セラミックの種類に基づいて広く異なる。セラミックフラックス又はセラミックフラックスの前駆体の添加は、1つの戦略である。セラミックフラックスは、典型的には、鉛、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、ストロンチウム、及びマンガンの酸化物又はこれらを含有する化合物、長石、ホウ素、及び低いガラス転移を有するガラスフリット粒子である。
【0049】
ポリマー供給原料の場合、焼結されるポリマーは、ガラス転移又は融点などの、より低い処理温度を有するバインダ中に埋め込まれる。焼結選択性材料は、潤滑剤、結合を防ぐ界面活性剤、ネガティブ選択性、又は供給原料ポリマーに選択的な可塑剤/溶媒、化学的リンカー、粒子間の接着を促進する選択的な接着剤であり得る。ポリマー焼結は、一般に熱可塑性材料に適用可能である。焼結に好適なポリマーの例は、フッ素化エチレンプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ乳酸、又はSLS若しくはFDMプロセスで使用される他のポリマーである。
【0050】
焼結選択性材料の他の成分は、堆積プロセスに依存する。他の成分は、他の成分を懸濁又は溶解するための溶媒、粘度調整剤、界面活性剤、安定剤であり得る。溶媒の例は、水、有機溶媒、揮発性溶媒、又は高沸点溶媒、極性溶媒、又は非極性溶媒、トルエン、キシレン、アルカン、デカン、ヘキサン、アイソパー、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及びアセトフェノンなどである。
【0051】
粘度調整剤及び界面活性剤は、供給原料のバインダ、界面活性剤、及び粘度調整成分として供給原料中で使用される化学物質と同じであり得る。これらのうちのいくつかは、溶媒に可溶性であるグリセリン、ポリマー又はオリゴマー、供給原料中のバインダとして使用される少量の材料、ステアリン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、及び上記でより詳細に論じた他の物質である。例えば、圧電駆動インクジェット印刷ヘッドを使用して、焼結選択性材料をパターン化するために、10~14cPの範囲の材料粘度が望ましい。インクが緩慢に分解することができる成分を含有する場合、安定剤を使用して保存期間を延ばすことができる。いくつかの安定剤は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブチル化ヒドロキシトルエン、及び4-メトキシフェノールなどである。
【0052】
以下の表は、単一の溶媒のリストを示し、50mgの塩と1ミリリットルの溶媒とが溶解するかどうかの結果を示している。単純な溶媒は、供給原料を同時に溶解せず、焼結選択性材料として使用される焼結阻害剤、この場合、Al(NO3)3を溶解しない。NMP及びDMF(ジメチルホルムアミド)などの極性溶媒は、阻害塩を溶解する。非極性溶媒は、供給原料を溶解する。焼結選択性材料が供給原料層に浸透するためには、焼結選択性材料が両方を溶解する必要がある。
【0053】
単純な溶媒は、供給原料及びAl(NO
3)
3などの焼結阻害剤を同時に溶解しない。NMP及びDMFなどの極性溶媒は、阻害塩を溶解する。非極性溶媒は、供給原料を溶解する。焼結選択性材料が供給原料層に浸透するためには、焼結選択性材料が両方を溶解する必要がある。表1は、単純な溶媒の例を示し、表2は共溶媒の例を示す。
【表1】
【表2】
「部分」の結果は、溶液が室温で濁っていることを意味する。NMPはn-メチルピロリドンであり、DMSOはジメチルスルホキシドであり、PCはプロピレンカーボネートである。共溶媒としてのNMP及びキシレンは、塩及び供給原料の両方を溶解することができるが、相分離された2液体系を形成する。
【0054】
図4は、NMP及びキシレンという2つの共溶媒と、Al(NO
3)
3などの焼結阻害剤の前駆体を含有するインク製剤60のピラミッドを示している。NMPは、Al(NO
3)
3を溶解する極性溶媒であり、キシレンは、塩担持焼結選択性材料と疎水性供給原料との間の湿潤を助ける非極性溶媒である。焼結選択性材料が供給原料及び塩の両方を溶解し、単一の液相を形成することができる、配合空間内に領域が存在する。
【0055】
表3は、異なる焼結選択性材料配合物と基材の接触角測定結果を示しており、MIM供給原料シート上の焼結選択性材料配合物と、熱的及び溶媒脱バインダされたMIM供給原料シートとでは、濡れ性が大きく変化している。
【表3】
【0056】
他の修正及び変形が存在してもよい。例えば、実施形態は、減法又は成形に焼結を加えたものなどの金属及びセラミックスの従来の製造を使用することができる。SLS及びFDMなどの他の3D印刷技術を使用してもよい。FDM及びSLSは、回転円筒形プロセスで動作することができる。SLSの場合、ネガティブスペースは犠牲材料で充填され得る。いくつかの選択肢は、粉末を円筒上に拡散又は圧縮することができるが、多孔質であり、高密度の円筒よりも強度が劣る可能性がある。焼結選択性材料の堆積は、焼結阻害剤というよりむしろ、焼結促進剤を堆積させることを含み得る。焼結は、選択的レーザ焼結、又はFDM後のレーザ焼結によって生じてもよい。回転円筒形プロセスは、生産速度を増加させることができる。焼結阻害剤を堆積及び/若しくは活性化するために、又は焼結を阻害するために、他の機構を使用することができる。固まっていない粉末供給原料、又は層ごとの選択的焼結もまた使用され得る。これらの戦略はまた、XY-Zジオメトリで使用することもでき、そうすることが有用な場合には、高密度で凝集性のビルドを作り出すことができる。
【0057】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは、理解されるであろう。様々な現在予期されていない、又は先行例のない代替物、修正、変形、又は改善が、その後に当業者によってなされてもよく、それらも以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。