(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068842
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】結晶型亜リン酸アルミニウム及びその製造方法ならびに使用
(51)【国際特許分類】
C01B 25/163 20060101AFI20220427BHJP
C09K 21/04 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C01B25/163
C09K21/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165592
(22)【出願日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202011140842.9
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110068756X
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518301235
【氏名又は名称】ジィァンスー リースーデェァ ニュー マテリアル カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイ フア
(72)【発明者】
【氏名】リ ジンヂォン
【テーマコード(参考)】
4H028
【Fターム(参考)】
4H028AA12
4H028AB01
(57)【要約】
【課題】結晶型亜リン酸アルミニウム及びその製造方法、ならびに難燃剤または難燃性相乗剤として、またはそれらを製造するための使用を提供する。
【解決手段】製造方法は、1、亜リン酸水素アルミニウムとアルミニウム含有化合物を、少量の強酸の存在下または不存在下で、水中で80~110℃で反応させて沈殿物を得ること、2、沈殿物を洗浄し濾過すること、3、沈殿物を100~130℃で水分を乾燥させること、4、水分が乾燥した固体物を、遅い段階で昇温加熱し続けて、材料の温度を5~10時間程度に、5℃/min以下の昇温速度で常温から350℃以下に上昇させること、を備える。該結晶型亜リン酸アルミニウムは、無定形亜リン酸アルミニウムと比較して、熱分解温度が高く、吸水性が低く、酸性が低く、ジエチルアルミニウムホスファイトと相乗的に作用することができ、より優れた難燃性を有し、高分子材料のノンハロゲン難燃成分として有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)強酸を含有する、又は、強酸を含有しないアルミニウム含有化合物/水混合液を調製した後、次いでそれを80~110℃の亜リン酸水素アルミニウム溶液に添加して反応させ、反応終了時の液相pHが4未満に制御される工程と、
前記アルミニウム含有化合物は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの少なくとも1つであり、
(2)反応混合物を濾過し、洗浄水の導電率が50μs/cm未満になるまで沈殿物を洗浄する工程と、
(3)洗浄後の沈殿物を100~130℃で加熱乾燥して、沈殿物の含水率を0.3重量%以下にする工程と、
(4)沈殿物を不活性雰囲気下または真空下で加熱し続けて脱水反応を行い、5~10時間かけて5℃/min以下の昇温速度で350℃以下に昇温し、最後に冷却して結晶型亜リン酸アルミニウムを得る工程と、を含む、
ことを特徴とする結晶型亜リン酸アルミニウムの製造方法。
【請求項2】
工程(1)において、
前記強酸は、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸の少なくとも一つを含み、前記強酸の質量が、亜リン酸水素アルミニウムの質量の2%~5%であり、
前記アルミニウム含有化合物を水中に分散させてなる混合液中のアルミニウム含有化合物の質量濃度が15%~50%であり、
前記亜リン酸水素アルミニウム溶液中の亜リン酸水素アルミニウムの質量濃度が15%~50%であり、
前記アルミニウム含有化合物が硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムの少なくとも一つである場合、強酸を含有するアルミニウム含有化合物/水混合液を調製し、前記アルミニウム含有化合物が水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの少なくとも一つである場合、強酸を含有しないアルミニウム含有化合物/水混合液を調製し、
亜リン酸水素アルミニウム溶液に、前記アルミニウム含有化合物/水混合液を滴下方式により添加し、総反応時間が1~5時間であり、
アルカリまたは金属酸化物を添加することによって、反応終了時の液相pHが4未満に制御される、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で得られた結晶型亜リン酸アルミニウム。
【請求項4】
粒径が0.1~1000μm、水への溶解度が0.01~10g/L、嵩密度が80~800g/Lである、
ことを特徴とする請求項3に記載の結晶型亜リン酸アルミニウム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の結晶型亜リン酸アルミニウムの、難燃剤または難燃相乗剤として、またはそれらを製造するための使用。
【請求項6】
前記難燃剤または難燃相乗剤は、
ワニスまたは発泡塗料の難燃と、
木材またはセルロース含有製品の難燃と、
難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維の製造に用いられる、
ことを特徴とする請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維が、原料組成として、100重量%の合計量で、
ポリマーマトリックス 55%~99.9%と、
結晶型亜リン酸アルミニウム 0.1%~45%と、
充填剤または補強材 0~44.9%と、
添加剤 0~44.9%と、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維が、原料組成として、100重量%の合計量で、
ポリマーマトリックス 55%~99.9%と、
難燃系 0.1%~45%と、
充填剤または補強材 0~44.9%と、
添加剤 0~44.9%と、を含み、
前記難燃剤系が、
結晶型亜リン酸アルミニウム 0.1%~50%と、
難燃剤 50%~99.9%と、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記難燃剤がジエチルホスフィン酸金属塩である、
ことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記ポリマーマトリックスが、ナイロン、ポリエステル、およびPOKからなる群から選択される少なくとも1つである、
ことを特徴とする、請求項7または8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の技術分野に関し、具体的には、結晶型亜リン酸アルミニウム及びその製造方法ならびに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
固体物質のメソ状態には、結晶性と非結晶性の2つの凝集状態がある。一部の物質は結晶物質であり、一部は非結晶物質であり、これは物質の化学組成に影響される。しかし、これらの凝集状態は、温度、圧力等の製造時の環境条件にも影響されるため、同種の化学物質が、結晶質を示す場合もあれば、非晶質状態を示す場合もある。固体物質のメソ凝集状態は、融点、溶解度などの物理的および化学的特性に影響を与え、異なる用途の必要に応じて異なるメソ凝集状態が選択され得る。
【0003】
亜リン酸アルミニウムは、ジエチルアルミニウムホスファイトとの優れた難燃相乗性を有し(例えば公開番号がCN107936297A、CN107760023である特許技術など)、かつ水溶性および酸性が低いため、現在、難燃相乗剤として広く用いられ、ガラス繊維強化エンジニアリングプラスチック、例えばナイロン、ポリエステル等の体系において応用され、難燃性に優れた。しかしながら、現在報告されている亜リン酸アルミニウムは、いずれも非結晶化合物であり、物理的性質については、一定の溶解度を示し、一定の吸水性および酸性を依然として有しているため、この配合系においては、1)亜リン酸アルミニウムは一定の溶解度を有するので、難燃剤が吸湿しやすく、ポリマーに適用すると製品に吸湿のリスクもあり、電気絶縁性に影響を与える、2)亜リン酸アルミニウムが示した一定の酸性は、ポリマーおよび加工設備に悪影響を与える、3)熱分解温度がやや不十分であり、特に高せん断の場合では、例えばガラス繊維含有率が高い場合、せん断力が強くなるため系が着色しやすい、という問題が依然として残っている。これらの欠点は、この難燃剤系の適用範囲を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、研究したところ、亜リン酸アルミニウムのこれらの不足は、非結晶の凝集構造にかかわる可能性があることを発見し、亜リン酸アルミニウムのこれらの問題を回避するために、結晶構造を有する亜リン酸アルミニウムの提案、結晶型亜リン酸アルミニウムの製造方法の提供、及び難燃相乗剤として高分子材料の難燃における使用が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、結晶型亜リン酸アルミニウムの製造方法を提供しており、この結晶構造を有する亜リン酸アルミニウム化合物は、亜リン酸水素アルミニウム(特に説明がない限り、本発明に記載の亜リン酸水素アルミニウムの分子式はいずれも(H2PO3)3Alである)と特定のアルミニウム含有化合物とを、一定の条件下で反応させて、特殊な高温後処理工程を経て得られる。この結晶型亜リン酸アルミニウムは、熱分解温度が高く、吸水性が低く、酸性が低く、難燃剤または難燃性相乗剤としてまたはそれらを製造するために有用であり、高分子材料の難燃、例えばジエチルアルミニウムホスファイトと配合してガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックの難燃系として応用することができる。
(1)強酸を含有する、又は、強酸を含有しないアルミニウム含有化合物/水混合液を調製した後、次いでそれを80~110℃の亜リン酸水素アルミニウム溶液に添加して反応させ、反応終了時の液相pHが4未満に制御される工程と、
前記アルミニウム含有化合物は、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの少なくとも1つであり、
(2)反応混合物を濾過し、洗浄水の導電率が50μs/cm未満になるまで沈殿物を洗浄する工程と、
(3)洗浄後の沈殿物を100~130℃で加熱乾燥して、沈殿物の含水率を0.3重量%以下にする工程と、
(4)沈殿物を不活性雰囲気下または真空下で加熱し続けて脱水反応を行い、5~10時間かけて5℃/min以下の昇温速度で350℃以下に昇温し、最後に冷却して結晶型亜リン酸アルミニウムを得る工程と、を含む、
結晶型亜リン酸アルミニウムの製造方法。
【0006】
本発明に係る各溶液の溶媒は、特に説明がない限り、いずれも水であり、前記「アルミニウム含有化合物/水混合液」とは、アルミニウム含有化合物が水に分散した混合系を意味する。
【0007】
本発明の製造方法の手順は、以下のように概括することができる。
1、亜リン酸水素アルミニウムとアルミニウム含有化合物とを所定の割合で、少量の強酸の存在下または不存在下で、80~110℃で水中で反応させ、最終的な液相のpHが4未満に制御され、亜リン酸アルミニウム沈殿を得た。結晶型亜リン酸アルミニウムを製造するためには、反応開始原料として亜リン酸水素アルミニウムを用いること、及び最終的な液相のpHが4未満に制御されることが肝要であり、他のリン含有化合物を選択して結晶型亜リン酸アルミニウムを得ることはできない。
2、沈殿物を洗浄し濾過した。
3、沈殿物を100~130℃で水分乾燥させた。
4、水分が乾燥した固体物を、遅い段階で昇温加熱し続けて、材料の温度を5~10時間程度に、5℃/min以下の昇温速度で350℃以下に昇温させた。この高温処理過程も結晶型亜リン酸アルミニウムを得る重要な工程であり、結晶の形成に有利である。
【0008】
得られた結晶型亜リン酸アルミニウムは、必要に応じて所望の粒径に粉砕してもよい。
本発明の製造方法において、前記アルミニウム含有化合物が水溶性化合物である場合、強酸の存在条件下で反応させることが必要であり、前記アルミニウム含有化合物が水に不溶である場合、強酸の存在は必要ではない。
【0009】
工程(1)において、前記アルミニウム含有化合物と亜リン酸水素アルミニウムとを完全反応の等モル比で添加してもよい。
【0010】
工程(1)において、好ましくは、
前記アルミニウム含有化合物を水中に分散させてなる混合液(アルミニウム含有化合物が不溶の場合は水懸濁分散系であり、水溶性アルミニウム含有化合物の場合は溶液である)中のアルミニウム含有化合物の質量濃度が15%~50%であり、
前記アルミニウム含有化合物が硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムの少なくとも一つである場合、強酸を含有するアルミニウム含有化合物/水混合液を調製し、前記アルミニウム含有化合物が水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの少なくとも一つである場合、強酸を含有しないアルミニウム含有化合物/水混合液を調製し、
前記強酸は、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸の少なくとも一つを含み、前記強酸の質量が、亜リン酸水素アルミニウムの質量の2%~5%であり、前記亜リン酸水素アルミニウム溶液中の亜リン酸水素アルミニウムの質量濃度が、15%~50%であり、亜リン酸水素アルミニウム溶液に、前記アルミニウム含有化合物/水混合液を滴下方式により添加し、総反応時間が1~5時間であり、
アルカリまたは金属酸化物を添加することによって、反応終了時の液相pHが4未満に制御されることができる。
【0011】
工程(3)において、加熱乾燥には、各種のオーブン、乾燥室、乾燥機等を用いることができる。
【0012】
工程(4)において、不活性ガス雰囲気は、希ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等であってもよい。
【0013】
また、本発明は、かかる製造方法により得られる結晶型亜リン酸アルミニウムを提供する。
【0014】
驚くべきことに、本発明の製造方法により、
図1に示すような結晶型亜リン酸アルミニウムの典型的なXRD回折パターンが得られ、XRD回折結果から結晶構造に特有の特徴的な回折ピークを有することがわかった。一方、現在難燃分野で使用されている亜リン酸アルミニウムは、典型的なXRD回折パターンが
図2に示すとおりであり、パターンに狭い特徴的なピークがなく、非晶質凝集構造を示す。
【0015】
XRDパターンの結果を比較すると、本発明の亜リン酸アルミニウムは現在で使用されている亜リン酸アルミニウムとは凝集状態が大きく異なることがわかり、現在で使用されている亜リン酸アルミニウムは非晶質であるのに対し、本発明の亜リン酸アルミニウムは結晶型である。
【0016】
本発明の結晶型亜リン酸アルミニウムと従来の非晶質亜リン酸アルミニウムについて、特徴付け分析を行い、典型的な物性の結果を下記の表1に示す。
【0017】
【0018】
表中の結果から、本発明の結晶型亜リン酸アルミニウムは、熱重量減少温度がより高く、吸水率がより低く、酸性がより弱く、一方、これらの利点は亜リン酸アルミニウムが難燃剤としての使用に有利であることがわかる。また、応用がテストされたところ、結晶型亜リン酸アルミニウムとジエチルアルミニウムホスファイトは良好な相乗難燃効果を依然として有し、かつ非晶質亜リン酸アルミニウムに比べて難燃効果がやや向上していることが確認された。
【0019】
表1の非晶質亜リン酸アルミニウムの製造は、下記に示す反応原理に基づき、亜リン酸ナトリウムと硫酸アルミニウムは、水相中、一定温度条件下で亜リン酸アルミニウム沈殿を生成し、分離、乾燥することにより得られるという従来の方法が採用されたが、得られた亜リン酸アルミニウムは非晶質であり、種々の後処理方法を経ても結晶構造を有する亜リン酸アルミニウムは得られず、本発明の目的を達成することができない。
【化1】
【0020】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、結晶型亜リン酸アルミニウムを製造する新規な工程を見出し、その反応原理は下記のとおりである。
【化2】
生成したH
+は、最終的な液相pHが4未満に制御されるように、アルカリまたは金属酸化物を添加することによって中和されることができ、
又は水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムと反応させることができ、水酸化アルミニウムを例にとると、反応は以下の式で行われる:
【化3】
塩基化合物を添加することによって最終的な液相pHを4未満に制御することができる。
【0021】
特殊な後処理工程を同時に組み合わせることにより、結晶型亜リン酸アルミニウムを得ることができる。
【0022】
好ましくは、前記結晶型亜リン酸アルミニウムは、粒径が0.1~1000μm、水への溶解度が0.01~10g/L、嵩密度が80~800g/Lである。
【0023】
本発明の結晶型亜リン酸アルミニウムは、残留水分が5wt%未満である。
【0024】
本発明はまた、前記結晶型亜リン酸アルミニウムの、難燃剤または難燃相乗剤として、またはそれらを製造するための使用を提供する。
【0025】
前記難燃剤または難燃相乗剤は、
ワニスまたは発泡塗料の難燃と、
木材またはセルロース含有製品の難燃と、
難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維の製造とに用いられる。
【0026】
好ましい実施形態において、前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維が、原料組成として、100重量%の合計量で、
ポリマーマトリックス 55%~99.9%と、
結晶型亜リン酸アルミニウム 0.1%~45%と、
充填剤または補強材 0~44.9%と、
添加剤 0~44.9%と、を含む。
【0027】
別の好ましい実施形態において、前記難燃性ポリマー成形材料、難燃性ポリマーフィルム、難燃性ポリマー繊維が、原料組成として、100重量%の合計量で、
ポリマーマトリックス 55%~99.9%と、
難燃系 0.1%~45%と、
充填剤または補強材 0~44.9%と、
添加剤 0~44.9%と、を含み、
前記難燃剤系が、
結晶型亜リン酸アルミニウム 0.1%~50%と、
難燃剤 50%~99.9%と、を含む。
【0028】
前記難燃剤がジエチルホスフィン酸金属塩であることが好ましく、ジエチルアルミニウムホスファイトであることがさらに好ましい
【0029】
前記ポリマーマトリックスが、ナイロン、ポリエステルおよびPOKからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0030】
本発明に係る結晶型亜リン酸アルミニウム化合物は、ワニスおよび発泡塗料用難燃剤、木材および他のセルロース含有製品用難燃剤、ポリマー用非反応性難燃剤として、難燃性ポリマー成形材料の製造、難燃性ポリマー成形体の製造および/またはポリエステルとセルロース純粋な織物および混合織物への含浸による難燃性の付与、ならびに難燃剤混合物および難燃剤における相乗剤として有用である。
【0031】
難燃熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形材料、ポリマー成形体、ポリマーフィルム、ポリマー糸、およびポリマー繊維は、0.1~45重量%の結晶型亜リン酸アルミニウム、55~99.9重量%の熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはそれらの混合物、0~44.9重量%の添加剤、および0~44.9重量%の充填剤または補強材を含み、ここで、各成分の合計は100重量%である。
【0032】
難燃熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形材料、ポリマー成形体、ポリマーフィルム、ポリマー糸、およびポリマー繊維は、0.1~50重量%の結晶型亜リン酸アルミニウム化合物、55~99.9重量%の難燃剤、55~99.9重量%の熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはそれらの混合物、0~44.9重量%の添加剤、および0~44.9重量%の充填剤または補強材を含む難燃剤混合物を、0.1~45重量%含み、ここで、各成分の合計は100重量%である。
【0033】
難燃熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形材料、ポリマー成形体、ポリマーフィルム、ポリマー糸、およびポリマー繊維は、難燃剤がジアルキルホスフィン酸および/またはその塩、メラミン縮合生成物、および/またはメラミンとリン酸との反応生成物、および/またはメラミン縮合生成物とポリリン酸またはそれらの混合物との反応生成物、窒素含有リン酸塩、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコールウリル、メラミン、メラミンシアヌレート、ジシアンジアミド及び/又はグアニジン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化スズ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、ジハイドロタルク、ハイドロカルマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、酸化スズ水和物、水酸化マンガン、ホウ酸亜鉛、塩基性ケイ酸亜鉛および/またはスズ酸亜鉛である。
【0034】
難燃熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形材料、ポリマー成形体、ポリマーフィルム、ポリマー糸、およびポリマー繊維は、難燃剤が、メラム、メレム、メロン、二メラミンピロリン酸塩、メラミンポリリン酸塩、メラムポリリン酸塩、メロンポリリン酸塩および/またはメレムポリリン酸塩および/またはそれらの混合ポリ塩および/またはリン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよび/またはポリリン酸アンモニウムである。
【0035】
難燃熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形材料、ポリマー成形体、ポリマーフィルム、ポリマー糸、およびポリマー繊維は、難燃剤が次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸亜鉛、次亜リン酸カルシウム、亜リン酸ナトリウム、モノフェニル次亜リン酸およびその塩、ジアルキル次亜リン酸およびその塩とモノアルキル次亜リン酸およびその塩との混合物、2-カルボキシエチルアルキル次亜リン酸およびその塩、2-カルボキシエチルメチル次亜リン酸およびその塩、2-カルボキシエチルアリール次亜リン酸およびその塩、2-カルボキシエチルフェニル次亜リン酸およびその塩、DOPOおよびその塩、ならびにp-ベンゾキノン上の付加物である。
【0036】
好ましくは、結晶型亜リン酸アルミニウムは、ジエチルアルミニウムホスファイトと配合し、種々のナイロン、ポリエステル、およびPOK基材を含むガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックスに適用される。
【0037】
結晶型亜リン酸アルミニウムとジエチルアルミニウムホスファイトの複合難燃系をガラス繊維強化エンジニアリングプラスチックに適用する場合は、二軸押出機による高温溶融、混合、分散が必要である。
【0038】
本発明の主要な利点は、従来技術と比較して、本発明は、亜リン酸水素アルミニウムと特定のアルミニウム含有化合物とを一定の条件下で反応させ、そして特殊な高温後処理工程を経ることによって結晶型亜リン酸アルミニウムを得る結晶型亜リン酸アルミニウムの製造方法を提供しており、従来の非晶質亜リン酸アルミニウムと比較して、この結晶型亜リン酸アルミニウムは、熱分解温度がより高く、吸湿性および酸性がより低く、難燃剤または難燃相乗剤としてまたはそれらを製造するためのものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】結晶型亜リン酸アルミニウムのXRDチャートである。
【
図2】非晶質亜リン酸アルミニウムのXRDチャートである。
【
図3】結晶型亜リン酸アルミニウムのXRDチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではないことを理解されたい。なお、以下の実施例において具体的な条件を明記していない操作方法は、通常の条件、または製造メーカが推奨する条件に従う。
【0041】
実施例1 結晶型亜リン酸アルミニウムの製造
製造過程として、2Lの反応釜に、270g(1mol)の亜リン酸水素アルミニウム((H2PO3)3Al)と630gの水を仕込み、十分に攪拌して溶解させ、亜リン酸水素アルミニウム溶液を得た。500mLのビーカーに75gの硫酸アルミニウムを175gの水に溶解し、さらに硫酸アルミニウム溶液に8.1gの濃度が85.1重量%の濃リン酸(H3PO4)を添加し、均一になるまで十分に攪拌混合し、滴下ロートに移した。反応釜を加熱して90℃まで昇温し、リン酸含有硫酸アルミニウム溶液の滴下を開始して2時間で滴下が完了し、アルカリを加えてpHを2.2に調整し、保温下1時間反応を継続した。熱時濾過しながら、沈殿物を、洗浄水の導電率が50μs/cm未満になるまで数回洗浄し、洗浄を停止した。材料をオーブンに移し、120℃まで昇温し、60分乾燥し、固形分の含水率が0.1重量%であり、2℃/分の速度で180℃まで昇温し、60分保持し、1℃/分の速度で240℃まで昇温し、60分保持し、2℃/分の加熱速度で300℃まで昇温し、60分保持し、常温まで降温し、材料を排出し、材料を粉砕し、平均粒径D50が38μmであり、収率が98.2%であり、関連する試験及び応用を行った。
【0042】
試験項目及び方法:
a.得られた化合物についてXRD分析を行い、得られた化合物が結晶であるか否かを確認した。XRDパターンが
図1に近い場合、結晶と考えられる。XRDパターンが
図2に近いと、非晶質と考えられる。
b.吸水率の試験:50gの材料を秤量し、85℃、湿度85%の条件下での恒温恒湿室に7日間放置した後、材料の重量増加を測定し、重量増加%を材料の吸水率とした。
c.製造した化合物の酸性について試験する。10gの粉末を100gの水に分散させ、恒温25℃で2時間保持した後、溶液のpHを測定した。
d.TGAを試験し、2重量%重量減少の温度を熱重量減少温度とした。
図3は、得られた亜リン酸アルミニウムのXRD結果を示す。
XRDの結果から、製造した亜リン酸アルミニウムは結晶であることがわかった。加熱重量減量、吸水率、及びpHを表2に示す。
【0043】
実施例2 結晶型亜リン酸アルミニウムの製造
製造過程として、2Lの反応釜に、270g(1mol)の亜リン酸水素アルミニウム((H2PO3)3Al)と630gの水を仕込み、十分に攪拌して溶解させ、亜リン酸水素アルミニウム溶液を得た。500mLのビーカーに78gの水酸化アルミニウムを200gの水に分散し、滴下ロートに移した。反応釜を加熱して90℃まで昇温し、水酸化アルミニウム懸濁液の滴下を開始して2時間で滴下が完了し、水酸化アルミニウムの固形分を加えてpHを2.6に調整し、保温下1時間反応を継続した。熱時濾過しながら、沈殿物を、洗浄水の導電率が50μs/cm未満になるまで数回洗浄し、洗浄を停止した。材料をオーブンに移し、120℃まで昇温し、60分乾燥し、固形分の含水率が0.1重量%であり、2℃/分の速度で180℃まで昇温し、60分保持し、1℃/分の速度で240℃まで昇温し、60分保持し、2℃/分の加熱速度で300℃まで昇温し、60分保持し、常温まで降温し、材料を排出し、材料を粉砕し、平均粒径D50が55μmであり、収率が99.3%であり、関連する試験及び応用を行った。熱重量減少、吸水率及びpHを表2に示す。
【0044】
比較例1
亜リン酸水素アルミニウムの代わりに亜リン酸ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様にして原料を得た。XRDを試験したところ、非晶質構造を示した。TGA、吸水率、及びpHを試験し、結果を表2に示した。この方法は、従来の非晶質亜リン酸アルミニウムの製造方法である。
【0045】
比較例2
高温後処理を行わないこと以外は実施例1と同様にして原料を得た。XRDを試験したところ、非晶質構造を示した。TGA、吸水率、及びpHを試験し、結果を表2に示した。
【0046】
比較例3
高温後処理を行わないこと以外は比較例1と同様にして原料を得た。XRDを試験したところ、非晶質構造を示した。TGA、吸水率、及びpHを試験し、結果を表2に示した。
【表2】
【0047】
表2の結果から、本発明で製造した亜リン酸アルミニウムは結晶型亜リン酸アルミニウムであることがわかり、一方、従来の工程方法では非晶質亜リン酸アルミニウムしか得られなかった。結晶型亜リン酸アルミニウムは、非晶質亜リン酸アルミニウムに比べて、熱分解温度がより高く、吸水率がより低く、酸性がより弱い。これらの特徴は、難燃剤として使用するのに顕著な利点を有する。
【0048】
難燃剤の使用
実施例3
52重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、3.4重量%の実施例1の結晶型亜リン酸アルミニウム、及び14.6重量%のジエチルアルミニウムホスファイト(LFR8003、江蘇利思得新材料有限公司)を用い、常法に従い難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、かつ試料として難燃性能を試験し、材料の難燃がUL94V0(0.8mm)に達した。
【0049】
比較例4
50重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、及び20重量%のジエチルアルミニウムホスファイト(LFR8003、江蘇利思得新材料有限公司)を用い、実施例2と同様に難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、かつ試料として難燃性能を試験し、材料の難燃がUL94V2(0.8mm)に達した(UL94の難燃等級規格ではV2クラスの方がV0クラスよりも難燃効果が劣る)。
【0050】
比較例5
52重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、3.4重量%の比較例1の非晶質亜リン酸アルミニウム、及び14.6重量%のジエチルアルミニウムホスファイト(LFR8003、江蘇利思得新材料有限公司)を用い、実施例2と同様に難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、かつ試料として難燃性能を試験し、材料の難燃がUL94V1(0.8mm)に達した(UL94規格ではV1クラスの難燃性はV0クラスより劣る)。
【0051】
比較例6
52重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、3.4重量%の比較例2の非晶質亜リン酸アルミニウム、及び14.6重量%のジエチルアルミニウムホスファイト(LFR8003、江蘇利思得新材料有限公司)を用い、実施例2と同様に難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、かつ試料として難燃性能を試験し、材料の難燃がUL94V2(0.8mm)に達した(UL94規格ではV2クラスの難燃性はV0,V1クラスより劣る)。
【0052】
比較例7
52重量%のナイロン66、30重量%のガラス繊維、3.4重量%の比較例3の非晶質亜リン酸アルミニウム、及び14.6重量%のジエチルアルミニウムホスファイト(LFR8003、江蘇利思得新材料有限公司)を用い、実施例2と同様に難燃性ガラス繊維強化ナイロン66を調製し、かつ試料として難燃性能を試験し、材料の難燃がUL94V2(0.8mm)に達した(UL94規格ではV2クラスの難燃性はV0,V1クラスより劣る)。
【0053】
応用結果から、本発明の結晶型亜リン酸アルミニウムは、ジエチルアルミニウムホスファイトと相乗的に作用し、難燃効果を高めることができることがわかる。同時に、非晶質亜リン酸アルミニウムに対してジエチルアルミニウムホスファイトとの相乗作用を有しながら、より優れた難燃効果を有し、結晶型亜リン酸アルミニウムの優位性を発現する。
さらに、本発明の上記の説明を読めば、当業者は、本発明に対して様々な変更または修正を加えることができ、それらの等価物は同様に、本願の添付された特許請求の範囲によって限定される範囲内に入っていることが理解されるべきである。