(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068859
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】可摩耗性組立体を交換する縦延伸装置と可摩耗性組立体の交換法
(51)【国際特許分類】
B29C 55/06 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
B29C55/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021172096
(22)【出願日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10 2020 127 803.9
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】アントン・エドフェルダー
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ・クレイトメア
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・ウィンクラー
(72)【発明者】
【氏名】アンチモス・ギアポウリス
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210AJ14
4F210AK01
4F210AM14
4F210AM19
4F210AM21
4F210AM27
4F210AR06
4F210QA03
4F210QC02
4F210QM01
4F210QM11
4F210QM15
4F210QM20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改良された縦延伸装置又は縦延伸設備を提供すること、並びに装置構成部品、特にロールを迅速かつ簡便に交換する方法を提供すること。
【解決手段】改良された縦延伸装置は、特に、交換すべき可摩耗性組立体の作動位置又は動作位置(A)に加えて、別の可摩耗性組立体が待機する準備位置(D)及び/又は待機領域を備え、準備位置(D)及び/又は待機領域に準備される別の可摩耗性組立体は、動作位置(A)に取付けられる前に、既に動作温度又は動作温度より高い温度若しくは動作温度より30℃未満だけより低い少なくとも予熱温度に達し又は達することができ、準備位置(D)及び/又は待機領域が縦延伸装置に設けられかつ/又は設置される。
【選択図】
図1b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂薄膜(F)の引出方向(9)に並置される複数の回転ロール(5)と、摩耗を受ける少なくとも1つの可摩耗性組立体(21)とを備え、
複数の回転ロール(5)のいくつかは、予熱領域(VH)の一部を構成し、
取外し可能、交換可能かつ別の可摩耗性組立体(21)と置換可能に可摩耗性組立体(21)を配置した特に樹脂薄膜を縦延伸する縦延伸装置において、
縦延伸装置は、交換すべき可摩耗性組立体(21)用の作動位置又は動作位置(A)に加えて、可摩耗性組立体(21)が待機する準備位置(D)及び/又は待機領域(19)を備え、
準備位置(D)及び/又は待機領域(19)に配備される可摩耗性組立体(21)は、動作位置(A)に取付けられる前に、既に動作温度又は動作温度より高い温度か又は動作温度より30℃未満だけ低い少なくとも予熱温度に達し又は加熱でき、準備位置(D)及び/又は待機領域(19)を配置しかつ/又は設けたことを特徴とする縦延伸装置。
【請求項2】
準備位置(D)及び/又は待機領域(19)は、縦延伸装置の複数の回転ロール(5)より高い位置領域、好ましくは予熱領域(VH)に設けられる請求項1に記載の縦延伸装置。
【請求項3】
準備位置(D)及び/又は待機領域(19)は、加熱される複数の回転ロール(5)の上方の予熱領域(VH)に設けられる請求項1又は2に記載の縦延伸装置。
【請求項4】
次に使用すべき可摩耗性組立体(21)の準備位置(D)及び/又は待機領域(19)は、縦延伸装置の側方に設けられ、
予熱領域(VH)に配備される可摩耗性組立体(21)は、複数の回転ロール(5)を加熱する加熱管装置に加熱配管を介して連結されかつ接続される請求項1に記載の縦延伸装置。
【請求項5】
縦延伸装置の上方に配置される準備位置(D)及び/又は待機領域(19)内の可摩耗性組立体(21)は、予熱領域(VH)内の複数の回転ロール(5)を加熱する加熱管装置に加熱配管を介して連結されかつ接続される請求項1、2又は3に記載の縦延伸装置。
【請求項6】
動作位置(A)に配置され、その後取り外される可摩耗性組立体(21)は、動作位置(A)及び準備位置(D)とは異なる又は更に設けられる中間駐留位置(B)に一時的に配置される請求項1~5の何れか1項に記載の縦延伸装置。
【請求項7】
中間駐留位置(B)は、縦延伸装置の上方に設けられ、更に、
a) 樹脂薄膜(F)の引出方向(9)に対し動作位置(A)の上流側に準備位置(D)が設けられるとき、中間駐留位置(B)は、樹脂薄膜(F)の引出方向(9)に対し動作位置(A)の下流側に設けられ又は
b) 樹脂薄膜(F)の引出方向(9)に対し動作位置(A)の下流側に準備位置(D)が設けられるとき、中間駐留位置(B)は、樹脂薄膜(F)の引出方向(9)に対し動作位置(A)の上流側に設けられる請求項6に記載の縦延伸装置。
【請求項8】
可摩耗性組立体(21)は、縦延伸装置の少なくとも動作位置(A)並びに/又は準備位置(D)及び/若しくは中間駐留位置(B)に係止される位置決め片(41, 43)を有する組立枠(15)を備える請求項1~7の何れか1項に記載の縦延伸装置。
【請求項9】
組立枠(15)は、組立枠(15)の一端に設けられる位置決め片(41)により、樹脂薄膜(F)の引出方向に対し直角方向に配置される軸を中心に少なくともある角度で揺動し、
可摩耗性組立体(21)の組立枠(15)の他端に設けられる位置決め片(43)により、組立枠(15)と縦延伸装置の枠体との間で、交換可能な可摩耗性組立体(21)の長手軸方向の移動を調整する請求項8に記載の縦延伸装置。
【請求項10】
可摩耗性組立体(21)の組立枠(15)の一端に設けられる一方の位置決め片(41)は、円錐形又は円錐台に形成され、
可摩耗性組立体(21)の組立枠(15)の他端に設けられる位置決め片(43)は、台形断面に形成され、台形断面を形成する位置決め片(43)の傾斜側面は、側方に配置される縦延伸装置の枠体の一対の側方境界部又は側片(47)と協働する請求項9に記載の縦延伸装置。
【請求項11】
交換すべき可摩耗性組立体(21)は、液体又は気体の加熱媒体が貫流する配管を接続する媒体分配器及び/又は空圧管を接続する空圧分配器及び/又は導電線を接続する電気分配器を備え、
媒体分配器、空圧分配器及び電気分配器は、好ましくは、着脱可能な迅速連結具を備える請求項1~10の何れか1項に記載の縦延伸装置。
【請求項12】
縦延伸装置の隣接する空間に設けられる準備位置(D)及び/又は待機領域(19)は、縦延伸装置の長手方向又は引出方向(9)に対し縦延伸装置の前方、後方又は側方に設けられる請求項1に記載の縦延伸装置。
【請求項13】
請求項1~10の少なくとも1項に記載の縦延伸装置は、交換すべき可摩耗性組立体(21)を取付けて作動させる動作位置(A)と、別の可摩耗性組立体(21)を待機する準備位置(D)及び/又は待機領域(19)とを備え、
準備位置(D)及び/又は待機領域(19)に配備される可摩耗性組立体(21)は、動作位置(A)に取付けられる前に、既に動作温度若しくは少なくとも予熱動作温度に達し又は動作温度に達することができ、予熱動作温度は、動作温度より高い温度又は動作温度より30℃未満だけ低い温度であり、準備位置(D)及び/又は待機領域(19)は、縦延伸装置に配備されかつ/又は設定されることを特徴とする縦延伸装置の可摩耗性組立体(21)の交換法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載する縦延伸装置と、縦延伸装置の摩耗を受けた可摩耗性組立体を交換する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂薄膜(プラスチックフィルム)の縦延伸装置では、後続の各ロールは先行するロールよりも高い回転速度又は周回速度で回転して、連続する複数のロール間で樹脂薄膜の縦延伸が行われる。このため、連続する一対のロール間の間隙を通過する樹脂薄膜は、長手方向に延伸される。
【0003】
複数の押圧ロール又は把持ロールを使用して、移動する薄膜材料、特に延伸すべき樹脂薄膜を偏向ロール又は加工ロールの外被上に全面的に押し付けて、各加工ロール又は偏向ロールに対する樹脂薄膜の適切な接触を保証しなければならない。
【0004】
爾後の加工工程では、樹脂薄膜は、更に縦延伸装置又は縦延伸設備に導入される。まず長手方向に樹脂薄膜を延伸した後、次に幅方向に樹脂薄膜を延伸し又はその逆に、最初に幅方向に延伸した後、続いて長手方向に延伸する逐次延伸装置の一部として縦延伸装置を構成することができる。
【0005】
加熱される複数のロールを介して延伸すべき樹脂薄膜を供給して、樹脂薄膜が相応の延伸温度に加熱されて、長手方向に樹脂薄膜が延伸される。このとき、後続の各ロールは、先行するロールより高速のロール速度で回転するので、長手方向での延伸、即ち、縦方向(MDとも省略する)の縦延伸が行われる。
【0006】
縦延伸装置の作動中に、縦延伸装置に設けられる複数の構成部品、例えば、加工ロール及び/又は押圧ロールは、摩擦接触する搬送樹脂薄膜により無視できない摩耗を受ける。特に、摩滅しやすいロールの表面は、延伸する樹脂薄膜の表面品質に悪影響を与える可能性がある。従って、摩耗した複数の構成部品、特に、複数のロール(即ち、加工ロール及び/又は押圧ロール)を交換しなければならない。
【0007】
複雑又は高価な取付構造又は具体的な固定機構(例えば、ロール軸受の種類)ほど、交換する構成部品の取外し及び新たに採用する構成部品(特に、ロール)の取付けは、より高価な部品と複雑な構造になる。
【0008】
交換する構成部品、即ちロールが、近隣の組立品及び構成部品、例えば、ロールの加熱部、加熱目的で設けられる配管及び圧力密閉頭部等の回転式貫通導体等に連結される構成部品/ロールの取外し作業は、特に複雑になる。電動機及び/又は歯車及び/又は結合部及び/又は多関節軸に連結される対応するロールによっても、装置全体は、より複雑となり、関連する全部品を緩め又は外して交換部品を取り外さなければならず、更に、新しい部品を装着した後、特に使用する新しいロールを嵌合した後に、再び装置を組み立て、部品を接続しかつ固定しなければならない。
【0009】
また、交換ユニットに隣接する組立品を特定の形態で設置するとき、組立品の構造は更に複雑になる。例えば、ロール装置に対し樹脂薄膜の引出方向に先行するロールと後続のロールとの間の該当する位置で構成部品/ロール又はロール装置を正確に交換しなければならない。
【0010】
従来技術の欠点を列挙すれば、次の通りである。
・交換すべき構成部品/ロールの取外しは、非常に高価でかつ時間を要する。
・空気圧系、加熱装置(特に130℃以下の温水を導く温水管)及び電気接続線等既存の接続部から交換する構成部品の分離にも、同様に高価でかつ時間を要する。
・取付け時に、当該構成部品を新たに連結すること、特に温水管の接続(組込み時に密閉空気の除去のため、再充填と脱気を要する)並びに空気圧菅及び電気線の接続法も複雑になる。
・更に、縦延伸装置又は縦延伸設備では、引出方向上流に配置されるロール及び取付ける後続構成部品又はロールに取付けるべき新たな構成部品又はロールの相互配置関係(例えば、特に加工ロール及び押圧ロール等の協働するロール平行度)を正確に調整して、設置しなければならない。
・最後に、装置を再度運転開始する前に、機能試験を行い、全管の正確な接続と連結を確認する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の課題は、改良された縦延伸装置又は縦延伸設備を提供すること及び装置構成部品、特にロールを迅速かつ簡便に交換する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
縦延伸装置に関する本発明の課題は、請求項1に記載する特徴により解決され、可摩耗性組立体の交換法に関する本発明の課題は、請求項13に記載する特徴によって解決される。本発明の有利な実施の形態を従属請求項に記載する。本明細書に使用する用語「可摩耗性組立体」は、搬送する樹脂薄膜に接触して摩耗する可能性のあるロールを含む組立体を意味する。
【0013】
本発明の解決手段により、構成部品、特にロールを簡便に交換することができる。詳細な説明書を要せず、自明な交換法、自明な暗黙の作動法により、本発明による交換法を実行できるため、簡便な交換は、特に未訓練者に有効である。
【0014】
本発明の可摩耗性組立体の良好な操作性、取扱性、確立された作業手順及び好適な所定の工程により、可摩耗性組立体を交換する時間を大幅に短縮し節約できる。
【0015】
最終的に、縦延伸装置の休止時間を短縮して、樹脂薄膜生産工程の無駄時間を削減することができる。対応する可摩耗性組立体又は摩耗により構成部品を交換する頻度が高いほど、本発明の特性はより重要になる。
【0016】
本発明の解決手段は、縦延伸装置又は縦延伸設備に直接交換すべき可摩耗性組立体を配置する技術を特に特徴とする。その目的で、縦延伸装置に台枠又は台枠部を設け、設けた台枠又は台枠部上の準備位置及び/又は待機位置に可摩耗性組立体を配置して、作動位置又は動作位置への装着を待機する構造を採用することが好ましい。
【0017】
予熱領域を構成する予熱ロールの上方に準備位置及び/又は待機領域を設けて、準備位置及び/又は待機領域に可摩耗性組立体の位置決めを行うことが好ましい。予熱領域で発生する廃熱を利用して、例えば1~2日内に可摩耗性組立体を所望の温度に昇温又は予熱することができる。
【0018】
本発明の好適な実施の形態では、縦延伸装置のロール加熱装置を利用して、単純な加熱配管により、準備段階で既に可摩耗性組立体を所望の動作温度に加熱できる。
【0019】
本発明の代替解決手段では、縦延伸装置又は縦延伸装置の近傍に又はに隣接して、可摩耗性組立体を配置することもできる。この場合、可摩耗性組立体全体を所望の動作温度に加熱し又は維持するとき、縦延伸装置に発生する廃熱により可摩耗性組立体を加熱するには、熱量が不十分である。縦延伸装置の側方又は隣りに可摩耗性組立体を配置するとき、縦延伸装置の加熱ロールを加熱する加熱装置に可摩耗性組立体を連結する構造、例えば、単純に形成される加熱配管を通じて、縦延伸装置の側方又はこれに隣接して配置される可摩耗性組立体に温水を供給し、所望の動作温度に十分に可摩耗性組立体を加熱することができる。
【0020】
本発明では、交換すべき構成部品又は可摩耗性組立体を縦延伸装置から簡単かつ迅速に取外し、既に動作温度に予熱されて待機する可摩耗性組立体に置換することができる。
【0021】
交換すべき構成部品又は可摩耗性組立体は、組立体又は差込式組立体(カートリッジ)として形成される。
【0022】
可摩耗性組立体に設けられる台枠又は組立枠を、縦延伸装置に正確かつ適合して設置する位置決め装置を構成する位置決め片を組立体又は差込式組立体に設けることが好ましい。組立体の台枠(組立枠)と縦延伸装置の台枠又は支持フレームとの間で発生する可能性のある熱膨張による変形を位置決め装置を構成する位置決め片により補償し調整することが好ましい。
【0023】
位置決め装置は、例えば、縦延伸装置の長手方向に対して横断方向、特に直角方向に配置される一端と、一端の反対側に配置される他端とを有し、一端には円錐形構造体が形成され、他端は、例えば台形状断面に形成される。例えば、「円錐形」又は「台形」に形成される位置決め装置は、最終的には延伸装置の長手方向(MDO)に可摩耗性組立体(組立体)を正確に位置決めし、双方の台枠間、即ち可摩耗性組立体の台枠と、縦延伸装置の機械側の台枠との間の温度変化に基づく熱膨張による変形を補償し調整するので、熱変形を調整する原理は、交換すべき構成部品又は交換すべきロールの一端に固定軸受を設け、他端に浮動軸受を設ける構造と同等である。
【0024】
縦延伸装置に中間位置又は中間保管領域を設けて、最初に取外されて置換すべき可摩耗性組立体を一時的に中間位置又は中間保管領域に保管して、交換工程での交換効率全体を一層向上することが好ましい。準備場所と中間位置との間の縦延伸装置の中間位置に可摩耗性組立体を取付ける動作位置を設けることが好ましい。
【0025】
明確に表示し又は符号化した接続部、差込栓及び/又は迅速連結具として、加熱管、空気圧管及び/又は電気線を接続する分配器を形成して、全体として迅速に分解しかつ組立てることが本発明の更なる改善である。
【0026】
換言すれば、可摩耗性組立体に迅速交換装置を装備すれば、簡単、安全かつ迅速に可摩耗性組立体の取付けと取外しを行うことができる。
【0027】
要約すると、本発明では、例えば、可摩耗性組立体に組み込む複数の延伸ロールを、数時間(例えば1~2時間)内に確実に交換することができる。通常、延伸ロールの交換には少なくとも2倍の時間が必要であり、従来の解決手段では、動作位置から交換する可摩耗性組立体を取り外して、動作位置に別の可摩耗性組立体を取付けた後、少なくとも1~2時間を要して、可摩耗性組立体を動作温度に加熱する難点がある。
【0028】
本発明の実施の形態を添付図面について以下詳細に説明する。添付図面は、下記事項を示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】樹脂薄膜を延伸する3領域で構成される縦延伸装置に可摩耗性組立体の作動位置を設けた略示側面図
【
図1b】可摩耗性組立体を保持する中間位置と準備位置とを設けた
図1aに示す縦延伸装置の略示側面図
【
図1c】補修位置Cへの取外状態を示す
図1aに示す縦延伸装置の略示側面図
【
図2】台枠に取付けた2個の加熱ロールと2個の押圧ロールとを備える可摩耗性組立体(カートリッジ)を示す斜視図
【
図3】
図2に示す可摩耗性組立体の長軸に垂直な断面図
【
図4】図示を省略した迅速連結具により接続され又は分離される空圧装置の複数の空圧分配器を示す
図3の実施の形態の正面図
【
図5】好適な円錐形の位置決め装置を備える縦延伸装置に装着される可摩耗性組立体のロール駆動側一端の拡大斜視図
【
図6】ロールの軸方向位置を移動し調整する好適な台形状の位置決め装置を備える可摩耗性組立体の他端の拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1aは、複数の案内ロール及び/又は加工ロールと呼ぶ多数の回転ロール5を備える縦延伸装置3の略示側面図である。縦延伸装置3を縦延伸設備3又は縦延伸機3と言うこともある。
【0031】
図1aの左側の入口側に設けられる樹脂薄膜材料を押し出す押出機は、通常水浴内で回転する冷却ロールに設けられる金型スロットから溶融物を排出する。水浴のない構造の押出機でもよい。また、任意の冷却液(例えば、溶媒又は複数の任意混合物)を備える冷却浴も使用できる。特定の冷却法への制限はない。
【0032】
図1の左側に示す通常冷却浴で凝固かつ/又は結晶化される樹脂薄膜Fは、中央に示す縦延伸装置3に供給され、その後、縦延伸装置3の予熱段又は予熱領域VHを構成する多数の回転ロール5に接触して、加熱されながら回転ロール5を通過した後に、
図1の縦延伸装置3の右側から排出される。縦延伸装置の長手方向に対して横断方向に延伸する必要のある樹脂薄膜Fは、更に横延伸装置(TDO)に供給される。溶融薄膜の製造と同様に、横延伸装置の構造と機能は、公知の装置と設備を参照できよう。
【0033】
縦延伸装置3の複数の回転ロール5の各部分的捲回角に沿って回転ロール5の外周を周回する樹脂薄膜Fは、捲回角で対応するロール表面7又はロール外被8に接触して、対応する外被回転速度で更に移動される。
【0034】
最適な温度に加熱される各回転ロール5は、樹脂薄膜Fを最適な延伸温度に加熱しかつ延伸温度を維持する。
【0035】
加熱される各回転ロール5により樹脂薄膜Fを加熱する時、回転ロール5のロール表面7又はロール外被8と樹脂薄膜Fとの間への空気の捕捉又は混入を阻止して、回転ロール5のロール表面7又はロール外被8に樹脂薄膜Fを均一かつ確実に接触させなければならない。
【0036】
縦延伸装置3に設けられるニップロール又は挟持ロールともいう多数の押圧ロール11により、回転ロール5のロール表面7又はロール外被8に樹脂薄膜Fを確実に接触させることができる。
【0037】
連続する一対の回転ロールのうち引出方向9に後続の回転ロールを先行する回転ロールよりも高い外被速度で一対の回転ロールを駆動して樹脂薄膜Fを搬送すると、樹脂薄膜Fが縦方向に延伸されるので、連続する一対の回転ロール間の自由距離内では、縦延伸装置3を通して移動する樹脂薄膜Fは、縦方向に延伸される。
【0038】
図1aは、一対の延伸ロール6と一対の押圧ロール11とを備える延伸台(延伸段)13を取付ける作動位置Aを示す。延伸台13は、複数の回転ロール6, 11と、複数の回転ロール6, 11を回転可能に支持する台枠又は組立枠15と、複数の回転ロール6, 11及び組立枠15を一体に取扱いかつ交換可能に保持するロール組立体(ロールモジュール)又は交換組立体12とを備える。
【0039】
樹脂薄膜Fの引出方向9の上流の
図1bに示す縦延伸装置3の準備位置又は待機位置D、19には、他の交換用の組立体12が配置される。
【0040】
組立体12は、例えば、作動中に摩耗を受ける回転ロール等の消耗品を含む又は可摩耗性組立体21である。図示の実施の形態では、ロール表面との摩擦を利用して樹脂薄膜Fを縦方向又は横方向に延伸する延伸台を構成するため、一定の運転期間後の組立体12の複数のロール6と複数のロール11の表面には、延伸による複数の摩耗痕が認められる。
【0041】
表面が摩耗する回転ロール6, 11を有する組立体12を縦延伸装置3から取り外して、別の組立体と交換するとき、組立体12を固定する複数の迅速締結具と迅速連結具を緩め又は外して、作動位置A(
図1a、
図1b)から組立体を取り外すことができる。
【0042】
次に、交換すべき組立体の作動位置Aよりも引出方向に下流側の設備上方の
図1bに示す中間位置Bに取外した組立体12を配置することができる。組立体12を取り外した作動位置Aは、空となる。摩耗痕が認められる交換すべき組立体12を取外して、例えば、中間駐留位置Bに移動し、その後、引出方向の上流で縦延伸装置3の上方に設けられる準備位置Dに配置される組立体12を作動位置Aに移動して、複数の迅速連結具と迅速締結具とを連結して組立体12が作動位置Aに固定される。
【0043】
本発明の実施の形態では、未摩耗のロール表面を備える新規な又は使用可能な組立体を、縦延伸装置3とは無関係の場所に保存するのではなく、縦延伸装置3の予熱領域VHの上方(又は内側)に組立体を配備する点に特殊性がある。特に、予熱領域VHの複数の回転ロールの上方の準備位置D, 19に交換可能な組立体を準備することが好ましい。準備位置19に保持される新規又は使用可能な組立体に設けられる未使用回転ロールのロール表面は、例えば、予熱領域VHで発生する廃熱により既に予熱され、新規な組立体12を作動位置Aに取付けると、組立体12の複数の部品を加熱する追加作業が最早不要になる。
【0044】
縦延伸装置3に設けられる加熱装置に準備位置D, 19の組立体12を接続するとき、迅速連結具により接続することが好ましい。換言すれば、予熱領域VHでの複数の回転ロール5に設けられる加熱装置を共用して、準備位置D, 19に組立体12を保持し、予熱領域VHの複数の回転ロール5の加熱に使用する複数の加熱管を加熱配管により加熱すべき複数のロール6に連絡する構造により、これを簡単に達成できる。
【0045】
摩耗した回転ロールを備える組立体12を作動位置Aから外して、当初準備位置D, 19に配置される新規な組立体12に交換した後、摩耗した組立体12は、通常中間位置又は中間領域Bに一時的に保管され又は配置される。樹脂薄膜Fの引出方向9の作動位置A上流に準備位置D, 19を配置するが、中間位置又は中間領域Bは、特に樹脂薄膜Fの引出方向9に作動位置Aの下流に配置される。その後、摩耗した組立体12を中間位置Bから取出し、新たに捕集し処理した組立体12を別の補修位置Cで再利用のため補修される。
図1cの矢印20は、補修位置Cへの取外状態を示す。
【0046】
図2~
図4は、交換すべき摩耗部品の別構造組立体12の一例を示す。
【0047】
図示の実施の形態の組立体12は、複数の押圧ロール11と、複数の押圧ロール11に対応して協働する複数の加熱ロール6とを備える。互いに接触する二対のロール6, 11は、組立枠15に取付けられかつ保持される。組立枠15は、組立枠15の両側部に設けられる一対の端壁15aと、各端壁15aの上部に設けられる上連結部15b(例えば、棒状又は架橋状に形成されて、複数の押圧ロール11の上方に配置される)と、各端壁15aの下部に設けられる下連結部15c(同様に、例えば棒状又は架橋状に形成されて、複数の延伸ロール6の下方に配置される)とを備え、上連結部15bと下連結部15cは、2つの端壁15aにより、互いに強固に連結される。複数の延伸ロール6は、摩耗時に交換すべき機能面を備える。複数の押圧ロール11は、例えば、摩耗を受ける可能性がある押圧ロール 11と組合させるロール面を備える。また、延伸ロール6と押圧ロール 11の位置を調整する複数の空圧シリンダ25が設けられる。
【0048】
組立体12の反対側端面に設けられる支持具28は、複数の加熱ロール6を駆動する
図2に示す多関節軸接続部27を支持する。加熱ロール6用の複数の貫通導体(特に、回転式貫通導体、フィードスルー)29は、加熱ロール6の加熱に必要な加熱媒体を供給する配管31(2本の加熱管31a形態)を備え、反対側端面、即ち
図3の手前側端面に設けられる。
【0049】
図示の実施の形態では、複数の回転式貫通導体29と、回転式貫通導体29に続く下向きの複数の接続片33とは、同じ側に設けられる複数の加熱用迅速連結具35を介して、配管31に接続される。
【0050】
図4は、複数の迅速連結具により、空圧管38を接続し又は分離する空圧装置の複数の空圧分配器(空圧接続部)37の側面図を示す。図示の実施の形態では、組立体12の組立枠15に設けられる5個の空圧分配器37は、5個の空圧管38(
図4)を介して組立体12に設けられる複数の空圧シリンダ25に接続される。一例として挙げた5本の空気圧管数を勿論増減できる。
【0051】
図4は、複数の電気接続部に使用される複数の電気分配器39を示す。
図4の複数の空圧分配器37の左右に、複数の押圧ロール用の複数の圧力設定装置を示す。
【0052】
特に、複数の電気接続部、複数の空圧接続部及び複数の加熱接続部を含む全接続部を複数の迅速締結具又は迅速連結具により形成して、対応する複数の接続管を迅速に接続し分離する構造を採用することが好ましい。複数の接続部、連結部は、種々の技術分野で多種の構造が従来より知られている。
【0053】
作動位置Aから使用済みの組立体12を取り外した後、準備位置19に保持される別の組立体12を作動位置Aに取付けて使用するとき、台枠又は組立枠15(複数のロール6, 11と複数の空圧シリンダ25とを保持する)と共に、組立体12全体を作動位置Aに移動して、そこに取付けることができる。
【0054】
例えば、
図5に破線で示す位置決め片となる円錐形又は半球状の係止部41を組立枠15の一端に設け、組立枠15の横断方向反対側の他端に位置決め片となる係止部43を設けるので、樹脂薄膜Fの引出方向9に対し直角又は垂直方向の回転ロールの軸方向相対的長さを変更でき、しかも簡便な方法で組立枠15を組立体12に取付けることができる。また、作動位置Aに組立枠15を配置するとき、円錐形又は半球状の係止部41により組立体12の組立枠15に対する組立体12の角度位置を自動的に自己調整できる。延伸ロール6の駆動側に円錐形の位置決め片となる係止部41を組立枠15に設け、反対側の操作側に直角方向の位置決め片となる係止部43を組立枠15に設けることが好ましい。
【0055】
円錐形の係止部41(
図5)により、係止部41を通る(樹脂薄膜面に垂直な)中心軸を中心として、組立枠15又は複数の端壁15aを回転して、角度の移動調整を行うことができる。回転角度の移動調整の主目的は、組立枠15を容易に取付けて、X方向とY方向とを固定側で固定することにある。
【0056】
位置決め片となる反対端の係止部43により、組立枠15と縦延伸装置(機械)3の台枠との間で、樹脂薄膜Fの引出方向9に対する直角方向長さを調整して、横断方向の長さを変更することが好ましい。
【0057】
図示の実施の形態では、長さ方向移動して位置を調整する横断方向の位置決め片となる係止部43は、互いに対向して形成される一対の傾斜側面43bを有する台形断面の台形片43aを構成し、傾斜側面43は、樹脂薄膜Fの引出方向に間隔を空けて台枠に形成される一対の側片又は突起47と協働する。台枠に組立枠15を載置すると、台枠の側片47は、位置決め片となる台形片43aの一方又は他方の傾斜側面43bに対して相対的に摺動接触して、位置決め片を構成する台形片43aは、可能な限り又は殆ど遊びなしに傾斜側面43bにより両側片又は突起47間に配置される。係止部43を台形に形成する台形片43aにより、縦延伸装置3の枠体に組立枠15を容易に配置しかつ取付けることができる。縦延伸装置3の枠体と組立体12の組立枠15とに、いずれも位置決め片となる台形片43aと円錐体41aとを強固に取付けることが好ましい。この目的で、各組立枠15に下面に形成される複数の対向部を構成する例えば、中空円筒又は側片47の形態で、対応する複数の位置決め片と位置決め片に対応して協働する対向部とを、組立枠15又は縦延伸装置3の枠体に逆に形成してもよい。
【0058】
本発明の別の解決手段では、縦延伸装置3又はその近傍に交換組立体12を配置してもよい。
図7は、縦延伸装置3の近傍に配置される交換組立体12を示す。
【0059】
図7は、左側から右側に樹脂薄膜が移動する縦延伸装置3の平面図を示す。例えば、樹脂薄膜の引出方向で縦延伸装置3の前方19a、側方19b又は後方19cに、交換準備が完了した組立体12を予熱する待機領域19を設けることができる。側方19bとは反対の操作者側位置にも待機領域19を設けられよう。
【0060】
待機領域19と、待機領域19に既に保持される組立体12との位置関係では、可摩耗性組立体全体を所望の動作温度に加熱するレベル又は所望の動作温度に維持するレベルに対し、縦延伸装置3で生成される廃熱量では、不十分である。交換組立体12は、縦延伸装置3の側方又は隣接して配置されるので、縦延伸装置3内の加熱ロールの加熱に使用する加熱装置、特に予熱領域VHに設けられる加熱回転ロール5に連結して交換組立体12を加熱することが好ましい。換言すると、例えば、縦延伸装置3の側方又は通常隣接して配置される交換組立体12に対し、単純な加熱配管で温水を供給して、所望の動作温度に加熱すれば十分である。別体の加熱装置により、縦延伸装置3の傍で当然加熱することもできる。
【外国語明細書】