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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068860
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】位置センサシステム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
G01D5/20 110F
G01D5/20 110Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172119
(22)【出願日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】20203390
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21190602
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ピヒラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ジャニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス オスヴァルト
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA23
2F077AA41
2F077CC02
2F077FF03
2F077FF11
2F077FF14
2F077FF31
2F077FF39
2F077TT33
2F077TT42
2F077TT49
2F077TT66
2F077TT81
2F077TT82
2F077VV10
2F077WW04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い機能安全性と冗長性の要求を満たす実装のため、小さなチップサイズの誘導型位置センサシステムを提供する。
【解決手段】少なくとも2組の受信コイルセット#1、#2と、少なくとも1つの送信コイル4と、信号調整処理部5と、を備える。各受信コイルセット#1、#2は、少なくとも2つの別個の受信コイル、特に正弦(sin)受信コイル2および余弦(cos)受信コイル3を備える。システム1は、信号調整処理部5が単一の集積回路6に含まれ、少なくとも2組の受信コイルセット#1、#2、少なくとも1つの送信コイル4、および信号調整処理部5を含む集積回路6が単一のプリント回路基板上に位置する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2組の受信コイルセットと、少なくとも1つの送信コイルと、信号調整処理部と、を備え、
前記受信コイルセットの各々は、少なくとも2つの別個の受信コイル、特に正弦受信コイルおよび余弦受信コイルを備え、
前記信号調整処理部は、単一の集積回路に含まれ、前記少なくとも2組の受信コイルセット、前記少なくとも1つの送信コイル、および前記信号調整処理部を含む前記集積回路は、単一のプリント回路基板上に位置することを特徴とする、
位置センサシステム。
【請求項2】
前記信号調整処理部は、前記受信コイルセットごとに別個の受信チャネル、または共有受信チャネルと、前記少なくとも2組の受信コイルセットを前記共有受信チャネルに順次多重化するためのマルチプレクサと、を備える、
請求項1に記載の位置センサシステム。
【請求項3】
前記受信チャネルの各々は、RF信号受信処理部と、A/D変換器と、デジタル信号処理部と、を備える、
請求項2に記載の位置センサシステム。
【請求項4】
前記信号調整処理部は、前記少なくとも1つの送信コイルのためのRF信号を生成する発信器を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の位置センサシステム。
【請求項5】
前記少なくとも2組の受信コイルセットのための共有送信コイルを備え、前記共有送信コイルは、前記信号調整処理部の前記発振器に接続される、
請求項4に記載の位置センサシステム。
【請求項6】
前記少なくとも2組の受信コイルセットのための別個の送信コイルを備え、
前記別個の受信コイルセットは、前記信号調整処理部の前記発振器に直列または並列に接続される、
請求項4に記載の位置センサシステム。
【請求項7】
前記信号調整処理部は、特に前記信号調整処理部のすべての前記受信チャネルのすべての受信コイルセットのために結合された出力信号情報を提供するために、共通の出力を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の位置センサシステム。
【請求項8】
少なくとも1つの移動ターゲット、特に少なくとも1つの金属移動ターゲット、または前記少なくとも1つの送信コイルの電磁場を変更する任意のターゲットをさらに備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載の位置センサシステム。
【請求項9】
前記誘導型位置センサシステムは、直線運動、円弧運動または回転運動のセンサである、
請求項1~8のいずれか1項に記載の位置センサシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの送信コイルは、前記少なくとも2組の受信コイルセットの外側、特に前記少なくとも2組の受信コイルセットの外周に配置されるか、または前記少なくとも2組の受信コイルセットによって形成された空隙内に配置される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の位置センサシステム。
【請求項11】
前記位置センサシステムは、前記少なくとも2組の受信コイルセットから高分解能位置信号を生成するか、または前記少なくとも2組の受信コイルセットから差動信号を生成する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の位置センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置センサシステムに関し、より詳細には誘導型位置センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、特に、2つ以上の独立した受信コイルと1つまたは複数の送信コイルとを含むコイルセットを使用して、同一のまたは異なるタイプの1つまたは複数の物理量の測定を可能にする誘導型位置センサシステムの特定のセットアップについて記載している。
【0003】
誘導型位置センサは、磁石を使わない技術を実装しており、過電流や誘導結合の物理的原理を利用して、例えば1つの送信コイルと、2つの受信コイル、特に正弦(以下、sin)受信コイルおよび余弦(以下、cos)受信コイルとからなるコイルセットの上方を移動するターゲットの位置を検出する。
【0004】
実際、1つの送信コイルと2つの受信コイルとを含む3つのコイルは、通常、プリント回路基板(PCB)上の銅トレースとして設けられる。これらのコイルは、送信コイルが2つの受信コイルに二次電圧を誘導するように配置される。この二次電圧は、コイル上方にある金属ターゲットの位置に依存する。
【0005】
受信コイルからの二次電圧を復調および処理することで、コイル上方にあるターゲットの位置を示す信号が得られる。ターゲットには、アルミニウムや鋼などの任意の金属、または銅の層がプリントされたプリント回路基板(PCB)を使用することができる。
【0006】
通常、誘導型センサシステムは、金属ターゲットを備える。しかしながら、誘導型センサシステムでは、ワイヤーループ、またはインダクタンスとコンデンサから構成されたパッシブ共振回路などの異なるタイプのターゲットを使用することができる。
【0007】
ほとんどの誘導型センサシステムは、センサごとに2つの受信コイル、特にsin受信コイルおよびcos受信コイルを備える。誘導型センサシステムの別の実施形態では、センサごとに2つではなく3つの受信コイルが使用される場合がある。
【0008】
これらのコイルは、要求に応じて直線運動、円弧運動または回転運動のために設計することができる。
【0009】
当該技術分野において既知の誘導型センサシステムは、1組の受信コイルセットと1つの送信コイルとを有する。発振器がRF信号を生成し、その信号が送信コイルに加えられて高周波磁界が生成される。この高周波磁界は、受信コイル、特にsin受信コイルおよびcos受信コイルに拾われる。コイル上方にある金属ターゲットの位置に応じて、受信コイルが拾う二次電圧の振幅および位相が変化するので、これらの効果を分析することで、ターゲットの位置を決定することができる。
【0010】
フィルタリング後の受信信号は、復調および増幅され、次いでA/D変換器によってデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部でさらに処理される。例えば、CORDICアルゴリズムによってsin信号およびcos信号から角度表現に変換され、直交座標が極座標に変換される。
【0011】
【数1】
【0012】
このデジタル信号処理を経て、コイル上方にあるターゲットの位置を示す信号がデジタル形式で出力インタフェースに供給される。
【0013】
一般的な出力インタフェースのタイプとして以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
1.アナログランプ
2.PWM(パルス幅変調)
3.SENT(Single Edge Nibble Transmission)プロトコル
4.I2Cプロトコル
5.SPI(Serial Peripheral Interface)
6.UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)
7.供給電流変調
8.PSI5(Peripheral Sensor Interface 5)
9.CAN(Controller Area Network)
10.LIN(Local Interconnect Network)
【0014】
上述した一般的な実装例に加えて、信号の処理を含む、冗長性や複数の位置センサの組み合わせを必要とするアプリケーションもある。
【0015】
これらのアプリケーションには以下のものが含まれる場合があるが、これらに限定されるものではない。
1.高い機能安全性が要求されるセンサ
(a)同一の物理的特性を測定する冗長センサ
(b)2つ以上の受信コイルの入力信号を処理して診断範囲を広げるセンサ
2.2つ以上の入力信号を処理する高分解能アブソリュートセンサ
(a)周期の数が異なる2つのセンサの結果を1つの信号にまとめ、多回転やロングストロークの直線的測定を可能にするバーニアセンサ
(b)高分解能インクリメンタル角度信号と低分解能アブソリュート信号との組み合わせ
3.トーションビームの両端における機械的位置を比較してトルクを決定するトルクセンサ
4.生の信号または処理された信号を提供する複数の出力を有するセンサ
(a)トルクおよび角度センサ
(b)角度および速度センサ
(c)直線位置およびトルクセンサ
(d)角度および多回転センサ
(e)その他
【0016】
このような場合、従来技術では2つ以上の誘導型センサが使用される。特に、自動車のステアリングシステムやブレーキシステムなどの高い安全性を必要とするアプリケーションでは、フェイルセーフシステムやフェイルオペレーショナルシステムに冗長性が求められることが多い。
【0017】
従来技術の別の実施形態では、2つの別個のセンサ(位置センサ#1および位置センサ#2)を使用しているが、同一の送信コイル(Tx1)を共有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、高い機能安全性が要求され且つ冗長性の必要性から実装に小さなチップサイズが要求される位置センサシステムに関し、特に誘導型位置センサシステムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による位置センサシステム、特に誘導型位置センサシステムは、少なくとも2組の受信コイルセットと、少なくとも1つの送信コイルと、信号調整処理部と、を備える。ここで、各受信コイルセットは、少なくとも2つの別個の受信コイル、特にsin受信コイルおよびcos受信コイルを備える。また、本発明は、信号調整処理部が単一の集積回路に含まれること、ならびに少なくとも2組の受信コイルセット、少なくとも1つの共有送信コイル、および信号調整処理部を含む集積回路が単一のプリント回路基板上に位置することを特徴とする。
【0020】
本発明による集積回路は、半導体材料から形成された1つの小さな平板上の電子回路のセットであり、シリコンチップとも呼ばれている。このような集積回路は、集積回路と他の電子回路とを接続するための接続ピンを有するパッケージに含まれることが多い。この接続ピンは、例えばプリント回路基板(PCB)上に配置される。
【0021】
本発明によれば、少なくとも2組の受信コイルセットおよび少なくとも1つの送信コイルのための信号調整処理部は、単一の集積回路に含まれる。さらに、少なくとも2組の受信コイルセット、少なくとも1つの送信コイル、および信号調整処理部を含む集積回路は、単一のプリント回路基板上に位置する。これにより、高い機能安全性を有するシステムで必要な冗長受信コイルセットを提供しながら、必要とされるチップサイズを縮小することができる。
【0022】
本発明の変形例では、信号調整処理部は、受信コイルセットごとに別個の受信チャネル、または共有受信チャネルと、少なくとも2組の受信コイルセットを共有受信チャネルに順次多重化するためのマルチプレクサと、を備える。受信コイルセットごとの別個の受信チャネルでは、受信コイルセットからの信号を並列処理するためにより高速な信号処理が可能になり、少なくとも2組の受信コイルセットを共有受信チャネルに順次多重化するためのマルチプレクサを有する共有受信チャネルは、より小さいチップサイズで済む。
【0023】
本発明の変形例によれば、各受信チャネルは、RF信号受信処理部と、A/D変換器と、デジタル信号処理部と、を備える。
【0024】
本発明の好ましい変形例によれば、信号調整処理部は、少なくとも1つの送信コイルのためのRF信号を生成する発振器を備える。
【0025】
本発明の変形例による位置センサシステムは、少なくとも2組の受信コイルセットのための共有送信コイルを備えることができる。共有送信コイルは、信号調整処理部の発振器に接続される。代替的に、位置センサシステムは、少なくとも2組の受信コイルセットのための別個の送信コイルを備えることができる。ここで、各受信コイルセットは、信号調整処理部の発振器に直列または並列に接続される。
【0026】
本発明の変形例では、信号調整処理部は、特に信号調整処理部のすべての受信チャネルのすべての受信コイルセットのために結合された出力信号情報を提供するために、共通の出力を有する。
【0027】
本発明の好ましい変形例によれば、位置センサシステムは、少なくとも1つの移動ターゲット、特に少なくとも1つの金属移動ターゲット、または少なくとも送信コイルの電磁場を変更する任意のターゲット構造を備える。理論的には、位置センサシステムは、移動ターゲットなしで製造および販売され、意図された目的のために使用された後は、金属ターゲットとのみ協働する。しかしながら、金属ターゲットと位置センサシステムとが互いに適合しているため、位置センサシステムは、金属ターゲットの位置を確実に決定することができる。
【0028】
本発明による誘導型位置センサシステムは、例えば直線運動、円弧運動または回転運動のセンサである。
【0029】
本発明の変形例では、少なくとも1つの送信コイルは、少なくとも2組の受信コイルセットの外側、特に少なくとも2組の受信コイルセットの外周に配置されるか、または少なくとも2組の受信コイルセットによって形成された空隙内に配置される。
【0030】
本発明の好ましい変形例によれば、位置センサシステムは、少なくとも2組の受信コイルセットから高分解能位置信号を生成するか、または少なくとも2組の受信コイルセットから差動信号を生成する。
【0031】
位置センサシステムは、アナログ電圧、電流変調、PSI5、PWM(パルス幅変調)、SENT(Single Edge Nibble Transmission)プロトコル、I2Cプロトコル、SPI(Serial Peripheral Interface)、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、CANまたはLINを含むがこれらに限定されない出力インタフェースを介して、すべての受信コイルセットの情報を提供する。
【0032】
本発明の変形例によれば、外乱量を決定し、これらを補正するために追加のコイル入力を使用することにより、位置出力精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
以下、添付の図面に示す実施形態について、従来技術および本発明による位置センサシステムを説明する。
図1】従来技術による位置センサシステムの第1の実施形態を示す図である。
図2図1に示す位置センサシステムの実用的な実装例を示す図である。
図3】従来技術による位置センサの第2の実施形態を示す図である。
図4】従来技術による位置センサの第3の実施形態を示す図である。
図5】従来技術による位置センサシステムの第4の実施形態を示す図である。
図6】従来技術による位置センサシステムの第5の実施形態を示す図である。
図7】従来技術による位置センサシステムの第6の実施形態を示す図である。
図8】従来技術による位置センサシステムの第7の実施形態を示す図である。
図9】従来技術による位置センサシステムの第8の実施形態を示す図である。
図10】2つの位置センサを使用する従来技術によるシステムの第1の実施形態を示す図である。
図11】2つの位置センサを使用する従来技術によるシステムの第2の実施形態を示す図である。
図12】本発明による位置センサシステムの第1の実施形態を示す図である。
図13】本発明による位置センサシステムの第2の実施形態を示す図である。
図14】本発明による位置センサシステムの第3の実施形態を示す図である。
図15】本発明による位置センサシステムの第4の実施形態を示す図である。
図16】本発明による位置センサシステムの第5の実施形態を示す図である。
図17】本発明による位置センサシステムの第6の実施形態を示す図である。
図18】本発明による位置センサシステムの第7の実施形態を示す図である。
図19図18に示す位置センサシステムのセンサ出力を示す図である。
図20】本発明による位置センサシステムの第8の実施形態を示す図である。
図21】本発明による位置センサシステムの第9の実施形態を示す図である。
図22】本発明による位置センサシステムの第10の実施形態を示す図である。
図23】本発明による位置センサシステム1の第11の実施形態を示す図である。
図24】本発明による位置センサシステム1の第12の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、従来技術による位置センサシステム1の第1の実施形態を示す。図1に示す位置センサシステム1は、誘導型位置センサシステムである。当該位置センサシステムは、受信コイル(2,3)セットと、送信コイル4と、信号調整処理部5と、を備える。図1に示す誘導型位置センサ1の受信コイル(2,3)セットは、sin受信コイル2と、別個のcos受信コイル3と、を備える。信号調整処理部5は、集積回路6に含まれる。位置センサシステム1は、磁石を使わない技術を実装しており、過電流や誘導結合の物理的原理を利用して、例えば図1に示すように1つの送信コイル4および2つの受信コイル2,3からなるコイル2,3,4のセットの上方を移動するターゲット8の位置を検出する。
【0035】
図1は、sin受信コイル2とcos受信コイル3について、回転するターゲット8の360°の移動における位置センサシステム1の出力信号をさらに示している。
【0036】
図2は、図1に示す位置センサシステム1の、特に回転運動を検出するための実用的な実装例を示す。本実装例では、3つのコイル2,3,4、すなわち1つの送信コイル4および2つの受信コイル2,3が、一般的にはプリント回路基板7上の銅トレースとして設けられる。これらのコイルは、送信コイル4が2つの受信コイル2,3に二次電圧を誘導するように配置される。この二次電圧は、コイル2,3,4上方にあるターゲット8の位置に依存する。
【0037】
信号調整処理部5は、3つのコイル2,3,4と同一のプリント回路基板7上に位置する。ターゲット8は、シャフト9に取り付けられ、その回転運動が検出される。
【0038】
受信コイル2,3からの二次電圧を復調および処理することで、コイル2,3,4上方にあるターゲット8の位置を示す信号が得られる。ターゲット8には、アルミニウムや鋼などの任意の金属、または銅の層がプリントされたプリント基板(PCB)を使用することができる。
【0039】
本発明は、ターゲット8を備える誘導型センサシステム1に関する。本発明を適用することができる誘導型センサシステム1の別の実施形態では、ワイヤーループ、またはインダクタンスとコンデンサから構成されたパッシブ共振回路などの異なるタイプのターゲット8を使用してもよい。
【0040】
図3は、従来技術による位置センサの第2の実施形態を示す。位置センサは、1つの正の周期と1つの負の周期をそれぞれ有するsin受信コイル2およびcos受信コイル3を備える。sin受信コイル2およびcos受信コイル3は、送信コイル4に取り囲まれている。コイル2,3,4は、ターゲット8の直線運動を検出するために、直線的な経路に沿って配置される。
【0041】
図4は、従来技術による位置センサの第3の実施形態を示す。図4に示す第3の実施形態は、ターゲット8の回転運動を検出するためにコイル2,3,4が円形に配置されている点で、図3に示す第2の実施形態とは異なる。
【0042】
図5図8は、従来技術による位置センサシステム1の第4~第7の実施形態を示す。第4~第7の実施形態の位置センサシステム1の各々は、sin受信コイルと、cos受信コイル3と、送信コイルと、を備える。受信コイル2,3の信号は、集積回路6に含まれる信号調整処理部5によって処理される。図5図8に示す位置センサシステム1は、1つまたは複数のターゲット8の回転運動を検出するために設計されている。
【0043】
sin受信コイル2およびcos受信コイル3は、1つまたは複数の正の周期と1つまたは複数の負の周期とをそれぞれ有する。第4~第7の実施形態は、周期の数とターゲットの数の点で、互いに異なる。第4の実施形態によれば、sin受信コイル2およびcos受信コイル3は、1つの正の周期と1つの負の周期とをそれぞれ有し、単一のターゲット8の動きが検出される。第5の実施形態によれば、sin受信コイル2およびcos受信コイル3は、2つの正の周期と2つの負の周期とをそれぞれ有し、2つのターゲット8の動きが検出される。第6の実施形態によれば、sin受信コイル2およびcos受信コイル3は、4つの正の周期と4つの負の周期とをそれぞれ有し、4つのターゲット8の動きが検出される。第7の実施形態によれば、sin受信コイル2およびcos受信コイル3は、3つの正の周期と3つの負の周期とをそれぞれ有し、3つのターゲット8の動きが検出される。
【0044】
コイル2,3,4は、要求に応じて直線運動、円弧運動または回転運動のために設計することができる。直線運動センサのためのコイル設計を図3に示す。また、1回転あたりの位相の数が異なる回転コイルの設計例を図4図8に示す。
【0045】
図9は、従来技術による位置センサシステム1の第8の実施形態を示す。図9は、1組の受信コイル(2,3)セットと、1つの送信コイル4と、を有する位置センサシステム1のブロック図である。信号調整処理部5の発振器10がRF信号を生成し、その信号が送信コイル4に加えられて高周波磁界が生成される。この高周波磁界は、端子R1N/R1PおよびR2N/R2Pを有する受信コイル2,3に拾われる。コイル2,3,4上方にある金属ターゲット8の位置に応じて、受信コイル2,3が拾う二次電圧の振幅および位相が変化するので、これらの効果を分析することで、ターゲットの位置を決定することができる。
【0046】
フィルタリング後の受信信号は、復調および増幅され、次いでA/D変換器11によってデジタル信号に変換され、デジタル信号処理部12でさらに処理される。例えば、CORDICアルゴリズムによってsin信号およびcos信号から角度表現に変換され、直交座標が極座標に変換される。
【0047】
【数2】
【0048】
このデジタル信号処理を経て、コイル2,3,4の上方にあるターゲットの位置を示す信号がデジタル形式で出力インタフェース13に供給される。
【0049】
一般的な出力インタフェース13のタイプとして以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
1.アナログランプ
2.PWM(パルス幅変調)
3.SENT(Single Edge Nibble Transmission)プロトコル
4.I2Cプロトコル
5.SPI(Serial Peripheral Interface)
6.UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)
7.供給電流変調
8.PSI5(Peripheral Sensor Interface 5)
9.CAN(Controller Area Network)
10.LIN(Local Interconnect Network)
【0050】
上述した一般的な実装例に加えて、信号の処理を含む、冗長性や複数の位置センサ1の組み合わせを必要とするアプリケーションもある。
【0051】
これらのアプリケーションには以下のものが含まれる場合があるが、これらに限定されるものではない。
1.高い機能安全性が要求されるセンサ1
(a)同一の物理的特性を測定する冗長センサ1
(b)2つ以上の受信コイル2,3の入力信号を処理して診断範囲を広げるセンサ1
2.2つ以上の入力信号を処理する高分解能アブソリュートセンサ1
(a)周期の数が異なる2つのセンサ1の結果を1つの信号にまとめ、多回転やロングストロークの直線的測定を可能にするバーニアセンサ1
(b)高分解能インクリメンタル角度信号と低分解能アブソリュート信号との組み合わせ
3.トーションビームの両端における機械的位置を比較してトルクを決定するトルクセンサ1
4.生の信号または処理された信号を提供する複数の出力を有するセンサ1
(a)トルクおよび角度センサ1
(b)角度および速度センサ1
(c)直線位置およびトルクセンサ1
(d)角度および多回転センサ1
(e)その他
【0052】
このような場合、図10に示すように、従来技術では2つ以上の誘導型位置センサ1が使用される。特に、自動車のステアリングシステムやブレーキシステムなどの高い安全性を必要とするアプリケーションでは、フェイルセーフシステムやフェイルオペレーショナルシステムに冗長性が求められることが多い。図10は、2つの位置センサ1を使用する従来技術によるシステム1の第1の実施形態を示す。
【0053】
従来技術の別の実施形態では、2つの別個のセンサ1(位置センサ#1および位置センサ#2)を使用しているが、同一の送信コイル4(Tx1)を共有している。図11は、このようなセンサ1を示し、2つの位置センサ1を使用する従来技術によるシステム1の第2の実施形態を示す。
【0054】
図12は、本発明による位置センサシステム1の第1の実施形態を示す。本発明は、受信コイル2,3の検知要素を完全に冗長化して物理的に分離した状態で、2組以上の受信コイル(2,3)セットと1つまたは複数の送信コイル4の信号処理とを同一のプリント回路基板7上に実装することで、高い機能安全性が要求され且つ冗長性を必要とするシステムを対象としている。2組の受信コイル(2,3)セットを有するこのような実装例の概要を図12に示す。本構成の別の実施形態では、3組以上の受信コイル(2,3)セットを実装することができる。
【0055】
図12に示す位置センサシステム1は、誘導型位置センサシステムである。当該システムは、2組の受信コイル(2,3)セットと、1つの送信コイル4と、信号調整処理部5と、を備える。各受信コイルセットは、sin受信コイル2と、cos受信コイル3と、を備える。本発明によれば、信号調整処理部5は、単一の集積回路6内に含まれ、少なくとも2組の受信コイル(2,3)セット、送信コイル4および信号調整処理部5を含む集積回路6は、単一のプリント回路基板7上に位置する。
【0056】
一般的に、各受信器(図12に示す受信器#1および受信器#2)は、同一のまたは独立したターゲット8を検出するために使用することができ、同一のチップ上の1つまたは複数の送信コイル4を共有する。
【0057】
図13は、本発明による位置センサシステム1の第2の実施形態を示す。特に、図13は、少なくとも2組の受信コイル(2,3)セットに対する送信コイル4の位置を示す。送信コイル4は、少なくとも2組の受信コイル(2,3)セットの外側に配置することができ、特に、図13に示すように受信コイル(2,3)セットの外周に配置することができる。本発明の別の実施形態では、送信コイル4は、図13に示すように受信コイル(2,3)セットによって形成された空隙内に配置されてもよい。
【0058】
図14は、本発明による位置センサシステム1の第3の実施形態を示し、図15は、本発明による位置センサシステム1の第4の実施形態を示し、図16は、本発明による位置センサシステム1の第5の実施形態を示す。図14図16に示す位置センサシステム1の各々は、2組の受信コイル(2,3)セットを備え、各受信コイル(2,3)セットは、sin受信コイル2と、cos受信コイル3と、を備える。2組の受信コイルセットのsin受信コイルのコネクタには、R1N/R1P、R3N/R3Pとそれぞれ示されており、2組の受信コイル(2,3)セットのcos受信コイルのコネクタには、R2N/R2PおよびR4N/R4Pとそれぞれ示されている。各受信コイル(2,3)セットは、異なるターゲット8を検出する。さらに、図14図16に示す位置センサシステム1の各々は、2つの送信コイル4と、単一の信号調整処理部5と、を備える。図14に示す第3の実施形態によれば、2つの送信コイル4は、直列に接続されており、信号調整処理部5の同一の発振器10による供給を受ける。図15に示す第4の実施形態によれば、2つの送信コイル4は、並列に接続されており、信号調整処理部5の同一の発振器10による供給を受ける。図16に示す第5の実施形態によれば、2つの送信コイル4は、互いに分離されており、信号調整処理部5の各発振器10による供給を受ける。
【0059】
図14図16に示す構成の実用的な実装例としては、主輪と、主輪に対してわずかに異なる変速比をそれぞれもつ2つの補助輪とを有する多回転センサが考えられる。ターゲット8が各補助輪に取り付けられており、各ターゲットが受信コイルセット#1および#2によってそれぞれ検出される。図14に示す位置センサ1に基づくこのような第6の実施形態を図17に示す。
【0060】
なお、上述した多回転センサ1は従来技術であるが、本実施例の革新的な側面は、各補助輪に対して1つの位置センサ1を使用する代わりに、2組の受信コイル(2,3)セットを有する単一の集積回路を使用することである。
【0061】
図18に示す2組の受信コイル(2,3)セットと1つの送信コイル4を利用する第7の実施形態は、コイルセット#1(R1N,R1P,R2N,R2P)の3周期とコイルセット#2(R3N,R3P,R4N,R4P)の4周期とを使用してロングストロークのバーニア設計を構成するためのデュアル受信コイルのセットアップ例である。受信コイルセット#1および#2は、(図18に示すように)互いに隣接して配置されてもよく、互いに重ねて配置されてもよい。
【0062】
図19は、図18に示す回路のセンサ出力の概要を示す。ここでは、センサ1(受信コイルR1,R2)に3相使用しており、センサ2(受信コイルR3,R4)に4相使用している。本実施例では、各センサは、12ビットの分解能(1相あたり4096ステップ)を有する。
【0063】
両方の信号の数学的な差(点線)を使用して負の結果を修正(「バーニア」線)するバーニアの原理を利用することで、図19の「バーニア」に示すように、両方のセンサの信号を組み合わせてセンサのフルストロークにわたって単一の曖昧でない線形信号を提供することができる。
【0064】
図20に示す第8の実施形態では、第1の受信コイル(2,3)セットは、1フルストロークあたり4周期を使用しており、第2の受信コイル(2,3)セットは、1フルストロークあたり1周期を使用している。この構成により、コイルセット#1の位相数に応じてそれぞれ4倍の分解能を得ることができる。
【0065】
コイルセット#1から得られる位置は曖昧であり、フルストローク中で4つの位置である可能性があるが、コイルセット#2から得られる位置は曖昧ではなく、フルストローク中で1つの位置の可能性しかない。
【0066】
しかしながら、コイルセット#2は長く伸びているため、分解能が低下し、例えばフルストロークにわたって4096ステップとなり、第1のコイルセット#1ではフルストロークにわたって4×4096=16384の位置となる。コイルセット#2の位置を分析することで、その上方をターゲット8が移動するコイルセット#1の周期を決定することができ、その結果、曖昧ではない高分解能の位置検出が可能となり、フルストロークにわたって16384の位置で絶対位置を提供することができる。
【0067】
同様の実装例における別の実施形態では、1周期あたり4096ステップとは異なる分解能を使用することができる。
【0068】
図18に示す実施形態と同様に、図20に示す実施形態では、コイルセット#1と#2とを互いに隣接して配置してもよく、互いに重ねて配置してもよい。
【0069】
本発明のすべての実施形態では、信号調整処理部5は、単一の集積回路6に含まれており、少なくとも2組の受信コイル(2,3)セット、少なくとも1つの送信コイル4、および信号調整処理部5を含む集積回路6は、単一のプリント回路基板7上に位置する。
【0070】
図21は、本発明による位置センサシステム1の第9の実施形態を示す。図22は、本発明による位置センサシステム1の第10の実施形態を示す。
【0071】
図21および図22は、単一のチップ上のマルチ受信コイルセットの位置センサ1の2つの可能な実装例を示す。図21では、RFフロントエンドブロックにおけるマルチプレクサ14によって選択された2組の受信コイル(2,3)セットが順次処理される。このセットアップでは、両方の受信コイルセットのマルチプレクサ(MUX)に続いて同一の信号処理のチェーンを利用するため、必要なビルディングブロックの数が少なくなる。また、本実施形態は、共有受信チャネルを有するとも考えられる。マルチプレクサ(MUX)14は、少なくとも2組の受信コイル(2,3)セットを共有受信チャネルに順次多重化するためのものである。
【0072】
この原理は、2組以上の受信コイル(2,3)セットに適用することができる。
【0073】
図22では、2組の受信コイル(2,3)セットが並列の受信チャネルで処理され、これにより、処理速度が実質的に2倍になる。このセットアップは、高速のデータレートと受信コイルセット間の信号遅延が少ないまたはまったくないことが要求されるアプリケーションに特に有用である。
【0074】
各受信チャネルは、RF信号受信処理部15と、A/D変換器11と、デジタル信号処理部12と、を備える。
【0075】
デジタル信号処理部12は、入力された電圧をデジタル値に変換する。これにより、これらの信号のオフセットや振幅の不一致が補正される。補正された入力データに基づいて角度情報が算出され、2組のコイル(2,3)セット間の位相のずれがデジタル処理で取り除かれる。
【0076】
図23は、本発明による位置センサシステム1の第11の実施形態を示す。
【0077】
出力精度は、
・ 線形化の位置基準として、位相のずれが生じた両方のセンサの平均値を選択することで、外部の精密な位置基準を必要とすることなく、n点の終端線形化を行うこと、および
・ 2つの角度出力の平均値をとること
によって向上させることができる。
【0078】
診断範囲は、
・ 2組のコイル(2,3)セット間の角度出力の差が制限値を超えているかどうかを確認すること、および
・ 振幅の不一致やオフセット、またはその程度や周期変動が制限値を超えているかどうかを確認すること
によって広がる。
【0079】
システム稼働率は、
・ 1組の受信コイル(2,3)セットのエラーが検出された場合、そのコイル(2,3)セットの残りのコイルからの情報を他の受信コイル(2,3)セットの他のコイルと組み合わせて使用して、妥当性を向上させること、および
・ 2組のセンサコイル(2,3)セットを、2つの別個の並列回路5の代わりに、1つの信号調整処理部5と使用して、故障確率を低減させること
によって向上させることができる。
【0080】
このような実装例の別の例として、高分解能の角度出力が要求され、1回転内で絶対的であり、広い診断範囲を提供するステアリングセンサが挙げられる。
【0081】
これは、図20に示す直線運動センサの回路と同じ原理に基づいている。
【0082】
以下に示す実施例では、第1の受信コイルセットは、機械的な回転ごとに1周期で設計されており、第2の受信コイルセットは、機械的な回転ごとに8周期で設計されている。
【0083】
本構成における別の実施形態では、3組以上の受信コイルセットを実装することができる。
【0084】
各受信器(図12に示す受信器#1および受信器#2)は、同一のまたは独立した移動ターゲット要素を検出するために使用することができ、同一のチップ上の1つまたは複数の送信コイルを共有する。図13に示すように、送信コイルは、受信コイルセットの外周に配置することができる。
【0085】
本発明の別の実施形態では、図13に示すように、送信コイルは、受信コイルセットの内側に配置されてもよい。
【0086】
このような構成の実用的な実装例を図14に示す。受信コイルセット#1(R1N/R1PおよびR2N/R2P)および受信コイルセット#2(R3N/R3PおよびR4N/R4P)は、異なるターゲットを検出するが、同一の送信コイルを共有する。2つの送信コイルのセクションは、並列に接続されており、同一の発振器による供給を受ける。
【0087】
同様の構成における別の実施形態では、図15に示すように、2つの送信コイルのセクションが並列に接続されてもよく、同一の発振器による供給を受けてもよい。
【0088】
同様の構成における別の実施形態では、図16に示すように、2つの独立した発振器による供給を受ける2つの別個の送信コイルが設けられてもよい。
【0089】
図14図16に示す構成の実用的な実装例としては、主輪と、主輪に対してわずかに異なる変速比をそれぞれもつ2つの補助輪とを有する多回転センサが考えられる。金属ターゲットが各補助輪に取り付けられており、各ターゲットが受信コイルセット#1および#2によってそれぞれ検出される。このような実施形態を図17に示す。
【0090】
なお、上述した多回転センサは従来技術であるが、本実施例の革新的な側面は、各補助輪に対して1つの位置センサを使用する代わりに、2組の受信コイルセットを有する単一の集積回路を使用することである。
【0091】
図18に示す2組の受信コイルセットと1つの送信コイルを利用する別の実施形態は、コイルセット#1(R1N,R1P,R2N,R2P)の3周期とコイルセット#2(R3N,R3P,R4N,R4P)の4周期とを使用してロングストロークのバーニア設計を構成するためのデュアル受信コイルのセットアップ例である。受信コイルセット#1および#2は、(図18に示すように)互いに隣接して配置されてもよく、互いに重ねて配置されてもよい。
【0092】
図19は、図18に示す回路のセンサ出力の概要を示す。ここでは、センサ1(受信コイルR1,R2)に3相使用しており、センサ2(受信コイルR3,R4)に4相使用している。本実施例では、各センサは、12ビットの分解能(1相あたり4096ステップ)を有する。
【0093】
両方の信号の数学的な差(点線)を使用して負の結果を修正(「バーニア」線)するバーニアの原理を利用することで、図19の「バーニア」に示すように、両方のセンサの信号を組み合わせてセンサのフルストロークにわたって単一の曖昧でない線形信号を提供することができる。
【0094】
別の実施形態では、図20に示すように、第1の受信コイル(2,3)セットは、1フルストロークあたり4周期を使用しており、第2の受信コイル(2,3)セットは、1フルストロークあたり1周期を使用している。この構成により、コイルセット#1の位相数に応じてそれぞれ4倍の分解能を得ることができる。
【0095】
コイルセット#1から得られる位置は曖昧であり、フルストローク中で4つの位置である可能性があるが、コイルセット#2から得られる位置は曖昧ではなく、フルストローク中で1つの位置の可能性しかない。
【0096】
しかしながら、コイルセット#2は長く伸びているため、分解能が低下し、例えばフルストロークにわたって4096ステップとなり、第1のコイルセット#1ではフルストロークにわたって4×4096=16384の位置となる。コイルセット#2の位置を分析することで、その上方をターゲットが移動するコイルセット#1の周期を決定することができ、その結果、曖昧ではない高分解能の位置検出が可能となり、フルストロークにわたって16384の位置で絶対位置を提供することができる。
【0097】
同様の実装例における別の実施形態では、1周期あたり4096ステップとは異なる分解能を使用することができる。
【0098】
図18に示す実施形態と同様に、図20に示す実施形態では、コイルセット#1と#2とを互いに隣接して配置してもよく、互いに重ねて配置してもよい。
【0099】
図21および図22は、単一のチップ上のマルチ受信コイルセットの位置センサの2つの可能な実装例を示す。図21では、RFフロントエンドブロックにおけるマルチプレクサ(MUX)によって選択された2組の受信コイルセットが順次処理される。このセットアップでは、両方の受信コイルセットのマルチプレクサ(MUX)に続いて同一の信号処理のチェーンを利用するため、必要なビルディングブロックの数が少なくなる。
【0100】
別の実施形態では、この原理を2組以上の受信コイルセットに適用してもよい。
【0101】
図22では、2組の受信コイルセットが並列のチャネルで処理され、これにより、処理速度が実質的に2倍になる。このセットアップは、高速のデータレートと受信コイルセット間の信号遅延が少ないまたはまったくないことが要求されるアプリケーションに特に有用である。
【0102】
図23は、本発明による位置センサシステム1の第11の実施形態を示す。この第11の実施形態では、両方の受信コイル(2,3)セットは、機械的な回転ごとに5周期で設計されている。
【0103】
信号処理部は、入力された電圧をデジタル値に変換する。これにより、これらの信号のオフセットや振幅の不一致が補正される。補正された入力データに基づいて角度情報が算出され、2組のコイルセット間の位相のずれがデジタル処理で取り除かれる。
【0104】
出力精度は、
・ 線形化の位置基準として、位相のずれが生じた両方のセンサの平均値を選択することで、外部の精密な位置基準を必要とすることなく、n点の終端線形化を行うこと、および
・ 2つの角度出力の平均値をとること
によって向上させることができる。
【0105】
診断範囲は、
・ 2組のコイルセット間の角度出力の差が制限値を超えているかどうかを確認すること、および
・ 振幅の不一致やオフセット、またはその程度や周期変動が制限値を超えているかどうかを確認すること
によって広がる。
【0106】
システム稼働率は、
・ 1組の受信コイルセットのエラーが検出された場合、そのコイルセットの残りのコイルからの情報を他の受信コイルセットの他のコイルと組み合わせて使用して、妥当性を向上させること、および
・ 2組のセンサコイルセットを、2つの別個の並列回路の代わりに、1つの信号調整処理回路と使用して、故障確率を低減させること
によって向上させることができる。
【0107】
本発明による位置センサシステム1の第12の実施形態は、高分解能の角度出力が要求され、1回転内で絶対的であり、広い診断範囲を提供するステアリングセンサに関する。
【0108】
これは、図20に示す直線運動センサの回路と同じ原理に基づいている。
【0109】
この第12の実施形態では、第1の受信コイル(2,3)セットは、機械的な回転ごとに1周期で設計されており、第2の受信コイル(2,3)セットは、機械的な回転ごとに8周期で設計されている。
【0110】
第1の受信コイル(2,3)セットを使用して、絶対角度が算出される。ターゲット要素8は、高分解能センサと同様に、絶対的な1周期のために十分な信号振幅を生成するように設計される必要がある。
【0111】
高分解能のインクリメンタル多極受信コイルを使用して、センサ1の分解能を向上させることができる。図24は、1回転あたり8つの出力周期をもつ構成を示す。ここでは、1周期のアブソリュートセンサと比較して8倍の分解能が得られる。これにより、機械的なセットアップやターゲット8の構成に応じて精度を向上させることができる。
【0112】
2組の別個のコイル(2,3)セットの妥当性を算出することで、診断範囲を広げることができる。
【0113】
一部のコイルの構造は、上述した利点以外の利点を有する場合がある。例えば、シャフト9の側面に取り付けられた円弧状の設計では、360°の円形の設計に比べて比較的小さな面積で済む。このような利点にもかかわらず、半径方向に変位があった場合、角度精度の低下など、いくつかの欠点が見られる。半径方向の変位を測定するように設計された第2または第3の受信コイル(2,3)セットは、ターゲット8の偏心から生じる可能性のあるエラーを示して補正するために使用することができる。
【0114】
本発明は、特に以下の12の態様に関する。
1.同一のチップ7上に2組以上の受信コイル(2,3)セットを有する位置センサであって、アナログ電圧、電流変調、PSI5、PWM(パルス幅変調)、SENT(Single Edge Nibble Transmission)プロトコル、I2Cプロトコル、SPI(Serial Peripheral Interface)、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、CANまたはLINを含むがこれらに限定されない出力インタフェース13を介して、両方のセンサの情報を提供する、位置センサ。
2.同一の集積回路6上に、2組以上の受信コイル(2,3)セット、共有送信コイル4、および共有信号調整処理部5を有する誘導型位置検知システム1。
3.同一の集積回路6上に、2組以上の受信コイル(2,3)セット、共有送信コイル4、および分離された信号調整処理部5を有する誘導型位置検知システム1。
4.同一の集積回路6上に、2組以上の受信コイル(2,3)セット、分離された送信コイル4、および共有信号調整処理部5を有する誘導型位置検知システム1。
5.同一の集積回路6上に、2組以上の受信コイル(2,3)セット、分離された送信コイル4、および信号調整処理部5を有する誘導型位置検知システム1。
6.各受信コイル(2,3)セットに対して分離された出力信号情報を提供する、第1~第5の態様のいずれかによる誘導型位置検知システム1。
7.すべての受信コイル(2,3)セットに対して結合された出力信号情報を提供する、第1~第6の態様のいずれかによる誘導型位置検知システム1。
8.2つ以上の受信信号から絶対的な高分解能位置を生成する、第1~第7の態様のいずれかによる誘導型位置検知システム1。
9.好ましくは同一の集積回路6上にある2つ以上のコイル2,3から差動信号を生成する、第1~第8の態様のいずれかによる誘導型位置検知システム1。
10.外乱量を決定および補正するために追加のコイル入力を使用して、位置出力精度を向上させる、第1~第9の態様のいずれかによる誘導型位置検知システム1。
11.第1~第10の態様のいずれかによる誘導型位置検知システム1を同一の集積回路6上に実装すること。
12.送信コイル4によって生成された電磁場を変更している金属導電性またはその他の構造のターゲット8を使用する、第11の態様による実施例。
【符号の説明】
【0115】
1 位置センサシステム
2 正弦(sin)受信コイル
3 余弦(cos)受信コイル
4 送信コイル
5 信号調整処理部
6 集積回路
7 プリント回路基板(PCB)
8 ターゲット
9 シャフト
10 発振器
11 A/D変換器
12 デジタル信号処理部
13 出力インタフェース
14 マルチプレクサ
15 RF信号受信処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24