(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068869
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】デュアルフューエルエンジンの燃料噴射器、デュアルフューエルエンジン、及びデュアルフューエルエンジンを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
F02M 43/04 20060101AFI20220427BHJP
F02M 61/10 20060101ALI20220427BHJP
F02M 61/16 20060101ALI20220427BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
F02M43/04
F02M61/10 T
F02M61/16 A
F02D19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021172364
(22)【出願日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10 2020 127 782.2
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ペンスゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ヴロカ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クラウア
【テーマコード(参考)】
3G066
3G092
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AA16
3G066AB02
3G066CC14
3G066CC70
3G066CE22
3G092AA02
3G092AB12
3G092AC10
3G092BB06
3G092BB13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、デュアルフューエル内燃機関の燃料噴射器に関する。
【解決手段】デュアルフューエル内燃機関が、本体と本体のニードルガイドの内部で移動可能に案内されるノズルニードルによって形成されていると共に、開口部を介してシリンダの燃焼室に結合可能とされるニードル燃料室であって、開口部が、ノズルニードルが第1の位置に位置している場合に開いており、ノズルニードルが第2の位置に位置している場合に閉じているニードル燃料室とを有しており、ニードル燃料室に結合されている第1の配管が、本体の内部に通じており、第1の液体燃料が、第1の配管を介してニードル燃料室の内部に導入され、第1の配管とは別体である第2の配管が、ニードル燃料室に結合されている本体の内部に通じており、第2の液体燃料が、第2の配管を介してニードル燃料室の内部に導入される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルフューエル内燃機関(11)の燃料噴射器(16)であって、前記デュアルフューエル内燃機関(11)のシリンダ(12)の燃焼室(33)に燃料を供給するように構成されている前記燃料噴射器(16)において、
前記デュアルフューエル内燃機関(11)が、
本体(27)と、
前記本体(27)のニードルガイド(30)の内部で移動可能に案内されるノズルニードル(28)と、
前記本体(27)によって形成されていると共に、開口部(32)を介して前記シリンダ(12)の前記燃焼室(33)に結合可能とされるニードル燃料室(31)であって、前記開口部(32)が、前記ノズルニードル(28)が第1の位置に位置している場合に開いており、前記ノズルニードル(28)が第2の位置に位置している場合に閉じている、前記ニードル燃料室(31)と、
を有しており、
前記ニードル燃料室(31)に結合されている第1の配管(34)が、前記本体(27)の内部に通じており、第1の液体燃料が、前記第1の配管(34)を介して、前記ニードル燃料室(31)の内部に導入され、
前記第1の配管(34)とは別体である第2の配管(35)が、前記ニードル燃料室(31)に結合されている前記本体(27)の内部に通じており、第2の液体燃料が、前記第2の配管(35)を介して、前記ニードル燃料室(31)の内部に導入されることを特徴とする燃料噴射器。
【請求項2】
前記第2の配管(35)が、例えばチョーク(26)のような制御要素を介して、前記ニードル燃料室(31)に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射器。
【請求項3】
前記開口部(32)に隣り合っている前記ニードル燃料室(31)が、前記チョーク(26)を介して前記第2の配管(35)に結合されている部分室(31a)を形成しており、
前記ニードル燃料室(31)が、前記開口部(32)を介して、前記シリンダ(12)の前記燃焼室(33)に結合可能とされることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射器。
【請求項4】
前記第2の配管(35)が、前記燃料噴射器(16)の前記ニードルガイド(30)に結合されており、
前記第2の液体燃料が、前記第2の配管(35)を介して、障壁流体として前記ニードルガイド(30)に供給可能とされることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料噴射器。
【請求項5】
前記第2の配管(35)が、前記燃料噴射器(16)の制御弁(29)の制御チャンバ(36)に結合されており、
前記第2の液体燃料が、前記第2の配管(35)を介して、作動流体として前記制御チャンバ(36)に供給可能とされることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料噴射器。
【請求項6】
前記第2の配管(35)が、チョーク(37)を介して、前記制御弁(29)の前記制御チャンバ(36)に結合されていることを特徴とする請求項5に記載の燃料噴射器。
【請求項7】
前記ニードルガイド(30)が、前記制御弁(29)の前記ニードル燃料室(31)と前記制御チャンバ(36)との間に位置決めされていることを特徴とする請求項5又は6に記載の燃料噴射器。
【請求項8】
前記燃料噴射器が、デュアルフューエル噴射器とされ、
前記デュアルフューエル内燃機関の第1の運転モードでは、相対的に点火可能な燃料それぞれが、第1の燃料として前記第1の配管(34)に供給され、及び第2の燃料として前記第2の配管(35)に供給され、
前記デュアルフューエル内燃機関の第2の運転モードでは、相対的に点火不可能な燃料が、第1の燃料として前記第2の配管(34)に供給され、及び相対的に点火可能な燃料が、前記相対的に点火不可能な燃料を点火させるために、第2の燃料として前記第2の配管(35)に供給されることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の燃料噴射器。
【請求項9】
デュアルフューエル内燃機関(11)であって、
前記デュアルフューエル内燃機関(11)の第1の運転モードにおいて、相対的に点火可能な液体燃料が燃焼可能とされ、第2の運転モードにおいて、相対的に点火不可能な液体燃料が燃焼可能とされる、シリンダと、
前記シリンダ(12)それぞれについて少なくとも1つの燃料噴射器(16)を備えている射出システムでと、
を有している前記デュアルフューエル内燃機関において、
前記第1の運転モードにおいて、相対的に点火可能な燃料それぞれが、第1の液体燃料及び第2の液体燃料として、前記射出システムを介して供給可能とされ、
前記第2の運転モードにおいて、相対的に点火不可能な燃料が、第1の液体燃料として、前記射出システムを介して供給可能とされ、相対的に点火可能な燃料が、前記相対的に点火不可能な燃料を点火させるための第2の液体燃料として、前記射出システムを介して供給可能とされ、
前記燃料噴射器(16)それぞれが、請求項1~8のいずれか一項に記載の燃料噴射器とされることを特徴とするデュアルフューエル内燃機関。
【請求項10】
請求項9に記載のデュアルフューエル内燃機関(11)を動作させるための方法において、
前記第1の運転モードにおいて、前記相対的に点火可能な燃料が、前記燃料噴射器(16)それぞれを介して、前記シリンダそれぞれの燃焼室(33)に導入され、
前記第2の運転モードにおいて、前記相対的に点火可能な燃料と前記相対的に点火不可能な燃料とが、前記燃料噴射器(16)それぞれを介して、前記シリンダそれぞれの燃焼室(33)に導入され、
前記第2の運転モードにおいて、前記相対的に点火可能な燃料が、前記相対的に点火不可能な燃料を点火させるために利用されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルフューエル内燃機関の燃料噴射器に関する。さらに、本発明は、デュアルフューエル内燃機関、及び当該デュアルフューエル内燃機関の運転方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、少なくとも140mm、特に少なくとも175mmのピストン直径を有しているシリンダを具備する、いわゆる大型エンジン又は大型内燃機関の分野に関する。このような大型内燃機関として、例えば船舶エンジンが挙げられる。
【0003】
船舶エンジンとしてのデュアルフューエル内燃機関は既に知られている。従来技術として知られているデュアルフューエル内燃機関は、液体燃料を燃焼させる第1の運転モードと、気体燃料又は別の液体燃料を燃焼させる第2の運転モードとで動作可能とされる。
【0004】
特許文献1は、デュアルフューエル噴射器を有するデュアルフューエル内燃機関を開示している。燃料はそれぞれ、別々の燃料ポンプを介して、デュアルフューエル噴射器に向かって供給される。さらに、別体の密封潤滑油システムが設けられている。
【0005】
このことを起点として、本発明は、デュアルフューエル内燃機関の新しいタイプの燃料噴射器と、そのような燃料噴射器を具備するデュアルフューエル内燃機関とを提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017123315号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当該目的は、請求項1に記載の燃料噴射器によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
燃料噴射器は,デュアルフューエル内燃機関のシリンダの燃焼室に液体燃料を供給するように構成されている。燃料噴射器は、本体と、本体のニードルガイドの内部において移動可能に案内されるノズルニードルと、本体によって形成されたニードル燃料室であって、開口部を介して燃焼室に結合可能とされるニードル燃料室と、を備えており、ノズルニードルの第1の位置において開口部は開いており、ノズルニードルの第2の位置において開口部は閉じている。
【0009】
ニードル燃料室に結合されている第1の配管は、燃料噴射器の本体の内部に通じており、第1の液体燃料は、第1の配管を介してニードル燃料室に導入可能とされる。さらに、第1の配管とは別体の第2の配管が、燃料噴射器の本体の内部に通じており、第2の配管も、ニードル燃料室に結合されており、第2の液体燃料は、第2の配管を介してニードル燃料室に導入可能とされる。
【0010】
本発明における燃料噴射器は、液体燃料を燃焼させるデュアルフューエル内燃機関のシリンダそれぞれの燃焼室への特に優れた燃料噴射を可能にする。デュアルフューエル内燃機関の所定の運転モードでは、液体、相対的に点火不可能な燃料が、具体的には別の液体、相対的に点火不可能な液体燃料を点火するために利用される相対的に点火可能な燃料と共に、燃料噴射器を介してシリンダそれぞれの燃焼室に噴射可能とされる。別の所定の運転モードでは、燃料噴射器は、相対的に点火可能な液体燃料をシリンダそれぞれの燃焼室それぞれに導入するために専ら利用される。従って、本発明における燃料噴射器は、主噴射器として機能するとともに、パイロット噴射器としても利用される。別体のパイロットインジェクタを省略することができる。これにより、内燃機関の構造を単純化することができる。
【0011】
好ましくは、特に液体、相対的に点火不可能な燃料が第1の配管を介してニードル燃料室に導入された場合に、所定の態様で相対的に点火可能な液体燃料をニードル燃料室に供給するために、第2の配管は、例えばチョークのような制御要素を介してニードル燃料室に結合されている。
【0012】
本発明のさらなる発展形態では、第2の配管は、ニードルガイドに及び/又は燃料噴射器の制御弁の制御室にさらに結合されており、液体、相対的に点火可能な燃料が、第2の配管を介して、障壁流体としてニードルガイドに供給可能とされ、及び/又は作動流体として制御室に供給可能とされる。また、相対的に点火可能な液体燃料は、障壁流体又は作動流体として機能する。これにより、エンジンの構造を特に単純化することができる。好ましくは、第2の配管は、さらなるチョークを介して制御弁の制御室に結合されている。このことは、相対的に点火可能な燃料を所定の態様で制御弁の制御室に供給するために望ましい。
【0013】
本発明におけるデュアルフューエル内燃機関は、請求項9に定義されている。本発明におけるデュアルフューエル内燃機関の運転方法は、請求項10に定義される。
【0014】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、従属請求項及び発明の詳細な説明から得られる。本発明の例示的な実施例は、図面を用いて詳細に説明されるが、本発明は、このような例示的な実施例に限定される訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】デュアルフューエル内燃機関を具備する船舶推進システムを表わす。
【
図2】デュアルフューエル内燃機関の燃料噴射器の断面図である。
【
図3】デュアルフューエル内燃機関の運転方法を説明するための第1の図である。
【
図4】デュアルフューエル内燃機関の運転方法を説明するための第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、複数のシリンダ12を具備するデュアルフューエル内燃機関11を備えている船舶推進システム10の概略図である。
【0017】
シリンダ12の内部において、燃料が、具体的にはデュアルフューエル内燃機関11の第1の運転モードにおいては液体、相対的に点火可能な燃料(比較的点火し易い燃料)が、デュアルフューエル内燃機関11の第2の運転モードにおいては液体、相対的に点火不可能な燃料(比較的点火しにくい燃料)が燃焼される。
【0018】
燃料それぞれの燃料の際には、デュアルフューエル内燃機関11は、発電機13を駆動するために、
図1で利用される駆動力を発生させる。発電機13では、船舶のプロペラ14を駆動するために利用される電気エネルギが発生される。
【0019】
図1は、さらに、デュアルフューエル内燃機関11の燃料供給システム15を表わす。
図2は、燃料供給システム15のアセンブリとして、本発明における燃料噴射器16を表わす。
【0020】
デュアルフューエル内燃機関11の運転モードそれぞれにおいて、燃料供給システム15によって、液体燃料それぞれが、燃料供給システム15のシリンダ12に供給可能とされる。
【0021】
燃料供給システム15は、シリンダ12それぞれに対して、少なくとも1つの燃料噴射器16、特に単一の燃料噴射器16を備えている。
【0022】
デュアルフューエル内燃機関11の第1の運転モードにおいて、相対的に点火可能な液体燃料は、燃料噴射器16を介して、シリンダ12それぞれに供給可能とされる。さらに、デュアルフューエル内燃機関11の第2の運転モードにおいて、相対的に点火不可能な液体燃料と、当該相対的に点火不可能な液体燃料を点火させるための、相対的に点火可能な液体燃料とが、燃料噴射器16を介して、シリンダ12それぞれに供給可能とされる。
【0023】
従って、第1の運転モード及び第2の運転モードの両方において、具体的には、点火可能な燃料を専ら導入するための第1の運転モード、及び、点火不可能な液体燃料と点火不可能な液体燃料を点火させるための点火可能な液体燃料とを点火させるための第2の運転モードの両方において、シリンダ12の一の同一の燃料噴射器16が利用可能とされる。従って、一の同一の燃料噴射器16が、主噴射器としても、及びパイロット噴射器として利用される。
【0024】
図2は、本発明における燃料噴射器16を詳細に表わす。上述のように、燃料噴射器16は、第1の運転モードにおいて、相対的に点火可能な液体燃料をシリンダそれぞれに導入するために、及び、第2の運転モードにおいて、相対的に点火不可能な液体燃料を相対的に点火可能な液体燃料と共にシリンダそれぞれに導入するために利用される。第2の運転モードにおいて、相対的に点火可能な液体燃料は、相対的に点火不可能な液体燃料を点火させるために利用される。
【0025】
燃料噴射器16は、好ましくは複数の部分から成る本体27と、ノズルニードル28と、制御弁29とを備えている。
【0026】
ノズルニードル28は、本体27のニードルガイド30に移動可能に案内される。本体27は、ニードル燃料室31を形成している。ニードル燃料室31は、開口部32を介して、シリンダ12それぞれの燃焼室33に結合可能とされる。ノズルニードル28の第1の位置において、ノズルニードル28は開口部32を閉じている。ノズルニードル28の第2の位置において、ノズルニードル28は開口部32を開放している。
【0027】
第1の配管34が、本発明における燃料噴射器16の本体27の内部に通じている。第1の配管34は、ニードル燃料室31に結合されており、第1の液体燃料は、第1の配管34を介して、ニードル燃料室31に導入可能とされる。
【0028】
ニードル燃料室31に結合されている第1の配管34に加えて、第1の配管34とは別体の第2の配管35が、本体27の内部に通じており、第1の配管34から独立してニードル燃料室31に結合されている。第2の燃料は、第2の配管35を介して、ニードル燃料室31に導入可能とされる。
【0029】
第1の配管34が、開口部32から離隔配置されているニードル燃料室31の部分室31bに連通している一方、第2の配管35は、開口部32に隣接して形成されているニードル燃料室31の部分室31bに連通しているので、ニードル燃料室31は、開口部32を介して、シリンダ12それぞれの燃焼室33に結合可能とされる。従って、第2の配管35が開口部32に隣接しているニードル燃料室31に連通している一方、第1の配管34は開口部32から明確に離隔配置されているニードル燃料室31に連通している。ニードル燃料室31の2つの部分室31a,31bは、チョーク状の狭窄部40を介して、互いに結合されている。
【0030】
デュアルフューエル内燃機関11の第1の運転モードでは、相対的に点火可能な液体燃料が、第1の燃料として第1の配管34に可能とされると共に、第2の燃料として第2の配管35に供給可能とされる。従って、第1の運転モードでは、点火可能な液体燃料が、ニードル燃料室31の部分室31a,31bの両方に供給される。
【0031】
デュアルフューエル内燃機関11の第2の運転モードでは、相対的に点火不可能な燃料は、第1の燃料として第1の配管34に供給可能とされ、相対的に点火可能な液体燃料は、第2の液体燃料として第2の配管35に供給可能とされる。相対的に点火可能な液体燃料は、第2の運転モードにおいて相対的に点火不可能な燃料を点火させるために利用される。従って、相対的に点火可能な液体燃料はニードル燃料室31の部分室31aに供給され、相対的に点火不可能な液体燃料はニードル燃料室31の部分室31bに供給される。
【0032】
図1は、相対的に点火可能な液体燃料を保持している燃料タンク18を表わす。
【0033】
第1の運転モードでは、このような相対的に点火可能な液体燃料が、主ポンプとも呼称される第1の燃料ポンプ17を介して、燃料噴射器16それぞれの第1の配管34に供給される。さらに、第1の運転モードでは、燃料タンク18からの相対的に点火可能な液体燃料は、パイロットポンプとも呼称される第2の燃料ポンプ24を介して、燃料噴射器16それぞれの第2の配管35に供給される。
【0034】
好ましくは、第2の燃料ポンプ24によって付与される圧力は、第1の燃料ポンプ17によって付与される圧力より僅かに高い。
【0035】
デュアルフューエル内燃機関の第2の運転モードでは、第2の燃料タンク19に保持されている相対的に点火不可能な液体燃料が、第1の燃料ポンプ17を介して、再び燃料噴射器16それぞれの第1の配管34に供給される一方、第2の運転モードでは、燃料タンク18からの相対的に点火可能な燃料は、第2の燃料ポンプ24を介して、燃料噴射器それぞれの第2の配管35に供給される。
【0036】
図1は、2つの燃料タンク18,19の他に、シャトル弁22を表わす。相対的に点火可能な液体燃料を保持するようになっている燃料タンク18が、燃料配管20を介して、シャトル弁22に結合されている一方、相対的に点火不可能な液体燃料を保持するようになっている第2の燃料タンク19は、燃料配管21を介して、シャトル弁22に結合されている。
【0037】
特に第1の運転モードでデュアルフューエル内燃機関11が動作している場合には、燃料タンク16は、シャトル弁22を介して、燃料ポンプ17に結合されている。第1の運転モードでは、第2の燃料タンク19は、燃料ポンプ17から結合解除されている。対照的に、第2の運転モードでデュアルフューエル内燃機関が動作している場合には、相対的に点火不可能な液体燃料を保持している第2の燃料タンク19は、シャトル弁22を介して、第1の燃料ポンプ17に結合されている。第2の運転モードでは、相対的に点火可能な液体燃料を保持している燃料タンク18は、シャトル弁22を介して、第1の燃料ポンプ17から結合解除されている。
【0038】
図1から明らかなように、第2の燃料ポンプ24からの燃料配管23は、シリンダ12に向かって延在しており、燃料配管23は、燃料噴射器16それぞれの第2の配管35に結合されている。また、燃料ポンプ17からの燃料配管25が、シリンダ12に向かって延在しており、燃料配管25は、燃料噴射器16それぞれの第1の配管34それぞれに結合されている。
【0039】
特にデュアルフューエル内燃機関11が第1の運転モードで適適切に運転されている場合には、燃料噴射器16それぞれの第1の配管34及び第2の配管35が燃料タンク18に結合されており、これにより、相対的に点火可能な液体燃料が燃料噴射器16それぞれの第1の配管34及び第2の配管35の両方に供給される。特にデュアルフューエル内燃機関11が第2の運転モードで運転されている場合には、第1の配管34が第2の燃料タンク19に結合されていると共に、燃料噴射器16それぞれの第2の配管35が燃料タンク18に結合されており、これにより、第2の運転モードにおいて、相対的に点火不可能な液体燃料が第1の配管34を介して燃料噴射器16それぞれのニードル燃料室31に供給され、且つ、相対的に点火可能な点火可能な液体燃料が第2の配管35を介して燃料噴射器16それぞれのニードル燃料室31に供給される。
【0040】
第2の配管35の圧力は、第1の配管34の圧力より僅かに高いので、第2の運転モードでは、相対的に点火可能な燃料は、第2の配管35を起点として、ニードル燃料室31の部分室31aに所定の態様で導入可能とされる。このとき、ニードル燃料室31、具体的にはニードル燃料室31の部分室31aは、チョーク26を介して第2の配管35に結合されている。チョーク26の寸法設定によって、第2の運転モードにおいて部分室31に導入される相対的に点火可能な燃料の量が、所定の方法で調整可能とされる。このことを実現するためには、具体的には第2の運転モードにおいて、第2の配管35からの相対的に点火可能な液体燃料が部分室31aに導入され、第1の配管34からの相対的に点火不可能な液体燃料がニードル燃料室31の部分室31bに導入される。噴射動作の際には、第2の運転モードにおいて、最初に相対的に点火可能な燃料が燃焼室33に入った後に、相対的に点火不可能な液体燃料が燃焼室33に入り、その結果として、相対的に点火可能な液体燃料によって、相対的に点火不可能な液体燃料が、第2の運転モードにおいて所定の態様で点火可能となる。
【0041】
図2に表わす本発明における燃料噴射器16の好ましい典型的な実施例では、燃料噴射器16の第2の配管35は、チョーク26を介してニードル燃料室31の部分室31aに結合されており、ニードルガイド30と燃料噴射器16の制御弁29の制御室36とにも結合されている。従って、相対的に点火可能な燃料は、デュアルフューエル内燃機関11の両方の運転モードにおいて、第2の配管35を介してニードル燃料室31に供給可能とされるのみならず、ニードルガイド30と制御弁29の制御室36との両方にも供給可能とされる。相対的に点火可能な燃料は、ニードルガイド30の領域において障壁流体として機能し、制御弁29の制御室36の領域において作動流体として機能する。
図2に表わすように、燃料噴射器16それぞれの第2の配管35は、さらなるチョーク37を介して、制御弁29の制御室36に結合されている。
【0042】
上述のように、第2の配管35の圧力は第1の配管34の圧力より大きい。従って、ニードルガイド30の領域において、障壁流体による特に優位なバリア効果を確保することができる。
【0043】
燃料噴射器16の特に好ましい実施形態では、第2の配管35は、点火可能な燃料をニードル燃料室31に向かって供給するように機能するのみならず、当該点火可能な燃料をニードルガイド30及び制御弁29の制御室36に向かって供給するように機能するので、当該点火可能な燃料は、障壁流体及び作動流体として利用される。これにより、内燃機関の構造を特に単純化することができる。
【0044】
図2から明らかなように、ニードルガイド30は、ニードル燃料室31と制御弁29の制御室36との間に、具体的にはニードル燃料室31の部分室31bと制御弁29の制御室36との間に位置決めされている。
【0045】
さらに、
図2に表わすように、バネ39を受容しているバネ室38が、ニードルガイド30と制御室36との間に位置決めされている。バネ39は、ノズルニードル28を閉位置に押し付けている。
【0046】
相対的に点火可能な液体燃料は、100μm~300μm、好ましくは100μm~200μmの潤滑性WSDを有している液体燃料であることが望ましい。相対的に点火可能な燃料は、ディーゼル燃料であることが望ましい。相対的に点火不可能な液体燃料は、300μm~820μm、好ましくは400μm~820μmの潤滑性WSDを有している液体燃料であることが望ましい。相対的に点火不可能な燃料は、エタノール又はメタノールであることが望ましい。
【0047】
本発明は、本発明における燃料噴射器16の他に、デュアルフューエル内燃機関11のシリンダ12それぞれが、本発明における少なくとも1つの、好ましくは単一の燃料噴射器16を具備する、デュアルフューエル内燃機関11にも関する。燃料噴射器16によって、第1の運転モードでは相対的に点火可能な燃料がシリンダ12に供給可能とされ、第2の運転モードでは相対的に点火可能な燃料と相対的に点火不可能な燃料とがシリンダ12に供給可能とされ、相対的に点火可能な燃料は、相対的に点火不可能な燃料を点火させるために利用される。
【0048】
さらに、本発明は、デュアルフューエル内燃機関11を動作させるための方法に関する。第1の運転モードでは、相対的に点火可能な燃料が、燃料噴射器16それぞれを介して、シリンダ12に専ら供給され、具体的には、シリンダ12それぞれの燃焼室33に導入される。対照的に、第2の運転モードでは、相対的に点火可能な燃料と相対的に点火不可能な燃料とが共に、燃料噴射器16それぞれを介して、シリンダ12それぞれの燃焼室33に導入され、第2の運転モードでは、相対的に点火可能な燃料が相対的に点火不可能な燃料を点火させるために利用される。
【0049】
図3は、第2の運転モードにおいて、相対的に点火可能な燃料と相対的に着火不可能な燃料とが、シリンダ12それぞれの燃焼室33に導入される実施形態(possibility)を表わす。従って、
図3は、第2の運転モードにおける時間tに亘るシリンダ12への噴射量を表わす。噴射は時間t1で開始され、時間t2で終了する。第2の運転モードでは、相対的に点火可能な燃料が部分室31aに集まり、且つ、相対的に点火不可能な燃料が部分室31bに集まるので、最初に時間t1~時間t3の間に第1の部分室31aからの相対的に点火可能な燃料がシリンダ12それぞれの燃焼室33に導入された後に、時間t3~時間t2の間に部分室31bからの相対的に点火不可能な燃料がシリンダ12それぞれの燃焼室33に導入される。相対的に点火不可能な燃料は、相対的に点火可能な燃料を介して点火される。
【0050】
図4は、本発明における燃料噴射器16を使用して燃料を噴射するための代替的な手順を表わす。
図4では、燃焼室33を適切な状態とするために、最初に時間t1~時間t3の間に部分室31aからの相対的に点火不可能な燃料が、シリンダ12それぞれの燃焼室33に噴射され点火される。時間t3を経過した後に時間オフセットΔtを空けて時間t4に実際の主噴射が開始され、最初に部分室31aからの相対的に点火可能な燃料とその後に相対的に着火不可能な燃料とが、再びシリンダ12それぞれの燃焼室33に導入される。従って、
図4では、噴射は、時間t1~時間t3の予備噴射と、その後の時間t4~時間t2の主噴射とに分けられている。
【0051】
本発明では、別体のパイロットインジェクタを省略することができる。一の同一の燃料噴射器16を介して、液体燃料は、デュアルフューエル内燃機関11の両方の運転モードにおいて、シリンダ12それぞれの燃焼室33に導入可能とされる。
【0052】
相対的に点火可能な燃料は、第2の運転モードにおいて、相対的に点火不可能な燃料を点火させるために利用されるが、開口部33に隣接して又はノズルニードル38のニードルシートに隣接して形成されているニードル燃料室31の部分室31aに貯蔵される。従って、相対的に点火可能な燃料は、第2の運転モードにおける噴射サイクルそれぞれにおいて、最初にシリンダ12それぞれの燃焼室33に入り、その後に相対的に点火可能な燃料を介して、相対的に点火不可能な燃料が適切に点火され燃焼される。さらに、好ましくは、相対的に点火可能な燃料は、障壁流体及び作動流体として、具体的にはニードルガイド30の領域において障壁流体として、及び、制御弁29の領域において作動流体として機能する。
【0053】
このことは、特に、シリンダのピストン直径が少なくとも140mm、特に175mmの、いわゆる大型エンジン又は大型内燃機関の分野に関連する。このような大型内燃機関は、例えば船舶エンジンである。本発明では、これらはデュアルフューエル内燃機関として具現化される。
【符号の説明】
【0054】
10 船舶推進システム
11 デュアルフューエル内燃エンジン
12 シリンダ
13 発電機
14 船舶のプロペラ
15 燃料供給システム
16 燃料噴射器
17 燃料ポンプ
18 燃料タンク
19 燃料タンク
20 燃料配管
21 燃料配管
22 シャトル弁
23 燃料配管
24 燃料ポンプ
25 燃料配管
26 チョーク
27 本体
28 ノズルニードル
29 制御弁
30 ニードルガイド
31 ニードル燃料室
31a 部分室
31b 部分室
32 開口部
33 燃焼室
34 配管
35 配管
36 制御室
37 チョーク
38 バネ室
39 バネ
40 狭窄部
【外国語明細書】