(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068870
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】フランジ接続部
(51)【国際特許分類】
F16J 15/04 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
F16J15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021172366
(22)【出願日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】10 2020 127 779.2
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・エーマン
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・ノヴァク
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-イェルク・ショーバー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧力容器の長手方向における容器部分同士の間の狭い空間条件において利用可能とされ、これにより長手方向に対する横方向における大きい相対移動を吸収することができる態様の、いわゆるフランジ接続部を提供することである。
【解決手段】メンブレン管16の断面において、メンブレン管が、メンブレン管の第2の長手方向縁部19において、第1の溶接リップ17との間に零ではない接続角度αを形成しており、メンブレン管の曲率中心点20が、取付状態において容器内部に面している第2の長手方向縁部19の側に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の2つの容器部分(2,3)のための溶接リップシール(15)を有しているフランジ接続部(1)であって、
前記フランジ接続部(1)が、
長手方向において切開されているメンブレン管(16)であって、前記メンブレン管(16)が、前記圧力容器の圧力空間の圧力を受けるように構成されており、前記圧力容器の内部において、前記メンブレン管(16)の第1の長手方向縁部(18)が、絵気密状態で第1の容器部分(2)の内側に接続可能とされる、前記メンブレン管(16)と、
前記メンブレン管(16)の第2の長手方向縁部(19)に液密状態で隣接している第1の溶接リップ(17)であって、取付状態において、2つの前記容器部分(2,3)のフランジ(4,9)同士の間の分離継手(21)を通じて、前記圧力空間の外部に延在している前記第1の溶接リップ(17)と、
第2の容器部分(3)に液密状態で接続可能とされる第2の溶接リップ(23)と、
を有しており、
前記第1の溶接リップ(17)と第2の溶接リップ(23)とが、前記第1の溶接リップ(17)及びと第2の溶接リップ(23)の互いに対面している面において、並びに前記第1の溶接リップ(17)及びと第2の溶接リップ(23)の前面において、互いに対して液密状態で接続されており、
前記第2の溶接リップ(23)の反対側に向いている前記第1の溶接リップ(17)の前記面が、前記第1の容器部分(2)に対する滑り面(22)を形成している、前記フランジ接続部(1)において、
前記メンブレン管(16)の断面において、
- 前記メンブレン管(16)が、前記メンブレン管(16)の前記第2の長手方向縁部(19)において、第1の溶接リップ(17)との間に零ではない接続角度αを形成しており、
- 前記メンブレン管(16)の曲率中心点(20)が、取付状態において前記容の器内部に面している前記第2の長手方向縁部(19)の側に配置されていることを特徴とするフランジ接続部(1)。
【請求項2】
前記メンブレン管(16)が、溶接接続を介して前記第1の溶接リップ(17)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のフランジ接続部(1)。
【請求項3】
前記メンブレン管(16)と前記第1の溶接リップ(17)とが、屈曲部として一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフランジ接続部(1)。
【請求項4】
メンブレン管(16)が、前記メンブレン管(16)の断面において少なくとも180°に亘って延在していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のフランジ接続部(1)。
【請求項5】
前記メンブレン管(16)の前記断面が、円弧状とされることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のフランジ接続部(1)。
【請求項6】
前記接続角度αが、45°~135°とされ、好ましくは60°~120、特に好ましくは70°~100°とされることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のフランジ接続部(1)。
【請求項7】
前記第1の長手方向端部(18)が、長手方向において切開されているさらなるメンブレン管(47)に隣接していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフランジ接続部(1)。
【請求項8】
少なくとも2つの容器部分(2,3)を有している圧力容器であって、フランジ(4,9)を有している前記圧力容器において、
前記フランジ(4,9)が、前記圧力容器の圧力空間に対向して配置されており、請求項1~7のいずれか一項に記載のフランジ接続部(1)を介して互いに接続されていることを特徴とする圧力容器。
【請求項9】
前記容器部分(2,3)が、異なる温度を有しており、
第1の長手方向端部(18)が、前記圧力空間において、より低温の容器部分に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の圧力容器。
【請求項10】
少なくとも1つのスペーサ(14,14.1,14.2)が、少なくとも1つの溶接リップ(17,23)と前記少なくとも1つの溶接リップ(17,23)の反対側に位置する前記フランジとの間に配置されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の圧力容器。
【請求項11】
前記滑り面(22)が、前記第1の溶接リップ(17)と前記スペーサ(14.1)との間に形成されていることを特徴とする請求項10に記載の圧力容器。
【請求項12】
前記第1の溶接リップ(17)及び前記第2の溶接リップ(23)が、前記圧力容器の長手方向において前記フランジ同士の間に位置する中心面に対して中心から外れて配置されており、
前記メンブレン管(16)が、前記第1の溶接リップ(17)及び前記第2の溶接リップ(23)と前記フランジ(4,9)との間の距離がより大きい側に向かって湾曲していることを特徴とする請求項8~11のいずれか1項に記載の圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きに記載の溶接リップシールを有するフランジ接続部と、当該フランジ接続部を有する圧力容器とに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接リップシールは、フランジ接続部を気密状態で密封するように機能し、その過程において2つのフランジの異なる熱膨張に起因する径方向における相対移動を可能にする。溶接リップシールは、容易にアクセス可能なシール継ぎ目を切断することによって取り外し可能とされる。
【0003】
特に圧力容器と共に利用するための、このような溶接リップシールは特許文献1に開示されている。当該溶接リップシールは、平坦に構成された縁部を具備する長手方向側面において切開されたメンブレン管から構成されている。メンブレン管は、2つの容器部分を別の部分に接続するフランジ接続部の高さ近傍において、圧力空間の内部で延在している。メンブレン管の一方の縁部は、溶接接続を介して第1の容器部分に接続されている。平坦に構成された縁部は、分離継手(separating joint)を貫通して、当該縁部が第2の容器部分に溶接された箇所の外側に向かって突出している。
【0004】
メンブレン管を容器の内側に配置することによって、フランジ接続手段を容器の壁に堅固に配置させることができるので、フランジの狭小を維持することができる。これにより、フランジに作用する曲げモーメントを最小とすることができるので、その結果として、当該フランジをさらに小型化することができる。さらに、容器の外側において構造物が占有するスペースを最小とすることができる。メンブレン管の縁部が分離継手を貫通して外側に向かって突出しているので、外部からの溶接が可能であり、必要に応じてメンブレン管を再度切断することもできる。
【0005】
既知の実施例の多くは、管束反応器のガス入口フードと接続されている。さらに、特許文献2に記載の管束反応器と最終冷却器の組み合わせと共に利用可能とされる。そこでは、最終冷却器が、従来技術に基づくフランジ接続を介して、管束反応器にフランジとして直接形成されている。反応器部分の温度と最終冷却器の温度とが異なることに起因して、径方向において異なる膨張が生じるので、その結果として、従来技術に基づく圧力シールでは容易に漏出が発生する。特に直径が大きい二分割式容器の場合には、膨張差が大きいという問題が発生する。ここで、2つの容器部分の異なる膨張は、温度差が大きい場合に、特に大きい影響力を有している。反応管から流出する反応ガス生成物は毒性又は可燃性を有している場合があるので、永続的に密閉状態で密封されているフランジ接続部に対するニーズは急を要するが、そのような利用は今日まで実現されていない。
【0006】
特許文献1に記載のフランジ接続部が特許文献2に記載の装置と共に活用されることは考慮されていない。なぜならば、溶接リップシールは、特に、ガス入口フードと管束反応器の中心部分との組み合わせと共に利用するのに適しているからである。ここでは、固定継ぎ目が、好ましくは容器シェルに設けられている。従って、溶接リップシールの弾性部分は、主に軸線方向に延在している。対照的に、特許文献2に記載の管束反応器と最終冷却器の組み合わせの場合には、管束反応器の反応管から出る反応ガスの滞留時間を最小にするために、ひいては副反応を回避するために、2つの装置の管板の距離を最小にすることが最優先される。特許文献1に記載の溶接リップシールの利用は、当該溶接リップシールの軸線方向の寸法が大きいので、このことと矛盾する。
【0007】
特許文献3に記載の反応器の場合には、とりわけ、ディスプレーサが、容積を減少させるために、ガス入口フードに導入されている。ここで、溶接リップシールは、圧力空間の外側に、すなわちディスプレーサによって形成されたガス空間の外側に配置されている。ディスプレーサに加えて溶接リップシールの据付のために利用可能とされる空間の高さの制限は、ディスプレーサと管板との間に形成された圧力空間と比較して極めて小さい。溶接リップシールは、様々な一体的な又は複数の部品から成る実施例として図示されている。複数の部品から成る実施例の場合には、平坦に構成された溶接リップシールの縁部は、分離継手を介して案内されるブロック状の接続要素に置き換えられ、反応器の外側では、シール継ぎ目を介してさらなるブロック状の接続要素の第2の容器部分に直接又は間接的に接続されている。
【0008】
市販されている様々な溶接リップシールについては、例えばKempchen社(www.kempchen.de)のパンフレットの“溶接シール”の章に記載されている。当該シールは、溶接リップによるシール機能に関して、又は径方向膨張の補償に関して最適化されている。径方向の移動経路は、環状の壁の厚さに依存するが、5mmに制限されている。溶接継ぎ目を切開する場合には、2mm~3mmの戻し(cutting loss)が発生する。溶接リップは、最大5回まで切開することができる。DN3000は、最大の公称幅として規定されている。膨張差が存在する場合には移動経路が短いので、最大の公称幅は小さい。実施可能な切開の回数が制限されるので、このようなシールは、本明細書で説明される用途に適していない。
【0009】
このような溶接リップシールは、特許文献4や特許文献5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許第4407728号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1586370号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/067164号
【特許文献4】仏国特許出願公開第1352092号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1188970号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の課題の解決策を提供するものである。従って、本発明の目的は、圧力容器の長手方向における容器部分同士の間の狭い空間条件において利用可能とされ、これにより長手方向に対する横方向における大きい相対移動を吸収することができる態様の、いわゆるフランジ接続部を提供することである。
【0012】
本発明では、当該目的は、請求項1に記載の特徴的な形体を有しているフランジ接続部によって解決される。また、請求項8に記載の圧力容器も、本発明の対象とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明における手段によって、圧力容器の長手方向で利用可能な圧力空間にほとんど余裕がない場合であっても、比較的簡単な方法で溶接リップシールを利用して互いに圧力容器の2つの容器部分を接続することができる。特に、本発明におけるフランジ接続部は、6mより大きい直径を有している圧力容器に適している。
【0014】
本発明は、湾曲した部品の弦の上方の頂点の高さが比較的低い場合であっても、当該部品の弦の方向すなわち当該部品の端点同士の接続線の方向において大きい変形可能性を有しているという事実に基づいている。
【0015】
メンブレン管と第1の溶接リップとの間における接続角度αが零ではない一方、曲率中心点が当該接続部の容器内側に配置されているので、容器のメンブレン管の断面における当該接続部の最大の長手方向長さが、容器内部に延在している。すなわち、円筒形の容器の場合は容器の軸線に向かって径方向に延在している場合には、容器の軸線に向かう長手方向寸法が小さくなる。接続角度αを適切に選択することによって、メンブレン管の頂部の高さ、ひいては容器の軸線に向かうメンブレン管の長手方向長さは、容器の軸線方向における容器部分同士の間で利用可能とされる距離に関する要件それぞれに容易に適合可能となる。
【0016】
本発明では、メンブレン管は、0°~360°の中心角(sector angle)を有している湾曲した扇状のメンブレン管壁として表わされる断面を具備する環状の管を意味する。約120°~約210°の中心角、又は約300°~360°中心角が特に好ましい。メンブレン管の断面は、円状であることが好ましいが、円状に限定される訳ではない。従って、当該断面は、楕円状や他の湾曲形状であっても良い。例えば360°の湾曲が実現されている場合には、メンブレン管の輪郭は、円状ではなく、螺旋状になっている。
【0017】
好ましくは、メンブレン管は、溶接接続によって第1の溶接リップに接続されている。溶接接続は、一体的に結合された接続であるので、液密である。溶接接続は、費用効果に優れた生産が可能であり、高負荷に耐えることができる。しかしながら、例えば半田付けのような他のタイプの接続を利用する場合であっても適切である。
【0018】
本発明の好ましいさらなる発展例では、メンブレン管と第1の溶接リップとが、一体化された曲げ部品として構成されている。この解決策によって、接続継ぎ目の欠陥及び修理を回避することができる。さらに、メンブレン管から第1の溶接リップへのそのような移行部の機械的品質が顕著に向上する。
【0019】
好ましくは、メンブレン管は、その断面において少なくとも180°に亘って延在している。この解決策によって、容器の軸線に対して横方向におけるメンブレン管の変形可能性の大部分が実現される。
【0020】
優位には、メンブレン管の断面は円弧状とされる。これにより、費用効果に優れた製造を実現することができる。
【0021】
好ましくは、接続角度αの大きさは、45°~135°であり、特に好ましくは60°~120°であり、最も好ましくは70°~100°である。接続角αの大きさがこのような範囲内であれば、容器の軸線方向の寸法が比較的小さくても、容器の軸線に対して垂直方向における変形可能性が良好又は非常に良好になる。
【0022】
メンブレン管の第1の長手方向端部は、角度βで管板に対して液密状態で接続されている。角度βは、特に制限されない。好ましい角度の範囲は、角度αの範囲と同一である。
【0023】
本発明の有利な実施例では、長手方向に切開されているさらなるメンブレン管が、第1の長手方向端部に隣接している。このようにして、容器の軸線に向かう長手方向の延在を維持することによって、容器の軸線に対して横方向における変形可能性を2倍にすることができる。
【0024】
本発明における容器では、容器部分は異なる温度を有しており、好ましくは、第1の長手方向のエッジは、圧力領域においてより小さい容器部分と接続されている。従って、第2の長手方向縁部は、第2の長手方向縁部に接続された第1の溶接リップ及び第2の溶接リップを介して、より高温の容器部分と接続されている。このことを理由として、第2の長手方向端部は、第1の長手方向端部と比較して外側に移動し、その結果として、メンブレン管に張力が作用し、容器の軸線方向に向かう長手方向の膨張が低減される。従って、容器部分同士の間における相対移動の際に、メンブレン管が一方の容器部分に突き当たり、制御されない負荷状態が発生する危険性が解消される。
【0025】
優位には、少なくとも1つのスペーサが、少なくとも1つの溶接リップとその反対側に位置するフランジとの間に配置されている。この解決策によって、メンブレン管のための空間を容易に確保することができる。
【0026】
本発明では、好ましくは、滑り面は、第1の溶接リップとスペーサとの間に形成されている。これにより、滑り面の位置は、分離継手の内部において変更可能とされ、各条件下において最も好ましい場所に滑り面を配置させることができる。
【0027】
本発明の好ましいさらなる発展形体では、溶接リップは、容器の長手方向におけるフランジ同士の間における中心面に対して中心から外れて配置されており、メンブレン管は、溶接リップとフランジとの間の距離が最も大きい側に向かって湾曲している。これら解決策によって、容器部分同士の間の距離をメンブレン管の頂点の高さまで短縮することができるので、容器の軸線方向におけるメンブレン管のための空間に関する要求をさらに低減させることができる。
【0028】
本発明について、図面を利用して以下に例示的に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明におけるフランジ接続部を2つの管板の間に有する本発明における圧力容器の実施例の部分的な断面図である。
【
図2】本発明におけるフランジ接続部を2つの管板の間に有する本発明における圧力容器の実施例の部分的な断面図である。
【
図3】本発明におけるフランジ接続部を2つの管板の間に有する本発明における圧力容器の実施例の部分的な断面図である。
【
図4】本発明におけるフランジ接続部を2つの管板の間に有する本発明における圧力容器の実施例の部分的な断面図である。
【
図5】本発明におけるフランジ接続部を2つの管板の間に有する本発明における圧力容器の実施例の部分的な断面図である。
【
図6】本発明におけるフランジ接続部を管板とガス入口フードとの間に有する本発明における圧力容器の実施例の部分的な断面図である。
【
図7】本発明におけるフランジ接続部を2つの管板の間に有する本発明における圧力容器の実施例の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1の断面図に表わすフランジ接続部1は、第1の容器部分2と第2の容器部分3とを接続するように機能する。第1の容器部分2と第2の容器部分3とは、共に管板を備えている。第1の容器部分2は、当該実施例では第1の管板5の延長部に配設されている第1のフランジ4を具備して形成されている。フランジ穴6が、第1の管板5の径方向端部に配置されている。第1の管板5は、第1の容器部分壁7に隣接している。複数の管8は、第1の管板5を通じて案内され、第1の管板5に液密状態で接続されている。同様に、第2の容器部分3は、第2の管板10の延長部に配置されている第2のフランジ9と第2の管板10とを具備して形成されている。フランジ穴11は、第2の管板10の径方向端部に配置されており、フランジ穴6と位置合わせされている。本図には図示しない固定手段が、フランジ穴6,11を通じて案内され、第1のフランジ4と第2のフランジ9とを接続する。第2の管板10は、第2の容器部分壁12に隣接している。複数の管13は、第2の管板10を通じて案内され、第2の管板10に液密状態で接続されている。スペーサ14は、第1のフランジ4と第2のフランジ9との間に位置している。
【0031】
図1に表わす典型的な実施例は、例えばアクロレインを製造するための直結型急速冷却器を有する管束反応器と共に利用される。この場合には、反応ガスは、反応器を通じて上から下に伝導される。このような構成は、例えば特許文献2に開示されている。この場合には、第2の管板10は、第2の容器部分3として、管束反応器の下側管板を形成しており、第1の管板5は、第1の容器部分2として、急速冷却器として構成された管束型熱交換器の上側管板を形成している。このように容器を組み合わせることによって、管束反応器は、動作の際には、当該管束反応器の内部で発生する発熱性の気相反応を介して、当該管束反応器に直接接続された急速冷却器と比較して著しく高い温度を有している。その結果、第2の管板10は、急速冷却器の第1の管板5と比較して、特に径方向長さにおいて大きく膨張する。
【0032】
フランジ接続部の気密シーリングは、溶接リップシール15によって実現される。溶接リップシール15は、当該実施例では長さ方向において切開された半円状断面を具備する、湾曲したメンブレン管16と、第1の溶接リップ17と、によって形成されている。メンブレン管16は、容器の軸線に関する径方向に作用する膨張補償機能を有している。当該実施例では、メンブレン管16の第1の長手方向縁部18は、第1の容器部分の内部に、当該実施例では第1の管板5に、好ましくは
図1に表わす溶接接続を介して液密状態で固定されている。第1の溶接継ぎ目は、固定継ぎ目とも呼称される。メンブレン管16の第2の長手方向縁部19は、溶接継ぎ目を介して、零ではない角度αで第1の溶接リップ17に接続されている。メンブレン管16の断面において、メンブレン管16の曲率中心点20は、第2の長手方向縁部19の横側に位置しており、且つ、取付状態において容器の内部に対面している。
【0033】
第1の溶接リップ17は、取付状態において、分離継手21を介して、第1のフランジ4と第2のフランジ9との間に径方向外側に延在している。ここで、第1の溶接リップ17は、第1の容器部分に面している側に滑り面22を形成している。第2の容器部分3に面する第1の溶接リップ17の側には、第1の溶接リップ17が、第2の溶接リップ23に対向して配設されており、好ましくは径方向外側に配置された前側溶接接続部24を介して液密な態様で固定されている。このような第2の溶接継ぎ目は、封止継ぎ目とも呼称される。第2の溶接リップ23は、スペーサ14に接続されており、スペーサ14が、第2の容器部分3の第2の管板10に接続されている。動作の際には、第2の管板10は、第1の管板5より膨張する。第2の管板10は、滑り面22に沿って径方向外側に自在に移動可能とされる。その過程において、メンブレン管16は、径方向に弾性的に引き離されるが、このような状態であってもフランジ接続部1の気密性を確保することができる。例えばフランジの外側のベベル25によって、より大きい自由空間が形成されるので、前側溶接接続部24へのアクセス可能性を改善することができる。メンブレン管16が径方向に配向されるので、中間空間26の容積が最小化される。ここで、第1の管板5と第2の管位置10との間における管板距離27は、メンブレン管16から最も近傍の管板に至る、すなわち当該実施例では第2の管板10に至る所定の最小距離28が維持されるに十分な大きさで選定される。
【0034】
図2は、
図1に表わす典型的な実施例の一例を表わす。ここでは、実質的な相違点についてのみ説明する。ここでは、溶接リップシール15は、メンブレン管16及び第1の溶接リップ17の機能領域と一体化されている曲げ部品として形成されている。この場合における接続角度αは、転換点29における接線と容器の垂直軸線とによって定義される。当該実施例では、メンブレン管16に対応する曲げ部品が、略球状のロールを具備する曲げ機による段階的な曲げ工程を通じて製造される場合には、円環状セクターの形態をした一枚の板が、原材料として利用可能とされる。また、同様に、圧縮を伴う製造も利用可能とされる。当該手法は、1回限りのために高い投資コストを要求する。しかしながら、当該手法は、当該移行部の機械的品質が溶接継ぎ目と比較して著しく良好であるという利点を有している。メンブレン管16から第1の溶接リップ17への移行部における溶接継ぎ目の欠陥が防止されるからである。この場合には、第1の溶接リップ17は、別体の溶接リップ支持体30に支持されており、溶接リップ支持体30は、第1のフランジ5に液密状態で接続されている。管板距離27をさらに短縮するための方策として、段差部31がメンブレン管16の凸側の管板に設けられており、メンブレン管16が短い距離ながら段差部31に突出している。メンブレン管16は、スペーサ14に対する径方向の最小距離32が維持されるように配置されている。溶接リップシール15の気密性を監視するために、外側検査通路33が第1フランジ4に穿設されている。圧力側の反対側に面しているガス空間との接続部が、外側検査通路33と交差する内側検査通路34を通じて形成されている。外側検査通路33の入口には、圧力計及び/又はガス分析器が接続可能とされる適切な接続手段35が配置されている。
【0035】
図3は、
図1及び
図2のさらなる実施可能な実施例を表わす。当該実施例では、メンブレン管16の第1の長手方向縁部18が、液密な態様で第1の容器部分の内部に、当該実施例では第1の管板5に固定されている。メンブレン管16の第2の長手方向端部19は、中間ブロック36に固定されている。当該実施例では、径方向外側に通じている第1の溶接リップ17が、中間ブロック36の一体部分とされる。中間ブロック36は、溶接リップ支持体30に支持されており、溶接リップ支持体30に対する接触面に滑り面22を形成している。第2の容器部分に面している側では、第1の溶接リップ17が、第2の溶接リップ23に対向して配置されており、前側溶接接続部24を介して第2の溶接リップ23に接続されている。第2の溶接リップ23は、スペーサ14に接続され、同じものが支持体37に接続され、この支持体は、第2の容器部分3の第2の管板10に接続される。2つのフランジ4、9の径方向の相対的な動きは、分離継手21の摺動材コーティング38を介して促進される。溝に設けられた従来のシール39により、溶接継ぎ目が確立されることなく、圧力下での容器の試運転が可能である。距離27のさらなる短縮は、メンブレン管の凸面に対向する管板側に設けられた段差部31によって可能になる。
【0036】
図4に表わす実施例では、メンブレン管16が、メンブレン管16の第1の長手方向縁部18において第1の中間ブロック36.1に液密状態で接続されており、順に第1のスペーサ14.1に接続され、最終的に第1の管板5に接続されている。ここでは、すべての接続が液密な接続とされる。例えば容器の壁やフランジの詳細部分のような、さらなる容器の特徴の説明については、便宜上省略する。メンブレン管16の第1の長手方向縁部18から、メンブレン管16は、最初に径方向内側に導かれ、同一の曲率で再びフランジ側に戻ってメンブレン管16が接続された外側に導かれ、メンブレン管16の第2の長手方向縁部19が、零ではない角度αで第2の中間ブロック36.2に接続されている。ここで、径方向外側に通じている溶接リップ17は、第2の中間ブロック36.2の一体部分とされる。メンブレン管16の断面において、メンブレン管16の曲率中心点20は、取付状態において容器の内部に面している第2の長手方向縁部の側に位置している。その他の構成については、
図1に表わす実施例と同等である。第2の容器部分に面している第1の溶接リップ17の側において、第1の溶接リップ17が第2の溶接リップ23に対向して配置されており、液密状態で第2の溶接リップ23に固定されている。この場合には、第2の溶接リップ23が、第2のスペーサ14.2の一体部分とされる。溶接リップシールの滑り面22は、第1の中間ブロック36.1と第2の中間ブロック36.2との接触面によって形成されている。第1の中間ブロック36.1及び第2の中間ブロック36.2に接続されている略完全な円状の断面を有するメンブレン管の実施例は、設計上の理由により望ましい場合には、径方向内側への延長を最小限に抑えるという利点を有している。半円状の断面を有するメンブレン管の柔軟な周長が同一である場合には、当該実施例によってメンブレン管の直径を小さくすることができる。さらに、管板同士の距離は、少なくとも1つの管板に設けられた段差部31によってさらに短縮することができる。さらに、当該実施例は、機能部品36.1、16,36.2が、溶接継ぎ目18,19によって容器の外側に予め製造された後に、損傷し易いメンブレン管16を加工することなく容器に接続可能であるという利点を有している。
【0037】
図5に表わす典型的な実施例では、メンブレン管16の凹状の面が、第1の管板5と第2の管板10との間における中間空間26の圧力面を示している。ここでも、メンブレン管16の第1の長手方向縁部18は、第1の容器部分の内側に、当該実施例では第1の管板5に液密状態で固定されている。メンブレン管16の第2の長手方向端部19は、中間ブロック36に固定されている。当該実施例では、メンブレン管の特別な配置のために、中間ブロックに対するメンブレン管の接続角度αは、90°より大きい。従って、当該実施例では、管板に対するメンブレン管の接続角度βは、180°より大きい。当該実施例では、径方向外側に通じている第1の溶接リップ17は、中間ブロック36の一体部分とされる。中間ブロック36は、当該実施例ではスペーサの機能を有している溶接リップ支持部30に支持されている。溶接リップ支持体30に対する接触面において、中間ブロック36は滑り面22を形成している。第2の容器部分に面している面において、第1の溶接リップ17は、第2の溶接リップ23に対向して配置されており、前側溶接接続部24を介して第2の溶接リップ23に接続されている。第2の溶接リップ23は、第2の容器部分3の第2の管板10に接続されているスペーサ14の一体部分とされる。メンブレン管の凸状の面と反対側に位置する管板側の段差部31によって、管板距離27をさらに短縮させることができる。
【0038】
図6は、第1の容器部分2としての第1の管板5と第2の容器部分3の一部分としてのガス入口フード40との間におけるフランジ接続部1を表わす。ガス入口フード40は、湾曲した底部41、ブロックフランジ42、錐状のディスプレーサ43、接続手段44、及び図示しないガス入口から実質的に構成されている。ガス入口を通じて入ったガスは、第1の管板5とディスプレーサ43との間において中間空間26に流入し、中間空間26から反応管8に流出する。爆発性ガスの場合には、その目的は、中間空間26の容積を最小にすることによって起こり得る爆発の影響を制限することである。また、この場合には、管束反応器の高温の第1の管板5と、比較的冷たい反応ガスが流れるブロックフランジ42を備えたガス入口フード40との間において、より大きい差動膨張が発生する。当該差動膨張は、溶接リップシール15の第1の長手方向縁部18においてメンブレン管16がディスプレーサ43に溶接されている溶接リップシール15によって補償される。この場合、最初にメンブレン管16が中間プレート45に溶接された後に、中間プレート45がディスプレーサ43に溶接される。このような中間プレート45を配置する理由は、ガス流入フード40が圧力容器を意味するからである。このような圧力容器は、検査機関から最終認証を受けた後に変更することは認められない。メンブレン管16の全部又は一部を交換する必要が生じた場合には、中間プレートの溶接継ぎ目のみが切開されるが、切開された中間プレートは、機能的には実際の圧力容器の一部分ではなくなる。
【0039】
上述の典型的な実施例においても同様に、溶接リップシールはフランジに接続されている。第1の溶接リップ17は、前側溶接接続部24を介して、第2の溶接リップ23に接続されている。当該実施例では、第2の溶接リップ23は、スペーサ14の一体部分でもある。
【0040】
図7は、特に大きな径方向補償容量と短い管板距離とを有している典型的な実施例を表わす。当該実施例では、膨張要素は、二波のメンブレン管46から成り、メンブレン管46の凸部はそれぞれ、対向して配置された管板の段差部31に突入している。当該実施例では、第1のメンブレン管16の第1の長手方向縁部18は、第2のメンブレン管47に隣接しており、第2のメンブレン管47は、第1の管板5に液密状態で接続されている。その他の機能部品については、上述の図面移管する説明から明らかである。径方向において複数の部品から成るメンブレン管は、膨張態様と比較して径方向におけるさらなる空間の要求が従属的な役割のみを果たす場合に適切とされる。基本的に、2つ以上のメンブレン管部分を有する実施例も実現可能であるが、図示しない。
【0041】
好ましくは、径方向外側に配置されたメンブレン管の端部は、動作中に他のフランジより大きく膨張するフランジに接続されている。あまり膨張しないフランジに対する接続も同様に可能である。しかしながら、当該プロセスにおいて、メンブレン管は圧縮され、メンブレン管のための十分な軸線方向の移動空間が管板に設けられている必要がある。
【0042】
図1~
図7に表わす典型的な実施例から明らかなように、メンブレン管の位置は多様である。このような理由により、最初にメンブレン管の位置が確定され、当該位置に応じて、メンブレン管の直径及び壁厚が決定される。計算の基礎は、第1の管板5と第2の管板10との間における最大予想温度差であって、材料特性、最大予想差動膨張に対応している。第1の管板5と第2の管板10との間における差動膨張の補償に関しては、好ましくは弾性を有している実施例が望ましい。当該実施例は、メンブレン管16の好ましい大きさの直径及び好ましい薄さの壁厚によって実現される。これに対して、中間空間26のガス圧に対して十分な強度が要求されるが、このような強度は、メンブレン管の好ましい大きさの直径及び好ましい薄さの壁厚によって実現される。これとは別に、疲労強度と、次に配置される管板に対するメンブレン管16の最小距離27とを考慮する必要がある。従って、メンブレン管の寸法は、すべての周辺条件を考慮した最適化計算によって決定される。
【0043】
すべての実施例において、溶接リップシールは、好ましくは連続的な部品から製造されている。しかしながら、フランジ径が非常に大きい場合、又は溶接リップシールを交換する場合には、当該溶接リップシールが複数の輸送可能な円環状セクションで予め製造可能とされる。組み立て場所において、当該円環状セクションは完全な円環を形成するために結合された後に、容器内に据え付けられる。
【0044】
本発明の技術的範囲内において、図示の典型的な実施例の特徴それぞれが、互いに多様に組み合わせ可能とされる。
【符号の説明】
【0045】
1 フランジ接続部
2 第1の容器部分
3 第2の容器部分
4 第1のフランジ
5 第1の管板
6 (第1のフランジの)フランジ穴
7 第1の容器壁
8 (第1の管板の)管
9 第2のフランジ
10 第2の管板
11 (第2のフランジの)フランジ穴
12 第2の容器壁
14 スペーサ
14.1 第1のスペーサ
14.2 第2のスペーサ
15 溶接リップシール
16 メンブレン管
17 第1の溶接リップ
18 (メンブレン管16の)第1の長手方向縁部
19 (メンブレン管16の)第2の長手方向縁部
20 (メンブレン管16の)曲率中心点
21 分離継手
22 滑り面
23 第2の溶接リップ
24 前側溶接接続部
25 フランジ側のベベル
26 中間空間
27 管板距離
28 メンブレン管から隣に配置される管板に至る最小距離
29 転換点
30 溶接リップ支持体
31 段差部
32 径方向の最小距離
33 外側検査通路
34 内側検査通路
35 接続手段
36 中間ブロック
36.1 第1の中間ブロック
36.2 第2の中間ブロック
37 支持体
38 摺動材コーティング
39 シール
40 ガス入口フード
41 湾曲した底部
42 ブロックフランジ
43 ディスプレーサ
44 接続手段
45 中間プレート
46 二波のメンブレン管
47 さらなる(第2の)メンブレン管
α 第1の溶接リップに対するメンブレン管の接続角度
β 第1の容器に対するメンブレン管の接続角度
【外国語明細書】