(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068875
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】持続的エピジェネティック遺伝子サイレンシング
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220427BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220427BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220427BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220427BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20220427BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220427BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220427BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20220427BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220427BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220427BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220427BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220427BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220427BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220427BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20220427BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N5/10
A61K35/76
A61K38/16
A61K38/17
A61K48/00
A61P7/00
A61P21/04
A61P43/00 105
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C07K14/47
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N15/09 110
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213691
(22)【出願日】2021-12-28
(62)【分割の表示】P 2017522083の分割
【原出願日】2015-10-23
(31)【優先権主張番号】1418965.8
(32)【優先日】2014-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】514194370
【氏名又は名称】オスペダーレ サン ラファエレ エス.アール.エル
(71)【出願人】
【識別番号】511262290
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ テレトン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナルディーニ,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】ロンバールド,アンジェロ レオーネ
(72)【発明者】
【氏名】アマービレ,アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】ミリャーラ,アレッサンドロ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】関心のある遺伝子をサイレンシングするための、または関心のある遺伝要素のエピジェネティック状態を編集するための産物を提供する。
【解決手段】(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATRから選択される2以上のATRあるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物であって、それらのATRの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される、産物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物であって、それらのATRの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される、産物。
【請求項2】
群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物であって、それらのATRの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)または(c)から選択される、産物。
【請求項3】
KRABドメインまたはそのホモログが、配列番号1~7のいずれか1つに対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2記載の産物。
【請求項4】
DNMT3Aドメインまたはそのホモログが、配列番号8に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;DNMT3Bドメインまたはそのホモログが、配列番号9または36に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;および/またはDNMT1ドメインまたはそのホモログが、配列番号10に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか1項記載の産物。
【請求項5】
DNMT3Lドメインまたはそのホモログが、配列番号11に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか1項記載の産物。
【請求項6】
SETDB1ドメインまたはそのホモログが、配列番号12または13に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか1項記載の産物。
【請求項7】
(a)、(b)、(c)または(d)のDNA結合ドメインが、TALE DNA結合ドメイン、ジンクフィンガードメイン、tetR DNA結合ドメイン、メガヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas系から、独立して選択されるドメインを含む、前記請求項のいずれか1項記載の産物。
【請求項8】
2以上のATRをコードするポリヌクレオチドが単一ベクターの形態であり、あるいは別々のベクター内に含まれる、前記請求項のいずれか1項記載の産物。
【請求項9】
DNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない別のエフェクタータンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを更に含む、前記請求項のいずれか1項記載の産物。
【請求項10】
DNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない別のエフェクタータンパク質が、群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログ
から選択されるドメインを含む、請求項9記載の産物。
【請求項11】
医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を更に含む医薬組成物の形態である、前記請求項のいずれか1項記載の産物。
【請求項12】
治療における使用のための、前記請求項のいずれか1項記載の産物。
【請求項13】
2以上のATRまたはそれらをコードするポリヌクレオチドが、同時、連続的または別々に対象に投与するための組合せ剤である、治療における使用のための、請求項1~8のいずれか1項記載の産物。
【請求項14】
細胞における2以上のATRの一過性発現が標的遺伝子をサイレンシングする、請求項12または13記載の、治療における使用のための産物。
【請求項15】
細胞への2以上のATRの運搬が標的遺伝子を持続的にサイレンシングする、請求項12~14のいずれか1項記載の、治療における使用のための産物。
【請求項16】
細胞への2以上のATRの運搬が該細胞の後代における標的遺伝子を持続的にサイレンシングする、請求項12~15のいずれか1項記載の、治療における使用のための産物。
【請求項17】
異なるATRのDNA結合ドメインが、0~30bp離れた結合部位に結合するように選択される、請求項12~16のいずれか1項記載の、治療における使用のための産物。
【請求項18】
DNA結合ドメインがTALE DNA結合ドメインまたはCRISPR/Cas系である、請求項17記載の、治療における使用のための産物。
【請求項19】
治療における使用のための、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドであって、該治療において、該ATRが、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、および/またはSETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第4 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される、人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチド。
【請求項20】
治療における使用のための、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドであって、該治療において、該ATRが、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、および/またはSETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第4 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される、人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチド。
【請求項21】
治療における使用のための、DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドであって、該治療において、該ATRが、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、および/またはSETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第4 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される、人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチド。
【請求項22】
治療における使用のための、SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドであって、該治療において、該ATRが、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、および/またはKRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第4 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される、人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項1~7のいずれか1項記載の2以上のATRを含む細胞。
【請求項24】
請求項23記載の細胞の後代である細胞。
【請求項25】
治療における使用のための、請求項23または24記載の細胞。
【請求項26】
請求項8記載の2以上のATRをコードするポリヌクレオチドで細胞をトランスフェクトすることを含む遺伝子治療の方法。
【請求項27】
トランスフェクションをエクスビボで行う、請求項26記載の方法。
【請求項28】
群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを同時、連続的または別々に対象に投与することを含む遺伝子治療の方法であって、それらのATRの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される、方法。
【請求項29】
群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを同時、連続的または別々に対象に投与することを含む遺伝子治療の方法であって、それらのATRの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)または(c)から選択される、方法。
【請求項30】
群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含むキットであって、それらのATRの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される、キット。
【請求項31】
インビトロまたはエクスビボでの使用である、標的遺伝子をサイレンシングするための請求項1~11のいずれか1項記載の産物の使用。
【請求項32】
請求項1~11のいずれか1項記載の産物を細胞に投与する工程を含む、標的遺伝子をサイレンシングする方法。
【請求項33】
DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)、およびSETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物。
【請求項34】
DNMT3LもしくはKRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATRあるいはそれをコードするポリヌクレオチドを更に含む、請求項33記載の産物。
【請求項35】
群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログ
から選択される2以上のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)であって、該DNA結合ドメインに機能しうる形で連結されたドメインの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される、人工転写リプレッサー(ATR)。
【請求項36】
群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ
から選択される2以上のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)であって、該DNA結合ドメインに機能しうる形で連結されたドメインの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)または(c)から選択される、人工転写リプレッサー(ATR)。
【請求項37】
該DNA結合ドメインがTALE DNA結合ドメイン、ジンクフィンガードメイン、tetR DNA結合ドメイン、メガヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas系を含む、請求項35または36記載のATR。
【請求項38】
請求項35~37のいずれか1項記載のATRをコードするポリヌクレオチド。
【請求項39】
2以上の異なる人工転写リプレッサー(ATR)またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む産物であって、それらの2以上の異なるATRが、群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログ
から選択される2以上のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを個々に含み、ここで、それぞれの個々のDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されたドメインの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される、産物。
【請求項40】
2以上の異なる人工転写リプレッサー(ATR)またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む産物であって、それらの2以上の異なるATRが、群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ
から選択される2以上のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを個々に含み、ここで、それぞれの個々のDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されたドメインの少なくとも2つが、異なる群(a)、(b)または(c)から選択される、産物。
【請求項41】
それらの2以上の異なるATRのDNA結合ドメインが、TALE DNA結合ドメイン、ジンクフィンガードメイン、tetR DNA結合ドメイン、メガヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas系からなる群から個々に選択される、請求項39または40記載の産物。
【請求項42】
群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される、ただ1つの人工転写リプレッサー(ATR)、またはそれをコードするポリヌクレオチド、およびDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない1以上の別のエフェクタータンパク質またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物。
【請求項43】
群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される、ただ1つの人工転写リプレッサー(ATR)、またはそれをコードするポリヌクレオチド、およびDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない1以上の別のエフェクタータンパク質またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物。
【請求項44】
DNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない1以上の別のエフェクタータンパク質が、群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログ
から選択されるドメインを含み、ここで、該ドメインがATRのエフェクタードメインとは異なる、請求項42または43記載の産物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子サイレンシングおよび/またはエピジェネティックエディティングに関する。より詳細には、本発明は、関心のある遺伝子をサイレンシングするための、または関心のある遺伝要素のエピジェネティック状態(遺伝子治療適用中を含む)をエディティング(編集)するための改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、疾患を治療または予防するための、細胞内への遺伝物質の取り込みを含む。遺伝物質は欠損遺伝子をそれらの遺伝子の機能的コピーで補充し、不適切に機能する遺伝子を不活性化させ、または新たな治療用遺伝子を細胞に導入しうる。
【0003】
遺伝子治療の古典的な例は、機能的な治療用遺伝子をコードするDNA配列を使用して機能不全遺伝子を置換する遺伝子置換である(Naldini, L. (2011) Nat. Rev. Genet. 12: 301-15; Kay, M.A. (2011) Nat. Rev. Genet. 12: 316-28; Biffi, A.ら (2013) Science 341: 1233158; Aiuti, A.ら (2013) Science 341: 1233151; Aiuti, A.ら (2009) N. Engl. J. Med. 360: 447-58)。しかし、遺伝子治療の目標が、遺伝子機能を置換することではなくサイレンシングすることである、幾つかの遺伝病が存在する。典型例には、ハンチントン病、ほとんどのタイプの脊髄小脳失調症および一部のコラーゲン障害が含まれる。更に、ある感染症を治療するための有望な戦略として遺伝子サイレンシングが登場しており(Younan, P.ら (2014) Mol. Ther. 22: 257-64)、これは、病原体の生活環に必要な病原体関連遺伝子産物または宿主遺伝子を不活性化することによるものである。
【0004】
例えば、T細胞内へのHIV侵入に要求される2つの細胞性補助受容体の1つであるケモカイン(C-Cモチーフ)受容体5型(CCR)遺伝子のサイレンシングが相当な注目を集めている。これは、CCR5における自然欠失が、明らかな病的効果を引き起こすことなく、CCR5指向性HIV株による感染に対する抵抗性を付与するからである(Liu, R.ら (1996) Cell 86: 367-77; Hutter, G.ら (2009) N. Engl. J. Med. 360: 692-8)。
【0005】
また、造血系の最も一般的な遺伝性劣性障害であり、治療用遺伝子置換の主要標的である異常ヘモグロビン症(Weatherall, D.J. (2013) Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 14: 1-24)も治療用遺伝子サイレンシングに適している可能性があることが最近提示されている。この興味深い概念は、発生中に胎児ヘモグロビンから成体ヘモグロビンへのスイッチ(切り換え)を調整するメカニズムの我々の益々深まりつつある理解(Stamatoyannopoulos, G. (2005) Exp. Hematol. 33: 259-71; Bauer, D.E.ら (2011) Curr. Opin. Pediatr. 23: 1-8)、ならびに胎児ヘモグロビン(HbF)の持続的発現が鎌状赤血球症(SCD; Platt, O.S.ら (1994) N. Engl. J. Med. 330: 1639-44)およびβ-サラセミア(β-Thal; Andreani, M.ら (2011) Haematologica 96: 128-33)患者の罹患率および死亡率を有意に改善することを示す詳細な臨床的証拠に基づいている。特に、遺伝性高胎児ヘモグロビン(HbF)血症に罹患した患者において実施されたゲノムワイド関連研究は、転写因子B細胞リンパ腫/白血病11A(BCL11A)がヘモグロビンスイッチの主要調節因子であること(Sankaran, V.G.ら (2008) Science 322: 1839-42; Uda, M.ら (2008) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105: 1620-5; Galarneau, G.ら (2010) Nat. Genet. 42: 1049-51)、およびこの遺伝子における突然変異の不活性化がHbF発現の増強をもたらすこと(Wilber, A.ら (2011) Blood 117: 2817-26; Xu, J.ら (2011) Science 334: 993-6)を示した。更に、BCL11Aの第2イントロン内の赤血球特異的エンハンサーが最近特定された(Bauer, D.E.ら (2013) Science 342: 253-7)。この調節要素(調節エレメント)の遺伝的不活性化は赤血球前駆体において特異的にBCL11A発現を損なって、HbF再活性化を引き起こし、一方、それは、適切なB細胞個体発生に必要なこのタンパク質の活性を維持する(Canver, M.C.ら (2015) Nature Sep 16 doi: 10.1038/nature15521 [印刷前のEpub]; Vierstra, J.ら (2015) Nat. Methods 12: 927-30)。
【0006】
現在のところ、遺伝子発現をサイレンシングするために、以下の2つの主要な標的化(ターゲッティング)技術が用いられている:単一の短ヘアピンRNA(shRNA)を使用するRNA干渉(RNAi; Davidson, B. L.ら (2011) Nat. Rev. Genet. 12: 329-40)、および人工的ヌクレアーゼ(AN; Carroll, D. (2014) Annu. Rev. Biochem. 83: 409-39)を使用する遺伝子標的化。RNAiは、shRNAに相補的な標的転写産物の発現をダウンレギュレーションするために、内因性マイクロRNA(miRNA)経路を利用する(Davidson, B. L.ら (2011) Nat. Rev. Genet. 12: 329-40)。ANアプローチは、AN標的遺伝子のコーディングフレームを持続的に破壊するために、非相同末端結合DNA修復過程の誤りがちな性質を利用する(Ciccia, A.ら (2010) Mol. Cell 40: 179-204)。
【0007】
これらの技術を用いて有望な前臨床および臨床データが得られているが(DiGiusto, D.L.ら (2013) Viruses 5: 2898-919; DiGiusto, D.L.ら (2010) Sci. Transl. Med. 2: 36ra43; Ramachandran, P.S.ら (2013) Neurotherapeutics 10: 473-85; McBride, J.L.ら (2011) Mol. Ther. 19: 2152-62)、shRNAによる遺伝子発現の部分的低減、および二倍体哺乳類細胞においてホモ接合破壊が生じる効率の低さが、これらの治療の効力を損ないうる。これらの欠点は、生物機能には遺伝子活性の残存レベルで十分である用途において特に重要である。
【0008】
更に、これらの技術の安全な利用は、a)オフターゲット(非特異的)遺伝子サイレンシング、b)内因性miRNA経路の阻害による細胞の転写プロファイルの改変、およびc)DNA損傷応答の過剰活性化によるアポトーシスの惹起または細胞周期進行の改変に関する課題を解決することを要する(Ciccia, A.ら (2010) Mol. Cell 40: 179-204)。また、RNAiおよびANは、広範な非転写調節要素、例えばプロモーターまたはエンハンサーの不活性化には適さない。
【0009】
また、遺伝子発現をサイレンシングするためにエピジェネティックメカニズムが利用されている。エピジェネティックスは、一次DNA配列を改変することなくゲノムの機能における遺伝可能な変化を伝達するメカニズムを意味する。これらの変化は、外的刺激(例えば、ヒストン転写後修飾;HPTM)に応答して迅速に元に戻されうる短期的指令を媒介しうる。あるいは、それらは、細胞の同一性および記憶に安定に寄与する長期的指令(例えば、DNAメチル化; Smith, Z.D.ら (2013) Nat. Rev. Genet. 14: 204-20)を構成しうる。現在の研究は、エピジェネティック抑制状態を誘導するためにクロマチンへとリクルートされる分子複合体の構成および機能、ならびにこれらの状態が細胞分裂の全体にわたって無制限に増殖するメカニズムを解明しつつある(Cedar, H.ら (2009) Nat. Rev. Genet. 10: 295-304; Chen, T.ら (2014) Nat. Rev. Genet. 15: 93-106; Probst, A.V.ら (2009) Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 10: 192-206)。
【0010】
クロマチンリモデリング酵素のエフェクタードメインに融合したDNA結合ドメインから形成される安定に発現される人工転写リプレッサー(ATR)を使用する遺伝子サイレンシングを、幾つかの研究が確立している(de Groote, M.L.ら (2012) Nucleic Acids Res. 40: 10596-613; Mendenhall, E.M.ら (2013) Nat. Biotechnol. 31: 1133-6; Zhang, F.ら (2011) Nat. Biotechnol. 29: 149-53; Konermann, S.ら (2013) Nature 500: 472-6; Sera, T. (2009) Adv. Drug Deliv. Rev. 61: 513-26; Qi, L.S.ら (2013) Cell 152: 1173-83)。しかし、これらの研究はATRの連続的発現の非存在下の持続的エピジェネティックサイレンシングを示してはいない。おそらく、これは、選択されたエフェクタードメインがATR標的部位において自己増殖性クロマチン抑制状態を再生することが本質的に不可能だからであろう。
【0011】
また、人工クルッペル(Kruppel)関連ボックス(KRAB)系リプレッサーにより誘導されるサイレンシングは、該リプレッサータンパク質が発現されなくなると又はそれらの標的部位にもはや結合しなくなると、体細胞において消失することが示されている(Szulc, J.ら (2006) Nat. Methods 3: 109-16)。
【0012】
したがって、より強力かつ安全な遺伝子サイレンシング技術の開発が依然として著しく必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Naldini, L. (2011) Nat. Rev. Genet. 12: 301-15;
【非特許文献2】Kay, M.A. (2011) Nat. Rev. Genet. 12: 316-28;
【非特許文献3】Biffi, A.ら (2013) Science 341: 1233158;
【非特許文献4】Aiuti, A.ら (2013) Science 341: 1233151;
【非特許文献5】Aiuti, A.ら (2009) N. Engl. J. Med. 360: 447-58
【非特許文献6】Younan, P.ら (2014) Mol. Ther. 22: 257-64
【非特許文献7】Liu, R.ら (1996) Cell 86: 367-77; Hutter, G.ら (2009) N. Engl. J. Med. 360: 692-8
【非特許文献8】Weatherall, D.J. (2013) Annu. Rev. Genomics Hum. Genet. 14: 1-24
【非特許文献9】Stamatoyannopoulos, G. (2005) Exp. Hematol. 33: 259-71;
【非特許文献10】Bauer, D.E.ら (2011) Curr. Opin. Pediatr. 23: 1-8
【非特許文献11】Platt, O.S.ら (1994) N. Engl. J. Med. 330: 1639-44
【非特許文献12】Andreani, M.ら (2011) Haematologica 96: 128-33
【非特許文献13】Sankaran, V.G.ら (2008) Science 322: 1839-42;
【非特許文献14】Uda, M.ら (2008) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105: 1620-5;
【非特許文献15】Galarneau, G.ら (2010) Nat. Genet. 42: 1049-51
【非特許文献16】Wilber, A.ら (2011) Blood 117: 2817-26;
【非特許文献17】Xu, J.ら (2011) Science 334: 993-6
【非特許文献18】Bauer, D.E.ら (2013) Science 342: 253-7
【非特許文献19】Canver, M.C.ら (2015) Nature Sep 16 doi: 10.1038/nature15521 [印刷前のEpub];
【非特許文献20】Vierstra, J.ら (2015) Nat. Methods 12: 927-30
【非特許文献21】Davidson, B. L.ら (2011) Nat. Rev. Genet. 12: 329-40
【非特許文献22】Carroll, D. (2014) Annu. Rev. Biochem. 83: 409-39
【非特許文献23】Ciccia, A.ら (2010) Mol. Cell 40: 179-204)
【非特許文献24】DiGiusto, D.L.ら (2013) Viruses 5: 2898-919;
【非特許文献25】DiGiusto, D.L.ら (2010) Sci. Transl. Med. 2: 36ra43;
【非特許文献26】Ramachandran, P.S.ら (2013) Neurotherapeutics 10: 473-85;
【非特許文献27】McBride, J.L.ら (2011) Mol. Ther. 19: 2152-62
【非特許文献28】Smith, Z.D.ら (2013) Nat. Rev. Genet. 14: 204-20
【非特許文献29】Cedar, H.ら (2009) Nat. Rev. Genet. 10: 295-304;
【非特許文献30】Chen, T.ら (2014) Nat. Rev. Genet. 15: 93-106;
【非特許文献31】Probst, A.V.ら (2009) Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 10: 192-206
【非特許文献32】de Groote, M.L.ら (2012) Nucleic Acids Res. 40: 10596-613;
【非特許文献33】Mendenhall, E.M.ら (2013) Nat. Biotechnol. 31: 1133-6;
【非特許文献34】Zhang, F.ら (2011) Nat. Biotechnol. 29: 149-53;
【非特許文献35】Konermann, S.ら (2013) Nature 500: 472-6;
【非特許文献36】Sera, T. (2009) Adv. Drug Deliv. Rev. 61: 513-26;
【非特許文献37】Qi, L.S.ら (2013) Cell 152: 1173-83
【非特許文献38】Szulc, J.ら (2006) Nat. Methods 3: 109-16
【発明の概要】
【0014】
本発明者らは、内因性エピジェネティックメカニズムを利用する遺伝子サイレンシングのための新規アプローチを本発明において開発した。意外にも、本発明者らのアプローチは所望の標的遺伝子の転写抑制の頑強(ロバスト)かつ遺伝可能な状態を伝達する。重要なことに、これは、治療において関心が持たれる(例えば、疾患を引き起こす)またはバイオテクノロジーにおいて関心が持たれる遺伝子の持続的(永久的)不活性化を可能にする。
【0015】
頑強な遺伝子サイレンシングの持続に関する前記課題ゆえに、そして組込みベクターからの人工転写リプレッサー(ATR)の長期持続性発現が細胞に対する重大な安全面の脅威となりうるため、本発明者らは、以下の基準の全てを満足するATRのみを使用することを選択した:
1.2以上の異なるエフェクターモジュールの組合せ集合により機能する;
2.エピジェネティック抑制の頑強かつ持続的な状態を確立する;および
3.細胞において一過性に発現された場合に、この生物学的機能を発揮する。
【0016】
このアプローチは、遺伝子サイレンシングの効率および安全性の両方を本発明者らが改良することを可能にした。なぜなら、オフターゲット部位における各ATRの活性は、存在しないのでなければ、一過性となるからである。
【0017】
1つの態様において、本発明は、群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物(生成物)を提供し、ここで、それらのATRの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される。
【0018】
もう1つの態様において、本発明は、群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物を提供し、ここで、それらのATRの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)または(c)から選択される。
【0019】
1つの実施形態においては、本発明の産物は、ATR(a)および(b)またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。もう1つの実施形態においては、本発明の産物は、ATR(a)および(c)またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。もう1つの実施形態においては、本発明の産物は、ATR(b)および(c)またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態においては、本発明の産物は、ATR(a)、(b)および(c)またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。もう1つの実施形態においては、本発明の産物は、ATR(a)、(b)および(d)またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。もう1つの実施形態においては、本発明の産物は、ATR(b)および(d)またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。もう1つの実施形態においては、本発明の産物は、ATR(c)および(d)またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。もう1つの実施形態においては、本発明の産物は、ATR(b)、(c)および(d)またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0020】
KRABドメインまたはそのホモログは、配列番号1、2、3、4、5、6または7に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが可能であり、ここで、該アミノ酸配列は、配列番号1、2、3、4、5、6または7により表されるタンパク質の天然機能を実質的に保有する。
【0021】
DNMT3Aドメインまたはそのホモログは、配列番号8に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが可能であり、ここで、該アミノ酸配列は、配列番号8により表されるタンパク質の天然機能を実質的に保有する。
【0022】
DNMT3Bドメインまたはそのホモログは、配列番号9または36に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが可能であり、ここで、該アミノ酸配列は、配列番号9または36により表されるタンパク質の天然機能を実質的に保有する。
【0023】
DNMT1ドメインまたはそのホモログは、配列番号10に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが可能であり、ここで、該アミノ酸配列は、配列番号10により表されるタンパク質の天然機能を実質的に保有する。
【0024】
DNMT3Lドメインまたはそのホモログは、配列番号11に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが可能であり、ここで、該アミノ酸配列は、配列番号11により表されるタンパク質の天然機能を実質的に保有する。
【0025】
SETDB1ドメインまたはそのホモログは、配列番号12または13に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが可能であり、ここで、該アミノ酸配列は、配列番号12または13により表されるタンパク質の天然機能を実質的に保有する。
【0026】
1つの実施形態においては、(a)、(b)、(c)または(d)のDNA結合ドメインは、TALE DNA結合ドメイン、ジンクフィンガードメイン、tetR DNA結合ドメイン、メガヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas系から、独立して選択されるドメインを含む。好ましい実施形態においては、(a)、(b)、(c)または(d)のDNA結合ドメインはTALE DNA結合ドメインまたはCRISPR/Cas系を含む。
【0027】
(a)、(b)、(c)または(d)のDNA結合ドメイン、例えばTALE DNA結合ドメインまたはCRISPR/Cas系は、異なる結合部位に結合するように選択または操作されうる。
【0028】
該DNA結合ドメインは標的遺伝子内または標的遺伝子の調節配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列)内の結合部位に結合しうる。
【0029】
DNA結合ドメインはスプライシング部位内の結合部位に結合しうる。与えられた遺伝子のスプライシング変異体はスプライシング部位におけるDNAメチル化/脱メチル化により調節されうる。そしてこれらの修飾は成熟転写産物におけるエキソン排除/包含を引き起こしうる。この排除/包含は、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合に、治療上重要でありうる。デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおいては、最も高頻度の疾患原因突然変異を含有するエキソンの成熟mRNAからの(遺伝的除去またはエキソンスキッピングによる)排除が治療用に提示されている(Ousterout, D.G.ら (2015) Mol. Ther. 23: 523-32; Ousterout, D.G.ら (2015) Nat. Commun. 6: 6244; Kole, R.ら (2015) Adv. Drug Deliv. Rev. 87: 104-7; Touznik, A.ら (2014) Expert Opin. Biol. Ther. 14: 809-19)。
【0030】
本発明のATRは、活発に転写される若しくはされない可能性のある遺伝要素(例えば、ゲノムのトポロジカル配置、安定性および複製を制御する配列、例えば、インスレーター、ラミニン関連ドメイン、テロメアおよび動原体領域)、反復要素または移動要素をも標的化しうる。したがって、本発明は、エピジェネティックエディティング、例えば、遺伝要素のサイレンシング/エディティングに関するものでありうる。したがって、本発明は、調節DNA要素(例えば、本明細書に記載されているもの)のエピジェネティックエディティングのための、本発明の産物およびATRの使用を含みうる。標的遺伝子の又は遺伝要素のエピジェネティックエディティングは、それぞれ、その転写活性化または活性にも関連づけられうる。本発明は、複数の標的遺伝子または調節DNA要素(例えば、本明細書に記載されているもの)の同時エピジェネティックサイレンシングのための、本発明の産物およびATRの使用をも含みうる。
【0031】
1つの実施形態においては、2以上のATRをコードするポリヌクレオチドは単一ベクターの形態であり、あるいは別々のベクター内に含まれる。
【0032】
2つのATRを使用する1つの実施形態においては、(a)および(b)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能である;(a)および(c)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能である;あるいは(b)および(c)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能である。
【0033】
2つのATRを使用するもう1つの実施形態においては、(a)および(d)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能である;(b)および(d)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能である;あるいは(c)および(d)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能である。
【0034】
2つのATRを使用するもう1つの実施形態においては、(a)および(b)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;(a)および(c)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;あるいは(b)および(c)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である。
【0035】
2つのATRを使用するもう1つの実施形態においては、(a)および(d)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;(b)および(d)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;あるいは(c)および(d)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である。
【0036】
3つのATRを使用する1つの実施形態においては、(a)、(b)および(c)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能である;(a)、(b)および(c)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;(a)および(b)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能であり、かつ、(c)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;(a)および(c)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能であり、かつ、(b)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;あるいは(b)および(c)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能であり、かつ、(a)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である。
【0037】
3つのATRを使用する1つの実施形態においては、(a)、(b)および(d)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能である;(a)、(b)および(d)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;(a)および(b)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能であり、かつ、(d)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;(a)および(d)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能であり、かつ、(b)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;あるいは(b)および(d)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能であり、かつ、(a)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である。
【0038】
3つのATRを使用する1つの実施形態においては、(b)、(c)および(d)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能である;(b)、(c)および(d)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;(b)および(c)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能であり、かつ、(d)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;(b)および(d)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能であり、かつ、(c)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である;あるいは(c)および(d)をコードするポリヌクレオチドは単一ベクター内に含まれることが可能であり、かつ、(b)をコードするポリヌクレオチドは別々のベクター内に含まれることが可能である。
【0039】
該ベクターは、例えば、プラスミドベクター、mRNAベクター(例えば、インビトロ転写mRNAベクター)またはウイルスベクターでありうる。好ましくは、該ベクターは細胞内のATRの一過性発現を可能にする。
【0040】
ATRをコードするポリヌクレオチドを細胞に運搬(送達)することの代替手段として、本発明のATRをタンパク質トランスダクションにより細胞に運搬(送達)することが可能である。タンパク質トランスダクションは、例えば、ベクター運搬(送達)または直接タンパク質運搬(送達)によるものであることが可能である。
【0041】
1つの実施形態においては、本発明の産物は、医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を更に含む医薬組成物の形態である。
【0042】
1つの実施形態においては、本発明の産物はKRABドメインもしくはそのホモログまたはそれをコードするポリヌクレオチドを更に含み、ここで、KRABドメインまたはそのホモログはDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない。
【0043】
1つの実施形態においては、本発明の産物はDNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログあるいはそれをコードするポリヌクレオチドを更に含み、ここで、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログはDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない。
【0044】
1つの実施形態においては、本発明の産物はDNMT3Lドメインもしくはそのホモログまたはそれをコードするポリヌクレオチドを更に含み、ここで、DNMT3LドメインまたはそのホモログはDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない。
【0045】
1つの実施形態においては、本発明の産物はSETDB1ドメインもしくはそのホモログまたはそれをコードするポリヌクレオチドを更に含み、ここで、SETDB1ドメインまたはそのホモログはDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない。
【0046】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、本発明の産物を提供する。
【0047】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、本発明の産物を提供し、ここで、2以上の人工転写リプレッサー(ATR)またはそれらをコードするポリヌクレオチドは、同時、連続的または別々に対象に投与するための組合せ剤(組合せ製剤)である。
【0048】
この場合、対象への投与は、例えばエクスビボ療法中の、対象への投与を含む。
【0049】
もう1つの態様においては、標的遺伝子をサイレンシングするための、本発明の産物の使用を提供する。該使用は、例えば、インビトロまたはエクスビボでの使用でありうる。例えば、標的遺伝子を細胞の集団(例えば、細胞系または初代細胞)においてサイレンシングして、該細胞による物質(例えば、生物治療用物質)の産生を増強し、または該細胞に増殖上の利点を付与することが可能である。あるいは、例えば、標的遺伝子をサイレンシングして、該標的遺伝子に関するノックアウト動物を作製することが可能である。本発明のエピジェネティックアプローチは、遺伝子をノックアウトする既存方法(例えば、相同組換えを利用するもの)に代わる代替手段を提供する。あるいは、例えば、標的遺伝子を植物細胞においてサイレンシングすることが可能である。
【0050】
治療における使用を含む前記使用においては、細胞への本発明の2以上のATRの運搬は標的遺伝子をサイレンシングしうる。該運搬は一過性運搬でありうる。該運搬は細胞における2以上のATRの発現、例えば、ATRをコードするポリヌクレオチドからの発現によるものでありうる。細胞への本発明の2以上のATRの運搬は、例えばスプライシング部位に対する効果により、成熟転写産物におけるエキソン排除/包含をも引き起こしうる。細胞への本発明の2以上のATRの運搬は、本明細書に記載されている遺伝要素のサイレンシングおよび/またはエディティングをも可能にしうる。
【0051】
1つの実施形態においては、細胞における本発明の2以上のATRの発現は標的遺伝子をサイレンシングする。該発現は一過性発現でありうる。
【0052】
1つの実施形態においては、細胞への本発明の2以上のATRの送達(例えば、該細胞における発現によるもの)は標的遺伝子を持続的に(恒久的に)サイレンシングする。もう1つの実施形態においては、細胞への本発明の2以上のATRの運搬(例えば、該細胞における発現によるもの)は該細胞の後代における標的遺伝子を持続的に(恒久的に)サイレンシングする。例えば、該細胞は幹細胞であることが可能であり、該標的遺伝子は該幹細胞の後代においてサイレンシングされうる(例えば、該標的遺伝子は、該幹細胞の分化から生じた細胞においてサイレンシングされうる)。
【0053】
例えば、該細胞は動物(例えば哺乳動物、例えばヒト)、真菌(例えば、酵母)または植物に由来しうる。例えば、該細胞は造血幹細胞および前駆細胞、Tリンパ球、間葉幹細胞、線維芽細胞、単球、表皮または神経幹細胞でありうる。
【0054】
異なるATRのDNA結合ドメインが結合するように選択される結合部位の間隔(分離距離)はサイズにおいて特に限定されない。例えば、異なるATRのDNA結合ドメインは、約1~100bp、1~50bp、1~30bp、5~30bp、10~30bpまたは15~30bp離れた結合部位に結合するように選択されうる。1つの実施形態においては、異なるATRのDNA結合ドメインは、1~30bp離れた結合部位に結合するように選択されうる。好ましくは、異なるATRのDNA結合ドメインは、約15~25bp離れた結合部位に結合するように選択されうる。例えば、異なるATRのDNA結合ドメインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30bp離れた結合部位に結合するように選択されうる。
【0055】
異なるATRのDNA結合ドメインはまた、同一結合部位に結合するように選択されうる。例えば、異なるATRのDNA結合ドメインは、0bp離れた結合部位に結合するように選択されうる。したがって、例えば、異なるATRのDNA結合ドメインは、約0~100bp、0~50bp、0~30bp、5~30bp、10~30bpまたは15~30bp離れた結合部位に結合するように選択されうる。異なるATRのDNA結合ドメインは、約0~15または15~25bp離れた結合部位に結合するように選択されうる。
【0056】
標的遺伝子に対する、異なるATRが結合する指向性順序は特に重要ではない。1つの実施形態においては、2以上のATRは、KRABドメインまたはそのホモログを含むATRと、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログを含むATRとを含み、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログを含むATRが、KRABドメインまたはそのホモログを含むATRの上流のDNAに結合するように、各ATRのDNA結合ドメイン(例えば、TALE DNA結合ドメイン)が選択される。
【0057】
1つの実施形態においては、DNA結合ドメインはTALE DNA結合ドメインまたはCRISPR/Cas系である。
【0058】
DNA結合ドメインの選択は、特異的な所望のDNA配列に結合するようにDNA結合ドメインを操作することを含みうる。
【0059】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0060】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0061】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0062】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、および/またはSETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第4 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0063】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、および/またはSETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第4 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0064】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、および/またはSETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第4 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0065】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第2 ATR、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第3 ATR、および/またはKRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む第4 ATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0066】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の2以上の人工転写リプレッサー(ATR)を含む細胞を提供する。該細胞は、本発明の2以上のATRをコードするポリヌクレオチドによりトランスフェクトされうる。該ポリヌクレオチドは単一ベクターの形態であることが可能であり、あるいは別々のベクター内に含まれることが可能である。
【0067】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の2以上の人工転写リプレッサー(ATR)を含む細胞の後代である細胞を提供する。1つの実施形態においては、該後代細胞は、本発明の2以上のATRを、もはや含まない。もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、本発明の細胞を提供する。
【0068】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の2以上の人工転写リプレッサー(ATR)をコードするポリヌクレオチドで細胞をトランスフェクトすることを含む遺伝子治療の方法を提供し、ここで、該ポリヌクレオチドは単一ベクターの形態であり、あるいは別々のベクター内に含まれる。
【0069】
1つの実施形態においては、トランスフェクションはエクスビボで行われる。
【0070】
もう1つの態様においては、本発明は、群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを同時、連続的または別々に対象に投与することを含む遺伝子治療の方法を提供し、ここで、それらのATRの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)または(c)から選択される。本発明はまた、群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを同時、連続的または別々に対象に投与することを含む遺伝子治療の方法を提供し、ここで、それらのATRの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される。
【0071】
もう1つの態様においては、本発明は、群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含むキットを提供し、ここで、それらのATRの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)または(c)から選択される。本発明はまた、群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR);
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR
から選択される2以上の人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含むキットを提供し、ここで、それらのATRの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される。
【0072】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の2以上のATRまたはそれらをコードするポリヌクレオチドを細胞に投与する工程を含む、標的遺伝子をサイレンシングする方法を提供する。該方法はインビトロ法でありうる。
【0073】
もう1つの態様においては、本発明は、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ、好ましくはDNMT3Aドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)、およびSETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物を提供する。本発明はまた、この産物の使用、治療におけるこの産物の使用、この産物を含む細胞およびその後代、この産物の使用方法、ならびにこの産物を含むキット(本明細書に記載されているもの)を提供する。この産物はまた、DNMT3LもしくはKRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATRあるいはそれをコードするポリヌクレオチドを更に含みうる。
【0074】
1つの実施形態においては、該産物は、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ、好ましくはDNMT3Aドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)、SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR、およびDNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0075】
1つの実施形態においては、該産物は、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ、好ましくはDNMT3Aドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)、SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR、およびKRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含むATR、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0076】
SETDB1ドメインまたはそのホモログは、配列番号12または13に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことが可能であり、ここで、該アミノ酸配列は、配列番号12または13により表されるタンパク質の天然機能を実質的に保有する。
【0077】
もう1つの態様においては、本発明は、人工転写リプレッサー(ATR)またはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、ここで、該ATRは、群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ
から選択される2以上のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含み、ここで、該DNA結合ドメインに機能しうる形で連結されたドメインの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)または(c)から選択される。該ATRは、例えば、群(a)のドメイン、群(b)のドメインおよび群(c)のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含みうる。本発明はまた、群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログ
から選択される2以上のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)を提供し、ここで、該DNA結合ドメインに機能しうる形で連結されたドメインの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される。
【0078】
1つの実施形態においては、該DNA結合ドメインはTALE DNA結合ドメイン、ジンクフィンガードメイン、tetR DNA結合ドメイン、メガヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas系を含む。
【0079】
本発明はまた、このATRの使用、治療におけるこのATRの使用、このATRを含む細胞およびその後代、このATRの使用方法、ならびにこのATRを含むキット(本明細書に記載されているもの)を提供する。
【0080】
もう1つの態様においては、本発明は、2以上の異なる人工転写リプレッサー(ATR)またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む産物を提供し、ここで、それらの2以上の異なるATRは、群(a)、(b)または(c):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;および
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ
から選択される2以上のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを個々に含み、ここで、それぞれの個々のDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されたドメインの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)または(c)から選択される。各ATRは、例えば、群(a)のドメイン、群(b)のドメインおよび群(c)のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含みうる。本発明はまた、2以上の異なる人工転写リプレッサー(ATR)またはそれをコードするポリヌクレオチドを含む産物を提供し、ここで、それらの2以上の異なるATRは、群(a)、(b)、(c)または(d):
(a)KRABドメインまたはそのホモログ;
(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;
(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログ;および
(d)SETDB1ドメインまたはそのホモログ
から選択される2以上のドメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを個々に含み、ここで、それぞれの個々のDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されたドメインの少なくとも2つは、異なる群(a)、(b)、(c)または(d)から選択される。
【0081】
1つの実施形態においては、それらの2以上の異なるATRのDNA結合ドメインは、TALE DNA結合ドメイン、ジンクフィンガードメイン、tetR DNA結合ドメイン、メガヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas系からなる群から個々に選択される。
【0082】
それらの2以上の異なるATRのDNA結合ドメイン、例えばTALE DNA結合ドメインまたはCRISPR/Cas系は、異なる部位に結合するように選択または操作されうる。
【0083】
該DNA結合ドメインは標的遺伝子内または標的遺伝子の調節配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列)内の結合部位に結合しうる。該DNA結合ドメインはスプライシング部位内の結合部位に結合しうる。
【0084】
本発明はまた、この産物の使用、治療におけるこの産物の使用、この産物を含む細胞およびその後代、この産物の使用方法、ならびにこの産物を含むキット(本明細書に記載されているもの)を提供する。
【0085】
もう1つの態様においては、本発明は、ただ1つのATR、およびDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない別のエフェクタータンパク質、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物を提供する。該ATRは、(a)KRABドメインまたはそのホモログ;(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;あるいは(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログから選択されるエフェクタードメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含みうる(すなわち、該ATRは本明細書に記載されているものでありうる)。DNA結合ドメインに機能的に連結されていない前記の別のエフェクタータンパク質はKRAB、DNMT3A、DNMT3B、DNMT1もしくはDNMT3Lドメインまたはそのホモログを含みうる。前記の別のエフェクタータンパク質は、本明細書に記載されているエフェクタードメイン/タンパク質でありうる。前記の別のエフェクタータンパク質は完全長タンパク質またはその機能的断片でありうる。好ましくは、前記の別のエフェクタータンパク質は該ATRのエフェクタードメインとは異なる。好ましくは、前記の別のエフェクタータンパク質は、該ATRのエフェクタードメインとは異なるクラスのものである。好ましくは、前記の別のエフェクタータンパク質は、該ATRを構成するエフェクタードメインと同じ群(a)、(b)または(c)に属するドメインをそれが含まないように選択される。
【0086】
DNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない前記の別のエフェクタータンパク質はSETDB1またはそのホモログをも含みうる。
【0087】
もう1つの態様においては、本発明は、ただ1つのATR、およびDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない別のエフェクタータンパク質、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む産物を提供する。該ATRは、SETDB1エフェクタードメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含みうる(すなわち、該ATRは本明細書に記載されているものでありうる)。DNA結合ドメインに機能的に連結されていない前記の別のエフェクタータンパク質はKRAB、DNMT3A、DNMT3B、DNMT1もしくはDNMT3Lドメインまたはそのホモログを含みうる。前記の別のエフェクタータンパク質は、本明細書に記載されているエフェクタードメイン/タンパク質でありうる。前記の別のエフェクタータンパク質は完全長タンパク質またはその機能的断片でありうる。
【0088】
1つの実施形態においては、該ATRのDNA結合ドメインは、TALE DNA結合ドメイン、ジンクフィンガードメイン、tetR DNA結合ドメイン、メガヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas系からなる群から選択される。
【0089】
本発明はまた、この産物の使用、治療におけるこの産物の使用、この産物を含む細胞およびその後代、この産物の使用方法、ならびにこの産物を含むキット(本明細書に記載されているもの)を提供する。
【0090】
本発明の産物が、ただ1つのATR、およびDNA結合ドメインに機能的に連結されていない別のエフェクタータンパク質を含む場合、該ATRおよび別のエフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチドは単一ベクターの形態であることが可能であり、あるいは別々のベクターに含まれることが可能である。
【0091】
該ベクターは、例えば、プラスミドベクター、mRNAベクター(例えば、インビトロ転写mRNAベクター)またはウイルスベクターでありうる。好ましくは、該ベクターは細胞内のATRおよび/または別のエフェクタータンパク質の一過性発現を可能にする。
【0092】
本発明のATRおよび/または別のエフェクタータンパク質は、本明細書に記載されているとおり、タンパク質トランスダクションによっても細胞に運搬されうる。
【0093】
本発明のATRおよび/または別のエフェクタータンパク質、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドは、医薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を更に含む医薬組成物の形態でありうる。
【0094】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、本発明のATR、または本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0095】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質またはそれらをコードするポリヌクレオチドを提供し、ここで、該ATRおよび別のエフェクタータンパク質またはそれらをコードするポリヌクレオチドは、同時、連続的または別々に対象に投与するための組合せ剤である。
【0096】
もう1つの態様においては、標的遺伝子をサイレンシングするための、本発明のATR、または本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを提供する。該使用は、例えば、インビトロまたはエクスビボでの使用でありうる。
【0097】
治療における使用を含む前記使用においては、本発明のATR、または本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質の、細胞への運搬は、標的遺伝子をサイレンシングしうる。該運搬は一過性運搬でありうる。該運搬は、本発明のATR、または本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質の、細胞における発現、例えば、本発明のATRまたは本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチドからの発現によるものでありうる。
【0098】
1つの実施形態においては、本発明のATR、または本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質の、細胞における発現は、標的遺伝子をサイレンシングする。該発現は一過性発現でありうる。
【0099】
1つの実施形態においては、本発明のATR、または本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質の、細胞への運搬(例えば、該細胞における発現によるもの)は、標的遺伝子を持続的にサイレンシングする。もう1つの実施形態においては、本発明のATR、または本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質の、細胞への運搬(例えば、該細胞における発現によるもの)は、該細胞の後代における標的遺伝子を持続的にサイレンシングする。例えば、該細胞は幹細胞であることが可能であり、該標的遺伝子は該幹細胞の後代においてサイレンシングされうる(例えば、該標的遺伝子は、該幹細胞の分化から生じた細胞においてサイレンシングされうる)。
【0100】
例えば、該細胞は動物(例えば哺乳動物、例えばヒト)、真菌(例えば、酵母)または植物に由来しうる。例えば、該細胞は造血幹細胞および前駆細胞、Tリンパ球、間葉幹細胞、線維芽細胞、単球、表皮または神経幹細胞でありうる。
【0101】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、KRABドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第1の別のエフェクタータンパク質、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第2の別のエフェクタータンパク質、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0102】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、KRABドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第1の別のエフェクタータンパク質、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第2の別のエフェクタータンパク質、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0103】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、DNMT3Lドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、KRABドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第1の別のエフェクタータンパク質、および/またはDNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第2の別のエフェクタータンパク質、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0104】
SETDB1ドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第3の別のエフェクタータンパク質もこれらの組合せにおいて使用されうる。
【0105】
もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、SETDB1ドメインまたはそのホモログに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)あるいはそれをコードするポリヌクレオチドを提供し、該治療においては、該ATRは、KRABドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第1の別のエフェクタータンパク質、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第2の別のエフェクタータンパク質、および/またはDNMT3Lドメインまたはそのホモログを含むDNA結合ドメインに機能しうる形で連結されていない第3の別のエフェクタータンパク質、あるいはそれらをコードするポリヌクレオチドと組合せて、同時、連続的または別々に対象に投与される。
【0106】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明のATRまたは本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質を含む細胞を提供する。該細胞は、本発明のATRまたは本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチドによりトランスフェクトされうる。本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチドは単一ベクターの形態であることが可能であり、あるいは別々のベクター内に含まれることが可能である。
【0107】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明のATRまたは本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質を含む細胞の後代である細胞を提供する。1つの実施形態においては、該後代細胞は、本発明のATRおよび/または別のエフェクタータンパク質を、もはや含まない。もう1つの態様においては、本発明は、治療における使用のための、本発明の細胞を提供する。
【0108】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明のATRまたは本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチドで細胞をトランスフェクトすることを含む遺伝子治療の方法を提供する。本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチドは単一ベクターの形態であることが可能であり、あるいは別々のベクター内に含まれることが可能である。
【0109】
1つの実施形態においては、トランスフェクションはエクスビボで行われる。
【0110】
もう1つの態様においては、本発明は、ただ1つのATR、およびDNA結合ドメインに機能的に連結されていない別のエフェクタータンパク質、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを、同時、連続的または別々に対象に投与することを含む、遺伝子治療の方法を提供する。該ATRは、(a)KRABドメインまたはそのホモログ;(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;あるいは(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログから選択されるエフェクタードメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含みうる(すなわち、該ATRは本明細書に記載されているものでありうる)。DNA結合ドメインに機能的に連結されていない前記の別のエフェクタータンパク質はKRAB、DNMT3A、DNMT3B、DNMT1もしくはDNMT3Lドメインまたはそのホモログを含みうる。前記の別のエフェクタータンパク質は、本明細書に記載されているエフェクタードメイン/タンパク質でありうる。前記の別のエフェクタータンパク質は完全長タンパク質またはその機能的断片でありうる。好ましくは、前記の別のエフェクタータンパク質は該ATRのエフェクタードメインとは異なる。好ましくは、前記の別のエフェクタータンパク質は、該ATRのエフェクタードメインとは異なるクラスのものである。好ましくは、前記の別のエフェクタータンパク質は、該ATRを構成するエフェクタードメインと同じ群(a)、(b)または(c)に属するドメインをそれが含まないように選択される。
【0111】
該ATRは、SETDB1エフェクタードメインまたはそのホモログに機能的に連結されたDNA結合ドメインをも含みうる。DNA結合ドメインに機能的に連結されていない前記の別のエフェクタータンパク質はSETDB1ドメインまたはそのホモログをも含みうる。
【0112】
もう1つの態様においては、本発明は、ただ1つのATR、およびDNA結合ドメインに機能的に連結されていない別のエフェクタータンパク質、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含むキットを提供する。該ATRは、(a)KRABドメインまたはそのホモログ;(b)DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログ;あるいは(c)DNMT3Lドメインまたはそのホモログから選択されるエフェクタードメインに機能しうる形で連結されたDNA結合ドメインを含みうる(すなわち、該ATRは本明細書に記載されているものでありうる)。DNA結合ドメインに機能的に連結されていない前記の別のエフェクタータンパク質はKRAB、DNMT3A、DNMT3B、DNMT1もしくはDNMT3Lドメインまたはそのホモログを含みうる。前記の別のエフェクタータンパク質は、本明細書に記載されているエフェクタードメイン/タンパク質でありうる。前記の別のエフェクタータンパク質は完全長タンパク質またはその機能的断片でありうる。好ましくは、前記の別のエフェクタータンパク質は該ATRのエフェクタードメインとは異なる。好ましくは、前記の別のエフェクタータンパク質は、該ATRのエフェクタードメインとは異なるクラスのものである。好ましくは、前記の別のエフェクタータンパク質は、該ATRを構成するエフェクタードメインと同じ群(a)、(b)または(c)に属するドメインをそれが含まないように選択される。
【0113】
該ATRは、SETDB1エフェクタードメインまたはそのホモログに機能的に連結されたDNA結合ドメインをも含みうる。DNA結合ドメインに機能的に連結されていない前記の別のエフェクタータンパク質はSETDB1ドメインまたはそのホモログをも含みうる。
【0114】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明のATR、または本発明のATRおよび別のエフェクタータンパク質、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを細胞に投与する工程を含む、標的遺伝子をサイレンシングする方法を提供する。該方法はインビトロ法でありうる。
【0115】
また、本発明の産物のもう1つの成分(すなわち、ATRまたは別のエフェクタータンパク質)がDNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそのホモログを含む場合、本発明のATRまたは別のエフェクタータンパク質はSETDB1ドメインまたはそのホモログを含みうると想定される。
【0116】
本発明の方法および使用、例えば、遺伝子治療または標的遺伝子のサイレンシングの方法は、本発明のATRまたは別のエフェクタータンパク質の活性に対抗しうる内因性遺伝子を不活性化する工程をも含みうる。例えば、DNMT3B遺伝子が不活性化されうる。この方法の工程の不活性化は例えば一過性または持続的でありうる。該不活性化は、例えば、遺伝的欠失により、例えばCRISPR/Cas9に基づくアプローチを用いることにより、または転写後ダウンレギュレーションにより、例えばsh/siRNAを使用することにより、または転写ダウンレギュレーションにより、例えば関心遺伝子の調節配列に標的化される個々のKRABに基づくATRを使用することにより達成されうる。DNMT3Bの不活性化は、KRAB、DNMT3AおよびDNMT3Lドメインを個々に含む3つのATRを使用する場合に、特に好ましいであろう。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1】実験細胞モデルの詳細を示す図。eGFP発現カセット(hPGKプロモーターに基づくもの)およびそれに続くTetO7配列をK562細胞系のPPP1R12C遺伝子(AAVS1部位としても公知)の第1イントロン内に組込む。ついで、該カセットのホモ接合挿入を含有する単細胞由来クローンに、(候補抑制(Rep)ドメインを伴う)ATRを発現するベクターを導入し、抑制エピジェネティックマーク(赤色ロリポップ)の付着の後、該細胞をドキシサイクリンで処理する又は処理しない。ついでeGFP発現のサイレンシングまたは再活性化の維持を、eGFP発現を測定することにより評価する。
【
図2】tetR:KおよびtetR:D3Aにより誘導されるエピジェネティックサイレンシングの比較。A.tetR:Kおよびマーカー遺伝子mOrange(左側)またはtetR:DNMT3Aおよびマーカー遺伝子ΔLNGFR(右側)を発現する双方向性レンチウイルスベクター(Bid.LV)の図。B.TetO7.eGFPレポータークローンにドキシサイクリンの存在下または非存在下でBid.LV-tetR:KまたはBid.LV-tetR:D3Aを導入し(それぞれ右および左のグラフ)、それをフローサイトメトリーにより経時的に分析して、eGFP陰性細胞の百分率を測定した。C.ドキシサイクリンの存在下または非存在下でBid.LV-tetR:KまたはBid.LV-tetR:D3Aが導入されたTetO7.eGFPレポーター細胞系の、示されている時点における代表的なドットプロット分析。eGFPがサイレンシングされた細胞の平均蛍光強度(MFI)が未処理野生型細胞のMFIと比較されている。D.(B)における、ドキシサイクリンが存在しない条件からのサイレンシング細胞を、純粋状態まで選別し、ドキシサイクリンの存在下または非存在下の培養内で維持して、eGFPの再活性化を評価した。該薬物の存在下または非存在下の該細胞の代表的なドットプロットが下に示されている。E.(B)における条件からの、サイレンシングされ選別された細胞をAZA(1μM)またはビヒクル(DMSO)で7日間処理し、eGFPの発現に関して分析した(左側のヒストグラム)。ビヒクルおよびAZAで処理された細胞の代表的なドットプロットが示されている。
【
図3】TetR:D3A誘導性転写抑制は標的遺伝子座に限局される。A.AAVS1部位の図。レポーターカセット(赤矢印)を包囲する遺伝子が示されている。B.Bid.LV-tetR:KまたはBid.LV-tetR:D3AでサイレンシングされたeGFP陰性細胞と未処理細胞との間の、示されている遺伝子の発現レベルの変化倍率を示すヒストグラム。各遺伝子の相対発現レベルをB2Mの発現に対して正規化し、未処理細胞(標準体)に対する変化倍率として表した(n=3)。
【
図4】tetR:KおよびtetR:D3Aのそれらの一過性共運搬に対する相乗的活性。A.TetO7.eGFPレポーター細胞系を、単独の又は組合されたtetR:KおよびtetR:D3Aをコードするプラスミドで一過性にトランスフェクトした。該細胞をフローサイトメトリーで経時的に分析し、サイレンシングの効率をトランスフェクション後のeGFP陰性細胞の百分率として測定した。各トランスフェクション条件に関する代表的なドットプロットがヒストグラムの下に示されている(n=3)。B.(A)に示されている混合条件からの選別eGFPサイレンシング細胞と未処理細胞との間の、示されている遺伝子の発現レベルの変化倍率を示すヒストグラム。各遺伝子の相対発現レベルをB2Mに対して正規化し、未処理細胞(標準体)に対する変化倍率として表した(n=3)。c.(A)における混合処理条件からのeGFP陰性細胞を選別し、ついでAZAまたはDMSOで処理した(ヒストグラムは、示されている処理から7日後のeGFP陽性細胞の百分率を示す; n=3)。D.(A)に類似した実験であるが、単独で又は組合せて運搬されるtetR:KおよびtetD3Aをコードするインビトロ転写mRNAを使用して行った。E.(D)に示されている混合条件からの選別eGFPサイレンシング細胞と未処理細胞との間の、示されている遺伝子の発現レベルの変化倍率を示すヒストグラム(n=3)。
【
図5】tetR:KおよびtetD3Aの組合せでの遺伝子サイレンシングは部位(遺伝子座)および細胞型に非依存的である。A.該研究において使用したTetO7レポーターLVの図。TetO7配列を、eGFPレポータートランスジーンの発現を駆動するhPGKプロモーターの上流にクローニングした。B.単独で又は組合せて運搬されるtetR:KおよびtetD3Aをコードするインビトロ転写mRNAでトランスフェクトされたK562 LV/TET07レポーター細胞系におけるeGFPサイレンシング(フローサイトメトリーによるeGFP陰性細胞の%)の動力学を示すグラフ(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。C~D.U937LV/TETO7細胞系(C)またはBリンパ芽球LV/TETO7レポーター細胞系(D)におけるeGFPサイレンシング(フローサイトメトリーによるeGFP陰性細胞の%)の動力学を示すグラフ。(B)において示されているとおりに細胞をトランスフェクトした(U937ではn=1およびBリンパ芽球細胞ではn=3)。
【
図6】ATRに関する追加的なエピジェネティックエフェクタードメインのスクリーニング。A.示されているtetR系ATRを発現するレンチウイルスベクターの導入(トランスダクション)の際のK562 LV/TETO7レポーター細胞系におけるeGFPサイレンシング(フローサイトメトリーによるeGFP陰性細胞の%)の動力学を示すグラフ(n=3)。B.培養における、示されているLVに関して陽性の細胞の百分率を経時的に示すグラフ(n=3)。C.ドキシサイクリン投与の前および後の、示されているtetR系ATRを安定に発現するレンチウイルスベクターが導入されたK562 LV/TETO7レポーター細胞系におけるeGFPサイレンシング(フローサイトメトリーによるeGFP陰性細胞の%)の動力学を示すグラフ(n=3)。
【
図7】種々の哺乳類細胞における人工転写リプレッサー(ATR)の追加的な組合せのスクリーニング。A~D.示されているtetR系ATRをコードする個々のプラスミドでのエレクトロポレーションの際(A; n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)、またはtetR:D3Aをコードするプラスミドおよびその他のtetR系ATRの1つをコードするプラスミドでのエレクトロポレーションの際(B; n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)、またはtetR:Kをコードするプラスミドおよびその他のtetR系ATRの1つをコードするプラスミドでのエレクトロポレーションの際(C; n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)、またはtetR:D3A + tetR:Kをコードするプラスミドおよびそれと組合されたその他のtetR系ATRの1つをコードするプラスミドでのエレクトロポレーションの際(D; n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)のK562 LV/TETO7レポーター細胞系におけるeGFPサイレンシング(フローサイトメトリーによるeGFP陰性細胞の%)の動力学を示すグラフ。E.示されているtetR系ATRをコードするプラスミドでのK562 LV/TETO7レポーター細胞系のエレクトロポレーションの21日後のeGFPサイレンシングの効力を示すヒストグラム(A~Dの後の時点; n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。F.SETDB1に基づくものを含む、示されているtetR系ATRをコードするプラスミドでのK562 LV/TETO7レポーター細胞系のエレクトロポレーションの30日後のeGFPサイレンシングの効力を示すヒストグラム(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。G.示されているtetR系ATRをコードするmRNAでエレクトロポレーションされたBリンパ芽球LV/TETO7レポーター細胞系のeGFPサイレンシングの動力学を示すグラフ(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。H.示されているtetR系ATRをコードするmRNAでエレクトロポレーションされたマウスNIH/3T3 LV/TETO7レポーター細胞系のeGFPサイレンシングの動力学を示すグラフ(n=2; データは平均±範囲として表されている)。
【
図8】特製DNA結合ドメイン(頭-尾配向)を含む人工転写リプレッサー(ATR)の一過性共運搬による遺伝子サイレンシング。A.2つのATR結合部位間のスペーサーの長さが異なる、LV導入によりK562細胞のゲノム内に半ランダムに組込まれた種々の人工尾部(Tale)結合部位(頭-尾).hPGK.eGFPカセットの概要図。2つの異なるTALEドメインが各エピジェネティックエフェクターに別々に融合されていて、標的への結合のD3A-K相対順序が異なる2つの代替的共運搬法をもたらす。B.標的への結合のK→D3A(左)およびD3A→K(右)相対ATR順序におけるスペーサーの長さに関するサイレンシング効率(エレクトロポレーションの34日後のeGFP陰性細胞の%)を示すグラフ。C.標的への結合のK→D3A(左)およびD3A→K(右)相対ATR順序における25bpのスペーサー(Bに示されている実験において試験された最良結果のスペーサー)を伴う細胞系におけるeGFPサイレンシングの動力学を示すグラフ(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。
【
図9】特製DNA結合ドメイン(頭-頭配向)を含む人工転写リプレッサー(ATR)の一過性共運搬による遺伝子サイレンシング。A.2つのATR結合部位間のスペーサーの長さが異なる、LV導入によりK562細胞のゲノム内に半ランダムに組込まれた種々の人工尾部(Tale)結合部位(頭-頭).hPGK.eGFPカセットの概要図。2つの異なるTALEドメインが各エピジェネティックエフェクターに別々に融合されていて、標的への結合のD3A-K相対順序が異なる2つの代替的共運搬法をもたらす。B.標的への結合のD3A→K(左)およびK→D3A(右)相対ATR順序におけるスペーサーの長さに関するサイレンシング効率(エレクトロポレーションの34日後のeGFP陰性細胞の%)を示すグラフ。C.標的への結合のD3A→K(左)およびK→D3A(右)相対ATR順序における15bpのスペーサー(Bに示されている実験において試験された最良結果のスペーサー)を伴う細胞系におけるeGFPサイレンシングの動力学を示すグラフ(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。
【
図10】2以上のエフェクタードメインを含む人工転写リプレッサー(ATR)での遺伝子サイレンシング。A.キメラK:tetR:D3A ATR(Bi-Partite; BiP)が結合した、LV導入によりK562細胞のゲノム内に半ランダムに組込まれた種々の人工尾部(Tale)結合部位(頭-頭).hPGK.eGFPカセットの概要図。この場合、KRABおよびDNMT3Aドメインが同一DNA結合ドメインの(それぞれ)NおよびC末端に融合していた。B.Bi-Partite(BiP)融合タンパク質をコードするプラスミドで単独で又は組合せてトランスフェクトされた、25bpのスペーサーを伴う細胞系(
図8Bにおいて使用されたのと同じ細胞系)におけるeGFPサイレンシングの動力学を示すグラフ(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。
【
図11】人工転写リプレッサー(ATR)の種々の組合せを使用することによるヒト造血幹および前駆細胞(HSPC)における持続的エピジェネティックサイレンシング。A.HSPCにおけるサイレンシングの効率を評価するために用いた方法のタイムライン図。簡潔に説明すると、第0日に、ヒトCD34+細胞を、早期作用性サイトカインを含有する刺激培地内で解凍し、第1日に、それにTetO7レポーターLV(
図5Aにおけるベクター図)を導入した。ついで、解凍から第3日に、細胞を洗浄し、インビトロ転写mRNAでエレクトロポレーションした。翌日、800個の細胞をCFC-Uアッセイのためにプレーティングし、一方、残存細胞を液体培養内で増殖させ、示されている時点でフローサイトメトリーにより分析した。解凍の14日後にCFC-U分析を行った。B.単独で又は二重もしくは三重の組合せで運搬される、示されているATRをコードするインビトロ転写mRNAでトランスフェクトされた液体培養ヒトCD34
+におけるeGFPのサイレンシングの動力学を示すグラフ(データは、エレクトロポレーションされていないがLV導入された対照に対して正規化された; n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。C.(B)に示されているとおりにインビトロ転写mRNAでトランスフェクトされたヒトCD34
+に由来する赤血球および骨髄コロニーにおけるeGFP-サイレンシングの百分率を示すヒストグラム(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。
【
図12】人工転写リプレッサー(ATR)の種々の組合せを使用することによるヒトTリンパ球における持続的エピジェネティックサイレンシング。A.ヒト初代T細胞におけるサイレンシングの効率を評価するためにこの研究において用いた方法のタイムライン図。簡潔に説明すると、第0日に、T細胞を抗CD3/CD28被覆ビーズで単離し、培養内で3日間放置した後、それにレポーターTetO.LVを導入した。第6日に、該細胞を、示されているATRをコードするインビトロ転写mRNAでトランスフェクトし、示されている時点でeGFPの発現をフローサイトメトリーにより分析した。トランスフェクションの3週間後、細胞を再刺激し、eGFPサイレンシングの安定性をフローサイトメトリーにより測定した。B.未処理細胞に対して正規化された、単独で又は二重もしくは三重の組合せで運搬された、示されているATRをコードするインビトロ転写mRNAでトランスフェクトされたヒト初代T細胞におけるeGFPサイレンシングの動力学を示すグラフ(データは、エレクトロポレーションされていないがLV導入された対照に対して正規化された; n=2; データは平均±範囲として表されている)。
【
図13】人工転写リプレッサー(ATR)の組合せを使用するヒトβ2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子の持続的エピジェネティックサイレンシング。A.TALE系ATRの結合部位を示すB2M遺伝子座の概要図。B.単独で又は組合せて運搬された、示されているTALE系ATRをコードするプラスミドでエレクトロポレーションされたHEK-293T細胞におけるB2Mサイレンシングの動力学を示すグラフ(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。C.三重TALE:ATR組合せをコードするプラスミドでトランスフェクトされたHEK-293T細胞の代表的なフローサイトメトリードットプロット、ならびに二重陰性(左側の下のプロット)細胞および二重陽性(右側の下のプロット)細胞を富化するために用いた細胞選別法。D.(C)からの選別細胞および未処理HEK293T細胞におけるB2M遺伝子の発現レベルにおける変化倍率を示すヒストグラム(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。E.B2Mプロモーター領域内に位置するCpGアイランドを標的化するように選択されたgRNAおよびdCas9系ATRの図。F.CRISPR/dCas9系ATRプラスミドのエレクトロポレーションの33日後におけるサイレンシング効率を示すヒストグラム(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。G.
図2CからのB2Mサイレンス化細胞(このパネルにおいてはTALE B2M-と称されている)、
図2Fにおける三重CRISPR/dCas9系ATR組合せから選別されたB2Mサイレンス化細胞(このパネルにおいてはTALE B2M-と称されている)、および野生型HeK-293T細胞(このパネルにおいてはWT B2M+と称されている)をIFN-γにさらし又はさらさず、ついでB2MおよびOAS1の発現レベルを測定するために分析した。IFN-γおよび未処理細胞間のB2MおよびOAS1遺伝子の発現レベルにおける変化倍率を示すヒストグラム。ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)遺伝子の発現を標準体として用いた(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。H.未処理(左側のプロット)またはIFN-γ処理の4日後(右側のプロット)の、示されているHEK-293T集団の代表的なフローサイトメトリードットプロット。数字はMFI B2Mを示す。
【
図14】β2-ミクログロブリン(B2M)のサイレンシングは該遺伝子の有意なエピジェネティックエディティングに関連している。A.三重TALE:ATR組合せをコードするプラスミドでトランスフェクトされたHEK-293T細胞の代表的なフローサイトメトリードットプロット、ならびに二重陽性細胞および二重陰性細胞を富化するために用いた細胞選別法。B.RNA PolIIの存在下、未処理細胞(上のヒストグラム)および(A)からのサイレンス化細胞(下のヒストグラム)において行ったChlP分析。ヒストグラムは、該遺伝子の転写開始部位(TSS; +1に設定)からのqPCRアッセイの距離に関する、投入に対するRNA PolIIにおける富化倍率を示す(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。遍在的転写AAVS1遺伝子座をRNA PolII富化に関する陽性対照(PC)として使用し、サイレントCCR5遺伝子を陰性対照(NC)として使用した。C.未処理(UT)細胞およびサイレンス化細胞におけるB2M CpGアイランドの亜硫酸水素塩分析。該遺伝子のTSSおよび3つのTALE:ATR(D;L;K)の結合部位の相対位置が示されている。D.AZA処理後第7日におけるB2M陽性細胞の百分率を示すヒストグラム(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。E.上: B2M遺伝子座の概要図。この遺伝子座内のCpGアイランドが緑色で示されている。下: サイレンス化細胞および未処理細胞間の、示されている遺伝子の遺伝子発現レベルにおける変化倍率を示すヒストグラム。37以上のCt値を有する遺伝子は該分析から除外された。各遺伝子の相対発現レベルをHPRTに対して正規化し、未処理細胞(標準体)に対する変化倍率として表した。
【
図15】β2-ミクログロブリン(B2M)のサイレンシングは別のヒト細胞系において有効である。A.B2Mプロモーターの制御下でtd/Tomatoトランスジーンを挿入するために用いたCRISPR/Cas9系遺伝子標的化法の図(左側)。遺伝子標的化の前および後のK-562細胞の代表的なフローサイトメトリードットプロット(それぞれ右上および右下)。B.野生型(WT)またはコドン最適化エフェクタードメインを含有する示されているTALE系ATRをコードするプラスミドでのエレクトロポレーションの30日後のB2Mサイレンシング効率(すなわち、dtTomato陰性細胞)を示すヒストグラム(n=1)。C.示されているCRISPR/dCas9系ATRをコードするプラスミドでエレクトロポレーションされたK-562細胞のB2Mサイレンシング(dtTomato陰性細胞の%として測定されたもの)の動力学を示すグラフ(n=1)。D.(i)三重TALER:ATR組合せをコードするインビトロ転写mRNAでトランスフェクトされた後の選別されたtdTomato陰性細胞(左図およびドットプロット)、(ii)B2M gRNAのプラスミドと組合されたdCas9:Tet1をコードするプラスミドでトランスフェクトされた後の(i)からの細胞(左図およびドットプロット)の代表的なフローサイトメトリー分析(n=1)。
【
図16】β2-ミクログロブリン(B2M)のサイレンシングは初代Tリンパ球において有効である。A.実験ワークフロー図。B.三重TALE系ATRをコードするmRNAでエレクトロポレーションされたヒトTリンパ球におけるB2Mサイレンシングの動力学を示すグラフ(n=1)。C.処理の14日後の、示されているTリンパ球集団の代表的なフローサイトメトリードットプロット。示されているゲート内の細胞の百分率およびB2M MFIが示されている。
【
図17】Cas9およびTALE系ATRの両方での内因性遺伝子の有効なサイレンシングのためには単一ATR結合部位で十分である。A.上: B2M遺伝子のCpGアイランドを標的化するように選択されたgRNA(赤矢印)の相対位置を示すB2M遺伝子の図。下:K562 B2M
tdTomatoレポーター細胞系におけるCRISPR/dCas9系ATRプラスミドのエレクトロポレーションの18日後のB2Mサイレンシングの効率(tdTomato陰性細胞の%として計算されたもの)を示すヒストグラム(n=1)。B.左: DNAへのTALE系ATRの結合の図。3つの異なるDNA結合ドメイン(形態#1~#3; この図においてはRDV(Repeat Variable Diresidue)と称されている)のそれぞれが、3つの異なるエフェクタードメインの両方を備えている状態が、灰色の箱のなかに示されている。
図13Aに既に示されているとおり、3つの異なるRDVのそれぞれが別のエフェクタードメインを備えている状態がこの図の下に示されている。右: 示されているTALE系ATR組合せをコードするプラスミドでトランスフェクトされた後のtdTomato陰性細胞の百分率を示すヒストグラム(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。
【
図18】未標的化DNMT3Lの一過性発現は不応性細胞型におけるDNMT3A + KRAB系ATRのサイレンシング効率を改善しレスキューする。A.tetR:D3Lまたは非標的化完全長DNMT3Lコード化mRNAの存在下または非存在下で運搬された、示されているtetR系ATRをコードするインビトロ転写mRNAでのトランスフェクションの27日後のBリンパ芽球LV-TetO7レポーター細胞系のeGFPサイレンシングの百分率を示すヒストグラム(n=2; データは平均±範囲として表されている)。B.示されているTALE系ATRの相対配置および結合部位を示すB2M遺伝子座の図。各モジュールにはTALE系ATRのペアが結合しうることに注目されたい。更に、各モジュールにかんして、エフェクタードメインの相対順序が交換されうる。例えば、モジュール1に関しては、部位AにKRAB系ATRが結合することが可能であり、部位BにDNMT3A系ATRが結合することが可能であり、あるいはその逆も生じうる。C.単独で(上の行のプロット)または非標的化DNMT3Lと組合せて(下の行のプロット)運搬された、TALE系ATRの表示ペア(モジュール1またはモジュール2; ATRの結合の、2つの可能な相対順序で示されている)をコードするプラスミドでのトランスフェクションの21日後のHEK-293T細胞におけるB2Mサイレンシングの代表的なフローサイトメトリードットプロット。D.単独で又はdCas9:D3Lまたは非標的化完全長DNMT3Lコード化プラスミドと組合せて運搬された、示されているdCas9系ATRおよびコグネイトgRNA(
図13Eに示されているもの)をコードするプラスミドでのトランスフェクションの45日後のHEK-293T細胞のB2Mサイレンシングの百分率を示すヒストグラム(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。
【
図19】DNMT3Bの遺伝的不活性化は許容細胞系における三重ATR組合せのサイレンシング効率を増加させ、一方、非標的化DNMT3Bの一過性発現は不応性細胞型におけるDNMT3A + KRAB組合せのサイレンシング効率をレスキューする。A.ドキシサイクリン投与に際してCas9を条件的に発現させるために(左)、または関心のあるgRNAを発現させるために(右)使用したレンチウイルスベクターの図。B.i)
図5Aに記載されているレンチウイルスベクターが導入され、eGFP発現に関して純粋に近い状態まで選別されたeGFP陽性K-562細胞、ii)誘導性Cas9をコードするLV、およびDNMT3B-gRNAをコードするLV(後者のLVの導入のマーカーとしてΔLNGFRを使用した; 中央のプロット)が導入された、(i)からの細胞系(ついで、Cas9発現を活性化し、内因性DNMT3B遺伝子のコード領域を破壊するために、この第2の細胞系をドキシサイクリンに7日間さらしたことに注目されたい)、iii)二重tetR:K+tetR:D3A(右上のプロット)または三重tetR:K+tetR:D3A+tetR:D3L(右下のプロット)ATR組合せをコードするプラスミドでエレクトロポレーションされた、(ii)からの細胞の代表的なフローサイトメトリー分析。C.CRISPR/誘導性Cas9系によるDNMT3B遺伝子の遺伝的破壊の19日後のeGFPサイレンス化細胞の百分率を示すヒストグラム(n=1)。これらの数字は、ΔLNGFR陽性細胞(DNMT3Bの破壊を有する細胞; 赤色バー)およびΔLNGFR陰性細胞(野生型K-562細胞; 青色バー)におけるサイレンシング効率を計算することにより得られた。D.非標的化野生型DNMT3B配列をコードするmRNAの存在下または非存在下で運搬された、示されているtetR系ATRをコードするmRNAでのトランスフェクションの27日後のBリンパ芽球TetO7レポーター細胞系におけるサイレンシング効率(eGFP陰性細胞の%)を示すヒストグラム(データは2つの実験の平均として示されている)。
【
図20】追加的なヒト内因性遺伝子の持続的エピジェネティックサイレンシング(人工的転写リプレッサー(ATR)の組合せを使用するもの)。A.この遺伝子の2つの転写産物変異体を示すB細胞リンパ腫/白血病11A(BCL11A)遺伝子。破線付きボックスは遺伝子調節要素を強調表示している。特に、CpG残基のサイズおよび数が様々である4つの異なるCpGアイランドのクラスターを有する、転写開始部位のレベルにおける遺伝子プロモーター/エンハンサー領域(黄色ボックス)、ならびに第2イントロンの遺伝子内の遺伝子の系統限局性発現をもたらす赤血球特異的エンハンサー(赤色ボックス)。遺伝子プロモーターおよび赤血球特異的エンハンサーの両方の機能を調べるために、2A自己触媒性ペプチドを介してBCL11A転写産物に連結されたtdTomatoトランスジーンを該遺伝子の第3エキソン内に標的化した。tdTomato陽性細胞の選別の後のBリンパ芽球細胞の代表的なドットプロットが右側に示されている。B.示されているdCas9系ATR、およびBCL11Aの表示CpGアイランドを標的化するgRNAの対応プール(すなわち、CpG105に関する11個のgRNA、CpG31に関する8個のgRNA、CpG38に関する9個のgRNA、CpG115に関する10個のgRNA)でのトランスフェクションの32日後のtdTomato陰性細胞の百分率を示すヒストグラム(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。未処理細胞、またはgRNAのプールのみ又はdCas9系ATRのみでトランスフェクトされた細胞を対照として使用した。C.tdTomatoレポーター細胞系を、dCas9系ATRをコードするプラスミドの単独体または二重もしくは三重組合せ体、およびCpG38を標的化する9個のgRNAのプールのプラスミドまたはCpG31に対する8個のgRNAのプールのプラスミドでコトランスフェクトした。サイレンシング効率をトランスフェクションの2週間後に測定し、ヒストグラムとして表した(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。D.上: BCL11Aプロモーター領域のCpG31(左上)またはCpG31(右上)を標的化するTALE系ATRの結合部位、およびDNAへの結合のそれらの相対配向の図(+ はワトソン鎖を示し、- はクリック鎖を示す)。下: dtTomatoレポーター細胞系を、TALE:KRABをコードするプラスミドのみで、または該ヒストグラムのx軸上に示されている三重TALE系ATRの表示組合せでトランスフェクトした。サイレンシング効率はdTomato陰性細胞の百分率として示されている。プラスミドのトランスフェクションの18日後に分析を行った(n=3; データは平均±S.E.M.として表されている)。E.上: インターフェロン(アルファ、ベータおよびオメガ)受容体1(IFNAR1)遺伝子の図。緑色ボックスは遺伝子プロモーター/エンハンサー領域のレベルのCpGアイランドを強調表示している(CpG残基の番号が示されている)。下: IFNAR1 CpGアイランドに対する13個のgRNAのプールおよびdCas9:K+dCas9:D3A+dCas9:D3L ATRをコードするプラスミドでエレクトロポレーションされた細胞(処理の18日後)と未処理細胞との間のIFNAR1遺伝子の発現レベルの変化倍率を示すヒストグラム。IFNAR1遺伝子の相対発現レベルをDNMT1の発現に対して正規化し、未処理細胞(標準体)に対する変化倍率として表した(n=1)。F.上: 血管内皮増殖因子A(VEGFA)遺伝子の図。緑色ボックスは遺伝子プロモーター/エンハンサー領域のレベルのCpGアイランド(CpG残基の番号が示されている)を強調表示している。下: VEGFA CpGアイランドに対する3個のgRNAのプールおよびdCas9:K+dCas9:D3A+dCas9:D3L ATRをコードするプラスミドでエレクトロポレーションされた細胞(処理の14日後)と未処理細胞との間のVEGFA遺伝子の発現レベルの変化倍率を示すヒストグラム。VEGFA遺伝子の相対発現レベルをDNMT1の発現に対して正規化し、未処理細胞(標準体)に対する変化倍率として表した(n=1)。
【0118】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい特徴および実施形態を、ここに非限定的な例によって説明することとする。
【0119】
本発明の実施は、特に明記しない限り、化学、生化学、分子生物学、微生物学、および免疫学の従来の技術を用いるが、それは当業者の能力の範囲内である。そうした技術は文献において説明されている。たとえば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F.M. et al. (1995 and periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13 and 16, John Wiley & Sons; Roe, B., Crabtree, J., and Kahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; Polak, J.M., and McGee, J.O’D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice, Oxford University Press; Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; and Lilley, D.M., and Dahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照されたい。これらの一般テキストはいずれも参考として本明細書に含められる。
【0120】
ある態様において、本発明は、グループ(a)(b)または(c):
(a) KRABドメインもしくはそのホモログに作動しうるように連結された(機能しうる形で連結された)DNA結合ドメインを含有する人工転写リプレッサー(ATR);
(b) DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそれらのホモログに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインを含有するATR;および
(c) DNMT3Lドメインもしくはそのホモログに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインを含有するATR
から選択される、2つ以上のATR、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを含有する製品を提供するものであって、このATRの少なくとも2つは (a)、(b)もしくは(c)の同じでないグループ(異なる群)から選択される。
【0121】
本発明の製品(産物)は、たとえば、グループ(a)(b)または(c):(a) KRABドメインもしくはそのホモログに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインを含有するATR;(b) DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそれらのホモログに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインを含有するATR;および(c) DNMT3Lドメインもしくはそのホモログに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインを含有するATR、から選択される2つ以上のATR、またはそれらをコードするポリヌクレオチドを混合して含有する組成物とすることができるが、このATRの少なくとも2つは (a)、(b)もしくは(c)の同じでないグループから選択される。あるいはまた、製品は、たとえば、グループ(a)(b)または(c):(a) KRABドメインもしくはそのホモログに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインを含有するATR;(b) DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインまたはそれらのホモログに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインを含有するATR;および(c) DNMT3Lドメインもしくはそのホモログに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインを含有するATR、から選択される2つ以上のATR、またはそれらをコードするポリヌクレオチドの製剤を含んでなるキットであってもよく、このATRの少なくとも2つは (a)、(b)もしくは(c)の同じでないグループから選択されるが、キットはさらに必要に応じて、それを必要とする被験体に製剤を同時投与、連続投与、または個別投与するための説明書を含む。
【0122】
人工転写リプレッサー(ATR)は、標的遺伝子の転写を減少させるように作用する活性物質である。ATRは、エフェクタードメイン(たとえば、KRABドメイン、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメイン、またはDNMT3Lドメイン、あるいはそれらのホモログ)に作動しうるように連結されたDNA結合ドメインからなるキメラタンパク質とすることができる。DNA結合ドメインはATRと特定の核酸配列との結合を可能にするものであって、選択された核酸配列に結合するように操作することができる。エフェクタードメインは、標的遺伝子の転写抑制を可能にする触媒活性を保持しうる。その代わりに、またはそれに加えて、エフェクタードメインは細胞内の他の活性物質を標的遺伝子にリクルートすることができるので、その結果、標的遺伝子の転写抑制をもたらす。
【0123】
「作動しうるように連結される(機能しうる形で連結された)」ことによって、個々の構成成分は、それらがその機能(たとえば、DNAとの結合、反応を触媒すること、または細胞内から追加の活性物質をリクルートすること)を実質的に妨げられずに遂行することを可能にするようにつなぎ合わされると理解される。たとえば、DNA結合ドメインは、たとえば、融合タンパク質を形成するようにエフェクタードメインにコンジュゲートすることができる。ポリペプチドをコンジュゲートするための方法は、たとえばポリペプチドを繋ぐリンカータンパク質の提供など、当技術分野で知られている。当技術分野で知られているポリペプチドをコンジュゲートする別の方法には、化学的光誘発性コンジュゲーション法(たとえば化学的架橋剤を使用する)がある。ATRのDNA結合ドメインおよびエフェクタードメイン(たとえば、KRABドメイン、DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメイン、またはDNMT3Lドメイン、あるいはそれらのホモログ)は融合タンパク質を形成していることが好ましい。
【0124】
エフェクタードメイン
「エフェクタードメイン」という用語は、たとえば、DNAもしくはクロマチンに対する反応(たとえばDNAのメチル化)を触媒することによって、または細胞内から追加の活性物質をリクルートすることによって、標的遺伝子にサイレンシング効果をもたらす、ATRの一部分を指すと理解されるべきであって、結果として遺伝子の転写が抑制される。
【0125】
「ドメイン」はこの文脈では、一定の機能を保持するATRの一部分と理解されるべきである。ドメインは天然のタンパク質から分離された個別のドメイン(たとえば触媒ドメイン)とすることができるが、完全な全長天然タンパク質であってもよい。言い換えれば、全長タンパク質またはその機能断片をエフェクタードメインとして使用することができる。したがって、たとえば、「KRABドメイン」は、KRABドメインの機能を有するアミノ酸配列を含むATRの一部分を指す。
【0126】
内在性レトロウイルス(ERVs; Feschotte, C. et al. (2012) Nat. Rev. Genet. 13: 283-96; Leung, D.C. et al. (2012) Trends Biochem. Sci. 37: 127-33)の恒久的なエピジェネティックサイレンシングに関与することで知られているクロマチンリモデリング酵素は、本発明の実施に適したエフェクタードメインを提供することができる。
【0127】
Znフィンガータンパク質を含有するKruppel-associated boxファミリー(KRAB-ZFP;Huntley, S. et al. (2006) Genome Res. 16: 669-77)は、内在性レトロウイルスのサイレンシングに重要な役割を果たす。こうした転写因子は、そのZFPのDNA結合ドメインを介して特異的なERV配列に結合する一方で、その保存されたKRABドメインによってKRAB Associated Protein 1 (KAP1)をリクルートする。KAP1はさらに、抑制的なクロマチンの局所的形成を促す多数のエフェクターと結合する(Iyengar, S. et al. (2011) J. Biol. Chem. 286: 26267-76)。
【0128】
初期胚発生において、KAP1は、転写抑制と関連する2つのヒストンマークであるヒストンH3リジン-9ジメチル化およびトリメチル化(それぞれH3K9me2およびH3K9me3)を蓄積させる、ヒストンメチルトランスフェラーゼであるSET domain bifurcated 1 (SETDB1)をリクルートすることで知られる。同時に、KAP1は、ヘテロクロマチンタンパク質1α(HP1α)と結合するが、これはH3K9me2およびH3K9me3を読み取り、KAP1含有複合体を安定化する。KAP1はまた、他の周知のエピジェネティックサイレンサー、たとえば、ヒストンH3リジン-4メチル化を除去することによって転写を阻害するリジン特異的ヒストン脱メチル化酵素1(LSD1)、ならびにヒストンからアセチル基を除去するヌクレオソームリモデリング・脱アセチル化酵素複合体(NURD)と相互作用することができる。最終的に、KAP1含有複合体は、新規DNAメチルトランスフェラーゼ3A(DNMT3A)のリクルートメントに寄与するが、これはCpG部位においてシトシンをメチル化する(Jones, P.A. (2012) Nat. Rev. Genet. 13: 484-92)。同時に、これらのデータは、着床前胚において、KAP1複合体がヒストン修飾酵素およびDNA結合ドメインメチル化の協奏的作用を通じてERVサイレンシングを確実にもたらすというモデルを示唆する。そこで、着床後KRAB-ZFPによってERVに向けてあらかじめ標的化されたDNAメチル化は安定となり(Reik, W. (2007) Nature 447: 425-32)、ERV特異的KRAB-ZFPの持続的な発現の必要なしに、有糸分裂および体細胞分化を通じて受け継がれる。胚性幹細胞とは逆に、KAP1複合体は体細胞ではDNAメチル化を効率よく誘導することができず、H3K9メチル化を蓄積することしかできない。しかしながら、このヒストンマークは、KRAB-ZFPによって標的部位に持続的に蓄積されないと維持されない(Hathaway, N.A. et al. (2012) Cell 149: 1447-60)。
【0129】
したがって、体細胞におけるATRの一過性発現に基づくエピジェネティックな治療法を考えると、KRAB-ZFP/KAP1機構は、単独で用いられるなら機能しないと予想される。その一方で、2つの異なるATRを同時に導入する好ましい方法を検討する:一方はたとえば、胚性幹細胞においてERVに生じるエピジェネティックカスケードのイニシエーターであるKRABドメインを基本とし、もう一方はたとえば、このプロセスの最終ロックであるDNMT3Aを基本とする。このアプローチは、あらかじめ選択された標的遺伝子上で、着床前胚のERVにおいて確立された抑制的なクロマチンの状態を再現させ、その後恒久的に、哺乳類の発生および成人期を通じて受け継がれるようにすることができる。
【0130】
本発明のATRはたとえば、KRABドメインを含有することができる。さまざまなKRABドメインがKRAB-ZFPタンパク質ファミリーとして知られている。たとえば、本発明のATRは、ヒトZnフィンガータンパク質10(ZNF10; Szulc, J. et al. (2006) Nat. Methods 3: 109-16)のKRABドメインを含有することができる:
ALSPQHSAVTQGSIIKNKEGMDAKSLTAWSRTLVTFKDVFVDFTREEWKLLDTAQQIVYRNVMLENYKNLVSLGYQLTKPDVILRLEKGEEPWLVEREIHQETHPDSETAFEIKSSV
(配列番号1)
【0131】
本発明への使用に適したKRABドメインのその他の例には以下のものがある:
ITLEDVAVDFTWEEWQLLGAAQKDLYRDVMLENYSNLVAVGYQASKPDALFKLEQGEQLWTIEDGIHSGACS
(ZNF350タンパク質のKRABドメイン;配列番号2)
VMFEEVSVCFTSEEWACLGPIQRALYWDVMLENYGNVTSLEWETMTENEEVTSKPSSSQRADSHKGTSKRLQG
(ZNF197タンパク質のKRABドメイン;配列番号3)
VSFKDVAVDFTQEEWQQLDPDEKITYRDVMLENYSHLVSVGYDTTKPNVIIKLEQGEEPWIMGGEFPCQHSP
(RBAKタンパク質のKRABドメイン;配列番号4)
VKIEDMAVSLILEEWGCQNLARRNLSRDNRQENYGSAFPQGGENRNENEESTSKAETSEDSASRGETTGRSQKE
(ZKSCAN1タンパク質のKRABドメイン;配列番号5)
LTFKDVFVDFTLEEWQQLDSAQKNLYRDVMLENYSHLVSVGYLVAKPDVIFRLGPGEESWMADGGTPVRTCA
(KRBOX4タンパク質のKRABドメイン;配列番号6)
VTFEDVTLGFTPEEWGLLDLKQKSLYREVMLENYRNLVSVEHQLSKPDVVSQLEEAEDFWPVERGIPQDTIP
(ZNF274タンパク質のKRABドメイン;配列番号7)
【0132】
本発明のATRは、たとえば、ヒトDNAメチルトランスフェラーゼ3A(DNMT3A;Law, J.A. et al. (2010) Nat. Rev. Genet. 11: 204-20)のドメイン、好ましくは触媒ドメイン、を含有することができる。たとえば、本発明のATRは、配列:
TYGLLRRREDWPSRLQMFFANNHDQEFDPPKVYPPVPAEKRKPIRVLSLFDGIATGLLVLKDLGIQVDRYIASEVCEDSITVGMVRHQGKIMYVGDVRSVTQKHIQEWGPFDLVIGGSPCNDLSIVNPARKGLYEGTGRLFFEFYRLLHDARPKEGDDRPFFWLFENVVAMGVSDKRDISRFLESNPVMIDAKEVSAAHRARYFWGNLPGMNRPLASTVNDKLELQECLEHGRIAKFSKVRTITTRSNSIKQGKDQHFPVFMNEKEDILWCTEMERVFGFPVHYTDVSNMSRLARQRLLGRSWSVPVIRHLFAPLKEYFACV
(配列番号8)
を含有することができる。
【0133】
DNAメチルトランスフェラーゼ3Bおよび1(DNMT3BおよびDNMT1)はDNMT3Aと同様に、DNAメチル化の蓄積および維持の一因となり、本発明のATRにおいて同様に使用することができる。たとえば、本発明のATRは、以下の配列のいずれかを含有することができる:
CHGVLRRRKDWNVRLQAFFTSDTGLEYEAPKLYPAIPAARRRPIRVLSLFDGIATGYLVLKELGIKVGKYVASEVCEESIAVGTVKHEGNIKYVNDVRNITKKNIEEWGPFDLVIGGSPCNDLSNVNPARKGLYEGTGRLFFEFYHLLNYSRPKEGDDRPFFWMFENVVAMKVGDKRDISRFLECNPVMIDAIKVSAAHRARYFWGNLPGMNRPVIASKNDKLELQDCLEYNRIAKLKKVQTITTKSNSIKQGKNQLFPVVMNGKEDVLWCTELERIFGFPVHYTDVSNMGRGARQKLLGRSWSVPVIRHLFAPLKDYFACE
(ヒトDNMT3Bの触媒ドメイン;配列番号9)
MVAELISEEDLEFMKGDTRHLNGEEDAGGREDSILVNGACSDQSSDSPPILEAIRTPEIRGRRSSSRLSKREVSSLLSYTQDLTGDGDGEDGDGSDTPVMPKLFRETRTRSESPAVRTRNNNSVSSRERHRPSPRSTRGRQGRNHVDESPVEFPATRSLRRRATASAGTPWPSPPSSYLTIDLTDDTEDTHGTPQSSSTPYARLAQDSQQGGMESPQVEADSGDGDSSEYQDGKEFGIGDLVWGKIKGFSWWPAMVVSWKATSKRQAMSGMRWVQWFGDGKFSEVSADKLVALGLFSQHFNLATFNKLVSYRKAMYHALEKARVRAGKTFPSSPGDSLEDQLKPMLEWAHGGFKPTGIEGLKPNNTQPENKTRRRTADDSATSDYCPAPKRLKTNCYNNGKDRGDEDQSREQMASDVANNKSSLEDGCLSCGRKNPVSFHPLFEGGLCQTCRDRFLELFYMYDDDGYQSYCTVCCEGRELLLCSNTSCCRCFCVECLEVLVGTGTAAEAKLQEPWSCYMCLPQRCHGVLRRRKDWNVRLQAFFTSDTGLEYEAPKLYPAIPAARRRPIRVLSLFDGIATGYLVLKELGIKVGKYVASEVCEESIAVGTVKHEGNIKYVNDVRNITKKNIEEWGPFDLVIGGSPCNDLSNVNPARKGLYEGTGRLFFEFYHLLNYSRPKEGDDRPFFWMFENVVAMKVGDKRDISRFLECNPVMIDAIKVSAAHRARYFWGNLPGMNRPVIASKNDKLELQDCLEYNRIAKLKKVQTITTKSNSIKQGKNQLFPVVMNGKEDVLWCTELERIFGFPVHYTDVSNMGRGARQKLLGRSWSVPVIRHLFAPLKDYFACE
(DNMT3B;配列番号36)
LRTLDVFSGCGGLSEGFHQAGISDTLWAIEMWDPAAQAFRLNNPGSTVFTEDCNILLKLVMAGETTNSRGQRLPQKGDVEMLCGGPPCQGFSGMNRFNSRTYSKFKNSLVVSFLSYCDYYRPRFFLLENVRNFVSFKRSMVLKLTLRCLVRMGYQCTFGVLQAGQYGVAQTRRRAIILAAAPGEKLPLFPEPLHVFAPRACQLSVVVDDKKFVSNITRLSSGPFRTITVRDTMSDLPEVRNGASALEISYNGEPQSWFQRQLRGAQYQPILRDHICKDMSALVAARMRHIPLAPGSDWRDLPNIEVRLSDGTMARKLRYTHHDRKNGRSSSGALRGVCSCVEAGKACDPAARQFNTLIPWCLPHTGNRHNHWAGLYGRLEWDGFFSTTVTNPEPMGKQGRVLHPEQHRVVSVRECARSQGFPDTYRLFGNILDKHRQVGNAVPPPLAKAIGLEIKLCMLAKARESASAKIKEEEAAKD
(ヒトDNMT1の触媒ドメイン;配列番号10)
【0134】
本発明のATRは、たとえば、DNA(シトシン-5)-メチルトランスフェラーゼ3-like(DNMT3L)を含有することができるが、これは、DNMT3Aの触媒ドメインに結合することによってDNMT3Aを活性化する、触媒活性のないDNAメチルトランスフェラーゼである。たとえば、本発明のATRは、次の配列を含有することができる:
MAAIPALDPEAEPSMDVILVGSSELSSSVSPGTGRDLIAYEVKANQRNIEDICICCGSLQVHTQHPLFEGGICAPCKDKFLDALFLYDDDGYQSYCSICCSGETLLICGNPDCTRCYCFECVDSLVGPGTSGKVHAMSNWVCYLCLPSSRSGLLQRRRKWRSQLKAFYDRESENPLEMFETVPVWRRQPVRVLSLFEDIKKELTSLGFLESGSDPGQLKHVVDVTDTVRKDVEEWGPFDLVYGATPPLGHTCDRPPSWYLFQFHRLLQYARPKPGSPRPFFWMFVDNLVLNKEDLDVASRFLEMEPVTIPDVHGGSLQNAVRVWSNIPAIRSRHWALVSEEELSLLAQNKQSSKLAAKWPTKLVKNCFLPLREYFKYFSTELTSSL
(配列番号11)
【0135】
本発明のATRは、たとえば、SETDB1ドメインを含有することができる。たとえば、本発明のATRは、以下の配列のいずれかを含有することができる:
MSSLPGCIGLDAATATVESEEIAELQQAVVEELGISMEELRHFIDEELEKMDCVQQRKKQLAELETWVIQKESEVAHVDQLFDDASRAVTNCESLVKDFYSKLGLQYRDSSSEDESSRPTEIIEIPDEDDDVLSIDSGDAGSRTPKDQKLREAMAALRKSAQDVQKFMDAVNKKSSSQDLHKGTLSQMSGELSKDGDLIVSMRILGKKRTKTWHKGTLIAIQTVGPGKKYKVKFDNKGKSLLSGNHIAYDYHPPADKLYVGSRVVAKYKDGNQVWLYAGIVAETPNVKNKLRFLIFFDDGYASYVTQSELYPICRPLKKTWEDIEDISCRDFIEEYVTAYPNRPMVLLKSGQLIKTEWEGTWWKSRVEEVDGSLVRILFLDDKRCEWIYRGSTRLEPMFSMKTSSASALEKKQGQLRTRPNMGAVRSKGPVVQYTQDLTGTGTQFKPVEPPQPTAPPAPPFPPAPPLSPQAGDSDLESQLAQSRKQVAKKSTSFRPGSVGSGHSSPTSPALSENVSGGKPGINQTYRSPLGSTASAPAPSALPAPPAPPVFHGMLERAPAEPSYRAPMEKLFYLPHVCSYTCLSRVRPMRNEQYRGKNPLLVPLLYDFRRMTARRRVNRKMGFHVIYKTPCGLCLRTMQEIERYLFETGCDFLFLEMFCLDPYVLVDRKFQPYKPFYYILDITYGKEDVPLSCVNEIDTTPPPQVAYSKERIPGKGVFINTGPEFLVGCDCKDGCRDKSKCACHQLTIQATACTPGGQINPNSGYQYKRLEECLPTGVYECNKRCKCDPNMCTNRLVQHGLQVRLQLFKTQNKGWGIRCLDDIAKGSFVCIYAGKILTDDFADKEGLEMGDEYFANLDHIESVENFKEGYESDAPCSSDSSGVDLKDQEDGNSGTEDPEESNDDSSDDNFCKDEDFSTSSVWRSYATRRQTRGQKENGLSETTSKDSHPPDLGPPHIPVPPSIPVGGCNPPSSEETPKNKVASWLSCNSVSEGGFADSDSHSSFKTNEGGEGRAGGSRMEAEKASTSGLGIKDEGDIKQAKKEDTDDRNKMSVVTESSRNYGYNPSPVKPEGLRRPPSKTSMHQSRRLMASAQSNPDDVLTLSSSTESEGESGTSRKPTAGQTSATAVDSDDIQTISSGSEGDDFEDKKNMTGPMKRQVAVKSTRGFALKSTHGIAIKSTNMASVDKGESAPVRKNTRQFYDGEESCYIIDAKLEGNLGRYLNHSCSPNLFVQNVFVDTHDLRFPWVAFFASKRIRAGTELTWDYNYEVGSVEGKELLCCCGAIECRGRLL
(配列番号12)
VGCDCKDGCRDKSKCACHQLTIQATACTPGGQINPNSGYQYKRLEECLPTGVYECNKRCKCDPNMCTNRLVQHGLQVRLQLFKTQNKGWGIRCLDDIAKGSFVCIYAGKILTDDFADKEGLEMGDEYFANLDHIESVENFKEGYESDAPCSSDSSGVDLKDQEDGNSGTEDPEESNDDSSDDNFCKDEDFSTSSVWRSYATRRQTRGQKENGLSETTSKDSHPPDLGPPHIPVPPSIPVGGCNPPSSEETPKNKVASWLSCNSVSEGGFADSDSHSSFKTNEGGEGRAGGSRMEAEKASTSGLGIKDEGDIKQAKKEDTDDRNKMSVVTESSRNYGYNPSPVKPEGLRRPPSKTSMHQSRRLMASAQSNPDDVLTLSSSTESEGESGTSRKPTAGQTSATAVDSDDIQTISSGSEGDDFEDKKNMTGPMKRQVAVKSTRGFALKSTHGIAIKSTNMASVDKGESAPVRKNTRQFYDGEESCYIIDAKLEGNLGRYLNHSCSPNLFVQNVFVDTHDLRFPWVAFFASKRIRAGTELTWDYNYEVGSVEGKELLCCCGAIECRGRLL
(ヒトSETDB1の触媒ドメイン:配列番号13)
【0136】
本発明のATRは、たとえば、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に対して50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、そのアミノ酸配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
【0137】
本発明のATRは、たとえば、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13のタンパク質、または配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に対して50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%のアミノ酸同一性を有し、そのアミノ酸配列が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持しているようなタンパク質をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる可能性がある。
【0138】
本発明のATRはたとえば、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、そのアミノ酸配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持する。
【0139】
本発明のATRは、たとえば、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13のタンパク質、または配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%のアミノ酸同一性を有し、そのアミノ酸配列が配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持しているようなタンパク質をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされている可能性がある。
【0140】
DNA結合ドメイン
本発明のATRは、特定の核酸配列に結合してそのATRが、たとえば細胞のゲノムなどのポリヌクレオチド内の特定の部位を標的とすることを可能にする、DNA結合ドメインを含有する。DNA結合ドメインはたとえば、タンパク質、DNA、RNAに基づくか、または化学的なものとすることができる。
【0141】
いくつかの適当なDNA結合ドメイン、たとえば、転写活性化因子様エフェクター(TALE)ドメイン、およびZnフィンガータンパク質(ZEP)などが当技術分野で知られている(Gaj, T. et al. (2013) Trends Biotechnol. 31: 397-405)。
【0142】
テトラサイクリン調節性リプレッサー(tetR)DNA結合ドメイン、たとえば大腸菌(E. coli)tetR DNA結合ドメイン(Gossen, M. et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5547-51)を本発明のATRにおいて適当なDNA結合ドメインとして使用してもよい。tetR系がモデル系としての使用に特に好都合であるのは、それが標的ヌクレオチド配列であるテトラサイクリンオペロン(TetO)へのtetRの結合の、ドキシサイクリン(doxy)投与による時間的制御を可能にするからである。これによって、標的部位からのATRの遊離後もATRにより誘導されたクロマチンの状態を維持できるかどうかについての検討が可能になる。
【0143】
さらに、望ましい核酸配列に結合するようにDNA結合ドメインを操作するための方法が当技術分野で知られている。
【0144】
適当なTALEドメインの配列例には以下のものがある:
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVA(配列番号14)、その標的となる結合部位: 5′-TACCCAGATTGGCCCCACT-3′ (配列番号34)
および:
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPEQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHGLTPQQVVAIASNGGGRPALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVA(配列番号15)、その標的となる結合部位:5′-TACCTAGAGGAGAAAGGTT-3′ (配列番号35)。
【0145】
β2-ミクログロブリン遺伝子のプロモーター領域を標的とするようにデザインされたTALEドメインの配列例には次のものがある:
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNHGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG(配列番号16)、その標的となる結合部位:5′-TCTCTCCTACCCTCCCGCT-3′ (配列番号17)
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG(配列番号18)、その標的となる結合部位:5′-TGGTCCTTCCTCTCCCGCT-3′ (配列番号19)
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG (配列番号20)、その標的となる結合部位:5′-TCGCTCCGTGACTTCCCTT-3′ (配列番号21)。
【0146】
BCL11A遺伝子を標的とするようにデザインされたTALEドメインの配列例には次のものがある:
TALE BCL11A #1
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG(配列番号37)、その標的となる結合部位: 5′- TCCAAAAGCCAGTCTCACC -3′ (配列番号38)
TALE BCL11A #2
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG (配列番号39)、その標的となる結合部位:5′- TCTCCCCGGGAATCGTTTT -3′ (配列番号40)
TALE BCL11A #3
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNHGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG(配列番号41)、その標的となる結合部位: 5′- TCCTCCCGCTGCACACTTG -3′ (配列番号42)
TALE BCL11A #4
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG(配列番号43)、その標的となる結合部位: 5′- TAGTCATCCCCACAATAGT -3′ (配列番号44)
TALE BCL11A #5
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG(配列番号45)、その標的となる結合部位: 5′- TCCCGCTGCCTTTTGTGCC -3′ (配列番号46)
TALE BCL11A #6
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG(配列番号47)、その標的となる結合部位: 5′- TCCTCGCGCTTGCCCTCCC -3′ (配列番号48)
TALE BCL11A #7
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNHGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG(配列番号49)、その標的となる結合部位: 5′- TCCCCCGGCCCTAGCTCCT -3′ (配列番号50)
TALE BCL11A #8
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNHGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNHGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG (配列番号51)、その標的となる結合部位: 5′- TCCTGGTCCGCCCCCAGCA -3′ (配列番号52)
TALE BCL11A #9
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG (配列番号53)、その標的となる結合部位: 5′- TGCCGAGACCTCTTCTCGA -3′ (配列番号54)
TALE BCL11A #10
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASNNGGKQALETVKRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG (配列番号55)、その標的となる結合部位: 5′- TCGGCTTTGCAAAGCATTT -3′ (配列番号56)
TALE BCL11A #11
MGKPIPNPLLGLDSTGGMAPKKKRKVDGGVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVKYQDMIAALPEATHEAIVGVGKQWSGARALEALLTVAGELRGPPLQLDTGQLLKIAKRGGVTAVEAVHAWRNALTGAPLNLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNIGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNNGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQDHGLTPDQVVAIASNGGGKQALESIVAQLSRPDPALAALTNDHLVALACLGGRPALDAVKKGLPHAPALIKRTNRRIPERTSHRVAGSGGG (配列番号57)、その標的となる結合部位: 5′- TGCAAAGCCGAGTTTCACC -3′ (配列番号58)
TALE BCL11A #12
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TALE BCL11A #13
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TALE BCL11A #14
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TALE BCL11A #15
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TALE BCL11A #16
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TALE BCL11A #17
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【0147】
メガヌクレアーゼ(Silve, G. et al. (2011) Cur. Gene Ther. 11: 11-27)およびCRISPR/Casシステム(Sander, J.D. et al. (2014) Nat. Biotechnol. 32: 347-55)も本発明のATRの適当なDNA結合ドメインとして使用することができる。
【0148】
CRISPR/Casシステムは、ガイドRNAによるDNA結合システム(van der Oost et al. (2014) Nat. Rev. Microbiol. 12: 479-92)であって、Cas9ドメインを含有するATRが特定の配列を標的とするのを可能にするように、ガイドRNA(gRNA)を選択することができる。したがって、CRISPR/Casシステムを本発明のDNA結合ドメインとして使用するために、当然のことながら、ATRエフェクタードメインをCas9エンドヌクレアーゼに、作動しうるように連結することができる。好ましくは、ATRエフェクタードメインは、不活化されて実質的にヌクレアーゼ活性を持たないCas9エンドヌクレアーゼに、作動しうるように連結される。Cas9エンドヌクレアーゼを含有するATRは、1つもしくは複数のガイドRNA(gRNA)と組み合わせて標的細胞に導入することができる。ガイドRNAはATRを、目的とする標的遺伝子または標的遺伝子の調節エレメント(たとえばプロモーター、エンハンサーまたはスプライス部位)に向けて導くようにデザインされる。gRNAをデザインする方法は当技術分野で知られている。その上、まったく異質なCas9タンパク質、ならびにCas9/gRNAリボ核タンパク質複合体、およびさまざまなタンパク質と結合するgRNA構造/組成の改変が近年開発され、さまざまなエフェクタードメインを同時にしかも直接的に細胞の目標ゲノム部位に向けて標的化した(Esvelt et al. (2013) Nat. Methods 10: 1116-21; Zetsche, B. et al. (2015) Cell pii: S0092-8674(15)01200-3; Dahlman, J.E. et al. (2015) Nat. Biotechnol. 2015 Oct 5. doi: 10.1038/nbt.3390. [Epub ahead of print]; Zalatan, J.G. et al. (2015) Cell 160: 339-50; Paix, A. et al. (2015) Genetics 201: 47-54)が、これらは本発明での使用に適している。
【0149】
たとえば、本発明のATRは次の配列を含有することができる:
MGGRRVRWEVYISRALWLTREPTAYWLIEINTTHYRETQATGATMYPYDVPDYASPKKKRKVEASDKKYSIGLAIGTNSVGWAVITDEYKVPSKKFKVLGNTDRHSIKKNLIGALLFDSGETAEATRLKRTARRRYTRRKNRICYLQEIFSNEMAKVDDSFFHRLEESFLVEEDKKHERHPIFGNIVDEVAYHEKYPTIYHLRKKLVDSTDKADLRLIYLALAHMIKFRGHFLIEGDLNPDNSDVDKLFIQLVQTYNQLFEENPINASGVDAKAILSARLSKSRRLENLIAQLPGEKKNGLFGNLIALSLGLTPNFKSNFDLAEDAKLQLSKDTYDDDLDNLLAQIGDQYADLFLAAKNLSDAILLSDILRVNTEITKAPLSASMIKRYDEHHQDLTLLKALVRQQLPEKYKEIFFDQSKNGYAGYIDGGASQEEFYKFIKPILEKMDGTEELLVKLNREDLLRKQRTFDNGSIPHQIHLGELHAILRRQEDFYPFLKDNREKIEKILTFRIPYYVGPLARGNSRFAWMTRKSEETITPWNFEEVVDKGASAQSFIERMTNFDKNLPNEKVLPKHSLLYEYFTVYNELTKVKYVTEGMRKPAFLSGEQKKAIVDLLFKTNRKVTVKQLKEDYFKKIECFDSVEISGVEDRFNASLGTYHDLLKIIKDKDFLDNEENEDILEDIVLTLTLFEDREMIEERLKTYAHLFDDKVMKQLKRRRYTGWGRLSRKLINGIRDKQSGKTILDFLKSDGFANRNFMQLIHDDSLTFKEDIQKAQVSGQGDSLHEHIANLAGSPAIKKGILQTVKVVDELVKVMGRHKPENIVIEMARENQTTQKGQKNSRERMKRIEEGIKELGSQILKEHPVENTQLQNEKLYLYYLQNGRDMYVDQELDINRLSDYDVDAIVPQSFLKDDSIDNKVLTRSDKNRGKSDNVPSEEVVKKMKNYWRQLLNAKLITQRKFDNLTKAERGGLSELDKAGFIKRQLVETRQITKHVAQILDSRMNTKYDENDKLIREVKVITLKSKLVSDFRKDFQFYKVREINNYHHAHDAYLNAVVGTALIKKYPKLESEFVYGDYKVYDVRKMIAKSEQEIGKATAKYFFYSNIMNFFKTEITLANGEIRKRPLIETNGETGEIVWDKGRDFATVRKVLSMPQVNIVKKTEVQTGGFSKESILPKRNSDKLIARKKDWDPKKYGGFDSPTVAYSVLVVAKVEKGKSKKLKSVKELLGITIMERSSFEKNPIDFLEAKGYKEVKKDLIIKLPKYSLFELENGRKRMLASAGELQKGNELALPSKYVNFLYLASHYEKLKGSPEDNEQKQLFVEQHKHYLDEIIEQISEFSKRVILADANLDKVLSAYNKHRDKPIREQAENIIHLFTLTNLGAPAAFKYFDTTIDRKRYTSTKEVLDATLIHQSITGLYETRIDLSQLGGDSPKKKRKVG
(触媒活性のないCas9:配列番号22)
【0150】
本発明のATRはたとえば、配列番号22に対して50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含有することができるが、そのアミノ酸配列は配列番号22で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0151】
本発明のATRは、たとえば、配列番号22のタンパク質をコードするか、または配列番号22に対して50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%のアミノ酸同一性を有し、そのアミノ酸配列が配列番号22で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持しているタンパク質をコードする、核酸配列を含有するポリヌクレオチドによってコードされていてもよい。
【0152】
本発明のATRはたとえば、配列番号22に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含有することができるが、そのアミノ酸配列は配列番号22で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持している。
【0153】
本発明のATRは、たとえば、配列番号22のタンパク質をコードするか、または配列番号22に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%のアミノ酸同一性を有し、そのアミノ酸配列が配列番号22で表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持しているタンパク質をコードする、核酸配列を含有するポリヌクレオチドによってコードされていてもよい。
【0154】
β2-ミクログロブリン遺伝子を標的とするために使用されるガイドRNA(gRNA)によって認識されるゲノム標的部位の配列例には下記がある:
gRNA #1: TATAAGTGGAGGCGTCGCGC (配列番号23)
gRNA #2: GCCCGAATGCTGTCAGCTTC (配列番号24)
gRNA #3: TGCGTCGCTGGCTTGGAGAC (配列番号25)
gRNA #4: CCAATCAGGACAAGGCCCGC (配列番号26)
gRNA #5: AGGGTAGGAGAGACTCACGC (配列番号27)
gRNA #6: GCGGGCCACCAAGGAGAACT (配列番号28)
gRNA #7: GCTACTCTCTCTTTCTGGCC (配列番号29)
gRNA #8: CTCCCGCTCTGCACCCTCTG (配列番号30)
gRNA #9: TTTGGCCTACGGCGACGGGA (配列番号31)
gRNA #10: GGGGCAAGTAGCGCGCGTCC (配列番号32)
gRNA #11: TAGTCCAGGGCTGGATCTCG (配列番号33)
【0155】
β2-ミクログロブリン遺伝子を標的とするために使用されるガイドRNA(gRNA)の例には下記がある:
gRNA #1: UAUAAGUGGAGGCGUCGCGC
gRNA #2: GCCCGAAUGCUGUCAGCUUC
gRNA #3: UGCGUCGCUGGCUUGGAGAC
gRNA #4: CCAAUCAGGACAAGGCCCGC
gRNA #5: AGGGUAGGAGAGACUCACGC
gRNA #6: GCGGGCCACCAAGGAGAACU
gRNA #7: GCUACUCUCUCUUUCUGGCC
gRNA #8: CUCCCGCUCUGCACCCUCUG
gRNA #9: UUUGGCCUACGGCGACGGGA
gRNA #10: GGGGCAAGUAGCGCGCGUCC
gRNA #11: UAGUCCAGGGCUGGAUCUCG
【0156】
上記のgRNAはすべて、次の配列を有するgRNAスキャフォールドと融合することができる:
GUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU。
【0157】
BCL11A遺伝子を標的とするgRNAの配列例には以下のものがある:
CpG 105に対するgRNA #1:
GCCUUUCUGCAGACGUUCCC (配列番号71)
CpG 105に対するgRNA #2:
UGGGUGUGCGCCUUGGCCGG (配列番号72)
CpG 105に対するgRNA #3:
CGGUGGUGAGAUGACCGCCU (配列番号73)
CpG 105に対するgRNA #4:
GGAAUGUGCUCACGGCGCCG (配列番号74)
CpG 105に対するgRNA #5:
GACUGCCCGCGCUUUGUCCU (配列番号75)
CpG 105に対するgRNA #6:
CCAGAGUCUGGCCCCCGGAG (配列番号76)
CpG 105に対するgRNA #7:
UCUGCGACCCUUAGGAGCCG (配列番号77)
CpG 105に対するgRNA #8:
GAGCGCCCCGCCAAGCGACU (配列番号78)
CpG 105に対するgRNA #9:
CAAGUCUCCAGGAGCCCGCG (配列番号79)
CpG 105に対するgRNA #10:
CGCGGAAUCCAGCCUAAGUU (配列番号80)
CpG 105に対するgRNA #11:
CCCGCUGCGGAGCUGUAACU (配列番号81)
CpG 31に対するgRNA #1:
CGCUCCUGAGUCCGCGGAGU (配列番号82)
CpG 31に対するgRNA #2:
CACGGCUCUCCCCGUCGCCG (配列番号83)
CpG 31に対するgRNA #3:
CCGCCUUUUGUUCCGGCCAG (配列番号84)
CpG 31に対するgRNA #4:
GCGCGAGGAGCCGGCACAAA (配列番号85)
CpG 31に対するgRNA #5:
GCCACUUUCUCACUAUUGUG (配列番号86)
CpG 31に対するgRNA #6:
GCUGCCUCUGAGGUUCGGUC (配列番号87)
CpG 31に対するgRNA #7:
AAGGGCAGGAGCUAGGGCCG (配列番号88)
CpG 31に対するgRNA #8:
GAGCCCGGACUGCUGCCUCC (配列番号89)
CpG 38に対するgRNA #1:
GUUUACAAGCACCGCGUGUG (配列番号90)
CpG 38に対するgRNA #2:
AACAGACAGAGGACCGAGCG (配列番号91)
CpG 38に対するgRNA #3:
GGCGCCGGGUGGGCGAUCCG (配列番号92)
CpG 38に対するgRNA #4:
GGUCGGGCAAGGCCCGGGCG (配列番号93)
CpG 38に対するgRNA #5:
AAGAGGUCUCGGCAUUGUGC (配列番号94)
CpG 38に対するgRNA #6:
GUUCCACAGCUUCGGGACCGCG (配列番号95)
CpG 38に対するgRNA #7:
GAAAUCGGCUGGGUGAAACU (配列番号96)
CpG 38に対するgRNA #8:
GCAGUGUCUCCGCGCCAGCC (配列番号97)
CpG 38に対するgRNA #9:
CCUCCCCUCCCCUCCGCCCUGGG (配列番号98)
CpG 115に対するgRNA #1:
UCCUCCUGUCCCGGGGUUAAAGG (配列番号99)
CpG 115に対するgRNA #2:
CAUCUUUUGGGACACUCUAGGCUGG (配列番号100)
CpG 115に対するgRNA #3:
AAGUCAGGCCCUUCUUCGGAAGG (配列番号101)
CpG 115に対するgRNA #4:
GCAGCCUGGACUGCGCGCCCCGG (配列番号102)
CpG 115に対するgRNA #5:
UGCCCGGCGAUUCUCGUCCG (配列番号103)
CpG 115に対するgRNA #6:
UGAGCCAUUCGGUCGCUAGG (配列番号104)
CpG 115に対するgRNA #7:
GGUGGUACUGAGGACCGGGA (配列番号105)
CpG 115に対するgRNA #8:
AUUUUCUGGGUGCUCAGAGG (配列番号107)
CpG 115に対するgRNA #9:
UGGUCUCAGCUCGCGCACGG (配列番号108)
CpG 115に対するgRNA #10:
ACAAAGACAUACGGGGUGAU (配列番号109)
【0158】
IFNAR1遺伝子を標的とするgRNAの配列例には以下のものがある:
gRNA #1:AGGAACGGCGCGUGCGCGGA
gRNA #2:AAGAGGCGGCGCGUGCGTAG
gRNA #3:GGGCGGUGUGACUUAGGACG
gRNA #4:CCAGAUGAUGGUCGUCCUCC
gRNA #5:GACCCUAGUGCUCGUCGCCG
gRNA #6:UGGGUGUUGUCCGCAGCCGC
gRNA #7:ACGGGGGCGGCGAUGCUGUU
gRNA #8:GACCGAAGGUUUCCCAGACU
gRNA #9:GUCGGGUUUAAUCUUUGGCG
gRNA #10:CGCUCCCGAGGACCCGUACA
gRNA #11:CGGGUCCCACCCCCGUGAAA
gRNA #12:UCAAACUCGACACAAAGCUC
gRNA #13:GCGGAGCCGCGGUACUUUCC
【0159】
VEGFA遺伝子を標的とするgRNAの配列例には以下のものがある:
gRNA #1:GGCGCGCGCGCUAGGUGGGA
gRNA #2:AGAGAGGCUCACCGCCCACG
gRNA #3:GUACGUGCGGUGACUCCGGU
【0160】
上記のgRNAはすべて、次の配列を有するgRNAスキャフォールドと融合することができる:
GUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU。
【0161】
標的遺伝子の抑制
「標的遺伝子のサイレンシング」によって、標的遺伝子の発現は、求める効果を得るのに十分な程度まで減少すると理解される。その発現減少は治療的に意味のある効果、たとえば疾病の予防もしくは治療を達成するのに十分なものである可能性がある。たとえば、疾病を引き起こす機能不全標的遺伝子は、標的遺伝子の発現がない程度まで、または残存する標的遺伝子発現レベルが病状を改善もしくは予防するほど十分に低い程度まで、抑制されることが好ましい。
【0162】
発現減少は、遺伝子機能の低下または欠如した細胞を検討することによってその遺伝子機能に関する研究を可能にするのに十分である可能性がある。
【0163】
本発明の2つ以上のATRを投与した後、標的遺伝子の転写または発現のレベルは、たとえば、その2つ以上のATRがない場合の転写または発現レベルより、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%減少する可能性がある。
【0164】
本発明の2つ以上のATRは、標的遺伝子のサイレンシングに相乗効果を有することが好ましい。したがって、本発明の2つ以上のATRは、本明細書に記載のように使用したとき、相乗作用、たとえば治療上の相乗作用を示す可能性がある。
【0165】
たとえば、本発明の2つ以上のATRは、結果として、その2つ以上のATRを欠く(たとえば、一方のATRだけを含有するか、または異なる組み合わせのATRを含有する)細胞集団と比べて、標的遺伝子のサイレンシングを示す、2つ以上のATRを含有する細胞集団の割合の相乗的な増加をもたらす可能性がある。その代わりに、またはそれに加えて、本発明の2つ以上のATRは、結果として、その2つ以上のATRを欠く細胞集団と比べて、2つ以上のATRを含有する細胞集団において標的遺伝子がサイレンシングされている持続時間の相乗的な増加をもたらす可能性がある。
【0166】
標的遺伝子のサイレンシングは、本発明のATRの、細胞への一過性導入または細胞での一過性発現後に生じることが好ましい。
【0167】
「一過性発現」によって、ATRの発現は長期間にわたって安定はしないと理解される。ATRをコードするポリヌクレオチドは、宿主ゲノム内に組み込まれないことが好ましい。より具体的には、一過性発現は、ATRをコードするヌクレオチド配列を細胞に導入後、実質的に20週間以内に失われる発現とすることができる。好ましくは、発現は、ATRをコードするヌクレオチド配列を細胞に導入後、実質的に12、6、4、または2週間以内に失われる。
【0168】
同様に、「一過性導入」によって、ATRは実質的に長期間にわたって細胞内に残存しない(すなわち、細胞は実質的にそれを失う)と理解される。より具体的には、一過性導入は、ATRを細胞に導入後、実質的に20週間以内にATRが細胞から失われる状態をもたらすといえる。好ましくは、ATRは、ATRを細胞に導入後、実質的に12、6、4、または2週間以内に失われる。
【0169】
たとえばATRの標的である、遺伝子の転写を測定するための方法は、当技術分野で知られている。適当な方法としては、逆転写PCRおよびノーザンブロットに基づく方法がある。遺伝子の転写を測定する方法に加えて、遺伝子の発現を測定するための方法が当技術分野で知られている。他の適当な方法には、ウェスタンブロットに基づく方法またはフローサイトメトリー法がある。
【0170】
1つのATR、または複数のATRの組み合わせの効果は、たとえば細胞に内在する遺伝子である、標的遺伝子の転写もしくは発現を、ATRまたはATRの組み合わせが存在する状態および存在しない状態で比較することによって検討することができる。
【0171】
1つのATR、または複数のATRの組み合わせの効果はまた、たとえば蛍光タンパク質をコードする遺伝子である、レポーター遺伝子の発現をモニターするモデル系を用いて検討することもできる。このようなレポーター遺伝子の発現をモニターするために適当な方法には、フローサイトメトリー、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、および蛍光顕微鏡法がある。
【0172】
たとえば、レポーター遺伝子を保有するベクターを用いて細胞集団をトランスフェクトすることができる。ベクターは、そのベクターが細胞をトランスフェクトしたときにレポーター遺伝子が発現されるように構築することができる。適当なレポーター遺伝子としては、たとえば、緑色、黄色、サクランボ色、青緑色(cyan)、またはオレンジ色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質をコードする遺伝子がある。さらに、細胞集団を、目的のATRをコードするベクターでトランスフェクトすることができる。その後、レポーター遺伝子を発現する細胞数、および発現しない細胞数、ならびにレポーター遺伝子の発現レベルをFACSなどの適当な方法を用いて数値化することができる。レポーター遺伝子発現レベルをその後、ATR存在下および非存在下で比較することができる。
【0173】
標的遺伝子は恒久的にサイレンシングされることが好ましい。「恒久的サイレンシング」により、標的遺伝子の転写または発現は、2つ以上のATRが存在しない場合の転写もしくは発現レベルと比べて、少なくとも2ヶ月間、6ヶ月間、1年間、2年間、またはその細胞/生物の一生にわたって、減少する(たとえば100%減少する)と理解される。恒久的にサイレンシングされた標的遺伝子は、細胞寿命の残り期間の間ずっとサイレンシングされたままであることが好ましい。
【0174】
標的遺伝子は、本発明の2つ以上のATRが投与された細胞の子孫において、依然としてサイレンシングされている(すなわち標的遺伝子のサイレンシングが後代の細胞に継承される)ことが好ましい。たとえば、本発明の2つ以上のATRを幹細胞(たとえば造血幹細胞)に投与して幹細胞の標的遺伝子および幹細胞の子孫の標的遺伝子もサイレンシングすることができるが、この幹細胞の子孫には幹細胞から分化した細胞を含めることができる。
【0175】
標的遺伝子は、標的遺伝子それ自体に結合するか、または標的遺伝子の制御配列(たとえばプロモーターまたはエンハンサー配列)に結合するATRを用いて、サイレンシングすることができる。さらに、標的遺伝子それ自体のスプライス部位に結合するATRを使用することによって、標的遺伝子の選択的スプライシングを変更することができる。制御配列に結合するATRを使用することによって、標的遺伝子をサイレンシングできること、またはそのスプライシングバリアントを変更できることは、その他の遺伝子サイレンシング技術ではなし得ないことであり、本発明の著しい利点である。
【0176】
治療における使用
別の態様において、本発明は、治療用に、本発明の製品、人工転写リプレッサー(ATR)、ポリヌクレオチド、および細胞を提供する。
【0177】
治療における使用は、たとえば、βサラセミアまたは鎌状赤血球貧血の治療のための使用とすることができる。
【0178】
治療における使用は、たとえば、「普遍的に」同種移植可能な細胞を(たとえば、β2-ミクログロブリン、B2Mのサイレンシングにより)調製するための使用とすることができる。この使用はたとえば、造血幹細胞および/または前駆細胞(HSPC)の調製、全臓器移植、およびがん免疫療法に応用することができる。
【0179】
2つ以上のATRまたはそれらをコードするポリヌクレオチドは、(投与計画の一環として)同時に、組み合わせて、順次、または別々に、投与することができる。
【0180】
「同時に」ということによって、2つの薬剤は同時発生的に投与されるのに対して、「組み合わせて」という表現は、それらが同時ではなくても、同じ時間枠の中で治療に作用するように、それらが2つとも有効である時間枠の範囲内で「順次」投与されることを意味するために使用される、と理解される。したがって、最初に投与された薬剤の血中半減期が、2つの薬剤がいずれも治療上有効な量で同時に存在するような半減期であるとすれば、「順次」投与は、1つの薬剤を順々に、5分、10分、または数時間以内に投与することを許容する可能性がある。成分投与の間の時間遅延は、その成分の正確な性質、成分間の相互作用、およびそれぞれの半減期に応じてさまざまとすることができる。
【0181】
「組み合わせて」または「順次」とは対照的に、「別々に」は、一方の薬剤投与からもう一方の薬剤投与までの隔たりが重要な意味を持つこと、すなわち、最初に投与された薬剤が、第2の薬剤が投与されたときに、血流中に治療上有効な量として、もはや存在しない可能性があることを意味すると理解される。
【0182】
標的遺伝子
標的遺伝子は、サイレンシングすると治療効果を生じることが好ましい。
【0183】
例として、本発明の製品、人工転写リプレッサー(ATR)およびポリヌクレオチドを使用して、β2-ミクログロブリン(B2M)、BCL11A、KLF1、グロビン遺伝子、CCR5、CXCR4、TCR遺伝子、miR126、PDL1、CTLA4、COL1A1、ウイルス配列、およびがん遺伝子をサイレンシングすることができる。
【0184】
TCR遺伝子、PDL1およびCTLA4のサイレンシングによって、がん免疫治療法の有効性を高めることができる。
B2Mのサイレンシングによって、移植用の同種HSPC、T細胞、または間葉細胞を生成することができる。
【0185】
miR126のサイレンシングによって、造血幹細胞を注入する前または後に、よりプリミティブな造血幹細胞プールを増やすことができる。
【0186】
例として、本発明の製品、人工転写リプレッサー(ATR)、ポリヌクレオチドおよび細胞を、たとえば、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、コラーゲン異常症関連疾患、異常ヘモグロビン症、および三塩基リピート伸長に起因する疾患の治療に使用することができる。その上、本発明の製品は、病原体の生活環に必要となる病原体関連遺伝子産物または宿主遺伝子を不活化することによって、特定の感染性疾患(たとえばCCR5指向性HIV感染症)の治療または予防に使用することができる。
【0187】
それに加えて、またはその代わりに、本発明の製品、人工転写リプレッサー(ATR)、ポリヌクレオチドおよび細胞は、WO 1998/005635に記載の疾患の治療に有用となる可能性がある。参照を容易にするために、そのリストの一部をここに提供する:がん、炎症もしくは炎症性疾患、皮膚疾患、発熱、心血管系イベント、出血、凝固および急性期反応、悪液質、食欲不振、急性感染症、HIV感染、ショック状態、移植片対宿主反応、自己免疫疾患、再灌流傷害、髄膜炎、偏頭痛およびアスピリン依存性抗血栓症;腫瘍の増殖、浸潤および拡大、血管形成、転移、悪性腹水および悪性胸水;脳虚血、虚血性心疾患、変形性関節症、関節リウマチ、骨粗鬆症、喘息、多発性硬化症、神経変性、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化、脳卒中、血管炎、クローン病および潰瘍性大腸炎;歯周炎、歯肉炎;乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性潰瘍、表皮水疱症;角膜潰瘍、網膜症および手術創傷治癒;鼻炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、アナフィラキシー;再狭窄、鬱血性心不全、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化または内部硬化症。
【0188】
それに加えて、またはその代わりに、本発明の製品、人工転写リプレッサー(ATR)、ポリヌクレオチドおよび細胞は、WO 1998/007859に記載の疾患の治療に有用となる可能性がある。参照を容易にするために、そのリストの一部をここに提供する:サイトカインおよび細胞増殖/分化活性;免疫抑制もしくは免疫刺激活性(たとえば、ヒト免疫不全ウイルス感染などの免疫不全の治療;リンパ球増殖の制御;がんおよび多くの自己免疫疾患の治療を目的として、ならびに移植による拒絶反応の防止または腫瘍免疫の誘導のため);造血の制御、たとえば骨髄もしくはリンパ系疾患の治療;骨、軟骨、腱、靱帯および神経組織の成長促進、たとえば創傷治癒、熱傷、潰瘍および歯周病および神経変性の治療のため;卵胞刺激ホルモンの抑制または活性化(妊孕性の調節);遊走能/化学運動能(たとえば、損傷部位もしくは感染部位に特定の細胞型をリクルートするため);止血能および血栓溶解活性(たとえば、血友病および脳卒中を治療するため);抗炎症活性(たとえば、敗血症性ショックもしくはクローン病を治療するため);抗菌薬として;たとえば、代謝もしくは行動の調節物質;鎮痛薬として;特定の欠乏症の治療;人間医学または獣医学におけるたとえば乾癬の治療において。
【0189】
それに加えて、またはその代わりに、本発明の製品、人工転写リプレッサー(ATR)、ポリヌクレオチドおよび細胞は、WO 1998/009985に記載の疾患の治療に有用となる可能性がある。参照しやすいように、そのリストの一部をここに提供する:マクロファージ阻害活性および/またはT細胞阻害活性、およびそれによる抗炎症活性;抗免疫活性、すなわち、炎症に無関係の応答を含む、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答に対する阻害効果;マクロファージおよびT細胞の細胞外マトリックス成分およびフィブロネクチンへの接着能、ならびにT細胞においてアップレギュレートされたfas受容体発現の阻害;関節リウマチを含む関節炎、過敏症、アレルギー反応、喘息、全身性エリテマトーデス、膠原病および他の自己免疫疾患に関連する炎症;アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、アテローム硬化性心疾患、再潅流傷害、心停止、心筋梗塞、炎症性血管障害、呼吸窮迫症候群または他の心肺疾患に関連する炎症;消化性潰瘍、潰瘍性結腸炎および他の消化管疾患に関連する炎症、肝線維症、肝硬変または他の肝疾患、甲状腺炎または他の腺疾患、糸球体腎炎または他の腎および泌尿器疾患、耳炎または他の耳鼻咽喉科疾患、皮膚炎または他の皮膚疾患、歯周病または他の歯科疾患、精巣炎または精巣精巣上体炎、不妊症、精巣外傷または他の免疫関連精巣疾患、胎盤機能不全(placental dysfunction)、胎盤機能不全(placental insufficiency)、習慣性流産、子癇、子癇前症および他の免疫および/または炎症関連婦人科疾患、後部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、結膜炎、脈絡網膜炎、網膜ぶどう膜炎、視神経炎、眼内炎、例えば、網膜炎または嚢胞様黄斑浮腫、交感性眼炎、強膜炎、網膜色素変性症、変性性眼底疾患の免疫および炎症成分、眼の外傷の炎症成分、感染が原因の眼の炎症、増殖性硝子体網膜症、急性虚血性視神経症、例えば緑内障濾過手術後の過度の瘢痕化、眼内インプラントに対する免疫および/または炎症反応、ならびに他の免疫および炎症関連眼疾患、中枢神経系(CNS)または他の任意の器官において免疫および/または炎症の抑制が有益であると思われる自己免疫性の疾患もしくは病態もしくは障害に関連する炎症、パーキンソン病、パーキンソン病の治療に由来する合併症および/または副作用、AIDS関連認知症複合HIV関連脳症、デビック病、シデナム舞踏病、アルツハイマー病および他のCNSの変性疾患、病態または障害、ストークスの炎症成分、ポリオ後症候群、精神障害の免疫および炎症成分、脊髄炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎、脳脊髄炎、急性神経障害、亜急性神経障害、慢性神経障害、ギラン-バレー症候群、シデナム舞踏病、重症筋無力症、偽脳腫瘍、ダウン症候群、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、CNS圧迫もしくはCNS外傷もしくはCNS感染の炎症成分、筋萎縮および筋ジストロフィーの炎症成分、ならびに中枢神経系および末梢神経系の免疫および炎症関連疾患、病態または障害、外傷後炎症、敗血症性ショック、感染性疾患、手術の炎症性合併症または副作用、骨髄移植または他の移植の合併症および/もしくは副作用、たとえばウイルス担体の感染に起因する遺伝子治療の炎症性合併症および/または免疫合併症ならびに副作用、あるいはAIDSに伴う炎症などを含む望ましくない免疫反応および炎症の阻害、角膜、骨髄、器官、水晶体、ペースメーカー、天然もしくは人工皮膚組織などの、天然または人工の細胞、組織および器官を移植する場合に移植片拒絶を予防および/または治療する目的で、単球もしくはリンパ球の量を減少させることによって、体液性および/もしくは細胞性の免疫応答を抑制または阻害し、単球もしくは白血球の増殖性疾患、例えば白血病を、治療または改善すること。
【0190】
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAとすることができる。それらは一本鎖である場合も二本鎖である場合もある。当業者には当然のことながら、多数の異なるポリヌクレオチドが、遺伝暗号の縮重の結果として、同一のポリペプチドをコードすることがある。それに加えて、当然のことながら当業者は、常法によって、本発明のポリペプチドが発現されるべき任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映するように、本発明のヌクレオチドによりコードされたポリペプチド配列に影響を与えないヌクレオチド置換を行うことができる。
【0191】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用できる任意の方法によって改変することができる。そうした改変は、本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性または存続期間を向上させるために行うことができる。
【0192】
DNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドは、組換え技術によって、合成によって、または当業者に利用可能な任意の方法によって、作製することができる。
【0193】
比較的長いポリヌクレオチドは通常、組換え法で、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を用いて作製される。これには、クローン化したい標的配列に隣接するプライマー(たとえば約15~30ヌクレオチド)のペアを作製し、そのプライマーを、動物細胞もしくはヒト細胞から得られたmRNAもしくはcDNAと接触させて、求める領域の増幅をもたらす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実行し、(たとえば、アガロースゲルを用いて反応混合物を精製することによって)増幅された断片を単離して、増幅されたDNAを回収することが必要となる。プライマーは、増幅されたDNAを適当なベクターにクローニングできるように、適当な制限酵素認識部位を含有するようデザインすることができる。
【0194】
タンパク質
本明細書に記載の「タンパク質」という用語は、一本鎖ポリペプチド分子、ならびに複数ポリペプチド複合体を含むが、この複合体において個々の構成ポリペプチドは共有結合または非共有結合によって連結されている。本明細書に記載の「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、モノマーがアミノ酸であって、それらが互いにペプチド結合またはジスルフィド結合によって連結されているポリマーを指す。
【0195】
バリアント、誘導体、アナログ、ホモログおよび断片
本明細書で言及される具体的なタンパク質およびヌクレオチドに加えて、本発明は、それらのバリアント、誘導体、アナログ、ホモログ、および断片の使用も包含する。
【0196】
本発明に関して、任意の所与の配列のバリアントは、(アミノ酸残基か核酸残基かに関わらず)残基の特定の配列が、当該ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドがその内在的機能の少なくとも1つを実質的に保持するように改変されている配列である。バリアント配列は、天然に存在するタンパク質中にある少なくとも1つの残基に関する、付加、欠失、置換、修飾、置き換えおよび/または変異によって得ることができる。
【0197】
本発明のタンパク質もしくはポリペプチドに関して本明細書で使用される「誘導体」という用語は、結果的に得られたタンパク質もしくはポリペプチドがその少なくとも1つの内在する機能を保持しているとの条件で、その配列への、またはその配列からの、1つ(もしくは複数の)アミノ酸残基の任意の置換、変異、修飾、置き換え、欠失、および/または付加を含む。
【0198】
ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに関して本明細書で使用される「アナログ」という用語は、任意のミメティック、すなわち、それが模倣するポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの内在する機能のうち少なくとも1つを有する化合物を含む。
【0199】
典型的には、改変された配列が必要とされる活性もしくは能力を実質的に保持しているならば、1、2もしくは3から10ないし20置換までアミノ酸置換を行うことができる。アミノ酸置換には、天然に存在しないアナログの使用を含めることができる。
【0200】
本発明で使用されるタンパク質は、サイレントな変化を生じ、結果として機能的に同等なたんぱく質をもたらす、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有する可能性がある。内在する機能が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似に基づいて、計画的なアミノ酸置換を行うことができる。たとえば、負電荷を持つアミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸がある;正電荷を持つアミノ酸にはリジンおよびアルギニンがある;そして、類似した親水性値を有する無電荷極性頭部基を持つアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、およびチロシンがある。
【0201】
たとえば、以下の表に従って保存的置換を行うことができる。第2列の同じブロック内のアミノ酸、好ましくは第3列の同一行内のアミノ酸同士で置換することができる:
【0202】
本明細書で使用される「ホモログ」という用語は、野生型アミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列と一定の相同性を有するものを意味する。「相同性」という用語は、「同一性」と同等であるとみなすことができる。
【0203】
相同な配列は、対象の配列に対して、少なくとも50%、55%、65%、75%、85%、または90%同一といえるアミノ酸配列を含めることができるが、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一である。典型的には、ホモログは、対象のアミノ酸配列と同一の活性部位などを有する。相同性は類似性(すなわち類似した化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考えることもできるが、本発明に関しては、配列同一性の観点で相同性を表現することが好ましい。
【0204】
相同配列は、対象の配列に対して、少なくとも50%、55%、65%、75%、85%、または90%同一といえる核酸配列を含めることができるが、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一である。相同性は類似性(すなわち類似した化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考えることもできるが、本発明に関しては、配列同一性の観点で相同性を表現することが好ましい。
【0205】
本明細書に詳述される配列番号のいずれか1つの配列に対してパーセント同一性を有する配列への言及は、言及された配列番号の配列の完全長にわたって記載のパーセント同一性を有する配列のことをいう。
【0206】
相同性比較は、見比べて行うこともできるが、より一般的には、すぐに利用できる配列比較プログラムを用いて実行することができる。こうした商用のコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間のパーセント相同性もしくは同一性を計算することができる。
【0207】
パーセント相同性は、連続した配列にわたって計算することが可能であって、すなわち、一方の配列をもう一方の配列とアラインし、一方の配列の各アミノ酸をもう一方の配列の対応するアミノ酸と、一度に一残基ずつ直接比較する。これは、「ギャップのない」アラインメントと呼ばれる。一般に、こうしたギャップのないアラインメントは比較的少数の残基でしか行われない。
【0208】
これは非常に単純で一貫性のある方法であるが、たとえば、普通なら同一であるはずの配列ペアにおいて、ヌクレオチド配列における1つの挿入または欠失が、その後のコドンにアラインメントからのずれを生じさせて、その結果、グローバルアラインメントを行った場合に、パーセント相同性の大幅な減少をもたらす可能性があることを、考慮に入れることができない。このため、ほとんどの配列比較法は、全体の相同性スコアに過度のペナルティを与えることなしに挿入および欠失の可能性を考慮に入れる、最適なアラインメントを作成するように設計されている。これは、局所相同性を最大にするように、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入することによってなされる。
【0209】
しかしながら、こうしたより複雑な方法では、同数の同一アミノ酸について、できる限り少ないギャップを有する配列アラインメントが、2つの比較配列間で関係性が高いことを反映して、多くのギャップを有するものよりも高いスコアを得るように、アラインメント内に生じるそれぞれのギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てる。「アフィンギャップコスト」が通常用いられるが、これはギャップの存在に比較的高いコストを課し、ギャップ内に続く各残基に比較的小さいペナルティを課すものである。これは最も広く使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは当然、よりギャップの少ない最適化されたアラインメントをもたらすことになる。ほとんどのアラインメントプログラムはギャップペナルティを変更することができる。しかしながら、このようなソフトウェアを配列比較に使用する場合には、デフォルト値を使用することが好ましい。たとえば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合には、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティは、ギャップについて-12、各伸長については-4である。
【0210】
したがって、最大パーセント相同性の計算にはまず、ギャップペナルティを考慮した最適アラインメントの作成が必要である。このようなアラインメントを実行するのに適したコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A.; Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12: 387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ(Ausubel et al. (1999) ibid - Ch. 18を参照されたい)、FASTA(Atschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 403-410)およびGENEWORKSの比較ツール一式があるがそれらに限定されない。BLASTおよびFASTAはいずれも、オフラインおよびオンライン検索を利用できる(Ausubel et al. (1999) ibid、7-58から7-60ページを参照されたい)。しかしながら、用途によっては、GCG Bestfitプログラムを用いることが好ましいこともある。BLAST 2 Sequencesと呼ばれるもう一つのツールもタンパク質およびヌクレオチド配列の比較に利用することができる(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174: 247-50; FEMS Microbiol. Lett. (1999) 177: 187-8を参照されたい)。
【0211】
最終的なパーセント相同性は同一性の観点から測定することができるが、アラインメントプロセスはそれ自体、通常はall-or-nothingのペア比較に基づくものではない。その代わりに、化学的類似性または進化距離に基づいてそれぞれのペアワイズ比較にスコアを割り当てる、scaled similarityスコア行列が使用される。通常使用されるこうした行列の例は、BLASTプログラム一式のデフォルト行列であるBLOSUM62である。GCG Wisconsinプログラムは一般に、公開のデフォルト値、または、指定されていればカスタムシンボル比較表のいずれかを使用する(さらなる詳細についてはユーザーマニュアルを参照されたい)。用途によっては、GCGパッケージ用の公開デフォルト値を使用することが好ましいが、他のソフトウェアの場合には、BLOSUM62などのデフォルト行列を使用することが好ましい。
【0212】
ソフトウェアが最適アラインメントを作成したら、パーセント相同性、好ましくはパーセント配列同一性を計算することができる。ソフトウェアは通常、これを配列比較の一環として行い、計算結果をもたらす。
【0213】
「断片」はバリアントでもあって、この用語は典型的には、機能上、またはたとえばアッセイ上で関心対象となる、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの選択された領域を指す。したがって、「断片」は、全長ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの一部分である、アミノ酸もしくは核酸配列を指す。
【0214】
このようなバリアントは、部位特異的変異誘発などの標準的な組換えDNA技術を用いて調製することができる。挿入を行う場合、挿入部位の両側の天然に存在する配列に対応する5'および3'隣接配列とともに挿入部をコードする、合成DNAを作製することができる。この隣接領域は, 天然に存在する配列を適当な1つもしくは複数の制限酵素で切断し、その切断部位に合成DNAをライゲートすることができるように、その配列内の部位に対応する好都合な制限酵素部位を含有する。次にDNAを本発明にしたがって発現させて、コードされたタンパク質を作製する。こうした方法は、DNA配列の操作に関する技術分野で知られている数多の標準技術の一例に過ぎず、他の既知技術も使用することができる。
【0215】
コドン最適化
本発明で使用されるポリヌクレオチドをコドン最適化することができる。コドン最適化はすでにWO 1999/41397およびWO 2001/79518に記載されている。異なる細胞は、特定のコドンの使用頻度に違いがある。こうしたコドンの偏りは、その細胞型における特定のtRNAの相対存在量の偏りに対応する。対応するtRNAの相対存在量と釣り合うように調整するために、配列内のコドンを変更することによって、発現を増加させることができる。同様に、特定の細胞型において対応するtRNAがまれにしか存在しないことが知られているコドンを意図的に選択することによって、発現を減少させることができる。こうして、追加的な翻訳制御が利用可能となる。
【0216】
ベクター
ベクターは、ある実体をある環境から別の環境に移動させることを可能にする、または促進するツールである。本発明によれば、一例としてであるが、組換え核酸技術で使用されるベクターには、核酸セグメント(たとえば、異種cDNAセグメントなどの異種DNAセグメント)のような実体を標的細胞に移動させることを可能にするものがある。ベクターは、異種核酸(DNAまたはRNA)を細胞内に維持し、核酸セグメントを含有するベクターの複製を促進し、または核酸セグメントによってコードされるタンパク質の発現を促進するという目的を果たすことができる。ベクターは非ウイルスまたはウイルスとすることができる。組換え核酸技術で使用されるベクターの例としては、プラスミド、mRNA分子(たとえば、in vitroで転写されたmRNA)、染色体、人工染色体、およびウイルスがあるがそれらに限定されない。ベクターはたとえば、ネイキッド核酸(たとえばDNA)であってもよい。もっとも単純な形としては、ベクターは目的の核酸そのものであってもよい。
【0217】
本発明で使用されるベクターはたとえば、プラスミド、mRNAまたはウイルスベクターとすることができるが、それはポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターを含有してもよく、場合によってはプロモーターの制御因子を含んでいてもよい。
【0218】
本発明で使用されるポリヌクレオチドを含有するベクターは、トランスフェクション、形質転換、および形質導入などの、当技術分野で知られているさまざまな技法を用いて細胞内に導入することができる。いくつかのこのような技術、たとえば、レトロウイルス、レンチウイルス(たとえば組込み欠損レンチウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルスおよび単純ヘルペスウイルスベクターなどの組換えウイルスベクターによる感染;核酸のダイレクトインジェクション、およびバイオリスティック(微粒子銃)形質転換などが知られている。
【0219】
非ウイルスデリバリーシステムにはDNAトランスフェクション法があるがこれに限定されない。このトランスフェクションには、標的細胞に遺伝子を導入するために非ウイルスベクターを使用するプロセスが含まれる。典型的なトランスフェクション法には、エレクトロポレーション、DNA微粒子銃(バイオリスティック法)、脂質によるトランスフェクション、コンパクト化DNAによるトランスフェクション、リポソーム、イムノリポソーム、リポフェクション、陽イオン性物質によるトランスフェクション、陽イオン性表面両親媒性物質(CFA)(Nat. Biotechnol. (1996) 14: 556)、およびそれらの組み合わせがある。
【0220】
「トランスフェクション」という用語は、ウイルスデリバリーと非ウイルスデリバリーの両者による細胞へのポリヌクレオチドデリバリーを含んでいると理解されるべきである。
【0221】
タンパク質導入法
細胞にポリヌクレオチドを導入する代わりに、本発明の製品および人工転写リプレッサー(ATR)をタンパク質導入によって細胞に導入することができる。
【0222】
タンパク質導入はベクターデリバリーによって行うことができる(Cai, Y. et al. (2014) Elife 3: e01911; Maetzig, T. et al. (2012) Curr. Gene Ther. 12: 389-409)。ベクターデリバリーは、細胞に導入されるタンパク質を含有するようにウイルス粒子(たとえばレンチウイルス粒子)を操作する必要がある。したがって、操作されたウイルス粒子がその自然のライフサイクルの一環として細胞に入るときに、その粒子に含まれるタンパク質が細胞内に運ばれる。
【0223】
タンパク質導入はタンパク質デリバリーによって行うことができる(Gaj, T. et al. (2012) Nat. Methods 9: 805-7)。タンパク質デリバリーはたとえば、伝達媒体(たとえばリポソーム)を利用することによって、またはタンパク質自体を細胞に直接投与することによっても、実現することができる。
【0224】
医薬組成物
本発明の製品、人工転写リプレッサー(ATR)、ポリヌクレオチド、および細胞を、被験体に投与するために、製薬上許容される基剤、賦形剤、または添加剤とともに製剤することができる。適当な基剤および賦形剤には等張食塩水、たとえばリン酸緩衝食塩水があるが、これはヒト血清アルブミンを含有することもある。
【0225】
細胞療法製品の取扱いは、細胞療法のためのFACT-JACIE国際基準(FACT-JACIE International Standards)にしたがって行われることが好ましい。
【0226】
キット
ある態様において、本発明は、グループ(a)、(b)または(c)から選択される2つ以上の人工転写リプレッサー(ATR)またはそれをコードするポリヌクレオチドを含んでなるキットを提供するが、このATRのうち少なくとも2つは異なるグループ(a)、(b)または(c)から選択される:(a) KRABドメインに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインもしくはそのホモログを含有するATR;(b) DNMT3A、DNMT3BもしくはDNMT1ドメインに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインまたはそのホモログを含有するATR;ならびに(c) DNMT3Lドメインに作動しうるように連結されたDNA結合ドメインもしくはそのホモログを含有するATR。
【0227】
2つ以上のATRまたはそれをコードするポリヌクレオチドは、適当な容器に入れて提供することができる。
【0228】
キットは、使用説明書、たとえば2つ以上のATRまたはそれをコードするポリヌクレオチドを、それを必要とする被験体に、同時に、順次、または別々に投与するための説明を含めることができる。
【0229】
治療方法
当然のことながら、治療に関する本明細書の言及はすべて、根治的、対症的、および予防的治療を含む;ただし、本発明の文脈において予防への言及は、より広く予防的治療に関連付けられる。哺乳類、特にヒトの治療が好ましい。ヒトおよび動物の治療はいずれも本発明の範囲に含まれる。
(実施例)
【実施例0230】
発生時に内在性レトロウイルス(ERV)を恒久的にサイレンシングする、内在的エピジェネティックメカニズムを再現するために、ヒトZnフィンガータンパク質10(ZNF10;Szulc, J. et al. (2006) Nat. Methods 3: 109-16)のKruppel-associated box(KRAB)ドメイン、およびヒトDNAメチルトランスフェラーゼ3A((DNMT3A; Law, J.A. et al. (2010) Nat. Rev. Genet. 11: 204-20)の触媒ドメインを使用した。これらのドメインのアミノ酸配列を表1に示す。
【0231】
上記2つのエフェクタードメインによって引き起こされる遺伝子サイレンシングの活性および安定性を調べるために、テトラサイクリン(tet)応答系を用いた。2つのエフェクタードメインを、別々に、大腸菌(E. coli)テトラサイクリン調節リプレッサー(tetR)のDNA結合ドメイン(Gossen, M. et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5547-51)と融合させて、tetR:KRABおよびtetR:DNMT3A人工転写リプレッサー(ATR、以下それぞれ、tetR:KおよびtetR:D3A と称する)を作製した。tetR系の利点は、その標的ヌクレオチド配列であるテトラサイクリンオペロン(TetO)へのtetRの結合をドキシサイクリン(doxy)投与により時間的に制御できる点である。これによって、標的遺伝子座からATRが遊離した後にATRによって誘導されたクロマチン状態が維持されるかどうか調べることが可能となる。
【0232】
ATRの活性を迅速に評価するために、ATRの活性をフローサイトメトリーによって容易に経時的に観察することができる細胞実験モデルを考案した(
図1)。具体的には、PPP1R12C 遺伝子(Lombardo, A. et al. (2011) Nat. Methods 8: 861-9;AAVS1座位としても知られる)の最初のイントロン内に、eGFP発現カセットとそれに続くTetOの7つのタンデムリピート(TetO7;
図1、いちばん上の概略図)のホモ挿入を含有するように操作された、K562細胞の単一細胞由来クローンを作製した。このレポーター構築物におけるeGFPマーカーの発現は、普遍的に発現されるヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(hPGK)遺伝子プロモーターによって得られる。このレポーター細胞株を以後AAVS1/TetO7細胞株と称することとする。
【0233】
ATRの発現時に、こうしたキメラタンパク質は、そのtetR DNA結合ドメインを介してTetO7エレメントに結合し、最終的に、近隣のクロマチン上に抑制的エピジェネティックマークの蓄積をもたらす(hPGKプロモーター上の赤いロリポップとして示される;
図1、中段の概略図)。これはカセットの転写サイレンシングを引き起こす。ドキシサイクリン投与によってATRがTetO7エレメントから条件に基づいて遊離される際に、抑制マークは内在する細胞内機構によって、消し去られるか、または子孫細胞に遺伝的に伝えられるかのいずれかであり、したがって、それぞれ、eGFP発現の転写再活性化、または恒久的なサイレンシングをもたらす(
図1、いちばん下の図)。このような実験モデルの使用の大きな利点は:i) フローサイトメトリー分析でeGFP発現を観察することによってATRの活性を迅速かつ容易にモニターすることができること;ならびにii) こうしたクローンはカセットのホモ挿入を含有するように操作されたので、サイレンシングが組込み部位およびその近傍にある遺伝子に及ぼす、エピジェネティックな転写上の影響を、未改変の野生型遺伝子座の区別しがたい影響を受けることなく、検討することができる点である。
【0234】
新しいATRに生物活性があるかどうかを評価するために、双方向レンチウイルスベクターの標準的な組込みを用いて、tetR:KおよびtetR:D3AをAAVS1/TetO7細胞株に導入した(Amendola, M. et al. (2005) Nat. Biotechnol. 23: 108-16; Bid.LV;
図2A)。このベクターの利点は、ATRおよびマーカー遺伝子(トランケート型低親和性神経成長因子受容体-ΔLNGFR-、または単量体オレンジ-mOrange-)が同一プロモーターから構成的に同時発現されることであって、したがって、サイレンシングの分析をもっぱら、ATRを発現する細胞に限定することができる点である。
【0235】
要約すると、記載された実験設定によって、ATR候補のTetO7カセットへの構成的結合が、近傍のクロマチン上に抑制的エピジェネティックマークを蓄積させることができるかどうか、ならびにレポーターカセットの転写サイレンシングを引き起こすことができるかどうかを調べることができる。この場合、その後ドキシサイクリン投与によってATRの結合を条件に基づいて遊離させることで、人工的に引き起こされた抑制マークが内在機構によって、その後消去される(したがって、転写再活性化をもたらす)か、または子孫細胞に遺伝的に伝えられる(したがって、恒久的に遺伝的に引き継がれるエピジェネティックサイレンシングが確立されたことを示す)かどうかを識別することが可能となる。
【0236】
分子特性解析に基づいて、ドキシサイクリン存在下または非存在下で、Bid.LV-tetR:KまたはBid.LV-tetR:D3Aのいずれか一方を用いて、AAVS1/TetO7細胞株に形質導入し、その後、この培養条件で最長200日間維持した。この間、細胞は定期的にフローサイトメトリーにより分析し、Bid.LV導入細胞集団の中のeGFP陰性(eGFP-)細胞のパーセンテージを測定した。
図2Bに示す通り、ATRのTetO7配列への構成的結合(doxy-条件)は最終的に、2つのATRの間で動態は異なるが、形質導入細胞の100%においてeGFPサイレンシングをもたらした。具体的には、tetR:K形質導入細胞は急速にeGFP-となり(
図2B、左のヒストグラム)、この効果は形質導入のレベルとは無関係であった(
図2C、左のフローサイトメトリードットプロット)。一方、tetR:D3Aによるサイレンシングは、それより有意に遅かった(
図2B、右のヒストグラム)。この場合、マーカー遺伝子の発現レベルが高い細胞(おそらくはベクターコピー数VCNの多い細胞)が、まずサイレンシングされたが(
図2C、右のフローサイトメトリードットプロット)、これは、より早い抑制を確保するために、tetR:D3Aの一定レベルの発現が必要であることを示す。重要なことは、もっと遅い時点で(約200日)、フローサイトメトリー分析から、eGFPの平均蛍光強度(MFI)がサイレンシングされた細胞と野生型(WT)K562細胞との間で重ね合わせられることが判明した(
図2CのMFIを比較する)ことであって、それはeGFP発現の完全なサイレンシングを示す。ドキシサイクリンが培養物中に存在する場合(doxy+条件)、形質転換細胞はまったくeGFPをサイレンシングしなかったので、サイレンシングを引き起こすためには標的配列へのATRの結合が必要であることが示された。総じて、上記データは、2つのATRが異なる動態でサイレンシングを引き起こしているが、いずれのATRも機能的であることを示している。
【0237】
次に、遺伝子座からATRを遊離することで、結果としてeGFP再活性化が生じるかどうかを評価した。この目的のために、Bid.LV導入後21日にeGFP細胞を選別した後、この細胞をさらに170日間ドキシサイクリン存在下または非存在下で培養した。興味深いことに、ドキシサイクリン投与は、使用されたATRに応じて、2つの正反対の結果をもたらした:tetR:Kによって引き起こされるサイレンシングは、細胞集団全体において、急速に(ドキシサイクリン投与後15日以内に)そして完全に消え去る(
図2D、左のヒストグラムおよびその下の代表的なフローサイトメトリー分析);一方、tetR:D3Aによって引き起こされるサイレンシングは実験期間を通じて変化しないままであった(
図2D、右のヒストグラムおよびその下の代表的なフローサイトメトリー分析)。これは、それを抑制するために遺伝子座において継続して活性でなければならないtetR:Kとは反対に、tetR:D3Aは、最初の刺激がない状態でも内在する細胞内機構によって恒久的に伝えることができる抑制的なエピジェネティック修飾を確立することができることを明確に示す。この相違は、体細胞において、KRABに基づく機構は効果的に(安定して遺伝させることができる)DNAメチル化を引き起こすことができず、H3K9メチル化などの可逆的なエピジェネティックマークのみを蓄積するという事実によって説明することができる(Hathaway, N.A. et al. (2012) Cell 149: 1447-60)。
【0238】
概して、これらの実験は、tetR:D3AのTetO7エレメントへの結合が存在しなくても、レポーターカセットのサイレンシングを、数代の細胞世代にわたって変化しないまま維持できることを明確に示す。その一方で、TetO7エレメントからのtetR:Kの条件的遊離は、tetR:K形質導入細胞においてeGFP発現の急速で完全な再活性化をもたらす。
【0239】
DNAメチル化は、tetR:D3によって引き起こされる恒久的なサイレンシングの維持に関与する
DNAメチル化がtetR:D3によって引き起こされる抑制状態の維持に必要であるかを理解するために、
図2Dのドキシサイクリン-条件から得られたeGFP- 細胞を、5-アザ-2′-デオキシシチジン(5-Aza)または溶媒(すなわちジメチルスルホキシド、DMSO)のいずれかで処理した後、フローサイトメトリーで分析してeGFP発現を測定した。5-Azaは、DNAに取り込まれた後、DNAメチルトランスフェラーゼによって基質として認識されるシトシンアナログであって、それはシトシンとは違って分解されない共有結合を確立するので、DNMT活性をブロックする(Issa, J.P. et al. (2005) Nat. Rev. Drug Discov. Suppl. S6-7)。
図2Eに示すように、5-Azaによる処理は結果として、eGFP発現の完全な再活性化をもたらした。予想通り、DMSO処理はeGFPサイレンシングを変化させず、培養物中のeGFP+ 細胞はセルソーティング手順から混入した細胞であった。
【0240】
tetR:Kとは異なり、tetR:D3Aによって引き起こされる抑制は標的遺伝子座に限定される
安全なエピジェネティック治療法に必要な要件の1つは、望ましい標的遺伝子の周囲の遺伝子にサイレンシングが広がってはならないということである。ここで留意すべきことは、AAVS1座位へのレポーターカセットの部位特異的組込みによって、レポーターカセット組込み部位の近傍に組み込まれた遺伝子の発現に及ぼす、本発明のサイレンシングプラットフォームの影響を容易に分析できるようになるということである。したがって、AAVS1組込み部位にある遺伝子およびその近傍の遺伝子の発現レベル(
図3A)を、
図2から得られたeGFP- 細胞と、未処理のAAVS1/TetO7細胞株との間で比較する。
【0241】
tetR:Kで形質導入されたeGFP- 細胞は、分析した遺伝子のすべてを有意にダウンレギュレートしたが(
図3B、左のヒストグラム;データは平均±SEMとして表す、n=3)、それは、このATRが少なくとも340 kb(ATR結合部位の両側に約170kb)も広がることができる抑制マークを蓄積することを示す。この知見は、体細胞株で実施された以前の研究と一致し、tetR:Kが、H3K9me3 の長距離にわたる広がりによってATR結合部位から数十キロベース離れた位置にあるプロモーターをサイレンシングすることができることを示している(Groner, A.C. et al. (2010) PLoS Genet. 6: e1000869)。重要なことに、tetR:D3Aによって形質導入され、ドキシサイクリンと共に増殖させたeGFP- 細胞を分析すると、eGFP遺伝子だけが、またそれほどではないがPPP1R12C遺伝子(その最初のイントロンにおいてレポーターカセットのホストとなる)も、有意なダウンレギュレーションを示し(
図3B、右のヒストグラム; データは平均±SEMとして表す、n=3;***p<0.0001ならびに**p<0.001、一元配置分散分析およびBonferroni事後検定)、非常に限局されたエピジェネティック抑制を示した。
【0242】
概括すると、上記の実験によれば、tetR:Kは急速にロバストな転写抑制を引き起こし、長距離にわたって広がることができるが、その遺伝子座からのATR遊離により可逆性がある。その一方で、tetR:D3Aはもっとゆっくりした速度でサイレンシングを引き起こすが、転写抑制は標的遺伝子座にはっきりと限定され、初期刺激がなくても恒久的に維持される。
【0243】
一過性同時導入による複数のATRの相乗活性
次に、上記の2つのATRの一過性同時導入が、(tetR:Kのように)急速で、(tetR:D3Aのように)恒久的なエピジェネティックサイレンシングを十分に引き起こすことができるかどうかを検討した。この問題に答えるために、これらのATRを単独でコードするか、または組み合わせてコードする、いずれかのプラスミドを用いてAAVS1/TetO7細胞をトランスフェクトした後、経時的なフローサイトメトリー分析によって前記細胞におけるeGFP発現を追跡した。こうした実験の代表例を
図4Aに示し、ここで、指定のATRをコードしたプラスミドでトランスフェクトされた細胞における、eGFP発現カセットのサイレンシングの動態(eGFP- 細胞の%;データは平均±SEMとして表す、n=3)を報告するが、対応するフローサイトメトリードットプロット分析は実験の終了時に実施される。これらの分析から、下記が判明した:i) tetR:KまたはtetR:D3Aのいずれか一方をコードしたプラスミドでトランスフェクトされた細胞はいずれもeGFP陰性とはならなかったが、ただしtetR:Kの一過性導入はトランスフェクション後10日までには対照レベルまで速やかに戻る、短い抑制の高まりと関連していた(この後者のデータはH3K9me3の一過性の蓄積を示し、その後tetR:Kをコードするプラスミドが細胞分裂によって希釈されることに伴って消失した);ならびにii) 驚くべきことに、tetR:KおよびtetR:D3Aをコードするプラスミドで同時形質導入された細胞の最大20%が、安定にサイレンシングされた状態となった。これらのデータにより、DNMT3Aに基づくリプレッサーとKRABに基づくリプレッサーの間に有意な相乗性が明らかになったが、それはATRの一過性同時導入による恒久的エピジェネティックサイレンシングの最初の証明を示している。
【0244】
次に、tetR:K/tetR:D3Aの組み合わせによって引き起こされるサイレンシングが、レポーターカセットに限定されるか、そうでなければAAVS1座位に沿って広がるかどうか、したがってレポーターカセットの挿入部位の近傍の遺伝子に影響を与えるかどうかを調べた。この問題に答えるために、AAVS1挿入部位(遺伝子座の概略図を
図3Aに示す)にある遺伝子およびその近傍の遺伝子の発現プロファイルを、tetR:K/tetR:D3A処理条件から選別されたeGFP陰性集団とeGFP陽性集団との間で比較した。こうした分析において、この処理が結果としてレポーター導入遺伝子のみの有意なサイレンシングをもたらすことが判明した(
図4B;データは平均±SEMとして表す、n=3;**p<0.001、一元配置分散分析およびBonferroni事後検定)。これらの重要なデータは、tetR:K/tetR:D3Aの組み合わせが、目的の標的遺伝子においてのみ区切りのあるエピジェネティックサイレンシングを蓄積することを示し、本方法の安全性を強調する。最終的に、tetR:K/tetR:D3A 条件から得られたeGFP陰性選別細胞の5-Azaによる処理は、こうした細胞においてeGFP発現を完全に再活性化させたので(
図4C;データは平均±SEMとして表す、n=3;***p<0.0001、両側独立t検定)、DNAメチル化がこうした抑制のエピジェネティック状態を維持するのに重要な役割を果たしていることを示す。同様の結果が、AAVS1/TetO7レポーター細胞株を、ATRをコードするin vitro転写mRNAでトランスフェクトすることによっても判明した(
図4D)。驚くべきことに、これらの実験で測定されたサイレンシングの程度は、プラスミドトランスフェクションで測定されたものより約2倍高く、おそらくmRNAトランスフェクションにより達成される、より優れた忍容性およびより高い発現レベルを反映していた。遺伝子発現解析によれば、eGFPおよびその遺伝子を内包するeGFPレポーターカセット(すなわちPPP1R12C)だけが、処理によってダウンレギュレートされた(
図4E;データは平均±SEMとして表す、n=3;***p<0.0001ならびに*p<0.01、一元配置分散分析およびBonferroni事後検定)。
【0245】
ATRの組み合わせによるサイレンシングは遺伝子座および細胞型に依存しない
2つのATRが、たとえ一過性に細胞に導入された場合でも恒久的なサイレンシングを引き起こすことが判明したので、この効果が遺伝子座に依存しないかどうかを調べた。たしかに、エピジェネティック治療法の有効性は、標的遺伝子座が埋め込まれたクロマチン環境に依存する可能性があり、理論上は、ある遺伝子座が他の遺伝子座より、特定の抑制機構に対して不応性である可能性がある。たとえば、ある公開された根拠から、H3K4メチル化に富む座位はDNAメチル化から保護される可能性があることが示唆されている(Ooi, S.K. et al. (2007) Nature 448: 714-7)。これと一致して、標的座位またはその隣接領域に天然に存在する内在性エピジェネティック因子は、ATRの活性を妨げる可能性があるが、標的遺伝子の当初の生理的エピジェネティックプロファイルを回復させる可能性もある。
【0246】
この問題に対処するために、TetO7配列をeGFP発現カセットのhPGKプロモーターの上流に挿入し、次にこの構築物を、標準的なレンチウイルスベクター形質導入によってK562細胞のゲノム内にセミランダムに導入した(使用したプロウイルスの概略図を
図5Aに示す)。その後、eGFP発現細胞を純粋となるまで選別し(以後TetO7.LVレポーター細胞株と称する)、それを、tetR:KもしくはtetR:D3Aを単独で、または組み合わせてコードする in vitro転写mRNAでトランスフェクトした。この細胞の経時的フローサイトメトリー分析(
図5B;データは平均±SEMとして表す、n=3;***p<0.0001、二元配置分散分析およびBonferroni事後検定)から次のことが明らかになった:i) tetR:D3A をコードするmRNAでトランスフェクトされた細胞の最大で32%が、徐々にeGFP陰性となり、トランスフェクション後2週間で抑制のプラトーに達した;ii) tetR:Kをコードするプラスミドでトランスフェクトされた細胞の最大80%が急速にeGFP陰性となったが、その後すぐにこうした細胞の大半がeGFP発現を再活性化した(AAVS1/TetO7細胞株で実施された実験とは異なり、細胞の最大19%はeGFP陰性のままであった);ならびにiii) 驚くべきことに、tetR:K/tetR:D3AをコードするmRNAによって同時トランスフェクトされた細胞の最大80%が、恒久的にサイレンシングされた状態となった。興味深いことに、遺伝子導入後短期間にtetR:K条件とtetR:K/tetR:D3A条件との間で同等のサイレンシング効率を記録したとしても、2つの要因の組み合わせのみが、高レベルの恒久的エピジェネティックサイレンシングをもたらした。同様の結果は、TetO7/eGFPカセットのランダム挿入を有するU937細胞においても認められた(
図5C)。しかしながらこの場合、すべての処理条件に対するサイレンシングの効率は、K562細胞で得られたものより低く、ただしこれら2つの細胞型の間の全体としてトランスフェクション効率は同等であった。予想外なことに、TetO7/eGFPカセットのランダム挿入を含有するBリンパ芽球様細胞において同様の実験を行ったところ、長期間安定なサイレンシングは、tetR:D3Aによって処理される条件でのみ観察された(
図5D;データは平均±SEMとして表す、n=3;***p<0.0001、二元配置分散分析およびBonferroni事後検定)。上記実験のすべての結果に反して、複数のATRの組み合わせによって引き起こされるサイレンシングは一過性であり、tetR:K処理条件下で測定されたものと重ね合わせることができる動態を示した。
【0247】
概括すると、これらの結果は、2つのATRの標的部位がレンチウイルスベクターのアクセス可能な、さまざまな細胞型のゲノムの全体にわたって、ランダムに分布している場合にも、それら2つのATRがエピジェネティック抑制の安定状態の確立に協同して作用することを明確に示しており、したがって、サイレンシングメカニズムは遺伝子座に依存しないことを示す。それにもかかわらず、これらの研究は、いくつかの細胞固有の要因がこれらのタンパク質のin vivo活性を調整できることを示唆する。
【0248】
本発明のプラットフォームのサイレンシング効率を増加させることができる新規ATRの同定
ATRの一過性発現による恒久的なエピジェネティックサイレンシングについての本発明者らの知見に対する最初の証明を上記データが提供するが、そうしたデータはまた、いくつかの細胞固有の要因がこれらのタンパク質のin vivo活性を調整できることも示している。たとえば、U937細胞株において低レベルのサイレンシングが観察されること、ならびにBリンパ芽球様細胞ではATRの組み合わせについて予想外のサイレンシング活性の欠如が認められることは、サイレンシングプロセスに関与するコファクターが存在しないこと、または細胞型に特有のリプレッサーが存在することによって、説明できる可能性がある。このため、本発明の混合物にさらに別のATRを含有することは、それらのATRが低濃度で存在する場合でも、コファクターがないことを回避することによって、または抑制複合体の適正な機能を可能にすることによって、KRAB/DNMT3A組み合わせのサイレンシング効率を高めるために有用であるかもしれない。したがって、恒久的なエピジェネティック抑制状態の確立に関与するクロマチンリモデリング酵素由来の他のエフェクタードメイン(またはそれらの組み合わせ)を、本発明のATRのサイレンシング効率を高めるために使用することができるかどうか検討した。この目的に向けて、DNMT3AもしくはKRAB-ZFPタンパク質の既知の相互作用(Chen, T. et al. (2014) Nat. Rev. Genet. 15: 93-106)、ならびに、より広範に、細胞運命特定および発生の転写調節に関与する分子(Schwartz, Y.B. et al. (2013) Nat. Rev. Genet. 14: 853-64)に関する文献を利用することによって、次の候補を特定した:
・ユークロマチンヒストンリジンN-メチルトランスフェラーゼ2(EHMT2、G9aとしても知られる):ヒストンH3リジン-9のジメチル化を触媒し、いくつかのヒストン脱アセチル化酵素をリクルートするヒストンメチルトランスフェラーゼ;
・SET domain bifurcated 1 (SETDB1):ヒストンH3リジン-9のジメチル化およびトリメチル化を蓄積するヒストンメチルトランスフェラーゼ(転写抑制に関係する2つのヒストンマーク);
・Chromobox protein homolog 5 (CBX5、HP1αとしても知られる):ヒストンH3K9meを認識して結合し、エピジェネティック抑制をもたらす、ヘテロクロマチンの構成成分;
・DNA (シトシン-5)-メチルトランスフェラーゼ3-like (DNMT3L):DNMT3Aの触媒ドメインに結合することによってそれを活性化する、触媒活性のないDNAメチルトランスフェラーゼ;
・Enhancer of Zeste homolog 2(EZH2):ポリコーム抑制複合体2の触媒サブユニット、これはヒストンH3のリジン-9およびリジン-27をメチル化して、従来型ポリコーム抑制複合体1のための結合部位を作製する;
・Suppressor of variegation 4-20 homolog 2 (SUV420H2):ヒストンH4のリジン-20を特異的にトリメチル化するヒストンメチルトランスフェラーゼ(セントロメア周辺のヘテロクロマチンにおいて転写抑制に関係する特異的ヒストンマーク):
・Transducin-like enhancer protein 1 (TLE1):多くの転写因子に結合してその活性を阻害するクロマチン結合性転写コリプレッサー。
【0249】
上記タンパク質のエフェクタードメインおよびtetRのDNA結合ドメインを含有する新たなATRを作製した。以下、新規ATRは、tetR:SET (SETDB1);tetR:H (HP1-α);tetR:T (TLE1);tetR:GSもしくはtetR:GL(G9aからクローニングされたエフェクタードメインの長さに応じて);tetR:ESもしくはtetR:EL(EZH2からクローニングされたエフェクタードメインの長さに応じて);tetR:D3L (DNMT3L);およびtetR:SUV (SUV420H2)と称することとする。エフェクタードメインのアミノ酸配列は表1に記載する。
【0250】
はじめに、標準的なBid.LV組込みを用いることで、LV/TetO7 K562レポーター細胞株において上記の新規ATRの活性を調べ、新しいATRの中で、tetR:SET、tetR:GSおよびtetR:Hが、個別に安定して発現されたときに効果的にサイレンシングを引き起こすことが判明した(
図6A;データは平均±SEMとして表す、n=3)。しかしながら、これらのATRはいずれも、tetR:KおよびtetR:D3Aのサイレンシング効率には到達しなかった。tetR:GSとは異なり、tetR:GLはこの実験設定では有効でなかったが、それは、この比較的長い型のG9aの中にアンキリンリピートが含まれることが、サイレンシング効率に悪影響を及ぼすことを示唆する。この実験設定でtetR:T、tetR:SUV、tetR:ESおよびtetR:ELが無効であるのは、選択されたドメインが本来生物学的に活性がないため、または上記タンパク質の活性に必要な内在性相互作用物質がこの細胞株に存在しないためであるかもしれない。さらに、使用したATRの一部について、時間と共に形質導入細胞のパーセンテージが減少することが判明した(
図6B;データは平均±SEMとして表す、n=3)。このデータは、ATRを安定して発現する細胞の増殖の不利を示しており、したがってATRを安全に発現させるために一過性導入法を使用することについて論理的根拠を裏付ける。
【0251】
次に、新規ATRによって引き起こされたサイレンシングが、標的座位にATRが存在しなくても維持されるかどうかを評価した。この目的のために、Bid.LV-ATR形質導入の18日後に、サンプルをドキシサイクリンで処理し、eGFP発現をフローサイトメトリー分析によってモニターした(
図6C;データは平均±SEMとして表す、n=3)。予想される通り、tetR:D3Aによって引き起こされるサイレンシングはドキシサイクリン投与後も維持された。他のサンプルを考慮すると、サイレンシングは、当初抑制された細胞の一部においてのみ維持され、それはATRによってさまざまであった。具体的には、tetR:Kによって引き起こされるサイレンシングは他より安定した結果をもたらし、当初抑制された細胞の最大45.8%で維持された。これはAAVS1/TetO7 K562レポーター細胞株を用いて観察された結果とは対照的であって、この細胞株ではドキシサイクリン投与の7日後にeGFPはすべての形質導入細胞において完全に再活性化された。このデータは、hPGKプロモーターに対するTetO7の位置づけ、および/またはカセットが組み込まれているエピジェネティック環境が、tetR:Kによって引き起こされる抑制状態の維持に重要な役割を果たすという点で役割を示唆する。
【0252】
次に、同じLV/TetO7 K562レポーター細胞株において一過性導入時のATRの有効性を検討した。具体的には、ATRを個別に(
図7A)またはtetR:D3A(
図7B)、tetR:K(
図7C)、もしくはtetR:K+tetR:D3Aの組み合わせ(
図7D)と組み合わせて、検討した。陽性対照で測定されたレベルを超えるサイレンシング効率の最終的な増加をより正しく理解するために、これらの実験はATR発現プラスミドの非飽和用量を用いて実施した。tetR:Tをこの実験で調べなかったのは、実験の時点で他のATRと同じプラスミド骨格がtetR:Tには利用できなかったためである。
【0253】
フローサイトメトリーによって経時的に処理細胞におけるeGFP発現を追跡することによって、個別に発現させた場合には、ATRはいずれも有効にサイレンシングを引き起こさず、tetR:K、tetR:D3A、およびtetR:SETは細胞の1%以下しか抑制しないことが判明した(
図7A;データは平均±SEMとして表す、n=3)。tetR:D3Aと組み合わせると(
図7B;データは平均±SEMとして表す、n=3)、新規ATRはすべて、サイレンシング効率の増加を与えた。しかしながら、tetR:K+tetR:D3A条件で測定されたものと同様の効率は、tetR:D3AをtetR:SETまたはtetR:D3Lのいずれかと組み合わせた場合にのみ達成された。さらに、tetR:Kと同時導入した場合(
図7C;データは平均±SEMとして表す、n=3)、新規ATRの中でtetR:D3Lだけが、tetR:D3Aより大きい相乗作用を与えた。最終的に、新規ATRのうち1つをtetR:K+tetR:D3Aの組み合わせに加えると(
図7D;データは平均±SEMとして表す、n=3)、ほとんどのATRはサイレンシング効率を高めたので、安定的ではあるが個別に導入した場合に機能しないATRについても、生物活性が示された(
図6A)。重要なことに、この実験は、tetR:K+tetR:D3A+tetR:D3Lの組み合わせを最良の組み合わせと確認したが、そのことは、この実験で用いられた低いプラスミド用量を考慮すると、めざましい効率を示している。具体的には、tetR:K+tetR:D3A+tetR:D3Lの組み合わせは、tetR:K+tetR:D3Aの組み合わせと比べて、4.1倍のサイレンシング効率の増加をもたらした(
図7E;データは平均±SEMとして表す、n=3;***p<0.0001、一元配置分散分析およびBonferroni事後検定)。tetR:D3A+tetR:D3L、tetR:K+tetR:D3A、およびtetR:D3L+tetR:Kの組み合わせと比較したサイレンシング効率の増加を考慮すると、3つのATRはすべて、tetR:K+tetR:D3A+tetR:D3L混合物において適切な役割を果たしている。興味深いことに、tetR:SETがtetR:D3AおよびtetR:D3A+tetR:Kの両者と相乗作用することができるという確証を発端として(
図7Eを参照されたい)、さらに低いATR用量で同様の実験をリロードして、tetR:SETはtetR:D3A+tetR:D3Lの組み合わせとも有意に相乗作用することができることが明らかになった(
図7F;tetR:D3LはtetR:Lと表示)。このデータは、tetR:D3A+tetR:D3L+tetR:SETの組み合わせが、たとえサイレンシング効率が低くても、tetR:D3A+tetR:D3L+tetR:Kの組み合わせの有効な代わりとなりうることを示す。
【0254】
tetR:D3LをtetR:K+tetR:D3Aの組み合わせに含めることで、不応性細胞型においてサイレンシング効率を回復させることができる
そこで、tetR:K+tetR:D3A+tetR:D3Lの組み合わせの使用がBリンパ芽球様細胞で見られるブロックを乗り越えることができるかどうかを調べた(
図5Dを参照されたい)。この問題に対処するために、TetO7.LVレポーターBリンパ芽球様細胞株を、3つのATRをコードするin vitro転写mRNAを用いて、単独で、または異なる組み合わせで、トランスフェクトした(
図7G;tetR:D3AはtetR:Dと表示;tetR:D3LはtetR:Lと表示;データは平均±SEMとして表す、n=3)。過去の実験から予想されるように、tetR:K+tetR:D3A同時導入は、トランスフェクトされたmRNAが希薄化した後に完全に消える一過性のサイレンシングの高まりをもたらし、結果としてeGFP陰性細胞のない状態となった。しかしながら、tetR:D3A+tetR:D3LおよびtetR:D3L+tetR:Kはいずれも、高レベルのサイレンシングを引き起こすことができた(それぞれ50%および60%)。これらのレベルは、ATRが単独で導入された状態で観察されるレベルよりかなり高い(tetR:D3Aについては14%、tetR:KおよびtetR:D3Lトランスフェクト細胞については未処理サンプルと同等のレベル)。驚くべきことに、3つのATRをいっしょに導入すると、大半の細胞がeGFP陰性となったので(最大80%)、tetR:D3A/tetR:Kミックスに1つの要因を追加すると、かつて不応性であった細胞株においてサイレンシングの誘導および維持を十分に回復させられることが、明確に示された。これらの期待できる結果に基づいて、本発明のサイレンシングプラットフォームが、マウスなどの他の生物由来の実験上適切な細胞株において有効であるかどうかも調べた。この問題に答えるために、まず、TetO7.LVを用いてマウスNIH/3T3細胞に形質導入し、細胞を選別して、純粋なeGFP陽性集団を取得し(細胞当たり平均1コピーのベクターを含有する)、最後にその細胞を、tetRベースのATRをコードするmRNAでトランスフェクトしたが、それらは個別に、または組み合わせて、導入された。驚くべきことに、処理細胞のフローサイトメトリー分析は、この細胞モデルにおいても有効で長期的なサイレンシングを示した:tetR:D3A+tetR:D3Lまたは3つのATRの組み合わせの1回投与は、それぞれ45%または80%の遺伝子サイレンシング効率をもたらした(
図7H)。その一方で、tetR:D3A+tetR:Kの組み合わせは、Bリンパ芽球様細胞で以前観察されたように、機能しなかった。
【0255】
カスタムメイドDNA結合ドメインを有するATRの一過性同時導入による有効なサイレンシング
このプロジェクトの主な目標は、目的とする任意の遺伝子の発現をサイレンシングするために使用することができるエピジェネティック治療プラットフォームを開発することである。tetRと融合させると相乗的に協同作用してTetO7エレメント近傍のプロモーターをサイレンシングするエフェクタードメインをすでに特定したが、原核生物TetO7/tetR系の人工的な性質がこの技術の治療への応用を妨げる。その上、TetO7エレメントは、高い親和性で7つのtetR二量体を受け入れることができるので、このエレメント上で確率論的なATRのホモもしくはヘテロ二量体化をもたらす可能性がある。こうしたことが起こると、リプレッサー間相互の正の相互作用を助長する可能性がある。こうした理由から、TetO7/tetR系で得られた知見を、各ATRが単一でなおかつ独立した結合部位を標的遺伝子上に有するような状況に移し換えるために、いくつかの問題がまだ対処されずに残っている。なかでも、1つのエレメント(それぞれのリプレッサーの結合部位を含有する一定のゲノム配列として定義されるが、以下、「サイレンシングエレメント」と称する)が目的の遺伝子をサイレンシングするのに十分であるかは未解明である。さらに、2つのリプレッサーがサイレンシングエレメント上に配置される場合の相対的な順序および方向、ならびにそれらの結合部位間の距離は、抑制複合体の活性にとって重要な決定要因となるかもしれない。特に、これらの決定要因を、文献に基づいて、または内在性遺伝子上でそれを実験的に検討することによって明確にすることは、独自の結合部位および親和性を有するいくつかの異なるATRをデザインする必要があるため不可能である。
【0256】
これらの問題に対処するために、転写活性化因子様エフェクター(TALE; Gaj, T. et al. (2013) Trends Biotechnol. 31: 397-405)DNA結合ドメインを含有するATRのサイレンシング活性を容易にレポートする、当面の目的のために操作された細胞モデルを開発した。この一連の実験において、最初にtetR:K+tetR:D3Aの組み合わせに対応するATRを調べた。
【0257】
簡単に述べると、KRABおよびDNMT3Aドメインを、2つの異なるゲノム標的部位を高い効率で認識する2つのTALEのDNA結合ドメインに融合させた(2つのTALEのアミノ酸配列は表2に示す)。この方法によって、2つのゲノム標的部位のそれぞれに対応する2つのTALE:KRAB融合タンパク質(以下TALE:Kと称する)および2つのTALE:DNMT3A融合タンパク質(以下TALE:D3Aと称する)が得られた。並行して、2つのTALE標的部位を、段階的に長くなるヌクレオチド配列(5、10、15、20、25および30 bp)の間隔をおいて、eGFP発現カセットのhPGKプロモーターの上流に挿入した後、これらの構築物をセミランダムにK562細胞株のゲノムに、標準的なレンチウイルスベクター形質導入法によって導入した。特に、2つのTALEの標的部位は、TALE-リプレッサーの結合がヘッドトゥーテール(H-T)配置で生じるように、配置された。これらのベクターの概略図を
図8Aに示す(左側には、TALE:K→TALE:D3A配置の結合部位を含有するベクターを示す;右側には、TALE:D3A→TALE:K配置の結合部位を含有するベクターを示す)。次に、eGFP発現細胞を純粋となるまで選別し、この細胞株を、TALE:KもしくはTALE:D3Aを単独で、または組み合わせてコードするin vitro転写mRNAにより、トランスフェクトした。次にその細胞を、経時的フローサイトメトリーで分析し、サイレンシングの程度および持続時間を評価した。こうした分析の代表例を
図8に見ることができるが、ここで、スペーサーの長さに対する指定のATRのサイレンシング効率(eGFP陰性細胞の%)(
図8B;データは平均±SEMとして表す、n=3)、ならびに25 bpスペーサーを有する細胞株において測定されたeGFP発現カセットのサイレンシングの動態(
図8C;データは平均±SEMとして表す、n=3;***p<0.0001および**p<0.001、二元配置分散分析およびBonferroni事後検定)を報告する。
【0258】
これらの実験から、下記が判明した:i) TALE:D3AおよびTALE:Kを同時導入すると、処理細胞の最大25%においてeGFP発現カセットの完全なサイレンシングが生じた;ii) 標的座位における2つのATRの結合の相対的順序は、全体的なサイレンシング効率に影響を与え、TALE:D3A→TALE:Kの配置は反対の配置より2.2から5.4倍よく機能した;iii) 検討したスペーサーの長さの中で、25および30 bpが他より優れていた;ならびにiv) TALE:KまたはTALE:D3Aを個別に導入すると、eGFP発現カセットのサイレンシングはそれぞれ、低い(3%)か、または存在しないという結果となった。
【0259】
構造的な変数(たとえば、スペーサーの長さ、および標的配列上の2つのATRの結合の相対的順序)がサイレンシング効率に及ぼす有意な影響を考慮して、次に、2つのATRのC末端が互いに向き合うヘッドトゥーヘッド(H-H)配置への移行が本発明の戦略に有利であるかどうかを調べた。ヘッドトゥーテールからヘッドトゥヘッド配置へ移行するために、
図8に記載のレポーターカセットからはじめて、5' TALE結合部位が変化しないよう維持する一方、3' TALE結合部位の方向を変化させた。この単純な変更によって、以前の実験で使用した同じ4つのATRを使用することが可能になった。また、2つのTALE標的部位間のスペーサーの長さが異なる(5、10、15、20、25、および30 bp)6つのeGFPレポーターカセットも作製し、これらの構築物を、レンチウイルスベクター形質導入法によってK562細胞に導入した(このベクターの概略図を表9Aに示す)。形質導入細胞を次に、純粋なeGFP+集団が得られるように選別し、TALE:KまたはTALE:D3Aを単独で、または組み合わせてコードするプラスミドを用いて、エレクトロポレーションで形質転換した。その後、処理細胞を経時的フローサイトメトリーで分析して、サイレンシングの程度および持続時間を測定した。ヘッドトゥヘッドとヘッドトゥテール配置を厳密に比較するために、
図8Cに記載の25 bpスペーサーおよびH-T、TALE:D3A→TALE:K配置を含有する細胞株をこの実験に含めた。これらの実験の結果によると:i) TALE:KおよびTALE:D3Aの同時導入はH-H配置であっても明らかな相乗効果をもたらし、処理細胞の最大34.7%でレポーターカセットの長期サイレンシングを可能にした(
図9B;データは平均±SEMとして表す、n=3);ii) TALE:KまたはTALE:D3Aを個別導入すると、恒久的なサイレンシングはそれぞれ、低い(最大7.1%)か、または存在しないという結果となった;ならびにiii) 標的座位における2つのATRの結合の相対的順序は、全体的なサイレンシング効率に影響を与え、TALE:D3A→TALE:Kの配置は反対の配置より1.3から1.7倍よく機能した(
図9C;データは平均±SEMとして表す、n=3)。しかしながら、結合の相対的順序は、ヘッドトゥヘッド配置よりもヘッドトゥテール配置においてサイレンシングに大きな影響を及ぼすと思われる(
図8と
図9を比較されたい)。ベル型の傾向は、調べたスペーサーの長さの、H-H配置のサイレンシング効率への影響を表し、TALE:D3A→TALE:KおよびTALE:K→TALE:D3A配置のいずれにおいても、15 bpスペーサーが最良であった(ヘッドトゥテール実験での25 bpスペーサーをもしのいでいる)。しかしながら、15 bpヘッドトゥヘッド配置と25 bpヘッドトゥテール配置との相違は最小限であった(長期eGFP細胞はそれぞれ34.7%対26.8%であり、すなわち1.3倍増加)。
【0260】
概括すると、これらのデータは、カスタムメイドDNA結合ドメインを有する複数ATRの組み合わせを一過性導入することで、望ましい標的遺伝子の恒久的なエピジェネティックサイレンシングを達成することができる可能性を、これまで知る限りはじめて明らかにするものである。さらに、上記研究から、望ましい標的遺伝子上でサイレンシングエレメントを特定するために使用することができるTALE結合部位を選択するためのルールを明確にすることができる。この遺伝子の制御配列上の複数のサイレンシングエレメントを標的とすることによって、サイレンシング効率を高めることができるはずである。
【0261】
こうした研究と並行して、同一のTALE上に2つのエフェクタードメインを結合することによって2部分からなるATRを開発したが、それはすなわちTALEのN末端におけるKRABドメイン、およびC末端におけるDNMT3Aドメインである(
図10A)。個々のタンパク質の一過性トランスフェクションが、感知できるレベルの遺伝子サイレンシングを引き起こすには十分でなかったとしても、それらを組み合わせれば、処理細胞の最大7%において、eGFPを十分サイレンシングすることができた(
図10B;データは平均±SEMとして表す、n=3)。このような方法によって与えられる利点は、複数のエフェクタードメインを同一の標的部位に導入できる一方で、作製してトランスフェクトする必要のあるさまざまなmRNAの数を減少させることである。
【0262】
ATRのさまざまな組み合わせを使用することによるヒトHSPCにおける恒久的エピジェネティックサイレンシング
初代培養造血幹細胞(HSPC)は、大半のex vivo遺伝子治療応用のために臨床上適切なヒト細胞型であるが(Biffi, A. et al. (2013) Science 341: 1233158; Aiuti, A. et al. (2013) Science 341: 1233151; Aiuti, A. et al. (2009) N. Engl. J. Med. 360, 447-458; Cartier, N. et al. (2009) Science 326: 818-23; Hacein-Bey-Abina, S. et al. (2010) N. Engl. J. Med. 363: 355-64; Cavazzana-Calvo, M. et al. (2010) Nature 467: 318-22)、それは、この細胞が生涯にわたって自己複製能および多分化能を有するためである。HSPC分化は、グローバルなクロマチンリモデリングを伴うが、その結果として、オープンなクロマチン形態からより圧縮された抑制的な形態に徐々に移行する。このように、この細胞型は、本発明のエピジェネティックプラットフォームの効率を検討し、安定性を証明するためにもっとも適切で厳密なモデルである。さまざまなATRの組み合わせの導入が、ヒトHSPCにおいて有意なレベルのサイレンシングを引き起こすのに十分であるかどうかを評価するために、
図5Aに記載のTetO7/eGFPレポーターLVを用いて、健康な個体から得られたヒト臍帯血由来CD34+細胞に形質導入した。次に、tetR:D3A、tetR:K、またはtetR:D3Lを単独で、または組み合わせてコードするin vitro転写mRNAを用いて、その細胞をトランスフェクトした。その後、トランスフェクト細胞および未トランスフェクト細胞を液体培養で2週間、骨髄分化条件で増殖させ、コロニー形成単位-細胞(CFU-C)アッセイのために半固体培地に蒔いた(この実験のレイアウトについては、
図11Aを参照されたい)。
【0263】
液体培養で増殖させた細胞のフローサイトメトリー分析は、tetR:Kによる処理が、eGFP抑制の一過性の高まりをもたらすことを示したが、それはその後、処理細胞の最大20%において実験終了まで維持された(
図11B;データは平均±SEMとして表す、n=3)。同様の表現型は、tetR:D3AおよびtetR:D3LをコードするmRNAでトランスフェクトされたCD34+細胞において観察された。tetR:K/tetR:D3Aの組み合わせ、またはtetR:D3A/tetR:D3Lの組み合わせによる処理は、協同して作用する効果をもたらし、処理細胞の最大40%がeGFP発現を完全にサイレンシングすることを示す。驚くべきことに、tetR:D3L/tetR:KまたはtetR:D3L/tetR:K/tetR:D3Aを組み合わせることによって、レポーター遺伝子の最大90%のサイレンシングに到達した。重要なことに、同様のレベルのサイレンシングが、CFU-Cアッセイに由来する赤血球細胞および骨髄細胞において観察された(
図11C;データは平均±SEMとして表す、n=3)ので、サイレンシングはHSPC分化に際しても維持されることが示された。
【0264】
さまざまな組み合わせのATRを用いたヒトTリンパ球における恒久的エピジェネティックサイレンシング
さまざまな組み合わせのATRの導入が、ヒトTリンパ球において有意なレベルのサイレンシングを引き起こすのに十分であるかどうかを評価するために、
図5Aに記載のTetO7/eGFPレポーターLVを用いて、健康な個体から得られたヒトT細胞に形質導入した。次に、tetR:D3A、tetR:K、またはtetR:D3Lを単独で、または組み合わせてコードするin vitro転写mRNAを用いて、その細胞をトランスフェクトした。その後、トランスフェクト細胞および未トランスフェクト細胞は、再活性化の前に、液体培養で3週間、IL-15およびIL-7を添加した培地中で維持された(これらの実験のレイアウトについては、
図12Aを参照されたい)。
【0265】
細胞のフローサイトメトリー分析は、個別のATR、およびtetR:D3A/tetR:Kによる処理が、結果としてeGFP発現をもたらさないか、または一過性発現をもたらすことを示した。一方、他の考えられるすべてのATRの組み合わせによる処理は、レポーター遺伝子の恒久 的サイレンシングをもたらした。重要なことに、細胞増殖の初期段階の間、および静止期において測定されるサイレンシングレベルは重ね合わせることが可能であったので、細胞の転写状態および代謝状態が変化した後でもサイレンシングが維持されることが示された(
図12B;データは平均±SEMとして表す、n=3)。
【0266】
カスタムメイドATRを用いたヒト内在性遺伝子の恒久的エピジェネティックサイレンシング
eGFPレポーターシステムで得られた結果が、天然のエピジェネティックな状況にはめ込まれた内在性遺伝子に移し換えられるかどうかを評価するために、β2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子のプロモーター領域を標的とするカスタムメイドTALEを作製し(これらのTALEのアミノ酸配列および対応する結合部位のヌクレオチド配列は表3に記載する)、これらのTALEをKRAB、DNMT3A、およびDNMT3Lエフェクタードメインと融合させた(システムの概略図については
図13Aを参照されたい)。第1TALEと第2TALEの間、または第2TALEと第3TALE間のスペーサーの長さは、それぞれ1または20 bpである。次に、上記の新規ATRをコードするプラスミドを用いてHEK-293T細胞を同時トランスフェクトし、フローサイトメトリーでB2M発現について細胞を分析した。
【0267】
トランスフェクションの50日後に、B2M陰性細胞のパーセンテージが安定した時点で、TALE:D3A+TALE:D3LおよびTALE:D3A+TALE:D3L+TALE:Kの組み合わせで処理した条件においてのみ、有意な割合のB2M陰性細胞が測定された(
図13B;データは平均±SEMとして表す、n=3;***p<0.0001、一元配置分散分析およびBonferroni事後検定)。驚くべきことに、すべてのATRで処理した細胞の最大80%が、恒久的にB2Mの表面発現を失っていた。並行した実験において、B2M陰性およびB2M陽性細胞を選別し、それらをMHC-I分子の表面発現について分析したが、このMHC-I分子の表面発現には、B2Mが細胞膜上にあることが必要である。B2M陽性細胞とは異なり、ほとんどすべてのB2M陰性細胞は、MHC-I発現も陰性であることが明らかになった(
図13C)。選別されたB2M陰性およびB2M陽性細胞上で遺伝子発現分析を実施し、陰性細胞は陽性細胞の約100分の1の発現であることが判明した(
図13D;データは平均±SEMとして表す、n=3)。次に、3つのエフェクタードメインがガイドRNAによるCRISPR/Cas9システムによってB2Mに標的化される場合も、恒久的エピジェネティックサイレンシングを引き起こすことができるかどうかを評価した。この目的のために、触媒活性のないCas9(D10A+H840A; dCas9; アミノ酸配列は表4に記載)に、KRAB、DNMT3AまたはDNMT3Lエフェクタードメインをインフレームで融合させて(
図13E;上の図)、11個のガイドRNA(gRNA;ヌクレオチド配列は表4に記載する)を、B2M遺伝子のプロモーター領域を標的としてデザインした(
図13E;下の概略図、矢印はCRISPR/dCas9標的部位の位置を示す)。その後、dCas9融合タンパク質をコードするプラスミドの考えられるすべての組み合わせとともに、11個のB2M gRNAを発現するプラスミドで、HEK-293T細胞を同時トランスフェクトした。トランスフェクションの33日後に、処理されたHEK-293T細胞をフローサイトメトリー分析し、dCas9:K+dCas9:D3L、dCas9:D3A+dCas9:D3LおよびdCas9:K+dCas9:D3a+dCas9:
D3Lの組み合わせだけがB2M遺伝子のサイレンシングを引き起こすことができることが示された(
図13F;データは平均±SEMとして表す、n=3)。次に、B2Mサイレンシングが、B2M発現の強力な誘導因子であるIFN-γ処理(Vraetz, T. et al. (1999) Nephrol. Dial. Transplant. 14: 2137-43; Gobin, S.J. et al. (2003) Blood 101: 3058-64)に対して抵抗性であるかどうかを評価した。この実験のために、野生型およびB2M陰性細胞を使用したが、後者は
図13Bおよび13Fに記載のトリプルATR処理条件から選別された。予想される通り、IFN-γ処理は、テストした全細胞型において、2′-5′-オリゴアデニル酸シンセターゼ1(OAS1)遺伝子の発現に、有意なアップレギュレーション(>100倍)を引き起こした(
図13G)。その一方で、野生型細胞はIFN-γ処理で、B2M発現を転写レベルでもタンパク質レベルでも有意にアップレギュレートしたが、B2M陰性細胞ではこの遺伝子の発現増加は測定されなかった(それぞれ
図13Gおよび
図13H)。
【0268】
本発明のATRによって引き起こされるサイレンシングが、標的遺伝子上の抑制的エピジェネティックマークの蓄積を伴うかどうかを評価するために、野生型およびサイレンシングされた細胞においてB2M遺伝子のエピジェネティック状態を分析した。この目的のために、トリプルTALE:ATRの組み合わせをコードするプラスミドで処理された細胞を、サイレンシング細胞の純粋集団を得るために、純粋になるまで選別した(
図14A、代表的なFACSドットプロットを示す)。クロマチン免疫沈降(ChIP)に続いて、B2Mのプロモーター領域および遺伝子本体上にあるRNAポリメラーゼII(RNA PolII)について定量的PCR分析を行ったところ、サイレンシングされた細胞にこのタンパク質がまったくないことが明らかになったが、このタンパク質は未処理細胞のプロモーター領域において高度に濃縮されていた(PPP1R12CおよびCCR5遺伝子はそれぞれ上記実験のための陽性対照または陰性対照として使用された;
図14B)。B2M CpGアイランドのbisulfite分析も行い、未処理細胞ではプロモーター領域からCpGのレベルで5mCがほとんど取り去られている(1%未満)ことが判明したが、サイレンシングされた細胞の同じ領域は、デノボDNAメチル化で高度に修飾されていた(平均で80%を上回る)(
図14C)。AZA処理はあらかじめサイレンシングされた細胞におけるB2M遺伝子の再発現に関係していたので、DNAメチル化はサイレンシング維持にも関与した(
図14D)。最後に、サイレンシングがB2M遺伝子の範囲内に限られるかどうか検討するために、RT-qPCRによるB2M座位の転写分析を行い(
図14E、上の図)、トリプルATR組み合わせの一過性導入でダウンレギュレートされた唯一の遺伝子がB2Mであって、その隣接遺伝子の発現は影響を受けないことが判明した(
図14E)。
【0269】
これらの実験と並行して、K-562細胞におけるB2M遺伝子のサイレンシングも検討した。この細胞株はMHC-Iを発現しないが、それはB2M表面発現に完全に必要であるので、B2M転写状態についてきちんとレポートするために、蛍光マーカーtdTomatoのコード配列を標的としてB2M遺伝子の最初のイントロンに入れた(
図15A)。CRISPR/Cas9による遺伝子ターゲティング後、tdTomato陽性細胞を選別し、次にB2Mプロモーター/エンハンサーに対するTALEベースのATRまたはCRISPR/dCas9ベースのATRのいずれかをコードするプラスミドによりエレクトロポレーションを行った(これらのATRの標的配列は
図13と同じである)。TALEベースのATRについては、TALE:D3L+TALE:Kの組み合わせ、およびTALE:D3A+TALE:D3L+TALE:Kの組み合わせの2つがいずれも、B2M発現を安定してサイレンシングすることができるが、トリプルATRの組み合わせがもっとも好成績であることが判明した(
図15B)。TALEベースATRのエフェクタードメインのコドン最適化は上記組み合わせのサイレンシング効率を向上させた(
図15B;赤い棒グラフと緑の棒グラフを比較されたい)。CRISPR/dCas9ベースのATRのサイレンシング活性については、dCas9:D3A+dCas9:Kの組み合わせ以外のすべてが、B2M遺伝子の高いサイレンシング効率をもたらすことができることが判明した(最大55%の安定にサイレンシングされた細胞;
図15C)。最終的に、TET1酵素(DNAを脱メチル化することで知られる;Maeder, M.L. et al. (2013) Nat. Biotechnol. 31: 1137-42)の触媒ドメインと融合させたdCas9を、選別されたサイレンシングされた細胞のB2Mプロモーター/エンハンサーに標的化することで、この遺伝子の発現の再活性化がもたらされ(
図15D)、トリプルATR組み合わせによって生じるサイレンシングはDNAメチル化に依存するという考えが裏付けられた。
【0270】
B2Mサイレンシングが初代培養ヒトTリンパ球においても有効となりうるかを評価するために、上記TALE:K+TALE:D3A+TALE:D3L ATRをコードするin vitro転写mRNAを、健康なドナーから得られたヒトT細胞にエレクトロポレーションで導入した。トランスフェクト細胞および未トランスフェクト細胞をその後、IL-15およびIL-7を添加した培地中で2週間、液体培養で維持した(
図16Aに実験スキーム)。細胞のフローサイトメトリー分析から、TALE:K+TALE:D3A+TALE:D3L ATRによる処理がB2M遺伝子のサイレンシングをもたらすことが明らかになった(
図16Bにサイレンシングの動態、
図16CにFACSプロット)。
【0271】
興味深いことに、4個組から個別の1個に至るまでの7つのgRNAの機能的デコンボリューションから、たとえ1つのgRNAであっても、トリプルの組み合わせ、およびdCas9:D3A+dCas9:D3Lの組み合わせによって、十分に効果的なB2Mのサイレンシングを機能させることができることが判明した(
図17)。予想外なことに、単一gRNAのなかには、7つのgRNAプールで測定されるのと同等のサイレンシング効率をもたらすことができるものがあった。さらに、いくつかの例では、トリプルATR組み合わせのほうがdCas9:D3A+dCas9:D3Lの組み合わせより好成績であることが観察された。結局、上記のデータから、標的遺伝子上に1つであっても十分に適正に配置された、3つのATRと結びついたgRNAは、効率的なサイレンシングを引き起こすことができることが示された。
【0272】
同様に、1つのTALEタンパク質が効率的で恒久的なエピジェネティックサイレンシングを引き起こすのに十分であるかどうかも調べた。この目的のために、4つのTALEタンパク質を作製したが、そのそれぞれに、3つの異なるエフェクタードメイン、すなわちKRAB、DNMT3A、およびDNMT3Lを融合させた(
図17B;左側の概略図)。モデルとして、すでに述べた、B2M遺伝子を標的とするTALEタンパク質、およびK562 B2M tdTomatoレポーター細胞株を使用した(それぞれ
図13Aおよび15A)。予想外にも、抑制的ドメインがB2M遺伝子上の同一結合部位に対して競合しているような条件において、B2M遺伝子の効率的で恒久的な遺伝子サイレンシングが得られた(
図17B;ヒストグラムのグレーのバー)。効率の相違は、TALEの結合親和性の相違を反映している可能性がもっとも高く、その中には、異なるDNA結合ドメインに各エフェクタードメインが融合されている対照条件と同じく効率的に機能するものがあった(
図17B;ヒストグラムの濃いブルーのバー)。
【0273】
概括すると、上記データは、カスタムメイドATRを用いたヒト細胞の内在性遺伝子の恒久的サイレンシングを、知る限りはじめて明らかにするものである。重要なことは、サイレンシングが、B2Mプロモーター/エンハンサーに作用する外部刺激に対して完全に抵抗性であったことであり、したがって、トリプルATR組み合わせにより蓄積されたエピジェネティック修飾の安定性についてもう1つの証拠を与えた。さらに、リプレッサードメインを、2つの異なるDNA結合技術、すなわちTALEおよびCRISPR/Cas9を用いて内在性遺伝子に繋ぐことによって、本発明のストラテジーを広範に適用できる証拠を提供する。
【0274】
非標的化DNMT3Lの一過性発現は不応性細胞型においてDNMT3A + KRABベースATRのサイレンシング効率を改善し回復させる
デザインして構築するさまざまなATRの数を減らすために、少なくとも1つのエフェクタードメインをDNA結合ドメインなしで細胞に導入することができるかどうか、ならびにそれでも効果的に、目的の望ましい遺伝子上に標的化された他の2つのATRと共に作用することができるかどうかを調べた。未標的化DNMT3L(以下D3Lと称する)の導入が、他の2つのエフェクタードメイン(具体的にはDNMT3AおよびKRAB)と協同作用するのに、その標的化された同等物ほど有効であるかどうかを評価するために、まずTetO7/tetR系を利用した。したがって、tetRベースのATRおよび未標的化D3Lをコードするin vitro転写mRNAを用いてTetO7.LVレポーターBリンパ芽球様細胞をトランスフェクトし、経時的フローサイトメトリー分析によってさまざまなトランスフェクション条件におけるeGFP陰性細胞のパーセンテージを測定した(
図18A;データは平均±範囲として表す、n=2)。トランスフェクション後27日の時点で、個別のATRまたはtetR:K+tetR:D3Aの組み合わせで処理された細胞では、あったとしてもごくわずかなサイレンシングしか見いだされなかった。その代わり、3つのATRの組み合わせで処理された細胞の最大70%がeGFP陰性となった。標的化されたtetR:D3LもtetR:KまたはtetR:D3Aと相乗作用を示したが、ただしこれら2つの実験条件で測定されたサイレンシングレベルはトリプルATRの組み合わせで測定されたものより低く3.5分の1であった(約20%のeGFP陰性細胞)(
図18A;プラスtetR:D3L条件と比較されたい)。これらのデータは、TetO7.LVレポーターBリンパ芽球様細胞株ですでに判明したことと合致するが、このtetR:D3A+tetR:K組み合わせのサイレンシング効率の予想外の低下は、混合物にtetR:D3Lを含めることによって完全に回復された(比較のために
図7Gを参照されたい)。非標的化D3Lを単独で、またはtetR:Kと組み合わせて導入すると、eGFP陰性細胞はまったく見られなかった。一方、D3LはtetR:D3AおよびtetR:D3A+tetR:K組み合わせの両者と効果的に相乗作用することができた(
図18A;プラスD3L条件を参照されたい)。重要なことに、これら2つの実験条件で測定されたサイレンシングレベルは、TetO7配列にDNMT3LおよびDNMT3A;またはDNMT3L、DNMT3AおよびKRABを同時に繋ぐことによって見いだされるレベルと同等であった。これらのデータは、非標的化D3LがKRAB + DNMT3Aの組み合わせと効果的に相乗作用することができることを示す。
【0275】
これらの知見がカスタムメイドDNA結合ドメインに基づくATRに関しても当てはまるかどうかを評価した。このために、B2Mプロモーター領域において4つの異なるTALE結合部位を選択し、対応するTALE DNA結合ドメインを構築した(異なるTALE結合部位を示すB2M座位の概略図を
図18Bに示す;TALE Aのアミノ酸配列およびその対応する結合部位のヌクレオチド配列は表5に記載する;TALE B、CおよびDはすでに記載したが、表3のTALE#1、#2および#3に対応する)。これらのTALEはそれぞれKRABまたはDNMT3Aを有した。4つの異なるTALE結合部位は2つの独立したサイレンシングモジュール(モジュール1:部位Aプラス部位B;モジュール2:部位Cプラス部位D)を構成しており、そこにTALE:D3AおよびTALE:Kは2つの異なる順序で結合することができる(部位A:K-部位B:D3Aまたは部位A:D3A-部位B:K)。次に、TALEベースのATRおよび非標的化D3Lをコードするプラスミドを用いてHEK-293T細胞をトランスフェクトし、異なるトランスフェクション条件におけるダブルネガティブB2M/MHCI陰性細胞のパーセンテージを、経時的フローサイトメトリー分析によって測定した(
図18C)。トランスフェクション後12日の時点で、TALE:D3A+TALE:Kの組み合わせで処理されたすべての条件においてB2M/MHCI陰性細胞は低い割合で測定された(
図18Cの上のプロット)。一方、2つのATRプラス未標的化D3Lの組み合わせによる細胞の同時処理は、D3Lなしで測定されたレベルを超えて平均して5倍のサイレンシング効率の増加をもたらした(
図18Cの下の図)。この増加は、B2Mプロモーター上のTALEタンパク質の結合の相対的な順序とは無関係で、サイレンシングモジュールの2つともについて確認された。
【0276】
最後に、CRISPR/Cas9システムに基づくATRを用いて同様の実験を行った(
図18D;データは平均±SEMとして表す、n=3)。ここで、dCas9:K+dCas9:D3A ATRプラスB2M gRNA(
図13Eで使用されたもの)を用いてトランスフェクトされたHEK-293T細胞におけるD3Lの一過性発現は、dCas9ベースのATRプラスB2M gRNAのトリプルの組み合わせで得られたのと同等の遺伝子サイレンシングレベルをもたらすことが判明した(
図18D)。同様の結果がDNMT3A ATRによるD3Lの導入によって得られた。
【0277】
概括すると、これらのデータは、非標的化DNMT3Lが本発明のATR混合物においてその標的化された同等物と効率的に置き換えられることを明確に示す。
【0278】
非標的化DNMT3Bの一過性発現は不応性細胞型においてDNMT3A + KRABベースATRのサイレンシング効率を回復させる
de novo DNAメチル化の形成におけるDNMT3Bの役割を考慮して、内在性DNMT3Bが本発明のATRと協同作用しうるかどうかを検討した。この問題に答えるために、TetO7.LV K562レポーター細胞株においてCRISPR/Cas9によってDNMT3Bの遺伝子ノックアウトを行った。これを行うために、2つのレンチウイルスベクターを用いて細胞に形質導入したが、一方はドキシサイクリン誘導性Cas9ヌクレアーゼをコードし(Wang, T. et al. (2014) Science 343: 80-4)、もう一方はDNMT3B遺伝子のエクソン2に対するgRNAおよびΔLNGFRマーカーをコードする(
図19Aにベクターの概略図;2重形質導入細胞に関する中央のFACSプロット)。ドキシサイクリン投与によりCas9を活性化し、その細胞に、さまざまな組み合わせのATRをコードするプラスミドを用いてエレクトロポレーションを行った後、フローサイトメトリーによってΔLNGFR陽性細胞および陰性細胞におけるサイレンシング効率を測定した。これらの数字を比較することによって、DNMT3B遺伝子の不活化がさまざまなATR組み合わせのサイレンシング効率を改善するか否かを評価することができる。ここで、DNMT3Bに対するgRNAを発現する部分集団(すなわちΔLNGFR陽性細胞)は、tetRK+tetR:D3Aの組み合わせによるサイレンシングに対して野生型細胞ほど許容的でないことが観察され(
図19Bおよび
図19C;右上のFACSプロット)、したがって、内在性DNMT3Bはこれら2つのATRの適切なパートナーであることが示された。驚くべきことに、DNMT3Bの遺伝子ノックアウトは、tetR:K+tetR:D3A+tetR:D3L組み合わせのサイレンシング効率を増加させたので、この場合DNMT3BはこれらのATRのデコイとして作用することが示唆された(
図19Bおよび
図19C;右下のFACSプロット)。他のすべてのATRの組み合わせおよび個別のATRについて、DNMT3Bの不活化は、野生型細胞と比べてサイレンシング効率に有意な相違をもたらさなかった。さらに、上記のBリンパ芽球様細胞株は、K562細胞とは対照的に、(RT-qPCR分析により測定されるように)DNMT3B発現がないことを考慮して、DNMT3Bの過剰発現が、DNMT3A+KRABの組み合わせに対して不応性のこの細胞株において、ATRサイレンシング効率を増加させることができるかを検討した。具体的には、2つのATRとともに、または2つのATRなしに、全長DNMT3Bを(それをtetR DNA結合ドメインに融合させることなく;DNMT3Bのアミノ酸配列は表1に記載する)コードするmRNAにより、TetO7.LV Bリンパ芽球様レポーター細胞株を一過性にトランスフェクトした。驚くべきことに、DNMT3Bの過剰発現は処理細胞の52%において、tetR:K+tetR:D3Aの組み合わせの活性を有意に回復させ、安定したeGFPサイレンシングを可能にしたが、それはtetR:K+tetR:D3A単独と比較して65倍の増加であった(
図19C)。注目すべきは、DNMT3B過剰発現がtetR:D3A条件のサイレンシング効率の2.9倍の増加ももたらしたことである(
図19D)。
【0279】
概括すると、これらのデータは、未標的化DNMT3Bが不応性細胞株においてDNMT3A+KRAB組み合わせの活性を効果的に回復させることができることを明確に示す。
【0280】
CRISPR/dCas9ベースおよびTALEベースのATRの両方を用いたBCL11A遺伝子のサイレンシング
BCL11Aは、それを抑制することがβサラセミアおよび鎌状赤血球貧血のための見込みのある治療的介入として提案された遺伝子であるが、そのBCL11AをサイレンシングするためにATRの組み合わせを利用した。BCL11A遺伝子上でのATRの活性を容易に評価するために、ヒトBリンパ芽球様細胞においてその遺伝子の第3エクソンの中にあるtdTomato導入遺伝子を、CRISPR/Cas技術による遺伝子ターゲティングによって標的化した(
図20A)。このようなターゲティング戦略は、BCL11A遺伝子の制御配列からのtdTomato導入遺伝子の発現
を可能にするが、そのようにしてこの遺伝子の発現レベルは着実に報告される。次に、tdTomato陽性細胞をほぼ純粋となるまでセルソーティングによって濃縮し、DNMT3AまたはDNMT3Lを含有するCRISPR/dCas9ベースATRを用いて、この遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域内の4つのCpGアイランドを標的とした。4つのCpGアイランドのそれぞれをgRNAの別々のプールを用いて個別に調べた(CRISPRとしても知られる;gRNAのヌクレオチド配列は表6に記載する)。tdTomato発現を処理対照と未処理対照とで比較することによって、各アイランドのBCL11A発現に対する相対的な寄与を評価することができた(
図20B)。対照処理細胞と比較すると、各CpGアイランドのサイレンシングは、BCL11A発現の長期間安定した抑制と関係していた(ここではtdTomato陰性細胞の%として示す)が、ただしこの遺伝子のサイレンシングの程度はATRが標的としたCpGアイランドに応じてさまざまであった。次にトリプルATR組み合わせの活性を評価することを目的としてさらに研究するために、CpGアイランド31および38を選択した。これらの研究には、考えられるすべてのダブルATR組み合わせ、および単一のKRABベースATRも含めた。驚くべきことに、テストしたすべての条件が、CpG 38(先行実験でもっともよく反応したアイランド)のエピジェネティック編集によって、有意なレベルの遺伝子サイレンシングを引き起こすことができ、トリプルATR組み合わせは最大55%の遺伝子サイレンシングをもたらした(
図20C)。最後に、CpGアイランド31および38を標的とする、17個の異なるTALEベースのATRをデザインし(それぞれ7個および10個のTALEタンパク質;これらのTALEのアミノ酸配列およびそれらの関連標的配列を表7に記載する;
図20D上部の概略図)、トリプルATR組み合わせとして、またはKRABベースATRとして、それらのサイレンシング活性をテストした。すべてのトリプルATR組み合わせによる2つのCpGアイランドのサイレンシングはいずれも、BCL11Aの有効で長期的なサイレンシングをもたらしたが(最大55%のtdTomato陰性細胞に達した)、TALE:KRABによるサイレンシングは、さまざまな程度の遺伝子サイレンシングを伴い、トリプルATR組み合わせと同じく効率的なものもあれば、完全に不活性なものもあった。まとめると、これらのデータは、ヒトBCL11A遺伝子を恒久的にサイレンシングすることの実現可能性を示している。
【0281】
CRISPR/dCas9-based ATRを用いたさらに他のヒト内在性遺伝子のサイレンシング
最後に、本発明のエピジェネティックサイレンシング技術をさらに2つのヒト内在性遺伝子に対して調べたが、それはインターフェロン(α、β、およびω)受容体1(IFNAR1)遺伝子および血管内皮増殖因子A(VEGFA)遺伝子である。2つの遺伝子はいずれも、遺伝子プロモーター/エンハンサー領域にCpGアイランドを示す。したがって、IFNAR1 CpGアイランドに対して13個のgRNA(
図20E、上)、VEGFA CpGアイランドに対して3個のgRNA(
図20F、上)をデザインした(gRNAのヌクレオチド配列は表6に記載する)。興味深いことに、IFNAR1遺伝子に対する13個のgRNAプール、プラス トリプルdCas9ベースATRの組み合わせをコードするプラスミドによるK562細胞のエレクトロポレーションによって、未処理サンプルと比較して処理細胞においてIFNAR1転写レベルの長期的なダウンレギュレーション(0.22倍の変化)が達成された(
図20E、下)。さらに、VEGFA遺伝子に対する3個のgRNAプール、プラス トリプルdCas9ベースATRの組み合わせをコードするプラスミドによるK562細胞のエレクトロポレーションによって、未処理サンプルと比較して処理細胞においてVEGFA転写レベルの長期的なダウンレギュレーション(0.57倍の変化)が達成された(
図20F、下)。概括すると、これらのデータは、CRISPR/dCas9ベースATRによって、さまざまなヒト内在性遺伝子をサイレンシングすることの実現可能性を示している。
【0282】
材料および方法
レンチウイルスベクターおよびATR構築
TetO7配列またはTALE結合部位を含有するATRレポーターレンチウイルスベクター(LV)、およびDNMT3B gRNA発現LVは、自己不活性化導入構築物pCCLsin.cPPT.hPGK.eGFP.Wpre (Follenzi, A. et al. (2000) Nat. Genet. 25: 217-22)から作製されたが、ATR発現Bid.LVは、導入構築物pCCLsin.cPPT.dLNGFR.mhCMV.hPGK.GFP.Wpre (Gentner, B. et al. (2010) Sci. Transl. Med. 2: 58ra84)から作製された。ドキシサイクリン誘導性Cas9発現ベクターは、Addgene (pCW-Cas9; #50661; Wang, T. et al. (2014) Science 343: 80-4)から購入した。LVストックは、前記のように調製された(Follenzi, A. et al. (2002) Methods Mol. Med. 69:259-74)。手短に述べると、それぞれ15 cmディッシュあたり35/12.5/9/6.25μgの導入構築物プラスミドである、pMD.Lg/pRREパッケージングプラスミド、pMD2.VSV-Gエンベロープをコードするプラスミド、および pRSV-Revを用いて、DNAリン酸カルシウム沈殿法によってHEK293T細胞を同時トランスフェクトした。ベクター粒子は、前記のように超遠心分離によって300倍に濃縮され、HEK293T細胞上で、段階希釈法によって力価を測定した(Cantore, A. et al. (2015) Sci. Transl. Med. 7: 277ra28)。他のすべてのtetRベースATRは、tetR:KRABにおけるKRABドメイン(それ自体はSzulc, J. et al. (2006) Nat. Methods 3: 109-16において論じられている)を他の適切なエフェクタードメインで置き換えることによって作製された。TALEベースATRは、Golden Gate TALEN Kit 2.0a (Addgene, Kit#1000000024; Cermak, T. et al. (2011) Nucleic Acids Res. 39: e82)の修正版を使用して作製されたが、この修正版は以下の構築上の変化を含有する:Golden Gate TALE C-およびN-末端小領域はそれぞれ+163および+63欠失で置き換えられた。これらの構築物は、インフレームでエフェクタードメインを提供できるよう構成された。Cas9ベースATRは、プラスミドpAC154-dual-dCas9VP160-sgExpression (Addgene #48240; Cheng, A.W. et al. (2013) Cell Res. 23: 1163-71)からVP160トランス活性化因子をエフェクタードメインで、またはTET1の触媒ドメインで置き換えることによって作製された。
【0283】
細胞培養条件および操作
ヒトエプスタイン・バーウイルスにより不死化されたBリンパ球(Bリンパ芽球様細胞)およびU-937細胞の維持は、RPMI-1640 (Sigma)中で行い;HEK293TおよびK-562はIMDM (Sigma)中で;NIH/3T3はDMEM (Sigma)中で行った。すべての培地は、10% FBS (ウシ胎仔血清;EuroClone)、L-グルタミン(EuroClone)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(100 U/mL終濃度;EuroClone)を添加した。細胞は5% CO2加湿インキュベーター内で37℃にて培養した。レポーター細胞株は、指定のATRレポーターLVによって、0.1の感染効率(MOI)で細胞に形質導入することによって作製され、その後MoFlo XDP Cell Sorter (Beckman Coulter)を用いてeGFP発現について濃縮された。標的化された組込みを有するレポーター細胞株は次のように作製された:i) AAVS1座位にeGFPカセットを挿入するために、ドナー構築物(カセットの下流または上流にTetO7配列を含有する;1.5μgドナープラスミド)および前記AAVS1-ZFNをmRNAとして(0.5μg 各ZFN;Lombardo, A. et al. (2011) Nat. Methods 8: 861-9)同時トランスフェクトした。単一細胞由来クローンが限界希釈プレーティングによって得られ、サザンブロットにより分析して、カセットの標的化された組込みを前記のように確認した(Lombardo, A. et al. (2011) Nat. Methods 8: 861-9);ii) BCL11Aの第3エクソン内にtdTomatoを挿入するために、2A自己触媒ペプチドと融合させたtdTomato導入遺伝子を含有するドナー構築物(2μg)を、Cas9をコードするプラスミド(1μg)およびエクソン3を標的とするgRNAを発現する別のプラスミド(125 ng;gRNAの配列:5′-GGAGCTCTAATCCCCACGCCTGG-3′)とともに同時トランスフェクトした;iii) BCL11Aに用いたのと同様のターゲティン戦略を用いて、スプライスアクセプター-IRES-tdTomatoカセットをB2Mのイントロン1に挿入した(gRNAの配列:5′-AGGCTACTAGCCCCATCAAGAGG-3′)。2つのtdTomato細胞株はいずれも陽性細胞のFACSソーティングによって作製した。
【0284】
ATRの活性をテストするために、MOI 10のATR発現Bid.LVを用いてレポーター細胞株に形質導入するか、またはATRを発現するプラスミドもしくはin vitro転写mRNA(4D-NucleofectorTM System; Lonza)を用いてトランスフェクションしたが、これはK-562、U937およびNIH/3T3についてはメーカーの使用説明書にしたがって行われ、Bリンパ芽球様細胞についてはパルスプログラムEW-113およびSF溶液を用いて行われた。それぞれのATRをコードするプラスミド500 ngを使用した不飽和条件で実施された実験を除けば、通常はそれぞれtetRベースもしくはTALEベースのATRについて核酸(プラスミドおよびin vitro転写mRNAのいずれも)2μgをトランスフェクトした。一方、dCas9ベースのATRをコードするプラスミド1-2μg、およびgRNA用の発現プラスミド125-250 ngをエレクトロポレーションで導入した。in vitro転写mRNAは、前記のように作製された(Genovese, P. et al. (2014) Nature 510: 235-40)。必要であれば、細胞を5-アザ-2-デオキシシチジン(AZA、Sigma)1μg、またはドキシサイクリン12μg/mL(Sigma)で処理した。AZA含有培地は毎日交換し、細胞は処理の4日後および7日後にフローサイトメトリーで分析した。必要ならば、細胞を500 U/mLの組換えヒトIFN-γ(R&D Systems)で処理した。IFN-γ含有培地は毎日交換し、細胞は処理の2日後および4日後にフローサイトメトリーで分析した。健康なドナーから得られた臍帯血由来CD34+細胞はLonzaから購入した。ペニシリン、ストレプトマイシン、および次のヒト初期作用サイトカイン:幹細胞因子(SCF)50 ng/mL、Flt3リガンド(Flt3-L)50 ng/mL、トロンボポエチン(TPO)50 ng/mL、およびインターロイキン6(IL-6)50 ng/mL(すべてPeprotechから購入)を添加した無血清StemSpan培地(StemCell Technologies)中で、106CD34+細胞/mLを一晩刺激した。その後MOI 30-50のTetO7-レポーターLVを用いてその細胞に形質導入した。48時間後、ATRをコードするmRNAs(P3 Primary Cell 4D-Nucleofector X Kit, program EO-100; Lonza)2μgを用いてその細胞にエレクトロポレーションを行った。培地交換ごとに1μMのSR1(BioVision Inc.)を添加した。刺激培地中で1週間経過後、細胞をIMDM 10% FBS中で液体培養した。CFCアッセイのために、エレクトロポレーションの1日後にメチルセルロースベースの培地(MethoCult H4434, StemCell Technologies)に細胞800個/プレートをシードした。プレーティングの2週間後に、コロニーを計数し、形態学的判断基準にしたがって同定して、フローサイトメトリーにより分析した。
【0285】
休止Tリンパ球を、健康なドナーの末梢血単核球(PBMC)から、白血球分離およびフィコール・ハイパック勾配分離によって分離した。細胞は、CD3およびCD28に対する抗体とコンジュゲートした磁気ビーズ(ClinExVivo CD3/CD28; Invitrogen)を用いて、メーカーの使用説明書に従って、活性化して選別し、既述のように(Kaneko, S. et al. (2009) Blood 113: 1006-15)、ペニシリン、ストレプトマイシン、10% FBS、および5 ng/mL IL-7およびIL-15 (PeproTech)を添加したRPMI(Sigma)中に細胞1×106個/mLの濃度で培養した。培養して3日後に、細胞は、MOI 10のTetO7-レポーターLVによって形質導入した。形質導入の3日後に、細胞を洗浄し、ATRをコードするmRNA 2μgでエレクトロポレーションを行った。ポリクローナルTCR刺激に対するサイレンシング抵抗性を調べるために、バルク処理されたTリンパ球を、無関係なドナーから得られた6000 rad放射線照射PMBC、および10000 rad放射線照射JY細胞のプールとともに、抗CD3抗体(OKT3)30 ng/mL(Orthoclone, Milan, Italy)およびヒト組換えIL-2 50 U/mL(PrepoTech)の存在下で共培養した。初代培養Tリンパ球におけるB2Mのサイレンシングに関連して、これらの細胞は健康なドナーのPBMCから白血球分離、フィコール・ハイパック勾配分離、およびPan T Cell Isolation Kit (Miltenyi Biotec)による最終選択によって分離された。次にT細胞をCD3およびCD28とコンジュゲートした磁気ビーズ(ClinExVivo CD3/CD28; Invitrogen)で、メーカーの使用説明書に従って活性化し、既述のように(Kaneko, S. et al. (2009) Blood 113: 1006-15)、ペニシリン、ストレプトマイシン、10% FBS、および5 ng/mL IL-7およびIL-15 (PeproTech)を添加したRPMI(Sigma)中に細胞1×106個/mLの濃度で培養した。培養して3日後、細胞を、TALEベースATRをコードするin vitro転写mRNAを用いてエレクトロポレーションし、さらに2週間培養下で維持したが、ビーズはエレクトロポレーションの4日後に除去した。ヒトCB由来CD34+細胞および初代培養Tリンパ球の使用はSan Raffaele Hospital Bioethical Committeeによって承認された。
【0286】
フローサイトメトリーおよび遺伝子発現分析
Bid.LV形質導入細胞、CD34+細胞およびその子孫細胞、ならびにTリンパ球の免疫表現型分析(FACSCanto II; BD Pharmingenにより実施された)のために、以下の抗体を使用した。
アミノアクチノマイシンD(7-AAD)陽性の生育不能細胞は分析から除外し、分析ごとに1-5×10
5の生細胞を点数化した。単一染色細胞およびFMO染色細胞を対照として使用した。
【0287】
遺伝子発現解析のために、2-6×10
6 細胞(RNeasy Mini kit; Qiagen)から抽出した全RNAを、SuperScript III First-Strand Synthesis System(Invitrogen)のメーカーのプロトコールにしたがって、ランダムヘキサマーを用いて逆転写した。K-562およびHEK293T細胞から得られたcDNA 15-100 ngを3連で、TaqMan Gene Expression Assays (Applied Biosystems)を用いて解析した。
eGFP転写物を検出するために使用される遺伝子発現アッセイは、すでに記載された(Lombardo, A. et al. (2011) Nat. Methods 8: 861-9)。リアルタイムPCRは、ViiA 7 Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を用いて実施し、専用ソフトウェアを用いて生データを抽出した(Ctおよび未加工の蛍光)。Ct値≧37の遺伝子は解析から除外した。各遺伝子の相対発現レベルは、ΔΔCt法によって計算し、HPRTまたはB2M発現に対して補正して(ハウスキーピング遺伝子対照)、偽処理サンプル(検定用試料)に対する倍率変化として表した。
【0288】
分子解析
bisulfite sequencingのために、ゲノムDNAをDNeasy Blood & Tissue Kit またはQIAamp DNA Mini Kit(QIAGEN)で抽出した後、EpiTect Bisulfite kit(Qiagen)によりメーカーの使用説明書にしたがって処理した。bisulfite sequencingのために、ゲノムDNAをDNeasy Blood & Tissue KitまたはQIAamp DNA Mini Kit (QIAGEN)を用いて抽出した後、EpiTect Bisulfite kit (Qiagen)を用いてメーカーの説明書の通りに処理した。次に、変換産物を用いて、B2Mプロモーター領域を下記のプライマーによってPCR増幅した。PCR断片を精製し、pCRII-TOPO TA (Invitrogen)にクローニングして、各サンプルにつき5-10クローンを、M13ユニバーサルプライマーを用いたシーケンシングによって検証した。
【0289】
ヒトH3またはRNAポリメラーゼII CTDリピートYSPTSPSに対して産生されたChIPグレード抗体(Abcam)5-10μgを用いて、クロマチン免疫沈降(ChIP)分析を既述のように実施した(Lombardo, A. et al. (2011) Nat. Methods 8: 861-9)。IgGアイソタイプも対照として使用した。これらの実験に使用されるプライマーを下記に記載する。それぞれの検討された部位に関するRNA PolIIの濃縮のパーセンテージは、基準としてInputを使用してΔCt法によって算出した。
【0290】
統計分析
一元配置分散分析をBonferroniの多重比較事後検定とともに使用して、すべてのサンプル間の遺伝子発現の差異の統計的有意性を評価した(P<0.05)。
表1
【0291】
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
TALE forward
5′-TACCCAGATTGGCCCCACT-3′
TALE reverse
5′-TACCTAGAGGAGAAAGGTT-3′
表2
【0292】
B2Mプロモーター領域を標的とするTALEのアミノ酸配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
TALE #1
5′-TCTCTCCTACCCTCCCGCT-3′
TALE #2
5′-TGGTCCTTCCTCTCCCGCT-3′
TALE #3
5′-TCGCTCCGTGACTTCCCTT-3′
表3
【0293】
B2M gRNAの標的部位のヌクレオチド配列
B2M gRNAのヌクレオチド配列
表4
【0294】
B2Mプロモーター領域を標的とするTALE Aのアミノ酸配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
TALE A
5′-TGCTCGCGCTACTCTCTCT-3′
表5
【0295】
BCL11Aを標的とするgRNAのヌクレオチド配列
CpG 105に対するgRNA #1: GCCUUUCUGCAGACGUUCCC
CpG 105に対するgRNA #2: UGGGUGUGCGCCUUGGCCGG
CpG 105に対するgRNA #3: CGGUGGUGAGAUGACCGCCU
CpG 105に対するgRNA #4: GGAAUGUGCUCACGGCGCCG
CpG 105に対するgRNA #5: GACUGCCCGCGCUUUGUCCU
CpG 105に対するgRNA #6: CCAGAGUCUGGCCCCCGGAG
CpG 105に対するgRNA #7: UCUGCGACCCUUAGGAGCCG
CpG 105に対するgRNA #8: GAGCGCCCCGCCAAGCGACU
CpG 105に対するgRNA #9: CAAGUCUCCAGGAGCCCGCG
CpG 105に対するgRNA #10: CGCGGAAUCCAGCCUAAGUU
CpG 105に対するgRNA #11: CCCGCUGCGGAGCUGUAACU
CpG 31に対するgRNA #1: CGCUCCUGAGUCCGCGGAGU
CpG 31に対するgRNA #2: CACGGCUCUCCCCGUCGCCG
CpG 31に対するgRNA #3: CCGCCUUUUGUUCCGGCCAG
CpG 31に対するgRNA #4: GCGCGAGGAGCCGGCACAAA
CpG 31に対するgRNA #5: GCCACUUUCUCACUAUUGUG
CpG 31に対するgRNA #6: GCUGCCUCUGAGGUUCGGUC
CpG 31に対するgRNA #7: AAGGGCAGGAGCUAGGGCCG
CpG 31に対するgRNA #8: GAGCCCGGACUGCUGCCUCC
CpG 38に対するgRNA #1: GUUUACAAGCACCGCGUGUG
CpG 38に対するgRNA #2: AACAGACAGAGGACCGAGCG
CpG 38に対するgRNA #3: GGCGCCGGGUGGGCGAUCCG
CpG 38に対するgRNA #4: GGUCGGGCAAGGCCCGGGCG
CpG 38に対するgRNA #5: AAGAGGUCUCGGCAUUGUGC
CpG 38に対するgRNA #6: GUUCCACAGCUUCGGGACCG
CpG 38に対するgRNA #7: GAAAUCGGCUGGGUGAAACU
CpG 38に対するgRNA #8: GCAGUGUCUCCGCGCCAGCC
CpG 38に対するgRNA #9: CCUCCCCUCCCCUCCGCCCU
CpG 115に対するgRNA #1: UCCUCCUGUCCCGGGGUUAA
CpG 115に対するgRNA #2: CAUCUUUUGGGACACUCUAGG
CpG 115に対するgRNA #3: AAGUCAGGCCCUUCUUCGGAA
CpG 115に対するgRNA #4: GCAGCCUGGACUGCGCGCCC
CpG 115に対するgRNA #5: UGCCCGGCGAUUCUCGUCCG
CpG 115に対するgRNA #6: UGAGCCAUUCGGUCGCUAGG
CpG 115に対するgRNA #7: GGUGGUACUGAGGACCGGGA
CpG 115に対するgRNA #8: AUUUUCUGGGUGCUCAGAGG
CpG 115に対するgRNA #9: UGGUCUCAGCUCGCGCACGG
CpG 115に対するgRNA #10: ACAAAGACAUACGGGGUGAU
IFNAR1を標的とするgRNAのヌクレオチド配列
gRNA #1: AGGAACGGCGCGUGCGCGGA
gRNA #2: AAGAGGCGGCGCGUGCGUAG
gRNA #3: GGGCGGUGUGACUUAGGACG
gRNA #4: CCAGAUGAUGGUCGUCCUCC
gRNA #5: GACCCUAGUGCUCGUCGCCG
gRNA #6: UGGGUGUUGUCCGCAGCCGC
gRNA #7: ACGGGGGCGGCGAUGCUGUU
gRNA #8: GACCGAAGGUUUCCCAGACU
gRNA #9: GUCGGGUUUAAUCUUUGGCG
gRNA #10: CGCUCCCGAGGACCCGUACA
gRNA #11: CGGGUCCCACCCCCGUGAAA
gRNA #12: UCAAACUCGACACAAAGCUC
gRNA #13: GCGGAGCCGCGGUACUUUCC
VEGFAを標的とするgRNAのヌクレオチド配列
gRNA #1: GGCGCGCGCGCUAGGUGGGA
gRNA #2: AGAGAGGCUCACCGCCCACG
gRNA #3:GUACGUGCGGUGACUCCGGU
表6
【0296】
BCL11A遺伝子を標的とするTALEのアミノ酸配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
対応するTALE結合部位のヌクレオチド配列
5′- TGGGCCCTCACGCCTTTCT -3′
表7
【0297】
上記明細書に記載の公表文献はすべて、参考として本明細書に含められる。本発明の範囲および精神から逸脱しない範囲での、記載された本発明の製品、使用、方法およびキットのさまざまな修正および変更は、当業者に明白であろう。本発明は、具体的な好ましい実施形態と関連して説明されたが、当然のことながら、特許請求された本発明は、そうした具体的な実施形態に過度に制限されるべきでない。たしかに、本発明を実施するための記載された方法のさまざまな修正が、生化学およびバイオテクノロジーもしくは関連分野の当業者には明白であり、それは以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。