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特開2022-68877金属ナノワイヤおよびポリマーバインダーを主成分とする透明導電性コーティング、その溶液処理、およびパターン化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068877
(43)【公開日】2022-05-10
(54)【発明の名称】金属ナノワイヤおよびポリマーバインダーを主成分とする透明導電性コーティング、その溶液処理、およびパターン化方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20220427BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220427BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220427BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220427BHJP
   G06F 3/045 20060101ALI20220427BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20220427BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220427BHJP
   B22F 1/0545 20220101ALI20220427BHJP
   B22F 1/062 20220101ALI20220427BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20220427BHJP
   B22F 1/103 20220101ALI20220427BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
H01B5/14 A
H01B13/00 503B
G06F3/041 495
G06F3/044 120
G06F3/045 G
B22F9/00 B
B22F1/00 K
B22F1/0545
B22F1/062
H01B1/22 A
H01B13/00 503D
B22F1/103
B22F9/24 F
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002511
(22)【出願日】2022-01-11
(62)【分割の表示】P 2020001550の分割
【原出願日】2014-11-14
(31)【優先権主張番号】14/087,669
(32)【優先日】2013-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514325310
【氏名又は名称】シー3ナノ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】C3Nano Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】シーチアン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】イン-シイ・リ
(72)【発明者】
【氏名】ユン-ユ・フアン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エス・スキャリー
(72)【発明者】
【氏名】クリフフォード・エム・モリス
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・ビーカー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属ナノ構造化ネットワークを含む高品質の透明導電性コーティングまたは膜の形成を提供する。
【解決手段】融着金属ナノ構造化ネットワークは、基板200に金属ナノワイヤ膜202を融着させて導電性ネットワークを形成することによって形成される。金属ナノワイヤ膜によるパターン化方法は、架橋用放射線204を用いてポリマーバインダーのパターン架橋を行い、パターン化された架橋膜208に、コーティング装置220を用いて融着溶液を塗布することによって、融着及び未架橋領域226によって分離された非融着及び架橋領域224のパターンを形成する。融着後の金属ナノ構造化ネットワークは、良好な光透過性及び低ヘイズを維持しながら望ましい低シート抵抗を得ることができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた基板であって、ナノ構造化金属ネットワークおよび架橋したポリマーバインダーを含み、約270Ω/□以下のシート抵抗、少なくとも約90%の光透過率、および約1%以下のヘイズを有する、前記基板の少なくとも一部の上の導電性コーティングを有する基板を含む、コーティングされた基板。
【請求項2】
前記導電性コーティングが前記基板表面の一部を覆い、前記基板表面の別の部分が、電気絶縁性コーティングであって、ポリマーバインダーおよび金属ナノワイヤを含み、少なくとも約20,000Ω/□のシート抵抗、少なくとも約90%の光透過率、および約1%以下のヘイズを有する電気絶縁性コーティングを含む、請求項1に記載のコーティングされた基板。
【請求項3】
前記基板がポリマーシートを含み、前記ナノ構造化金属ネットワークが銀を含み、通常の室内照明下ではパターンがほぼ見えない、請求項2に記載のコーティングされた基板。
【請求項4】
前記ポリマーバインダーが、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロース、またはそれらの混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティングされた基板。
【請求項5】
前記ナノ構造化金属ネットワークが、銀を含み、前記表面上で約0.5mg/m~約200mg/mの使用量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティングされた基板。
【請求項6】
前記コーティングが約150Ω/□以下のシート抵抗を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティングされた基板。
【請求項7】
前記コーティングが約95Ω/□以下のシート抵抗を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティングされた基板。
【請求項8】
前記コーティングが少なくとも約94%の光透過率、および約0.9%以下のヘイズを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティングされた基板。
【請求項9】
溶媒と、約0.01重量パーセント(重量%)~約2重量%の金属ナノワイヤと、約0.02重量%~約5重量%の架橋性有機ポリマーと、約0.05重量%~約2重量%の増粘剤とを含む、金属ナノワイヤインク。
【請求項10】
金属ナノワイヤインクと融着溶液とを含む導電性膜処理系であって、
前記金属ナノワイヤインクが、溶媒と、約0.01重量パーセント(重量%)~約2重量%の金属ナノワイヤと、約0.02重量%~約5重量%の架橋性有機ポリマーと、約0.05重量%~約2重量%の加工添加剤とを含み、
前記融着溶液が、溶媒と、融剤とを含む、導電性膜処理系。
【請求項11】
前記加工添加剤が、湿潤剤、ポリマー分散剤、増粘剤、またはそれらの混合物を含む、請求項10に記載の金属ナノワイヤインク。
【請求項12】
前記加工添加剤が増粘剤を含む、請求項10または11に記載の金属ナノワイヤインク。
【請求項13】
前記架橋性有機ポリマーが、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロース、またはそれらの混合物を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の金属ナノワイヤインク。
【請求項14】
約0.0005重量%~約1重量%の架橋剤をさらに含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の金属ナノワイヤインク。
【請求項15】
前記溶媒が水性溶媒である、請求項10~14のいずれか一項に記載の金属ナノワイヤインク。
【請求項16】
前記融剤が、ハロゲン化物アニオン、還元剤、塩基、またはそれらの好適な組合せを含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の金属ナノワイヤインク。
【請求項17】
約0.05重量%~約1重量%の金属ナノワイヤと、約0.05重量%~約2重量%の架橋性有機ポリマーと、約0.1重量%~約1.5重量%の加工添加剤とを含む、請求項10~16のいずれか一項に記載の金属ナノワイヤインク。
【請求項18】
パターン化された導電性透明コーティングの形成方法であって:
基板上のパターン化された初期コーティング層に、金属ナノワイヤ融着溶液を塗布して、約270Ω/□以下のシート抵抗を有する領域と少なくとも約20,000Ω/□のシート抵抗を有する領域とを有する異なるようにパターン化された導電性コーティングを形成するステップを含み、前記融着溶液は融剤を含み、前記パターン化された初期コーティング層は、金属ナノワイヤおよび未架橋の放射線硬化性ポリマーの領域と、金属ナノワイヤおよび架橋ポリマーの別の領域とを含み、前記融着溶液によって、前記金属ナノワイヤおよび未架橋ポリマーの少なくとも一部が、約270Ω/□以下のシート抵抗を有する融着金属ナノ構造化層に変換される、方法。
【請求項19】
金属ナノワイヤ焼結溶液を塗布するステップが、前記基板表面全体にわたって前記融着溶液をコーティングするステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基板が含み、前記異なるようにパターン化された導電性コーティングが、前記コーティングにわたって少なくとも約90%の光透過率と、前記コーティングにわたって約1%以下のヘイズと、通常の室内照明下でほぼ見えないパターンとを有する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記融着溶液を塗布するステップの後の所望の時間の後で前記コーティングを洗浄するステップをさらに含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ポリマーオーバーコートを塗布するステップをさらに含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記融剤が、ハロゲン化物アニオン、金属イオン源と組み合わせた還元剤、および有効量のアルカリ化剤から選択される、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
融着金属ナノ構造化ネットワークの形成方法であって:
少なくとも約3×10-5Mの水酸化物アニオン濃度または少なくとも約9.5pH単位のpHを有するアルカリ性組成物を有する融着溶液を金属ナノワイヤの層上に堆積して、前記金属ナノワイヤを融着させるステップを含む、方法。
【請求項25】
前記融着溶液が金属塩をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも約1×10-4Mの水酸化物アニオン濃度、または少なくとも約10pH単位のpHの、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記融着溶液が水性溶媒を含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記融着溶液がアルコール溶媒を含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記金属ナノワイヤの層が、基板表面上で約0.5mg/m~約200mg/mの使用量を有する、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
結果として得られる融着金属ナノ構造化ネットワークが、約300Ω/□以下の導電率、少なくとも約90%の透過率、および約1.1%以下のヘイズを有する、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
表面を有する基板、前記表面上にパターン化された導電性領域および電気絶縁性領域のパターン、ならびに導電性領域と前記パターン化された領域から離れた接続区域との間に電気伝導経路を形成する金属トレース、ならびに前記金属トレースの少なくとも一部を覆うポリマーオーバーコートを含む、パターン化された構造。
【請求項32】
前記導電性領域および前記電気絶縁性領域のそれぞれが、前記基板表面上で約0.5mg/m~約200mg/mの金属使用量を有し、前記電気絶縁性領域のシート抵抗が、前記導電性領域のシート抵抗の少なくとも約100倍である、請求項31に記載のパターン化された構造。
【請求項33】
前記電気絶縁性の領域が、前記導電性領域の少なくとも5分の1以下の金属使用量を有する、請求項31または32に記載のパターン化された構造。
【請求項34】
前記金属トレースが銀および/または銅を含む、請求項31~33のいずれか一項に記載のパターン化された構造。
【請求項35】
前記ポリマーオーバーコートが約500nm~約10ミクロンの厚さを有する、請求項31~34のいずれか一項に記載のパターン化された構造。
【請求項36】
前記接続区域が、前記基板の端部またはその付近に配置される、請求項31~35のいずれか一項に記載のパターン化された基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融着金属ナノ構造化ネットワークを用いて形成される透明導電性膜に関する。本発明は、さらに前駆体インク、処理方法、およびパターン化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性膜は、一部の状況において重要な機能を付与することができる。たとえば、導電性膜は、静電気が望ましくないまたは危険となりうる場合に静電気を散逸させるために重要となりうる。光学膜は、偏光、反射防止、移相、輝度向上、またはその他の機能などの種々の機能を得るために使用することができる。高品質ディスプレイは1つ以上の光学コーティングを含むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
透明導体は、たとえば、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)、太陽電池、およびスマートウィンドウなどのいくつかの光電子用途に使用することができる。歴史的には、高導電率における比較的高い透過性のため、インジウムスズ酸化物(ITO)が好適な材料となっている。しかしITOにはいくつかの欠点が存在する。たとえば、ITOは、脆性のセラミックであり、スパッタリングを用いて堆積する必要があり、この製造方法は高温および真空を伴い、そのため比較的時間がかかり費用対効果が高くない。さらに、ITOは可撓性基板上で容易に亀裂が生じることが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本発明は、基板の少なくとも一部の上に導電性コーティングを含むコーティングされた基板に関する。導電性コーティングは、ナノ構造化金属ネットワークおよび架橋したポリマーバインダーを含むことができ、約270Ω/□以下のシート抵抗、少なくとも約90%の光透過率、および約1%以下のヘイズを有することができる。ある実施形態において、基板は、絶縁性コーティングを含む基板表面の別の部分をさらに含む。絶縁性コーティングは、ポリマーバインダーおよび金属ナノワイヤを含み、少なくとも約20,000Ω/□のシート抵抗、少なくとも約90%の光透過率、および約1%以下のヘイズを有する。
【0005】
さらなる一態様において、本発明は、溶媒と、約0.01重量パーセント(重量%)~約2重量%の金属ナノワイヤと、約0.02重量%~約5重量%の架橋性有機ポリマーと、約0.05重量%~約2重量%の湿潤剤、ポリマー分散剤、増粘剤、またはそれらの混合物とを含む金属ナノワイヤインクに関する。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、金属ナノワイヤインクおよび融着溶液を含む導電性膜処理系に関する。ある実施形態において、金属ナノワイヤインクは、溶媒と、約0.01重量%~約2重量%の金属ナノワイヤと、約0.02重量%~約5重量%の架橋性有機ポリマーと、約0.05重量%~約2重量%の加工添加剤とを含み、融着溶液は、溶媒および融剤を含む。
【0007】
別の一態様において、本発明は、パターン化された導電性透明コーティングの形成方法であって、基板上のパターン化された初期コーティング層に金属ナノワイヤ融着溶液を塗布して、約270Ω/□以下のシート抵抗を有する領域と少なくとも約20,000Ω/□のシート抵抗を有する領域とを有する異なるようにパターン化された導電性コーティングを形成するステップを含む方法に関する。融着溶液は融剤を含むことができ、パターン化された初期コーティング層は、金属ナノワイヤおよび未架橋の放射線硬化性ポリマーの領域と、金属ナノワイヤおよび架橋したポリマーの別の領域とを含むことができる。
【0008】
別の態様において、本発明は、融着金属ナノ構造化ネットワークの形成方法であって、少なくとも約3×10-5Mの水酸化物アニオン濃度または少なくとも約9.5pH単位のpHを有するアルカリ性組成物を有する融着溶液を金属ナノワイヤの層上に堆積して、金属ナノワイヤを融着させるステップを含む、方法に関する。融着溶液は金属塩をさらに含むことができる。
【0009】
さらに、本発明は、表面を有する基板、表面上にパターン化された導電性領域および電気絶縁性領域のパターン、ならびに領域とパターン化された領域から離れた接続区域との間に電気伝導経路を形成する金属トレース、ならびに金属トレースの少なくとも一部を覆うポリマーオーバーコートを含む、パターン化された構造に関する。本発明のある実施形態において、導電性領域および電気絶縁性領域のそれぞれは、基板表面上で約0.5mg/m~約200mg/mの金属使用量を有し、電気絶縁性領域のシート抵抗は導電性領域のシート抵抗の少なくとも約100倍である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】1つの経路を有する導電性パターンを形成する基板表面に沿った融着金属ネットワークを示す概略図である。
図2】複数の導電性経路を有する導電性パターンを形成する基板表面に沿った融着金属ナノ構造化膜を示す概略図である。
図3図2の基板および融着膜の矢印3に沿った側面図であり、ポリマーオーバーコートが導電性膜の上に配置される。
図4】基板および融着膜の別の一実施形態の側面図であり、オーバーコートの下で導電性金属リードがパターン化される。
図5】タッチスクリーンまたはその他のセンサデバイスに組み込むために構成された、金属トレースおよびポリマーオーバーコートを有するパターン化された膜の上面図である。
図6】膜のパターン化放射線硬化に基づく金属ナノワイヤ膜のパターン化と、引き続く、硬化したポリマーパターンを導電性領域および電気抵抗領域の対応するパターンに変換するための融着溶液の塗布との処理ステップを示す概略図である。
図7】パターン化された膜に接触する導電性金属トレースの配置と、金属トレースおよびパターン化された膜の上へのポリマーオーバーコートの堆積とのプロセスの流れを示す概略図である。
図8】静電容量式タッチセンサを示す概略図である。
図9】抵抗式タッチセンサを示す概略図である。
図10】融着溶液を塗布した後のバインダーを有する銀ナノワイヤ膜の表面を示す走査型電子顕微鏡写真である。
図11】パターン化された膜の写真であり、長さ約3インチの一連の融着金属ナノ構造化された線を有し、基板に沿って種々の幅を有し、融着金属ナノ構造化膜の線を通過する幅2インチのストライプに沿ってポリマーオーバーコートが配置され、線の両端で各線の未被覆部分が残されている。
図12】融着およびエッチングを行って、長さ約3インチの一連の線に沿った部分を除いて融着金属ナノ構造化ネットワークが除去され、次にポリマーオーバーコートで覆われた銀ナノワイヤ膜の写真である。
図13】代表的な平均膜値の場合のシート抵抗およびヘイズ値の比較のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
高品質透明導電性コーティングまたは膜は、融着金属ナノ構造化ネットワークと、ポリマーバインダー、たとえば架橋したポリマーバインダーとを含むことができる。これらのコーティングは、ポリマーバインダーを用いて分散させた金属ナノワイヤを堆積するための溶液を使用し、次に、金属イオンを移動させて融着金属ナノワイヤネットワークを形成する融着溶液または蒸気を加えることで、効果的に形成することができる。ある実施形態において、コーティングは、低シート抵抗、可視光に対する良好な光透過性、および低ヘイズを同時に実現可能である。したがって、これらの膜は、透明導電体が望ましいある種の商業用途に好適である。コーティング方法は、高導電率の領域および高電気抵抗の別の領域を形成するための一連の好都合なパターン化方法に適合させることができる。パターン化は、別個のパターン化領域の間で高い光学的類似性を有するように行うことができる。いくつかのパターン化の選択肢を利用できるが、マスクを用いて前駆体膜を有する表面の照射に関してパターン化可能な架橋用放射線の使用、放射線の走査などの好都合なパターン化を発見した。放射線照射によって膜に沿ってパターン化領域を形成した後に融着溶液を塗布することで、表面の未架橋/未照射領域でナノワイヤの融着を生じさせて低シート抵抗金属ナノ構造化ネットワークを形成することができ、一方、基板の架橋/照射部分は電気抵抗性のまま維持できることを発見した。ポリマーオーバーコートによって、導電性膜をさらに安定化させ、望ましい光学的効果を得ることができる。
【0012】
導電性で光学的に透明の膜を形成するための処理は、金属ナノワイヤインクと、続いて融着溶液または蒸気との逐次堆積を含むことができる。金属ナノワイヤインクは、金属ナノワイヤインクの堆積によって高電気抵抗の膜を形成するために堆積することができる。融着溶液の堆積、または融着蒸気との接触によって、電気絶縁性金属ナノワイヤ膜を、融着金属ナノ構造化ネットワークを有する導電性ナノ膜に変換することができ、これより透明導電性電極またはその他の透明導電性構造を効果的に形成することができる。金属ナノワイヤインク中に適切なポリマーバインダーを含めることで、導電性の導入を制御する金属ナノワイヤ融着プロセスに干渉することなく、バインダーを含まない同様のインクを用いて得られる光学的性質と同等以上の良好な光学的性質を得ることができる。また、本明細書に記載の改善されたインク中のバインダーによって、望ましい加工性、および機械的安定化が得られる。さらに、融着溶液または蒸気を用いた膜の処理によって、数種類の別の処理方法に基づく膜全体にわたって導電率の望ましい高いコントラストと良好な光学的性質とを有するパターン化が可能となる。
【0013】
一般に、透明導電性層のパターン化は、融着金属ナノ構造化ネットワークに基づく導電性膜に対していくつかの方法で効果的に行うことができる。たとえば、良好な導電率を有する領域と、低導電率を有する領域とを形成するためのパターン化は、金属層被覆率のパターン化、融剤の堆積のパターン化、および/または融剤を送出する前のバインダー架橋のパターン化によって行うことができる。金属ナノワイヤ膜の融着を行うタイミングは、パターン化方法に合わせて選択することができる。融着は、ハロゲン化物系融剤、および/または化学的還元系融剤、および/または塩基性溶液を主成分とする融着溶液、および/または金属イオンを含有する融着溶液との接触に基づくことができる。
【0014】
金属ナノワイヤは、ある種の金属から形成することができ、金属ナノワイヤは市販されている。金属ナノワイヤは本来導電性であるが、金属ナノワイヤ系膜中の抵抗の大部分は、ナノワイヤ間の接合部によるものと考えられる。処理条件およびナノワイヤの性質によるが、比較的透明のナノワイヤ膜の堆積時のシート抵抗は、ギガΩ/□の範囲内またはさらにはそれ以上など非常に大きくなりうる。光透過性を損なうことなくナノワイヤ膜の電気抵抗を低下させるための種々の方法が提案されている。金属ナノ構造化ネットワークを形成するための低温化学融着は、光透過性を維持しながら電気抵抗を低下させるのに非常に有効であることが分かった。
【0015】
特に、金属ナノワイヤを主成分とする導電性膜の実現に関する顕著な向上は、金属ナノワイヤの隣接部分を融着させる、融着金属ネットワークの十分制御可能な形成方法の発見にあった。特に、ハロゲン化物イオンが金属ナノワイヤの融着を促進して、融着金属ナノ構造を形成できることが、以前の研究で発見された。融着を首尾良く実現し、それに対応して電気抵抗を大幅に低下させるために、種々の方法でハロゲン化物アニオンを含む融剤が導入された。特に、ハロゲン化物アニオンによる金属ナノワイヤの融着は、酸ハロゲン化物の蒸気および/または溶液を用いて、およびハロゲン化物塩の溶液を用いて実現されている。ハロゲン化物源による金属ナノワイヤの融着は、“Metal Nanowire Networks and Transparent Conductive Material”と題されるVirkarらの米国特許出願公開第2013/0341074号明細書、および“Metal Nanostructured Networks and Transparent Conductive Material”と題されるVirkarらの米国特許出願公開第2013/0342221号明細書(’221号出願)にさらに記載されており、これら両方が参照により本明細書に援用される。’221号出願には、室内照明下で通常の観察者が事実上見ることができない高導電率コントラストパターンを形成するためのHCl蒸気の選択的送出に基づく効果的なパターン化が記載されている。
【0016】
金属ナノワイヤの表面によって形成される金属ハロゲン化物によって、金属イオンの移動度/拡散係数が増加し、それによってナノワイヤ間の接触するまたはほぼ接触する場所における融着が生じ、融着ネットワークが形成されると考えられる。ハロゲン化物融剤が使用される場合、得られる融着ナノワイヤネットワークの上への金属ハロゲン化物シェルの形成を示唆する形跡がある。理論によって限定しようと望むものではないが、金属ナノワイヤ上の金属ハロゲン化物コーティングによって、ナノワイヤから金属原子/イオンが移動し、それによって移動したイオンが濃縮されることで、ナノ構造化ネットワークを形成する近傍のナノワイヤの間で接合部を形成し、ナノ構造中の金属原子の正味の移動を伴って融着ネットワークが形成されるときに、おそらくは自由エネルギーが低下すると考えられる。
【0017】
融着金属ナノワイヤネットワークの形成方法の拡張の1つは、得られる膜の光学的性質を損なわずに融着ナノワイヤを得ることができる還元/酸化(レドックス)反応に基づくものであった。理論によって限定しようと望むものではないが、この場合も推進力は、融着ナノ構造化ネットワークを形成するための接合部への金属の移動による自由エネルギーの低下であると思われる。接合部で堆積するための金属は、溶解させた金属塩として効果的に加えることができるし、または金属ナノワイヤ自体から溶解させることもできる。金属ナノワイヤを融着させてナノ構造化ネットワークを得るためのレドックス化学の効果的な使用は、“Fused Metal Nanostructured Networks,Fusing Solutions With Reducing Agents and Methods for Forming Metal Networks”と題されるVirkarらの米国特許出願公開第2014/0238833号明細書(’833号出願)(参照により本明細書に援用される)にさらに記載されている。本発明のインクは、ハロゲン化物およびレドックスに基づく化学的融着を伴う以前の研究に基づいて発展させたものである。’833号出願には、融着金属ナノ構造化ネットワークを形成するための1種類の方法も記載されるが、本発明では別個の融着溶液および/または融着蒸気を用いた処理に焦点を当てている。
【0018】
高pH、すなわちアルカリ性の融着溶液を金属ナノワイヤ膜に供給することに基づくナノワイヤのさらなる新規融着方法が本明細書に記載される。一般に、効果的な融着を実現するために、pHは約9.5pH単位を超えることができる。アルカリ性条件によって、金属イオンが金属ナノワイヤの表面に沿って効果的に移動すると考えられる。次に金属は、隣接する金属ナノワイヤ間の接触するまたはほぼ接触する場所まで選択的に移動して、それらのワイヤを融着させる。したがって、アルカリ性融着は、ハロゲン化物に基づく融着または還元に基づく融着に対する別の代案となる。
【0019】
ある実施形態において、金属ナノワイヤから形成された膜は、良好な導電率、高い光透過性、および低いヘイズを有することが望まれる場合がある。導電率はシート抵抗を用いて評価することができ、低いシート抵抗は良好な導電率に対応する。ヘイズは、画像をぼかしうる光の散乱に関連する。金属ナノワイヤ使用量が増加すると導電率が増加しうるが、使用量がより多いと一般に光学的性質が低下する。金属ナノワイヤ膜の導電率を増加させるために、機械的な力を使用してナノワイヤを互いにより近づけて接合部の抵抗を低下させることが提案されている。たとえば、“Transparent Conductors Comprising Metal Nanowires”と題されるAldenらに付与された米国特許第8,049,333号明細書(参照により本明細書に援用される)におけるナノワイヤ接合部の平坦化を参照されたい。同様に、接合部の抵抗を低下させるためのマトリックス中への金属ナノワイヤの埋め込みが、“Patterned Transparent Conductors and Related Manufacturing Methods”と題されるSrinivasらの米国特許出願公開第2013/0056244号明細書(参照により本明細書に援用される)にさらに記載される。対照的に化学的融着方法は、優れた光学的性質とともに低シート抵抗が得られることが示されており、ポリマーバインダーおよびその他の加工助剤を用いたインクの堆積に適合する。したがって、インクは、数種類の実際的パターン化の選択肢を用いて好都合に処理して、非常に大きな導電率のコントラストおよび良好な光学的性質を得ることができる。ある実施形態において、パターン化された膜は、パターンの部分の間で対応する低い光学的性質のコントラストを有することができる。
【0020】
前述のように、導電性膜を形成するための処理系は、金属ナノワイヤインクと、融着溶液、または蒸気融剤の供給源とを有することができる。ある実施形態において、金属ナノワイヤインクは、一般に溶媒、金属ナノワイヤ、架橋性ポリマーバインダー、1種類以上の任意選択のインク添加剤、たとえば任意選択の湿潤剤または任意選択の増粘剤、およびその他の任意選択の添加剤を含むことができる。以下にさらに議論するように、ナノワイヤ濃度は、インクの性質、および基板表面上に形成されるナノワイヤの使用量に影響を与える。ポリマーバインダーは、インクのレオロジーに影響を与えることができ、インクを安定化し、堆積された膜を安定化し、および/またはさらなるパターン化の選択肢を提供する。適切に選択されたバインダーによって、顕著な劣化を回避することができ、シート抵抗を増加させることなく、得られる透明導電性膜の光学的性質を少なくともある程度改善することができる。ポリマーバインダーとともに配合した金属ナノワイヤインクに関して、ナノワイヤインクは、ナノワイヤを選択的に融着させて融着金属ナノ構造化ネットワークを形成する能力を失うことなく、ポリマーバインダー中に埋め込まれた非融着金属ナノワイヤの高い電気抵抗を維持する驚くべき能力が得られる。したがって、ポリマーバインダーおよび他の添加剤は、基板に沿った領域間で導電率に関して高いコントラストを得る能力を妨害しない場合がある。
【0021】
融着溶液は、金属ナノワイヤを化学的に融着させて導電性ネットワークを形成する物質を提供することができる。この化学物質は、ハロゲン化物アニオン、および/または金属イオン源と組み合わされた還元剤であってよい。還元剤は、還元性アルコールなどの系の溶媒である場合もそうでない場合もある。金属イオン源、たとえば、金属ナノワイヤ自体から金属イオンを生成するための酸などの酸化剤であってよいし、またはナノワイヤ中の金属元素と同じ元素または異なる元素である金属イオンを得ることができる溶解した金属塩であってよい。一般に、過度の金属の移動および/または光学的性質に悪影響を与える傾向が生じうる金属イオン濃度を回避するために、融着に対して適度な推進力が融着溶液によって得られるべきである。融着溶液を乾燥させることによって、さらなる反応を停止させることができる。融着蒸気は、一般に酸ハロゲン化物蒸気を含み、これは、ガス貯蔵器から、または酸ハロゲン化物の溶液から発生する蒸気から得ることができる。
【0022】
透明導電性膜の処理の場合、選択された基板表面上にナノワイヤインクを最初に堆積することができる。インクは、スピンコーティング、スプレーコーティング、スロットコーティング、ナイフエッジコーティング、種々の印刷方法などのあらゆる妥当な方法を用いて一般に塗布することができる。堆積時のナノワイヤインクから形成された膜は、一般に高い電気抵抗を有することができ、これは、堆積時の膜がデバイスおよび表面の非導電性部分に組み込まれるパターン化方法の場合に非常に好ましくなりうる。パターン化されていない膜、または膜の一部のパターン化方法が使用される場合、非融着金属ナノワイヤ膜の領域は、最終膜まで進められないことがあり、そのため非融着膜の対応する性質は特に重要とならない場合がある。次に融着溶液をナノワイヤ膜に塗布することができる。融着溶液を乾燥させると、金属ナノワイヤが融着して、ポリマーバインダー中に埋め込まれたナノ構造化金属ネットワークを含む膜が形成される。ポリマーバインダーの存在がナノワイヤの融着を妨害することはなく、得られる融着膜は約300Ω/□以下、ある実施形態においては約100Ω/□以下などの望ましいシート抵抗値を有しうることが分かり、これらの値は透明導電性電極に望ましい範囲内である。ある実施形態において、融着溶液を乾燥させた後の膜は、少なくとも約85%などの高い光透過率、および約1.5%以下などの低ヘイズを有することができ、そのため導電性膜の光学的性質は、ポリマーバインダーの存在による悪影響が生じない場合がある。上記の明示される範囲内のシート抵抗および光学的性質のさらに別の範囲が考慮され、本開示の範囲内となることを当業者は認識されよう。
【0023】
ある実施形態において、パターン化は、基板表面に沿った金属使用量のパターン化に基づくことができ、これは減算的プロセスに基づくことができるし、または金属ナノワイヤの選択的堆積に基づくことができる。一般に、基板表面上の金属使用量に基づくパターン化は、選択された場所のみにインクを印刷することによって、および/または融着前または後の堆積された材料の選択的エッチングによって行うことができる。低金属使用量は、高電気抵抗が望ましい基板表面部分を対象とすることができる。たとえば、エッチングレジストをあるパターンで塗布することができ、たとえば、放射線系リソグラフィを使用したりレジストをあるパターンで印刷したりすることができ、適切なウェットエッチャントまたはドライエッチャントを用いて、レジストパターン中の開口部を通過する基板の露出部分の金属をエッチングすることができる。金属ナノワイヤ溶液の最初のパターン化は、パターン化されたレジストなどを使用して行って、開口部を有するパターンを形成することができ、それらの開口部を通して金属ナノワイヤインクを印刷することができる。同様に、グラビア印刷などの一部の印刷方法を使用して銀ナノワイヤのパターン化層を直接堆積することができ、それによって次に融着溶液/蒸気と接触させることで、融着ナノ構造化金属ネットワークのパターンが得られる。融着溶液は、表面全体に塗布することができるし、または金属ナノワイヤ堆積物のパターンに沿って塗布することができる。プロセスの適切な時点で、適切な溶媒との接触または別の適切な技術などによって、レジストを除去することができる。残存するフォトレジストを除去した後、ナノワイヤの融着前および/または融着後に、銀ナノワイヤのパターン化された膜を基板表面に残すことができる。堆積した金属の除去に関して、一般に、融剤の送出前または後に、選択的除去を行うことができる。
【0024】
特に、パターン化は、望ましくは融着溶液/蒸気の選択的作用に基づくことができ、選択的融着に基づくアプローチ(または、アプローチド、approached)を効果的に使用して、導電率で高いコントラストを有し目に見えるコントラストは小さくすることができる。特に、パターン化の2つの一般的な形態は、全体的な金属使用量が表面全体にわたってあまり変化しない場合で開発された。これらの方法において、膜全体にわたる導電率の差は、選択的融着によって生じるのであり、一般に金属の使用量によるものではない。これらの方法の両方によって、導電率の高いコントラストとともに良好な光学的性質、たとえば、屈折率、ヘイズ、および/または透過率を実現することができ、これらの光学的性質は、ある実施形態ではパターンの異なる領域で一致させる、または同一に近づけることができる。選択されたパターン化方法に基づくと、高導電率領域と電気絶縁性領域との間の高いコントラストによって、タッチディスプレイなどのディスプレイ用途の透明導電性電極中に効果的に使用できる膜が得られる。
【0025】
融着金属ナノワイヤ領域のパターン化は、融着溶液の送出のパターン化、および/または融着溶液の送出前のポリマーバインダーの選択的架橋に基づくパターン化によって行うことができる。融着溶液/蒸気が金属ナノワイヤ堆積物に効果的に接触する場所では、融着導電性ナノ構造化ネットワークが形成され、一方、融着溶液/蒸気に接触しない膜の別の部分は、高電気抵抗性のまま残ることができる。融着溶液および/または蒸気のパターン化堆積は、スクリーン印刷などによってあるパターンで堆積可能なレジストマスクなどのマスクを使用して、フォトリソグラフィまたは他の好適なパターン化方法によって行うことができる。あるいは、融着溶液は、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷などによって選択されたパターンで印刷することができる。一般に、融着溶液/蒸気によって、融着溶液/蒸気が遮断または回避される場所ではなく、融着溶液が作用する場所で、金属ナノワイヤが融着して、融着ナノ構造化ネットワークが形成される。
【0026】
さらに、放射線硬化性ポリマーバインダーを有する金属ナノワイヤ膜は、放射線のみを用いて、導電率に関して直接パターン化できることを発見した。特に、放射線硬化性ポリマーバインダーを有する金属ナノワイヤインクの堆積後、放射線マスクを通した放射線、表面にわたって適切に走査される集束放射線ビーム、または別の適切なパターン化方法によって提供可能なパターン化された放射線に表面を曝露することができる。放射線に曝露した後、金属ナノワイヤおよびバインダーを有する膜に融着溶液を加えることができる。未架橋バインダーの存在は、低電気抵抗膜を形成するための金属ナノワイヤの融着を妨害せず、一方、架橋したバインダーを有する膜は、高い電気抵抗を有して残存することができる。融着溶液は、未架橋ポリマーバインダーの一部、および/またはそれらの合成からナノワイヤと関連する一部のポリマーを除去することができる。金属ナノワイヤおよびポリマーバインダーを有する膜は、良好な光学的性質および非常に高いシート抵抗を有するように堆積することができ、それによって、選択された領域が融着すると、電気抵抗の高いコントラストを有するパターンを形成することができ、導電性および高抵抗の膜のすべての領域が良好な光学的性質を有することも分かった。ポリマーバインダーのパターン化架橋による膜の直接パターン化を用いた方法は、別の処理方法よりも処理ステップ数を減少させることが可能であり、導電率に関して高いコントラストのパターンが形成され、光学的性質のコントラストは小さく、ある実施形態においては光学的性質のコントラストが無視できる、または検出不可能となりうる直接的で有効な方法となる。
【0027】
パターン化の終了後、膜のさらなる保護のためにポリマーオーバーコートを堆積することが一般に望ましい。また、ある実施形態の場合、ポリマーオーバーコートは、膜全体の光学的均一性を改善し、それによってパターンがより目に見えなくできることが確認された。オーバーコートは、光学的界面と、膜を透過するときの屈折率の変化とに影響を与えうる。ポリマーオーバーコートは、たとえば溶媒系コーティング技術を用いて塗布することができる。導電性膜を外部回路に接続するための薄い金属の導電性グリッドを形成する処理方法が本明細書に記載される。別の設計においては、導電性膜と金属電極との間でオーバーコート層を通って電流が流れるように、ナノワイヤ膜を保護するポリマーオーバーコートの上に薄い金属電極またはトレースが配置される。融着金属ナノ構造化ネットワークに接触する金属トレースを導入し、金属トレースならびに基板表面の導電性膜および別の非導電性部分の上にポリマーオーバーコートを設けるために有効な方法が記載される。このデバイス設計は、本明細書に記載の処理方法の一部に特に好適となりうる。ポリマーオーバーコートの下に金属集電体を配置することで、より厚いポリマーコーティングが使用しやすくなり、それによって膜の耐久性を改善することができ、たとえば水または分子酸素および銀の移動による劣化を軽減することができる。
【0028】
融着ナノ構造化金属ネットワークから形成される透明導電性膜は、種々の用途で好適となる。たとえば、一部の太陽電池は受光面に沿って電極を有するように設計され、透明導電性電極がこの表面に沿うことが望ましい場合がある。また、一部のディスプレイデバイスは透明導電性電極を用いて製造することができる。特に、タッチ入力部は、本明細書に記載の透明導電性膜を用いて効果的に形成することができ、融着ナノワイヤ膜の効率的なパターン化を用いて、対応するパターン化されたタッチセンサを形成することができる。以下にさらに説明するように、タッチ入力またはセンサは、一般に、センサ表面に接触することによる静電容量の変化または電気抵抗の変化に基づいて動作することができる。本明細書に記載の処理方法によって、透明導電性膜の形成に対する顕著な商業的応用性を得ることができる。
【0029】
金属ナノワイヤインクとポリマーバインダーと他の性質改質剤との配合によって、望ましい堆積特性を有するインクの形成、および改善された機械的安定性を有する膜の形成が可能となった。得られる膜の光学的性質を大きく低下させることなく、インクおよび膜の改善を実現できた。驚くべきことに、ポリマーバインダーを有する膜は、金属ナノワイヤを選択的に融着させて低シート抵抗のナノ構造化金属ネットワークを形成する能力を妨害することなく、堆積によって高電気抵抗率を有する膜を形成する能力を引き続き示す。さらに、放射線硬化性ポリマーバインダーを使用することで、単純に膜に放射線を衝突させるパターン化に基づいて、膜の導電特性を効果的にパターン化する能力を得ることができる。したがって、膜の直接放射線パターン化によって、ある実施形態ではフォトレジストの堆積、現像、および/または引き続く除去を省くことができ、望ましい結果を得ることができ、対応するコストおよびプロセスを節約することができる。したがって、透明導電性膜を形成するための一連の望ましい市販製品および処理は、それら自体が本明細書に記載の改善されたインクに基づくことを示唆している。
【0030】
ナノワイヤインクおよび融剤
本明細書において特に関心の高い実施形態の場合、膜の処理は、2つの逐次堆積される材料の、金属ナノワイヤインクおよび融着溶液/蒸気の使用を含む。金属ナノワイヤインクは、ポリマーバインダーおよび場合により別の性質改質剤を含むことができる。ポリマーバインダーは放射線硬化性ポリマーなどの硬化性ポリマーであってよく、架橋プロセスを促進するために溶液中に放射線感受性架橋剤を含めることができる。硬化性ポリマーを使用することで、結果として得られる硬化膜は、向上した機械的安定性を有することができ、さらなるパターン化の選択肢の導入が可能となる。別個の融着溶液は、還元剤またはハロゲン化物イオンなどの融剤を含むことができる。好適な融着蒸気は、酸ハロゲン化物蒸気を含むことができる。
【0031】
特に、金属ナノワイヤ溶液は、十分に分散した金属ナノワイヤ、ポリマーバインダー、任意選択の架橋剤、任意選択の湿潤剤、たとえば界面活性剤、任意選択の増粘剤、任意選択の分散剤、およびその他の任意選択の添加剤を含むことができる。溶媒は、水性溶媒、有機溶媒、またはそれらの混合物を含むことができる。特に、好適な溶媒としては、たとえば、水、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、たとえばグリコールエーテル類、芳香族化合物、アルカン類など、およびそれらの混合物が挙げられる。具体的な溶媒としては、たとえば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第3級ブチルアルコール、メチルエチルケトン、グリコールエーテル類、メチルイソブチルケトン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、PGMEA(2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート)、またはそれらの混合物が挙げられる。溶媒は、金属ナノワイヤの良好な分散体を形成する能力に基づいて選択すべきであるが、溶媒は、添加剤がその溶媒に対して可溶性となるように、選択される別の添加剤にも適合させるべきである。
【0032】
金属ナノワイヤインクは、約0.01~約1重量パーセントの金属ナノワイヤを含むことができ、さらなる実施形態においては約0.02~約0.75重量パーセントの金属ナノワイヤ、さらなる実施形態においては約0.04~約0.5重量パーセントの金属ナノワイヤを含むことができる。前述の明示される範囲内の金属ナノワイヤ濃度のさらなる範囲が考慮され本開示の範囲内となることを当業者は理解されよう。金属ナノワイヤの濃度は、基板表面上の金属の使用量およびインクの物理的性質に影響を与える。
【0033】
ポリマーバインダーおよび溶媒は、一般に、ポリマーバインダーが溶媒に対して可溶性または分散性となるように一貫して選択される。適切な実施形態において、金属ナノワイヤインクは、一般に約0.02~約5重量パーセントのバインダー、さらなる実施形態においては約0.05~約4重量パーセントのバインダー、さらなる実施形態においては約0.1~約2.5重量パーセントのポリマーバインダーを含む。ある実施形態において、ポリマーバインダーは、放射線架橋性有機ポリマーなどの架橋性有機ポリマー含む。バインダーの架橋を促進するために、金属ナノワイヤインクは約0.0005重量%~約1重量%の架橋剤を含むことができ、さらなる実施形態においては約0.002重量%~約0.5重量%、さらなる実施形態においては約0.005~約0.25重量%含むことができる。ナノワイヤインクはレオロジー調整剤またはそれらの組合せを場合により含むことができる。ある実施形態において、インクは、表面張力を低下させるための湿潤剤または界面活性剤を含むことができ、湿潤剤はコーティング特性を改善するために有用となりうる。湿潤剤は一般に溶媒に対して可溶性である。ある実施形態において、ナノワイヤインクは、約0.01重量パーセント~約1重量パーセントの湿潤剤を含むことができ、さらなる実施形態においては約0.02~約0.75重量パーセント、別の実施形態においては約0.03~約0.6重量パーセントの湿潤剤を含むことができる。分散体を安定化させ、沈降を軽減または解消するためのレオロジー調整剤として増粘剤を場合により使用することができる。ある実施形態において、ナノワイヤインクは、場合により約0.05~約5重量パーセントの増粘剤を含むことができ、さらなる実施形態においては約0.075~約4重量パーセント、別の実施形態においては約0.1~約3重量パーセントの増粘剤を含むことができる。前述の明示される範囲内のバインダー、湿潤剤、および増粘剤の濃度のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0034】
一般に、ナノワイヤは、銀、金、インジウム、スズ、鉄、コバルト、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、チタン、銅、およびそれらの合金などの一連の金属から形成することができ、これらは高導電率のため望ましくなりうる。市販の金属ナノワイヤは、Sigma-Aldrich(Missouri、USA)、Cangzhou Nano-Channel Material Co.,Ltd.(China)、Blue Nano(North Carolina、U.S.A.)、EMFUTUR(Spain)、Seashell Technologies(California、U.S.A.)、Nanocomposix(U.S.A.)、ACS Materials(China)、KeChuang Advanced Materials(China)、およびNanotrons(USA)より入手可能である。特に銀は優れた導電率が得られ、市販の銀ナノワイヤを入手可能である。良好な透明性および低ヘイズを有するためには、ナノワイヤがある範囲の小さな直径を有することが望ましい。特に、金属ナノワイヤは平均直径が、約250nm以下、さらなる実施形態においては約150nm以下、別の実施形態において約10nm~約120nmであることが望ましい。平均長さに関して、より長いナノワイヤはネットワーク中でより良好な導電率が得られると推測される。一般に、金属ナノワイヤは平均長さが少なくとも1ミクロン、さらなる実施形態においては少なくとも2.5ミクロン、別の実施形態においては約5ミクロン~約100ミクロンであってよいが、将来開発される改善された合成技術によって、より長いナノワイヤの製造も可能となりうる。平均長さを平均直径で割った比としてアスペクト比を規定することができ、ある実施形態においては、ナノワイヤのアスペクト比は、少なくとも約25、さらなる実施形態においては約50~約10,000、さらなる実施形態において約100~約2000であってよい。前述の明示される範囲内のナノワイヤの寸法のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0035】
ある種のポリマーバインダーは、金属ナノワイヤの溶媒中の溶解/分散に好適となることができ、好適なバインダーとしては、コーティング用途に開発されたポリマーが挙げられる。ハードコートポリマー、たとえば、放射線硬化性コーティングが、たとえば、水性または非水の溶媒中に溶解させるために選択可能なある種の用途のハードコート材料として市販されている。好適な種類の放射線硬化性ポリマーとしては、たとえば、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ含有ポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。市販のポリマーバインダーの例としては、たとえば、NEOCRYL(登録商標)ブランドのアクリル樹脂(DMS NeoResins)、JONCRYL(登録商標)ブランドのアクリルコポリマー(BASF Resins)、ELVACITE(登録商標)ブランドのアクリル樹脂(Lucite International)、SANCURE(登録商標)ブランドのウレタン(Lubrizol Advanced Materials)、酢酸酪酸セルロースポリマー(Eastman(商標)のCABブランド)、BAYHYDROL(商標)ブランドのポリウレタン分散体(Bayer Material Science)、UCECOAT(登録商標)ブランドのポリウレタン分散体(Cytec Industries,Inc.)、MONWITOL(登録商標)ブランドのポリビニルブチラール(Kuraray America,Inc.)、セルロースエーテル、たとえば、エチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、それらの混合物などが挙げられる。ポリマーバインダーは、放射線に曝露して自己架橋することができ、および/またはそれらは光開始剤または他の架橋剤を用いて架橋させることができる。ある実施形態において、光架橋剤は放射線に曝露するとラジカルを形成することができ、次にそれらのラジカルがラジカル重合機構に基づく架橋反応を誘発させる。好適な光開始剤としては、たとえば、IRGACURE(登録商標)ブランド(BASF)、GENOCURE(商標)ブランド(Rahn USA Corp.)、およびDOUBLECURE(登録商標)ブランド(Double Bond Chemical Ind.,Co,Ltd.)、それらの組合せなどの市販製品が挙げられる。
【0036】
湿潤剤は、金属ナノワイヤインクの被覆性、および金属ナノワイヤ分散体の品質を改善するために使用することができる。特に、湿潤剤は、インクの表面エネルギーを低下させることができ、それによってコーティング後にインクが表面上に十分に広がる。湿潤剤は界面活性剤および/または分散剤であってよい。界面活性剤は、表面エネルギーを低下させる機能を果たす材料の種類の1つであり、界面活性剤は材料の可溶性を改善することができる。界面活性剤は、一般に、その性質に寄与する分子の親水性(または、ハイドロフィリック、hydrophylic)部分および分子の疎水性部分を有する。非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤などの広範囲の界面活性剤が市販されている。ある実施形態において、界面活性剤に関連する性質が問題とならない場合は、非界面活性剤湿潤剤、たとえば分散剤も、当技術分野において周知であり、インクのぬれ性を改善するために有効となりうる。好適な市販の湿潤剤としては、たとえば、COATOSIL(商標)ブランドのエポキシ官能化シランオリゴマー(Momentum Performance Materials)、SILWET(商標)ブランドのオルガノシリコーン界面活性剤(Momentum Performance Materials)、THETAWET(商標)ブランドの短鎖非イオン性フルオロ界面活性剤(ICT Industries,Inc.)、ZETASPERSE(登録商標)ブランドのポリマー分散剤(Air Products Inc.)、SOLSPERSE(登録商標)ブランドのポリマー分散剤(Lubrizol)、XOANONS WE-D545界面活性剤(Anhui Xoanons Chemical Co.,Ltd)、EFKA(商標)PU 4009ポリマー分散剤(BASF)、MASURF FP-815 CP、MASURF FS-910(Mason Chemicals)、NOVEC(商標)FC-4430フッ素化界面活性剤(3M)、それらの混合物などが挙げられる。
【0037】
増粘剤は、金属ナノワイヤインクからの固形分の沈降を軽減または解消することによって分散体の安定性を改善するために使用することができる。増粘剤は、インクの粘度またはその他の流体特性を顕著に変化させる場合もさせない場合もある。好適な増粘剤は、市販されており、たとえば、CRAYVALLAC(商標)ブランドの変性尿素、たとえばLA-100(Cray Valley Acrylics、USA)、ポリアクリルアミド、THIXOL(商標)53Lブランドのアクリル増粘剤、COAPUR(商標)2025、COAPUR(商標)830W、COAPUR(商標)6050、COAPUR(商標)XS71(Coatex,Inc.)、BYK(登録商標)ブランドの変性尿素(BYK Additives)、Acrysol DR 73、Acrysol RM-995、Acrysol RM-8W(Dow Coating Materials)、Aquaflow NHS-300、Aquaflow XLS-530疎水変性ポリエーテル増粘剤(Ashland Inc.)、Borchi Gel L 75 N、Borchi Gel PW25(OMG Borchers)などが挙げられる。
【0038】
さらなる添加剤を金属ナノワイヤインクに加えることができ、一般にそれぞれ約5重量パーセント以下、さらなる実施形態においては約2重量パーセント以下、さらなる実施形態においては約1重量パーセント以下の量で加えることができる。別の添加剤としては、たとえば、酸化防止剤、UV安定剤、脱泡剤または消泡剤、沈降防止剤、粘度調整剤などを挙げることができる。
【0039】
膜および融着金属ナノ構造化ネットワークを形成するための処理について以下にさらに記載する。融着は酸ハロゲン化物蒸気および/または融着溶液を用いて行うことができる。関連の実施形態において、最初の金属ナノワイヤ膜またはコーティングは、ハロゲン化物アニオン、還元剤、またはそれらの組合せなどの化学的融剤を含むことができる融着溶液を用いて融着させることができる。溶解したハロゲン化物アニオンによって誘導される融着に関して、溶液は、溶解した酸ハロゲン化物、溶解した金属ハロゲン化物塩、またはそれらの組合せを含むことができる。ハロゲン化物溶液を形成するための好適な組成物は、たとえば、HCl、HBr、HF、LiCl、CsCl、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KCl、MgCl、CaCl、AlCl、NHCl、NHF、AgF、またはそれらの組合せを含む。特に、NaCl、NaBr、およびAgFは、ある条件下では特に望ましい融着特性が得られることが確認されている。ハロゲン化物アニオン融剤を別に塗布するための融着溶液は、一般にハロゲン化物イオンを少なくとも約0.01mM、ある実施形態においては約0.1mM~約10M、さらなる実施形態においては約0.1M~約5Mの濃度で含む。前述の明示される範囲内の濃度のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0040】
還元剤を用いた融着に基づく実施形態の場合、溶液中の金属イオン源とは無関係に、還元剤は、隣接する金属ナノワイヤの接合位置に金属を堆積して、隣接する金属ナノワイヤを融着させて、融着ナノ構造化ネットワークを形成するのに有効となりうる。さらに、金属イオンが存在すると、それらはナノワイヤ間の領域に拡散することができ、ナノワイヤ間の接合部で還元されることができ、それによって電気化学的オストワルド型熟成が起こるが、その理由は、接合点における堆積はワイヤセグメントに沿った堆積よりも熱力学的に好適となりうるからである。融着溶液に加えられる金属塩は、ネットワークに加えられる最初の金属ナノワイヤと同じ金属元素または異なる金属元素を含むことができる。このようにして、融着ナノ構造化ネットワークの接合部は、ネットワーク中に含まれる最初の金属ナノワイヤ成分と同じ金属または異なる金属を含むことができる。ある実施形態においては、ナノ構造中で融着する金属ナノワイヤ成分とは異なる金属から接合部分が形成されることが望ましい場合がある。
【0041】
好適な還元剤は、金属イオンからその元素形態への還元:Ma+→Mを促進可能となるべきであり、式中のMは選択された金属であり、「a」は金属カチオンの酸化状態であり、Mはその金属の元素形態を示す。ある種の有機化合物などの穏やかな還元剤は、融着プロセスの促進に十分となりうることが分かった。たとえば、エタノールなどのアルコール溶媒は、少なくとも一部の金属の融着を促進することができる。本明細書における結果は、還元された金属が隣接する金属ナノワイヤの接合点に優先的に堆積することで、融着金属ナノ構造化ネットワークの形成が促進される傾向にあることを示唆している。選択された還元剤は、たとえば溶媒として、または溶媒混合物の成分として、または選択された濃度における溶質として、高濃度で存在することができる。種々のアルコールを銀、パラジウム、および銅の好適な還元剤として使用できる。特に、エタノールおよびプロピレングリコールは、融着金属ネットワークを形成するための金属の還元に有効であることが分かっている。アルコールは、アルデヒド/ケトンまで、またはカルボン酸まで酸化することができ、対応して金属カチオンを還元することができる。あるいは、有機または無機の還元剤などの別の還元剤を適切な濃度で融着溶液に加えることができる。
【0042】
複合系は、金属ハロゲン化物および還元剤を含む融着溶液を含むことができる。これらの系は、融着金属ナノ構造ネットワークの上に金属ハロゲン化物シェルを形成することが確認される。おそらく、これらの系は一方または両方の機構による接合部の融着を有することができる。
【0043】
金属ネットワークを融着させるための金属イオンが金属ナノワイヤ成分から供給される場合、融着溶液は一般に酸化剤および還元剤の両方を含む。金属カチオンのその場での生成に関して、硝酸などの酸化性酸を用いて金属ナノワイヤをエッチングして、すなわち酸化させて、金属カチオンを生成することができる。溶液中の酸化剤および還元剤の存在は、ある意味では、系のレドックス(還元-酸化)電位を緩衝し、これらのレドックス剤は所望の結果を得るためにバランスを取ることができる。酸化剤が過剰であると、希望より多くの金属をエッチングすることがあり、酸化剤が強すぎると、金属の還元を停止させることがあり、それによって別個のイオン源なしでは融着が起こらない場合がある。酸化剤および還元剤が適度にバランスが取れていると、金属がエッチングされて溶液中に金属イオンを供給することができ、還元剤は金属イオンを還元して元素金属を形成し、これは明らかに隣接する金属ナノワイヤの接合点に優先的に蓄積する。熟成プロセス中、金属は金属ワイヤから徐々に移動して融着接合部を形成する。したがって、ある実施形態では、格子の金属ナノワイヤセグメントからネットワークの接合部分までの正味の金属の移動が観察された。理論によって限定しようと望むものではないが、この観察は、接続されたセグメントから接合部分への金属の移動による自由エネルギーの減少を強く示唆している。融着速度は、酸化剤および還元剤のバランスの影響を受ける場合がある。このプロセスは、融着金属ネットワークの接合部の所望の程度の融着の後に適切に停止させることができる。反応の停止は、たとえば乾燥、洗浄、希釈、またはその他の妥当な方法によって行うことができる。
【0044】
ある実施形態において、還元/酸化化学に基づく金属ナノワイヤの融着に関して、融着溶液は、一般に還元剤と、金属イオン源と、一般に酸化性酸であってよい酸とを含む。酸は融着プロセスにあまり寄与しない場合があるが、酸は融着溶液を安定化させることが分かった。融着溶液を金属ナノワイヤと混合して、透明導電性膜を形成するための1つの溶液を形成することができるが、本発明における特に関心の高い実施形態では、融着溶液は、選択されたポリマーバインダーを含むことができる堆積された金属ナノワイヤ膜に別個に塗布することができる。種々の溶媒および溶媒の組合せを本明細書に記載の融着溶液に使用することができる。以下の表は、溶媒の性質の概略を詳細に示した溶媒の一覧であり、さらなる溶媒としては、たとえば、メタノール、ブタンジオール、ヒドロキシルアセトン、それらの混合物、以下の表中の溶媒との混合物、および表中に列挙される溶媒の混合物が挙げられる。
【0045】
【表1】
【0046】
ある実施形態において、融着溶液は、金属塩またはそれらの組合せを含むことができる。一般に、塩中の金属イオンは、ナノワイヤの金属と同じ金属元素、または異なる金属元素であってよい。一般に、金属元素は希望通りに選択することができ、良好な導電性を有する金属に対応する。好適な金属イオンとしては、たとえば、銀(Ag)、銅(Cu+2)、金(Au+3)、パラジウム(Pd+2)、鉛(Pb+2)、アルミニウム(Al+3)、ニッケル(Ni+2またはNi+3)、コバルト(Co+2またはCo+3)、亜鉛(Zn+2)、鉄(Fe+2またはFe+3)、スズ(Sn+2またはSn+4)、またはそれらの混合物などのイオンが挙げられる。一般に、塩は、ハロゲン化物アニオン、たとえば(AgF)を含むことができるし、および/または、所望の可溶性および/または反応性を得るためのアニオンを有することができる。好適なアニオンは、カルボン酸の塩基、たとえば、アセテート、トリフルオロメタンスルホネート(TMS)、へプラフルオロブチレート(FHB)、およびヘキサフルオロアンチモネート(HFA)、それらの組合せなどを含むことができる。アニオンは、融着溶液に所望の機能性を付与するために、酸化性酸、たとえば、ニトレート、パークロレート、および/またはサルフェートに対応させることができる。金属イオンを含む融着溶液に関して、融着溶液は金属イオンを一般に約0.000001M~約1M、さらなる実施形態においては約0.00001M~約0.1M、さらなる実施形態においては約0.0001M~約0.01Mで含むことができる。ある実施形態においては、金属イオンは、金属ナノワイヤの酸化によってその場で生成することができる。前述の明示される範囲内の金属イオン濃度のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0047】
還元/酸化に基づく融着を用いる系の場合、融着溶液は、酸濃度またはpHを調整するための酸を含むことができる。酸濃度/pHは、還元電位、反応物の可溶性、溶液の安定性、およびその他の性質に影響を与えうる。一般に、融着溶液は酸の添加によって調整されたpHを有し、pHは約0.5~約6、さらなる実施形態においては約1~約5.5、別の実施形態においては約1.5~約5であってよい。酸濃度に関して、酸、たとえば強酸は、一般に少なくとも約0.000001M、さらなる実施形態においては約0.0000025M~約0.05M、さらなる実施形態においては約0.000005M~約0.01Mの濃度で加えることができる。理論によって限定しようと望むものではないが、酸は、市販のナノワイヤをコーティングしている場合があるポリビニルピロリドン(または、ポリビニルペロリドン、polyvinylperolidone)(PVP)などの少なくとも一部の表面コーティングポリマーを除去することもできる。好適な酸としては、弱い酸化性酸(すなわち、Hイオンからの中程度の酸化活性)、たとえばHCl、リン酸、カルボン酸、RSOH(スルホン酸)、ポリスルホン酸、またはそれらの組合せを挙げることができる。好適な強酸化性酸は、一般にpHを低下させながら、そのアニオンを主成分とする有効な酸化剤を提供し、これは融着溶液の電位に影響を与えることができ、金属イオン源としての金属ナノワイヤのエッチングに使用することができる。好適な強酸化性としては、たとえば、HNO(硝酸)、HSO(硫酸)、HClO(過塩素酸)、それらの混合物などが挙げられる。前述の明示される範囲内のpHおよび酸濃度のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0048】
還元剤は、溶媒として、および/または溶媒への添加剤として提供することができる。たとえば、一部のアルコールは還元剤として有用となりうる。本明細書に記載の融着溶液の場合、好適なアルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、2-ブタノール、プロピレングリコール、糖、およびそれらの混合物が挙げられる。エタノールは、酸化されてアセトアルデヒドまたはアセテートを形成しながら、金属イオンを元素金属に還元することができ、別のアルコールも還元剤として機能する場合に同様に酸化されうる。還元剤が溶媒への添加剤として供給される場合、広範囲の有機および無機化合物を使用することができる。一般に、安定な融着溶液が望ましいということに基づいて、化合物の還元力はあまり強くない場合がある。他方、還元剤は、融着ステップの条件下で銀および/または別の金属イオンを元素金属まで還元するのに十分な強さとなるよう選択することができる。融着溶液の溶媒に対して可溶性である場合には、無機および有機金属化合物、典型的には金属塩および錯体を使用することができる。有用な塩としては、たとえば、V2+、Fe2+、Cr2+、Sn2+、Ti3+などの金属イオンの硝酸塩または硫酸塩、ならびに錯体が挙げられる。融着溶液に有用な別の無機還元剤は、酸化性アニオン、たとえばスルフィット、ヒドロスルフィット、チオサルフェート、ホスフィット、ヒドロゲンホスフィット、オキサレート、ホルメートなど、またはそれらの組合せのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、またはその他の塩である。さらに、還元性金属、たとえば、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウムなどのナノ粒子懸濁液を還元剤として適切な量で使用することができる。
【0049】
有機還元剤は、溶媒としても機能するものに加えて、ある実施形態において使用することができる。好適な有機還元剤としては、フェノール化合物、たとえばフェノール、アミノフェノール、ヒドロキノン、ピロガロール、カテコール、フェニドン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸など;ポリオール、たとえば糖アルコール;糖、たとえば単糖および二糖;ヒドロキシルアミンおよび誘導体;アルデヒド;α-ヒドロキシカルボニル化合物、たとえばヒドロキシケトン、たとえばベンゾイン、フロイン、ヒドロキシアセトン;ヒドラジド誘導体、たとえばフタルヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フェニドンなど;還元芳香族化合物(reduced aromatic compound)、たとえば1-メチル-1,4-シクロヘキサジエン、ジヒドロジアジンなど;およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に、還元剤は、融着溶液中に約0.001mM~約1000mM、さらなる実施形態においては約0.01mM~約100mM、さらなる実施形態においては約0.1mM~約10mMの濃度で含まれてよく、望ましい濃度は、一般に、選択された物質または物質の組合せの化学的性質によって影響され、当業者であれば、本明細書の教示に基づいて実験的にこれらの問題を評価することができる。前述の明示される範囲内の還元剤濃度のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。有機添加剤が還元剤として供給される場合、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ホルムアルデヒド、アセトン、その他のケトン、その他のアルデヒド、それらの混合物などの種々の溶媒が好適となりうる。
【0050】
アルカリ性の化学的性質に基づく融着溶液は、一般に、溶媒中に溶解するとアルカリ性pHを有する化合物を含む。好適な溶媒は、水、または水と水に対して可溶性の溶媒との混合物などの水性溶媒、またはアルコールなどの極性有機液体であってよい。好適な塩基性成物は、水酸化アンモニウム、金属水酸化物、またはそれらの混合物などの水酸化物組成物を含むことができる。一般に、塩基組成物は、少なくとも約9.5pH単位、さらなる実施形態においては少なくとも約10pH単位、別の実施形態においては約10.5pH単位~約13pH単位のpHを有する量で加えられる。塩基濃度に関して、アルカリ性組成物、たとえば水酸化物は、一般に少なくとも約0.00003M、さらなる実施形態においては約0.00005M~約0.5M、さらなる実施形態においては約0.0001M~約1Mの濃度で加えることができる。アルカリ性融着溶液は、好都合には金属塩をも含むことができる。融着溶液は、選択された送出方法に好適な溶液を得るために使用できる性質調整組成物をも含むことができる。
【0051】
透明導電性膜および膜構造を形成するための処理
特に関心の高い実施形態において、まばらなナノワイヤ膜が最初に分散され、引き続く処理で金属ナノワイヤを融着させて、導電性の金属ナノ構造化ネットワークを得るプロセスが使用される。融着プロセスは、融着蒸気への制御された曝露によって、および/または融着溶液の堆積によって行うことができる。融着ナノ構造化金属膜は、一般に、選択された基板表面上に形成される。一般に、膜は、融着後および融着前の両方で、透明性および低ヘイズを含めた良好な光学的性質を有する。処理は、以下にさらに記載されるような膜のパターン化に適合させることができる。保護カバーを提供するために、パターン化されていてもいなくても、導電性膜の上にポリマーオーバーコートを塗布することができ、そのポリマーは光透過性が維持されるように選択することができる。
【0052】
一般に、好適な基板は、個別の用途に基づいて希望通りに選択することができる。基板表面は、たとえば、ポリマー、ガラス、無機半導体材料、無機誘電体材料、ポリマーガラス積層体、それらの複合材料などのシートを含むことができる。好適なポリマーとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリノルボルネン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、ポリカーボネート、それらのコポリマー、またはそれらのブレンドなどが挙げられる。さらに、これらの材料は、融着金属ナノワイヤネットワークの上に配置されるポリマーオーバーコートを有することができ、オーバーコートポリマーは、前述の基板に関して列挙したポリマーを含むことができる。さらに、反射損失を軽減し、スタック全体の透過率を改善するために、最上部に、または導電性膜と基板との間に別の層を加えることができる。
【0053】
金属ナノワイヤインクを堆積する場合、ディップコーティング、スプレーコーティング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング、マイヤーロッドコーティング、スロットダイ、グラビア印刷、スピンコーティングなどのあらゆる妥当なコーティング方法を使用することができる。インクは、所望の堆積方法のために添加剤で適切に調節された粘度などの性質を有することができる。同様に、堆積方法では、堆積される液体の量に注目され、インク濃度は、表面上で金属ナノワイヤの所望の使用量が得られるように調節することができる。分散体を用いてコーティングを形成した後、ナノワイヤネットワークを乾燥させて液体を除去することができる。乾燥は、融着プロセスを行う前に行われる場合も行われない場合もある。
【0054】
融着の第1の方法は、HCl、HBr、HIまたはそれらの混合物からの蒸気などの酸ハロゲン化物蒸気を用いて行うことができる。HFも使用できるが、HFは一部の基板材料に対して腐食性となる場合があり、より毒性が高い。具体的には、乾燥させたコーティングを酸ハロゲン化物蒸気に短時間曝露することができる。ハロゲン化水素化合物は、気体であり、水およびアルコールなどの他の極性溶媒に対して可溶性である。一般に、金属ナノワイヤ膜を融着させるための蒸気は、ガス貯蔵器から、ハロゲン化水素化合物の溶液から生じる蒸気から、および/または別の供給源から発生させることができる。酸性蒸気を、たとえば約10秒間、コーティング表面上に迅速に流して、ナノワイヤネットワークを形成することができる。一般に、ナノワイヤを含有するコーティングは、酸蒸気で約4分以下、さらなる実施形態において約2秒~約3.5分、別の実施形態において約5秒~約3分処理することができる。また、酸発生化合物、たとえば光酸または光酸発生剤を含めることができる。これらの化学物質は、放射線照射に曝露した後、所望の酸(たとえばHCl)を生成することができる。したがってこのような化学物質をパターン化に使用することができる。ポリマーHCl発生剤としては、ポリクロロメチルスチレン、コポリ(クロロメチルスチレン-スチレン)(たとえば、Sigma-Aldrich製)、コポリ(クロロメチルスチレン-アクリル化メチルスチレン)、コポリ(クロロメチルスチレン-ジメチルアミノエチルアクリル化メチルスチレン)、またはコポリ(クロロメチルスチレン-トリメチルアミノエチルアクリル化メチルスチレン)などが挙げられ、これらは放射線に曝露するとHClを光化学的に生成することができる。また、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン(Sigma-Aldrich)などの小分子HCl光放出化合物も有用である。処理時間のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0055】
融着溶液の使用に関して、融着溶液は任意の妥当な堆積方法を用いて同様に塗布することができるが、異なる溶液に対して異なる堆積方法がより容易に有用となる場合がある。融着溶液は、たとえばスプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、ブレードコーティング、グラビア印刷、インクジェット印刷などを用いて堆積することができる。ある実施形態においては、乾燥プロセスによって金属イオン濃度が増加する融着溶液の乾燥中に融着が起こると考えられる。材料が乾燥すると、ナノ構造間の膜中の化学ポテンシャルが低下する領域に溶液がたまると考えられる。膜は、たとえばヒートガン、オーブン、サーマルランプなどを用いて乾燥させることができるが、ある実施形態では風乾可能な膜が望ましい場合がある。ある実施形態において、乾燥中に膜を約50℃~約100℃の温度に加熱することができる。乾燥後、過剰の固形分を除去してヘイズを低下させるために、膜は、たとえば、アルコールまたはその他の溶媒または溶媒混合物、たとえばエタノールまたはイソプロピルアルコールで1回以上洗浄することができる。一般に、融着は低温プロセスであると考えられ、乾燥を促進するための任意の熱の使用は融着に付随するものである。融着溶液を有さない領域の導電率が熱の使用によって増加しないことの明確な証拠をパターン化結果に見ることができる。
【0056】
金属ナノワイヤを融着させてネットワークを形成した後、一般に個別のナノワイヤはもはや存在しないが、ネットワークの形成に使用されるナノワイヤの物理的性質は融着金属ナノ構造化ネットワークの性質に反映されうる。金属の融着は、観察される導電率の向上、および低レベルの電気抵抗で実現可能な良好な光学的性質に寄与すると考えられる。融着は、処理中に隣接するナノワイヤのほぼ接触する場所において起こると考えられる。したがって、融着は、末端間の融着、側壁間の融着、および末端と側壁との融着を含みうる。融着の程度は、処理条件に関連しうる。望ましい膜特性を得ることができるように、ナノワイヤネットワークを劣化させずに、良好な融着を実現するために、処理条件の調節を行うことができる。
【0057】
基板上に送出されるナノワイヤ量は、所望の量の透明度および導電率を実現するための要因のバランスを伴うことがある。ナノワイヤネットワークの厚さは原則的には走査型電子顕微鏡法を用いて評価することができるが、ネットワークは光透過性を得るために比較的まばらであってよく、そのため測定が複雑になることがある。一般に、融着金属ナノワイヤネットワークの平均厚さは約5ミクロン以下、さらなる実施形態においては約2ミクロン以下、別の実施形態においては約10nm~約500nmとなる。しかし、融着ナノワイヤネットワークは一般に、サブミクロン規模の大きな表面テクスチャーを有する比較的開放された構造であり、一般に厚さの評価に間接的方法のみを使用できる。ナノワイヤの使用量は、容易に評価可能なネットワークの有用なパラメータとなることができ、使用量の値は厚さに関する別のパラメータとなる。したがって、本発明において使用される場合、基板上へのナノワイヤの使用量は、基板1平方メートルに対するナノワイヤのミリグラム数として一般に表される。一般に、ナノワイヤネットワークは、約0.1ミリグラム(mg)/m~約300mg/m、さらなる実施形態においては約0.5mg/m~約200mg/m、別の実施形態においては約1mg/m~約150mg/mの使用量を有することができる。前述の明示される範囲内の厚さおよび使用量のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0058】
パターン化されている場合もされていない場合もある金属層の上にポリマーオーバーコートまたは層を配置することが望ましい場合がある。一般に、ポリマーバインダーをポリマーオーバーコートとしての使用に適合させることができるが、さらなるポリマーを使用することができる。また、処理に関して、ポリマーオーバーコートは、溶液コーティング技術、または押出成形、積層、カレンダー加工、溶融コーティング技術などの別の処理方法を用いて塗布することができる。溶液処理されるオーバーコートの場合、前述の種々のコーティング方法をこれらの層に同様に使用することができる。しかし、ポリマーオーバーコートの溶液処理は、金属ナノワイヤの良好な分散体の形成に必ずしも適合しない溶媒を対象とすることができる。
【0059】
一般に、ポリマーオーバーコートは、約50ナノメートル(nm)~約25ミクロン、さらなる実施形態においては約75nm~約15ミクロン、さらなる実施形態においては約100nm~約10ミクロンの平均厚さを有することができる。前述の明示される範囲内のオーバーコートの厚さのさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。ある実施形態においては、オーバーコートの塗布後に導電性領域および絶縁性領域のパターンがより見えにくくなるような屈折率および厚さを選択することによって、オーバーコートを選択することもできる。オーバーコートは、約3nm~20ミクロンの範囲内の平均粒径を有することができる導電性粒子を含有することができる。これらの粒子、すなわち導電性要素は、一般に約0.1~80重量%の間の固形分を有するコーティング溶液の0.0001~1.0重量%の範囲であってよい。これらの粒子は、金属または金属コーティング、金属酸化物、導電性有機材料、および炭素の導電性同素体(カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、炭素繊維、カーボンブラックなど)、ならびに上記材料の混合物から構成されてよい。オーバーコートは高い導電率を実現すべきではないが、これらの導電性粒子によって、より厚いオーバーコートを堆積することができ、依然としてトレース電極に対して導電性となることができる。さらに、トレース電極を堆積した後に、導電性膜またはパターン化された膜の上にオーバーコート層を堆積することができる。これによって、より厚いオーバーコートを使用することができ、対応して安定化の利点が得られ、同時に、透明導電性層と銀(またはその他の)バスバーとの間の導電性を依然として維持することができる。
【0060】
オーバーコートは、基板表面全体を覆う場合もあるし覆わない場合もある。一般に、ポリマーは、オーバーコートが良好な光透過性を有するように選択することができる。ある実施形態において、ポリマーオーバーコートを有する膜の光学的性質は、導電性膜に関して前述した光学的性質と顕著な差はない。また、バインダー架橋のパターン化によって金属ナノワイヤを融着させることによるパターン化の場合、ポリマーオーバーコートの堆積によって、処理の終了時により見えにくいパターンの形成を促進することができ、オーバーコートを有して得られるパターンは通常の室内照明下でほぼ透明となりうることが分かった。
【0061】
膜の電気的および光学的性質
本発明の融着金属ナノ構造化ネットワークは、低い電気抵抗を得ながら、良好な光学的性質を得ることができる。したがって、本発明の膜は透明導電性電極などとして有用となりうる。透明導電性電極は、太陽電池の受光面に沿った電極などの一連の用途に好適となりうる。ディスプレイ、特にタッチスクリーンの場合、膜により形成される導電性パターンを得るために、膜をパターン化することができる。対応する非融着金属ナノワイヤ膜は、非常に高い電気抵抗および良好な光学的性質を有することができ、融着によって低い電気抵抗値の膜を得るのに好適な膜となる。数種類の異なるパターン化方法の詳細に関してパターン化が以下にさらに記載されるが、パターン化された膜は、パターンの異なる部分に対する電気抵抗の差に関して高いコントラストを有することができる。パターン化された膜を有する基板は、一般に、パターンのそれぞれの部分で良好な光学的性質を有する。しかし、パターンの視認性は、パターン化方法によって変化しうる。
【0062】
薄膜の電気抵抗は、シート抵抗として表すことができ、これは、測定方法に関連するパラメータによるバルク電気抵抗値と値を区別するためにオーム/スクエア(Ω/□またはΩ/sq)の単位で報告される。膜のシート抵抗は、一般に四探針測定または同等の方法を用いて測定される。以下の実施例において、膜シート抵抗は、四探針を使用して、または正方形を画定するために急速に乾燥させた銀ペーストを用いて正方形を作製することによって測定した。融着金属ナノワイヤネットワークのシート抵抗は、約300Ω/□以下、さらなる実施形態において約200Ω/□以下、さらなる実施形態において約100Ω/□以下、別の実施形態において約60Ω/□以下であってよい。前述の明示される範囲内のシートの抵抗さらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。個別の用途によるが、デバイス中に使用するためのシート抵抗の商業的仕様では、追加のコストを伴いうる場合などのシート抵抗値の低下を必ずしも目標としない場合があり、現在商業的に妥当な値は、たとえば、異なる品質のタッチスクリーンの目標限度としての150Ω/□、100Ω/□、50Ω/□、40Ω/□、30Ω/□以下に対して270Ω/□であってよい。したがって、適度により高いシート抵抗値のかわりに、より低コストの膜がある種の用途では好適となりうる。一般に、シート抵抗は、ナノワイヤの使用量を増加させると低下しうるが、使用量の増加は、別の観点から望ましくない場合があり、金属使用量は、低いシート抵抗値を実現するための多くの要因の1つにすぎない。
【0063】
透明導電性膜としての用途の場合は、融着金属ナノワイヤネットワークが良好な光透過性を維持することが望ましい。基本的に、光透過性は使用量と反比例し、使用量が多いと透過性が低下するが、ネットワークの処理も透過性に大きな影響を与えうる。また、良好な光透過性を維持するために、ポリマーバインダーおよび別の添加剤を選択することができる。光透過性は、基板を透過する光に対して評価することができる。たとえば、本明細書に記載の導電性膜の透過性は、UV-可視分光光度計を使用し、導電性膜および支持基板の全透過率を測定することによって測定することができる。透過率は、透過光強度(I)の入射光強度(I)に対する比である。膜の透過率(Tfilm)は、測定された全透過率(T)を支持基板(Tsub)の透過率で割ることによって評価することができる(T=I/IおよびT/Tsub=(I/I)/(Isub/I)=I/Isub=Tfilm)。したがって、報告される全透過率を補正して、基板の透過率を除くことで、膜単独の透過率を求めることができる。可視スペクトル全体にわたって良好な光透過性を有することが一般に望ましいが、便宜上、550nmの波長の光における光透過率を報告することができる。これとは別に、またはこれに加えて、透過率は、400nm~700nmの波長の光からの全透過率として報告することができ、そのような結果は以下の実施例で報告される。一般に、融着金属ナノワイヤ膜の場合、550nmの透過率および400nm~700nmの全透過率(または便宜上単に「全透過率」)の測定は定性的には異ならない。ある実施形態において、融着ネットワークによって形成された膜の全透過率は、少なくとも80%、さらなる実施形態においては少なくとも約85%、さらなる実施形態においては少なくとも約90%、別の実施形態においては少なくとも約94%、ある実施形態においては約95%~約99%である。透明ポリマー基板上の膜の透過性は、規格のASTM D1003(“Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics”)(参照により本明細書に援用される)を用いて評価することができる。前述の明示される範囲内の透過率のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0064】
また、良好な光透過性と低い電気抵抗との相関が特に望ましい場合がある。10Ω/□~約150Ω/□のシート抵抗を有するある実施形態において、膜の全透過率は少なくとも約86%、さらなる実施形態においては少なくとも約88%、別の実施形態においては約90%~約99%であってよい。さらなる実施形態において、膜は約40Ω/□~約125Ω/□のシート抵抗および約91%~約98.5%の全透過率を有することができる。別の一実施形態において、膜は約175Ω/□以下のシート抵抗および少なくとも約90%の全透過率を有することができる。前述の明示される範囲内の光透過率のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0065】
融着金属ネットワークは、望ましくは低いシート抵抗を有しながら、可視光の高い透過率とともに低ヘイズを有することもできる。ヘイズは上記参照のASTM D1003に基づいてヘイズメーターを用いて測定することができ、基板のヘイズの寄与を除いて、透明導電性膜のヘイズ値を求めることができる。ある実施形態において、焼結ネットワーク膜は約1.2%以下、さらなる実施形態においては約1.1%以下、さらなる実施形態においては約1.0%以下、別の実施形態においては約0.9%~約0.5%のヘイズ値を有することができる。前述の明示される範囲内のヘイズのさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0066】
本発明の膜の光学的性質の別の特徴の1つは、パターン化された膜、特に、良好な導電率、すなわち低電気抵抗の領域と、高電気抵抗の別の領域とを有するようにパターン化された膜に関するものである。特定のパターン化方法によって膜の全領域で良好な光透過性を有する膜が得られるが、パターン自体は、通常の室内照明下で標準的な人間観察者が、透明基板上の十分に照明された膜を見て目視で検出可能である。特に、パターン化が、基板の異なる領域上での金属使用量の変化に大部分が、または排他的に基づく場合、そのパターンは一般に観察によって容易に見ることができる。しかし、以下にさらに記載されるような選択的融着に基づくパターン化では、通常の白色室内照明下での人間観察者による検出で実質的に見ることができないパターンを得ることができる。目に見えないパターンを利用できることは、特定の用途に望ましい場合がある。
【0067】
パターン化
金属ナノワイヤを融着させて導電性ナノ構造化ネットワークを形成することによる導電性の導入は、効果的なパターン化方法の適応性のある収集の発見をもたらした。放射線架橋性ポリマーバインダーを用いた膜の形成では、膜を融着溶液に接触させる前に、ポリマーの選択的架橋によってパターン化可能という驚くべき結果が得られた。したがって、全体のパターン化は、金属使用量に基づくパターン化、融剤のパターン化送出に基づくパターン化、および融着溶液の送出前のポリマーバインダーの硬化に基づくパターン化の3つの大まかな分類で記載することができる。得られるパターン化膜の所望の処理の目的および性質を実現するために、特定のパターン化方法を選択することができる。
【0068】
基板表面に沿った融着導電性金属ナノ構造化ネットワークの個別のパターンは、一般に所望の製品によって決定される。言い換えると、導電性パターンによって、一般に、タッチスクリーンなどの領域などの機能性が得られる。当然ながら、一部の製品では、表面全体が導電性であってよく、これらの用途では、一般にパターンは形成されない。パターン化を伴う実施形態の場合、導電性融着金属ナノ構造化ネットワークを含む表面の比率は、一般に、選択された設計に基づいて選択することができる。ある実施形態においては、融着ネットワークは、表面の約0.5パーセント~約99パーセント、さらなる実施形態においては基板表面の約5パーセント~約85パーセント、さらなる実施形態においては約10パーセント~約70パーセントを構成する。前述の明示される範囲内の表面被覆率のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0069】
概略的な例として、融着金属ナノ構造化ネットワークは、図1に示されるような電気抵抗性領域104、106で囲まれた1つの導電性経路102を有する基板表面100に沿った導電性パターン、または図2に示されるような電気抵抗性領域128、130、132、134で囲まれた複数の導電性経路122、124、および126を有する基板表面120に沿ったパターンを形成することができる。図2に示されるように、融着領域は、導電性経路122、124、および126に対応する3つの別個の導電性領域に対応している。ポリマーオーバーコート142を有するポリマー基板140上の図2のパターン化された膜を有する構造の側面図を図3に示している。1つの接続された導電性領域および3つの独立して接続された導電性領域が図1~3に示されているが、2、4、または5以上の導電的に独立した導電性経路または領域を有するパターンを希望通りに形成できることを理解されたい。奥の商業的用途では、多数の要素を有する非常に複雑なパターンを形成することができる。特に、本明細書に記載の膜のパターン化に適合した利用可能なパターン化技術を用いて、非常に微細なパターンを高解像度の特徴で形成することができる。同様に、特定の導電性領域の形状を希望通りに選択することができる。
【0070】
別の一実施形態が図4に示されており、導電性融着金属ネットワークに接触してオーバーコートの下に配置された金属電極を有する。図4を参照すると、融着金属ナノ構造化ネットワーク150、152は、電気抵抗性領域154、156、158によって分離されている。ネットワーク150、152で示される膜は、基板160上に支持される。金属電極162、164によって、導電性ネットワーク150、152が適切な回路に電気的に接続される。ポリマーオーバーコート166は、導電性ネットワーク150、152および金属電極162、164を覆って保護する。金属電極162、164はオーバーコートの下にあるので、希望するなら、オーバーコートの電気絶縁効果のために、性能が悪い方向に変化させることなく、より厚いオーバーコートを使用することができる。センサ設計中に一体化された薄い導電性膜の上部の概略図を図5に示している。センサ170は、非融着金属ナノワイヤを含む場合も含まない場合もある絶縁性領域174で分離された、回転した正方形で示される導電性金属ナノ構造化膜部分172を含む。金属トレース176、178、180、182のそれぞれは、導電性膜172の横列を接続している。金属トレース176、178、180、182は、隣接する導電性膜部分172の間の接続セグメント184と、および金属トレースを電気回路に接続できるセンサの端部の接続区域186に向かう導電性部分とを含む。ポリマーオーバーコート190は導電性膜の上に配置される。
【0071】
表面の融着ネットワーク領域と、非融着ナノワイヤ領域との導電率の差によって、所望の機能を得ることができる。一般に、実施例に記載されるように、融着領域と非融着領域との間の導電率の相違またはコントラストは実施例に記載されるように非常に大きくなりうる。一般に、非融着金属ナノワイヤ領域のシート抵抗は、融着金属ネットワークのシート抵抗の少なくとも約10倍であり、さらなる実施形態においては融着金属ネットワークのシート抵抗の少なくとも約100倍、さらなる実施形態においては少なくとも約1000倍、別の実施形態においては少なくとも約1,000,000倍以上である(たとえば、最大で少なくとも10Ω/□以上)。高抵抗測定は、たとえば、非融着ネットワーク上または裸のポリマー基板上で、最初に試料の表面上に銀ペーストを塗布して正方形を画定することによって行うことができる。次に、銀ペーストを硬化させ乾燥させるために、試料を約120℃で20分間アニールすることができる。ワニ口クリップを銀ペーストに接続し、リード線を好適な高抵抗測定装置、たとえばAlphaLabs High Resistance Low Conductance Meterに電気遮蔽下で接続することができる。この装置は最大1999ギガオームまで測定可能である。前述の明示される範囲内のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0072】
金属使用量に基づくパターン化は、基板表面の選択部分の上への金属ナノワイヤインクの選択的堆積、および/または堆積された金属ナノワイヤまたはナノ構造化膜の選択的除去を含むことができる。堆積中のパターン化は、金属ナノワイヤインクの堆積の場合に前述している。金属ナノワイヤインクが選択された場所の上にのみ堆積される場合、融着溶液/蒸気を表面全体に接触させることができ、その理由は、金属ナノワイヤを有さない場所は融着溶液/蒸気と接触しても導電性とはならないからである。金属ナノワイヤインクが基板表面上に堆積される場合、融着の前または後、およびポリマーバインダーの硬化の前または後に、選択された領域を現像してその領域から金属を除去することができる。金属は適切なエッチングまたは洗浄またはその他の好適なプロセスによって除去することができる。たとえば、金属ナノワイヤのレーザーアブレーションが、「導電性パターン被覆体の製造方法および導電性パターン被覆体」と題される日本写真印刷株式会社に付与された日本特許第5289859号公報(参照により本明細書に援用される)に記載されている。ナノワイヤを融着させない場合は、ナノワイヤを除去するために洗浄ステップが好適となりうる。ナノワイヤを融着させる場合は、酸エッチング剤または別の好適なウェットエッチャントを使用することができる。ドライエッチングを行うこともできる。レジスト組成物などを用いて、エッチング/現像のパターン化を行うことができる。フォトレジストなどの広範囲のレジストをパターン化に使用することができ、それらは市販されている。光、たとえばUV光または電子ビームを用いるフォトリソグラフィを使用して、高解像度パターンを形成することができ、レジストを形成するウィンドウを通したエッチングによって金属ナノワイヤまたはナノ構造化膜のパターン化を行うことができる。ポジ型およびネガ型の両方のフォトレジストを使用することができる。放射線曝露および現像が行われてレジストがパターン化されるフォトリソグラフィを用いて、レジストを使用するパターン化を行うことができる。これとは別に、またはこれに加えて、レジストをパターン化するために、スクリーン印刷またはグラビア印刷などを用いてレジストを印刷して、本明細書に記載の処理されたパターン化を行うことができる。一般に、電気絶縁性領域の金属使用量が導電性領域よりも少ない実施形態の場合、電気絶縁性領域は、導電性領域に対して、少なくとも1.5分の1以下の金属使用量、ある実施形態においては少なくとも5分の1以下の金属使用量、さらなる実施形態においては少なくとも10分の1以下の金属使用量、別の実施形態においては少なくとも20分の1以下の金属使用量を有することができる。ある実施形態において、電気絶縁性領域は金属をほとんど有さなくてよい。前述の明示される範囲内の金属使用量の減少のさらなる範囲が考慮され本発明の範囲内となることを当業者は理解されよう。
【0073】
融着溶液/蒸気のパターン化送出に基づくパターン化に関して、金属使用量は、一般に、基板表面全体にわたってほぼ均一であってよい。融着溶液/蒸気が金属ナノワイヤと接触する場所では、ナノワイヤが融着して、低電気抵抗を有することができるナノ構造化ネットワークを形成し、融着溶液/蒸気が金属ナノワイヤ膜と接触しない場所では、ナノワイヤは高電気抵抗を有する非融着のままとなる。適切に選択されたレジストなどの蒸気遮断マスクを用いて、融着蒸気をパターン化することができる。スクリーン印刷、グラビア印刷、またはインクジェット印刷などの選択的印刷によって、またはレジストなどのマスクが存在するコーティングによって、融着溶液をパターン化することができる。フォトレジストをパターン化に使用することができ、フォトレジストの放射線画像を現像した後のフォトレジスト中のウィンドウから融着溶液/蒸気が送出される。融着の終了後、あらゆるマスクを除去することができる。FujiFilm OCG825、TOK THMR-i-P5680などの一般的なポジ型フォトレジスト、およびネガ型フォトレジストMicro Resist Technology MR-N 415などを使用することができる。融着溶液のインクジェット印刷などの直接印刷を用いると、レジストマスクを回避することができ、処理ステップ数が減少する。融着溶液の選択的効果を使用してパターンを形成する添加的パターン化方法は、膜の導電性領域と電気抵抗性領域との間で見え方の高度の類似性が得られ、さらに、融着方法により利用可能な好都合となりうる処理の選択肢が得られる。
【0074】
金属ナノワイヤ膜のパターン化および融着溶液のパターン化に基づく方法を組み合わせることができる。特に、基板の1つの大きな部分のみを覆うなどの金属ナノワイヤインクのより粗いパターン化を行い、次に融着溶液を用いてより微細なパターン化を行うことが有用となりうる。
【0075】
第3のパターン化方法において、適切に選択された硬化性バインダーを用いて、バインダーの架橋が金属ナノワイヤの融着を妨害することができ、一方、未架橋バインダーの存在はナノワイヤの融着を妨害しないことを発見した。したがって、架橋の適切なパターン化によって、パターン化を行うことができる。たとえば、紫外線、電子ビーム放射線、または赤外線によって得られる熱などの放射線によって架橋を誘導することができる。選択された領域にわたって放射線を遮断する放射線マスクを用いて、または表面全体にわたって放射線を走査することによってパターン化を行って、バインダーを選択的に架橋させることができる。このプロセスを図6に概略的に示している。第1の図には、金属ナノワイヤコーティングまたは膜202を有する基板200が示されている。第2の図では、マスク206を用いて放射線204をパターン化して、未架橋膜210の領域で分離された架橋膜208が形成される。続く第3の図では、適切に選択されたコーティング装置220を用いて融着溶液のリザーバー222から融着溶液が堆積されて、融着および未架橋領域226によって分離された非融着および架橋領域224のパターンが形成される。融着プロセスの終了後、表面全体にわたるさらなる放射線照射によって、または100℃で20秒~30分の加熱などの好適な穏やかな加熱によって、膜をさらに架橋させることができる。
【0076】
ある実施形態において、金属ナノ構造化膜は、インジウムスズ酸化物などの導電性金属酸化物の薄膜などの別の材料の代替品として使用することができる。たとえば、融着金属ナノ構造化膜を有するポリマーのロールをプロセス計画に組み込むことができる。ポリマーオーバーコートは、パターン化前に下に配置することができる。レーザーエッチング、またはウェットもしくはドライエッチングを用いたマスクなどによるパターン化を使用して、少なくとも一部の金属が除去された領域で分離された導電性膜の所望のパターン形成することができる。ポリマーオーバーコートは交換することもできるし、または完成することもできる。オーバーコートの上に金属トレースまたは集電体を配置することができる。ポリマーオーバーコートにある種の導電性希釈剤を加えることで、導電性パターンを短絡させることなくオーバーコートの抵抗を低下させることができる。
【0077】
融着金属ナノ構造化ネットワークの仕様に基づくパターン化の選択肢によって、別のプロセスの流れが示唆される。別のプロセスの流れでは、ポリマーオーバーコートを配置する前にパターン化が行われる。原理上は、このプロセスの順序は、前述のいずれかのパターン化方法を用いて行うことができるが、便宜上、このプロセスの流れは、非融着金属ナノワイヤの電気絶縁性領域と、融着金属ナノ構造化ネットワークを有する導電性領域とを有するパターン化層の状況で記載される。前述したように、この種類のパターン化は、融剤送出のパターン化によって、および/または金属ナノワイヤを有する膜中のポリマーバインダーの架橋のパターン化によって行うことができる。
【0078】
図7を参照すると、プロセスの流れを示す流れの矢印でプロセスの流れが示されており、これは一般に時間の流れに対応するが、物理的移動には対応する場合もしない場合もある。第1の図には、導電性領域252および非導電性領域254を有するパターン化膜を有する基板250が示されている。この図は特定の基板材料、すなわち、追加のポリマーハードコート層を有する熱安定化PETポリマーを示しているが、このプロセスは一般にあらゆる妥当な基板を用いて行うことができる。ある実施形態において、導電性領域252は融着金属ナノ構造化ネットワークを含み、非導電性領域254は非融着金属ナノワイヤを含む。図7の中央の図を参照すると、金属集電体またはトレース256が、導電性領域252に接触して堆積される。金属トレース256は、あらゆる妥当な方法を用いて堆積および/またはパターン化を行うことができるが、ある実施形態においては、導電性の銀または銅のペーストをスクリーン印刷し、加熱して、金属トレースを形成することができる。ある実施形態においては、めっき、熱分解、蒸着、スパッタリング、またはその他の妥当な薄膜堆積技術によって、銀、銅、または別の金属のトレースを堆積することができる。図7の最後の図では、コーティングされた基板250の上にポリマーオーバーコート260を配置することで金属トレース256が覆われる。
【0079】
タッチセンサ
本明細書に記載の透明導電性膜は、多くの電子デバイスで使用されるタッチスクリーンに適合可能となるタッチセンサ中に効果的に組み込むことができる。一部の代表的な実施形態が本明細書に概略的に記載されるが、透明導電性膜は別の所望の設計に適合させることができる。タッチセンサに共通の特徴の1つは、一般に、自然状態、すなわち、タッチまたはその他の外部の接触がない場合に、間隔を開けた構成の2つの透明導電性電極構造が存在することである。静電容量に基づいて動作するセンサの場合、一般に2つの電極構造の間に誘電体層が存在する。図8を参照すると、代表的な静電容量式タッチセンサ302は、ディスプレイ部品304、任意選択の底部基板306、第1の透明導電性電極構造307、ポリマーまたはガラスのシートなどの誘電体層308、第2の透明導電性電極構造310、任意選択の上部カバー312、およびセンサの接触に関連する静電容量の変化を測定する測定回路314を含む。図9を参照すると、代表的な抵抗式タッチセンサ340は、ディスプレイ部品342、任意選択の下部基板344、第1の透明導電性電極構造346、第2の透明導電性電極構造348、自然構成における電極構造の間隔を開けた構成を支持する支持構造350、352、上部カバー層354、および抵抗測定回路356を含む。
【0080】
ディスプレイ部品304、342は、LED系ディスプレイ、LCDディスプレイ、または他の所望のディスプレイの部品であってよい。基板306、344およびカバー層312、354は、独立して、透明ポリマーシートまたはその他の透明シートであってよい。支持構造は誘電体材料から形成することができ、センサ構造は所望の安定なデバイスを得るためのさらなる支持体を含むことができる。測定回路314、356は当技術分野において周知である。透明導電性電極307、310、346、および348は、融着金属ネットワークを用いて効果的に形成することができ、これらを適切にパターン化して別個のセンサを形成することができるが、ある実施形態においては、融着金属ネットワークによって一部の透明電極構造が形成され、デバイス中の別の透明電極構造は、インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープ酸化亜鉛などの材料を含むことができる。融着金属ネットワークは、本明細書に記載のように効果的にパターン化することができ、1つ以上の電極構造中のパターン化された膜からセンサを形成することが望ましい場合があり、それによって透明導電性構造中の複数の電極を、タッチプロセスに関連する位置情報を得るために使用できる。パターン化されたタッチセンサを形成するためのパターン化された透明導電性電極の使用は、たとえば、“Touch Sensor,Display With Touch Sensor,and Method for Generating Position Data”と題されるMiyamotoらの米国特許第8,031,180号明細書、および“Narrow Frame Touch Input Sheet,Manufacturing Method of Same,and Conductive Sheet Used in Narrow Frame Touch Input Sheet”と題されるSakataらの米国特許出願公開第2012/0073947号明細書に記載されており、これら両方が参照により本明細書に援用される。
【実施例0081】
25~50nmの間の平均直径および10~30ミクロンの平均長さの市販の銀ナノワイヤを以下の実施例で使用した。銀ナノワイヤ(AgNW)膜は以下の手順を用いて形成した。市販の銀ナノワイヤ(AgNW)を溶媒中に分散させてAgNW分散体を形成した。AgNW分散体は、典型的にはアルコール溶媒中0.1~1.0重量%の範囲内であった。次に、スプレーコーティングまたはハンドドローンロッド(hand-drawn rod)法を用いて、またはブレードコーティングによって、分散体をガラスまたはポリエチレンテレフタレート(PET)の表面上にAgNW膜として堆積した。次に、選択した融剤でAgNW膜をさらに処理して、融着金属ナノ構造化ネットワークを形成した。
【0082】
融着はHCl蒸気または融着溶液のいずれかを用いて行った。HCl蒸気を用いる場合、濃酸溶液をHCl蒸気源として使用した。コーティングした膜を蒸気に数秒間曝露することによって、HCl蒸気をAgNW膜に塗布した。融着溶液を用いた融着の場合、それぞれ約0.001mM~50mMのAg濃度および約0.001mM~50mMのHNO濃度を有するHNOおよびエタノール中のAgNO(またはAgF)で、膜の洗浄またはブレード処理を行った。
【0083】
ポリマー基板上の膜に対してヘイズメーターを用いて、AgNW膜試料の全透過率(TT)およびヘイズを測定した。以下の試料のヘイズ測定を調節するために、測定値から基板のヘイズ値を引くことで、透明導電性膜単独のおおよそのヘイズ測定値を求めることができる。装置は、ASTM D 1003規格(“Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics”)(参照により本明細書に援用される)に基づいて光学的性質を評価するために設計されている。これらの膜の全透過率およびヘイズは、ベースの全透過率およびヘイズがそれぞれ約92.9%および0.1%~0.4%であるPET基板を含む。シート抵抗は、他に指定されない限り四探針法を用いて測定した。以下の実施例において、数種類の異なる溶液融剤が示されている。(特に)融着前後の透明導体の性質および膜のシート抵抗を示している。代表的な平均膜値のシート抵抗およびヘイズ値の比較を図13に示している。ナノワイヤのネットワークは、銀と、インク分散剤またはバインダーとして機能できるある種のポリマーとで構成されうる。これらの実施例で形成した非融着金属ナノワイヤ膜に対して代表的な高抵抗測定を行った。測定を行うために、正方形の銀ペーストを試料表面上に塗布して正方形を画定し、次に、銀ペーストを硬化させ乾燥させるために、これを約120℃で20分間アニールした。ワニ口クリップを銀ペーストに接続し、リード線を市販の高抵抗測定装置に接続した。
【0084】
実施例1 AgNWインクの溶媒としての脱イオン水
この実施例では、AgNWインクの溶媒として機能する脱イオン水の能力を試験する。
【0085】
脱イオン水中にAgNWインクを作製した。これらのインクは、0.4~0.7重量%の濃度のELVACITE(登録商標)2669(Lucite International)または0.4~0.6重量%の濃度のSANCURE(登録商標)843(Lubrizol)のバインダーを含有した。一部の試料には、それぞれ0.1~0.45重量%の濃度で湿潤剤および増粘剤を加えた。AgNWインクは、約0.2重量%の銀ナノワイヤを有する。次に、マイヤーロッドまたはブレードコーティングを用いて、インクをPET基板上にコーティングした。ヒートガンまたはIRランプを数秒間用いて膜を急速に乾燥させて、金属ナノワイヤを大きく変質させることなく、溶媒を除去した。
【0086】
次に、前述のようにHCl蒸気、またはHNOおよびエタノール中のAgNOまたはAgFの融着溶液のいずれかの融着プロセスで膜の処理を行った。融剤塗布の前後の膜の性質を表1で比較している。融剤で処理した膜のすべてが顕著な抵抗の低下を示しており、これらの膜試料中での融着または融着が起こったことを示している。
【0087】
【表2】
【0088】
全体的に、蒸気融着の結果および溶液融着の結果は定性的には類似している。
【0089】
実施例2 脱イオン水および有機溶媒のAgNWインク中のバインダーの影響
この実施例では、脱イオン水および有機溶媒の混合物を溶媒として有するAgNWインクに加えられる異なるポリマーバインダーの使用を試験する。
【0090】
脱イオン水とエタノール、ブチルセロソルブ(BC)、またはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)との混合物中でAgNWインクを作製した。インクは、LubrizolのCARBOSET(登録商標)517H、CARBOSET(登録商標)CR 781、CARBOSET(登録商標)PC-27(アクリル樹脂)、Air ProductsのHYBRIDUR(登録商標)-870、HYBRIDUR(登録商標)-570(PUD)、BASFのJONCRYL(登録商標)1915、JONCRYL(登録商標)1919、JONCRYL(登録商標)95、JONCRYL(登録商標)1987、JONCRYL(登録商標)8383(アクリル樹脂)、Gellner Industrial,LLCのOTTOPOL K-633、OTTOPOL S-75、OTTOPOL 522(アクリル樹脂)、HenkelのQW 200、QW 93、QW18-1(PUD)、SF 18(PUD)、Resinate Materials Group,Inc.のR-162、R-170(PUD)、LubrizolのSANCURE(登録商標)815、SANCURE(登録商標)843、SANCURE(登録商標)843C、SANCURE(登録商標)878、SANCURE(登録商標)898、SANCURE(登録商標)OM-933、Bayer MaterialScienceのBAYHYDROL(登録商標)U XP 2239(PUD)、BAYHYDROL(登録商標)UH 2952(PUD)、またはDSM NeoResins,IncのNEOCRYL(登録商標)XK-98のバインダーを0.3~1.5重量パーセントの範囲で含んだ。一部の試料には、エポキシ官能化シランオリゴマー(EFSO)、または非イオン性界面活性剤(NIS)を約0.05~約0.2重量%の濃度で湿潤剤として加えた。一部の試料には、0.2~0.45重量%の濃度の変性尿素(MU)、0.2~0.45重量%の濃度のアクリル増粘剤(AT)、または0.1重量%の濃度のポリアクリルアミド(PAM)を増粘剤として加えた。一部の試料は、約0.02重量%~約0.05重量%の濃度のポリマー分散剤を含んだ。AgNWインクの組成を以下の表2に列挙する。次にマイヤーロッドまたはブレードコーティングを用いてインクをコーティングした。ヒートガンまたはIRランプを数秒間用いて膜を急速に乾燥させて、溶媒を除去した。
【0091】
次に、前述のようにHNOおよびエタノール中のAgNOの融着溶液を用いて膜の処理を行った。融剤塗布の前後の膜の性質を表2で比較している。
【0092】
【表3-1】
【0093】
【表3-2】
【0094】
【表3-3】
【0095】
【表3-4】
【0096】
シート抵抗の結果はすべてのポリマーバインダーでほぼ同等であった。
【0097】
実施例3 AgNW溶媒としての有機溶媒
この実施例では、AgNWインクの溶媒として機能する有機溶媒の能力を試験する。
【0098】
メチルエチルケトン(MEK)、イソブタノール(IBA)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、tert-ブチルアルコール(TBA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸n-ブチル(BA)、酢酸エチル(EA)、エタノール(EtOH)、乳酸エチル(ELA)、またはブチルセロソルブ(BC)の溶媒混合物中、またはトルエン/メタノール/シクロペンタノンの混合物(TMC)中でAgNWインクを作製した。インクは、Eastman ChemicalのCAB 171-15、Sigma-Aldrichのエチルセルロース(EC)、ポリビニルアセテート(PVAc)、Lucite InternationalのELVACITE(登録商標)2041、ELVACITE(登録商標)2010、ELVACITE(登録商標)2042、ELVACITE(登録商標)2045、ELVACITE(登録商標)2669、DSM NeoResinsのNEOCRYL(登録商標)XK-98、BASFのJONCRYL(登録商標)611、JONCRYL(登録商標)690、Kuraray American Inc.のMOWITOL(登録商標)B60HH(ポリ(ビニルブチラール))のバインダーを含有した。一部の試料は、ポリマーバインダーに対して1重量%~3重量%の濃度の架橋剤(DSM NeoResinsのCrosslinker CX-100)を含んだ。一部の試料は0.1重量%の濃度の湿潤剤としての界面活性剤を含んだ。一部の試料は0.4重量%~0.5重量%の濃度の増粘剤を含んだ。一部の試料は約0.02重量%~約0.05重量%の濃度のポリマー分散剤を含んだ。AgNWインクの組成を以下の表3に列挙する。次にマイヤーロッドまたはブレードコーティングを用いてインクをコーティングした。ヒートガンまたはIRランプを数秒間用いて膜を急速に乾燥させて、溶媒を除去した。
【0099】
次に、洗浄またはブレードコーティング(B)によって、前述のようにHCl蒸気、またはHNOおよびエタノール中のAgNOまたはAgF融着溶液のいずれかの融着プロセスを用いて膜の処理を行った。融剤塗布の前後の膜の性質を表3で比較している。
【0100】
【表4-1】
【0101】
【表4-2】
【0102】
【表4-3】
【0103】
特定の溶媒の組合せでは、融着せずに堆積した場合の高いシート抵抗を有するより一貫した膜が得られた。
【0104】
実施例4 酢酸n-ブチルおよびイソブタノール溶媒系AgNWインクを用いて形成した膜の抵抗率に対する分散剤の影響
この実施例では、n-酢酸ブチルおよびイソブタノールの溶媒のAgNWインクにおける抵抗率に対する分散剤の影響を試験する。
【0105】
約0.145重量%のAgNW濃度を有するAgNWインクを酢酸n-ブチルおよびイソブタノールの混合物(1:1v/v)中で作製した。インクは、Lucite InternationalのELVACITE(登録商標)2669のバインダーを0.70重量%の濃度で含有し、架橋剤(DSM NeoResinsのCX-100)を0.021重量%の濃度で含有した。インクは0.25重量%~0.3重量%の濃度のポリマー分散剤または界面活性剤も含有した。AgNWインクの組成を以下の表4に列挙する。次にマイヤーロッドを用いてインクをコーティングした。ヒートガンまたはIRランプを数秒間用いて膜を急速に乾燥させて、溶媒を除去した。
【0106】
次に、前述のようにHNOおよびエタノール中のAgNOを含有する融着溶液で膜を洗浄した。融剤塗布の前後の膜の性質を表4で比較している。
【0107】
【表5】
【0108】
全体的に膜は定性的に類似の性質を有した。
【0109】
実施例5 UVで誘発されるバインダー架橋のAgNW融着に対する影響
この実施例では、銀ナノワイヤのパターン化のためのUV硬化性樹脂を有する銀ナノワイヤ膜を試験する。
【0110】
表5に示すようにAgNWインク中に0.60重量%のUV硬化性樹脂を使用した。HO/EtOH中1重量%の濃度の光架橋剤を異なる比率でAgNWインク中に導入した。UVコンベアシステムを約100mW/cmおよび約5m/分で使用して、コーティングした膜試料を硬化させた。次に膜に対して、エタノールによる洗浄、または前述のようなHNOおよびエタノール中のAgNOからなる融着溶液の塗布を行った。膜の抵抗、PETの寄与も含めた全透過率およびヘイズ値を測定し、結果を以下の表5に列挙した。硬化が増加すると、抵抗が大幅に増加した。UV下に3回以上通した試料は、携帯型四探針の範囲外となった。
【0111】
【表6】
【0112】
結果は、膜の硬化によって、AgNWの融着による導電性膜の形成を妨害できることを示している。したがって、これらの結果は、架橋のパターン化によって、ナノワイヤの融着を効果的にパターン化できることを示唆している。
【0113】
実施例6 選択的融着のための強化ベースコート
この実施例では、銀ナノワイヤ膜のパターン化のための銀ナノワイヤ膜のUV架橋性材料を試験する。
【0114】
California Hardcoating CompanyのCalifornia Hard Coat溶液PermaNew 6000(V2)(CHC)を、表6に示すようにAgNWインク中に導入した。インクは、すべて重量基準で0.165%のAgNW、0.45%の増粘剤、0.6%のPUバインダー、および0.1%の湿潤剤を水-アルコール混合物溶媒中に含有した。UVコンベアシステムを約100mW/cmおよび約5m/分で使用して、特定の領域または試料を硬化させた。次に、膜に、前述のようなHNOおよびエタノール中のAgNOからなる融着溶液を塗布した。膜の抵抗、PETの寄与も含めた全透過率およびヘイズ値を測定し、結果を以下の表6に列挙した。試料5Aおよび5Bにおける最適条件では、融着溶液の塗布後の未硬化領域で約80Ω/□または約65Ω/□を示し、対照的に、硬化(露光)領域では範囲外の抵抗を示している。より低濃度のCHCにおいては、融着溶液によってすべての領域が導電性となる。中間濃度のCHCにおいては、硬化領域の抵抗は非常に高く、未硬化領域では<100Ω/□である。より高濃度のCHCにおいては、融着溶液を塗布したにもかかわらず抵抗が非常に高くなり、融着プロセスの妨害が示唆される。
【0115】
【表7】
【0116】
この実施例によって、ポリマーバインダーの架橋パターン化に基づいてシート抵抗をパターン化する、適切に形成された膜の能力が確認される。
【0117】
実施例7 UV硬化性Agナノワイヤインクを用いたパターン化
この実施例では、銀ナノワイヤの目に見えないパターン化のためのベースコート中のUV架橋性材料を試験する。
【0118】
表7に示すように、UV樹脂である、Bayer Material ScienceのBAYHYDROL(登録商標)UV 2689(UV 2689)、BAYHYDROL(登録商標)UV 2317(UV 2317)、CytecのUCECOAT 7674(登録商標)(UC 7674)、UCECOAT(登録商標)7655(UC 7655)、UCECOAT(登録商標)7699(UC 7699)、およびUCECOAT(登録商標)7890(UC 7890)を、AgNWインク中に0.30重量%の濃度で導入し、これとともに光架橋剤(光開始剤)を0.015重量%の濃度で導入した。次に試料を約100mW/cmおよび約5m/分のUVコンベアシステムに通して、露光領域を架橋させた。UV硬化後、次に膜に、前述のようなHNOおよびエタノール中のAgNOからなる融着溶液を塗布した。パターン化した膜の抵抗、PETの寄与も含めた全透過率およびヘイズ値を測定し、結果を以下の表7に列挙した。
【0119】
【表8】
【0120】
融着溶液を塗布し洗浄した後の膜の代表的な走査型電子顕微鏡写真を図10に示す。膜に沿って一部のポリマーバインダーが除去されたことを観察することができる。バインダーの除去が、ナノワイヤの融着と関連するかどうか、および/または膜の融着部分および非融着部分との間にある程度観察される視覚的な差と関連するかどうかは不明である。しかし、以下の実施例に記載されるように、ポリマーオーバーコートの塗布によって、膜の非融着部分と融着部分との視覚的な差を大きく減少させたり解消したりすることができる。
【0121】
実施例8 目に見えないパターン化のためのオーバーコート
この実施例では、選択的に融着させたAgNW膜中のパターンの視認性を低下させるオーバーコートの能力を示す。
【0122】
実施例7の選択的に融着させたAgNW膜に、UV硬化性ポリマーオーバーコート溶液をコーティングした。特に、実施例7の方法により種々の幅の長さ約3インチの線に沿って銀ナノワイヤを融着させた。前述の方法によって、コーティングした試料の全透過率およびヘイズの試験を行った。ポリマーオーバーコートは、パターン化された膜の中央の2インチのストライプに沿って配置し、オーバーコートの各末端に沿って突出した約半インチの融着させた導電性の線を残した。図11を参照すると、ポリマー基板上の膜は、基板表面の中央ストライプに塗布されたオーバーコートを有することが示されている。パターン化された線は、オーバーコートのいずれの側からも見ることができるが、オーバーコートが存在する位置ではパターン化は実質的に見えない。したがって、ポリマーオーバーコートがコーティングされたパターン化された試料では、パターンの視認性の大幅な低下が実証された。
【0123】
比較のため、銀ナノワイヤインクを基板上に堆積し、融着溶液を用いて融着させた。次に、この導電性膜をフォトリソグラフィによりパターン化し、エッチングして、一連の長さ約3インチの線に沿った部分を除いて融着金属ナノ構造化ネットワークを除去した。エッチングしフォトレジストを除去した後、膜は、図11に示す膜の形成に使用した同じポリマーオーバーコートで覆った。図12を参照すると、エッチングで形成したパターンは、ポリマーオーバーコートの塗布後も依然として見ることができ、したがって、金属の除去によって形成した導電性部分および抵抗性部分の目に見えるパターンは、ポリマーオーバーコートを加えることによって視認性が大幅に低下したとは言えない。
【0124】
実施例9 塩基性融着溶液
この実施例では、AgNW膜を融着させる塩基性融着溶液の能力を示す。
【0125】
酢酸ブチル-イソブタノール溶媒混合物中でAgNWインクを作製した。インクは、Lucite InternationalのELVACITE(登録商標)2669のバインダーを0.7重量%の濃度で含有し、DSM NeoResinsの架橋剤CX-100を0.014~0.035重量%で含有した。次にマイヤーロッドまたはブレードコーティングを用いてインクをコーティングした。ヒートガンまたはIRランプを数秒間用いて膜を急速に乾燥させて、溶媒を除去し、65℃で1分間加熱した。
【0126】
次に融着プロセスによる膜の処理を行い、膜の一部は塩基性融着溶液(水中0.1NのNaOH)で1分の処理を行い、同じコーティングの別の部分は、前述のようなHNOおよびエタノー中のAgNOの酸性融着溶液での噴霧洗浄に曝露した。融剤塗布の前後の膜の性質を表8で比較している。融剤で処理した膜はすべて、大幅な抵抗の低下を示し、これらの膜試料での融着または融着が起こったことを示している。
【0127】
【表9】
【0128】
この実施例によって、バインダーを含有するAgNWコーティングのシート抵抗を低下させる融剤としての塩基性溶液の能力が確認される。
【0129】
以上の実施形態は、説明的であることを意図しており、限定を意図したものではない。さらなる実施形態は請求項に含まれる。さらに、特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の意図および範囲から逸脱しない形態および詳細で変更が可能であることを、当業者は理解されよう。以上の文献の参照によるあらゆる援用は、本明細書に明示される開示に反する主題は含まれないように限定される。

本明細書の開示内容は、以下の態様を含む。

態様1:
コーティングされた基板であって、ナノ構造化金属ネットワークおよび架橋したポリマーバインダーを含み、約270Ω/□以下のシート抵抗、少なくとも約90%の光透過率、および約1%以下のヘイズを有する、前記基板の少なくとも一部の上の導電性コーティングを有する基板を含む、コーティングされた基板。

態様2:
前記導電性コーティングが前記基板表面の一部を覆い、前記基板表面の別の部分が、電気絶縁性コーティングであって、ポリマーバインダーおよび金属ナノワイヤを含み、少なくとも約20,000Ω/□のシート抵抗、少なくとも約90%の光透過率、および約1%以下のヘイズを有する電気絶縁性コーティングを含む、態様1に記載のコーティングされた基板。

態様3:
前記基板がポリマーシートを含み、前記ナノ構造化金属ネットワークが銀を含み、通常の室内照明下ではパターンがほぼ見えない、態様2に記載のコーティングされた基板。

態様4:
前記ポリマーバインダーが、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロース、またはそれらの混合物を含む、態様1~3のいずれかに記載のコーティングされた基板。

態様5:
前記ナノ構造化金属ネットワークが、銀を含み、前記表面上で約0.5mg/m~約200mg/mの使用量を有する、態様1~4のいずれかに記載のコーティングされた基板。

態様6:
前記コーティングが約150Ω/□以下のシート抵抗を有する、態様1~5のいずれかに記載のコーティングされた基板。

態様7:
前記コーティングが約95Ω/□以下のシート抵抗を有する、態様1~6のいずれかに記載のコーティングされた基板。

態様8:
前記コーティングが少なくとも約94%の光透過率、および約0.9%以下のヘイズを有する、態様1~7のいずれかに記載のコーティングされた基板。

態様9:
溶媒と、約0.01重量パーセント(重量%)~約2重量%の金属ナノワイヤと、約0.02重量%~約5重量%の架橋性有機ポリマーと、約0.05重量%~約2重量%の増粘剤とを含む、金属ナノワイヤインク。

態様10:
金属ナノワイヤインクと融着溶液とを含む導電性膜処理系であって、
前記金属ナノワイヤインクが、溶媒と、約0.01重量パーセント(重量%)~約2重量%の金属ナノワイヤと、約0.02重量%~約5重量%の架橋性有機ポリマーと、約0.05重量%~約2重量%の加工添加剤とを含み、
前記融着溶液が、溶媒と、融剤とを含む、導電性膜処理系。

態様11:
前記加工添加剤が、湿潤剤、ポリマー分散剤、増粘剤、またはそれらの混合物を含む、態様10に記載の金属ナノワイヤインク。

態様12:
前記加工添加剤が増粘剤を含む、態様10または11に記載の金属ナノワイヤインク。

態様13:
前記架橋性有機ポリマーが、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロース、またはそれらの混合物を含む、態様10~12のいずれかに記載の金属ナノワイヤインク。

態様14:
約0.0005重量%~約1重量%の架橋剤をさらに含む、態様10~13のいずれかに記載の金属ナノワイヤインク。

態様15:
前記溶媒が水性溶媒である、態様10~14のいずれかに記載の金属ナノワイヤインク。

態様16:
前記融剤が、ハロゲン化物アニオン、還元剤、塩基、またはそれらの好適な組合せを含む、態様10~15のいずれかに記載の金属ナノワイヤインク。

態様17:
約0.05重量%~約1重量%の金属ナノワイヤと、約0.05重量%~約2重量%の架橋性有機ポリマーと、約0.1重量%~約1.5重量%の加工添加剤とを含む、態様10~16のいずれかに記載の金属ナノワイヤインク。

態様18:
パターン化された導電性透明コーティングの形成方法であって:
基板上のパターン化された初期コーティング層に、金属ナノワイヤ融着溶液を塗布して、約270Ω/□以下のシート抵抗を有する領域と少なくとも約20,000Ω/□のシート抵抗を有する領域とを有する異なるようにパターン化された導電性コーティングを形成するステップを含み、前記融着溶液は融剤を含み、前記パターン化された初期コーティング層は、金属ナノワイヤおよび未架橋の放射線硬化性ポリマーの領域と、金属ナノワイヤおよび架橋ポリマーの別の領域とを含み、前記融着溶液によって、前記金属ナノワイヤおよび未架橋ポリマーの少なくとも一部が、約270Ω/□以下のシート抵抗を有する融着金属ナノ構造化層に変換される、方法。

態様19:
金属ナノワイヤ焼結溶液を塗布するステップが、前記基板表面全体にわたって前記融着溶液をコーティングするステップを含む、態様18に記載の方法。

態様20:
前記基板が含み、前記異なるようにパターン化された導電性コーティングが、前記コーティングにわたって少なくとも約90%の光透過率と、前記コーティングにわたって約1%以下のヘイズと、通常の室内照明下でほぼ見えないパターンとを有する、態様18または19に記載の方法。

態様21:
前記融着溶液を塗布するステップの後の所望の時間の後で前記コーティングを洗浄するステップをさらに含む、態様18~20のいずれかに記載の方法。

態様22:
ポリマーオーバーコートを塗布するステップをさらに含む、態様18~21のいずれかに記載の方法。

態様23:
前記融剤が、ハロゲン化物アニオン、金属イオン源と組み合わせた還元剤、および有効量のアルカリ化剤から選択される、態様18~22のいずれかに記載の方法。

態様24:
融着金属ナノ構造化ネットワークの形成方法であって:
少なくとも約3×10-5Mの水酸化物アニオン濃度または少なくとも約9.5pH単位のpHを有するアルカリ性組成物を有する融着溶液を金属ナノワイヤの層上に堆積して、前記金属ナノワイヤを融着させるステップを含む、方法。

態様25:
前記融着溶液が金属塩をさらに含む、態様24に記載の方法。

態様26:
少なくとも約1×10-4Mの水酸化物アニオン濃度、または少なくとも約10pH単位のpHの、態様24または25に記載の方法。

態様27:
前記融着溶液が水性溶媒を含む、態様24~26のいずれかに記載の方法。

態様28:
前記融着溶液がアルコール溶媒を含む、態様24~27のいずれかに記載の方法。

態様29:
前記金属ナノワイヤの層が、基板表面上で約0.5mg/m~約200mg/mの使用量を有する、態様24~28のいずれかに記載の方法。

態様30:
結果として得られる融着金属ナノ構造化ネットワークが、約300Ω/□以下の導電率、少なくとも約90%の透過率、および約1.1%以下のヘイズを有する、態様24~29のいずれかに記載の方法。

態様31:
表面を有する基板、前記表面上にパターン化された導電性領域および電気絶縁性領域のパターン、ならびに導電性領域と前記パターン化された領域から離れた接続区域との間に電気伝導経路を形成する金属トレース、ならびに前記金属トレースの少なくとも一部を覆うポリマーオーバーコートを含む、パターン化された構造。

態様32:
前記導電性領域および前記電気絶縁性領域のそれぞれが、前記基板表面上で約0.5mg/m~約200mg/mの金属使用量を有し、前記電気絶縁性領域のシート抵抗が、前記導電性領域のシート抵抗の少なくとも約100倍である、態様31に記載のパターン化された構造。

態様33:
前記電気絶縁性の領域が、前記導電性領域の少なくとも5分の1以下の金属使用量を有する、態様31または32に記載のパターン化された構造。

態様34:
前記金属トレースが銀および/または銅を含む、態様31~33のいずれかに記載のパターン化された構造。

態様35:
前記ポリマーオーバーコートが約500nm~約10ミクロンの厚さを有する、態様31~34のいずれかに記載のパターン化された構造。

態様36:
前記接続区域が、前記基板の端部またはその付近に配置される、態様31~35のいずれかに記載のパターン化された基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化された導電性透明コーティングの形成方法であって:
基板上のパターン化された初期コーティング層に、金属ナノワイヤ融着溶液を塗布して、約270Ω/□以下のシート抵抗を有する領域と少なくとも約20,000Ω/□のシート抵抗を有する領域とを有する異なるようにパターン化された導電性コーティングを形成するステップを含み、
前記融着溶液は融剤を含み、
前記パターン化された初期コーティング層は、金属ナノワイヤおよび未架橋の放射線硬化性ポリマーの領域と、金属ナノワイヤおよび架橋ポリマーの別の領域とを含み、
前記融着溶液によって、前記金属ナノワイヤおよび未架橋ポリマーの少なくとも一部が、約270Ω/□以下のシート抵抗を有する融着金属ナノ構造化層に変換される、方法。
【請求項2】
金属ナノワイヤ焼結溶液を塗布するステップが、前記基板表面全体にわたって前記融着溶液をコーティングするステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記基板が含み、前記異なるようにパターン化された導電性コーティングが、前記コーティングにわたって少なくとも約90%の光透過率と、前記コーティングにわたって約1%以下のヘイズと、通常の室内照明下でほぼ見えないパターンとを有する、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記融着溶液を塗布するステップの後の所望の時間の後で前記コーティングを洗浄するステップをさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーオーバーコートを塗布するステップをさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記融剤が、ハロゲン化物アニオン、金属イオン源と組み合わせた還元剤、および有効量のアルカリ化剤から選択される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
融着金属ナノ構造化ネットワークの形成方法であって:
少なくとも約3×10-5Mの水酸化物アニオン濃度または少なくとも約9.5pH単位のpHを有するアルカリ性組成物を有する融着溶液を金属ナノワイヤの層上に堆積して、前記金属ナノワイヤを融着させるステップを含む、方法。
【請求項8】
前記融着溶液が金属塩をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも約1×10-4Mの水酸化物アニオン濃度、または少なくとも約10pH単位のpHの、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記融着溶液が水性溶媒を含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記融着溶液がアルコール溶媒を含む、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属ナノワイヤの層が、基板表面上で約0.5mg/m~約200mg/mの使用量を有する、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
結果として得られる融着金属ナノ構造化ネットワークが、約300Ω/□以下の導電率、少なくとも約90%の透過率、および約1.1%以下のヘイズを有する、請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
表面を有する基板、前記表面上にパターン化された導電性領域および電気絶縁性領域のパターン、ならびに導電性領域と前記パターン化された領域から離れた接続区域との間に電気伝導経路を形成する金属トレース、ならびに前記金属トレースの少なくとも一部を覆うポリマーオーバーコートを含む、パターン化された構造。
【請求項15】
前記導電性領域および前記電気絶縁性領域のそれぞれが、前記基板表面上で約0.5mg/m~約200mg/mの金属使用量を有し、前記電気絶縁性領域のシート抵抗が、前記導電性領域のシート抵抗の少なくとも約100倍である、請求項14に記載のパターン化された構造。
【請求項16】
前記電気絶縁性領域が、前記導電性領域の少なくとも5分の1以下の金属使用量を有する、請求項14または15に記載のパターン化された構造。
【請求項17】
前記金属トレースが銀および/または銅を含む、請求項1416のいずれか一項に記載のパターン化された構造。
【請求項18】
前記ポリマーオーバーコートが約500nm~約10ミクロンの厚さを有する、請求項1417のいずれか一項に記載のパターン化された構造。
【請求項19】
前記接続区域が、前記基板の端部またはその付近に配置される、請求項1418のいずれか一項に記載のパターン化された基板。