(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006889
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】水漏れセンサー及び水漏れ検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20220105BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20220105BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20220105BHJP
A61F 13/42 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01N27/00 H
G01N27/06 A
A61F5/44 S
A61F13/42 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109454
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 春人
(72)【発明者】
【氏名】青野 拓実
【テーマコード(参考)】
2G060
3B200
4C098
【Fターム(参考)】
2G060AA07
2G060AC00
2G060AE12
2G060AF07
2G060AG10
2G060AG15
2G060FA01
2G060JA06
2G060KA05
3B200AA01
3B200CA02
3B200DF04
3B200DF05
4C098AA09
4C098CD09
(57)【要約】
【課題】簡便で安価な水漏れセンサー及び水漏れ検出装置。
【解決手段】基体12と、基体12上に形成された、水溶性バインダーと導電粉を含む導電性ペーストからなる回路14とを備えた水漏れセンサー10、並びに、水漏れセンサー10と、水漏れセンサー10の回路14に電圧を印加し、回路を流れる電流の変化を検出して表示する検出器22とを備えた水漏れ検出装置。この水漏れセンサー及び水漏れ検出装置であれば、簡便安価に水漏れを検出することができ、例えば、失禁センサーとして利用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体上に形成された、水溶性バインダーと導電粉を含む導電性ペーストからなる回路とを備えた水漏れセンサー。
【請求項2】
前記基体が水溶性フィルムである請求項1に記載の水漏れセンサー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水漏れセンサーと、該水漏れセンサーの前記回路に電圧を印加し、該回路を流れる電流の変化を検出して表示する検出器とを備えた水漏れ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水漏れセンサー及び水漏れ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、失禁を本人や介護者等へ速やかに知らせることができるように、電極を用いた種々の失禁センサーが開発されている。例えば、特開2007-240470号公報(特許文献1)には、オムツや下着などに電圧を印加した電極を配置し、尿に含まれる成分を電解液として、2つの電極間を短絡させることにより失禁を検出するというタイプの尿漏れセンサーが開示されている。また、特開2011-136055号公報(特許文献2)、特開2013-94175号公報(特許文献3)には、オムツや下着などにイオン化傾向の異なる2種類の電極を配置し、尿に含まれる成分を電解液として起電力を発生させることにより失禁を検出するという、一次電池(ボルタ電池)の技術を応用したタイプの失禁センサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-240470号公報
【特許文献2】特開2011-136055号公報
【特許文献3】特開2013-94175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いずれのものも簡便安価に製造できるものとは言い難く、普及の足かせになっていた。
本発明は、簡便で安価な水漏れセンサー及び水漏れ検出装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、樹脂に導電性の粒子が分散された所謂導電性ペーストによって回路を形成することで、安価で簡便な水漏れセンサーを実現できることを見出した。
本発明の水漏れセンサーは、基体と、該基体上に形成された、水溶性バインダーと導電粉を含む導電性ペーストからなる回路とを備えたものである。
ここで、基体は水溶性フィルムであることが望ましい。
本発明の水漏れ検出装置は、水漏れセンサーと、水漏れセンサーの回路に電圧を印加し、回路を流れる電流の変化を検出して表示する検出器とを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水漏れセンサー及び水漏れ検出装置は簡便なもので安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の水漏れセンサー及び水漏れ検出装置の一例を示す平面図である。
【
図2】本発明の水漏れセンサー及び水漏れ検出装置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<水漏れセンサー>
本発明の水漏れセンサーは、基体と、基体上に形成された回路とを備えている。
回路は、水溶性バインダーと導電粉を含む導電性ペーストで形成される。
水溶性バインダーとしては、水溶性の樹脂が適用できる。水溶性の樹脂としては水酸基を持ったセルロース樹脂等が挙げられ、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)等が挙げられる。
水溶性バインダー中に分散される導電粉としては特に限られるものではなく、銀、ニッケル、銅、金、白金、カーボン、グラファイト等が挙げられる。価格と安定性のバランスから銀、カーボン、グラファイト等が好ましい。銅は耐酸化性に劣り、ニッケルは成体に接触する可能性の有る用途の場合金属アレルギーの懸念がある。金、白金は高価である。
導電粉として銀粉を使用した場合、銀粉/水溶性バインダーの比率は70/30~90/10が好ましい。また導電粉としてカーボンやグラファイトを用いた場合、カーボンあるいはグラファイト/水溶性バインダーの比率は30/70~80/20が好ましい。
導電性ペーストは溶剤を含んで良い。含まれる溶剤は水以外の有機溶剤も使用できる。水以外の有機溶剤を併用する場合は、極性が高く水と相溶しやすいアルコール類やグリコール類をさらに併用すると、回路形成時の溶剤による水溶性フィルムに対する攻撃性を調整できる
【0009】
基体としては、その上に導電性ペーストからなる回路を形成できる非導電性のものであればよく、様々な材料を適用できる。但し、衣服に設けるなど、動きが想定される箇所に設ける場合には可撓性のあるものが望ましい。また、使用勝手などからなるべく薄いことが望ましい。これらからフィルムであることが望ましい。例えば、ポリエステル、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムが挙げられる。
さらに、このフィルムも水溶性であることが望ましい。例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、デンプン、水酸基を持ったセルロース等が挙げられる。水溶性フィルムであることで、水が接触した際に回路と同様に膨潤あるいは溶解するため、より回路の破断や抵抗値の上昇を起こし易くなる。溶解にまで到らなくても、水に触れることによって崩壊するような材料でも好ましい。例えば、紙等が挙げられる。
基体には、必要に応じて、回路が形成されていない面に、この水漏れセンサーを取り付けるための粘着層などを設けても良い。
また、回路が形成される側の面においても、例えば、肌触りをよくする透水性の織布、不織布などを設けてもかまわない。
【0010】
水漏れセンサーは、水漏れを検出したい箇所に配置される。
図1は、おむつ30に水漏れセンサー10が貼着された例を示す。
フィルム状の基体12上に回路14が形成されている。この例では一端から2往復するようにして同端に戻るように形成されている。
回路の形状は特に制限されるものではなく、検知しようとする水と接触しやすいようにすることが重要である。
図2に示す例では、回路14は蛇行しながら1往復する形状とされている。
基体上に回路を形成する方法としては印刷が最も適しているが、その他にディスペンサーによる塗布、刷毛による塗布などでも可能である。
【0011】
<水漏れ検出装置>
水漏れ検出装置は、上述した水漏れセンサーと、その水漏れセンサーの回路に電圧を印加し、回路を流れる電流の変化を検出して表示する検出器とを備えている。
例えば、検出器としては、回路に電気を流す電源機構と、その回路中の電流変化を計測する計測機構と、計測機構での結果を表示する表示機構を備える。
電源機構としては、電池などが挙げられる。
計測機構としては、電流計などが挙げられる。
表示機構としては、回路が通電しているときには点灯し遮断したときに消灯する、又は、回路が通電しているときには消灯し遮断したときに点灯するランプや、抵抗値を表示するデジタルメータなどが挙げられる。
これらの各機構は、一体的なものであっても、また、分離されたものであってもかまわない。
また、回路と検出器の間、又は、検出器内における各機構間は、目的に則して電気的に接続され、有線の他、無線であってもよい。
図1、2に示す水漏れ検出装置20は、上記各機構が一体に纏められた検出器22が水漏れセンサー10と有線で接続されている一例である。
【0012】
水漏れセンサーは、水溶性バインダーを用いた導電性ペーストによって形成された導電回路を有している為、電圧を印加しておくことにより、通電状態となる。しかし、水が接触することにより、導電回路の水溶性樹脂が膨潤あるいは溶解し、導電回路が切断されるか、抵抗値が大幅に上昇する。そこで、この水漏れセンサーを備えた水漏れ検出装置であれば、その電流の変化を検出ないし表示することにより、回路に水が接触したことを検出できるようになる。
しかも非常に安価かつ簡便なものである。
【実施例0013】
フィルム上に幅5mm、長さ50mm、厚さ15μmの直線状の回路を形成して水漏れセンサーを構成した。
その回路の両端にデジタルマルチメータの電極を接続し、回路の抵抗値を計測できるようにして水漏れ検出装置を構成した。
回路は、表1、2に示す樹脂バインダーと導電粉を予備混合後に三本ロールで溶剤(テルピネオール)に分散して導電性ペーストとし、スクリーン印刷にて形成した。
バインダー:
HPC1(ヒドロキシプロピルセルロース);「クルーセルH」ハーキュレス株式会社
HPC2(ヒドロキシプロピルセルロース);「NISSO HPC H」日本曹達製
HEC(ヒドロキシエチルセルロース);「HEC SE550」ダイセルファインケム株式会社製
導電粉:
銀粉;「SF70M」フェロージャパン株式会社製
カーボンブラック;「プリンテックスL6」デグサ株式会社製
基体:
PVAフィルム;ソルブロンTS 25μm 株式会社アイセロ製
PETフィルム;ミラー25S10 25μm 東レ株式会社製
【0014】
回路に水1ccを滴下し、滴下3分後及び5分後の抵抗値の変化を調べた。
【0015】
【0016】
【0017】
表1、2に示されているように、水滴を付着させた後すみやかに抵抗値が増大し、擬似的に水漏れがあったことを検知できるものであった。特に、基体として水溶性フィルムを用いた実施例1~10はより感度の高いものであった。