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特開2022-6896アスベスト除去方法および剥離塗材回収システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006896
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】アスベスト除去方法および剥離塗材回収システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109465
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】516049272
【氏名又は名称】株式会社マルホウ
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 裕己
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA01
2E176BB36
(57)【要約】
【課題】塗材層を剥離したときに下地調整層の表面に残留した塗材をアスベストが飛散しないように除去することができるアスベスト除去方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート層12と、コンクリート層12の表面に形成された下地調整層11と、下地調整層11の表面に形成されており、アスベストを含有する塗材により形成された塗材層10と、を有する構造物Bに含有されたアスベストを除去するためのアスベスト除去方法であって、塗材層10の表面に剥離剤41を塗布することにより、塗材層10に剥離剤41を浸透させる剥離剤塗布工程と、剥離剤塗布工程により剥離剤41が浸透した塗材層10をスクレーパ71により除去する塗材層除去工程と、アスベストの飛散を抑制するための液体を研磨領域11bに供給しながら下地調整層11の表面を研磨することにより、下地調整層11に残留する塗材を除去する残留塗材除去工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート層と、
前記コンクリート層の表面に形成された下地調整層と、
前記下地調整層の表面に形成されており、アスベストを含有する塗材により形成された塗材層と、を有する構造物に含有されたアスベストを除去するためのアスベスト除去方法であって、
前記塗材層の表面に剥離剤を塗布することにより、前記塗材層に前記剥離剤を浸透させる剥離剤塗布工程と、
前記剥離剤塗布工程により前記剥離剤が浸透した前記塗材層を除去する塗材層除去工程と、
アスベストの飛散を抑制するための液体を研磨領域に供給しながら前記下地調整層の表面を研磨することにより、前記下地調整層に残留する前記塗材を除去する残留塗材除去工程と、
を有することを特徴とするアスベスト除去方法。
【請求項2】
前記下地調整層の表面に前記塗材層が形成された構造が前記コンクリート層の表面に複数積層されている場合は、
各塗材層に対して前記剥離剤塗布工程および前記塗材層除去工程を行い、かつ、各下地調整層に対して前記残留塗材除去工程を行うことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト除去方法。
【請求項3】
塗材層除去工程は、
前記剥離剤塗布工程により前記剥離剤が浸透した前記塗材層をスクレーパによって除去する工程であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアスベスト除去方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアスベスト除去方法における前記塗材層除去工程に用いる剥離塗材回収システムであって、
前記剥離剤塗布工程により前記剥離剤が浸透した前記塗材層を除去するスクレーパと、
前記スクレーパに取付けられており、アスベストの飛散を抑制するための液体を剥離領域に供給する供給部と、
前記スクレーパにより除去された塗材と、前記供給部により供給された前記液体とが混合した混合物を受入れる容器と、
前記容器に接続されており、前記容器に受入れられた前記混合物を排出するためのホースと、
前記ホースと接続されており、前記容器に受入れられた前記混合物を前記ホースを介して吸引して収容する吸引装置と、
を備えていることを特徴とする剥離塗材回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト(石綿)が含有された塗材層を剥離したときに下地調整層の表面に残留した塗材を除去することによりアスベストを除去するアスベスト除去方法に関し、さらには、塗材層から剥離された塗材を回収する剥離塗材回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、構造物の改修における従来の工程を示す説明図である。構造物Bは、コンクリート層(躯体)12と、コンクリート層12の表面に形成された下地調整層11と、下地調整層11の表面に形成された塗材層(仕上層)10とを有する。下地調整層11を形成するための下地調整塗材としては、セメント系下地調整塗材、合成樹脂エマルジョン系下地調整塗材などが使用されている。
【0003】
まず、塗布装置40を用い、塗材を剥離するための剥離剤41を塗材層10に塗布する(図13(1))。そして、塗布された剥離剤41が塗材層10に浸透し、軟化するまで所定時間、たとえば、1日待機する(図13(2))。続いて、スクレーパ71により、塗材層10を剥離する(図13(3))。続いて、塗材層10が除去された下地調整層11をグラインダー3によって研磨して除去する(図13(4))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-213941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、下地調整塗材には骨材が含有されているため、下地調整層11の表面には無数の凹凸が形成されている。このため、スクレーパ71により塗材層10を剥離すると、下地調整層11の表面に形成された凸部だけが削れるため、図13(5)に示すように、塗材Cが充填された無数の凹部11aが下地調整層11の表面に露出した状態になる。つまり、塗材Cが下地調整層11の表面に残留した状態になる。
そこで、塗材Cにアスベスト(石綿)Asが含有されている場合、下地調整層11を研磨して除去すると、下地調整層11の表面に残留していた塗材Cに含有されているアスベストAsが飛散し、それを作業者などが吸引するおそれがある。
【0006】
特に、建築工事の仕様書においては、塗材の一般名が記載されており、現場に使用された製品名を特定することが困難であるため、使用された塗材にアスベストが含有されていたか否かを判断することが困難であった。このため、従来は、下地調整層11の表面に残留している塗材にアスベストAsが含有されていることを知らずに、下地調整層11を研磨すると、研磨により飛散したアスベストAsを作業者などが吸引してしまうという事態が発生していた。
また、アスベストAsを含有した塗材が塗材層10として使用された建築物の数は、1970年代、1980年代がピークであったため、それらの多くが今後、塗装改修や解体の時期を迎えつつあるので、改修工事または解体工事におけるアスベストの飛散を抑制するための対策が急がれている。
【0007】
また、スクレーパ71によって塗材層10を剥離するときに、塗材層10にアスベストAsが含有されている場合は、水を剥離領域に供給し、アスベストAsの飛散を抑制しながら剥離作業を行うことが望ましい。
しかし、一方の手でスクレーパ71を操作しながら、他方の手にホースを持って水を剥離領域に供給しなければならないため、作業性が悪い。また、剥離して落下した塗材を回収する作業工程が別途必要になるため、作業効率が低い。
【0008】
そこで、本願発明は、上述した諸問題を解決するために創出されたものであり、塗材層を剥離したときに下地調整層の表面に残留した塗材をアスベストが飛散しないように除去することができるアスベスト除去方法を提供することを目的とする。また、本願発明は、塗材層の剥離作業性を良くするとともに作業効率を高めることができる剥離塗材回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1に係る発明)
前述した目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明では、
コンクリート層(12:図1)と、
コンクリート層(12)の表面に形成された下地調整層(11:図1)と、
下地調整層(11)の表面に形成されており、アスベスト(As:図2(A))を含有する塗材(C:図2(A))により形成された塗材層(10:図1)と、を有する構造物(B:図1)に含有されたアスベスト(As)を除去するためのアスベスト除去方法であって、
塗材層(10)の表面に剥離剤(41:図1)を塗布することにより、塗材層(10)に剥離剤(41)を浸透させる剥離剤塗布工程(図1(1),(2)、工程2,工程3:図3)と、
剥離剤塗布工程(工程2,工程3)により剥離剤(41)が浸透した塗材層(10)を除去する塗材層除去工程(図1(3)、工程4:図3)と、
アスベスト(As)の飛散を抑制するための液体を研磨領域(11b:図1)に供給しながら下地調整層(11)の表面を研磨することにより、下地調整層(11)に残留する塗材(C)を除去する残留塗材除去工程(図1(4)、工程5:図3)と、
を有することを特徴とする。
なお、上記の「液体を研磨領域に供給しながら」における「供給」とは、液体を垂れ流すという供給態様と、液体を噴射するという供給態様とを含む意味であり、噴射の勢いの強弱は問わない意味である。
【0010】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明では、請求項1に記載のアスベスト除去方法において、
下地調整層(11:図1)の表面に塗材層(10:図1)が形成された構造がコンクリート層(12:図1)の表面に複数積層されている場合(図11)は、
各塗材層(10-2,10-1)に対して剥離剤塗布工程(図1(1),(2)、工程2,工程3:図3)および塗材層除去工程(図1(3)、工程4:図3)を行い、かつ、各下地調整層(11-2,11-1)に対して残留塗材除去工程(図1(4)、工程5:図3)を行うことを特徴とする。
【0011】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明では、請求項1または請求項2に記載のアスベスト除去方法において、
塗材層除去工程(図1(3)、工程4:図3)は、
剥離剤塗布工程(図1(1),(2)、工程2,工程3:図3)により剥離剤(41:図1)が浸透した塗材層(10:図1)をスクレーパ(71:図1)によって除去する工程であるということを特徴とする。
【0012】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明では、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアスベスト除去方法における塗材層除去工程(図1(3)、工程4:図3)に用いる剥離塗材回収システム(70:図1)であって、
剥離剤塗布工程(図1(1),(2)、工程2,工程3:図3)により剥離剤(41:図1)が浸透した塗材層(10:図1)を除去するスクレーパ(71:図12)と、
スクレーパ(71)に取付けられており、アスベスト(As:図2(A))の飛散を抑制するための液体(W:図12)を剥離領域(10a:図12)に供給する供給部(81:図12)と、
スクレーパ(71)により除去された塗材と、供給部(81)により供給された液体(W)とが混合した混合物を受入れる容器(72:図9)と、
容器(72)に接続されており、容器(72)に受入れられた混合物を排出するためのホース(73:図1図9)と、
ホース(73)と接続されており、容器(72)に受入れられた混合物をホース(73)を介して吸引して収容する吸引装置(74:図1)と、
を備えていることを特徴とする。
【0013】
なお、上記各括弧内の図番号および符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1に係る発明の効果)
請求項1に係る発明のアスベスト除去方法によれば、アスベストの飛散を抑制しながら下地調整層に残留したアスベストを除去することができるため、構造物の改修または解体を行うときに、飛散したアスベストを作業者などが吸引して健康を害しないようにすることができる。
【0015】
(請求項2に係る発明の効果)
構造物の改修により、建築当初の塗材層の表面に、下地調整層および塗材層からなる構造が複数積層されている場合がある。このような構造物を改修または解体する場合は、最上層の塗材層および下地調整層を除去した場合であっても、その下地調整層の下層に形成された建築当初の塗材層が残っているため、ビルを解体したときに、建築当初の塗材層に含有されているアスベストが周囲に飛散するおそれがある。
そこで、請求項2に係る発明のアスベスト除去方法によれば、各塗材層に対して剥離剤塗布工程および塗材層除去工程を行い、かつ、各下地調整層に対して残留塗材除去工程を行うことにより、アスベストの飛散を抑制しながら構造物の解体を行うことができるため、飛散したアスベストを作業者などが吸引して健康を害しないようにすることができる。
【0016】
(請求項3に係る発明の効果)
下地調整層には骨材が含有されているため、下地調整層の表面には無数の凹凸が形成されており、下地調整層の表面に塗材を塗布すると、その塗材が下地調整層の凹部に入り込んだ状態になる。
一方、スクレーパは、直線状の刃によって対象物を掻き取る構造であるため、スクレーパによって塗材層を除去すると、下地調整層の表面の凸部のみが除去され、塗材が入り込んだ凹部が残ってしまう。
そこで、アスベストの飛散を抑制するための液体を研磨領域に供給しながら下地調整層の表面を研磨し、上記凹部を削除することにより、下地調整層に残留する塗材を除去することができるため、残留した塗材に含有されているアスベストが飛散するおそれがない。
【0017】
(請求項4に係る発明の効果)
請求項4に係る発明の剥離塗材回収システムによれば、剥離剤が塗材層に充分浸透しておらず、スクレーパによって塗材を掻き取ると粉状の塗材が発生するような場合であっても、アスベストの飛散を抑制するための液体を剥離領域に供給することができるため、
アスベストの飛散を抑制しながら塗材層の剥離作業を行うことができる。
また、液体を剥離領域に供給することにより、除去された塗材と液体とが混合した混合物を作り出すことができ、除去された塗材に流動性を持たせることができるため、容器に受入れられた塗材を吸引装置に効率良く回収することができる。
さらに、容器に受入れられた混合物を吸引装置に吸引して収容することができるため、容器が混合物で一杯になる度に混合物を捨てに行く必要がないので、塗材層除去工程の作業効率を高めることができる。
【0018】
上述したように、本願発明によれば、塗材層を剥離したときに下地調整層の表面に残留した塗材をアスベストが飛散しないように除去することができるアスベスト除去方法を提供することができる。また、本願発明によれば、塗材層の剥離作業性を良くするとともに作業効率を高めることができる剥離塗材回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係るアスベスト除去方法および剥離塗材回収システムの説明図である。
図2】下地調整層に残留している塗材を除去することを説明する説明図である。
図3】本発明の実施形態に係るアスベスト除去方法の工程図である。
図4】本発明の実施形態に係るアスベスト回収システムの説明図である。
図5】グラインダーの平面図である。
図6図5に示すグラインダーを内部構造の一部と共に示す側面図である。
図7図5に示すグラインダーの底面図である。
図8図5に示すグラインダーに設けられた回転体の説明図である。
図9図1に示す剥離塗材回収システムに設けられた容器の斜視図である。
図10】本発明の第2実施形態に係るアスベスト除去システムの説明図である。
図11】構造物の変更例を示す説明図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る剥離塗材回収システムの一部を示す説明図である。
図13】構造物の改修における従来の工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〈第1実施形態〉
本発明の第1実施形態に係るアスベスト除去方法および剥離塗材回収システムについて、図1から図9を参照して説明する。
[構造物の構成]
図1に示すように、改修または解体の対象である構造物Bは、コンクリート層(躯体)12と、コンクリート層12の表面に形成された下地調整層11と、下地調整層11の表面に形成された塗材層(仕上層)10とを有する。構造物Bは、たとえば、RC(Reinforced Concrete)、SRC(Steel Reinforced Concrete)、ALC(Autoclaved Lightweight Concrete)などを用いた構造物である。下地調整層11を形成するための下地調整塗材としては、セメント系下地調整塗材、合成樹脂エマルジョン系下地調整塗材などが使用されており、骨材が含まれている。下地調整層11および塗材層10の各層厚は、たとえば、それぞれ1~3mmである。
【0021】
[アスベスト除去方法および剥離塗材回収システム]
(工程1:準備工程)
まず、建設業労働災害防止協会による石綿(アスベスト)含有建材別作業レベル区分のレベル3の区分に従い、作業者が防塵マスクを着用し、必要に応じて構造物Bの周囲を養生シートで囲むなどの準備を行う(工程1:図3)。
【0022】
(工程2:剥離剤塗布工程)
次に、図1(1)に示すように、塗布装置40により、剥離剤41を塗材層10の表面に噴射し、剥離剤41を塗材層10の表面に塗布する(工程2:図3)。剥離剤41の塗布方法は、刷毛塗りでも良い。剥離剤41として、毒性の高いジクロロメタン(塩化メチレン)を含有しない剥離剤を使用することにより、作業者および環境に与える影響を小さくすることが望ましい。
【0023】
(工程3:待機工程)
次に、図1(2)に示すように、塗材層10の表面に塗布した剥離剤41が塗材層10に浸透するまで待機する(工程3:図3)。待機時間は、塗材層10の層厚、塗材の種類、剥離剤41の種類、剥離剤41の塗布量、天候などによって調整する。たとえば、待機時間は1日である。
【0024】
(工程4:塗材層除去工程)
次に、塗材層10の表面に塗布した剥離剤41が塗材層10に浸透し、塗材層10が軟化していることを確認し、図1(3)に示すように、剥離塗材回収システム70を使用して塗材層10を剥離する(工程4:図3)。
剥離塗材回収システム70は、塗材層10を剥離するためのスクレーパ71と、剥離されて落下する塗材を受入れて収容する容器72と、容器72に収容された塗材を吸引するための吸引装置(減圧装置または負圧発生装置ともいう)74と、容器72に収容された塗材を吸引装置74へ排出するためのホース73とを備えている。吸引装置74の排気口(図示せず)には、ヘパフィルタ74aが設けられており、吸引した塗材に含まれているアスベストが排気に混じって極力排出されないように構成されている。
【0025】
図9に示すように、容器72は、上面が開口した容器本体72aと、容器本体72aの背面に設けられた取っ手72bと、容器本体72aの底部に設けられた排出管72cと、排出管72cを容器本体72aに着脱可能に接続するための接続部材72dとを備えている。容器本体72aの底部には、容器本体72aに受入れられた塗材を排出管72cに排出するための排出口(図示せず)が開口形成されている。
【0026】
作業者は一方の手でスクレーパ71を把持し、他方の手で容器72を把持する。そして、スクレーパ71によって塗材層10を剥離する剥離領域の下方に容器72を配置し、スクレーパ71によって塗材層10の塗材を剥離すると(掻き落とすと)、剥離されて落下した塗材が容器72に受入れられる。容器72に受入れられた塗材は、ホース73を介して吸引装置74に吸引され、吸引装置74の内部に設けられた回収袋に蓄積される。
【0027】
(工程5:残留塗材除去工程)
図2(A)における領域Eの拡大図に示すように、塗材層10が剥離された下地調整層11の表面には、塗材Cが充填された無数の凹部11aが形成されている。つまり、下地調整層11の表面には、アスベストAsが含有された塗材Cが残留している。たとえば、白色の塗材Cを使用している場合は、塗材層10を剥離した後に、下地調整層11の表面が白くなっていることがあるが、それは、下地調整層11の表面に塗材Cが残留している証拠である。下地調整層11の表面に残留している塗材CにアスベストAsが含有されていることを知らずに、下地調整層11を研磨すると、研磨により飛散したアスベストAsを作業者などが吸引してしまうことになる。
【0028】
そこで、本実施形態では、アスベストを飛散しないように回収することができるアスベスト回収システムを使用して下地調整層11の表面に残留した塗材Cを回収する。
図4に示すように、アスベスト回収システム1は、グラインダー2と、グラインダー2へ水を供給する給水源90と、グラインダー2へ動力用の圧縮空気を供給するコンプレッサー100と、グラインダー2から排出される廃棄物(剥離された塗材Cおよび研磨された下地調整塗材などと水とが混合した泥状のもの)Mを吸引する吸引装置400と、吸引装置400により吸引された廃棄物Mを蓄積して収容する収容体300とを備える。
【0029】
グラインダー2は、給水チューブ91により給水源90と接続されている。給水チューブ91により供給された水は、グラインダー2の研磨領域11b(図1(4))に供給され、剥離された塗材Cおよび研磨された下地調整塗材などと混合されることにより、泥状の廃棄物Mとなるため、塗材Cに含有されているアスベストAsが外部に飛散するおそれがない。つまり、グラインダー2は湿式のグラインダーである。
給水源90は、グラインダー2に対して、たとえば、毎分0.05~1.00リットルの水を供給する。給水源90は、作業現場に存在する水道でも良いし、水道に接続された給水ポンプでも良い。また、給水ポンプを使用する場合は、給水ポンプに設けられた水タンクに、剥離された塗材Cの飛散を防止するためのポリマーなどの飛散防止剤を添加することができる。
【0030】
グラインダー2は、エア供給ホース101によりコンプレッサー100と接続されており、コンプレッサー100は、圧縮空気をエア供給ホース101を通じてグラインダー2へ供給する。グラインダー2にはエアモータ2w(図6)が設けられており、そのエアモータ2wは、エア供給ホース101を通じてコンプレッサー100から供給された圧縮空気によって駆動される。
図5から図7に示すように、グラインダー2は、片手で持つことが可能な筒状のケーシング2dを備えており、そのケーシング2dの内部には、エアモータ2w(図6)が設けられている。ケーシング2dの後端には、コンプレッサー100(図4)に接続されたエア供給ホース101を接続するためのコネクタ2tが設けられている。
【0031】
図6に示すように、ケーシング2dの前端の内部には、エアモータ2wと連結された歯車機構2xが設けられている。ケーシング2dの前方の下端には、歯車機構2xと連結された円板形状の回転体2n(図8)が、回転シャフト2qによって回転可能に取付けられている。エアモータ2wが駆動すると、歯車機構2xを介して回転シャフト2qが回転し、回転体2nが回転する。
図5および図6に示すように、回転体2nの上面は、金属製で略円板形状の第1のカバー2a1によって覆われている。また、回転体2nの外周面は、金属製で略円筒形状の第2のカバー2a2によって覆われており、第2のカバー2a2の外周面は、略円筒形状の第3のカバー22によって覆われている。また、第3のカバー22の外周面には、その外周面を覆う軟質の第4のカバー24が着脱可能に捲回されている。この実施形態では、第4のカバー24はゴムにより形成されており、可撓性を有する。
【0032】
第1のカバー2a1の下面には、水を供給(噴射)する給水口2j(図8)が設けられている。図8では、窓2pから給水口2jが露出している。給水口2jは、水量を調節する水量調節装置21(図5)に連通しており、水量調節装置21には、給水チューブ91が接続されている。また、水量調節装置21には、水量を調節するための水量調節レバー21aが回動可能に取付けられている。この水量調節レバー21aの回動量を調節することにより、給水口2jから水が供給(噴射)され、供給(噴射)される水量が調節され、また、供給(噴射)が停止される。
また、図8に示すように、第1のカバー2a1の下面には、研磨された塗材Cおよび下地調整塗材などと給水口2jから供給された水とが混合した泥状の廃棄物Mを排出するための排出口2vが貫通形成されている。
【0033】
図8に示すように、回転体2nの底面には、複数の研磨部材30,31が回転体2nの回転方向F1(回転軌跡)に沿って設けられている。各研磨部材30は、回転体2nの外周縁から一部が突出するように設けられており、各研磨部材31は、各研磨部材30よりも内側に設けられている。また、回転体2nには、複数の窓(開口部)2pが回転方向F1(回転軌跡)に沿って設けられている。給水口2jは、回転体2nが回転したときの各窓2pの回転軌跡上に配置されており、給水口2jの下方を各窓2pが通過すると、通過する窓2pから給水口2jが露出する。
回転体2nが回転しているときにおいて、窓2pが給水口2jの下方を通過したとき、つまり、窓2pから給水口2jが露出したときは、給水口2jから噴射された水は、窓2pを通過し、研磨された塗材Cなどへ供給され、それを湿らせ、かつ、塗材が研磨された面を濡らし(湿潤化し)、剥離された塗材Cなどの装置外部への飛散を阻止する。
【0034】
図5から図7に示すように、グラインダー2には、廃棄物Mを排出するための排出パイプ2cが設けられており、その排出パイプ2cは、廃棄物排出ホース303(図4)によって収容体300と接続されている。図4に示すように、収容体300は、本体301と、この本体301の上部に開閉可能に設けられた蓋302とを備えている。本体301の内部には、吸引された廃棄物Mを蓄積して収容する二重の回収袋304,305が設けられている。回収袋304,305は、廃棄物Mから水を分離し、研磨された塗材Cおよび下地調整塗材などを回収する機能を有する。
【0035】
たとえば、回収袋304,305は、0.3μm以下の粒子を濾過する能力を有する。さらに、回収袋304には、凝固剤としての高吸水性樹脂(たとえば、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物など)が予め収容されているため、廃棄物Mが凝固される。したがって、回収袋304,305をそのまま産業廃棄物として処理すれば良いので、廃棄物Mの廃棄作業効率を高めることができる。
収容体300は、吸引ホース401によって吸引装置400と接続されている。吸引装置400の排気口(図示せず)には、ヘパフィルタ402が設けられており、吸引装置400から排気される気体中に含まれるアスベストが極力少なくなるように構成されている。
【0036】
吸引装置400(図4)を駆動すると、吸引ホース401を通じて収容体300の内部が負圧になり、これにより、廃棄物排出ホース303を通じて、グラインダー2に設けられた第2のカバー2a2(図6)の内部が負圧になる。そして、給水源90から給水チューブ91を介して水をグラインダー2へ供給すると、グラインダー2の給水口2j(図8)から水が噴射される。そして、コンプレッサー100を駆動すると、コンプレッサー100から圧縮空気がグラインダー2へ供給され、グラインダー2のエアモータ2w(図6)が駆動し、回転体2nが回転し、下地調整層11の表面を研磨可能になる。
図1(4)および図2(B)に示すように、作業者がグラインダー2によって下地調整層11の表面を研磨すると、図2(C)に示すように、下地調整層11の表面に形成されていた凹部11aが削除され、凹部11aに充填されていた塗材Cが削除される。下地調整層11を再利用する場合は、凹部11aが削除されるまで、グラインダー2により下地調整層11の表面を研磨する。また、再利用しない場合は、グラインダー2により凹部11aを削除した後、ウォータージェット工法などにより、残った下地調整層11を剥離する。また、グラインダー2により下地調整層11を総て研磨して削除しても良い。
【0037】
削除された塗材Cおよび下地調整塗材などは、給水口2j(図8)から噴射された水と混合され、泥状の廃棄物Mとなって排出口2v(図8)から排出される。このため、削除された塗材Cに含有されているアスベストAsがグラインダー2から外気に飛散するおそれがない。
排出口2vから排出された廃棄物Mは、廃棄物排出ホース303(図4)を通じて収容体300へ送出され、本体301の内部に設けられた回収袋304に蓄積される。回収袋304に蓄積された廃棄物Mの水分は、回収袋304,305によって濾過され、水分が濾過された廃棄物Mは、回収袋304の内部に設けられた凝固剤によって凝固する。そして、回収袋304に蓄積された廃棄物Mが所定量に達したときに、蓋302を開け、回収袋304,305を取出し、回収袋304,305の開口部を封止する。蓋302を開けたときも、廃棄物Mは凝固剤によって凝固されているため、廃棄物Mに含有されているアスベストAsが外気に飛散するおそれがない。
【0038】
上述したように、本実施形態のアスベスト除去方法における残留塗材除去工程では、グラインダー2により下地調整層11の表面を研磨している作業中のみならず、その研磨により除去された塗材Cなどを収容体300へ回収する経路において、塗材Cに含有されているアスベストAsが外気に飛散するおそれがないため、作業者などがアスベストAsを吸引して健康を害するおそれがない。
【0039】
[第1実施形態の効果]
上述した第1実施形態に係るアスベスト除去方法によれば、アスベストAsの飛散を抑制しながら下地調整層11に残留したアスベストAsを除去することができるため、構造物Bの改修または解体を行うときに、飛散したアスベストAsを作業者などが吸引して健康を害しないようにすることができる。
【0040】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態に係るアスベスト除去方法について図10を参照しつつ説明する。
本実施形態のアスベスト除去方法は、実施対象が大規模の場合に安全かつ効率的に作業を行うことができることを特徴としている。なお、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を使用し、説明を簡略化または省略する。
【0041】
本実施形態に係るアスベスト除去方法は、図10に示すアスベスト回収システム1Aを使用して行う。アスベスト回収システム1Aは、複数のグラインダー2と(図10では1つのみを示して他を省略している)、給水源90と、給水チューブ91と、コンプレッサー100と、エア供給ホース101と、廃棄物排出ホース501と、1次濾過槽600と、吸引ホース502と、吸引装置(減圧装置または負圧発生装置ともいう)500と、排水ホース602と、排水装置800と、排水ホース801と、2次濾過・中和装置700とを備えている。
【0042】
1次濾過槽600は密閉構造であり、その上部には、開閉可能な蓋(図示せず)が設けられており、その蓋には廃棄物排出ホース501が挿通されている。複数のグラインダー2を使用する場合は、各グラインダー2と接続された廃棄物排出ホース501が、それぞれ上記の蓋に挿通される。図10では、廃棄物排出ホース501は、1本のみ示しており、他の廃棄物排出ホース501は省略されている。1次濾過槽600の底部には、底板603が配置されており、その底板603の上面には、2個の廃棄物収容体601が載置されている。各廃棄物収容体601は、上記の蓋に挿通された廃棄物排出ホース501の出口方向に配置されている。
【0043】
廃棄物収容体601は、廃棄物排出ホース501から排出された廃棄物Mに含まれる水分を滲出させ、除去された塗材Cなどを濾過する素材により形成されており、かつ、その濾過された塗材Cなどを蓄積しながら収容する形状に形成されている。たとえば、廃棄物収容体601として、通称、フレコン(株式会社ナシヨナルマリンプラスチツクの登録商標で、フレキシブルコンテナバッグの略称)と呼ばれるもののうち、ポリプロピレン製またはポリエチレン製の繊維を編んで形成された、透水性に優れるとともに軽量かつ強度が高いものを用いることができる。たとえば、容量1000リットルのものを用いることができる。
【0044】
1次濾過槽600には、1次濾過槽600の内部の空気を吸引することにより負圧状態にする吸引装置500が、吸引ホース502を介して接続されている。このように、1次濾過槽600の内部が負圧状態になることにより、廃棄物排出ホース501を介してグラインダー2に設けられた第2のカバー2a2(図6)の内部が負圧になり、排出口2vから廃棄物Mが吸い上げられ、廃棄物排出ホース501を介して1次濾過槽600へ排出される。吸引装置500の排気口(図示せず)には、ヘパフィルタ503が設けられており、1次濾過槽600から吸引した空気を排気するときにアスベストの排出量が極力少なくなるように構成されている。
【0045】
また、1次濾過槽600には、廃棄物収容体601から滲出して1次濾過槽600に貯留されている水を1次濾過槽600から2次濾過・中和装置700へ排水する排水装置800が、排水ホース602を介して接続されている。排水装置800は、各グラインダー2および吸引装置500が稼働している状態において、各廃棄物収容体601から滲出した水の1次濾過槽600における水位が、底板603よりも低い水位を維持するように動作する。排水装置800としてグラウトポンプを用いることが望ましい。グラウトポンプは、チューブをローターで押し潰し、チューブ内の液状のコンクリートなどを直接しごき出す構造であるため、排水装置800としてグラウトポンプを使用することにより、1次濾過槽600の内部が-93kPa以下の真空圧であっても、1次濾過槽600に貯留した水を排水することができる。しかも、グラウトポンプには弁構造が存在しないため、1次濾過槽600に貯留した水に混入している塗材Cやコンクリート片などが弁に詰まって排水できなくなってしまうおそれもない。
【0046】
排水装置800の排水側には、2次濾過・中和装置700が排水ホース801を介して接続されている。2次濾過・中和装置700は、排水装置800から排水された水を処理し、環境基準に適合した水に変化させるための装置である。各グラインダー2から1次濾過槽600へ送出された廃棄物Mは、廃棄物収容体601により、ある程度の大きさの塗材Cおよび下地調整塗材やコンクリート粒などが濾過されるが、廃棄物収容体601の網目を通過した微細な塗材Cおよび下地調整塗材やコンクリート粒などの不純物が、廃棄物収容体601から滲出した水と混じる。また、コンクリート粒などを含んだ廃棄物は、pH9以上のアルカリ性であるため、1次濾過槽600の底部に貯留する水は、自然環境へ排出することができる基準、つまり、環境基準に適合していない。
【0047】
そこで、2次濾過・中和装置700は、排水装置800から排水された水を濾過し、その濾過した水を中和する。本実施形態では、2次濾過・中和装置700は、100μmメッシュの濾過フィルターを有する濾過容器と、50μmメッシュの濾過フィルターを有す濾過容器と、0.2μmメッシュの濾過フィルターを有する濾過容器とを備える。たとえば、各濾過フィルターとして、ポリプロピレン製糸巻きタイプの不純物濾過フィルターを用いることができる。
排水装置800から排水された水は、各濾過容器を順次通過し、1次濾過槽600において濾過できなかった0.2μmを超えるアスベストやコンクリート粒などの不純物が濾過される。つまり、アスベストなどが含有された廃棄物Mを検出限界値以下に濾過することができる。
【0048】
また、2次濾過・中和装置700は、中和処理槽(図示せず)を備えており、その中和処理層は、最終の濾過容器から排水された水を攪拌し、炭酸ガスボンベ(図示せず)から注入された炭酸ガスによって水を中和する。中和処理槽は、pH検出器と、pH指示計と、pH記録計とを備える。中和処理槽は、最終の濾過容器から排出された水を環境基準のpH5.8~8.6に中和処理した後に排出パイプ701から排水する。
【0049】
[第2実施形態の効果]
上述した第2実施形態に係るアスベスト除去方法によれば、下地調整層11の面積が広く、複数のグラインダー2を使用する場合であっても、アスベストAsの飛散を抑制しながら下地調整層11に残留したアスベストAsを除去することができるため、構造物Bの改修または解体を行うときに、飛散したアスベストAsを作業者などが吸引して健康を害しないようにすることができる。
しかも、吸引した廃棄物に含まれている水を環境基準に適合した状態にして自然界に排出することができるため、排水を貯留するタンクが不要になるので、作業時間を長くすることができ、作業効率を高めることができる。
【0050】
〈第3実施形態〉
次に、本発明の第3実施形態に係るアスベスト除去方法について図11を参照しつつ説明する。
図11(A)に示すように、改修を行った構造物Bでは、建築当初の塗材層10-1の表面に新たな下地調整層11-2が形成されており、その下地調整層11-2の表面に新たな塗材層10-2が形成されており、各塗材層10-1,10-2にアスベストAsが含有されている場合がある。このような構造の構造物Bを改修または解体する場合は、最表層の塗材層10-2に対して前述した剥離剤塗布工程(工程2)、待機工程(工程3)および塗材層除去工程(工程4)を行い、その下層に形成された下地調整層11-2に対して前述した残留塗材除去工程(工程5)を行う。そして、建築当初の塗材層10-1に対して剥離剤塗布工程(工程2)、待機工程(工程3)および塗材層除去工程(工程4)を行い、その下層に形成された下地調整層11-1に対して前述した残留塗材除去工程(工程5)を行う。
【0051】
つまり、各塗材層10-2,10-1に対して剥離剤塗布工程(工程2)、待機工程(工程3)および塗材層除去工程(工程4)を行い、かつ、各下地調整層11-2,11-1に対して残留塗材除去工程(工程5)を行う。
これにより、最表層の塗材層10-2の削除を開始してから最後の下地調整層11-1を削除する期間、アスベストAsが飛散しない状態で作業を行うことができる。
【0052】
また、図11(B)に示すように、各塗材層10-1,10-2にはアスベストAsが含有されていないが、各下地調整層11-1,11-2にアスベストAsが含有されている構造物Bの場合も、各塗材層10-2,10-1に対して剥離剤塗布工程(工程2)、待機工程(工程3)および塗材層除去工程(工程4)を行い、かつ、各下地調整層11-2,11-1に対して残留塗材除去工程(工程5)を行う。
また、塗材層10-1,10-2にそれぞれアスベストAsが含有されている場合にも、各塗材層10-1,10-2に対して剥離剤塗布工程(工程2)、待機工程(工程3)および塗材層除去工程(工程4)を行う。
これにより、最表層の塗材層10-2の削除を開始してから最後の下地調整層11-1を削除する期間、アスベストAsが飛散しない状態で作業を行うことができる。
【0053】
[第3実施形態の効果]
上述した第3実施形態に係るアスベスト除去方法によれば、各塗材層10-2,10-1に対して剥離剤塗布工程および塗材層除去工程を行い、かつ、各下地調整層11-2,11-1に対して残留塗材除去工程を行うことにより、アスベストAsの飛散を抑制しながら構造物Bの改修または解体を行うことができるため、飛散したアスベストAsを作業者などが吸引して健康を害しないようにすることができる。
【0054】
次に、本発明の剥離塗材回収システムの実施形態について図を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る剥離塗材回収システムは、前述したアスベスト除去方法における塗材層除去工程(工程4:図3)に用いる剥離塗材回収システムである。
【0055】
図12に示すように、本実施形態に係る剥離塗材回収システムは、剥離剤塗布工程(工程2,工程3:図3)により剥離剤41が浸透し塗材層10を除去するスクレーパ71と、給水源80と、塗材層10の塗材を剥離する対象領域である剥離領域10aに水Wを噴射するための噴射ノズル81と、噴射ノズル81をスクレーパ71の取っ手71aに取付けるための取付部材82と、噴射ノズル81から噴射される水量を調節するための水量調節レバー83と、給水源80と噴射ノズル81とを接続するための給水チューブ84と、容器72(図1図9)と、吸引装置74(図1)と、吸引装置74と容器72とを接続するためのホース73とを備えている。
【0056】
図12に示すように、噴射ノズル81は、給水源80から供給される水Wを剥離領域10aに放射状に噴射する。これにより、スクレーパ71の刃71bによって剥離された塗材が水Wと混合された状態で、スクレーパ71の下方に配置された容器72(図1)に落下する。水を放射状に噴射するように給水チューブ84の先端を改良し、その先端を噴射ノズル81としても良いし、給水チューブ84の先端に合成樹脂または金属製の噴射ノズル81を接続しても良い。
塗材層10は、剥離剤41が浸透しているため、軟化しており、剥離されたときに飛散し難いが、剥離剤41が浸透しないで軟化していない部分をスクレーパ71の刃71bによって擦ると、塗材が粉状になって飛散するおそれがある。しかし、そのような場合でも、水Wを剥離領域10aに噴射することにより、塗材の飛散を抑制することができる。また、刃71bによって剥離された塗材と水Wとを混合することにより、流動性を有する混合物にすることができるため、容器72に受入れられた混合物をホース73を介して吸引装置74に効率良く吸引することができる。給水源80に貯留されている水Wに飛散抑制剤を混ぜることにより、塗材の飛散の抑制効果を高めることもできる。
【0057】
上述したように、本実施形態に係る剥離塗材回収システムは、前述したアスベスト除去方法における塗材層除去工程(図1(3)、工程4:図3)に用いる剥離塗材回収システムであって、剥離剤塗布工程(図1(1),(2)、工程2,工程3:図3)により剥離剤41(図1)が浸透した塗材層10(図1)を除去するスクレーパ71と、スクレーパ71に取付けられており、アスベストAs(図2(A))の飛散を抑制するための液体を剥離領域10aに供給する噴射ノズル81と、スクレーパ71により除去された塗材と、噴射ノズル81により供給された液体とが混合した混合物を受入れる容器72と、容器72に接続されており、容器72に受入れられた混合物を排出するためのホース73と、ホース73と接続されており、容器72に受入れられた混合物をホース73を介して吸引して収容する吸引装置74(図1)と、を備えていることを特徴とする。
【0058】
[実施形態の効果]
上述した実施形態に係る剥離塗材回収システムによれば、塗材Cに含有されているアスベストAsの飛散を抑制するための液体を剥離領域10aに供給することができるため、アスベストAsの飛散を抑制しながら塗材層10の剥離作業を行うことができる。
また、液体を剥離領域10aに供給することにより、除去された塗材Cと液体とが混合した混合物を作り出すことができ、除去された塗材Cに流動性を持たせることができるため、容器72に受入れられた混合物を吸引装置74に効率良く回収することができる。
さらに、容器72に受入れられた混合物を吸引装置74に吸引して収容することができるため、容器72が混合物で一杯になる度に混合物を捨てに行く必要がないので、塗材層除去工程の作業効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・アスベスト回収システム
1A・・アスベスト回収システム
2・・・グラインダー
10・・・塗材層
10a・・剥離領域
11・・・下地調整層
11a・・凹部
11b・・研磨領域
12・・・コンクリート層
41・・・剥離剤
71・・・スクレーパ
72・・・容器
74・・・吸引装置
80・・・給水源
81・・・噴射ノズル
83・・・水量調節レバー
90・・・給水源
100・・・コンプレッサー
300・・・収容体
304・・・回収袋
305・・・回収袋
400・・・吸引装置
500・・・吸引装置
600・・・1次濾過槽
601・・・廃棄物収容体
700・・・2次濾過・中和装置
800・・・排水装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13