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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068963
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】セラミック用バインダー
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/634 20060101AFI20220428BHJP
   C08L 79/02 20060101ALI20220428BHJP
   C08G 73/04 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C04B35/634 680
C08L79/02
C08G73/04
C04B35/634 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177820
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】今泉 洋平
(72)【発明者】
【氏名】安村 和成
(72)【発明者】
【氏名】中之庄 正弘
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4J002BE022
4J002BE062
4J002BG002
4J002CH022
4J002CM011
4J002DM006
4J002FD206
4J002GM00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J002GQ05
4J043PA11
4J043PC01
4J043QA03
4J043QA04
4J043YB08
4J043YB29
4J043ZA02
4J043ZA03
4J043ZB01
4J043ZB47
4J043ZB51
(57)【要約】
【課題】 本発明は、セラミックの分散性および焼成時の低温分解性を有するセラミック用バインダーを提供することを目的とする。
【解決手段】
重量平均分子量200以上のポリアルキレンイミンにエポキシ基含有化合物を付加した構造を有するポリアルキレンイミン誘導体を含むセラミック用バインダーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量200以上のポリアルキレンイミンにエポキシ基含有化合物を付加した構造を有するポリアルキレンイミン誘導体を含むセラミック用バインダー:
【請求項2】
ポリアルキレンイミン誘導体のアミン価が1mgKOH/g以上である請求項1に記載のセラミック用バインダー。
【請求項3】
ポリアルキレンイミン誘導体におけるアルキレンイミンに由来する構造単位およびエポキシ基含有化合物に由来する構造単位の組成比(モル比)が10~90:10~90である請求項1または2に記載のセラミック用バインダー。
【請求項4】
分子量200以上のポリアルキレンイミンとエポキシ化合物を付加反応して得られるポリアルキレンイミン誘導体を含むセラミック用バインダーの製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のセラミック用バインダーを含む、セラミック成形用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック用バインダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、セラミック粉体を含有する分散体組成物は、積層セラミックコンデンサの誘電体層、半導体基板、センサー、液晶表示素子等といった電子部品の他に、研磨材や耐火材等に利用されている。
セラミック粉体を含有する分散体組成物を用いてセラミック基板を製造する方法として、例えば、バインダーにセラミック粉体を混合・分散したスラリーを成形する方法、また例えば、そのスラリーをシート状に形成した後、バインダーの焼成およびセラミックの焼結を行う方法が知られている。
例えば、特許文献1には、重合性原料としてメタクリル酸アルキルエステルを90重量%以上用いてなるバインダー樹脂であり、該バインダー樹脂の重量平均分子量が20万以上であり、且つ、ガラス転移温度が-20~60℃の範囲のメタクリル樹脂であることを特徴とする低温焼成セラミックバインダー樹脂が開示されている。
【0003】
特許文献2には、式(1)で示され、分子量が1,000~5,000であるポリエーテル系化合物であることを特徴とする水系分散剤が開示されている。
【0004】
【化1】
【0005】
(ただしAOはオキシエチレン基であり、aはAOで示されるオキシエチレン基の平均付加モル数で、3~25であり、AOはオキシプロピレン基であり、bはAOで示されるオキシプロピレン基の平均付加モル数で、1~10であり、aとbは5≦a+b≦30、および1≦a/b≦5の条件を満たし、Rは水素原子または炭素数1~4の炭化水素基であり、nは1~4である。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-059358
【特許文献2】特開2014-205088
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セラミック粉体を含有する分散体組成物に用いられるバインダーには、スラリーにおけるセラミック粉体の分散性と共に、焼成時の分解性が求められ、近年ではより低温にて分解することができるバインダーが求められている。
【0008】
また、炭化ケイ素や窒化ケイ素など、セラミック粉体の種類によっては材料の酸化や熱分解を防止するために大気雰囲気中での焼成は実施ができず、窒素雰囲気下のような不活性雰囲気下での焼成が必要な場合もあり、このような不活性雰囲気下での焼成時にも低温で分解するバインダーが求められている。
【0009】
よって、本発明の目的は、良好なセラミックの分散性および焼成時の低温分解性、特に不活性雰囲気下での焼成時の低温分解性を有するセラミック用バインダーを提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記のような問題点に鑑み検討を行い、ポリアルキレンイミンにエポキシ化合物を付加した構造を有するポリアルキレン誘導体がセラミックの分散性および焼成時の低温分解性に有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、上記目的は、重量平均分子量200以上のポリアルキレンイミンにエポキシ基含有化合物を付加した構造を有するポリアルキレンイミン誘導体を含むセラミック用バインダーによって達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセラミック用バインダーは、良好なセラミックの分散性および焼成時の低温分解性を有することから、積層セラミックコンデンサの誘電体層、半導体基板、センサー、液晶表示素子等の低温焼成に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。
【0015】
[本開示のポリアルキレンイミン誘導体]
<ポリアルキレンイミンに由来する構造単位>
本開示のセラミック用バインダーは、ポリアルキレンイミン誘導体を含む(以下、「本開示のポリアルキレンイミン誘導体」ともいう)。本開示のポリアルキレンイミン誘導体は、重量平均分子量200以上のポリアルキレンイミンにエポキシ基含有化合物を付加した構造を有することが好ましい。
【0016】
言い換えれば、本開示のポリアルキレンイミン誘導体は、アルキレンイミンに由来する構造単位と、エポキシ基含有化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。アルキレンイミンに由来する構造単位は、下記一般式(A-1)、(A-2)、(A-3)で表すことができる。
【0017】
【化2】
【0018】
上記式(A-1)、式(A-2)および(A-3)中、Qはアルキレン基を表す。
【0019】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体は、ポリアルキレンイミンにエポキシ基含有化合物を付加した構造を有する。該ポリアルキレンイミンの重量平均分子量は200以上が好ましく、400以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。また、重量平均分子量の上限としては、70,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、3,0000以下がさらに好ましく、1,0000以下が特に好ましい。重量平均分子量は、GPC法によって求められ、具体的には実施例に記載の方法により測定した値を用いる。ポリアルキレンイミンの分子量が上記範囲である場合、セラミックの分散性が向上する傾向にある。
【0020】
上記ポリアルキレンイミンは、主鎖がアルキレン基とアミノ基からなる繰返し単位を含み、下記式(A)および/または式(B)の構造の繰返し単位を有する化合物である。
【0021】
【化3】
【0022】
上記式(A-1)、式(A-2)、および(A-3)中、Qはアルキレン基を表す。ここで、Qで表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。アルキレン基は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。これらのうち、アルキレン基がエチレン基であることが好ましい。すなわち、ポリアルキレンイミンはポリエチレンイミンであることが好ましい。
【0023】
上記ポリアルキレンイミンは、直鎖状の構造、分岐状の構造、環状の構造などを有していても良いが、分岐状の構造を有することが好ましい。上記ポリアルキレンイミンは、特に限定されないが、1級アミンと2級アミンと3級アミンの組成がモル比で15~55:25~60:10~40であることが好ましく、25~45:35~50:20~30であることがより好ましい。
上記ポリアルキレンイミンは、市販されているものを使用しても良い。
【0024】
<エポキシ基含有化合物に由来する構造単位>
上記のとおり、本開示のポリアルキレンイミン誘導体は、重量平均分子量200以上のポリアルキレンイミンにエポキシ基含有化合物を付加した構造を有することが好ましい。
【0025】
言い換えれば、本開示のポリアルキレンイミン誘導体は、エポキシ基含有化合物に由来する構造単位を有することが好ましい。エポキシ基含有化合物に由来する構造単位とは、エポキシ基含有化合物に含まれる少なくとも1つのエポキシ基が開環して形成される構造を有する構造単位をいう。なお、エポキシ基含有化合物に由来する構造単位とは、実際にエポキシ基含有化合物を原料とする構造単位に限定されず、同じ構造であれば、他の方法で形成した構造単位であっても良い。
【0026】
アルキレンオキシド化合物を付加した際には、下記式(B-1)の構造が形成される。
【0027】
【化4】
【0028】
式(B-1)において、R、Rは、水素原子もしくは炭素数1~20の基を表す。ただし、RおよびRの少なくとも1つは水素原子を表す。より好ましくは、R、Rは、水素原子もしくは炭素数1~3の基である。
【0029】
上記式(B-1)の構造単位は、数個が連結していても良い。上記式(B-1)の構造単位が数個連結する場合には、RおよびRの種類が互いに異なる構造単位が連結していても良く、同種のものが連結していても良い。また、ブロック状に連結していても良く、ランダム状に連結していても良い。式(B-1)の構造単位が数個連結する場合には、連結する上限は100であることが好ましく、上限が50であることが好ましい。
【0030】
上記炭素数1~20の基としては、特に制限はないが、アルキル基、アリール基等が例示され、それらは置換基を有していても良い。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等が例示される。
【0031】
上記式(B-1)の構造単位は、本開示のポリアルキレンイミン誘導体において、通常は、一方は、窒素原子、他の式(B-1)の構造単位、および下記式(B-2)の構造式から選択される原子もしくは構造単位に結合し、他方は、他の式(B-1)の構造単位、下記式(B-2)の構造式、および水素原子から選択される原子もしくは構造単位に結合する。
【0032】
上記式(B-1)の構造単位が水素原子に結合する場合、末端に水酸基が形成されることになるが、該水酸基は他の化合物と反応することにより、末端変性されても良い。
【0033】
グリシジルエーテル化合物を付加した際には、下記式(B-2)の構造が形成される。
【0034】
【化5】
【0035】
式(B-2)中、Rは、炭素数6~20のアルキル基、炭素数6~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、または-(CH2CH2O)n-Rを表す。Rは、炭素数6~20のアルキル基、炭素数6~20のアルケニル基、または炭素数6~20のアリール基を表す。nは1~50の整数を表す。セラミックの分散性および焼成時の低温分解性の観点からは、nは1~20であることが好ましい。ここで、アルキル基、アルケニル基、または式:-(CH2CH2O)n-Rの置換基中のアルキル基若しくはアルケニル基の炭素数が5以下であると、セラミックの凝集が生じやすくなる。逆に、アルキル基、アルケニル基、または式:-(CH2CH2O)n-Rの置換基中のアルキル基若しくはアルケニル基の炭素数が上記範囲である場合、焼成時の低温分解性が向上する傾向にある。
【0036】
ここで、炭素数6~20のアルキル基は、特に制限されず、炭素数6~20の直鎖または分岐鎖のアルキル基でありうる。具体的には、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、2-エチルヘキシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などが挙げられる。
【0037】
炭素数6~20のアルケニル基は、特に制限されず、炭素数6~20の直鎖または分岐鎖のアルケニル基でありうる。具体的には、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基などが挙げられる。
【0038】
炭素数6~20のアリール基は、特に制限されず、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o-,m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、ピレニル基などが挙げられる。
【0039】
これらのうち、セラミックの分散性および焼成時の低温分解性の観点より、Rは炭素数6~16のアルキル基が好ましく、炭素数6~12のアルキル基がより好ましく、炭素数6~10のアルキル基がさらにより好ましく、炭素数6~8のアルキル基が特に好ましい。Rとしては炭素数6~16のアルキル基が好ましく、炭素数6~12のアルキル基がより好ましい。セラミックの分散性の観点よりRおよびRの炭素数が16以下であると好ましく、RおよびRの炭素数が12以下であることがより好ましい。
【0040】
<本開示のポリアルキレンイミン誘導体の組成>
本開示のポリアルキレンイミン誘導体における、アルキレンイミンに由来する構造単位(上記式(A-1)、(A-2)および(A-3)で表される構造単位の合計)と、エポキシ基含有化合物に由来する構造単位(上記式(B-1)および(B-2)で表される構造単位の合計)の組成比は、アルキレンイミンに由来する構造単位とエポキシ基含有化合物に由来する構造単位が、モル比で10~90:10~90であることが好ましく、15~85:15~85であることがより好ましく、20~80:20~80であることがさらに好ましい。組成比が上記範囲である場合、セラミックの分散性が向上する傾向にあり、また、焼成時の低温分解性が向上する傾向にある。
【0041】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体は、上記式(B-2)で表される構造単位を含有することが好ましい。アルキレンイミンに由来する構造単位と上記式(B-2)で表される構造単位の組成比が、モル比で10~90:10~90であることが好ましく、15~85:15~85であることがより好ましく、20~80:20~80であることがさらに好ましい。組成比が上記範囲である場合、セラミックの分散性が向上する傾向にあり、また、焼成時の低温分解性が向上する傾向にある。
【0042】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体における、アルキレンイミンに由来する構造単位の含有割合は、下限値として5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%が特に好ましく、上限値として80質量%以下が好ましく、74質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、65質量%以下が特に好ましい。
【0043】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体における、エポキシ基含有化合物に由来する構造単位の含有割合は、下限値として20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上が特に好ましく、上限値として95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下が特に好ましい。
【0044】
アルキレンイミンに由来する構造単位の含有割合やエポキシ基含有化合物に由来する構造単位の含有割合が上記範囲である場合、セラミックの分散性が向上する傾向にあり、また、焼成時の低温分解性が向上する傾向にある。
【0045】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体は、例えば活性水素を有するすべてのアミノ基がエポキシ基含有化合物と反応することにより、含まれるアミノ基がすべて3級アミンでも良いが、1級アミンおよび/または2級アミンを有していても良い。また、4級化されたアミノ基を有していても良い。
【0046】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体のアミン価は、1mgKOH/g以上であることが好ましく、3mgKOH/g以上がより好ましく、5mgKOH/g以上がさらに好ましい。またエポキシ基含有化合物を付加してなるポリアルキレンイミン誘導体に含まれるアミン価の上限は50mgKOH/g以下であることが好ましく、35mgKOH/g以下がより好ましく、20mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0047】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体全体における第1級アミノ基および第2級アミノ基の合計割合は、セラミック粉体分散性および保存安定性の観点より、90モル%以下であることが好ましく、85モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましい。第1級アミノ基および第2級アミノ基の合計割合は、GPCやNMR分析により求めることができる。
【0048】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体の粘度は、セラミック分散性の観点より、100mPa・s以上であることが好ましく、500mPa・s以上であることがより好ましく、1000mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、ハンドリング性の観点より、200000mPa・s以下であることが好ましく、150000mPa・s以下であることがより好ましく、100000mPa・s以下であることがさらに好ましい。ポリアルキレンイミン誘導体の粘度はB型回転粘度計により測定することができる。
【0049】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体の空気雰囲気下の測定で400℃における熱分解率は65質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。
【0050】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体の空気雰囲気下の測定で500℃における熱分解率は80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0051】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体の窒素雰囲気下の測定で400℃における熱分解率は85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0052】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体の窒素雰囲気下の測定で500℃における熱分解率は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。
【0053】
熱分解率は視差熱分析(DTA)を用いて資料の重量減少率より算出することができるが、具体的には実施例に記載の方法により測定した値を用いる。
【0054】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体はセラミック用バインダーとして使用することができ、セラミック用分散剤としても使用することもできる。
【0055】
[本開示のポリアルキレンイミン誘導体の製造方法]
本開示のポリアルキレンイミン誘導体は、例えば、ポリアルキレンイミンにエポキシ基含有化合物を付加反応する工程(付加反応工程ともいう)を含むことにより製造することができる。
【0056】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体に用いるポリアルキレンイミンは前述に記載の重量平均分子量が200以上である。
【0057】
原料となるポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポ リブチレンイミンなどが挙げられ、中でもポリエチレンイミンが好ましい。ポリアルキレンイミン中に存在する第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基のうち、第1級アミノ基と第2級アミノ基を合わせた割合が、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上である。第1級アミノ基と第2級アミノ基を合わせた割合が30モル%よりも少ないと、セラミック分散性が悪くなる。なお、ポリアルキレンイミン中の第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基の割合はNMR分析や滴定等により測定することができる。
【0058】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体エポキシ基含有化合物に由来する構造単位は、アルキレンオキシド化合物に由来する構造単位またはグリシジルエーテル化合物に由来する構造単位であってよい。
【0059】
前記アルキレンオキシド化合物に由来する構造単位またはグリシジルエーテル化合物に由来する構造単位は単官能エポキシ化合物に由来する構造単位であることがセラミックの分散性および焼成時の低温分解性の観点より好ましい。
【0060】
原料となるアルキレンオキシド化合物としては、炭素数2~10のアルキレンオキシドであり、さらに好ましくは炭素数2~8のアルキレンオキシドであり、より好ましくは炭素数2~6のアルキレンオキシドであり、特に好ましくは炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、最も好ましくは炭素数2~3のアルキレンオキシド(すなわち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド)である。また、アルキレンオキシドは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0061】
原料である重量平均分子量が200以上のポリアルキレンイミン1モルに対するアルキレンオキシドの付加モル数は、下限値として、好ましくは10モル以上であり、より好ましくは20モル以上であり、さらに好ましくは30モル以上であり、さらに好ましくは40モル以上であり、さらに好ましくは50モル以上であり、さらに好ましくは100モル以上であり、特に好ましくは500モル以上であり、最も好ましくは1000モル以上であり、上限値として、好ましくは100000モル以下であり、より好ましくは50000モル以下であり、さらに好ましくは40000モル以下であり、さらに好ましくは30000モル以下であり、さらに好ましくは20000モル以下であり、さらに好ましくは10000モル以下であり、特に好ましくは7000モル以下であり、最も好ましくは5000モル以下である。ポリアルキレンイミン1モルに対するアルキレンオキシドの付加モル数を上記範囲内に調整することによって、セラミックの分散性が良好なセラミック用バインダーを得ることができる。
【0062】
原料となるグリシジルエーテル化合物としては、下記式(C)で記載される化合物があげられる。
【0063】
【化6】
【0064】
式中、Rは炭素数6~20のアルキル基、炭素数6~20のアルケニル基、炭素数6~ 20のアリール基、または-(CH2CH2O)m-Rを表す。Rは炭素数6~20のアルキル基、炭素数6~20のアルケニル基、または炭素数6~20のアリール基を表す。mは1~50の整数を表す。
【0065】
上記式(C)における、RおよびRの好ましい形態は、前記RおよびRと同じである。また、上記式(C)におけるmの好ましい形態は、前記nと同じである。
【0066】
上記付加反応工程において、ポリアルキレンイミンに対するエポキシ基含有化合物の反応の仕込み質量比(エポキシ基含有化合物/ポリアルキレンイミン)は、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.3以下である。なお、ポリアルキレンイミンに対するエポキシ基含有化合物の反応の仕込み質量比の下限は、特に制限されないが、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上である。
ポリアルキレンイミンのアミン価とエポキシ基含有化合物のエポキシ当量を用いて以下のように表される。
【0067】
【数1】
【0068】
付加反応は溶媒の存在下であっても、無溶媒下であっても、特に限定されないが、無溶媒反応、水または有機溶媒を溶媒とした反応が好ましい。より好ましくは無溶媒反応である。また、撹拌は、撹拌下、静置下の何れでもよいが、撹拌下で実施することが好ましい。
付加反応に使用できる溶媒は、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール などの低級アルコール;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;等から1種または2種以上を適宜選択して用 いることができる。
前記溶媒を用いる際の原料濃度は、特に限定されないが、ポリアルキレンイミンとグリシジルエーテルの合計量が好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。原料濃度が10重量%より少ないと、反応時間が長くなり好ましくない。
【0069】
前記付加反応は、ポリアルキレンイミンとエポキシ基含有化合物を全て一括に仕込んでも良いし、いずれかを初期に仕込み残りを滴下しても良いが、ポリアルキレンイミンを初期に仕込み、これにエポキシ基含有化合物を滴下する方法が好ましい。
【0070】
付加反応は、触媒は基本的には不要であるが、必要に応じて反応に悪影響を及ぼさないものであれば適宜使用しても良く、第3級アミンが好ましい。酸を触媒に用いると、第4級アミンが生じる場合があるので好ましくない。
【0071】
付加反応の反応温度は、特に限定されないが、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上が特に好ましい。また反応温度は100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下が特に好ましい。反応温度が上記範囲である場合、未反応のエポキシ基含有が低減できる傾向にあり、副反応も抑えられる傾向にある。また、付加反応の反応時間もまた、特に限定されず、反応温度、反応スケールなどによって適宜調節できる。
【0072】
前記付加反応を実施する際は、得られる誘導体の着色を抑えるためには窒素雰囲気下で反応を行うことが好ましく、付加反応の際の雰囲気は得られる誘導体の使用目的に応じて適宜設定すればよい。なお、反応は、常圧(大気圧)、加圧、減圧のいずれで行ってもよい。
【0073】
本発明のポリアルキレンイミン誘導体中の未反応のエポキシ基含有化合物の量は5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに 好ましい。未反応のエポキシ基含有化合物の量が5重量%より多いと、製品に配合した際に予期せぬ副反応が生じる可能性があり好ましくない。
【0074】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体の製造方法において、原料である重量平均分子量200以上のポリアルキレンイミンにおける窒素含有量は、セラミックの分散性の観点より10質量%以上が好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また保存安定性の溶解性の観点より、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。ポリアルキレンイミンにおける窒素含有量は元素分析により決定することができる。
【0075】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体の製造方法において、原料である重量平均分子量200以上のポリアルキレンイミンの1級アミン構造および2級アミンの合計量に対し、付加させるエポキシ基含有化合物の量は、セラミックの分散性の観点より、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、セラミックの分散性の観点より、500モル%以下であることが好ましく、400モル%以下であることがより好ましく、300モル%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
原料である重量平均分子量200以上のポリアルキレンイミン100モル%に対し、反応させるエポキシ基含有化合物の量は、セラミックの分散性の観点より、100モル%以上であることが好ましく、200モル%以上であることがより好ましく、300モル%以上であることがさらに好ましい。また、セラミックの分散性の観点より、5000モル%以下であることが好ましく、4000モル%以下であることがより好ましく、3000モル%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
本開示のポリアルキレンイミン誘導体は、上記付加反応工程の他に、任意の工程を含み製造しても構わない。例えば、精製工程、後反応工程、濃縮工程、乾燥工程、希釈工程などが例示される。
【0078】
[本開示のセラミック用バインダー]
本開示のセラミック用バインダーは、上記本開示のポリアルキレンイミン誘導体を含む。本開示のセラミック用バインダーにおける、本開示のポリアルキレンイミン誘導体の含有量は、好ましくは本開示のセラミック用バインダー100質量部に対して30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましい。本開示のセラミック用バインダーにおける、本開示のポリアルキレンイミン誘導体の含有量は、好ましくは本開示のセラミック用バインダー100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましい。本開示のポリアルキレンイミン誘導体の含有量が上記範囲である場合、セラミックの分散性が向上しつつ、焼成時の低温分解性が向上する傾向にある。
【0079】
本開示の本開示のセラミック用バインダーは、他のセラミック用バインダーを含んでいても良い。他のセラミック用バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、アクリル樹脂等が例示される。本開示の本開示のセラミック用バインダーにおける、他のセラミック用バインダーの含有量は、本開示のセラミック用バインダー100質量部に対して70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
【0080】
[本開示のセラミック用組成物]
本開示の本開示のセラミック用組成物は、上記本開示のポリアルキレンイミン誘導体を含む。
【0081】
本開示のセラミック成形用組成物100質量部において、本開示のポリアルキレンイミン誘導体の含有量は、成型時の取り扱いの観点またはセラミックの分散性の観点より、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また成型時の取り扱いの観点より、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0082】
本開示のセラミック成形用組成物の粘度は、成形加工性の観点より、100mPa・s以上であることが好ましく、1000mPa・s以上であることがより好ましく、3000mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、ハンドリング性の観点より、1000000mPa・s以下であることが好ましく、500000mPa・s以下であることがより好ましく、200000mPa・s以下であることがさらに好ましい。セラミック成形用組成物の粘度は、粘弾性測定装置により測定することができる。
【0083】
本開示のセラミック成形用組成物としては、セラミック用バインダーに加え、所望により、分散媒、分散剤(解こう剤)、粘度調整剤、界面活性剤、消泡剤、防腐剤又は防カビ剤など、従来公知の各種添加剤を含有させることができる。
【0084】
分散媒としては、水系分散媒または非水系溶媒が挙げられ、水系分散媒としては、水または、水と水溶性の有機溶媒との混合物(混合水溶液)が挙げられる。水としては、水道水、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水、純水等を用いることができる。この混合水溶液を構成する水以外の有機溶媒としては、水と均質に混合し得る有機溶剤(例えば、炭素数が1~4の低級アルコールまたは低級ケトン等)の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。水系溶媒としては、例えば、該水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である混合水溶液の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒(例えば、水道水、蒸留水、純水、精製水)が挙げられる。
【0085】
非水系溶媒としては、典型的には水を含まない有機溶媒が挙げられる。かかる有機溶媒としては特に制限はなく、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、トルエン、ヘキサン、灯油等の有機溶媒の一種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが挙げられる。
【0086】
分散剤(解こう剤)は、上記の分散媒に応じて水系分散剤と非水系分散剤とから適宜選択して用いることができる。また、かかる分散剤としては、高分子型分散剤(高分子界面活性剤型分散剤を包含する)、界面活性剤型分散剤(低分子型分散剤ともいう)または無機型分散剤のいずれであっても良く、また、これらはアニオン性、カチオン性または非イオン性のいずれであっても良い。すなわち、分散剤の分子構造中に、アニオン性基、カチオン性基およびノニオン性基の少なくとも1種の官能基を有するものであり得る。溶射粒子の質量を100質量%としたとき、0.01~10質量%の範囲にすることをおおよその目安とすることができる。
【0087】
好ましい分散剤(解こう剤)としては、ポリアクリル酸アンモニウムやポリメタクリル酸アンモニウムのようなポリカルボン酸塩などが例示される。本開示のポリアルキレンイミン誘導体を分散剤(解こう剤)として使用しても良い。
【0088】
粘度調整剤として使用することが可能な化合物の例としては、非イオン性ポリマー、例えばポリエチレングリコールなどのポリエーテルや、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、水系ウレタン樹脂、アラビアゴム、キトサン、セルロース、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、リグニンスルホン酸塩、澱粉などが挙げられる。粘度調整剤の含有量は、溶射粒子の質量を100質量%としたとき、0.01~10質量%の範囲にすることができる。
【0089】
消泡剤の例としては、シリコーンオイル、シリコーンエマルション系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。
【0090】
本開示の本開示のセラミック用組成物は、通常はセラミック用バインダーとして本開示のポリアルキレンイミン誘導体を含むが、他のセラミック用バインダーを含んでいても良い。他のセラミック用バインダーの例示としては、上記のとおりである。
【0091】
[本開示のセラミック用バインダーなどの用途]
本開示のセラミック用バインダーは、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、炭化ホウ素、窒化ケイ素、ジルコニア、チタニア、BaTiO及びこれらの混合物等のセラミックスのバインダーとして好ましく使用することができる。
本開示のセラミック用バインダーまたはセラミック成型用組成物は、熱分解温度が低く、残炭量も少ないことから、例えば、集積回路用ガラスセラミック基板や プラズマディスプレイ用ガラス基板、光分解性酸化チタン含有テープ等の低温焼成などに有用である。
【実施例0092】
[アミン価の測定法]
アミン価とは樹脂1g中にふくまれるアミノ基のモル数(mmol)のことである。ポリエチレンイミンのアミン価は、メタノール溶液中で、0.5mol/Lのp-トルエンスルホン酸標準溶液を用いた電位差滴定により算出した。
[エポキシ当量]
エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含む物質の質量である。これは分子構造より計算することも可能であるし、秤量した試料をクロロホルムに溶解させ、酢酸と臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加えた後、過塩素酸酢酸標準液を滴下して電位差滴定をすることによっても測定可能である。ここでは、デナコール(登録商標)のカタログ値を採用した。
[グリシジルエーテルの転化率]
グリシジルエーテルの転化率は、反応液中に残存するグリシジルエーテルの量を検出器にFIDを備えるガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製;GC-2010)を用いて、内部標準法で定量することにより算出した。
【0093】
[窒素原子あたりの疎水基の導入量]
ポリアルキレンイミン誘導体の窒素原子あたりの疎水基の導入量(モル%)は以下の式から算出される。
【0094】
【数2】
【0095】
※GE=グリシジルエーテル
[重量平均分子量および数平均分子量の測定方法]
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量および数平均分子量の測定は、HLC-8320GPC EcoSEC(東ソー株式会社製)を用いて以下の条件で行った。
カラム:SHODEX OHpak SB-807HQを直列で2本接続し、次いでSB-806M/HQを直列で2本接続
カラム温度:40℃
溶離液:0.5M酢酸+0.5M硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=50/50(体積比)
流速:0.4ml/分
検出器:RI
検量線:プルラン
サンプル濃度:0.1wt%
サンプル打ち込み量:100μL
表1に示される実施例1~4の重合体をそれぞれ以下の手順で合成した。なお、原料であるポリエチレンイミン、グリシジルエーテルは以下の原料を用いた。
[ポリエチレンイミン]
エポミン(登録商標)SP-006((株)日本触媒製、数平均分子量:730(分析値)、重量平均分子量:939(分析値)、アミン価:20mmol/g)
[グリシジルエーテル]
2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(デナコール(登録商標)EX-121;ナガセケムテックス(株)製)(エポキシ等量:187g/eq)
実施例1
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたステンレス製の圧力容器に、ポリエチレンイミン(SP-006)37.2部及び水素化ナトリウム0.1部を仕込み、攪拌下で窒素加圧と排気とを繰り返すことによって、容器内の窒素置換を十分行なった。容器内を150±5℃の温度になるように加熱した。次に、容器内の温度を150±5℃に設定した後、圧力を3.0~8.0×10-1MPaとして、安全圧下でエチレンオキシド155.7部を導入した。エチレンオキシド添加終了後、さらに1時間上記反応温度を維持した後、揮発分を除去して重合体を得た。
実施例2
温度計、還流冷却器、撹拌装置を備えた500mLの四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン(SP-006)171.7部を仕込み、55℃に昇温し、撹拌しながら2-エチルヘキシルグリシジルエーテル192.6部を5時間かけて添加した。この重合体混合物を内温55℃でさらに5時間撹拌し、重合体を得た。ガスクロマトグラフィーで未反応のグリシジルエーテルを分析したところ、グリシジルエーテルの転化率は99.9%であり、窒素原子当たりの疎水基の導入量は30.0mol%だった。
実施例3
温度計、還流冷却器、撹拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン(SP-006)171.7部を仕込み、55℃に昇温し、撹拌しながら2-エチルヘキシルグリシジルエーテル321.1部を5時間かけて添加した。この重合体混合物を55℃に保ったまま5時間反応し、重合体を得た。ガスクロマトグラフィーで未反応のグリシジルエーテルを分析したところ、グリシジルエーテルの転化率は99.9%であり、窒素原子当たりの疎水基の導入量は50.0mol%だった。
実施例4
温度計、攪拌機、滴下漏斗、窒素導入菅及び還流冷却器を備えたステンレス製の圧力容器に、実施例3で取得した重合体200.0部を仕込み、攪拌下で窒素加圧と排気とを繰り返すことによって、容器内の窒素置換を十分行なった。容器内を150±5℃の温度になるように加熱した。次に、容器内の温度を150±5℃に設定した後、圧力を3.0~8.0×10-1MPaとして、安全圧下でエチレンオキシド41.6部を導入した。エチレンオキシド添加終了後、さらに1時間上記反応温度を維持した。揮発分を除去して重合体を得た。
比較例1
市販のバインダーとしてポリビニルブチラール(商品名:エスレックBL-2H、積水化学工業(株)製)を比較例として使用した。
比較例2
市販の高分子ポリカルボン酸(商品名:マリアリムAKM-0531、日油(株)製)を比較例として使用した。
[熱分解性]
実施例で作製した各重合体及び、比較例の各物質の熱分解性を以下の方法で測定した。
差動型示差熱天秤装置(リガク製、ThermoPlus2 TG-8120)を用いて、約10mgのサンプルを窒素雰囲気下、または大気雰囲気下でそれぞれ常温から500℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、500℃到達後10分間保持した。このとき、350℃到達時、400℃到達時、及び500℃到達後10分後、それぞれの時点での重量減少率を測定した。
[スラリー分散性評価]
実施例で作製した各重合体及び、比較例の各物質のスラリー分散性を以下の方法で評価した。
【0096】
実施例で作製した各重合体及び、比較例の各物質それぞれ0.5gをポリ容器に秤量し、そこにトルエン/エタノール=1/1混合溶液を1.0g加え撹拌棒で撹拌することで各共重合体の溶液を取得した。各溶液1.5gに対し8。5gのチタン酸バリウム(商品名:BT-03、堺化学工業(株)製)を加え、撹拌棒で室温条件下撹拌することでスラリー分散性を評価した。
評価基準◎:撹拌数分以内に均一なペースト状になる
〇:撹拌数分以内に均一な塊となる
×:撹拌しても粉と塊に分離し、一部粉末のまま残る
【0097】
【表1】
【0098】
表1に記載のとおり、本開示の化合物は、良好な分散性と低温分解性を有する。よって、本開示の化合物は、セラミックバインダーとして好適に使用できることが明らかとなった。