(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068968
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G11C 11/4091 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
G11C11/4091 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177830
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福士 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘行
(72)【発明者】
【氏名】松重 宗明
【テーマコード(参考)】
5M024
【Fターム(参考)】
5M024AA37
5M024AA93
5M024BB14
5M024CC84
5M024FF03
5M024PP01
5M024PP03
5M024PP05
5M024PP07
(57)【要約】
【課題】高速で、安定した動作が可能なメモリを備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、複数のメモリセルと、複数のメモリセルから選択されたメモリセルに接続されるセンスアンプと、第1電源配線と、センスアンプと第1電源配線との間に接続され、センスアンプを動作させるとき、オン状態にされる第1スイッチと、センスアンプに接続され、センスアンプを動作させるとき、オン状態にされる第2スイッチとを備えるメモリマットMATと、メモリマットMATの外側に配置され、第1電源配線に接続された第2電源配線L_ddと、メモリマットMATの外側に配置され、第2スイッチを介して、センスアンプに接続された第3電源配線L_odと、メモリマットMATの外側に配置され、第2電源配線L_ddと第3電源配線L_odとの間に接続されたショートスイッチSHTとを備える。ここで、センスアンプを動作させるとき、ショートスイッチSHTがオン状態にされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリセルと、前記複数のメモリセルから選択されたメモリセルに接続されるセンスアンプと、第1電源配線と、前記センスアンプと前記第1電源配線との間に接続され、前記センスアンプを動作させるとき、オン状態にされる第1スイッチと、前記センスアンプに接続され、前記センスアンプを動作させるとき、オン状態にされる第2スイッチとを備えるメモリマットと、
前記メモリマットの外側に配置され、前記第1電源配線に接続された第2電源配線と、
前記メモリマットの外側に配置され、前記第2スイッチを介して前記センスアンプに接続された第3電源配線と、
前記メモリマットの外側に配置され、前記第2電源配線と前記第3電源配線との間に接続された第3スイッチと、
を備え、
前記センスアンプを動作させるとき、前記第3スイッチがオン状態にされる、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記センスアンプの動作マージンが小さいとき、前記第3スイッチはオフ状態にされ、前記動作マージンが小さくないとき、前記第3スイッチがオン状態にされる、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第2電源配線には、第1電源電圧が供給され、
前記第3電源配線には、電圧変換回路が接続され、前記電圧変換回路は、前記動作マージンが小さいとき、所定の電圧を、前記第1電源電圧とは異なる電圧値の第2電源電圧に変換し、前記第3電源配線に供給する、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記第3スイッチがオン状態にされているとき、前記電圧変換回路の動作が停止される、半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記第1スイッチ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチは、MOSFETによって構成されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2スイッチは、前記第1スイッチがオン状態となる前の初期期間において、オン状態となる、半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1スイッチがオン状態となっている期間と、前記第2スイッチがオン状態なっている期間とは、部分的に重なっている、半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、それぞれ、複数の前記メモリマットを備えた複数のメモリチップを備え、
前記複数のメモリチップのうちの所定のメモリチップにおいて、前記第3スイッチがオン状態にされる、半導体装置。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、それぞれ、複数の前記メモリマットを備えた複数のメモリバンクを備え、
前記複数のメモリバンクのうちの所定のメモリバンクにおいて、前記第3スイッチがオン状態にされる、半導体装置。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、複数の前記メモリマットを備え、
前記複数のメモリマットのうちの所定のメモリマットにおいて、前記第3スイッチがオン状態にされる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、メモリを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置が備えるメモリには、例えばダイナミック型メモリおよびスタティック型メモリがある。ダイナミック型メモリは、例えば特許文献1に記載されている。この特許文献1には、オーバードライブ(以下、ODとも称する)方式のセンスアンプを備えたダイナミック型メモリが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の高速化および電源電圧の低電圧化が進んでいる。メモリ内のセンスアンプを、単一の電源電圧で駆動すると、センスアンプの動作マージンが小さい場合、センスアンプが動作不能となることがある。センスアンプの動作マージンを大きくするために、特許文献1に示されているような、OD方式がある。
【0005】
OD方式では、電圧値の異なる2種類の電源電圧を用いて、センスアンプの駆動が行われる。すなわち、センスアンプが動作を開始する初期期間(センス初期)においては、高い電圧値の電源電圧によって、センスアンプが駆動され、その後、低い電圧値の電源電圧によって、センスアンプが駆動される。これにより、初期期間におけるセンスアンプの動作マージンを大きくすることが可能となる。しかしながら、初期期間においては、高い電圧値の電源電圧から比較的大きな駆動電流がセンスアンプを介して流れることになり、消費電力(パワー)が増大することになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、動作マージンが小さなセンスアンプに対しては、OD方式を適用し、動作マージンが大きなセンスアンプに対しては、OD方式を適用しないことを考えた。センスアンプの動作マージンは、半導体装置の動作マージンを律速するものであり、例えば半導体装置を製造する際のプロセスバラツキまたは/および素子バラツキによって変化する。
図12は、半導体装置のプロセスバラツキを示す図である。
図12において、Fast(高速)、Typ(標準)およびSlow(低速)は、半導体装置を構成する素子、例えば電界効果型トランジスタ(以下、MOSFETとも称する)の速度を示している。プロセスがばらつくことにより、MOSFETの速度も、
図12に示すようにばらつくことになる。
【0007】
センスアンプの動作マージンは、素子の速度が低速なほど、小さくなり、素子の速度が高速なるほど、大きくなる。動作マージンが小さいとき、すなわち低速のときに、OD方式を適用(OD有)することにより、消費電力は大きくなるが、動作不能となるのを防ぐことが可能である。また、動作マージンが大きいとき、すなわち、標準および高速では、OD方式を適用(OD無)しないようにすることによって、消費電力を小さくすることが可能である。
【0008】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、OD方式を適用しないようにした場合、センスアンプが安定した動作をしないことがあることが判明した。特許文献1の
図5を例にして述べると、OD方式を適用しない場合には、初期期間において、MOSFET(Tr6)がオフ状態にされる。このとき、センスアンプを駆動するMOSFET(Tr5)の駆動能力が不足している場合、MOSFET(Tr5)を介してセンスアンプに電源電圧を供給する電源配線網が弱い場合、あるいはMOSFET(Tr5)を動作させるタイミングが不適切であった場合には、センスアンプを高速で安定して動作させることが困難となる。
【0009】
本明細書に記載されている一実施の形態に係る半導体装置を述べると、次の通りである。
【0010】
すなわち、半導体装置は、複数のメモリセルと、複数のメモリセルから選択されたメモリセルに接続されるセンスアンプと、第1電源配線と、センスアンプと第1電源配線との間に接続され、センスアンプを動作させるとき、オン状態にされる第1スイッチと、センスアンプに接続され、センスアンプを動作させるとき、オン状態にされる第2スイッチとを備えるメモリマットと、メモリマットの外側に配置され、第1電源配線に接続された第2電源配線と、メモリマットの外側に配置され、第2スイッチを介して、センスアンプに接続された第3電源配線と、メモリマットの外側に配置され、第2電源配線と第3電源配線との間に接続された第3スイッチとを備える。ここで、センスアンプを動作させるとき、第3スイッチがオン状態にされる。
【0011】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、高速で、安定した動作が可能なメモリを備えた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1に係るメモリバンクの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係るメモリマットの構成を模式的に示す平面図である。
【
図3】実施の形態1に係るサブマット、センスアンプ群およびワード線ドライバーの構成を示す回路図である。
【
図4】(A)および(B)は、実施の形態1に係るメモリチップの動作を説明するための図である。
【
図5】(A)および(B)は、実施の形態2に係るショートスイッチを説明するための図である。
【
図6】(A)~(C)は、実施の形態3に係るセンスアンプの動作を説明するための図である。
【
図7】(A)~(C)は、実施の形態4に係る半導体装置を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【
図9】実施の形態1に係る積層メモリの構成を模式的に示す断面図である。
【
図10】(A)および(B)は、実施の形態1に係る積層メモリを説明するための図である。
【
図11】実施の形態1に係るショートスイッチの配置を説明するための回路図である。
【
図12】半導体装置のプロセスのバラツキを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。
【0015】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0016】
(実施の形態1)
以下、AI(Artificial Intelligence)を実現するために実行される学習および推論用途に適した半導体装置を例にして、実施の形態を説明する。勿論、本発明は、このような用途の半導体装置に限定されるものではない。
【0017】
<半導体装置の構成>
学習および推論用途の半導体装置は、大規模な積和演算回路等のニューラルネットワークを搭載し、多量のデータをリアルタイムで処理することが求められる。また、このような半導体装置には、メモリが搭載される。搭載メモリは、リアルタイムの処理で生成された、大量の分析データ(例えば画像データ)の保存および更新に使われる。また、ニューラルネットワークで生成された中間特徴データや重みデータを、高速で保存および更新を行うために、搭載メモリは使われる。高速で保存および更新を行う必要があるため、搭載メモリとしては、広帯域で大容量のメモリが要求されている。さらに、発熱の低減等のために、搭載メモリには、低消費電力化も要求されている。
【0018】
図8は、実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。同図において、1は、実施の形態1に係る半導体装置を示している。半導体装置1は、学習等の用途に適した構成を備えるように、複数の半導体チップによって構成されている。
図8には、複数の半導体チップのうち、説明に必要な半導体チップのみが描かれている。すなわち、
図8において、200は、多量のデータを処理するために、大規模な積和演算回路等を備えたデータ処理用の半導体チップを示している。また、同図において、100は、複数のメモリ用の半導体チップ(以下、メモリチップとも称する)により構成された積層メモリを示している。
【0019】
データ処理用の半導体チップ200と、積層メモリ100は、複数のバンプによって、基板300と接続されており、基板300は、複数のバンプによって、パッケージ基板400に接続されている。積層メモリ100、半導体チップ200および基板300は、封止用のパッケージ500によって覆われ、密封されている。
図8に示すように、積層メモリ100の一部の電極は、基板300内に形成された配線によって、データ処理用の半導体チップ200の一部の電極に接続されている。また、積層メモリ100およびデータ処理用の半導体チップ200の一部の電極は、パッケージ基板400に設けられたバンプに接続されている。
【0020】
データ処理用の半導体チップ200の電極と積層メモリ100の電極とが接続されていることにより、例えばデータ処理用の半導体チップ200で生成されたデータ(中間特徴データ等)は、積層メモリ100に供給され、積層メモリ100に保存および更新が行われる。
【0021】
<<積層メモリの構成>>
次に、積層メモリ100の構成を説明する。
図9は、実施の形態1に係る積層メモリの構成を模式的に示す断面図である。
【0022】
図9において、110_1~110_8は、メモリチップを示し、120は、ベース用の半導体チップ(以下、ベースチップとも称する)を示している。
図9に示すように、ベースチップ120上に、メモリチップ110_1~110_8が積層されている。メモリチップ110_1~110_8とベースチップ120との間は、TSV(Through Silicon Via)接続技術によって接続されている。すなわち、積層されるメモリチップ110_1~110_8のそれぞれに、貫通孔が形成され、導電性材料によって、異なるメモリチップ間が電気的に接続され、さらにベースチップ120に接続されている。
【0023】
ベースチップ120には、バンプが形成され、このバンプによって、積層メモリ100が、基板300に接続されている。なお、ベースチップ120にも、種々の回路が形成されている。
【0024】
このような構成の積層メモリ100を用いることにより、多くのメモリチップ110_1~110_8を、データ処理用の半導体チップ200に接続することが可能となる。すなわち、半導体チップ200が広帯域のメモリを用いることが可能となる。この場合、半導体チップ200とメモリチップ間のデータの転送に係る消費電力は、TSV技術を用いているため、抑制することが可能である。そのため、メモリチップ内において消費される電力が、積層メモリ100の消費電力を制限することになる。言い換えるならば、メモリチップ内における消費電力の低減が、積層メモリ100の消費電力の低減に非常に有効となる。
【0025】
図10は、実施の形態1に係る積層メモリを説明するための図である。
図10には、積層メモリ100とメモリチップとの関係が示されている。
図10(A)には、
図9と同様に、積層メモリ100の構成が模式的に斜視図で示されている。特に制限されないが、積層メモリ100を構成するメモリチップ110_1~110_8は、互いに同様な構成を有している。そのため、ここでは、メモリチップ110_4を代表として説明する。
図10(B)には、メモリチップ110_4の構成が、模式的に平面図で示されている。
【0026】
図10(B)において、111は、複数のメモリバンクによって構成されたメモリユニットを示している。特に制限されないが、実施の形態1においては、メモリユニット111は、8個のメモリバンクBK0~BK7(BK8~BK15)によって構成され、1つのメモリチップ110_4には、8個のメモリユニットが配置されている。メモリチップ110_4において、4個のメモリユニット111に挟まれた中央部(中央列)には、TSV接続技術によって接続されるTSV領域TSV_Rと、ヒューズを備えた制御領域FCTとが配置されている。メモリバンクBK0~BK15は、後で
図1を用いて説明するが、複数のメモリセルおよびセンスアンプ等を含む複数のメモリマットが配置されている。
【0027】
<<メモリバンクの構成>>
図1は、実施の形態1に係るメモリバンクの構成を示す図である。メモリバンクBK0~BK15は、互いに同様な構成であるため、メモリバンクBK0~BK15を纏めて、メモリバンクBKとして、以降説明する。
【0028】
メモリバンクBKは、特に制限されないが、マトリクス状に配置された複数のメモリマットMATと、複数のメモリマットMATの外側において、メッシュ状に配置され、メモリマットMATに電源電圧を供給する電源配線とを備えている。特に制限されないが、実施の形態1においては、3種類の電源配線が、メッシュ状に配置されている。すなわち、メモリマットMATに接地電圧Vssを供給する第1電源配線(以下、接地電源配線と称する)と、メモリマットMATに第1電源電圧Vddを供給する第2電源配線と、メモリマットMATに第2電源電圧Vodを供給する第3電源配線が、複数のメモリマットMATの外側において、メッシュ状に配置されている。
図1では、この3種類の電源配線のうち、接地電源配線は省略され、第2電源配線は、符号L_ddで示され、第3電源配線は、符号L_odで示されている。また、
図1では、マトリクス状に配置されたメモリマットMATにうちの2個のメモリマットMATが例示されている。
【0029】
実施の形態1に係るメモリバンクBKには、複数のショートスイッチSHT(第3スイッチ)が、メモリマットMATの外側に配置されている。
図1では、ショートスイッチSHTは、Nチャンネル型(以下、N型とも称する)MOSFETN1によって構成されており、N型MOSFETN1のソース・ドレイン経路は、第2電源配線L_ddと第3電源配線L_odとの間で直列的に接続されている。また、シュートスイッチSHTは、
図1に示すように、平面視で見たとき、メモリマットMATの外側において、分散するように配置されている。N型MOSFETN1のゲートには、ショート制御信号Shが供給されている。ショート制御信号Shがハイレベルとなることにより、N型MOSFETN1、すなわちショートスイッチSHTがオン状態となり、第2電源配線L_ddと第3電源配線L_odとが、電気的に短絡する。分散して配置されたショートスイッチSHTによって、第2電源配線L_ddと第3電源配線L_odとが接続されるため、接続の際に生じる接続抵抗を小さくすることが可能である。
【0030】
メモリマットMATについては、後で
図2および
図3等を用いて説明するので、詳しい説明は省略するが、メモリマットMATは、マトリクス状に配置された複数のメモリセルと、複数のセンスアンプと、ワード線ドライバーと、メッシュ状に配置された3種類の電源配線とを備えている。メモリマットMAT内に配置された3種類の電源配線は、センスアンプ等に接地電圧Vssを供給する第4電源配線(
図3ではLi_ss)と、センスアンプ等に第1電源電圧Vddを供給する第5電源配線(
図3ではLi_dd:第1電源配線とも称する)と、センスアンプ等に第2電源電圧Vodを供給する第6電源配線(
図3ではLi_od)である。ここで、第4電源配線(Li_ss)は、前記した接地電源配線に接続され、第5電源配線(Li_dd:第1電源配線)は、前記した第2電源配線L_ddに接続され、第6電源配線(Li_od)は、前記した第3電源配線L_odに接続されている。
【0031】
図1において、Cdは、第2電源配線L_ddに接続されている寄生容量を示し、Coは、第3電源配線L_odに接続されている寄生容量を示している。また、P_Vdは、第2電源配線L_ddに接続された電源用の電極(パッド)を示している。このバッドP_Vdに対して、例えばメモリチップ110の外部から第1電源電圧Vddが給電される。これにより、各メモリマットMAT内に第1電源電圧Vddが供給されることになる。
【0032】
また、
図1において、P_Veは、例えばメモリチップ110の外部から所定の外部電圧が供給される電源用のパッドを示している。パッドP_Veに供給される外部電圧の電圧値は、第1電源電圧Vddよりも絶対値が高い電圧である。この外部電圧は、降圧電源回路(電圧変換回路)112に供給される。降圧電源回路112は、動作制御信号Vcntによって、動作が制御される。動作制御信号Vcntによって、降圧動作が指示されると、外部電圧を降圧し、前記した第2電源電圧Vodを生成する。すなわち、降圧電源回路112によって、外部電圧は、第2電源電圧Vodに変換される。この第2電源電圧Vodの電圧値は、第1電源電圧Vddよりも、絶対値が高い電圧である。これに対して、動作制御信号Vcntによって、降圧動作の停止が指示されると、降圧電源回路112は、降圧動作を停止し、その出力をフローティング状態にする。
【0033】
図1では、降圧電源回路112が降圧動作を行う変換回路によって構成される例が示されているが、これに限定されるものではない。例えば降圧電源回路112は、昇圧動作を行う電圧変換回路であってもよい。昇圧動作を行う電圧変換回路を用いる場合、電圧変換回路には、例えば第1電源電圧Vddが供給され、第1電源電圧Vddよりも電圧値の高い第2電源電圧Vodが生成され、生成された第2電源電圧Vodが第3電源配線L_odに供給される。
【0034】
また、
図1では、メモリバンクBK内に降圧電源回路112が配置されている例が示されているが、これに限定されるものではない。例えば1つの降圧電源回路112を、複数のメモリバンクBK間で共通にしてもよいし、さらには複数もメモリチップ110間で共通にしてもよい。
【0035】
図2は、実施の形態1に係るメモリマットの構成を模式的に示す平面図である。メモリマットMATは、マトリクス状に配置された複数のサブマットSub_MATと、複数のセンスアンプ群SAと、複数のワード線ドライバー(以下、WLドライバーとも称する)SWDとを備えている。ここで、センスアンプ群SAは、対応するサブマットSub_MATの行に沿って配置されている。また、WLドライバーSWDは、対応するサブマットSub_MATの列に沿って配置されている。
【0036】
サブマットSub_MATは、マトリクス状に配置された複数のメモリセルと、マトリクスの各行に沿って配置されたワード線WLと、マトリクスの各列に沿って配置されたビット線BLとを備えている。ワード線は、それが配置された行に配置された複数のメモリセルに対応し、対応する複数の接続メモリセルに接続されている。また、ビット線も、それが配置された列に配置された複数のメモリセルに対応し、対応する複数のメモリセルに接続されている。
【0037】
WLドライバーSWDは、図示しないデコーダからワード線選択信号WL_sが供給され、対応するサブマットSub_MAT内のワード線に供給する。これにより、サブマットSub_MATに配置されている複数のメモリセルから、前記したデコーダに供給されるアドレス信号に従ったメモリセルが選択される。選択されたメモリセルからビット線に読み出されたデータは、ビット線を介して、対応するセンスアンプ群SA内のセンスアンプによって増幅され、読み出しデータDataとして出力される。
【0038】
次に、サブマットSub_MATと、対応するセンスアンプ群SAおよび対応するWLドライバーSWDを、図面を用いて詳しく説明する。
図3は、実施の形態1に係るサブマット、センスアンプ群およびワード線ドライバーの構成を示す回路図である。
【0039】
図3において、MCは、サブマットSub_MATにマトリクス状に配置されたメモリセルを示している。また、WL_0~WL_255およびBL_0~BL_255は、サブマットSub_MATに配置されたワード線およびビット線を示している。さらに、
図3において、X_DECは前記したデコーダを示し、CNTは制御回路を示し、SACはセンスアンプ駆動制御回路を示している。
【0040】
メモリセルMCは、選択用MOSFETNmと記憶用容量Cmとを備えている。記憶用容量Cmは、選択用MOSFETNmを介して対応するビット線(例えば、BL_0)と接地電圧Vssとの間で直列的に接続されている。また、選択用MOSFETNmのゲートは、対応するワード線(例えば、WL_255)に接続されている。なお、メモリセルMCの接地電圧Vssは、前記した第4電源配線Li_ssを介して給電される。
【0041】
WLドライバーSWDは、各ワード線に接続された単位ドライバーDRVを備えている。デコーダX_DECは、アドレス信号Addをデコードし、ワード線選択信号WL_sのうち、アドレス信号Addによって指定されたワード線(例えば、WL_255)に対応するワード線選択信号WL_sをハイレベルにし、残りのワード線選択信号WL_sをロウレベルにする。これにより、ワード線WL_255が選択され、選択されたワード線WL_255に接続されたメモリセルMCが選択され、選択されたメモリセル内の選択用MOSFETNmがオン状態となる。その結果、ビット線BL_0~BL_255のそれぞれの電位が、選択されたメモリセルMC内の記憶用容量Cmに格納されているデータ(電荷)に従って変化する。ビット線BL_0~BL_255のそれぞれの電位が、次に述べるセンスアンプ群SA内のセンスアンプUSAによって、増幅され、センスアンプ群SAから、読み出しデータData(Data_0~Data_255)として出力される。
【0042】
センスアンプ群SAは、ビット線BL_0~BL_255に対応した複数のセンスアンプUSAを備えている。ここでは、ビット線BL_0に対応したセンスアンプUSAを例にして、その構成を述べる。センスアンプUSAは、Pチャンネル型(以下、P型とも称する)MOSFETP1、P2とN型MOSFETN2、N3とを備えており、センスアンプUSAは、センスアンプ用電源配線L_spとセンスアンプ用接地電源配線L_snとの間に接続されている。P型MOSFETP1とN型MOSFETN2のソース・ドレイン経路は、センスアンプ用電源配線L_spとセンスアンプ用接地電源配線L_snとの間で直列的に接続され、P型MOSFETP1とN型MOSFETN2のゲートは共通に接続されている。これにより、P型MOSFETP1とN型MOSFETN2によって第1インバータ回路IV1が構成されている。P型MOSFETP2とN型MOSFETN3も、P型MOSFETP1とN型MOSFETN2と同様に、センスアンプ用電源配線L_spとセンスアンプ用接地電源配線L_snとの間で直列的に接続され、ゲートも共通に接続されている。これにより、P型MOSFETP2とN型MOSFETN3によって、第2インバータ回路IV2が構成されている。
【0043】
第1インバータ回路IV1の入力は、第2インバータ回路IV2の出力ノードn2に接続され、第2インバータ回路IV2の入力は、第1インバータ回路IV1の出力ノードn1に接続されている。すなわち、第1インバータ回路IV1と第2インバータ回路IV2が交差接続されている。対応するビット線BL_0は、第1インバータ回路IV1の出力ノードn1に接続され、第2インバータ回路IV2の出力ノードから、読み出しデータData_0が出力される。交差接続されているため、出力ノードn1およびn2は、入出力ノードと見なすことができる。
【0044】
センスアンプ駆動制御回路SACは、スイッチ用のP型MOSFETP3(第1スイッチ)およびスイッチ用のN型MOSFETN4、N5(第2スイッチ)を備え、メモリマットMAT内に配置された第4電源配線Li_ss、第5電源配線(第1電源配線)Li_dd、第6電源配線Li_od、センスアンプ用電源配線L_spおよびセンスアンプ用接地電源配線L_snに接続されている。N型MOSFETN5は、例えば、N型MOSFETN2よりも駆動能力が高くなるように、N型MOSFETN2に比べてサイズが大きくなっている。なお、本明細書では、サイズの大きなMOSFETは、ゲートが太い線で明示されている。
【0045】
図3に示すように、P型MOSFETP3は、ソース・ドレイン経路が、第5電源配線Li_ddとセンスアンプ用電源配線L_spとの間に接続され、N型MOSFETN5は、ソース・ドレイン経路が、第6電源配線Li_odとセンスアンプ用電源配線L_spとの間に接続されている。また、N型MOSFETN4は、ソース・ドレイン経路が、第4電源配線Li_ssとセンスアンプ用接地電源配線L_snとの間に接続されている。
【0046】
P型MOSFETP3およびN型MOSFETN4、N5のゲートには、制御回路CNTから出力されるセンスアンプ制御信号SAd1およびSAs、SAd2が供給される。すなわち、制御回路CNTからのセンスアンプ制御信号によって、スイッチ用のP型MOSFETP3およびN型MOSFETN4、N5のオン/オフが制御される。スイッチ用のMOSFETが、センスアンプ制御信号によってオン状態となることにより、センスアンプ用接地電源配線L_snには、接地電圧Vssが供給され、センスアンプ用電源配線L_spには、第1電源電圧Vddまたは第2電源電圧Vodが供給される。これにより、交差接続された第1インバータ回路IV1と第2インバータ回路IV2が動作し、ビット線BLにおける電位を増幅する正帰還動作が行われることになる。
【0047】
制御回路CNTは、
図1に示したショートスイッチSHTを構成するN型MOSFETN1を制御するショート制御信号Shおよび動作制御信号Vcntを出力する。なお、
図3では、制御回路CNTが、メモリマットMATに設けられているように描かれているが、これに限定されるものではない。例えば、制御回路CNTは、メモリマットMAT外に設けてもよい。
【0048】
<半導体装置の動作>
次に、メモリチップ110の動作を、図面を用いて説明する。
図4は、実施の形態1に係るメモリチップの動作を説明するための図である。ここで、
図4(A)は、センスアンプ駆動制御回路SAC(
図3)に係わる部分の回路図を示し、
図4(B)は、メモリセルMCの読み出し動作の波形図を示している。
【0049】
メモリマットMATは、
図2および
図3で示したように、複数のサブマットSub_MAT、複数のセンスアンプ群SA等を備えているが、
図4では、説明を容易にするために、1つのセンスアンプUSAと、センスアンプ用電源配線L_spと、電源配線L_od、L_dd、Li_odおよびLi_ddと、1つのショートスイッチSHTのみが示されている。前記したように、第5電源配線Li_ddおよび第6電源配線Li_odは、メモリマットMAT内に配置された電源配線であり、第2電源配線L_ddおよび第3電源配線L_odは、メモリマットMATの外側に配置された電源配線である。センスアンプ群SAは、メモリマットMAT内に配置されているため、センスアンプ用電源配線L_spも、勿論、メモリマットMAT内に配置された電源配線である。
【0050】
図4(A)に示すように、メモリマットMAT内に配置された第6電源配線Li_odおよび第5電源配線Li_ddは、メモリマットMAT外に配置された、対応する第3電源配線L_odおよび第2電源配線L_ddに電気的に接続されている。
【0051】
実施の形態1においては、プロセスバラツキによって、素子(MOSFET等)の速度が低速(Slow)になる場合(以下、低速状態とも称する)と、それ以下(TpyおよびFast)の場合(以下、通常状態とも称する)とで、シュートスイッチSHTの状態および降圧電源回路112(
図1)の動作が変更される。すなわち、センスアンプUSAの動作マージンの大小に応じて、シュートスイッチSHTの状態および降圧電源回路112の動作が、選択的に変更される。例えば、センスアンプUSAの動作が不安定となるときの動作マージンを基準とし、この基準よりも動作マージンが小さいときが低速状態に該当し、基準よりも動作マージンが大きいときが通常状態に該当する。
【0052】
低速状態、すなわち動作マージンが小さい場合、制御回路CNT(
図3)は、動作制御信号Vcntによって、降圧電源回路112に対して降圧動作を実行するように指示する。また、このとき、制御回路CNTは、ショート制御信号Shによって、ショートスイッチSHTをオフ状態にする。これに対して、通常状態、すなわち動作マージンが大きい場合(動作マージンが小さくない場合)、制御回路CNTは、動作制御信号Vcntによって、降圧電源回路112に対して降圧動作を停止するように指示する。また、このとき、制御回路CNTは、ショート制御信号Shによって、ショートスイッチSHTをオン状態にする。
【0053】
次に、通常状態のときと、低速状態のときの読み出し動作を説明する。
【0054】
<<読み出しの共通動作>>
ここでは、
図3に示したワード線WL_0とビット線BL_0との交差部に接続されたメモリセルMCからデータを読み出す場合を、代表例として説明する。
【0055】
読み出しに際して、ビット線BL_0は、接地電圧Vssと第1電源電圧Vddとの間の中間電位(1/2Vdd)にプリチャージされている。ビット線BL_0がプリチャージされた後、ワード線WL_0がハイレベルに変化し、ワード線WL_0が選択される。これにより、ワード線WL_0とビット線BL_0とに接続されたメモリセルMC(交差部のメモリセルMC)における選択用MOSFETNmがオン状態となり、ビット線BL_0の電位が、記憶用容量Cmに蓄積されている電荷に従って、1/2Vddから変化する。すなわち、
図4(B)に示すように、時刻t1よりも前において、ビット線BL_0の電位は、1/2Vddから変化する。
【0056】
<<低速状態>>
制御回路CNTは、低速状態では、ショートスイッチSHTをオフ状態にし、降圧電源回路112に対して降圧動作を実行させる。降圧動作が実行されるため、降圧電源回路112は、第1電源電圧Vddよりも電圧値の高い第2電源電圧Vodを、第3電源配線L_odへ出力する。これにより、オーバードライブが行われることになる。
【0057】
また、制御回路CNTは、
図4(B)に示すように、時刻t1から時刻t2の初期期間TP1において、センスアンプ制御信号SAd1をハイレベルにし、時刻t2から時刻t3の期間TP2において、センスアンプ制御信号SAd2をロウレベルにする。なお、
図4(B)では示していないが、制御回路CNTは、初期期間TP1と期間TP2との合成期間(期間TP3)の間、センスアンプ制御信号SAsをハイレベルにする。
【0058】
これにより、初期期間TP1においては、
図3に示したN型MOSFETN4およびN5がオン状態で、同じく
図3に示したP型MOSFETP3がオフ状態となる。また、期間TP2においては、N型MOSFETN4とP型MOSFETP3がオン状態で、N型MOSFETN5がオフ状態となる。
【0059】
その結果、初期期間TP1においては、センスアンプUSAは、センスアンプ用電源配線L_spおよびN型MOSFETN5を介して第6電源配線Li_odおよび第3電源配線L_odに接続されることになる。これに対して、期間TP2においては、センスアンプUSAは、センスアンプ用電源配線L_spおよびP型MOSFETN3を介して、第5電源配線Li_ddおよび第2電源配線L_ddに接続されることになる。これにより、ビット線BL_0における電位が、センスアンプUSAによって増幅され、データData_0として出力される。なお、
図4(B)には示されていないが、期間T3(T1+T2)の間、センスアンプUSAは、センスアンプ用接地電源配線L_snおよびN型MOSFETN4を介して第4電源配線Li_ssおよびメモリマット外の接地電源配線に接続され、センスアンプUSAには、接地電圧Vssが供給されている。
【0060】
初期期間TP1においては、サイズの大きなN型MOSFETN5を介してセンスアンプUSAに大きな駆動電流Id(
図4(A))が供給され、初期期間TP1に続く期間TP2においては、サイズの小さなP型MOSFETP3を介して比較的小さな駆動電流が供給されることにより、オーバードライブが実現されている。
【0061】
<<<通常状態>>>
通常状態では、制御回路CNTは、ショートスイッチSHTをオン状態にし、降圧電源回路112が停止させる。降圧電源回路112が停止するため、オーバードライブは行われない。特に制限されないが、制御回路CNTは、N型MOSFETN5およびP型MOSFETP3をオン状態にしている期間(初期期間TP1と期間TP2)、ショート制御信号ShによってショートスイッチSHTをオン状態にする。
【0062】
ショートスイッチSHTがオン状態であるため、メモリマットMATの外側において、第3電源配線L_odと第2電源配線L_ddとが接続される。すなわち、それぞれの寄生容量CoとCdが合成されることになる。初期期間TP1においては、サイズの大きなN型MOSFETN5を介して、第3電源配線L_odおよび第2電源配線L_ddから、センスアンプUSAに駆動電流Id(
図4(A))が供給される。このとき、電源配線に付加される寄生容量は、寄生容量CoとCdの合成容量となるため、大きな駆動電流Idが流れても、センスアンプUSAに供給される第1電源電圧Vddが変動するのを抑制し、センスアンプUSAが安定して動作させることが可能となる。
【0063】
初期期間TP1に続く期間TP2においては、P型MOSFETP3がオン状態となり、このP型MOSFETP3を介して、センスアンプUSAに駆動電流が供給されることになり、ビット線の電位がセンスアンプUSAにより増幅され、データData_0として出力される。期間TP2においても、ショートスイッチSHTがオン状態であるため、この期間TP2において、P型MOSFETP3を介して大きな駆動電流Idが流れても、センスアンプUSAの動作が不安定になるのを防ぐことが可能である。
【0064】
通常状態では、降圧電源回路112が停止しているため、消費電力の低減を図ることが可能である。なお、降圧電源回路112が停止し、ショートスイッチSHTがオン状態であるため、
図4(B)に示すように、第2電源電圧Vodは、第1電源電圧Vddと実質的に等しくなる。
【0065】
ショートスイッチSHTを、初期期間TP1と期間TP2の間、オン状態にする例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、期間TP2においては、ショートスイッチSHTをオフ状態にするようにしてもよい。この場合でも、初期期間TP1における大きな駆動電流Idによって、センスアンプUSAの動作が不安定になるのを防ぐことが可能である。
【0066】
ショートスイッチSHTは、メモリマットMATの外側ではなく、メモリマットMAT内に配置することも考えられるが、メモリマットMATの外側に配置することが適切である。
図11は、実施の形態1に係るショートスイッチの配置を説明するための回路図である。
図11は、
図4(A)と類似している。相違点は、
図11では、メモリマットMAT内に、ショートスイッチSHTが配置されていることである。
図11の配置では、メモリマットMAT内で、第6電源配線Li_odと第5電源配線Li_ddとが接続されることになる。そのため、通常状態のときに、第3電源配線L_odの寄生容量Coは、第1電源電圧Vddの変動を抑制するように作用しなくなる。そのため、通常状態の際に、センスアンプUSAの動作を安定化させるのに適していない。また、第5電源配線Li_ddの線幅等が、第2電源配線L_ddに比べて狭く、第5電源配線Li_ddの単位抵抗が、第2電源配線L_ddに比べて高い場合、駆動電流Idが第5電源配線Li_ddの抵抗で消費される分が大きくなり、消費電力の増加に繋がる。
【0067】
プロセスバラツキによって、素子の速度が低速になるか否かは、例えば積層メモリ100あるいはメモリチップ110の特性を測定した際に求める。測定結果に従って、例えば
図10(B)に示した制御領域FCT内のヒューズを溶断する。すなわち、ヒューズの状態によって、低速状態か通常状態かが表される。
図3に示した制御回路CNTは、このヒューズの状態を基にして、センスアンプ制御信号SAd1、SAd2、ショート制御信号Shおよび動作制御信号Vcnt等を生成する。制御回路CNTを配置する場所は、特に制限されないが、例えばヒューズと同じ制御領域FCT等に配置される。
【0068】
(実施の形態2)
図5は、実施の形態2に係るショートスイッチを説明するための図である。ここで、
図5(A)は、
図1と同様に、ショートスイッチSHTをN型MOSFETで構成した場合を示し、
図5(B)は、ショートスイッチSHTをP型MOSFETで構成した場合を示している。
【0069】
N型MOSFETN1の一方の電極(ソース電極)は、第2電源配線L_ddに接続され、他方の電極(ドレイン電極)は、第3電源配線L_odに接続されている。また、バックゲート電極には、接地電圧Vssが供給されている。ショートスイッチSHTをオン状態(On)にする際には、ワード線を選択する際にワード線WLに供給されるハイレベルの電圧(WL電圧)が、ショート制御信号Shとして供給される。
【0070】
第1電源電圧Vddは、例えば約1.0(V)であり、第2電源電圧Vodは、例えば約1.2(V)である。メモリセルMCを選択する際には、選択用MOSFETNmのしきい値電圧による電圧ドロップを低減するために、比較的高い電圧値、例えば約3.0(V)のWL電圧が、ワード線選択信号WL_sとして供給される。
図5(A)に示した構成では、N型MOSFETN1をオン状態にする際に、ゲートに比較的高い電圧値が供給されるため、N型MOSFETN1のしきい値電圧による電圧ドロップを低減して、第2電源配線L_ddと第3電源配線L_od間の電位差を低減することが可能である。
【0071】
ショートスイッチSHTをオフ状態(Off)にする際には、N型MOSFETN1のゲートに、接地電圧Vssのショート制御信号Shが供給される。
【0072】
図5(B)では、ショートスイッチSHTは、P型MOSFETPswによって構成されている。P型MOSFETPswのバックゲート電極には、前記したWL電圧が供給される。ショートスイッチSHTをオン状態にする際には、第1電源電圧Vddよりも低い電圧値、例えば接地電圧Vssが、ショート制御信号Shとして、P型MOSFETPswのゲートに供給される。これに対して、ショートスイッチPswをオフ状態にする際には、第2電源電圧Vodがショート制御信号Shとして、P型MOSFETPswのゲートに供給される。
【0073】
実施の形態2においても、各ショートスイッチを1個のMOSFETで構成することが可能であり、専有面積の増加を抑制することが可能である。また、選択されるワード線に供給されるWL電圧を流用することが可能であるため、ショートスイッチ用の専用電源が不要である。
【0074】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3に係るセンスアンプの動作を説明するための図である。ここで、
図6(A)は、メモリマットMATの構成を示している。
図6(A)は、例えば
図4(A)に類似している。主な相違点は、
図4では省略されていたセンスアンプ用接地電源配線L_snおよびセンスアンプUSAに接地電圧Vssを供給するN型MOSFETN4が、
図6(A)では明示されていることである。
【0075】
実施の形態3では、センスアンプ用電源配線L_spと第6電源配線Li_odとの間に接続されているN型MOSFETN5と、センスアンプ用電源配線L_spと第5電源配線Li_ddとの間に接続されているP型MOSFETP3とが、時間的に、少なくとも一部で重なって(オーバーラップして)オン状態となるように制御される。これにより、センスアンプUSAによりビット線の電位を増幅する際に、センスアンプUSAに供給可能な駆動電流を大きくすることが可能であり、センスアンプUSAの動作マージンをさらに大きくすることが可能である。
【0076】
具体的に述べると、
図6(B)においては、制御回路CNTは、センスアンプ制御信号SAd2のハイレベルの期間(TP1)がセンスアンプ制御信号SAd1のロウレベルの期間(TP2)と一部において重なるようなセンスアンプ制御信号SAD1、SAd2を出力する。これにより、初期期間TP1が、オーバーラップ期間Tovとなり、この期間での電流駆動能力を高くすることが可能である。
【0077】
また、
図6(C)では、制御回路CNTは、センスアンプ制御信号SAd2のハイレベルの期間(TP1)がセンスアンプ制御信号SAd1のロウレベルの期間(TP2)と一致するようなセンスアンプ制御信号SAD1、SAd2を出力する。これにより、オーバーラップ期間Tovにおいて、電流駆動能力を高くすることが可能である。
【0078】
(実施の形態4)
実施の形態4においては、オーバードライブを行うか否かを制御する領域が細分化される。オーバードライブによって、センスアンプUSAの動作マージンを大きくすることが可能であるが、消費電力の増加に繋がる。そのため、オーバードライブを行う領域を少なくする程、消費電力の増加を抑制することが可能である。
【0079】
図7は、実施の形態4に係る半導体装置を説明するための図である。ここで、
図7(A)は、積層メモリ100の構成を示し、
図7(B)は、メモリチップ110の構成を示し、
図7(C)は、メモリバンクBKの構成を示している。
【0080】
図7(A)は、
図10(A)と類似している。相違点は、メモリチップ単位で、オーバードライブを行うか否かが定められることである。すなわち、
図3に示した制御回路CNTが、メモリチップ単位で、制御する。
図7(A)では、メモリチップ110_4に対して、制御回路CNTが、オーバードライブを行うように制御を行い、残りのメモリチップに対しては、オーバードライブを行わないように、通常状態の制御を行う。
図7(A)は、メモリチップを製造する際のプロセスバラツキにより生じた動作マージンの低下したメモリチップに対してのみ、オーバードライブを行うことが可能であり、メモリチップ単位で消費電力の増加を抑制することが可能である。
【0081】
図7(B)は、
図10(B)と類似している。相違点は、メモリバンク単位で、オーバードライブを行うか否かが定められることである。すなわち、
図3に示した制御回路CNTが、メモリバンク単位で、制御する。
図7(B)では、メモリチップ110_4に含まれている64個のメモリバンクの内、2個のメモリバンクに対して、制御回路CNTが、オーバードライブを行うように制御を行い、残りのメモリバンクに対しては、オーバードライブを行わないように、通常状態の制御を行う。
図7(B)は、例えば、メモリチップ110_4内における電源電圧のバラツキにより生じた動作マージンの低下したメモリバンクに対してのみ、オーバードライブを行うことが可能であり、メモリバンク単位で消費電力の増加を抑制することが可能である。
【0082】
図7(C)は、メモリバンクBK12の構成を模式的に示す平面図である。同図において、PHは、周辺回路を示している。
図7(C)においては、メモリバンクBK12は、8個のメモリマットMATを備えている。制御回路CNTは、メモリマット単位で、制御する。
図7(C)では、8個のメモリマットMATの内、1個のメモリマットに対して、制御回路CNTが、オーバードライブを行うように制御を行い、残りのメモリマットに対しては、オーバードライブを行わないように、通常状態の制御を行う。
図7(C)は、例えば、素子のバラツキにより生じた動作マージンの低下したメモリマットに対してのみ、オーバードライブを行うことが可能であり、メモリマット単位で消費電力の増加を抑制することが可能である。
【0083】
実施の形態4に係る制御回路CNTは、特に制限されないが、制御の対象単位で設けられる。例えば、
図7(A)の場合には、メモリチップ100単位で、制御回路CNTが設けられ、
図7(B)の場合には、メモリバンクBK単位で設けられ、
図7(C)の場合には、メモリマットMAT単位で設けられている。勿論、これに限定されず、共通の制御回路CNTを設けるようにしてもよい。
【0084】
以上、代表的な実施の形態を、図面を用いて説明したが、他の実施の形態として次のようなものがある。
A. 温度、電圧ドロップ、動作状況(並列連続動作、動作周波数、高速/低速モード切り替え等)を検知して、制御回路CNT(
図3)が、オーバードライブの有無をダイナミックに切り替えるようにする。この場合、メモリチップのみならず、システム全体で消費電力が増加する場合(温度上昇等)に、消費電力を抑制することが可能である。
B. オーバードライブの有無だけでなく、他の制御も行われるようにする。
B1. 例えば、消費電力の更なる削減を図るようなパワー削減の制御モードを追加する。この場合、パワー削減の制御モードにおいては、OD用の制御信号(センスアンプ制御信号SAd2)によって、OD用のN型MOSFETN5(
図3)がオフ状態となるようにする。このパワー削減の制御モードは、例えばリフレッシュ動作のような低速動作の際に実行されるようにする。
B2. オーバードライブを行う場合に、オーバードライブ用の第2電源電圧Vodが、センスアンプUSAを動作させる初期期間(TP1:
図4(B))だけでなく、センスアンプUSAを活性化している期間(TP3)の間、常時印加するような制御モードを追加する。これにより、初期期間以外においてもセンスアンプUSAの動作マージンを大きくすることが可能となり、メモリセルへの書き込み電圧や読み出しマージンの改善を図ることが可能である。この場合には、冗長救済機能と併用することにより、更なる歩留まりの向上を図ることが可能となる。
B3. また、第1電源電圧Vddの変更で、動作モードを切り替えるようにしてもよい。第1電源電圧Vddを他の回路の電源電圧として共用する場合に、共用の第1電源電圧Vddの変更に対応することが可能となる。
C. 実施の形態1では、第2電源電圧Vodは、外部からの外部電源電圧を降圧回路で形成していたが、外部電源電圧を昇圧回路で昇圧し、第2電源電圧Vodとしてもよい。また、外部電源電圧を降圧または昇圧によって、第1電源電圧Vddと第2電源電圧Vodの両方を生成するようにしてもよい。さらに、第2電源電圧Vodは、外部電源電圧を用い、第1電源電圧Vddは、外部電源電圧を降圧して、生成するようにしてもよい。
D. 積層メモリとして見た場合、ベースチップ120(
図10)の電源電圧が異なる種々の製品に対して、共通のメモリチップとして用いるようにしてもよい。
【0085】
実施の形態によれば、センスアンプを低電圧で動作させ、かつ高速動作を維持しながら、消費電力の削減を図ることが可能である。すなわち、オーバードライブを行っていない場合でも、センスアンプを安定して動作させることが可能であり、プロセスバラツキ、デバイスバラツキが存在しても、歩留まりの低下を抑制することが可能である。
【0086】
また、実施の形態に係る半導体装置においては、低速状態のときにオーバードライブが行われる。低速状態では、MOSFETを流れるリーク電流等の電流が低下する。そのため、低速状態においてオーバードライブを行っても、半導体装置全体で見た場合には、消費電力の増加分は抑制することが可能である。
【0087】
さらに、制御回路CNTの変更およびショートスイッチの追加等により実現することが可能であるため、専有面積の増加を抑制することも可能である。
【0088】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、実施の形態では、ダイナミック型メモリを説明したが、これに限定されず、スタティック型メモリ等であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 半導体装置
100 積層メモリ
110_1~110_8 メモリチップ
112 降圧電源回路
BK、BK1~BK15 メモリバンク
Co、Cd 寄生容量
L_dd 第2電源配線
L_od 第3電源配線
MAT メモリマット
SHT ショートスイッチ