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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068969
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】排熱回収装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20220428BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20220428BHJP
【FI】
F01N5/02 B
F01N5/02 G
F01N13/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177832
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】内田 智幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 こずえ
(72)【発明者】
【氏名】小池 恭平
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004DA01
3G004DA14
3G004DA24
(57)【要約】
【課題】非回収モードにおける排気ガスと冷却水との熱交換を抑制しつつ、小型化が可能な排熱回収装置を提供すること。
【解決手段】連通孔21は、熱交換器14よりも上流側に位置している。第1の流路30は、連通孔21が位置していることにより排気ガスの流れを分岐させる分岐路31を有している。分岐路31の上流側には、分岐路31に向かって流路面積が小さくなる縮小路35が位置している。バルブ100により開閉される開口105の面積B2は、縮小路35のなかの最小の流路面積B1よりも大きい。バルブ100よりも後方において、第3の流路80のなかの任意の位置における流路面積B3は、バルブ100により開閉される開口105の面積B2と等しいか、又は、開口105の面積よりも大きい(B1<B2≦B3)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状を呈しており、内部が排気ガスの第1の流路である第1の筒と、
筒状を呈しており、前記第1の筒を囲うことにより、前記第1の筒と共に第2の流路を構成している第2の筒と、
排気ガスの流れ方向を基準として前記第2の筒の上流側の端部を塞いでいる閉塞部材と、
前記第1の筒に形成されており、前記第1の流路と前記第2の流路とを連通させている連通孔と、
前記連通孔から前記第2の流路に流れ込んだ前記排気ガスと、冷却水とで、熱交換を行う熱交換器と、
前記連通孔よりも下流側にて、第1の流路を開閉可能なバルブと、
筒状を呈しており、内部が前記第1の流路又は前記第2の流路を通過した排気ガスの第3の流路である第3の筒と、を有する排熱回収装置において、
前記連通孔は、前記熱交換器よりも上流側に位置しており、
前記第2の流路を流れる排気ガスは、前記閉塞部材側に向かうことなく、第3の流路に向かって流れ、
前記第1の流路は、前記連通孔が位置していることにより排気ガスの流れを分岐させる分岐路を有しており、
前記分岐路の直ぐ上流側には、前記分岐路に向かって流路面積が小さくなる縮小路が位置しており、
前記バルブにより開閉される開口の面積は、前記縮小路のなかの最小の流路面積よりも大きく、
前記バルブよりも後方において、前記第3の流路のなかの任意の位置における流路面積は、前記バルブにより開閉される前記開口の面積と等しいか、又は、前記開口の面積よりも大きいことを特徴とする、排熱回収装置。
【請求項2】
前記第1の筒は、単一の部材により構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の排熱回収装置。
【請求項3】
前記第1の筒のうち、前記連通孔が位置している部位の断面は、全体としてレーストラック形状を呈している、ことを特徴とする請求項2に記載の排熱回収装置。
【請求項4】
前記第1の筒は、各々が筒状を呈している、上流側の第1の半体と、下流側の第2の半体と、の2つの部材によって構成されており、
前記第1の半体の内部には、前記縮小路が構成されており、
前記第2の半体は、前記連通孔を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の排熱回収装置。
【請求項5】
前記縮小路は、前記第1の筒の内周面と、前記第1の筒の前記内周面の一部に対して接合されて前記排気ガスの流れをガイドするガイド板と、によって構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の排熱回収装置。
【請求項6】
前記閉塞部材の断面は、波状を呈している、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の排熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの熱により熱交換を行う排熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中にエンジンで発生する排気ガスの熱により冷却水を温める、排熱回収装置が知られている。排熱回収装置として、例えば、特許文献1に開示される技術がある。図10は、特許文献1の図1を再掲して符号を振り直したものである。
【0003】
排熱回収装置500は、内部が排気ガスの第1の流路501である内筒510と、内筒510を囲っている外筒520と、外筒520の外周に設けられた環状の熱交換器530と、熱交換器530の上流側に配置されている上流側閉塞部材540と、熱交換器530の下流側に配置されている下流側閉塞部材550と、下流側閉塞部材550の下流端を開閉可能なバルブ560と、第1の流路501を通過した排気ガス又は熱交換器530を介して熱交換した排気ガスを外部に排出する排出筒570と、を有している。
【0004】
外筒520の外周には、排気ガスの第2の流路502が構成されている。第2の流路502は、上流側閉塞部材540と、熱交換器530と、下流側閉塞部材550とに囲われた領域である。外筒520には、第1の流路501と、第2の流路502とを連通させる複数の連通孔520aが形成されている。
【0005】
排熱回収装置500は、排気ガスの熱を回収する熱回収モードと、排気ガスの熱を回収しない非回収モードとに切替可能である。熱回収モードと、非回収モードとの切り替えは、バルブ560の開閉により行う。
【0006】
バルブ560が閉じている場合、排気ガスの導入口となる内筒510の上流側の端部から導入された排気ガスは、第1の流路501と、連通孔520aとを通過して、第2の流路502に流れ込む。第2の流路502に流れ込んだ排気ガスは、熱交換器530の内部を流れる冷却水と熱交換を行い、排出筒570の内部を通過し、外部に排出される(熱回収モード)。
【0007】
熱回収モードにおいて、冷却水が所定の温度に達すると、サーモアクチュエータ(不図示)が駆動してバルブ560が開く。排気ガスは、第1の流路501と、排出筒570の内部とを通過し、外部に排出される(非回収モード)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4810511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
連通孔520aは常に開口している。そのため、バルブ560が開いている場合(非回収モード)であっても、第1の流路501を流れる排気ガスの一部は、連通孔520aを介して第2の流路502に流れ込む。
【0010】
上記の通り、第2の流路502に流れ込んだ排気ガスは、熱交換器530を介して、冷却水を加熱する。即ち、熱交換を目的としていない非回収モードであっても、第2の流路502に排気ガスが流れ込むことにより、熱交換が不可避的に発生し、冷却水が加熱されてしまう。
【0011】
先行技術の排熱回収装置500では、この非回収モードにおける熱交換を抑制する構成を有している。詳細には、外筒520の外周面と、熱交換器530の内周面との間には、スペースSが確保されている。このスペースSは、第2の流路502の一部であり、連通孔520aから進入した排気ガスが上流側閉塞部材540に向かう流路を構成している。
【0012】
排気ガスは、上流側閉塞部材540にて折り返して、熱交換器530の内部を通過して、排出筒570の内部に流れ込む。このような折り返しを含む第2の流路502は、圧力損失が大きく、排気ガスが流れにくい。熱交換を抑制できる。
【0013】
一方で、折り返しを含む流路とするためには、スペースSを確保する必要があるため、排熱回収装置500が径方向に大型化してしまう。
【0014】
本発明は、非回収モードにおける排気ガスと冷却水との熱交換を抑制しつつ、小型化が可能な排熱回収装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1による発明によれば、筒状を呈しており、内部が排気ガスの第1の流路である第1の筒と、
筒状を呈しており、前記第1の筒を囲うことにより、前記第1の筒と共に第2の流路を構成している第2の筒と、
排気ガスの流れ方向を基準として前記第2の筒の上流側の端部を塞いでいる閉塞部材と、
前記第1の筒に形成されており、前記第1の流路と前記第2の流路とを連通させている連通孔と、
前記連通孔から前記第2の流路に流れ込んだ前記排気ガスと、冷却水とで、熱交換を行う熱交換器と、
前記連通孔よりも下流側にて、第1の流路を開閉可能なバルブと、
筒状を呈しており、内部が前記第1の流路又は前記第2の流路を通過した排気ガスの第3の流路である第3の筒と、を有する排熱回収装置において、
前記連通孔は、前記熱交換器よりも上流側に位置しており、
前記第2の流路を流れる排気ガスは、前記閉塞部材側に向かうことなく、第3の流路に向かって流れ、
前記第1の流路は、前記連通孔が位置していることにより排気ガスの流れを分岐させる分岐路を有しており、
前記分岐路の直ぐ上流側には、前記分岐路に向かって流路面積が小さくなる縮小路が位置しており、
前記バルブにより開閉される開口の面積は、前記縮小路のなかの最小の流路面積よりも大きく、
前記バルブよりも後方において、前記第3の流路のなかの任意の位置における流路面積は、前記バルブにより開閉される前記開口の面積と等しいか、又は、前記開口の面積よりも大きいことを特徴とする、排熱回収装置が提供される。
【0016】
請求項2に記載のごとく、前記第1の筒は、単一の部材により構成されている。
【0017】
請求項3に記載のごとく、前記第1の筒のうち、前記連通孔が位置している部位の断面は、全体としてレーストラック形状を呈している。
【0018】
請求項4に記載のごとく、前記第1の筒は、各々が筒状を呈している、上流側の第1の半体と、下流側の第2の半体と、の2つの部材によって構成されており、前記第1の半体の内部には、前記縮小路が構成されており、前記第2の半体は、前記連通孔を有している。
【0019】
請求項5に記載のごとく、前記縮小路は、前記第1の筒の内周面と、前記第1の筒の前記内周面の一部に対して接合されて前記排気ガスの流れをガイドするガイド板と、によって構成されている。
【0020】
請求項6に記載のごとく、前記閉塞部材の断面は、波状を呈している。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の排熱回収装置は、第1の流路と第1の流路の外周に設けられた第2の流路とを連通させている連通孔を有している。第1の流路は、連通孔が位置していることにより排気ガスの流れを分岐させる分岐路を有している。分岐路の直ぐ上流側には、分岐路に向かって流路面積が小さくなる縮小路が位置している。
【0022】
さらに、バルブにより開閉される開口の面積は、縮小路のなかの最小の流路面積よりも大きい。バルブよりも後方において、第3の流路のなかの任意の位置における流路面積は、バルブにより開閉される開口の面積と等しいか、又は、開口の面積よりも大きい。
【0023】
上記の構成より、いわゆる非回収モードにおいて、排気ガスが連通孔を介して第2の流路に流れ込みにくく、かつ、第2の流路から第3の流路への排気ガスの流れも抑制できる。結果、第2の流路に設けられた熱交換器による排気ガスの熱回収を抑制できる。
【0024】
加えて、連通孔は、熱交換器よりも上流側に位置している。第2の流路を流れる排気ガスは、閉塞部材側に向かうことなく、第3の流路に向かって流れる。そのため、排熱回収装置を径方向に小型化することができる。
【0025】
以上より、非回収モードにおける排気ガスと冷却水との熱交換を抑制しつつ、小型化が可能な排熱回収装置を提供することができる。
【0026】
請求項2では、第1の筒は、単一の部材により構成されている。直管の一部を塑性変形(例えば、縮径加工又は拡径加工等)することにより、最小限の部品点数で第1の流路を構成することができる。
【0027】
請求項3では、第1の筒のうち、連通孔が位置している部位の断面は、全体としてレーストラック形状を呈している。そのため、直管を径方向に挟み込んで潰すような塑性加工を施せば第1の流路を構成することができる。
【0028】
請求項4では、第1の筒は、各々が筒状を呈している、上流側の第1の半体と、下流側の第2の半体と、の2つの部材によって構成されている。第1の半体の内部には、縮小路が構成されている。第2の半体は、連通孔を有している。そのため、第1の半体、第2の半体のいずれも複雑に加工せずに第1の筒を構成することができる。
【0029】
請求項5では、縮小路は、第1の筒の内周面と、第1の筒の内周面の一部に対して接合されて排気ガスの流れをガイドするガイド板と、によって構成されている。そのため、縮小路を構成するための塑性加工を施さずに、縮小路を構成することができる。
【0030】
請求項6では、閉塞部材の断面は、波状を呈している。そのため、排気ガスの熱により、第1の筒が拡径するように熱伸びした場合であっても、閉塞部材が第1の筒の熱伸びを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例1による排熱回収装置の斜視図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3】実施例1の排熱回収装置を構成する第1の筒と、第3の筒との斜視図である。
図4図1の4-4線断面図である。
図5図4の5-5線断面図である。
図6図6Aは、比較例による排熱回収装置の内部の圧力分布図である。図6Bは、実施例1による排熱回収装置の内部の圧力分布図(図1の6B-6B線断面図)である。
図7】実施例2による排熱回収装置の断面図である。
図8図8Aは、実施例3による排熱回収装置の斜視図である。図8Bは、図8Aの8B-8B線断面図である。図8Cは、図8Aの8C-8C線断面図である。
図9図9Aは、実施例4による排熱回収装置の斜視図である。図9Bは、図9Aの9B-9B線断面図である。
図10】従来技術による排熱回収装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施例を添付図に基づいて以下に説明する。
【0033】
<実施例1>
図1には、例えば、4輪車に搭載される排熱回収装置10が示されている。この排熱回収装置10は、エンジンで発生する排気ガスの熱により冷却水を加熱する。
【0034】
図中Usは上流、Dsは下流を示している。なお、”上流”、”下流”とは、第1の筒の中心線CLに沿って流れる排気ガスの流れ方向を基準とする。さらに、"上端部"とは、排気ガスの流れ方向の上流側の端部を指し、"下端部"とは、排気ガスの流れ方向の下流側の端部を指す。
【0035】
図1及び図2を参照する。排熱回収装置10は、筒状を呈している(例えば円筒状だが、断面が多角形状でもよい、以下同じ)第1の筒20を有している。第1の筒20の内部は、排気ガスの第1の流路30である。第1の筒20の上端部20aは、排気ガスの導入口である。
【0036】
第1の筒20は、筒状の第2の筒40に囲われている。第2の筒40の内周面と、第1の筒20の外周面との間の環状の領域は、排気ガスの第2の流路50を構成している。第1の筒20には、第1の流路30と第2の流路50とを連通させている2つの連通孔21,21が形成されている。連通孔21,21は、周方向に互いに180度ずれている。連通孔21の個数、大きさは適宜変更できる。
【0037】
第2の流路50には、第1の筒20の外周面に当接している筒状の熱交換体14が配置されている。熱交換体14の外周面は、第2の筒40の内周面に対して当接している。また、第1の筒20の外周面と熱交換体14の内周面の間にはシール部材(図示せず)が設けられていてもよい。
【0038】
第2の流路50の上流側は、環状の閉塞部材60により塞がれている。閉塞部材60の内周側の縁61は、第1の筒20の外周面に接合されている。閉塞部材60の外周側の縁62は、第2の筒40の上端部40aの外周面に接合されている。
【0039】
内周側の縁61と、外周側の縁62との間の部位(径方向に延びている部位)を本体部63とする。本体部63の断面は、波状である。詳細には、本体部63は、径方向内側に位置していると共に下流側に向かって膨らむように湾曲している第1の湾曲部64と、第1の湾曲部64の径方向外側に位置していると共に上流側に向かって膨らむように湾曲している第2の湾曲部65と、を有している。
【0040】
第2の筒40の下流側には、筒状を呈している第3の筒70が配置されている。第3の筒70の内部は、排気ガスの第3の流路80である(図4も参照)。第3の流路80は、第1の流路30又は第2の流路50を通過した排気ガスが流れる。
【0041】
第3の筒70の上端部70aは、第2の筒40の下端部40bの外周面に接合している。第3の筒70の下端部70bは、排気ガスの排出口となる。第3の筒70のうち、上端部70aと下端部70bとの間の部位を本体部71とする。
【0042】
第2の筒40は、筒状を呈している第4の筒90に囲われている。第4の筒90は、第2の筒40の外周の半分を囲っている第1の半体91と、残り半分を囲っている第2の半体92と、から構成されている。
【0043】
第1の半体91の上端部91aと、下端部91bとは、それぞれ、第2の筒40の外周面に接合されている。第2の半体92の上端部92aと、下端部92bとは、それぞれ、第2の筒40の外周面に接合されている。
【0044】
第2の筒40と、第4の筒90との間の環状の領域は、冷却水が流れる冷却流路93を構成している。第1の半体91には、冷却流路93に冷却水を導入可能な導入管15が接続されている。第2の半体92には、冷却流路93から冷却水を排出可能な排出管16が接続されている。
【0045】
図3及び図5を参照する。第3の筒70の本体部71の一部は、第1の筒20の下端部20bを保持している。中心線CLに沿って、第3の筒70の本体部71を見ると(図5参照)、本体部71は、第1の筒20の下端部20bの外周面の一部に当接している円弧状の一対の当接部72,72を有している。一対の当接部72,72は、第1の筒20の下端部20bに接合されている。本体部71のうち、一対の当接部72,72以外の部位は、第1の筒20の下端部20bの外周面から径方向外側に離れている。この部位を一対の離間部73,73とする。
【0046】
図2及び図5を参照する。第1の流路30は、バタフライ式のバルブにより開閉可能である。バルブは、棒状の回転軸101と、回転軸101に固定されている円板状の弁体102と、回転軸101の両端を支持している円柱状の支持部材103,103と、を有している。
【0047】
支持部材103,103は、第3の筒70の一対の当接部72,72に形成された支持孔72a,72a(図3参照)に差し込まれて支持されている。
【0048】
図4を参照する。第1の流路30を、排気ガスの流れを分岐させる分岐路31と、分岐路31の上流側に隣接している上流路32と、分岐路31の下流側に隣接している下流路33と、に区画する。
【0049】
分岐路31には連通孔21,21が位置している。分岐路31の流路面積A1は一定である。
【0050】
上流路32は、最も上流側に位置し流路面積A2が一定の第1の定常路34と、第1の定常路34の下流側に隣接していると共に下流側に向かって流路面積が小さくなる縮小路35と、を有している。縮小路35は、分岐路31の直ぐ上流側に位置している。
【0051】
下流路33は、分岐路31の下流側に隣接しており下流側に向かうに連れて流路面積が大きくなる第1の拡大路36と、第1の拡大路36の下流側に隣接しており流路面積A3が一定の第2の定常路37と、第2の定常路37の下流側に隣接しており下流側に向かうに連れて流路面積が大きくなる第2の拡大路38と、第2の拡大路38の下流側に隣接しており流路面積A4が一定の第3の定常路39と、を有している。
【0052】
図3及び図4を参照する。第1の筒20は、単一の部材により構成されている。詳細には、第1の筒20は、第1の定常路34を構成している第1の直管部23と、縮小路35を構成している縮小部24と、分岐路31を構成している分岐部25と、を有している。
【0053】
さらに、第1の筒20は、第1の拡大路36を構成している第1の拡大部26と、第2の定常路37を構成している第2の直管部27と、第2の拡大路38を構成している第2の拡大部28と、第3の定常路39を構成している第3の直管部29と、を有している。
【0054】
分岐部25は、第1の筒20のなかで縮径加工により縮径された部位である。第3の直管部29は、第1の筒20のなかで拡径加工により加工された部位である。縮小部24の外形はテーパ状となっているが、段差状であってもよい。なお、第1の流路30を構成できるような形状となるように加工する限り、縮径加工又は拡径加工する部位は、適宜選択して良い。
【0055】
第3の流路80を、バルブの開口よりも上流側の上流路81と、下流側の下流路82とに区画する。
【0056】
上流路81は、第2の拡大部28及び第3の直管部29と、離間部73とに囲われた2つの領域である。下流路82は、流路面積が一定の定常路83と、定常路83の下流側に隣接しており下流側に向かって流路面積が小さくなる縮小路84と、を有している。
【0057】
バルブ100により開閉される開口105(図5も参照)の面積B2は、縮小路35のなかの最小の流路面積B1よりも大きい(B2>B1)。なお、縮小路35のなかの最小の流路面積B1と、分岐路31の流路面積A1は等しい(B1=A1)。流路面積A3と、開口105の面積B2は略等しい(A3≒B2)。
【0058】
下流路82のなかの任意の位置(線Rの範囲内の位置)の流路面積を流路面積B3とする。流路面積B3は、開口105の面積B2よりも大きい(B3>B2)。なお、流路面積B3と、開口105の面積B2とを等しく設定してもよい(B3=B2)。
【0059】
実施例1では、流路面積B3は、下流側に向かって流路面積が小さく設定されている。最も下流側の流路面積B31は、開口105の面積B2よりも大きい。例えば、最も下流側の流路面積B31は、開口105の面積B2と等しく設定しても良い。
【0060】
排熱回収装置10の動作について説明する。
【0061】
図2を参照する。バルブ100が閉じている場合、排熱回収装置10の導入口(第1の筒20の上端部20a)から導入された排気ガスは、上流路32と、分岐路31と、連通孔21,21を通過して、第2の流路50に流れ込む。第2の流路50に流れ込んだ排気ガスは、熱回収体14の貫通孔14cに進入し、熱回収体14を加熱する。熱回収体14の熱は、第2の筒40を介して、冷却流路93を流れる冷却水に伝わり、冷却水が加熱される(熱回収モード)。
【0062】
熱回収体14と、第2の筒40と、第4の筒90とにより、本発明の熱交換器が構成されているといえる。熱交換器は他の周知の構成でもよい。熱回収体14を通過した排気ガスは、第3の流路80を通過して、排出口(第3の筒70の下端部70b)から排出される。冷却水が所定の温度に達すると、サーモアクチュエータ(不図示)が駆動してバルブ100が開く。
【0063】
図4を参照する。バルブ100が開いている場合、排気ガスは、第1の流路30を流れて、バルブ100の開口105を通過し、さらに第3の流路80を流れて、排出口から排出される(非回収モード)。
【0064】
実施例1の発明の効果を説明する。
【0065】
図6Aは、比較例の排熱回収装置600における圧力分布図である。圧力分布図は、低圧P1、中圧P2、高圧P3の3段階に分けられて描かれている。
【0066】
第1の筒601は直管である。第1の筒601の流路面積C1は一定である。バルブ602により開閉される開口の面積C2は、第1の筒601の流路面積C1より小さい(C2<C1)。第3の筒603の下端部(排出口)の流路面積C3は、第1の筒601の流路面積C1と等しい(C3=C1)。
【0067】
このような構成の排熱回収装置600では、第1の流路611の圧力は、高圧P3となった。第2の流路612の圧力は、中圧P2となった。そのため、矢印(1)に示されるように、排気ガスは、第1の流路611から連通孔を介して第2の流路612へ流れ込みやすい。
【0068】
さらに、第3の流路613の上流側の圧力は中圧P2となった。一方、第3の筒603の下端部(排出口)周辺は低圧P1となった。そのため、矢印(2)に示されるように、排気ガスは、第3の流路613の上流側から下端部(排出口)周辺へ流れやすい。したがって、バルブ602が開いている場合であっても、排気ガスは第2の流路612を通過しやすく、熱回収が行われてしまう。
【0069】
図4を参照する。実施例1において、第1の流路30は、連通孔21,21が位置しており排気ガスの流れを分岐させる分岐路31と、下流側に向かって流路面積が小さくなる縮小路35と、を有している。縮小路35は、分岐路31の直ぐ上流側に位置している。
【0070】
バルブ100により開閉される開口105の面積B2は、縮小路35のなかの最小の流路面積B1よりも大きい(B2>B1)。
【0071】
下流路82のなかの任意の位置(線Rの範囲内の位置)の流路面積を流路面積B3とする。流路面積B3は、開口105の面積B2よりも大きい(B3>B2)。
【0072】
図6Bを参照する。上記の構成の排熱回収装置10では、高圧P3となった箇所はない。第1の流路30のうち、上流路32の圧力は中圧P2となり、下流路33の圧力も中圧となった。分岐路31の圧力は低圧P1となった。第2の流路50の圧力は低圧P1となった。
【0073】
分岐路31と、第2の流路50では、圧力差がないため、矢印(3)に示されるような、分岐路31から第2の流路50への排気ガスの流れを抑制することができる。さらに、第2の流路50と、第3の流路80はいずれも低圧P1となった。圧力差がないため、矢印(4)に示されるような、第3の流路80の上流路32から排出口付近への流れも抑制できる。
【0074】
以上より、バルブ100が開いている非回収モードにおいて、熱交換を抑制できる。
【0075】
図2を参照する。加えて、連通孔21,21は、熱回収体14の上端面14aよりも上流側に位置している。第2の流路50は、閉塞部材60側から第3の流路80へ向かう流れのみである。第3の流路80から閉塞部材60側へ向かう流れがないため、排熱回収装置10を径方向に小型化することができる。
【0076】
加えて、閉塞部材60の本体部63の断面は、波状である。そのため、排気ガスの熱により、第1の筒20が拡径するように熱伸びした場合であっても、第1の筒の熱伸びを閉塞部材60が吸収することができる。
【0077】
上記の発明の効果は、以下に説明する実施例2~実施例4においても発揮される。実施例2~4では、第1の筒20の構成が実施例1と異なる。実施例1と共通する構成については、実施例1と同一の符号を付すると共に説明は省略する。
【0078】
<実施例2>
図7を参照する。実施例2の排熱回収装置200では、第1の筒201は、筒状を呈している、上流側の第1の半体210と、下流側の第2の半体220と、の2つの部材によって構成されている。なお、第1の筒201は、3つ以上の部材によって構成してもよい。第1の半体210の内部には、後述する第2の縮小路234(縮小路)が構成されている。第2の半体220は、連通孔21,21を有している。
【0079】
第1の流路を、第1の半体210の内部である上流側流路230と、第2の半体220の内部である下流側流路240と、に区画する。
【0080】
上流側流路230は、最も上流側に位置し流路面積が一定の第1の定常路231と、第1の定常路231の下流側に隣接して下流側に向かって流路面積が小さくなる第1の縮小路232と、第1の縮小路232の下流側に隣接しており流路面積が一定の第2の定常路233と、第2の定常路233の下流側に隣接して下流側に向かって流路面積が小さくなる第2の縮小路234(縮小路)と、第2の縮小路234の下流側に隣接しており流路面積が一定の第3の定常路235と、を有している。
【0081】
第1の半体210は、第1の定常路231を構成している第1の直管部211と、第1の縮小路232を構成している第1の縮小部212と、第2の定常路233を構成している第2の直管部213と、第2の縮径路234を構成している第2の縮小部214と、第3の定常路235を構成している第3の直管部215と、が一体となって構成されている。
【0082】
下流側流路240は、連通孔21,21が位置している分岐路241と、分岐路241の下流側に隣接しており流路面積が一定の第4の定常路242と、第4の定常路242の下流側に隣接しており下流側に向かうに連れて流路面積が大きくなる第1の拡大路243と、第1の拡大路243の下流側に隣接しており流路面積が一定の第5の定常路244と、を有している。
【0083】
詳細には、第2の半体220は、第2の直管部213の外周面に対して接合されている接合部221と、分岐路241を構成している分岐部222と、第4の定常路242を構成している第4の直管部223と、第1の拡大路243を構成している第1の拡大部224と、第5の定常路244を構成している第5の直管部225と、が一体となって構成されている。
【0084】
第3の直管部215の一部は、分岐路241に進入している。第3の直管部215の下端部215aは、連通孔21の上流側の縁21bよりも下流側に位置している。接合部221の外周面は、閉塞部材60と接合している。
【0085】
実施例2では、第1の筒201は、第2の縮小路234を構成している第1の半体210と、連通孔21,21を備えた第2の半体220と、の2つの部材によって構成されている。すなわち、第2の縮小路234と、連通孔21,21とをそれぞれ別体に設けているため、各々の半体210,220の形状が複雑とならない。
【0086】
<実施例3>
図8Aには、実施例3の排熱回収装置を構成する第1の筒310が示されている。他の構成は実施例1と同一である。第1の筒310は、単一の部材で構成されている。第1の筒310は、連通孔311,311が位置しており排気ガスの流れを分岐させる分岐部312を有している。
【0087】
第1の筒310の中心線CLに沿う方向から見て(図8B参照)、分岐部312の断面は、全体としてレーストラック形状を呈している。詳細には、分岐部312は、互いに平行に延びている一対の直線部314,314と、一対の円弧状の円弧部313,313と、が一体となり構成されている。連通孔311,311は、各々の円弧部313,313に形成されている。
【0088】
図8Cを参照する。第1の筒310の内部の第1の流路320の構成は、実施例1の第1の流路30(図4参照)の基本的な構成と同一である。即ち、第1の流路320は、第1の定常路321、縮小路322、分岐路323、第1の拡大路324、第2の定常路325、第2の拡大路326、第3の定常路327と、に区画できる。
【0089】
第1の筒310の分岐部312の断面は、レーストラック形状を呈している。そのため、円筒状の直管を径方向に挟み込んで潰すように塑性加工することにより、分岐部312を形成することができる。円筒状の直管の径を全周に亘り小さくする縮径加工と比較すると、簡素な加工で第1の流路320を構成することができる。
【0090】
<実施例4>
図9A図9Bを参照する。図9Aには、実施例4の排熱回収装置を構成する第1の筒410が示されている。他の構成は実施例1と同一である。第1の筒410は、単一の部材で構成されている第1の筒410の内部には、第1の流路420を流れる排気ガスをガイドするガイド板430が配置されている。
【0091】
ガイド板430は、第1の筒410の内周面410aに対して接合されている。ガイド板430は、内周面410aとの接合箇所を起点として、下流側に傾いている。
【0092】
図9Cを参照する。ガイド板430のガイド面431と、内周面410aとに囲われた領域が、縮小路422を構成している。第1の流路420を、上流側から、第1の定常路421と、縮小路422と、分岐路423と、第2の定常路424と、拡大路425と、第3の定常路426と、に区画する。第1の定常路421と、分岐路423と、第2の定常路424との流路面積は、互いに等しい。
【0093】
ガイド板430と、連通孔411とは、周方向に同じ位置にあるが、周方向に互いに異なる位置に配置してもよい。
【0094】
ガイド板430のガイド面431と、内周面410aとに囲われた領域が、縮小路422を構成している。第1の筒410のなかの、拡大路425よりも上流側の部位の外形は一定である。実施例1~実施例3と異なり、縮小路422を構成するための塑性加工を施さずに、縮小路422を構成することができる。
【0095】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例1~4に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0096】
10…排熱回収装置
14…熱回収体(熱交換器)
20…第1の筒
30…第1の流路
31…分岐路
35…縮小路
40…第2の筒
50…第2の流路
60…閉塞部材
70…第3の筒
100…バルブ
105…開口
B1…縮小路のなかの最小の流路面積
B2…バルブにより開閉される開口の面積
B3…バルブより後方で、第3の流路のなかの任意の位置における流路面積
200…排熱回収装置
201…第1の筒
210…第1の半体
220…第2の半体
310…第1の筒
311…連通孔
312…分岐部の断面(連通孔が位置している部位の断面)
320…第1の流路
410…第1の筒
410a…第1の筒の内周面
411…連通孔
430…ガイド板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10