(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068977
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】飛沫防止用マスク
(51)【国際特許分類】
A62B 18/02 20060101AFI20220428BHJP
A62B 18/08 20060101ALI20220428BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A62B18/02 C
A62B18/08 D
A62B18/08 C
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177848
(22)【出願日】2020-10-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年10月7日に第90回東京インターナショナル・ギフト・ショーにて展示 令和1年10月1日に東亜産業総合カタログ 2020 10月号にて開示
(71)【出願人】
【識別番号】514293008
【氏名又は名称】株式会社東亜産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA04
2E185CB09
2E185CC32
2E185CC36
(57)【要約】
【課題】ユーザが、他人からの飛沫を吸い込むことを防止できる飛沫防止用マスクを提供する。
【解決手段】飛沫防止用マスク(1,2,3,4)は、飛沫を遮蔽する遮蔽部材(20)と、ユーザの口と鼻を覆うようにユーザの顔に当てられ、遮蔽部材と併せて少なくとも口と鼻の前面に外部空間に対する隔離空間(S)を形成する当て部材(40)と、を備える。また、隔離空間と外部空間とが連通することで隔離空間内の空気の入れ替えが行われる。また、飛沫防止用マスクは、遮蔽部材からユーザの両頬の一方に沿って延びる第1支持部材(60)と、他方に沿って延びる第2支持部材(70)と、をさらに有し、隔離空間は、当て部材と遮蔽部材との間に形成される顔前空間(FS)と、第1支持部材の内部に形成される第1空間(S1)と、第2支持部材の内部に形成される第2空間(S2)と、を含んで構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛沫を遮蔽する遮蔽部材と、
ユーザの口と鼻を覆うように前記ユーザの顔に当てられ、前記遮蔽部材と併せて少なくとも前記口と鼻の前面に外部空間に対する隔離空間を形成する当て部材と、を備えたことを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項2】
請求項1に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記隔離空間は、前記外部空間と連通可能に形成され、
前記隔離空間と前記外部空間とが連通することで前記隔離空間内の空気の入れ替えが行われることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項3】
請求項2に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記遮蔽部材から前記ユーザの両頬の一方に沿って延びる第1支持部材と、他方に沿って延びる第2支持部材と、をさらに有し、
前記隔離空間は、
前記当て部材と前記遮蔽部材との間に形成される顔前空間と、
前記第1支持部材の内部に形成される第1空間と、
前記第2支持部材の内部に形成される第2空間と、を含んで構成されることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項4】
請求項3に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記第1支持部材には、吸気口が設けられ、
前記第2支持部材には、排気口が設けられ、
前記吸気口から吸引された空気は、前記第1空間、前記顔前空間、および前記第2空間を順に流れて前記排気口から排出されることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項5】
請求項4に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記吸気口および前記排気口のうち少なくとも前記吸気口には、フィルタが交換可能に設けられることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記第1支持部材または前記第2支持部材に電動モータで駆動するファンを設けたことを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項7】
請求項6に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記電動モータの動作を制御する制御部をさらに有し、
前記制御部は、前記電動モータの回転方向と回転速度の少なくとも一方を変更するよう制御することを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項8】
請求項7に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記第1支持部材には、前記ファンを駆動または停止させるスイッチが設けられていることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項9】
請求項8に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記スイッチの近傍には、前記ファンの駆動または停止を報知する報知部が設けられていることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記第1支持部材には、電池が設けられ、
前記電動モータは、前記電池により前記ファンを駆動することを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項11】
請求項10に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記電池は充電式であることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項12】
請求項3~11のいずれか1項に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に亘って紐状部材が設けられ、
前記紐状部材は、前記ユーザの後頭部に掛けられて前記当て部材の位置を固定可能とすることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項13】
請求項1に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記遮蔽部材には、吸排気口が設けられることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項14】
請求項13に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記吸排気口には、フィルタが交換可能に設けられることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記当て部材は、弾性材料により形成されていることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項16】
請求項15に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記当て部材は、前記ユーザの鼻に当てられる鼻当て部と、前記ユーザの顎に当てられる顎当て部と、を有することを特徴とする飛沫防止用マスク。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の飛沫防止用マスクにおいて、
前記遮蔽部材は、ユーザの入力操作に基づいて所定情報を表示可能に構成されていることを特徴とする飛沫防止用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛沫防止用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、新規なウイルス感染症の感染拡大が懸念されている。そこで、そのような感染拡大を抑制するために、感染症の原因となるウイルスを含んだ飛沫の拡散を阻止する飛沫防止用マスクが使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、「フレーム、遮蔽シートおよび二つのつる部で構成し、該遮蔽シートをフレームの上縁に組み立て、該二つのつる部はフレームの両端に組み立てる。アゴ当てシートおよびあて部をあごにあてがい、つる部の耳掛け部をユーザの耳に掛けて使用することにより、遮蔽シートはユーザの口の前を遮る。」という構成の飛沫噴出を防ぐマスクが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような飛沫噴出を防ぐマスクにおいては、ユーザの口および鼻と遮蔽シートとの間は、外気が自由に通過できる空間となっているため、ユーザは、他人からの飛沫を口または鼻から吸い込んでしまう虞がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ユーザが、他人からの飛沫を吸い込むことを防止できる飛沫防止用マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、飛沫を遮蔽する遮蔽部材と、ユーザの口と鼻を覆うように前記ユーザの顔に当てられ、前記遮蔽部材と併せて少なくとも前記口と鼻の前面に外部空間に対する隔離空間を形成する当て部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザが、他人からの飛沫を吸い込むことを防止できる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る飛沫防止用マスクの正面図。
【
図8】第1実施形態に係る飛沫防止用マスクの電気的構成を示すブロック図。
【
図9】第2実施形態に係る飛沫防止用マスクの右側面図。
【
図10】第2実施形態に係る飛沫防止用マスクの電気的構成を示すブロック図。
【
図11】第3実施形態に係る飛沫防止用マスクの正面図。
【
図13】第4実施形態に係る飛沫防止用マスクの正面図。
【
図14】第4実施形態に係る飛沫防止用マスクの電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、前後左右の方向は、飛沫防止用マスクを装着したユーザを基準として規定されるものとする。
【0011】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る飛沫防止用マスク1の正面図、
図2は飛沫防止用マスク1の背面図、
図3は飛沫防止用マスク1の右側面図、
図4は飛沫防止用マスク1の左側面図、
図5は飛沫防止用マスク1の上面図、
図6は飛沫防止用マスク1の下面図、
図7は飛沫防止用マスク1の斜視図である。これらの図に示すように、第1実施形態に係る飛沫防止用マスク1は、遮蔽部材20と、マスク本体30と、当て部材40と、を備える。マスク本体30は、ユーザの顔の周りを囲むように左右対称なU字状に形成される(
図5,6参照)。遮蔽部材20は、マスク本体30によってユーザの顔の前面で保持される。当て部材40は、マスク本体30によって遮蔽部材20と対向するように保持され、ユーザの顔と遮蔽部材20との間に配置される。
【0012】
遮蔽部材20は、例えば透明なプラスチック材料によって略球面状に形成される(
図3~5参照)。遮蔽部材20は、ユーザの口および鼻の前面に配置され、ユーザからの飛沫を遮蔽する。また、ユーザの周りにいる他人は、遮蔽部材20を通してユーザの口元を目視可能となっている。
【0013】
マスク本体30は、保持部材50、第1支持部材60、および第2支持部材70を有し、これらが一体となって形成される。
【0014】
保持部材50は、例えばプラスチック材料によって前後方向に所定の厚みを持った長尺枠状に形成される。保持部材50の前面には前面開口51が形成され(
図1,3,4,7参照)、背面には背面開口52が形成される(
図2,7参照)。保持部材50は、遮蔽部材20を前面開口51内全体で保持し、当て部材40を背面開口52の一部を露呈させた状態で保持する。なお、遮蔽部材20が保持部材50の前面開口51に取り付けられた状態において、遮蔽部材20と保持部材50との間に隙間は生じていない。
【0015】
第1支持部材60は、例えばプラスチック材料によって長尺状に形成され、ユーザの右頬に沿って円弧状に延びる。第1支持部材60は、第2支持部材70とともに、保持部材50をユーザの口および鼻の前面に支持する。第1支持部材60は中空となっており、その内部には第1空間S1が形成される。第1空間S1は、第1支持部材60の長手方向に沿って所定の範囲に亘り形成される。なお、詳細は後述するが、第1空間S1は、保持部材50側で遮蔽部材20と当て部材40との間に形成される顔前空間FSと連通する。
【0016】
また、第1支持部材60は、その表面から右側に突出する第1台座部61を有する。第1台座部61には、外部空間と第1空間S1とを連通する通気部としての吸気口62が形成される。吸気口62には、外気を通過可能な吸気口蓋63が設けられ、この吸気口蓋63の内側に外気をろ過するフィルタ64が交換可能に設けられる。フィルタ64は、感染症の原因となるウイルスやPM2.5等の汚染物質を除去できる素材により形成される。また、吸気口62には、フィルタ64よりも空気の流れの下流側(第1空間S1側)にファン65が設けられる(
図2,3,7参照)。
【0017】
第1台座部61の内部には、ファン65を駆動する電動モータ66および電動モータの電力供給源となる充電式の電池67が設けられる(
図2,3,7参照)。電動モータ66および電池67は、第1台座部61内の所定位置に収納され、取り出し可能となっている。また、第1台座部61には、ファン65を駆動または停止させる電源スイッチ68が設けられる。電源スイッチ68は、ユーザによる押下操作に基づいてONとOFFを切換可能になっている。また、電源スイッチ68の近傍には、ファン65の駆動または停止を報知する報知部69が設けられる。報知部69は、例えばLEDを含んで構成される。
【0018】
また、第1台座部61の内部には、図示せぬ電子回路基板が設けられる。電子回路基板には、電動モータ66の動作および報知部69の点灯態様を制御する制御部80(
図8参照)が設けられる。制御部80による制御の詳細については、後述する。
【0019】
第2支持部材70は、例えばプラスチック材料によって長尺状に形成され、ユーザの左頬に沿って円弧状に延びる。第2支持部材70は、第1支持部材60とともに、保持部材50をユーザの口および鼻の前面に支持する。第2支持部材70は中空となっており、その内部には第2空間S2が形成される。第2空間S2は、第2支持部材70の長手方向に沿って所定の範囲に亘り形成される。なお、詳細は後述するが、第2空間S2は、第1空間と同様に、顔前空間FSと連通する。
【0020】
また、第2支持部材70は、その表面から左側に突出する第2台座部71を有する。第2台座部71には、外部空間と第2空間S2とを連通する通気部としての排気口72が形成される。排気口72には、第2空間S2内の空気を通過可能とする排気口蓋73が交換可能に設けられる。なお、排気口72にも、吸気口62と同様に、フィルタが交換可能に設けられても良いし、電動モータで駆動するファンが設けられても良い。
【0021】
第1支持部材60の長手方向の端部には、アーチ状の第1中空部材74が設けられ、第2支持部材70の長手方向の端部には、アーチ状の第2中空部材75が設けられる。これら第1中空部材74および第2中空部材75の内部には、紐状部材76が挿通される。つまり、紐状部材76は、第1支持部材60と第2支持部材70との間に亘って設けられる(
図5,6参照)。紐状部材76は、ユーザが飛沫防止用マスク1を装着するときに、ユーザの後頭部に掛けられる。この際に、当て部材40は、紐状部材76によって適度な強度でユーザの顔に押し付けられる。そのため、紐状部材76は、当て部材40の位置を所望の位置で固定可能とする。
【0022】
当て部材40は、弾性材料から形成され、ユーザの口と鼻を覆うようにユーザの顔に当てられる。当て部材40は、口鼻覆い部材41、第1阻止部材42、および第2阻止部材43を有し、これらが一体となって形成される(
図2参照)。
【0023】
口鼻覆い部材41は、保持部材50の背面開口52の一部を露呈させ、その露呈させた背面開口52の一部から遮蔽部材20と当て部材40との間にユーザの口と鼻を収納可能とする。第1阻止部材42は、背面開口52の一部を除く第1支持部材60側を塞ぎ、外気の侵入を阻止する。第2阻止部材43は、背面開口52の一部を除く第2支持部材70側を塞ぎ、外気の侵入を阻止する。
【0024】
口鼻覆い部材41は、鼻当て部41a、第1頬当て部41b、第2頬当て部41c、および顎当て部41dを有し、略三角枠形状に形成される(
図2参照)。鼻当て部41aは、ユーザの鼻根に沿うように逆V字状に形成される。第1頬当て部41bは、鼻当て部41aの右下部分と連続し、ユーザの右頬に沿うように略逆くの字状に湾曲する。第2頬当て部41cは、鼻当て部41aの左下部分と連続し、ユーザの左頬に沿うように略くの字状に湾曲する。第1頬当て部41bと第2頬当て部41cとは、鼻当て部41aと反対側で連続している。
【0025】
顎当て部41dは、第1頬当て部41bの下端部周辺および第2頬当て部41cの下端部周辺に取り付けられ、ユーザの顎に沿うように丸みを帯びている。また、顎当て部41dは、ユーザの顔面の形状を考慮して、前後方向において鼻当て部41aよりも前面に配置される(
図6参照)。口鼻覆い部材41がユーザの顔に当てられると、これら鼻当て部41a、第1頬当て部41b、第2頬当て部41c、および顎当て部41dがユーザの顔面に密着して外気の侵入を阻止する。
【0026】
また、上記のように口鼻覆い部材41がユーザの顔面に密着した状態では、当て部材40は、遮蔽部材20およびマスク本体30と併せてユーザの口、鼻および両頬の前面に外部空間に対する隔離空間Sを形成する。隔離空間Sは、顔前空間FS、上記した第1支持部材60の第1空間S1、および上記した第2支持部材の第2空間S2を含んで構成される。
【0027】
顔前空間FSは、当て部材40およびユーザの顔面と、遮蔽部材20との間に形成される空間であり、保持部材50の内部においてその長手方向の右端部から左端部に亘って形成される。そして、顔前空間FSは、保持部材50の右端部側で第1支持部材60の第1空間S1と連通し、保持部材50の左端端部側で第2支持部材70の第2空間S2と連通する。これにより、顔前空間FS、第1空間S1、および第2空間S2が全体として1つの隔離空間Sを形成する。そして、この隔離空間Sは、第1支持部材60の吸気口62および第2支持部材70の排気口72を介して外部空間と連通しているだけであるため、外気はユーザの口および鼻と遮蔽部材20との間から隔離空間Sに概ね侵入できない。
【0028】
(制御部による制御)
次に、制御部80による電動モータ66の動作の制御および報知部69の点灯態様の制御について
図8を用いて説明する。
図8は飛沫防止用マスク1の電気的構成を示すブロック図である。
図8に示すように、電動モータ66、電源スイッチ68、および報知部69は、電子回路基板に設けられた制御部80と電気的に接続される。制御部80は、電動モータ66の停止中にユーザが電源スイッチ68を押下操作した(ONした)ことに基づいて、電動モータ66を駆動させ、報知部69を点灯させる。一方、制御部80は、電動モータ66の駆動中にユーザが電源スイッチ68を押下操作した(OFF)ことに基づいて、電動モータ66を停止させ、報知部69を消灯させる。
【0029】
(飛沫防止用マスク内における空気の流れ)
ユーザが電源スイッチ68をONすると、ファン65が回転し、吸気口62から第1空間S1に空気が取り込まれる。そして、第1空間S1に取り込まれた空気は、ファン65の回転によって顔前空間FSに流入し、ユーザの呼吸に使われる。その後、ユーザの吐く息と顔前空間FS内の空気は、ファン65の回転によって、第2空間S2に流され、排気口72から外部空間に排出される。
【0030】
ここで、空気が吸気口62から第1空間S1に取り込まれる際に、空気は吸気口62内のフィルタ64を通る。そのため、第1空間S1に取り込まれる空気は、フィルタ64によってろ過されて浄化される。また、ファン65の回転により、空気は、吸気口62→第1空間S1→顔前空間FS→第2空間S2→排気口72の順に流れ、飛沫防止用マスク1内の空気の入れ換えが行われる。
【0031】
このように構成された第1実施形態に係る飛沫防止用マスク1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0032】
ユーザが飛沫防止用マスク1を装着し、当て部材40をユーザの顔に当てることで、飛沫防止用マスク1の内部に外部空間に対する隔離空間Sを形成できるため、ユーザが他人からの飛沫を吸い込むことを防止できる。
【0033】
また、飛沫防止用マスク1は、隔離空間Sと外部空間との間で空気の入れ替えが行われるため、空気が隔離空間S内に滞留しない。よって、ユーザは快適に飛沫防止用マスク1を使用できる。
【0034】
また、遮蔽部材20およびこれを保持する保持部材50を、第1支持部材60および第2支持部材70によってユーザの顔の前面に支持できるので、ユーザからの飛沫を遮蔽部材20で確実に遮蔽できる。
【0035】
また、隔離空間Sは、当て部材40と遮蔽部材20との間の顔前空間FS、第1支持部材60の第1空間S1、および第2支持部材70の第2空間S2、を含んで構成され、比較的大きな体積を有するため、ユーザは快適に呼吸できる。
【0036】
さらに、第1支持部材60の吸気口62を通った空気は、第1空間S1、顔前空間FS、および第2空間S2を順に流れて第2支持部材70の排気口72から排出されるため、飛沫防止用マスク1の内部でユーザの吐く息が滞留しない。よって、ユーザの不快感を防止できる。
【0037】
また、吸気口62には、フィルタ64が交換可能に設けられるので、第1支持部材60の第1空間S1にろ過して浄化した新鮮な空気を供給でき、感染症対策を十分に行える。また、汚れたフィルタ64を交換できるので、常に新鮮な空気を隔離空間Sに供給可能となる。
【0038】
また、第1支持部材60の吸気口62には、電動モータ66で駆動するファン65が設けられるので、空気を吸気口62→第1空間S1→顔前空間FS→第2空間S2→排気口72の順に流して飛沫防止用マスク1内の空気の入れ換えを行える。また、これにより、隔離空間S内に空気が滞留しないため、隔離空間S内の湿り、および遮蔽部材20の曇りを防止できる。
【0039】
また、電動モータ66は電池67によりファン65を駆動するので、簡単な構成を採用でき、製造が容易である。さらに、電池67は充電式であるので、電池67の電力が消費されても、充電することで容易に対応できる。
【0040】
また、当て部材40は、弾性材料により形成されているため、ユーザの顔面に密着し易い。さらに、当て部材40は、鼻当て部41a、および顎当て部41dを有するので、ユーザの顔面にフィットし易い。
【0041】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る飛沫防止用マスクについて説明する。第2実施形態に係る飛沫防止用マスク2は、第1実施形態に係る飛沫防止用マスク1と基本的には同じ構成であるが、制御部80が電動モータ66の回転方向と回転速度を変更するよう制御する点が相違する。よって、以下の説明では、この相違点を中心に説明し、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0042】
図9は、第2実施形態に係る飛沫防止用マスク2の右側面図である。
図9に示すように、第1支持部材60の第1台座部61には、電動モータ66の回転方向を変更する回転方向変更スイッチ81および電動モータ66の回転速度を変更する回転速度変更スイッチ82a,82bが設けられる。
【0043】
図10は第2実施形態に係る飛沫防止用マスク2の電気的構成を示すブロック図である。
図10に示すように、回転方向変更スイッチ81および回転速度変更スイッチ82a,82bは、電子回路基板の制御部80と電気的に接続される。制御部80は、電動モータ66の駆動中にユーザが回転方向変更スイッチ81を押下操作したことに基づいて、電動モータ66の回転方向をそれまでとは逆方向に駆動させるよう制御する。また、制御部80は、電動モータ66の駆動中にユーザが回転速度変更スイッチ82aを押下操作したことに基づいて、電動モータ66の回転速度を上昇させるように制御する。さらに、制御部80は、電動モータ66の駆動中にユーザが回転速度変更スイッチ82bを押下操作したことに基づいて、電動モータ66の回転速度を低下させるように制御する。
【0044】
このように構成された第2実施形態に係る飛沫防止用マスク2によれば、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第2実施形態によれば、制御部80は、電動モータ66の回転方向を変更するよう制御できるので、隔離空間S内において空気の流れを変えることができ、ごみ等が溜まらないようにできる。また、制御部80は、電動モータ66の回転速度を変更するよう制御できるので、ユーザが例えば外気温度等を含む外部空間の状況に応じて電動モータ66の回転速度を変更することで、飛沫防止用マスク2を快適に使用できる。
【0045】
なお、第2実施形態では、制御部80が電動モータ66の回転方向と回転速度の双方を変更するよう制御する例を示したが、回転方向と回転速度の少なくも一方を変更するように制御しても良い。
【0046】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る飛沫防止用マスクについて説明する。第3実施形態に係る飛沫防止用マスク3は、吸気口62および排気口72の代わりに吸排気口90を有する点で第1および第2実施形態と相違する。
【0047】
図11は第3実施形態に係る飛沫防止用マスク3の正面図、
図12は飛沫防止用マスク3の右側面図である。
図11,12に示すように、遮蔽部材20は、吸気口の機能および排気口の機能を併せ持った吸排気口90を有する。吸排気口90は、外部空間と顔前空間FSとを連通する通気部として機能する。吸排気口90には、円筒部材91が挿通される。円筒部材91の前端には、空気を通過可能とする吸排気口蓋92が着脱可能に取り付けられる。吸排気口蓋92は、その中心に位置する軸部92aと、この軸部92aの周りを囲む壁部92bと、軸部92aから壁部92bに向かって放射状に延びる複数の線状部材92cと、を有する。各線状部材92cは、隣り合う線状部材92cと周方向に所定間隔離れて配置される。また、円筒部材91内において吸排気口蓋92の内側にフィルタ93が交換可能に設けられる。
【0048】
この飛沫防止用マスク3では、ユーザの呼吸に応じて、空気が顔前空間FSと外部空間との間で吸排気口90を介して出入りする。
【0049】
このように構成された第3実施形態に係る飛沫防止用マスク3によれば、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第3実施形態によれば、遮蔽部材20に吸排気口90が設けられ、それに伴って、ファン、電動モータ、および充電式の電池は不要としている。よって、飛沫防止用マスク3の構成を簡素化でき、製造コストを抑えることができる。
【0050】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る飛沫防止用マスクについて説明する。第4実施形態に係る飛沫防止用マスク4は、遮蔽部材20がユーザの入力操作に基づいて所定情報を表示可能に構成されている点で第1~第3実施形態と相違する。
【0051】
図13は第4実施形態に係る飛沫防止用マスク4の正面図である。
図13に示すように、遮蔽部材20は、例えば有機ELパネルから構成され、そのパネル画面上に所定情報を表示可能となっている。
図13に示す例では、遮蔽部材20には、所定情報として、「こんにちは。お元気ですか?」という文字Cが表示されている。
【0052】
第1支持部材60には、遮蔽部材20に所定情報を表示させる表示スイッチ94が設けられる。表示スイッチ94がユーザによって押下操作されると、所定情報が遮蔽部材20に表示可能となる。所定情報に関するデータは、電子回路基板に設けられたRAMに予め記憶されている。
【0053】
図14は第4実施形態に係る飛沫防止用マスク4の電気的構成を示すブロック図である。
図14に示すように、遮蔽部材20および表示スイッチ94は、電子回路基板の制御部80に電気的に接続される。制御部80は、電源スイッチ68がONされているときにユーザが表示スイッチ94を押下操作したことに基づいて、RAMに格納された所定情報に関するデータを読み込み、読み込んだデータを遮蔽部材20に表示するよう制御する。
【0054】
このように構成された第4実施形態に係る飛沫防止用マスク4によれば、上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第4実施形態によれば、ユーザは飛沫防止用マスク4を外すことなく、所定情報を周囲の人に伝達できる。よって、ユーザが飛沫防止用マスク4を外したことに起因して感染症の原因となるウイルスを吸い込むことを防止でき、感染症対策をさらに確実に行える。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0056】
例えば、保持部材50は、本発明の必須の構成要素ではない。遮蔽部材20が保持部材50の機能を備えていれば良い。即ち、当て部材40が、遮蔽部材20との間に顔前空間FSを形成するように、遮蔽部材20に取り付けられる構成にすれば、上記した各実施形態と同様の作用効果を奏し得る。加えて、飛沫防止用マスクの構成を簡素化でき、製造コストを抑えることもできる。
【0057】
また、遮蔽部材20は、有色のプラスチック材料によって形成されても良い。
【0058】
また、マスク本体30は、アルミ等の軽金属によって形成されても良い。
【0059】
さらに、当て部材40は、必ずしもユーザの顔面に密着する必要はない。つまり、当て部材40は、気密性を保たなくても良い。また、当て部材40は、洗浄や交換のために、保持部材50または遮蔽部材20から取り外し可能に構成されても良い。
【0060】
また、本発明において、吸気口62と排気口72を設けること、または吸排気口90を設けることは必ずしも必須ではない。飛沫防止用マスクの設計仕様に応じて適宜決定できる。例えば顔前空間FSがある程度大きな体積を有する場合や、ユーザの顔面と当て部材40との間に顔前空間FSと連通する隙間が形成される場合には、必ずしも吸気口62と排気口72または吸排気口90を設けなくても良い。
【符号の説明】
【0061】
1,2,3,4 飛沫防止用マスク
20 遮蔽部材
41a 鼻当て部
41d 顎当て部
50 保持部材
60 第1支持部材
62 吸気口
64,93 フィルタ
65 ファン
66 電動モータ
67 電池
68 電源スイッチ(スイッチ)
69 報知部
70 第2支持部材
72 排気口
76 紐状部材
80 制御部
90 吸排気口
S 隔離空間
FS 顔前空間
S1 第1空間
S2 第2空間
C 所定情報