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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022068989
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】ブッシュ圧入装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/02 20060101AFI20220428BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20220428BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B23P19/02 B
B23P19/00 304A
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177869
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】草野 壱俊
(72)【発明者】
【氏名】大道 文教
(72)【発明者】
【氏名】中畑 順一
【テーマコード(参考)】
3C030
3C707
【Fターム(参考)】
3C030BB11
3C030BC04
3C030BC08
3C030BC16
3C030BC19
3C030CC07
3C707AS05
3C707BS10
3C707DS01
3C707JS02
(57)【要約】
【課題】1機の設備で複数車種のブッシュの圧入を可能とすることにより、設備数を低減し、もって省スペース化と投資費用の削減を図るブッシュ圧入装置を提供する。
【解決手段】車種ごとのワークを把持する各車種に対応したマテハン治具と、ベース部の形状が共通化されたブッシュ治具と、前記ワークにブッシュを正寸よりも奥方向に圧入すると共に、圧入後にブッシュを引き戻すことにより適正状態に圧入するブッシュ圧入機と、着脱自在に構成した前記マテハン治具を装着して前記ワークを把持し、前記ブッシュ圧入機にセットするハンドリングロボットと、ブッシュが載置された前記ブッシュ治具を、前記ブッシュ圧入機に供給すると共に、ブッシュ圧入後、前記ブッシュ治具を回収する回転シフト機構と、から構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車種ごとのワークを把持する各車種に対応したマテハン治具と、
ベース部の形状が共通化されたブッシュ治具と、
前記ワークにブッシュを正寸よりも奥方向に圧入すると共に、圧入後にブッシュを引き戻すことにより適正状態に圧入するブッシュ圧入機と、
着脱自在に構成した前記マテハン治具を装着して前記ワークを把持し、前記ブッシュ圧入機にセットするハンドリングロボットと、
ブッシュが載置された前記ブッシュ治具を、前記ブッシュ圧入機に供給すると共に、ブッシュ圧入後、前記ブッシュ治具を回収する回転シフト機構と、から構成されたことを特徴とするブッシュ圧入装置。
【請求項2】
前記ブッシュ圧入機は、側面視略C字状に形成された支持フレームと、
その下方に立設された前記ブッシュを圧入するプレス機と、
ワークの上部を係止すると共に、前記回転シフト機構から供給された前記ブッシュが載置されたブッシュ治具を係止し、
当該ブッシュを正寸よりも奥に圧入し、圧入後ブッシュの所定の引き戻し及び前記係止を解除する引き戻し機構と、から構成されたことを特徴とする請求項1に記載のブッシュ圧入装置。
【請求項3】
前記引き戻し機構は、ブッシュの圧入前に前記第一ブッシュのブッシュ芯金の両端部及びブッシュ治具のベース部に穿設された連通孔と、プレス機のブッシュ支持台部の側面に穿設された係止ロッド挿通孔とを貫通して係止し、当該係止状態でプレス機の下降時に引き戻しを行い、引き戻し後に係止を解除する係止ロッドを備えたことを特徴とする請求項2に記載のブッシュ圧入装置。
【請求項4】
前記回転シフト機構は、ブッシュ治具把持部を回転させる回転機構と、回転機構の移動、前記ブッシュ圧入機に前記ブッシュが載置されたブッシュ治具の供給及び回収作動を可能とするスライド機構と、から構成されたことを特徴とする請求項1に記載のブッシュ圧入装置。
【請求項5】
前記ブッシュは、両端部を幅広に形成して連結孔が穿設され、中央部を狭幅に形成したブッシュ芯金と、当該ブッシュ芯金の前記中央部を略円柱状に囲繞する弾性部と、から構成されたことを特徴とするアーム圧入用ブッシュ。
【請求項6】
略円盤状に形成された鍔部と、鍔部に垂設した略逆台形状のベース部と、前記鍔部の上部に形成された略円柱状のセット部と、から構成され、前記セット部、鍔部及びベース部に、前記車種に対応するブッシュごとに、それぞれの外形に対応した嵌入可能なブッシュ嵌入孔を穿設し、前記ベース部には、前記ブッシュ芯金の両端部に穿設された連結孔と連通可能に穿設された連通孔を設けたことを特徴とするブッシュ治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の部品であるロアアームに形成された挿入孔にブッシュを圧入するブッシュ圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のサスペンションメンバーは、車体を支える左右のストラットの下端とロアアーム(以下、「アーム」という。)と呼ばれる部品により連結されている。当該アームの前記連結部分には所定の挿入孔が穿設され、当該挿入孔にはゴム等からなる弾性部を有する略円筒状のブッシュが圧入される。
【0003】
ブッシュは、全体として略円筒状の外形を有する部材であり、例えば、支軸孔を有する支軸部材をゴム弾性体等の弾性部材が囲繞して一体化することで形成されている。そして、前記アームの連結部分に穿設されている所定の挿入孔に前記ブッシュが圧入され、当該ブッシュの円筒状の中心にある前記支軸孔には、ボルト等の締結具が挿入されてサスペンションメンバーと連結される。
【0004】
従来、かかるブッシュの略円筒状の外形の直径寸法は、前記アームに穿設された挿入孔の孔径よりも僅かに大きく設定されており、当該ブッシュを前記挿入孔に挿入するには圧入による方法がとられている。しかし、前記のようにブッシュの直径寸法が挿入孔の孔径よりも僅かに大きく設定されていることに加え、圧入の際に前記ゴム等からなる弾性部が伸び縮みを生じるため、一回の圧入で適正な状態に圧入することは容易なことではなく、圧入及び引き戻しを繰り返しながら適正な状態にすることがなされている(特開2003-311551の段落[0017]等参照)。
【0005】
かかるブッシュの圧入には、車種ごとにアームの形状やアームに穿設された挿入孔の位置及び孔径がそれぞれ異なるため、車種ごとに専用設備を準備する必要がある。しかも、図18に示すように、例えば、1台の自動車には左右2本のアームがあり、それぞれのアームには、第一挿入孔と第二挿入孔がそれぞれ異なる向きに穿設されている。そして、それぞれ挿入孔にブッシュを圧入する必要があるため、1台の自動車についての圧入ユニットは単純計算を行うと4式必要となる。さらに、前記アームの形状等が車種ごとに異なるとした場合には、前記の(4式)×(車種数)の圧入ユニットが必要となる。このような圧入ユニットはそれぞれの車種ごとに準備することとなるために、巨額の設備投資と広い設置スペースとを必要とする。さらに、モデルチェンジ等に伴う車種変更があるため、継続して更新していく必要があり大きな負担となっている。このために投資費用の削減と省スペース化が望まれている。
【0006】
上記の問題点を解決するために利用できそうな技術として、特許文献1には、サスペンションメンバー及びそのカラーに圧入されるブッシュのそれぞれをセット位置にセットした状態で、2つのカラーに同時的にブッシュを圧入するための部品圧入方法であって、2つのカラー開口部の中心位置を測定するステップと、測定した2つの中心位置を通る直線である中心位置直線H1を求めるステップと、測定した2つの中心位置間の所定の方向の距離に基づき、ブッシュのセット位置を補正するステップと、第2のステップにより求めた中心位置直線H1が基準直線H0に一致するように、サスペンションメンバーのセット位置における姿勢を補正するステップと、を備える部品圧入方法及び部品圧入システムが開示されている。
【0007】
上記構成によれば、被圧入部を有するワークと圧入部品との位置合わせの精度を向上することができ、圧入部品の圧入不良および部品圧入時の騒音を低減することができるとともに、高い汎用性を得ることができるというものである。
【0008】
特許文献2には、金型1、2上のワークをプレス加工するプレス機と、金型1、2を有するダイセットを180度回転した位置に配置し、モータによって回転され、金型1、2をプレス機と金型上のワークを取り替える移載部(作業者)とを行き来させるインデックステーブルと、プレス機でプレス加工された後のダイセットにある金型の上型を抜き出し、移載部でワークが取り替えられたダイセット内にある金型の上型をプレス加工できるようにセットする2つの上型着脱機構とを備えた技術が開示されている。
【0009】
上記構成によれば、ワークが小型あるいは複雑な形状になった場合でも、金型からワークを取り出し、移載する作業の作業効率を低下させず、また、ワークの取り出し、移載作業の自動化が容易になる多工程単発プレス方法及びプレス装置を提供することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2017-217748号公報
【特許文献2】特開2005-254261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された弾性ブッシュの圧入方法及び圧入装置に使用されるブッシュは、当該特許文献1の図2に示すように、全体として略円筒状の外形を有する部材であり、内筒部11と、内筒部11に対して同軸心配置された外筒部12と、内筒部11と外筒部12との間に設けられ内筒部11と外筒部12とを一体的に繋ぐ弾性部13とを有している。そして、内筒部11、外筒部12は、例えば鉄等を材料とする金属製の部材により構成され、弾性部13は、例えば合成ゴム等の材料により構成されている。また、ブッシュ2の軸心には、内筒部11の内周面によって貫通孔14が形成されており、外筒部12の軸心方向の下端部には、鍔部15が設けられている。
【0012】
したがって、圧入対象であるブッシュの外周が、ゴム弾性体等の弾性部材で形成され、金属製の外筒部12を備えていない場合には、このままでは使用することができないという問題がある。また、当該特許文献1で開示された圧入装置は、「専用設備」であるため、他の車種のワークに対するブッシュの圧入には、このままでは使用することができないという問題がある。
【0013】
特許文献2に開示された多工程単発プレス装置等に関するインデックステーブルに係る技術は、ブッシュ圧入装置に対してブッシュを供給するための付帯設備に適用可能なように思える。しかし、ブッシュ圧入のワークであるアームには、例えば、2個の異なる形状のブッシュの供給が必要であり、しかも、当該技術では、前記インデックステーブルは、その周上に金型を載置してプレス機の中へ侵入して、そこでプレス加工がなされるが、ブッシュの圧入においては、圧入前にプレス機にブッシュの供給を行い、圧入中は退去する必要があるため、この構造のままではブッシュの供給ができないという問題点がある。
【0014】
本発明は、1機の設備で複数車種のブッシュの圧入を可能とすることにより、設備数を低減し、もって省スペース化と投資費用の削減を図るブッシュ圧入装置を提供することを
目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るブッシュ圧入装置は、
車種ごとのワークを把持する各車種に対応したマテリアルハンドリング(Material Handling:以下、「マテハン」という。)治具と、
ベース部の形状が共通化されたブッシュ治具と、
前記ワークにブッシュを正寸よりも奥方向に圧入すると共に、圧入後にブッシュを引き戻すことにより適正状態に圧入するブッシュ圧入機と、
着脱自在に構成した前記マテハン治具を装着して前記ワークを把持し、前記ブッシュ圧入機にセットするハンドリングロボットと、
ブッシュが載置された前記ブッシュ治具を、前記ブッシュ圧入機に供給すると共に、ブッシュ圧入後、前記ブッシュ治具を回収する回転シフト機構と、から構成されているものである。
【0016】
前記ブッシュ圧入機は、側面視略C字状に形成された支持フレームと、
その下方に立設された前記ブッシュを圧入するプレス機と、
ワークの上部を係止すると共に、前記回転シフト機構から供給された前記ブッシュが載置されたブッシュ治具を係止し、
当該ブッシュを正寸よりも奥に圧入し、圧入後ブッシュの所定の引き戻し及び前記係止を解除する引き戻し機構と、から構成されたことを特徴とする。
【0017】
前記引き戻し機構は、ブッシュの圧入前に前記第一ブッシュのブッシュ芯金の両端部及びブッシュ治具のベース部に穿設された連通孔と、プレス機のブッシュ支持台部の側面に穿設された係止ロッド挿通孔とを貫通して係止し、当該係止状態でプレス機の下降時に引き戻しを行い、引き戻し後に係止を解除する係止ロッドを備えたことを特徴とする。
【0018】
前記回転シフト機構は、ブッシュ治具把持部を回転させる回転機構と、回転機構の移動、前記ブッシュ圧入機に前記ブッシュが載置されたブッシュ治具の供給及び回収作動を可能とするスライド機構と、から構成されたことを特徴とする。
【0019】
前記ブッシュは、両端部を幅広に形成して連結孔が穿設され、中央部を狭幅に形成したブッシュ芯金と、当該ブッシュ芯金の前記中央部を略円柱状に囲繞する弾性部と、から構成されたことを特徴とする。
【0020】
前記ブッシュ治具は、略円盤状に形成された鍔部と、鍔部に垂設した略逆台形状のベース部と、前記鍔部の上部に形成された略円柱状のセット部と、から構成され、前記セット部、鍔部及びベース部に、前記車種に対応するブッシュごとに、それぞれの外形に対応した嵌入可能なブッシュ嵌入孔を穿設し、前記ベース部には、前記ブッシュ芯金の両端部に穿設された連結孔と連通可能に穿設された連通孔を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、1機の設備で複数車種のブッシュの圧入を可能としている。これにより、設備数を低減し、もって省スペース化と投資費用の削減を図ることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、前記ブッシュ圧入機は、側面視略C字状に形成された支持フレームと、
その下方に立設された前記ブッシュを圧入するプレス機と、
ワークの上部を係止すると共に、前記回転シフト機構から供給された前記ブッシュが載置されたブッシュ治具を係止し、
当該ブッシュを正寸よりも奥に圧入し、圧入後ブッシュの所定の引き戻し及び前記係止を解除する引き戻し機構と、から構成されているために、ワークに使用される2種類のブッシュの供給及び空となったブッシュ治具の回収を適時に行えると共に、ブッシュの圧入及び引き戻しの1回作動により、ブッシュを適正な状態に簡単に圧入することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、前記引き戻し機構は、ブッシュの圧入前に前記第一ブッシュのブッシュ芯金の両端部及びブッシュ治具のベース部に穿設された連通孔と、プレス機のブッシュ支持台部の側面に穿設された係止ロッド挿通孔とを貫通して係止し、当該係止状態でプレス機の下降時に引き戻しを行い、引き戻し後に係止を解除する係止ロッドを備えているために、簡単な構成で、プレス機の下降作動を利用して圧入したブッシュの引き戻しを行うことができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、前記回転シフト機構は、ブッシュ治具把持部を回転させる回転機構と、回転機構の移動、前記ブッシュ圧入機に前記ブッシュが載置されたブッシュ治具の供給及び回収作動を可能とするスライド機構と、を備えているために、プレス機の作動と干渉することがなく、また、ブッシュの圧入が終了したワークを未圧入のワークと取り換える間に前記ブッシュが載置されたブッシュ治具をブッシュ治具把持部に載置することができるため、ブッシュ圧入機のタクトタイムに合わせて切れ目なくブッシュを供給することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、前記第一ブッシュは、両端部を幅広に形成して連結孔が穿設され、中央部を狭幅に形成したブッシュ芯金と、当該ブッシュ芯金の前記中央部を略円柱状に囲繞する弾性部と、から構成されているために、ブッシュが圧入されたワークをサスペンションメンバーに連結する際に、従来、車体に設けられた取付孔と当該ブッシュの内筒部の貫通孔とに、例えば、ボルトを挿通し、ナット等を用いて連結固定されているが、本発明に係るブッシュを使用すれば、すでに、ブッシュ芯金が挿通されているために、第一挿入孔にボルトを挿通する必要がなく、そのままナット等を用いて連結することができる。
【0026】
また、ブッシュ芯金とゴム等の弾性部とが一体化されているために、ワークに穿設されている第一挿入孔に正寸よりも奥に圧入し、圧入後所定の引き戻しをする際に、連結孔に前記係止ロッドを挿通して係止させ、プレス機のロッドの戻りを利用して引き戻しすることができるため、ブッシュを適正な状態に、すなわち、前記第一挿入孔の上下両端に、いわゆる「耳部」を形成することができる。以上のように、本発明によればブッシュを簡単に圧入することができると共に、適正状態に圧入するために、正方向への圧入と、逆方向への圧入を交互に繰り返し行う必要がない。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、前記ブッシュ治具は、略円盤状に形成された鍔部と、鍔部に垂設した略逆台形状のベース部と、前記鍔部の上部に形成された略円柱状のセット部と、から構成され、前記セット部、鍔部及びベース部に、前記車種に対応するブッシュごとに、それぞれの外形に対応した嵌入可能なブッシュ嵌入孔を穿設し、前記ベース部には、前記ブッシュ芯金の両端部に穿設された連結孔と連通可能に穿設された連通孔が設けられている。したがって、第一ブッシュと第二ブッシュのように、その外形が車種ごとに異なっても、これらの外形の相違は前記ブッシュ嵌入孔の形状で吸収し、しかも前記ベース部及び鍔部の外形は、複数車種において共通化している。このため、前記回転シフト機構に設けたブッシュ治具把持部や前記ブッシュ圧入機へブッシュ治具の供給及び回収をする回転シフト機構は、前記外形が共通化されたベース部を把持すれば済む。
以上のように本発明によれば、1機の設備で複数車種のブッシュの圧入が可能となり、設備数を低減し、もって省スペース化と投資費用の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るブッシュ圧入装置の外観斜視図である。
図2】本発明に係るブッシュ圧入装置の平面図である。
図3】本発明に係るブッシュ圧入装置に使用するマテハン治具の概略構造図である。
図4】ワークであるアームの平面図である。
図5】本発明に係る第一ブッシュの正面図、側面図、平面図及び断面図である。
図6】本発明に係る第二ブッシュの正面図、側面図、平面図及び断面図である。
図7】回転シフト機構の正面図である。
図8】回転シフト機構の平面図である。
図9】回転シフト機構とブッシュ圧入機の位置関係を示す図11のD-D方向矢視平面図である。
図10】ブッシュ圧入機の外観斜視図である。
図11】ブッシュ圧入機の側面図である。
図12】第一ブッシュ及び第二ブッシュの圧入動作を説明するフローチャートである。
図13】他の車種の第一ブッシュ及び第二ブッシュの圧入動作を説明するフローチャートである。
図14】マテハンロボットによりワークをブッシュ圧入機にセットする動作説明図である。
図15】ワークをブッシュ圧入機に固定する状態を示す図1の拡大外観斜視図である。
図16】本発明に係るブッシュ圧入機による第一ブッシュを圧入する図11のE方向矢視の動作説明図である。
図17】本発明に係るブッシュ圧入装置を制御する制御装置の構成図である。
図18】従来のブッシュ圧入用治具の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<発明の構成>
本発明に係るブッシュ圧入装置は、
車種ごとのワークを把持する各車種に対応したマテハン治具と、
ベース部の形状が共通化されたブッシュ治具と、
前記ワークにブッシュを正寸よりも奥方向に圧入すると共に、圧入後にブッシュを引き戻すことにより適正状態に圧入するブッシュ圧入機と、
着脱自在に構成した前記マテハン治具を装着して前記ワークを把持し、前記ブッシュ圧入機にセットするハンドリングロボットと、
ブッシュが載置された前記ブッシュ治具を、前記ブッシュ圧入機に供給すると共に、ブッシュ圧入後、前記ブッシュ治具を回収する回転シフト機構と、から構成されているものである。
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面により説明する。ただし、図面は模式的なものであり、細部の記載については省略している。また、各部の配置や寸法の比率等は必ずしも現実のものと一致するものではない。
【0031】
本発明に係るブッシュ圧入装置100は、図1の外観斜視図及び図2の平面図に示すように構成されている。すなわち、ブッシュ6、7をワーク8に圧入するブッシュ圧入機1、ワーク8を把持して前記ブッシュ圧入機1にセットするオートツールチェンジ可能なマテハンロボット2、前記ブッシュ圧入機1にブッシュ治具60、70に載置された第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7を供給すると共に、圧入済のブッシュ治具60、70を回収する回転シフト機構3、及び前記マテハンロボット2が装着する車種ごとのワーク8に対応するマテハン治具50を配置するマテハン治具置場5から構成されている。そして、これらの装置は、台座90の上に配設されている。
【0032】
台座90は、図1に示すように、鋼材を略長方形状に組み合わせた枠体の天面に、鋼板などの金属製の板材を敷設して形成されている。台座90は、ブッシュ圧入装置100を構成する前記各装置を配設すると共に、各装置の位置関係を画定する基準面となるものであり、所定の基礎の上に設置される。
【0033】
マテハンロボット2は、6軸の多関節ロボットであり、図1図2に示すように、前記台座90の左側奥手に配設されている。マテハンロボット2は、オートツールチェンジャ(オートマチックツールチェンジャ又はオートハンドチェンジャなどとも呼ばれている。)機能を有している。このために、ロボットアーム21の先端の手首軸22にロボット側ツールチェンジャ24を装備しており、マテハン治具50のツール側ツールチェンジャ52と嵌合し、前記マテハンロボット2のツールとして作動する。
【0034】
ここで、オートツールチェンジャは、ロボットにツールの交換機能を持たせたものである。これによりロボットの応用柔軟性を大幅に拡大することができ、ロボット1台で様々な工具が使いこなせて、大幅な自動化を実現することができるものである。
【0035】
マテハン治具置場5は、車種ごとに異なる形状を有するワーク8に対応するマテハン治具50を、所定の位置に配置しておく治具置場である。マテハン治具置場5は、図1に示すように、Lチャンネル材やCチャンネル材、又はアルミフレームを組み上げて略方形状の枠体に形成されている。そして、その天面に板材を敷設し、その上の所定の位置にマテハン治具50を配置している。前記マテハンロボット2は、当該マテハン治具置場5に配置されているマテハン治具50の中から、圧入を行う車種のワーク8に対応するマテハン治具50を選択して、自動交換する。
【0036】
マテハン治具50は、図3(a)に示すように、マテハンロボット2側に装着されたロボット側ツールチェンジャ24に嵌合するツール側ツールチェンジャ52と、ツール側ツールチェンジャ52に連設されたワーク支持部53と、ワーク支持部53の先端には、本図の矢印方向に折り曲げ可能に連結されて、ワーク8を挟持する部分が略半円柱状に凹設されたクランプ54、54と、後述するバックアップピン15b、15bにより係止される引っかけ部56、56と、から構成されている。また、前記ワーク支持部53には、ワーク8を把持する際の位置決めとなる基準ピン55a、55bが、ワーク8の把持側に突設している。
マテハン治具50は、実使用時には、前記のとおり前記ツール側ツールチェンジャ52と、ロボット側ツールチェンジャ24とが嵌合されて、マテハンロボット2のツールとして作動する。
【0037】
マテハン治具50が把持するワーク8は、図4に示すように、湾曲したアーム部81の左方の略円形状の端部に第二挿入孔83が穿設されている。また、アーム部81の略中央部の左側方には、上下方向に第一挿入孔82が穿設された略円筒状の連結部82aが突設されている。すなわち、第一挿入孔82は、第二挿入孔83の開口方向と直交する向きに穿設されている。さらに、アーム部81には、複数の抜孔84が穿設されている。
【0038】
マテハンロボット2は、マテハン治具50を用いて、図2に示すワーク搬送ライン91に搬送されてくるワーク8を、図3(b)に示すように把持する。すなわち、マテハン治具50の基準ピン55aにワーク8の第二挿入孔83を、基準ピン55bには抜孔84を挿通し、前記クランプ54、54で第一挿入孔82が穿設された連結部82aを挟持できる状態にセットする。そして、図3(c)に示すように、クランプ54、54及び前記引っかけ部56、56を矢印方向に折り曲げてワーク8を挟持すると共に、クランプ54に連設された押え棒54aがワーク8のアーム部81の側面を押圧する。以上のようにして、マテハンロボット2は、マテハン治具50によりワーク8を把持する。
【0039】
マテハンロボット2は、ワーク8を把持すると、第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7を圧入するために、マテハン治具50が把持したワーク8をブッシュ圧入機1のプレス機12にセットする。なお詳細は後述する。
【0040】
ワーク8に圧入するブッシュには、図5に示すような形状をした第一ブッシュ6と、図6に示すような形状をした第二ブッシュ7の2種類がある。第一ブッシュ6は、ワーク8の第一挿入孔82に圧入され、第二ブッシュ7は、ワーク8の第二挿入孔83に圧入される。もっとも、実際には上記2種類に限定されるものではなく、多種類の車種に対応してブッシュが揃えられるが、ここでは、2種類であるとして説明する。
【0041】
第一ブッシュ6は、図5(a)の正面図、図5(b)のブッシュ治具60に載置した正面図、図5(d)の正面断面図及び図5(g)の側面断面図に示すような形状に形成されている。ブッシュ6は、金属製の平棒の両端部を幅広に形成して連結孔62、62が穿設され、その中央部は、狭幅に形成されたブッシュ芯金61と、当該ブッシュ芯金61の前記狭幅部を囲繞して略円柱状に形成された、例えば、合成ゴム等を材料とするゴム製品からなる弾性部63とから構成されている。すなわち、第一ブッシュ6には、略円筒状の弾性部63の軸心をブッシュ芯金61が貫通し、しかも当該ブッシュ芯金61の両端部に連結孔62、62が穿設されている。このため、第一ブッシュ6は、ワーク8の前記第一挿入孔82に圧入されると、そのまま連結孔62にボルト及びナットを用いてサスペンションメンバー(不図示)に連結することができる。
【0042】
第二ブッシュ7は、図6(a)の正面図、図6(b)のブッシュ治具70に載置した正面図、図6(d)の正面断面図及び図6(g)の側面断面図に示すように、全体として略円筒状に形成されている。そして、内筒部71と、内筒部71に対して同軸心に配置された外筒部72と、内筒部71と外筒部72との間に設けられ両者を一体的に繋ぐ弾性部73とを有している。また、内筒部71は、外筒部72から突出し、両者を繋ぐ弾性部73は、内筒部71から外筒部72にかけて緩やかな曲線をなしている。
【0043】
第二ブッシュ7の内筒部71および外筒部72は、例えば鉄等を材料とする金属製の部材により構成されている。弾性部73は、合成ゴム等を材料とするゴム製の部分であり、例えば、内筒部71と外筒部72との間において加硫接着されることで設けられる。
第二ブッシュ7の軸心には、図6(g)に示すように、内筒部71の内周面の上下方向の略中央部に球状に膨出した空間を有する貫通孔74が形成されている。当該貫通孔74は、ワーク8であるアームをサスペンションメンバーに連結する際は、ボルト等の締結具が挿入される連結用の孔部として用いられる。この点で、第二ブッシュ7と第一ブッシュ6は、大きく異なる。
【0044】
ブッシュ治具60は、第一ブッシュ6をブッシュ圧入機1で圧入するために載置される治具である。ブッシュ治具60は、図5(c)の第一ブッシュ6を載置した平面図、図5(e)の正面図及び図5(f)の側面図に示すように、略円盤状に形成された鍔部65と、鍔部65に垂設した正面視及び側面視略逆台形状のベース部66と、前記鍔部65の上部に立設された略円柱状のセット部67と、から構成されている。そして、前記セット部67、鍔部65及びベース部66を一体として、第一ブッシュ6が嵌入可能な第一ブッシュ6の外形と略同一形状のブッシュ嵌入孔68が穿設されている。また、ベース部66の前後方向には、ブッシュ芯金61の両端部の連結孔62に連通可能とする連通孔69が穿設されている。
【0045】
ブッシュ治具70は、第一ブッシュ6と同様に、第二ブッシュ7をブッシュ圧入機1で圧入するために載置される治具である。ブッシュ治具70は、図6(c)の第二ブッシュ7を載置した平面図、図6(e)の正面図及び図6(f)の側面図に示すように、略円盤状に形成された鍔部75と、鍔部75に垂設した前記ベース部66と同一外形のベース部76と、前記鍔部75の上部に立設された略円柱状のセット部77と、から構成されている。また、ベース部76の軸心には、略丸棒状の支柱76aが立設している。支柱76aは、第二ブッシュ7の貫通孔74に挿通され、第二ブッシュ7が外れて落下しないように保持すると共に、位置決めを行う。
【0046】
そして、前記セット部77、鍔部75及びベース部76を一体として、第二ブッシュ7が嵌入可能な第二ブッシュ7の外形と略同一形状のブッシュ嵌入孔78が穿設されている。また、前記ベース部76の前後方向には、前記ブッシュ芯金61の両端部に穿設された連結孔62と同一の孔位置に連通孔79を設けている。したがって、ブッシュ治具60、70の鍔部65、75及びベース部66、76の外形は同一に形成されている。また、車種ごとのブッシュ治具の高さの違いは、セット部の高さで調節している。このように形成することにより、1機の設備で複数車種に対応できるよう圧入設備の共用化を図っている。
【0047】
ブッシュ治具60、70は、以上のように構成されているために、第一ブッシュ6と第二ブッシュ7の形状が異なった場合や車種ごとに異なった場合においても、このような形状の相違は、ブッシュ治具60、70のブッシュ嵌入孔68、78の形状で吸収し、ブッシュ治具60、70の高さの相違は、セット部67、77の高さで調節するように構成し、しかも鍔部65、75及びベース部66、76の外形は同一にして、複数車種において共通化している。このため、後述する回転シフト機構3のブッシュ治具把持部39a、39bやブッシュ圧入機1のブッシュ支持台部13等は、ブッシュの形状の相違とは無関係に、外形が共通化された鍔部65、75及びベース部66、76を把持すれば済み、複数車種の異なった形状のブッシュに対応可能となる。したがって、1機の設備で複数車種のブッシュの圧入が可能となり、設備数を低減し、もって省スペース化と投資費用の削減を図ることができる。
【0048】
回転シフト機構3は、図2に示すように、ブッシュ供給ライン93から第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7の供給がされる度に、順次間欠的に、例えば、90度回転し、前記供給された位置から180度回転した位置で前記第一ブッシュ6と第二ブッシュ7を、前記ブッシュ圧入機1の圧入工程の進捗に対応して順次供給すると共に、圧入済の空になったブッシュ治具60、70を回収して、順次間欠的に90度回転して、前記ブッシュ供給ライン93に戻し、当該ブッシュ治具60、70に新たな第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7を載置するための装置である。
【0049】
回転シフト機構3は、図7の正面図及び図8の平面図に示すように、ブッシュ治具60、70を載置して順次間欠的に所定の角度回転する回転機構31と、前記回転機構31を載荷して本図から見て左右方向に摺動可能に構成されたスライド機構32と、スライド機構32を載置して連結固定するための架台30と、から構成されている。
【0050】
架台30は、Lチャンネル材やCチャンネル材又はアルミフレームを組み上げて略方形状の枠体に形成されている。そして、その天面に金属製の板材を敷設し、その上の所定の位置にスライド機構32を載置し固定している。
【0051】
スライド機構32は、Lチャンネル材やCチャンネル材又はアルミフレームを組み上げて略方形状の枠体に形成され、前記架台30の長手方向に配設されたフレーム33と、フレーム33の右側面に配設されたスライド軸35とから構成されている。スライド軸35は、載荷された前記回転機構31を長手方向に移動させる機構であり、例えば、図示しないモータとスクリューシャフトの組み合わせ又はシリンダで駆動するように構成されている。
【0052】
回転機構31はスライド機構32により長手方向に摺動可能に構成され、第一ブッシュ6、第二ブッシュ7を載置したブッシュ治具60、70を把持して順次間欠的に所定の角度回転し、ブッシュ供給ライン93に搬送されてきたブッシュを、ブッシュ圧入機1の圧入工程の進捗に対応して順次供給すると共に、圧入済の空になったブッシュ治具60、70を回収して、順次間欠的に回転して、前記ブッシュ供給ライン93に戻す機構である。
回転機構31の回転の駆動源となるサーボモータ36は、ブラケット37を介して前記スライド機構32のスライド軸35と摺動可能に連結されている。すなわち、回転機構31は、スライド機構32のスライド軸35の作動により前記フレーム33上を長手方向に摺動作動する。
【0053】
回転機構31は、前記サーボモータ36の出力軸又はこれと組み合わせた減速機の出力軸を回転軸36aとし、当該回転軸36aを中心として、図8に示すように、その四方向にブッシュ治具支持バー38a~38dを延設している。すなわち、当該ブッシュ治具支持バー38a~38dは、それぞれ90度の角度をなして四方向に延設されている。なお、本実施例では、4本のブッシュ治具支持バー38a~38dを均等な角度で四方向に延設されているが、4本に限定されるものではなく、3本であっても6本であっても差し支えない。この場合には当該角度は120度又は60度に設定される。
【0054】
ブッシュ治具支持バー38a~38dは、図8に示すように、略平板状の棒体に形成されている。そして、それぞれの先端部に、前記ブッシュ治具60、70を載置するための略半円状に形成されたブッシュ治具把持部39a、39bが、前記回転軸36aを中心とする所定の円周上に所定の間隔で、角度θを保持して配設されている。なお、「角度θ」とは、ブッシュ治具把持部39a、39bのそれぞれの略半円形の把持空間の中心と回転軸36aとがなす挟角をいう
【0055】
回転シフト機構3の構成は以上である。次に、回転機構31は、次のように移動作動する。まず、回転機構31は、図9(a)に示すように、スライド機構32の作動により、ブッシュ供給ライン93からブッシュ治具把持部39a、39bに第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7を把持させるための把持位置(以下、「位置A」という。)に移動する。そして、位置Aにおいて、第一ブッシュ6を載置したブッシュ治具60をブッシュ治具把持部39aに把持させ、第二ブッシュ7を載置したブッシュ治具70をブッシュ治具把持部39bに把持させる。なお、ブッシュをブッシュ治具把持部39a、39bに把持させる工程は、自動化された装置を使用してもよいし、人手により把持させてもよい。
【0056】
また、回転機構31は、図9(b)に示すように、スライド機構32の作動により、第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7の供給待機位置(以下、「位置B」という。)に移動する。また、回転軸36aが90度ずつの回転を二作動することによって、ブッシュ治具支持バー38a~38dが連動して回転する。その結果、前記ブッシュ治具支持バー38aのブッシュ治具把持部39aが把持した第一ブッシュ6を載置したブッシュ治具60がブッシュ圧入機1のプレス機12と対向する位置に達する。すなわち、回転機構31は、位置Bにおいて、第一ブッシュ6を載置したブッシュ治具60及び第二ブッシュ7を載置したブッシュ治具70を、順次ブッシュ圧入機1に供給待機となる。
【0057】
また、回転機構31は、図9(c)に示すように、スライド機構32の作動により、第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7の供給位置(以下、「位置C」という。)に移動する。
そして、プレス機12の作動に合わせてブッシュ治具把持部39a、39bが把持している第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7を載置したブッシュ治具60、70を順次プレス機12に供給し、圧入済の空となったブッシュ治具60、70を順次回収する。なお、回転機構31は、プレス機12の作動との干渉を避けるために、供給及び回収の際は位置Cに移動し、そうでないときには位置Bに移動して待機する。
【0058】
回転機構31は、ブッシュ治具把持部39aが把持している第一ブッシュ6を載置したブッシュ治具60をプレス機12に供給する。供給されたプレス機12は、第一ブッシュ6をワーク8に圧入する。回転機構31は、圧入済の空になったブッシュ治具60を回収する。次に、回転機構31の回転軸36aは、角度θ回転し、ブッシュ治具把持部39bが把持している第二ブッシュ7を載置したブッシュ治具70が、プレス機12に対向する。そこで、回転機構31は、ブッシュ治具把持部39bが把持している第二ブッシュ7を載置したブッシュ治具70をプレス機12に供給する。供給されたプレス機12は、第二ブッシュ7をワーク8に圧入する。回転機構31は、圧入済の空になったブッシュ治具70を回収する。
【0059】
ブッシュ圧入機1は、図10図11に示すように、躯体となる支持フレーム11と、第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7をワーク8に圧入するための押圧力を発生させるプレス機12と、前記支持フレーム11及びプレス機12等を構造的に支えると共に、これらの配置の基準面となる架台10と、から構成されている。
【0060】
架台10は、Lチャンネル材やCチャンネル材又はアルミフレームを組み上げて略方形状の枠体に形成されている。そして、その天面に金属製の板材を敷設し、その上面の所定の位置にブッシュ圧入機1の支持フレーム11を立設している。また、その下方に架設された水平支柱10a上に、プレス機12を立設している。
【0061】
支持フレーム11は、プレス機12の圧入による押圧力を受ける部分であり、側面視略C字状の外形をなしている。支持フレーム11は、鉛直状の柱部11aと、柱部11aの下端から前方に延設された水平台11bと、上端部から前方に向けて延設されたワーク受け部11cとを有している。そして、その開放側は、マテハンロボット2がワーク8をワーク受け部11cにセットし、及び回転シフト機構3からブッシュ治具60、70の供給を受ける等の作業空間を形成している。
【0062】
プレス機12は、第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7をワーク8に圧入するための押圧力を発生させる装置であり、サーボプレスで構成されている。サーボプレスとは、プレス加工する速度を制御するモータに「サーボモータ」を採用しているプレス機のことである。サーボモータでスピードを可変できるため、加圧している時にはゆっくりと動かすことができ、圧入時以外の上下動のときはスライドの速度を速くして時間ロスを削減し、生産性を向上させることができる。
【0063】
プレス機12は、前記のとおり、架台10の下方に架設された水平支柱10a上に略円筒状の本体部12aが立設されている。当該プレス機12のロッド12bは、支持フレーム11の水平台11bを上下方向に貫通し、水平台11bの上方に突出して伸縮自在に構成されている。ロッド12bの先端には、軸心に支持台陥入孔13bが穿設された略円筒状のブッシュ支持台部13が冠着されている。
【0064】
ブッシュ支持台部13は、図16(a)~(c)に示すように、その正面視左側面にブラケット17を介してシリンダ18が横設されている。そして、ブッシュ支持台部13の当該左側面にはシリンダ18のピストンロッド18aに連設された係止ロッド18bを挿通可能とする係止ロッド挿通孔13cが穿設されている。
【0065】
ブッシュ支持台部13の上端は、前記ブッシュ治具60、70を載置するためのブッシュ載置部13aを形成している。ブッシュ載置部13aは、前記回転シフト機構3のブッシュ治具把持部39a、39bから第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7が載置されたブッシュ治具60、70の供給を受けて順次セットする載置面である。
【0066】
ブッシュ支持台部13の支持台陥入孔13bの内径は、ベース部66、76の外径よりも大きく形成され、鍔部65、75の外径は、ブッシュ支持台部13の外径よりも大きく形成されている。このため、ブッシュ載置部13aに載置されたブッシュ治具60、70の、ベース部66、76は、支持台陥入孔13bに陥入され、鍔部65、75は、ブッシュ載置部13aの下面がブッシュ載置部13aの上面に当接し載置される。
【0067】
また、ブッシュ載置部13aは、圧入加工のパンチを構成しており、ロッド12bの昇降作動に連動して昇降し、ブッシュ載置部13aに載置されたブッシュ治具60、70の鍔部65、75に当接して押圧し、第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7をワーク8に穿設された第一挿入孔82及び第二挿入孔83に圧入する。
【0068】
ワーク受け部11cは、図15(a)、(b)に示すように、マテハン治具50に把持されたワーク8の第一挿入孔82又は第二挿入孔83が、前記ワーク受け部11cにセットされたときに、プレス機12の圧入による押圧力を受ける部分である。
【0069】
ワーク受け部11cは、支持フレーム11の上端部から前方に向けて延設され、その先端は略U字状に分岐して、側面視略三角形状に形成されて鋭角をなしている。ワーク受け部11cの上面後部には、シリンダ16が配設され、ピストンロッド16a、16aは、バックアップピン押板15に連結されている。なおシリンダ16は、2軸のピストンロッドを有するツインロッドシリンダである。2軸のロッドで連結することにより、バックアップピン押板15の捩れや回転を防止することができる。
【0070】
バックアップピン押板15は、シリンダ16の作動により、ワーク受け部11cの天面を前後に移動可能に配設されている。そして、ワーク受け部11cの左右両端部にはバックアップピン15b、15bが前方に突設し、ワーク受け部11cの前部の両側面に設けられた略方形状の突起部に穿設されたバックアップピンスライド孔15c、15cを、当該バックアップピン15b、15bが貫設している。したがって、シリンダ16が前後作動することにより、バックアップピン押板15が前後に作動し、これに連動してバックアップピン15b、15bも前後に作動する。このバックアップピン15b、15bは、マテハン治具50に設けられている引っかけ部56、56と係止し、マテハン治具50の動きを規制する。なお詳細は後述する。
【0071】
<ブッシュ圧入装置の動作>
次に、本発明に係るブッシュ圧入装置100の動作について、図12及び図13のフローチャートに基づき、マテハン治具50、マテハンロボット2、ブッシュ圧入機1及び回転シフト機構3の相互間の作動について説明する。なお、以下において、車種Xと車種Yの2種類の車種のワーク8に、第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7をそれぞれ圧入する例について説明する。ただし、車種Xと車種Yは異なる車種とし、車種X及び車種Yに使用する第一ブッシュ6及び第二ブッシュ7は共用するものとし、両車種に使用するアーム及びマテハン治具は、形状の相違はあるものの、ここではワーク8及びマテハン治具50とする。
【0072】
(車種Xの第一ブッシュ6の圧入)
まず、車種Xのワーク8の第一挿入孔82に第一ブッシュ6を圧入する動作について、図12に示すフローチャートに基づき説明する。
マテハン治具置場5において、車種Xのマテハン治具50の準備が完了する(ステップS01)。続いて車種Yのマテハン治具50の準備が完了する(ステップS02)。
【0073】
マテハンロボット2は、ステップS01でマテハン治具置場5の所定に位置に準備された車種Xのマテハン治具50を装着する(ステップS03)。
そして、図2に示すように、ワーク搬送ライン91に搬送されて来たワーク8を、図3(a)~(c)に示すように把持する(ステップS04)。
次に、マテハンロボット2は、図14(a)に示すように、ワーク8をブッシュ圧入機1のワーク受け部11cの前に移動させる。そして、図14(b)に示すように、ワーク8に穿設された第一挿入孔82を支持フレーム11のワーク受け部11cにセットする(ステップS05)。
【0074】
マテハンロボット2は、具体的には、図15(a)に示すように、ワーク8の第一挿入孔82が穿設されている連結部82aを、ワーク支持部53の先端に設けられたクランプ54、54を閉じて挟持する。また、クランプ54に連設された押え棒54aがワーク8のアーム部81の側面を押圧する。これにより、ワーク8は固定される。
【0075】
回転シフト機構3では、位置Aにおいて、ブッシュ治具支持バー38aのブッシュ治具把持部39aに車種Xの第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60が載置され、ブッシュ治具把持部39bに第二ブッシュ7が載置されたブッシュ治具70が載置される(ステップS06)。
載置が終了すると、回転機構31は、図8(a)に示すように、平面視において反時計回り、すなわち矢印方向に90度回転する(ステップS07)。
【0076】
次に、同じく位置Aにおいて、ブッシュ治具支持バー38bのブッシュ治具把持部39aに、車種Yの第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60が把持され、ブッシュ治具把持部39bに、第二ブッシュ7が載置されたブッシュ治具70が把持される(ステップS08)。
載置が終了すると、同様に、平面視において反時計回り、すなわち矢印方向に90度回転する。以上の90度回転を2作動することにより、最初に載置したブッシュ治具支持バー38aのブッシュ治具把持部39aは、ブッシュ圧入機1と対向する位置に達する(ステップS09)。
【0077】
次に、回転機構31は、スライド機構32が作動して、図16(a)に示すように、プレス機12の方向に移動する。これにより、第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60は、位置Cに到達し、ブッシュ載置部13a軸心上に位置する。そして、プレス機12が作動してロッド12bが上昇し、これに連動して矢印に示すように、ブッシュ支持台部13も上昇する。なお、図16には、繁雑さを避けるため、ブッシュ治具把持部39b、第二ブッシュ7及びブッシュ治具70の記載は省略してある(ステップS10)。
【0078】
回転機構31は、位置Cにおいて、第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60をプレス機12に供給する。具体的には、図16(b)に示すように、ロッド12bが上昇し、これに連動してブッシュ支持台部13も上昇して、ブッシュ治具把持部39aが把持している第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60のベース部66は、支持台陥入孔13bに陥入し、鍔部65の下面がブッシュ載置部13aに当接する。
【0079】
次に、シリンダ18が作動し、ピストンロッド18aが伸張してその先端に連設されている係止ロッド18bは、支持台陥入孔13bに陥入されているベース部66の連通孔69を貫通する。第一ブッシュ6にはブッシュ芯金61に連結孔62が穿設されており、しかもベース部66の連通孔69と連通しているため、前記係止ロッド18bはブッシュ芯金61の連結孔62をも貫通する。したがって、第一ブッシュ6は、係止ロッド18bの貫通によってブッシュ支持台部13と連結されて、そのまま上昇する(ステップS11)。
【0080】
以上のようにして、第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60のプレス機12への供給が終了すると、回転機構31は、位置Cから位置Bに移動する(ステップS12)。
【0081】
次に、図15(b)に示すように、ワーク受け部11cの上端に設けられたシリンダ16が伸張作動し、ピストンロッド16a、16aが伸張してバックアップピン押板15をワーク受け部11cの前方に押す。これに連動して、ワーク受け部11cの左右に配設されたバックアップピン15b、15bがバックアップピンスライド孔15cを摺動して前方に突出してくる。そして、内側に鍵状に屈曲した引っかけ部56、56の屈曲部の下方に突出する。これにより、引っかけ部56、56は、バックアップピン15b、15bに係止され、マテハン治具50は、その動きが規制される。
【0082】
プレス機12は、そのまま作動を続けロッド12bも伸張を続ける。これに連動してブッシュ支持台部13も上昇し、第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60も上昇する。そして、図16(c)に示すように、ワーク支持部53により把持されているワーク8の第一挿入孔82に、第一ブッシュ6が圧入される。この場合において、第一ブッシュ6の圧入は、正寸よりも奥方向、すなわち正寸よりも深く圧入される。第一挿入孔82に圧入された第一ブッシュ6は、図15(b)に示すように、クランプ54、54の間からそのブッシュ芯金61を覗かせる(ステップS13)。
【0083】
圧入が所定の深さまでされると、次は引き戻しを行う。具体的には、図16(d)に示すように、圧入が正寸よりも深くされると、今度はロッド12bが下降を始める。そこで、前記係止ロッド18bがブッシュ芯金61の連結孔62を貫通した状態のまま、プレス機12が下降作動することを利用して所定の長さだけロッド12bを引き戻す。
所定の下降作動がされると、シリンダ18が作動してピストンロッド18aを収縮させる。これにより、係止ロッド18bのブッシュ芯金61の連結孔62及びブッシュ治具60の連通孔69の貫通状態は解消される。したがって、第一ブッシュ6とブッシュ支持台部13との連結は解消され、ブッシュ芯金61の引き戻しは終了する。
以上のように、第一ブッシュ6を正寸よりも奥方向に圧入した後、プレス機12の下降作動を利用して、ブッシュ芯金61を所定の長さだけ引き戻すことにより、ワーク8の第一挿入孔82に第一ブッシュ6を適正な状態に圧入することができる。なお、適正な状態とは、第一挿入孔82の上下の両端に弾性部63が所定の長さだけはみだして、いわゆる「耳」が形成されることをいう
【0084】
第一ブッシュ6の圧入が終わると、シリンダ16が収縮作動し、ピストンロッド16a、16aが収縮してバックアップピン押板15を引き戻す。これに連動して、バックアップピン15bがバックアップピンスライド孔15cを摺動して後方に退出する。これにより、前記引っかけ部56、56の係止が解除され、マテハン治具50は、ワーク受け部11cから取り外し可能となる(ステップS14)。
【0085】
次に、回転機構31は、スライド機構32が作動して、プレス機12の方向に移動する。これにより、第二ブッシュ7が載置されたブッシュ治具60は、位置Cに到達する(ステップS15)。
【0086】
回転機構31は、位置Cにおいて、第一ブッシュ6が圧入されて空となったブッシュ治具60をブッシュ圧入機1から回収する。具体的には、図16(e)に示すように、ブッシュ圧入機1のブッシュ載置部13a上に残置されているブッシュ治具60の鍔部65の下方にブッシュ治具把持部39aを挿入し、ブッシュ治具60を待ち受ける。圧入が終わったプレス機12のロッド12bは収縮により下降してくるため、それに連動してブッシュ載置部13aに載置されたブッシュ治具60も下降する。ブッシュ治具60は、その鍔部65の直径が、その下で待機しているブッシュ治具把持部39aの内径よりも大きく形成されているために、ロッド12bが、そのまま下降を続けると、図16(f)に示すように、ブッシュ治具60は、ブッシュ治具把持部39a上に残置される。このようにして圧入済のブッシュ治具60を回収することができる(ステップS16)。
以上のようにして、第一ブッシュ6をワーク8の第一挿入孔82へ圧入する工程が終了する。
【0087】
(車種Xの第二ブッシュ7の圧入)
次に、車種Xのワーク8の第二挿入孔83に第二ブッシュ7を圧入する動作について説明する。なお、第二ブッシュ7を載置したブッシュ治具70の供給及び空となったブッシュ治具70の回収作動は、図16(a)~16(f)と同様である。
【0088】
マテハンロボット2は、ワーク8をブッシュ圧入機1のワーク受け部11cから取り外す。そして、図14(c)に示すように、第二ブッシュ7の第二挿入孔83の軸心が上下方向を向くようにワーク8の向きを変える。次に、ワーク8をブッシュ圧入機1のワーク受け部11cの前に移動させ、図14(d)に示すように、ワーク8に穿設された第二挿入孔83を支持フレーム11のワーク受け部11cにセットする(ステップS17)。
【0089】
第二ブッシュ7は、金属製の外筒部72を有しており、しかも第一ブッシュ6のようにブッシュ芯金61を有していないため、前記の引き戻しを行う必要はない。したがって、ワーク8の第二挿入孔83に第二ブッシュ7を圧入する際は、前記ワーク受け部11cの上端に設けられたシリンダ16は作動しなくても差し支えない。なお、シリンダ18は、第二ブッシュ7を圧入する際に、ブッシュ治具70とブッシュ支持台部13とを連結できるので、作動させるのが望ましい。
【0090】
次に、ブッシュ支持台部13は前記図16(f)において、下降している。そこで、回転機構31は、位置Cにおいて、反時計方向に角度θ回転する。このように回転することにより、第二ブッシュ7が載置されたブッシュ治具70は、ブッシュ載置部13aの軸心上に位置する(ステップS18)。
【0091】
次に、プレス機12のロッド12bが伸張してブッシュ支持台部13が上昇し、第二ブッシュ7が載置されたブッシュ治具70の鍔部75の下面が、ブッシュ載置部13aに当接し、ベース部76は支持台陥入孔13bに陥入するため、そのまま載置される。このようにして、回転機構31は、第二ブッシュ7をプレス機12に供給することができる(ステップS19)。
【0092】
以上のようにして、第二ブッシュ7が載置されたブッシュ治具70のプレス機12への供給が終了すると、回転機構31は、位置Cから位置Bに移動する(ステップS20)。
【0093】
次に、プレス機12のロッド12bは伸張を続け、ブッシュ支持台部13がさらに上昇し、これに連動して第二ブッシュ7が載置されたブッシュ治具70も上昇する。そして、クランプ54により把持されているワーク8の第二挿入孔83に、第二ブッシュ7が圧入される。
なお、第二ブッシュ7は、その外筒部72が金属製であるため、そのまま、ワーク8の第二挿入孔83に正寸どおり圧入すればよく、前記第一ブッシュ6のように、正寸よりも奥に圧入した後、引き戻しを行う必要はない。しかし、ブッシュ治具70をブッシュ支持台部13に連結できるため、前記シリンダ18は、作動させるのが望ましい(ステップS21)。
【0094】
第二ブッシュ7の圧入が済むと、回転機構31は、位置Cに移動する(ステップS22)。
回転機構31は、位置Cにおいて、第二ブッシュ7が圧入されて空となったブッシュ治具70を、ブッシュ圧入機1から回収する。なお、ブッシュ治具70の回収作動は前記ステップS16におけるブッシュ治具60の場合と同様であるので、説明は省略する(ステップS23)。
回転機構31は、ブッシュ治具70を回収すると、位置Cから位置Bへ移動する(ステップS24)。
【0095】
マテハンロボット2は、ワーク8をブッシュ圧入機1のワーク受け部11cから取り外す。そして、ワーク8を、圧入終了済ワーク8を搬送するワーク搬送ライン92に載置する(ステップS25)。
【0096】
次に、マテハンロボット2は、車種Xのマテハン治具50を、ロボットアーム21の手首軸22から取り外して、マテハン治具置場5の所定に位置に戻す(ステップS26)。
以上のようにして、車種Xにおける第二ブッシュ7のワーク8の第二挿入孔83への圧入が終了する
【0097】
(車種Yの第一ブッシュ6の圧入)
次に、車種Yのワーク8の第一挿入孔82に第一ブッシュ6を圧入する動作について説明する。本動作は、図13に示すフローチャートのステップS27からステップS37に記載したとおりである。
【0098】
車種Yのマテハン治具50は、ステップS02において準備が完了しているものを使用する。すなわち、マテハンロボット2は、ステップS02でマテハン治具置場5の所定に位置に準備された車種Yのマテハン治具50を装着する(ステップS27)。
そして、図2に示すように、ワーク搬送ライン91に搬送されて来たワーク8を、図3に示すようにして把持する(ステップS28)。
次に、マテハンロボット2は、図14(a)に示すように、ブッシュ圧入機1のワーク受け部11cの前に移動させる。そして、図14(b)に示すように、ワーク8に穿設された第一挿入孔82を支持フレーム11のワーク受け部11cにセットする(ステップS29)。
【0099】
次に、ステップS08で説明したとおり、回転機構31のブッシュ治具支持バー38bのブッシュ治具把持部39aには、車種Yの第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60が載置され、ブッシュ治具把持部39bには第二ブッシュ7が載置されたブッシュ治具70が載置されている。
そこで、回転機構31は、図8に示すように、平面視において反時計回り、すなわち矢印方向に90度回転する。これにより、ブッシュ治具把持部39aは、プレス機12と対向する位置に到達する(ステップS30)。
【0100】
次に、回転機構31は、スライド機構32が作動して、プレス機12の方向に移動する。これにより、第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60は、位置Cに到達する(ステップS31)。
【0101】
以下、回転機構31が、位置Cにおいて、第一ブッシュ6が載置されたブッシュ治具60をプレス機12に供給するステップS31から、第一ブッシュ6の圧入及び引き戻しが終了し、空となったブッシュ治具60の回収が終わるまでのステップS37は、前記ステップS10からステップS16までのステップと同様であるため、説明を省略する。
【0102】
(車種Yの第二ブッシュ7の圧入)
次に、車種Yのワーク8の第二挿入孔83に第二ブッシュ7を圧入する動作について説明する。本動作は、図13に示すフローチャートのステップS38からステップS47に記載したとおりである。
【0103】
すなわち、マテハンロボット2は、図14(a)~図14(d)に示すように、ワーク8をブッシュ圧入機1のワーク受け部11cから取り外して、その向きを変え、ワーク8をブッシュ圧入機1のワーク受け部11cの前に移動させて、ワーク8に穿設された第二挿入孔83を支持フレーム11のワーク受け部11cにセットするステップS38から、マテハンロボット2が、車種Xのマテハン治具50を、ロボットアーム21の手首軸22から取り外して、マテハン治具置場5の所定に位置に戻すステップS47までは、図12に示す前記ステップS17からステップS26までのステップと同様であるため、説明を省略する。
【0104】
<制御装置>
次に、前記図12図13のフローチャートで説明した本発明に係るブッシュ圧入装置100を構成するブッシュ圧入機1、マテハンロボット2及び回転シフト機構3の作動を制御する制御装置4について説明する。図17に示すように、マテハンロボット2は、ロボットコントローラ20に接続されている。ロボットコントローラ20は、制御装置4であるプログラマブルコントローラ(Programmable Logic Controller、以下「PLC」という。)4のPLCネットワーク48に接続されている。PLCネットワーク48は、PLC4の専用のネットワークであり、各種機器や各種入出力信号、センサ信号などの入力及び出力をするために使用される。このために、PLC4側には、PLCネットワーク48に接続するためのPLCネットワークインタフェースユニット44が、PLC4のベースユニット41のスロットに装着されている。
【0105】
PLC4は、各種の機械や装置などの制御を行う汎用的な制御装置であり、本発明に係るブッシュ圧入装置100を構成するブッシュ圧入機1、マテハンロボット2及び回転シフト機構3並びにこれらを構成するシリンダ16、18等の制御を行う。
PLC4は、その作動制御を実現するための制御プログラムをユーザが作り込むことが可能に構成されていることから「プログラマブルコントローラ」と呼ばれている。PLC4の構成は、各メーカによって或いは機種によって異なる。本実施例のPLC4は、図17に示すように、略横長平板状に形成された基台となるベースユニット41に、電源ユニット42、CPUユニット40を装着したものを基本構成とし、その他用途に応じてデジタル信号や接点信号又はアナログ信号などの外部信号の入出力を行う入出力ユニット45などを装着可能に構成されたものである。なお、PLC4は、制御盤(不図示)に収納され所定の位置に取り付けられる。
【0106】
ベースユニット41は、略横長平板状に形成された基台となるユニットであり、例えば外周は鉄板を加工して形成され、その内面に前記CPUユニット40等のユニットを装着可能にすると共に、前記CPUユニット40と電気的に接続して回路を構成するための各種信号線(「バス」と呼ばれる)及び当該各種信号線に接続可能とする接続用コネクタが所定の間隔で搭載されたプリント基板(不図示)を収納している。したがって、前記接続用コネクタに、各種入出力ユニット、通信ユニット、デバイス対応のコントロールユニットなどをユニット単位で装着することによって用途に応じた制御装置を構成することができる。
【0107】
CPUユニット40は、PLC4の頭脳となるユニットである。CPUユニット40は、例えば、図示しない(1)CPU(Central Processing Unit)、(2)制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、バッテリーバックアップされたRAM(Random Access Memory)又は/及びフラッシュメモリ(Flash Memory)などの不揮発性メモリ、(3)データを格納するバッテリーバックアップされたRAM又はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、(4)前記CPUへデジタル信号や接点信号又はアナログ信号などの外部信号の入出力を行う入出力ポート、(5)外部機器と接続する通信ポートやEthernetインタフェースなどから構成され、これらの回路はプリント基板上に搭載されて略方形状のケース内に収容されて電子計算機を構成している。
【0108】
PLC4の制御プログラムは、一般的にはラダー論理が使用されているが、シーケンシャル・ファンクション・チャート(Sequential function chart)やSFC言語などを用いて作成することもできる。また、制御プログラムの設計・制作や保守業務を総合的にサポートするためのパーソナルコンピュータ上で稼働するエンジニアリングソフトウェアがメーカから提供されている。
【0109】
電源ユニット42は、前記ベースユニット41に装着された前記CPUユニット40をはじめとする各ユニットに直流電源を供給するユニットであり、商用電源から例えばDC24V電圧を作り出して各部に供給する。
【0110】
また、この場合におけるPLC4の構成例は、図17に示すように、ベースユニット41に、電源ユニット42、CPUユニット40、PLCネットワークインタフェースユニット44の他に、接点信号などの入出力を行うための入出力ユニット45が装着されている。そして、PLCネットワーク48には、前記ロボットコントローラ20が接続されており、PLCネットワークインタフェースユニット44を介してロボットコントローラ20に制御信号やデータを出力すると共に、マテハンロボット2の動作状況等のモニタを行う。
【0111】
ロボットコントローラ20は、図17に示すように、前記PLCネットワーク48に接続されており、PLCネットワークインタフェースユニット44を介してCPUユニット40から送信されてきた制御信号やデータに基づき、マテハンロボット2に駆動信号を出力する。マテハンロボット2は、当該駆動信号に基づき作動する。
なお、ロボットコントローラ20も前記CPUユニット40と同様に、内部に(1)CPU、(2)制御プログラムを格納するROM、バッテリーバックアップされたRAM又は/及びフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ等を内蔵しており、電子計算機を構成している。
【0112】
<発明の効果>
本発明は、以上のように構成されているために、1機の設備で複数車種のブッシュの圧入を可能としている。これにより、設備数を低減し、もって省スペース化と投資費用の削減を図ることができる。
【0113】
また、前記ブッシュ圧入機1は、側面視略C字状に形成された支持フレーム11と、
その下方に立設された前記ブッシュを圧入するプレス機12と、ワーク8の上部を係止すると共に、前記回転シフト機構3から供給された前記ブッシュが載置されたブッシュ治具60を係止し、
当該ブッシュを正寸よりも奥に圧入し、圧入後ブッシュの所定の引き戻し及び前記係止を解除する引き戻し機構と、から構成されているために、ワーク8に使用される2種類のブッシュの供給及び空となったブッシュ治具60、70の回収を適時に行えると共に、ブッシュの圧入及び引き戻しの1回作動により、ブッシュを適正な状態に簡単に圧入することができる。
【0114】
また、前記引き戻し機構は、ブッシュの圧入前に前記第一ブッシュ6のブッシュ芯金61の両端部及びブッシュ治具60のベース部66に穿設された連通孔69と、プレス機12のブッシュ支持台部13の側面に穿設された係止ロッド挿通孔13cとを貫通して係止し、当該係止状態でプレス機12の下降時に引き戻しを行い、引き戻し後に係止を解除する係止ロッド18bを備えているために、簡単な構成で、プレス機12の下降作動を利用して圧入したブッシュの引き戻しを行うことができる。
【0115】
また、前記回転シフト機構3は、ブッシュ治具把持部39a、39bを回転させる回転機構31と、回転機構31の移動、前記ブッシュ圧入機1に前記ブッシュが載置されたブッシュ治具60、70の供給及び回収作動を可能とするスライド機構32と、を備えているために、プレス機12の作動と干渉することがなく、また、ブッシュの圧入が終了したワーク8を未圧入のワーク8と取り換える間に前記ブッシュが載置されたブッシュ治具60、70をブッシュ治具把持部39a、39bに載置することができるため、ブッシュ圧入機1のタクトタイムに合わせて切れ目なくブッシュを供給することができる。
【0116】
また、前記第一ブッシュ6は、両端部を幅広に形成して連結孔62が穿設され、中央部を狭幅に形成したブッシュ芯金61と、当該ブッシュ芯金61の前記中央部を略円柱状に囲繞する弾性部63と、から構成されているために、第一ブッシュ6が圧入されたワーク8をサスペンションメンバー(不図示)に連結する際に、従来、車体に設けられた取付孔と当該ブッシュの内筒部71の貫通孔74とに、例えば、ボルトを挿通し、ナット等を用いて連結固定されているが、本発明に係る第一ブッシュ6を使用すれば、すでに、ブッシュ芯金61が挿通されているために、第一挿入孔82にボルトを挿通する必要がなく、そのままナット等を用いて連結することができる。
【0117】
また、ブッシュ芯金61とゴム等の弾性部63とが一体化されているために、ワーク8に穿設されている第一挿入孔82に正寸よりも奥に圧入し、圧入後所定の引き戻しをする際に、連結孔62に前記係止ロッド18bを挿通して係止させ、プレス機12のロッド12bの戻りを利用して引き戻しすることができるため、ブッシュを適正な状態に、すなわち、前記第一挿入孔82の上下両端に、いわゆる「耳部」を形成することができる。以上のように、本発明によればブッシュを簡単に圧入することができると共に、適正状態に圧入するために、正方向への圧入と、逆方向への圧入を交互に繰り返し行う必要がない。
【0118】
また、前記ブッシュ治具60、70は、略円盤状に形成された鍔部65、75と、鍔部65、75に垂設した略逆台形状のベース部66、76と、前記鍔部65、75の上部に形成された略円柱状のセット部67、77と、から構成され、前記セット部67、77、鍔部65、75及びベース部66、76に、前記車種に対応するブッシュごとに、それぞれの外形に対応した嵌入可能なブッシュ嵌入孔68、78を穿設し、前記ベース部66、76には、前記ブッシュ芯金61の両端部に穿設された連結孔62と連通可能に穿設された連通孔69、79が設けられている。したがって、第一ブッシュ6と第二ブッシュ7のように、その外形が車種ごとに異なっても、これらの外形の相違は前記ブッシュ嵌入孔68、78の形状で吸収し、しかも前記ベース部66、76及び鍔部65、75の外形は、複数車種において共通化している。このため、前記回転シフト機構3に設けたブッシュ治具把持部39a、39bや前記ブッシュ圧入機1へブッシュ治具60、70の供給及び回収をする回転シフト機構3は、前記外形が共通化されたベース部66、76を把持すれば済む。
本発明に係るブッシュ圧入装置100は、以上のように構成されているために、1機の設備で複数車種のブッシュの圧入が可能となり、設備数を低減し、もって省スペース化と投資費用の削減を図ることができる。
【0119】
本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更した構成、公知発明及び上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更した構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0120】
1 ブッシュ圧入機
2 マテハンロボット
3 回転シフト機構
4 制御装置(PLC4)
5 マテハン治具置場
6 第一ブッシュ
7 第二ブッシュ
8 ワーク
10 架台
10a 水平支柱
11 支持フレーム
11a 柱部
11b 水平台
11c ワーク受け部
12 プレス機
12a 本体部
12b ロッド
13 ブッシュ支持台部
13a ブッシュ載置部
13b 支持台陥入孔
13c 係止ロッド挿通孔
15 バックアップピン押板
15b バックアップピン
15c バックアップピンスライド孔
16、18 シリンダ
16a、18a ピストンロッド
17 ブラケット
18b 係止ロッド
20 ロボットコントローラ
21 ロボットアーム
22 手首軸
24 ロボット側ツールチェンジャ
30 架台
31 回転機構
32 スライド機構
33 フレーム
35 スライド軸
36 サーボモータ
36a 回転軸
37 ブラケット
38a~d ブッシュ治具支持バー
39a、b ブッシュ治具把持部
40 CPUユニット
41 ベースユニット
42 電源ユニット
44 PLCネットワークインタフェース
45 入出力ユニット
48 PLCネットワーク
50 マテハン治具
52 ツール側ツールチェンジャ
53 ワーク支持部
54 クランプ
54a 押え棒
55a、b 基準ピン
56 引っかけ部
60、70 ブッシュ治具
61 ブッシュ芯金
62 連結孔
63、73 弾性部
65、75 鍔部
66、76 ベース部
67、77 セット部
68、78 ブッシュ嵌入孔
69、79 連通孔
71 内筒部
72 外筒部
74 貫通孔
76a 支柱
81 アーム部
82 第一挿入孔
82a 連結部
83 第二挿入孔
84 抜孔
90 台座
91 ワーク搬送ライン
92 ワーク搬送ライン
93 ブッシュ供給ライン
100 ブッシュ圧入装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18