IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社井元製作所の特許一覧

<>
  • 特開-塗工機 図1
  • 特開-塗工機 図2
  • 特開-塗工機 図3
  • 特開-塗工機 図4
  • 特開-塗工機 図5
  • 特開-塗工機 図6
  • 特開-塗工機 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069000
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】塗工機
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/00 20060101AFI20220428BHJP
   B05C 11/02 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B05C11/00
B05C11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177890
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】596041847
【氏名又は名称】株式会社井元製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】井元 俊之
【テーマコード(参考)】
4F042
【Fターム(参考)】
4F042AA02
4F042AB00
4F042BA04
4F042DD07
4F042DD19
4F042DD24
4F042DF07
4F042DH02
4F042ED10
(57)【要約】
【課題】作業者が安全に塗工作業を行うことができる塗工機を提供する。
【解決手段】塗工機1は、左右側方に溝穴2が形成された本体3と、本体3との間に隙間を形成し、本体3の上方に設けられた塗工板5と、塗工板5の左右側方に、本体3から突き出して設けられ、溝穴2を介して、前後方向Xに移動する一対の可動部6とを備え、可動部6の可動範囲に対応する位置に形成されている隙間に指詰防止材11が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右側方に溝穴が形成された本体と、
前記本体との間に隙間を形成し、前記本体の上方に設けられた塗工板と、
前記塗工板の左右側方に、前記本体から突き出して設けられ、前記溝穴を介して、前後方向に移動する一対の可動部と、を備え、
前記可動部の可動範囲に対応する位置に形成されている前記隙間に指詰防止材が設けられている、
ことを特徴とする塗工機。
【請求項2】
前記溝穴の高さが、4mm以下で形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載された塗工機。
【請求項3】
前記溝穴が、前記本体の側方に向けて開口し、
前記可動部が、前記溝穴から側方に向けて突出する基部と、この基部から上方に向けて形成される突起部とを有する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された塗工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全に塗工作業ができる塗工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺帯状のウェブ(巻取紙)に塗工剤を塗布する塗工装置において、公知のバーコーター等を塗工ヘッドに用いることができる塗工装置が提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1に記載の塗工装置は、公知のバーコーター等を用いることができるものの、ウェブの供給ロール、巻取ロール及び複数のガイドロールを備え、さらに乾燥炉及び乾燥室が設けられているため、比較的大型で、卓上で使用することが困難なものであった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献2には、基材が固定保持される塗工台と、取付部材に脱着可能に取り付けられる塗工器具と、取付部材が連結された移動枠体と、を備える塗工機が提案されている。この特許文献2に記載の塗工機は、公知のバーコーターやアプリケーター等の塗工器具を用いて、フィルム状、シート状または板状の基材の表面に、自動で均一に被覆剤(塗工剤)を塗布するものであり、卓上で使用することができる小型の塗工機である。
【0004】
この特許文献2に記載の塗工機は、移動枠体を塗工台上で基材に沿って平行移動させることで、塗工器具を塗工台上の基材に均一な圧力で接触させながら移動させて、基材の表面に均一に被覆剤を塗布する。そのため、塗工台を支える支承テーブルには開口溝が設けられており、この開口溝に移動枠体の側壁が挿入されることで、移動枠体は、この開口溝を介して、開口溝に沿って平行移動する。
【0005】
また、特許文献2に記載の塗工機では、塗工台が支承テーブルの上に直接載置されている。これに対し、市販の印刷機または塗工機(以下「塗工機等」という。)では、塗工台が塗工機等の本体の上部に直接載置されるのではなく、塗工板が、塗工機等の本体の上方に、架台を介して設けられたものが存在する。これらの塗工機等は、架台を備えることで、塗工剤の塗布後、塗工板の洗浄をする際に、塗工板が塗工機等の本体から取り外しやすく構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-185434号公報
【特許文献2】実開昭62-109776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上記した塗工機等では、移動枠体を平行移動させるための開口溝に、塗工機を使用する作業者が指を詰め、この状態で移動枠体が移動を開始してしまうと、移動枠体に指が挟まれてしまうおそれがあった。
【0008】
さらに、架台を備える塗工機等では、塗工機本体と塗工板との隙間にも作業者が指を詰めてしまった場合に、移動枠体が移動を開始してしまうと、移動枠体に指が挟まれてしまうおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、作業者が安全に塗工作業を行うことができる塗工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る塗工機は、左右側方に溝穴が形成された本体と、本体との間に隙間を形成し、本体の上方に設けられた塗工板と、塗工板の左右側方に、本体から突き出して設けられ、溝穴を介して、前後方向に移動する一対の可動部と、を備え、可動部の可動範囲に対応する位置に形成されている隙間に指詰防止材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る塗工機は、溝穴の高さが、4mm以下で形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る塗工機は、溝穴が、本体の側方に向けて開口しており、可動部が、溝穴から側方に向けて突出する基部と、この基部から上方に向けて形成される突起部とを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る塗工機は、本体との間に隙間を形成し、本体の上方に設けられた塗工板と、塗工板の左右側方に、本体から突き出して設けられ、前後方向に移動する一対の可動部と、を備え、可動部の可動範囲に対応する位置に形成されている隙間に指詰防止材が設けられている。そのため、作業者が、本体と塗工板との間の隙間に指を詰めることがなく、移動する可動部によって、指が挟まれることを防止できる。
【0014】
本発明に係る塗工機は、本体の左右側方に形成された溝穴の高さが、4mm以下で形成されているため、溝穴は作業者の指が入らない高さで形成されている。したがって、作業者が作業中に誤って溝穴に指を詰めてしまうことがなく、移動する可動部によって指が挟まれることを防止できる。
【0015】
本発明に係る塗工機は、溝穴が、本体の側方に向けて開口し、可動部が、溝穴から側方に向けて突出する基部と、この基部から上方に向けて形成される突起部とを有している。したがって、本発明に係る塗工機では、溝穴が、本体の側方に向けて開口しているため、塗工板から塗工剤が本体に垂れてしまった場合でも、塗工剤が溝穴に侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る塗工機の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る塗工機を左側方から視た側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る塗工機の背面図である。
図4】本発明の実施形態に係る塗工機の動作を説明するための斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る塗工機において、本体に設けられた溝穴を示す拡大図である。
図6】本発明の実施形態に係る塗工機の動作を説明するための斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る塗工機において、本体に設けられた指詰防止材を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態に係る塗工機を、図1から図7に基づいて説明する。
なお、図1に示す塗工機1を基準として、塗工機1の長手方向を前後方向X、塗工機1の短手方向を左右方向Yとし、図2に示す塗工機1を基準として、高さ方向を上下方向Zとする。
【0018】
本実施形態に係る塗工機1は、卓上で使用される小型の塗工機であり、例えば、市販のバーコーター、アプリケーターまたはドクターブレード等の塗工器具を使用して、フィルム状、シート状または板状の基材の表面に、自動で塗工剤を塗り拡げるものである。塗工機1には、種々の塗工器具(塗工剤を含む。)を用いることができ、基材の種類、塗工剤の粘度及び塗工剤による被覆の厚み等を考慮して選択される。
【0019】
塗工機1は、図1及び図2に示すように、本体3と、本体3の上下方向Zの上方に、架台4を介して設けられた塗工板5と、塗工板5の左右方向Yの左右側方に、本体3から突き出して設けられて、前後方向Xに移動する一対の可動部6と、本体3と塗工板5との間形成された隙間に設けられた指詰防止材11と、を備えている。
【0020】
本体3は、図1から図3に示すように、直方体の平箱状に形成され、金属製または樹脂製の板材に覆われている。具体的には、本体3は、下面を構成する長方形状の底板(図示せず)と、側面を構成する長方形状の側板7と、上面を構成する長方形状の上面板8と、によって覆われている。側板7は、底板の前後方向X及び左右方向Yの四方の端部から上方に向けて形成されており、上面板8は、側板7に上方から載置されている。また、底板と側板7、側板7と上面板8は互いに固定されている。さらに、本体3の底板における四隅には、下方に突出して本体3を支える脚体9が設けられている(図2及び図3)。
【0021】
上面板8は、三枚の長方形状の板片で構成されている(図2)。具体的には、二枚の板片である前端片8A及び後端片8B及び一枚の板片である中央片8Cで構成されている。前端片8A、後端片8B及び中央片8Cは、左右方向Yの長さが、左右の側板7間に架け渡すことができる長さで、それぞれ形成されている。前端片8A及び後端片8Bは、側板7の前側及び後側において、左右の側板7間に跨って、上方から載置されている。また、中央片8Cは、前端片8Aの後側、及び後端片8Bの前側において、前後方向Xの両端を重ねて載置されている。
【0022】
前端片8A及び後端片8Bは、本体3の上面の前端部分及び後端部分を構成し、前後方向Xにおいて、一定の間隔を設けて配置されている。中央片8Cは、この前端片8A及び後端片8Bの上方から、前端片8Aと後端片8Bとの間に跨って架け渡されて、本体3の上面の中央部分を構成する。また、前端片8A及び後端片8Bは、それぞれ側板7に固定され、中央片8Cは、前端片8A及び後端片8Bの上に載置されて固定される。
【0023】
前端片8A及び後端片8Bの左右方向Yの端部は、左右の側板7に接している。一方で、中央片8Cの左右の端部は、左右の側板7に接しておらず、側板7の上端との間には、空間が形成される。すなわち、中央片8Cは、前端片8A及び後端片8Bに跨って、それぞれの上に載置されたことで、前端片8A及び後端片8Bよりも、前端片8A及び後端片8Bの厚みだけ高い位置に配置されている。したがって、前端片8A及び後端片8Bの上に載置された部分を除いて、中央片8Cの左右の端部と、左右の側板7の上端との間には、前端片8A及び後端片8Bの厚みぶんの空間が形成されている。この空間が、本体3の左右方向Yの左右側方に形成される溝穴2となり、可動部6が移動するための可動路として機能する。
【0024】
溝穴2は、本体3の上部の左右側方において、左右対称に形成されている。具体的には、溝穴2は、図4及び図5に示すように、中央片8Cと、左右の側板7の上端との間に形成されており、本体3の側方に向けて開口している。溝穴2は、可動部6の可動路として形成されているため、前後方向Xに向けて、細長い孔として形成されている。また、この溝穴2は、上下方向Zの高さhが4mm以下に形成されている。なお、溝穴2の高さhは、JIS B 9718で規定された「定形開口部を通過しての到達安全距離(上肢)」に基づき決定した。
【0025】
本体3の内部には、可動部6を移動させるための駆動部(図示せず)が設けられ、本体3の左側の側板7には、塗工機1の電源スイッチ3A、可動部6の移動または停止を切り替える運転切替スイッチ3B、可動部6の移動を緊急停止させる塗工停止ボタン3C、可動部6の移動速度を調整する速度調整つまみ3Dが設けられている(図2)。一方、本体3の右側の側板7には、ACアダプタ3Eが設けられており、このACアダプタ3Eを介して外部電源から電力が供給される(図3)。
【0026】
塗工板5は、板状かつ長方形状の部材であり、ガラス素材で構成されている。この塗工板5は、中央片8Cよりも小さく形成されており、中央片8Cの上面の四隅に固定された架台4の上に載置されている。
架台4は、直方体の平箱状に形成され、金属製、樹脂製または弾性素材から構成されている。この架台4は、中央片8Cの上面の四隅に配置されている。また、それぞれの架台4は、図6及び図7に示すように、塗工板5の四隅の角に対応して、上面の一部が窪んで切り欠かれて、窪み部4Aが形成されている。この窪み部4Aに、塗工板5の四隅を嵌め込むことで、塗工板5は、架台4の上に載置される。
なお、塗工板5は、架台4から容易に取り外すことができるため、塗工剤の塗布後には、塗工板5を架台4から取り外し、塗工板5の洗浄を容易に行うことができる。
【0027】
塗工機1には、塗工板5の後方に挟持部10が一つ設けられている。この挟持部10は、金属製及び樹脂製の部材であり、基材を塗工板5の上面に保持するために使用される。挟持部10は、立方体形状に形成された台座部10Eを有しており、この台座部10Eが、本体3の後端片8Bの上面に固定されている。また、この台座部10Eの上面には、内側にばね10Dを備える支持部10Cが固定されている。この支持部10Cの上部には、前後方向Xを長手方向として長方形状に形成され、支持部10Cから後方に向けて伸びる押下部10B及び長方形状に形成されると共に、押下部10Bの前端に連接され、支持部10Cから前方に向けて伸びる挟持片10Aが設けられている(図2及び図3)。挟持部10は、この挟持片10Aの先端が塗工板5の上面後端に接しており、塗工板5の上面に載置される基材の後端を、挟持片10Aの先端と塗工板5の上面とで挟持することで、基材を保持する。
【0028】
可動部6は、本体3に形成された溝穴2から、上方に向けて突き出して設けられている(図3)。この可動部6は、金属製または樹脂製の部材である。可動部6は、塗工板5の左右側方において、左右対称に一対で設けられており、溝穴2を介して、かつ、溝穴2に沿って、前後方向Xに移動する(図4)。
この可動部6は、図5に示すように、板状の基部6Aと、この基部6Aの先端に連接されて、上方に向けて伸びる板状の突起部6Bと、を有している。基部6Aは、本体3の内部から、溝穴2を介して、外部に突出し、突起部6Bは、基部6Aの先端から垂直に上方に向けて連接され、可動部6は、L字形に形成されている。基部6Aの厚みは4mmよりも薄く形成され、突起部6Bは可動部6を安定的に支える部材として、十分な厚みをもって形成されている。
【0029】
基部6Aは、本体3の内部において、駆動部に連結されており、電源スイッチ3A、運転切替スイッチ3B、塗工停止ボタン3C及び速度調整つまみ3Dに連動して、可動部6の前後方向Xへの移動が制御されている。また、突起部6Bの下端は、本体3の左右の側板7の上端に載置されており、可動部6は、前後方向Xに滑らかに移動可能である。
【0030】
一対の突起部6Bの上部は、連結棒6Cによって連結されており、この連結棒6Cは、塗工板5の上方に配置される。連結棒6Cは、一対の可動部6が揃って移動することを補助すると共に、塗工板5の上面に載置される塗工器具であるアプリケーターまたはドクターブレード等を連結するために使用される。
【0031】
各突起部6Bの内側には、板状の部材である押さえ部6Dが、連結されている(図4)。押さえ部6Dは、連結棒6Cから斜め前方の下方に向かって、形成されており、一端が連結棒6Cに回動可能に連結されている。押さえ部6Dの他端の先端部6Eは、塗工板5の左右側面に重なる程度の長さに形成されている。押さえ部6Dは、塗工機1を使用する際に、可動部6の前方に載置される塗工器具を斜め前方の上方から押さえるために用いられる。
【0032】
また、連結棒6Cには、連結棒6Cの左側の端部に、レバー部6Fが形成されている(図4)。レバー部6Fは、連結棒6Cに固定され、連結棒6Cから斜め上方の後方に向けて突き出した棒状の部材である。可動部6は、このレバー部6Fの先端を作業者が手で把持し、連結棒6Cを支点として押下げることで、押さえ部6Dの先端部6Eを上方に向けて持ち上げることができる。そして、先端部6Eが持ち上げられた状態で、先端部6Eの下方に塗工器具を載置し、その後、先端部6Eを下ろし、塗工器具を押さえる。
【0033】
押さえ部6Dには、おもり受け部6Gが形成されている(図4)。このおもり受け部6Gは、先端部6Eの上面から、この上面に対して垂直に張り出す細い棒状の部材である。おもり受け部6Gには、貫通孔が形成されたおもりが取り付けられる。任意のおもりをおもり受け部6Gに取り付けることで、押さえ部6Dが塗工器具を押さえる際の荷重を調整する。これにより、塗布される塗工剤の粘度等を考慮して、塗工剤による被膜の厚さを調整することができる。
【0034】
指詰防止材11は、直方体の平箱状に形成された金属製、樹脂製または弾性素材からなる部材である。この指詰防止材11は、塗工板5と中央片8Cとの間、かつ、前方の架台4及び後方の架台4の間に形成される隙間に設けられている(図6)。指詰防止材11は、前後方向Xの長さが、前方の架台4と後方の架台4との距離とほぼ同じ長さに形成され、高さが塗工板5の下面と中央片8Cの上面との距離と同じ高さに形成されている。すなわち、指詰防止材11は、隙間と同じサイズであり、隙間全体を埋めるように設けられる。
なお、指詰防止材11は、少なくとも、可動部6の前後方向Xの可動範囲に対応する位置に形成されている隙間に設けられていればよい。
【0035】
次に、塗工機1における可動部6の動作について説明する。
【0036】
可動部6は、塗工機1の使用前は、塗工板5の後方に配置されている(図4及び図6に破線で図示)。そして、塗工機1の使用時には、可動部6が、前方(図4及び図6に示す矢印方向)に向かって、塗工板5の後端から前端までを、自動で水平移動する。
なお、可動部6の移動の開始、停止及び速度の調整は、運転切替スイッチ3B、塗工停止ボタン3C及び速度調整つまみ3Dで制御する。
【0037】
次に、塗工機1における塗工剤の塗布方法について説明する。なお、塗工器具としてバーコーターを用いた場合を例として説明する。
【0038】
まず、塗工剤を塗布する基材を塗工板5の上面に載置する。この際、載置された基材の後端を、挟持部10の挟持片10Aの先端と塗工板5の上面とで挟み、基材がずれないように保持する。
【0039】
次に、バーコーターを塗工板5及び基材の上に載置する。バーコーターの左右両端は、可動部6の突起部6Bの前方に配置される。具体的には、可動部6のレバー部6Fの先端を押下げて、押さえ部6Dの先端部6Eを上方に持ち上げた状態で、突起部6Bの前方にバーコーターを配置し、この配置されたバーコーターの斜め前方の上方から、押さえ部6Dを下ろす。そして、塗布される塗工剤の粘度及び塗工剤による被覆の厚み等を考慮して、必要があればおもり受け部6Gに、おもりを取り付け、押さえ部6Dでバーコーターを押さえる。
【0040】
続けて、適量の塗工剤をバーコーターの前方の塗工板5の上面に供給する。そして、本体3の速度調整つまみ3Dで可動部6の移動速度を調整した後に、運転切替スイッチ3Bで可動部6の移動を開始させる。そうすると、可動部6が前方に水平移動することで、バーコーターが基材に塗工剤を塗り拡げる。これにより、基材の表面に、安定して、かつ、均一な厚さで塗工剤が塗布される。
【0041】
次に、本実施形態に係る塗工機1の作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態に係る塗工機1は、本体3の左右側方に、前後方向Xに沿った溝穴2が形成されており、本体3の上方に、架台4を介して塗工板5が設けられている。そして、塗工板5の左右側方には、本体3から突き出して設けられ、溝穴2を介して、一対の可動部6が前後方向Xに移動する。塗工機1では、塗工板5と本体3との間に形成された隙間に、指詰防止材11が設けられ、塗工板5と本体3との隙間全体が指詰防止材11によって埋められている(図7)。そのため、可動部6の可動範囲において、作業者が作業中に指100を詰め、移動する可動部6によって指100が挟まれることを防止できる。
【0043】
また、本実施形態に係る塗工機1では、溝穴2の高さhが4mm以下で形成されている。この高さhは、作業者の指100が入らない高さである。したがって、作業者が作業中に溝穴2に指100を詰め、移動する可動部6によって指100が挟まれることを防止できる。
【0044】
また、塗工板5と本体3との間に形成された隙間に指詰防止材11を設けるだけで、作業員は安全に塗工機1を使用できるため、安価で十分に安全対策をすることができる。
【0045】
さらに、塗工機1では、溝穴2が、本体3の左右方向Yの側方に向けて開口している。そのため、塗工板5から塗工剤が本体3に垂れてしまった場合でも、塗工剤が溝穴2に侵入しにくく、塗工機1の清掃等の手入れを容易に行うことができる。
【0046】
以上、塗工機1を本実施形態として詳述したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0047】
本実施形態に係る塗工機1の指詰防止材11は、一体的に形成されたものでも、複数の部材が連結させたものでもよい。
また、この指詰防止材11は、隙間全体でなく、複数の指詰防止材11を、間隔を空けて設けても良い。この場合、指詰防止材11の間隔は、4mm以下が好ましい。
【0048】
本実施形態では、本体3が、底板、側板7及び上面板8の別々の板材で覆われている例を示したが、これに限定されるものではなく、本体3が、一体として形成された筐体で覆われていてもよい。また、この場合には、本体3に設けられる溝穴2は、筐体の一部が切り欠かれて形成されたものでよい。さらに、前端片8A、後端片8C、及び中央片8Cが、上面板として一つの部材として形成されているものでもよい。
【0049】
また、塗工機1では、挟持部10の代わりに、塗工板5の上の基材におもりを載置して保持するもの、または、塗工板に上下方向に貫通する複数の孔を設け、この孔から空気を吸引することで、真空吸盤として機能する塗工板で基材を保持するものであってもよい。
【0050】
本実施形態に係る塗工機1の塗工板5は、樹脂製または金属製でもよく、必要であれば、熱線等を備えて表面を加熱できるものとして構成してもよい。また、本実施形態に係る塗工機1では、溝穴2が、貫通可能な孔として構成された実施形態を示したが、溝穴2が、本体3を凹状に窪ませたレールとして形成され、この溝穴2を、ローラー等の走行手段を備えた可動部が走行するものとして構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 塗工機
2 溝穴
3 本体
3A 電源スイッチ
3B 運転切替スイッチ
3C 塗工停止ボタン
3D 速度調整つまみ
3E ACアダプタ
4 架台
4A 窪み部
5 塗工板
6 可動部
6A 基部
6B 突起部
6C 連結棒
6D 押さえ部
6E 先端部
6F レバー部
6G おもり受け部
7 側板
8 上面板
8A 前端片
8B 後端片
8C 中央片
9 脚体
10 挟持部
10A 挟持片
10B 押下部
10C 支持部
10D ばね
10E 台座部
11 指詰防止材
100 指
h 高さ
X 前後方向
Y 左右方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7