(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069005
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】測定装置、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/23 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
G01N21/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177911
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 良浩
(72)【発明者】
【氏名】藤木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山岡 久紘
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059BB08
2G059BB16
2G059EE02
2G059EE05
2G059FF01
2G059GG01
2G059JJ12
2G059JJ15
2G059JJ19
2G059JJ20
2G059JJ22
2G059KK04
2G059LL01
2G059MM01
2G059NN01
(57)【要約】
【課題】試料表面での複屈折特性を正確に測定することができる測定装置、及び測定方法を提供する。
【解決手段】本実施形態にかかる測定装置100は、照明光L1を発生する光源11と、
照明光L1で照明された試料30からの反射光L2を検出する光検出器43と、照明光L1を試料30の表面に集光する対物レンズ24を有し、照明光L1を試料30に導くとともに、試料30で反射した反射光L2を光検出器43に導くコンフォーカル光学系110と、対物レンズ24からの反射光が入射するように、コンフォーカル光学系110内に回転可能に配置された検光子42と、検光子42の回転角度を変えて撮像された複数のコンフォーカル画像に基づいて、試料30の表面の複屈折特性を算出する処理部60とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を発生する光源と、
前記照明光で照明された試料からの反射光を検出する光検出器と、
前記照明光を試料の表面に集光する対物レンズを有し、前記照明光を試料に導くとともに、前記試料で反射した反射光を前記光検出器に導くコンフォーカル光学系と、
前記対物レンズからの反射光が入射するように、前記コンフォーカル光学系内に回転可能に配置された検光子と、
前記検光子の回転角度を変えて撮像された複数のコンフォーカル画像に基づいて、前記試料の表面の複屈折特性を算出する処理部と、を備えた測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記複屈折特性として、複屈折の主軸方位及び複屈折位相差の少なくとも一方を算出することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記検光子の回転角度において基準角度を0°とした場合に、前記検光子の回転角度が0°、45°、90°、及び135°の時の前記コンフォーカル画像を撮像している請求項1、又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記反射光の光路中に回転可能に配置された1/4波長板をさらに備え、
前記1/4波長板を透過した反射光が前記検光子に入射しており、
前記1/4波長板の回転角度を変えて、複数のコンフォーカル画像を撮像している請求項1~3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記試料が、円偏光の前記照明光で照明されている請求項1~4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記照明光及び前記反射光の光路中に配置された微分干渉プリズムをさらに備えた請求項1~5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
照明光を発生する光源と、
前記照明光で照明された試料からの反射光を検出する光検出器と、
前記照明光を試料の表面に集光する対物レンズを有し、前記照明光を試料に導くとともに、前記試料で反射した反射光を前記光検出器に導くコンフォーカル光学系と、
前記対物レンズからの反射光が入射するように、前記コンフォーカル光学系内に回転可能に配置された検光子と、を備えたコンフォーカル顕微鏡を用いた測定方法であって、
前記検光子の回転角度を変えて、複数のコンフォーカル画像を取得するステップと、
前記複数のコンフォーカル画像に基づいて、前記試料の表面の複屈折特性を算出するステップと、を備えた測定方法。
【請求項8】
前記複屈折特性として、複屈折の主軸方位及び複屈折位相差の少なくとも一方を算出することを特徴とする請求項7に記載の測定方法。
【請求項9】
前記検光子の回転角度において基準角度を0°とした場合に、前記検光子の回転角度が0°、45°、90°、及び135°の時の前記コンフォーカル画像を撮像している請求項7、又は8に記載の測定方法。
【請求項10】
前記反射光の光路中には、回転可能に設けられた1/4波長板が配置されており、
前記1/4波長板を透過した反射光が前記検光子に入射しており、
前記1/4波長板の回転角度を変えて、複数のコンフォーカル画像を撮像している請求項7~9のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項11】
前記試料が、円偏光の前記照明光で照明されている請求項7~10のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項12】
前記照明光及び前記反射光の光路中には微分干渉プリズムが配置されている請求項7~11のいずれか1項に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検光子を用いて複屈折率を測定する装置が開示されている。特許文献1では、直線偏光又は円偏光のディスク基板に入射させている。ディスク基板からの透過光又は反射光を検光子に導いている。検光子を回転させ、検光子を透過して光検出器に入射した光量の変化から複屈折率を測定している。
【0003】
非特許文献1には、位相シフト法を用いた2次元複屈折率測定方法が開示されている。非特許文献1では、試料に入射する入射光が円偏光となっている。試料を透過した透過光が、1/4波長板及び検光子を介して光検出器で検出されている。1/4波長板を0°と45°に変化させている。さらに、検光子が0~135°の間で45°毎に回転している。そして、8枚の画像により複屈折の主軸方位及び大きさが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「位相シフト法による2次元複屈折測定」 大谷幸利、吉澤 徹 光学 27巻12号 1998年pp698~703
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SiCやGaNに代表される化合物半導体や、圧電結晶などの高品位結晶では、表面形状に現れる結晶欠陥以外にも、様々な検査を行うことが望まれる。例えば、結晶性の結晶歪みや複屈折性と表面凹凸で直接測定できない光学特性を検査、評価することが望まれる。
【0007】
このような光学特性は、X腺トポグラフィ、干渉計、分光光度計で行うことができる。しかしながら、試料を透過した透過光を測定するため、試料の最表面の特性を正しく測定することが困難である。また、上記の測定法では、表面の凹凸形状の影響を受けやすいため、表面を研磨する必要がある。
【0008】
非特許文献1では、透過光を検出しているため、試料の表面状態の特性を測定することが困難である。特許文献1においても、試料の表面からの反射光と、試料の裏面からの反射光が検出されてしまうため、表面状態に関する測定を正確に行うことが困難である。
【0009】
本開示は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、試料表面での複屈折特性を正確に測定することができる測定装置、及び測定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の一態様にかかる測定装置は、照明光を発生する光源と、前記照明光で照明された試料からの反射光を検出する光検出器と、前記照明光を試料の表面に集光する対物レンズを有し、前記照明光を試料に導くとともに、前記試料で反射した反射光を前記光検出器に導くコンフォーカル光学系と、前記対物レンズからの反射光が入射するように、前記コンフォーカル光学系内に回転可能に配置された検光子と、前記検光子の回転角度を変えて撮像された複数のコンフォーカル画像に基づいて、前記試料の表面の複屈折特性を算出する処理部と、を備えている。
【0011】
上記の測定装置において、前記処理部は、前記複屈折特性として、複屈折の主軸方位及び複屈折位相差の少なくとも一方を算出してもよい。
【0012】
上記の測定装置において、前記検光子の回転角度において基準角度を0°とした場合に、前記検光子の回転角度が0°、45°、90°、及び135°の時の前記コンフォーカル画像を撮像していてもよい。
【0013】
上記の測定装置は、前記反射光の光路中に回転可能に配置された1/4波長板をさらに備え、前記1/4波長板を透過した反射光が前記検光子に入射しており、前記1/4波長板の回転角度を変えて、複数のコンフォーカル画像を撮像してもよい。
【0014】
上記の測定装置において、前記試料が、円偏光の前記照明光で照明されていてもよい。
【0015】
上記の測定方法において、前記照明光及び前記反射光の光路中に配置された微分干渉プリズムをさらに備えていてもよい。
【0016】
本実施形態の一態様にかかる測定方法は、照明光を発生する光源と、前記照明光で照明された試料からの反射光を検出する光検出器と、前記照明光を試料の表面に集光する対物レンズを有し、前記照明光を試料に導くとともに、前記試料で反射した反射光を前記光検出器に導くコンフォーカル光学系と、前記対物レンズからの反射光が入射するように、前記コンフォーカル光学系内に回転可能に配置された検光子と、を備えたコンフォーカル顕微鏡を用いた測定方法であって、前記検光子の回転角度を変えて、複数のコンフォーカル画像を取得するステップと、前記複数のコンフォーカル画像に基づいて、前記試料の表面の複屈折特性を算出するステップと、を備えた測定方法。
【0017】
上記の測定方法において、前記複屈折特性として、複屈折の主軸方位及び複屈折位相差の少なくとも一方を算出することを特徴とする請求項7に記載の測定方法。
【0018】
上記の測定方法において、前記検光子の回転角度において基準角度を0°とした場合に、前記検光子の回転角度が0°、45°、90°、及び135°の時の前記コンフォーカル画像を撮像している請求項7、又は8に記載の測定方法。
【0019】
上記の測定方法において、前記反射光の光路中には、回転可能に設けられた1/4波長板が配置されており、前記1/4波長板を透過した反射光が前記検光子に入射しており、前記1/4波長板の回転角度を変えて、複数のコンフォーカル画像を撮像してもよい。
【0020】
上記の測定方法において、前記試料が、円偏光の前記照明光で照明されていてもよい。
【0021】
上記の測定方法において、前記照明光及び前記反射光の光路中には微分干渉プリズムが配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、試料表面での複屈折特性を正確に測定することができる測定装置、及び測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施の形態1にかかる測定装置の全体構成を示す模式図である。
【
図3】試料の結晶粒子の配列の乱れを説明するための模式図である。
【
図4】結晶粒子の方位角による楕円偏光の角度の違いを説明する図である。
【
図5】主軸方位による出光量の変化を示すグラフである。
【
図6】結晶の主軸方位と、解析により得られる方位角を示すグラフである。
【
図7】本実施の形態1にかかる測定方法を示すフローチャートである
【
図8】本実施の形態2にかかる測定装置の全体構成を示す模式図である。
【
図9】本実施の形態2にかかる測定方法を示すフローチャートである
【
図10】本実施の形態3にかかる測定装置の全体構成を示す模式図である。
【
図11】本実施の形態3にかかる測定方法を示すフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0025】
実施の形態1
本実施の形態1に係る測定装置は、コンフォーカル光学系を介して、試料で反射した反射光を検出している。測定装置は反射光の検出結果に基づいて試料表面に関する測定を行っている。例えば、測定装置は、複屈折の主軸方位や、複屈折率等の複屈折特性を測定するための処理を行う。試料としては、SiCやGaN等の化合物半導体や、圧電体結晶のウェハ等とすることができる。
【0026】
実施の形態1にかかる測定装置100について、
図1を用いて説明する。測定装置100は、光源11、コンフォーカル光学系110、ステージ31、光検出器43、及び処理部60を備えている。測定装置100は、コンフォーカル光学系110を有するコンフォーカル顕微鏡である。
【0027】
光源11は、試料30を照明する照明光L1を発生する。光源11は、例えば、レーザ光源、ランプ光源などを用いることができる。コンフォーカル光学系110は、照明光L1を試料30まで導く。例えば、ラインコンフォーカル光学系となっている。つまり、試料30上にライン状の照明領域を形成する。
【0028】
コンフォーカル光学系110は、フィルタ12、偏光板13、第1の1/4波長板14、レンズ15、スリット16、ハーフミラー21、スキャナ22、レンズ23、対物レンズ24、レンズ41、検光子42を備えている。
【0029】
光源11からの照明光L1は、フィルタ12に入射する。フィルタ12は、例えば、バンドパスフィルタであり、所定の波長のみを透過する。フィルタ12からの照明光L1は、レンズ15で集光されて、スリット16に入射する。スリット16は、対物レンズ24の焦点面と共役な位置に配置されている。スリット16は照明光をライン状にする。スリット16を通過した照明光L1は、偏光板13、及び第1の1/4波長板14により円偏光となる。
【0030】
円偏光となった照明光L1はハーフミラー21を介して、スキャナ22に入射する。ハーフミラー21は、照明光L1と試料30からの反射光L2の光路を分岐するビームスプリッタである。ハーフミラー21は、入射光の半分を透過して、残り半分を反射する。
【0031】
なお、コンフォーカル光学系110における光学素子の配置は、
図1に示す配置に限られるものではない。例えば、偏光板13、及び第1の1/4波長板14は、レンズ15とフィルタ12との間に配置されていてもよい。つまり、円偏光となった照明光L1がレンズ15,及びスリット16を通過してもよい。
【0032】
スキャナ22は、振動ミラー、ガルバノミラー、回転ミラーなどであり、照明光L1を偏向する。例えば、試料30上において、ライン状の照明領域の長手方向と直交する方向に照明光L1が走査される。
【0033】
スキャナ22で走査された照明光L1は、レンズ23を介して、対物レンズ24に入射する。対物レンズ24は、試料30の表面に照明光L1を集光する。つまり、対物レンズ24による合焦点位置は、試料30の表面となっている。また、スリット16と対物レンズ24の焦点とが共役な結像関係となっているため、試料30上において、スリット方向に対応するライン状の照明領域が形成される。例えば、試料30上におけるライン状の照明領域の長手方向はX方向、スキャナ22の走査方向はY方向とすることができる。
【0034】
試料30は、ステージ31上に載置されている。ステージ31は、駆動ステージで有り、XYZ方向に試料30を移動させる。ステージ31によりZスキャンが行われる。ステージ31がZ方向に移動することで、試料30の表面に照明光L1の集光位置を合わせることができる。もちろん、ステージ31の代わりに対物レンズ24を光軸に沿って移動することで、集光位置を試料30の表面に一致させてもよい。Zスキャンを行うことで、試料30の全焦点画像と高さ像を得ることができる。また、表面凹凸が小さい場合は、Zスキャンをせずに、表面に焦点を合わせた状態で試料30を撮像しても良い。
【0035】
試料30で反射した反射光L2は、対物レンズ24,レンズ23で屈折されてスキャナ22に入射する。反射光L2は、スキャナ22でデスキャンされてハーフミラー21に入射する。ハーフミラー21は、反射光L2の半分をレンズ41の方向に反射する。
【0036】
レンズ41は、ハーフミラー21からの反射光L2を光検出器43の受光面に集光する。光検出器43は、例えば、複数の画素が1列に配列されたラインセンサである。光検出器43の画素は、ライン状の照明領域に対応する方向に沿って配列されている。光検出器43の受光面と、対物レンズ24の焦点面とが共役な位置に配置されている。光検出器43は、コンフォーカル光学系110を介して、試料30の表面からの反射光を検出する。
【0037】
もちろん、光検出器43は、ラインセンサに限らず、0次元センサであってもよい。0次元センサを用いる場合、ピンホールや点光源と組み合わせることでコンフォーカル光学系を構成することができる。また、光検出器43として0次元センサを用いる場合、スリット16は不要となる。
【0038】
試料30の表面が照明光L1の集光位置となるように、ステージ31が試料30の高さを変えている。
図2は、試料30の断面形状を模式的に示す図である。試料30の表面30aに照明光L1の集光位置が合っている場合の照明光L1が実線で示されている。試料30の表面30aから照明光L1の集光位置がずれている場合の照明光L1’が破線で示されている。なお、
図2では、試料30の対物レンズ24(
図2では不図示)側の面が表面30aとなり、試料30のステージ31側の面が裏面30bとなっている。
【0039】
コンフォーカル光学系110では、試料30の表面30aが照明光L1の焦点位置となっている場合、光検出器43の検出光量が最も高くなる。つまり、光検出器43は、対物レンズ24の焦点面から外れた面からの反射光は、光検出器43で検出されない。試料30の表面30a以外からの反射光が光検出器43で検出されない。試料30の裏面30bで反射した反射光が光検出器43で検出されない。試料30の裏面30bからの反射光の影響を抑制することができるため、試料30の表面30aに関する測定を正確に行うことができる。
【0040】
コンフォーカル光学系110を用いることで、表面30aに凹凸や傾斜がある場合でも、直接測定することができる。つまり、光学定数の影響を受けずに測定を行うことができる。さらに、表面30aに凹凸がある場合でも、表面30aの全面において、焦点を形成することができる。上記の通り、裏面30bからの反射光をカットすることができる。また、金属膜30c等のパターンが設けられている場合でも、測定に影響しない。試料30の高さ像は、偏光と傾斜角の影響を確認するための補正画像として用いることができる。
【0041】
光干渉計で表面凹凸を測定する場合、結晶と金属面が視野内に混在していると、それらの段差を正確に測定できない。これは光学定数が材料によって異なる影響を受けるためである。一方、コンフォーカル光学系110を使った高さ測定では、光学定数の異なる材質でも影響を受けないため正確に段差や斜面形状を測定することができる。コンフォーカル光学系110により正確に測定された高さ像から、表面の粗さ、段差、傾斜角の情報が得られる。これらの情報に基づいて、偏光の測定結果の正しさを評価することや、補正することが可能となる。傾斜角度によって、偏光状態が変化するため、これを考慮して偏光測定の結果を補正することができる。
【0042】
上記のように、スキャナ22が照明光L1により試料30上を走査している。このため、測定装置100は、試料30の表面のコンフォーカル画像を取得することができる。光検出器43が、試料30の表面が合焦点位置となっているコンフォーカル画像を撮像する。コンフォーカル画像は、XY方向の2次元画像となる。なお、コンフォーカル光学系110で反射光を撮像する場合は、Zスキャンを行わずに、普通に撮像する場合と、Zスキャン(フォーカススキャン)によって視野全体に焦点の合った画像(全焦点画像)を撮像する場合とがある。凹凸が大きな表面は後者の全焦点画像を使う。Zスキャンを行うことで、反射像と表面の凹凸の測定も同時にできるため、高さ画像を取得することができる。
【0043】
レンズ41と、光検出器43との間には、検光子42が配置されている。検光子42は、反射光L2の光路中に回転可能に配置されている。検光子42の回転軸は、光軸と平行になっている。検光子42は、所定の直線偏光成分のみを透過する偏光子である。つまり、検光子42の透過軸と平行な直線偏光が光検出器43で検出される。また、検光子42を回転することで、光検出器43で検出される直線偏光の向きを変えることができる。
【0044】
なお、
図1では、光検出器43の直前に検光子42が配置されているが、検光子42の位置は特に限定されるものでない。ハーフミラー21より光検出器43側に検光子42が配置されていても良い。ハーフミラー21で照明光L1から分岐された反射光L2が入射するようにコンフォーカル光学系110内に検光子42が配置されていればよい。
【0045】
処理部60は、光検出器43で撮像されたコンフォーカル画像を取得する。処理部60は、検光子42のそれぞれの回転角度でのコンフォーカル画像を取得する。処理部60は、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置である。処理部60は、複数のコンフォーカル画像を記憶するメモリなどを有している。処理部60は、光検出器43の検出光量をXYZ座標と対応付けて記憶する。処理部60は、例えば、XYZ座標と検出光量とを対応付けて、全焦点画像を構築する。具体的には、全焦点画像は2次元の反射強度(明視野)の画像となる。また、処理部60は、試料30の高さ像を取得する。高さ像は3次元(高さは画像のグレースケールで表現)になるように、処理部60内で再構成される。
【0046】
また、処理部60は、位相シフト法による計算(位相シフト計算)を行うためのプロセッサなどを有している。処理部60は、検光子42を回転させるためのモータを制御してもよい。さらに、処理部60は、ステージ31の駆動を制御しても良い。
【0047】
ここで、試料30の結晶による光学異方性について、
図3を用いて説明する。
図3は、試料30に設けられた結晶30dの粒子を模式的に示す平面図である。結晶には複屈折性があるとするため、方向に応じて屈折率が異なる。屈折率n
1は遅相軸における屈折率であり、屈折率n
2は遅相軸と直交する方向の進相軸における屈折率である。
【0048】
ここで、結晶粒子の配列が乱れている場合、結晶粒子の方位角によって、屈折率n1、n2の方向が変化する。ここでの結晶粒子の配列の乱れは、XY方向の平面的な乱れに限らず、Z方向を含む3次元的な乱れである。結晶粒子の方位角に応じて、複屈折の主軸の角度が変化する。また、試料表面の歪みを結晶な3次元的な乱れとして擬似的に表すことができる。
【0049】
円偏光の照明光L1を試料30の照射した場合の、反射光L2の偏光状態について、
図4を用いて、説明する。表面反射による複屈折の影響で、反射光L2は、楕円偏光となる。複屈折の主軸が0°となるよう結晶粒子が形成されている場合、反射光L2は、X軸を長軸とし、Y軸を短軸とする楕円偏光LP1となる。楕円偏光LP1のX軸における電場をE1とし、Y軸における電場をE2とする。
【0050】
複屈折の主軸がφとなるに結晶が形成されている場合、反射光L2は、楕円偏光LP1の向きがφだけ回転した楕円偏向LP2となる。つまり、主軸方位φに応じて、楕円偏光の角度が変化する。なお、φは-180°以上、かつ180°以下の角度となっている。
【0051】
ここで、検光子42の回転角度をθとする。なお、回転角度θは、検光子42の透過軸のY軸からの角度である。反射光L2は楕円偏光になっているため、回転角度θを変えいくことで、光検出器43での反射光L2の検出光量が変化する。また、回転角度θが同じ場合でも、主軸方位、つまり、結晶粒子の方位角に応じて、検出光量が変化する。したがって、複数の回転角度θで検出することがで、結晶粒子の方位角を求めることができる。
【0052】
非特許文献1に示された位相シフト法等による測定を行うために、検光子42の回転角度θを変えている。回転角度θを45°毎に変えていき、反射光の検出が行われる。例えば、初期の回転角度θを基準角度の0°として、0°、45°、90°、135°の4つの回転角度で反射光L2が検出される。つまり、検光子42の回転角度変えることで、4つのコンフォーカル画像が撮像されている。
【0053】
ここで、θ=0°の時の検出光量をI
1、θ=45°の時の検出光量をI
2とする。θ=90°の時の検出光量をI
3、θ=135°の時の検出光量をI
4とする。
図5は、検出光量I(φ)の変化を示すグラフである。
図5は、E
1=2、E
2=1として、シミュレーションした結果を示している。複屈折率位相差は1/4波長板の位相差90°として計算している。ここでは、φを-180°~180°の範囲で変えて、シミュレーションを行っている。
【0054】
位相シフト法による解析によって得られる複屈折の主軸方位を解析方位角φcalとすると、解析方位角φcalは以下の式(1)から求めることができる。
【数1】
【0055】
式(1)によって求められた解析方位角φcalを
図6に示す。位相シフト計算による解析方位角φcalを求めることで、測定領域の主軸方位φを正確に測定することができる。このように、主軸方位φを-90°~90°の範囲で決定することができる。主軸方位をグレイレベルに変換することで、試料30の表面における結晶の方位角の分布を二次元画像として可視化することができる。なお、
図5,及び
図6は、反射による複屈折位相差が0°の条件で計算した結果を示している。
【0056】
次に、位相シフト計算による複屈折位相差Δcalについて説明する。Δcalは表面反射による複屈折位相差であり、以下の式(2)で求めることができる。
【数2】
【0057】
なお、I
0=(I
1+I
2+I
3+I
4)/2である。このように、位相シフト法によって、主軸方位φ、及び複屈折位相差Δcalを求めることができる。処理部60は、検光子42の回転角度を変えて取得された複数のコンフォーカル画像に基づいて、試料の表面の複屈折特性を算出している。以下、本実施の形態に係る測定方法について、
図7を用い説明する。
図7は測定方法を示すフローチャートである。
【0058】
まず、処理部60が検光子42を回転する(S101)。なお、検光子42はモータなど自動的に回転してもよく、ユーザが手動で回転しても良い。ここでj=1~4として、回転角度を45°毎にする。j=1のとき検光子42の回転角度が基準角度である0°となる。j=2のとき検光子42の回転角度を45°とする。j=3のとき検光子42の回転角度を基準角度である90°とし、j=4のとき検光子42の回転角度を基準角度である135°とする。
【0059】
そして、処理部60が、Zスキャン行う(S102)。つまり、ステージ31を上下方向(Z方向)に移動する。試料30の表面30aに焦点位置を合わせる。検出光量が最大となるステージ31の高さで、焦点位置が試料30の表面30aと一致する。そして、処理部60が、XY座標毎に合焦点位置での検出光量を記憶する。
【0060】
これにより、合焦点位置での偏光画像Ijが撮像される。偏光画像Ijは、画素毎に、反射光L2の検出光量(受光強度)が対応付けられた2次元コンフォーカル画像となっている。例えば、検光子42の回転角度が0°の場合、j=1であるため、偏光画像I1が取得される。また、S102により、Zスキャンした時の検出光量の変化から高さ像Hjを取得することができる。高さ像HjはXY座標に応じた、試料30の表面高さを示すデータである。
【0061】
次に、処理部60が、j=4であるか否かを判定する(S103)。j=4ではない場合(S103のNO)、j=4となるまで、S101、S102の処理を繰り返す。例えば、検光子42の回転角度が0°である場合、j=1であるため、回転角度45°にして、j=2とする。そして、処理部60がS102のZスキャンを行う。これにより、回転角度45°の偏光画像I2を取得することができる。同様に、処理部60が、回転角度を90°として、j=3の時の偏光画像I3を取得する。処理部60が、j=4として、j=4の時の偏光画像I4を取得する。もちろん、偏光画像I1、I2,I3、I4の取得順は特に限定されるものではない。
【0062】
S102~S103の処理を行うことで、4枚のコンフォーカル画像が撮像される。j=4である場合(S103のYES)、処理部60が位相シフト計算を行う(S104)。ここでは、処理部60は、以下の式(3)を用いて、複屈折の主軸方位φを求める。
【数3】
【0063】
次に処理部60が複屈折計算を行う(S105)。ここでは、処理部60が以下の式(4)を用いて、複屈折位相差Δcalを求める。
【数4】
【0064】
このようにすることで、試料30の表面反射による偏光状態の変化を測定することができる。処理部60は、主軸方位φと複屈折位相差Δcalを二次元コンフォーカル画像の画素毎に算出することができる。これにより、主軸方位φと複屈折位相差ΔcalのXY平面における分布を求めることができる。処理部60は、主軸方位φと複屈折位相差Δcalに応じて、表示色や濃淡を変えてモニタに表示することができる。
【0065】
なお、処理部60は、主軸方位φと複屈折位相差Δcalの両方と算出していたが、一方のみを算出するようにしてもよい。つまり、処理部60は、主軸方位φのみを算出しても良い。あるいは、処理部60は、複屈折位相差Δcalのみを算出しても良い。
【0066】
本実施の形態では、偏光画像として、コンフォーカル画像を取得しているため、試料30の裏面30bからの反射光の影響を抑制することができる。つまり、試料30の表面30aに焦点位置が一致したときの反射光L2がコンフォーカル光学系110を介して検出されている。このため、裏面30bからの反射光のほとんどが検出されない。よって、試料30の表面に関する測定を正確に行うことができる。特に、照明光を透過する材料の試料であっても、正確な測定を行うことができる。
【0067】
本実施形態にかかる測定方法は、コンフォーカル顕微鏡を用いた測定方法である。測定方法は、検光子42の回転角度を変えて、複数のコンフォーカル画像を取得するステップと、複数のコンフォーカル画像に基づいて、試料30の表面の複屈折特性を算出するステップと、を備えている。コンフォーカル画像を用いているため、高い空間分解能で主軸方位φ及び複屈折位相を測定することができる。
【0068】
本実施の形態にかかる測定装置100は、化合物半導体デバイスや、圧電結晶などの様々な試料についての測定が可能となる。例えば、化合物半導体デバイスでは、表面状態がデバイスの特性が大きく影響する。したがって、表面における結晶の主軸方位や複屈折位相を求めることで、より適切な評価を行うことができる。表面の注目点、例えば、結晶欠陥周辺の評価を行うことができる。
【0069】
コンフォーカル光学系110により、撮像の際にZスキャン(フォーカススキャン)を実施することで表面が凹凸や傾斜があっても試料全面に焦点のあった画像を取得できる。また、表面凹凸形状を同時に測定できるので、複屈折を凹凸の相関を調べることが可能となる。さらに、表面の斜面性による見かけの複屈折性が大きい場合は、傾斜角を複屈折特性の補正に使うことができる。また、照明光L1としては、例えば、546nmのような単一の波長の光源11を用いることができる。あるいは、多波長の測定を実施することで、屈折率の波長分散を得ることができる。
【0070】
さらに、波長分散が十分検出可能な波長差がある場合は、複数の波長測定を行うことで、表面形状等による見かけの複屈折性と新の複屈折を計算で分離することができる。この場合、複数波長の測定で得られた検出結果に基づいて連立方程式を解けば良い。例えば、波長を546nm、450nm、650nmとしてそれぞれの波長での測定を行う。このようにすることで、複屈折特性の波長分散を評価することができる。
【0071】
測定装置100により、複屈折特性を測定することで、複屈折位相差Δと主軸方位φの高精細な分布が得られる。例えば、1軸性結晶の場合、主軸方位φは結晶学的なc軸と一致するのが理想結晶であるが、現実結晶ではその成長方法等により結晶が歪んだりする。したがって、主軸方位に分布が生まれる可能性があり、結晶成長法や研磨方法の改善にも利用できると考えられる。表面での反射光を観察することで、観察面における転位欠陥が観察可能である(歪の観測により)。さらに、観察面における、表面凹凸としての傷はないが、応力ひずみとして残っている加工変質層(すなわち潜傷)が観察できる。
【0072】
白色光から3つの単色光を同時に照明して、3CCD(Charged Coupled Device)カメラで、一括多波長測定とカラー画像の取得も可能である。また、照明光L1で照明した領域からの反射光L2を検出すれば良いため、非破壊で測定を行うことができる。この場合、フィルタ12は、3波長を透過するフィルタとすれば良い。また、第1の1/4波長板14等の光学素子が、3波長のそれぞれについて適切な特性を持つようにすればよい。
【0073】
実施の形態2
実施の形態2にかかる測定装置について、
図8を用いて説明する。
図8は、測定装置100の全体構成を示す図である。本実施の形態では、実施の形態1の構成に加えて、第2の1/4波長板44が追加されている。第2の1/4波長板44以外の基本的な構成は実施の形態1と同様であるため、適宜説明を省略する。
【0074】
第2の1/4波長板44は、反射光L2の光路中に回転可能に配置されている。具体的には、第2の1/4波長板44は、検光子42とレンズ41との間に配置されている。もちろん、第2の1/4波長板44の配置は
図8の位置に限られるものではない。第2の1/4波長板44は、検光子42とハーフミラー21との間に配置されていればよい。
【0075】
第2の1/4波長板44は、回転可能に設けられている。第2の1/4波長板44の回転軸は、反射光L2の光軸と平行になっている。例えば、処理部60が第2の1/4波長板44を回転するためのモータ(不図示)を制御する。あるいは、ユーザが、手動で第2の1/4波長板44を回転させても良い。
【0076】
反射光L2が第2の1/4波長板44を通過することで、偏光状態が変化する。そして、第2の1/4波長板44を透過した反射光L2が、検光子42を介して、光検出器43に入射する。つまり、光検出器43は、第2の1/4波長板44及び検光子42を透過した反射光L2を検出する。
【0077】
ここで、第2の1/4波長板44は、基準角度を0°として、0°、45°の2つの回転角度とする。つまり、第2の1/4波長板44の回転角度を0°と45°として、それぞれ反射光L2が検出される。第2の1/4波長板44の回転角度に応じて、検光子42に入射する反射光L2の偏光状態が変化する。
【0078】
検光子42の回転角度は、実施の形態1と同様に、0°、45°、90°、135°の4つとなっている。したがって、第2の1/4波長板44の回転角度が0°、45°のそれぞれについて、4つのコンフォーカル画像(偏光画像)が取得される。本実施の形態では、合計8つのコンフォーカル画像(偏光画像)が取得される。
【0079】
本実施の形態に係る測定方法について、
図9を用いて説明する。
図9は、測定方法を示すフローチャートである。処理部60が第2の1/4波長板44を回転する(S201)。ここでは、i=1のとき、第2の1/4波長板44の回転角度が0°であり、i=2のとき、第2の1/4波長板44の回転角度が45°であるとする。まず、処理部60は、第2の1/4波長板44の回転角度を0°にする。
【0080】
次に、処理部60が検光子42を回転する(S202)。ここでは、実施の形態1のステップS101と同様に、j=1~4として、それぞれ0°、45°、90°、135°とする。まず、j=1として、検光子42の回転角度を0°とする。
【0081】
処理部60が、ステージ31をZスキャンする(S203)。これにより、実施の形態1のステップS102と同様に、偏光画像Pijと高さ像Hijが取得される。検光子42の回転角度が0°、第2の1/4波長板44の回転角度が0°であるため、処理部60は、偏光画像P11と、高さ像H11を取得する。
【0082】
次に、処理部60は、j=4であるか否かを判定する(S204)。j=4ではない場合(S204のNO)、j=4となるまで、S202、S203の処理を繰り返す。ここでは、第2の1/4波長板の回転角度が0°となっている。検光子42の回転角度が0°である場合、j=1であるため、回転角度45°にして、j=2とする。そして、処理部60がS203のZスキャンを行う。これにより、回転角度45°の偏光画像P12を取得することができる。
【0083】
同様に、処理部60が、回転角度を90°として、i=1、j=3の時の偏光画像P13を取得する。処理部60が、j=4として、i=1、j=4の時の偏光画像P14を取得する。もちろん、偏光画像P11、P12,P13、P14の取得順は特に限定されるものではない。そして、
【0084】
j=4となった場合(S204のYES)、処理部60が、i=2であるか否かを判定する(S205)。i=2ではない場合(S205のNO)、S201に戻る。つまり、i=2として、S202、S203、S204の処理を繰り返す。例えば、第2の1/4波長板44の回転角度が0°である場合、i=1であるため、回転角度45°にして、i=2とする。S202、S203、及びS204の処理が同様に行われる。これにより、偏光画像P21、P22,P23、P24が取得される。なお、偏光画像P11、P12,P13、P14、P21、P22,P23、P24の取得順は特に限定されるものではない。
【0085】
i=2である場合(S205のYES)、処理部60が位相シフト計算を行う(S206)。ここでは、処理部60は、以下の式(5)を用いて、主軸方位φを求める。
【数5】
【0086】
次に処理部60が複屈折計算を行う(S207)。ここでは、処理部60が以下の式(6)を用いて、複屈折位相差Δcalを求める。
【数6】
【0087】
このように、本実施の形態においても実施の形態1と同様に主軸方位φ及び複屈折位相差Δcalを正確に測定することができる。よって、結晶粒子の方位角や結晶状態を評価することができる。実施の形態1では主軸方位φの測定範囲が-90°~+90°であったが、実施の形態2では、主軸方位φの測定範囲を-180°~180°に広げることができる。
【0088】
実施の形態3
実施の形態3にかかる測定装置について、
図10を用いて説明する。
図10は、測定装置100の全体構成を示す図である。本実施の形態では、測定装置100が微分干渉顕微鏡となっている。そして、測定装置は、微分干渉モードでの位相シフト法を実施している。
【0089】
図10では、
図8の構成に加えて、ノマルスキプリズム25が追加されている。さらに、照明光L1の光路には、第1の1/4波長板14が配置されていない。つまり、
図8の構成から第1の1/4波長板14が取り除かれている。ノマルスキプリズム25及び第1の1/4波長板14以外の構成については、実施の形態1、2と同様になるため、適宜説明を省略する。
【0090】
第1の1/4波長板14が設けられていないため、直線偏光の照明光L1がスキャナ22に入射する。スキャナ22で反射された照明光L1は、レンズ23を介して、ノマルスキプリズム25に入射する。ノマルスキプリズム25は、微分干渉プリズムであり、直線偏光の照明光L1を2本の光ビームに分岐する。つまり、照明光L1は、ノマルスキプリズム25を透過することで、所定のシャー量だけ横方向にずれた2本の平行な光ビームとなる。なお、微分干渉プリズムは、ノマルスキプリズム25に限らず、ウォラストンプリズムを用いてもよい。
【0091】
ノマルスキプリズム25で分岐された2本の光ビームは直交する直線偏光となっている。つまり、2本の光ビームの一方が常光となり、他方が異常光となる。ノマルスキプリズム25で分岐された2本の光ビームは、対物レンズ24で集光された試料30を照明する。2本の光ビームは、試料30の異なる点を照明する。そして、それぞれの光ビームは試料30で反射される。したがって、試料30からの反射光L2は2本の光ビームを含んでいる。
【0092】
試料30で反射した反射光L2は、対物レンズ24を介して、ノマルスキプリズム25に入射する。ノマルスキプリズム25は、2本の光ビームを合成する。そして、反射光L2は、実施の形態1,2と同様の光路を伝播して、光検出器43で検出される。
【0093】
このようにすることで、処理部60が微分干渉画像Djを取得することができる。例えば、試料30の表面において、2本の光ビームの入射位置の間に高さの差がある場合、2つの光ビームの間に光路差(位相差)が生じる。よって、光検出器43では、光路差に応じたコントラストが得られる。
【0094】
本実施の形態では、第2の1/4波長板44の回転角度を0°に固定して、4枚の微分干渉画像D1~D4を取得する。検光子42の回転角度が0°、45°、90°、135°のとき、j=1,2,3,4となる。微分干渉画像D1は検光子42の回転角度が0°の時の微分干渉画像であり、微分干渉画像D2は検光子42の回転角度が45°の時の微分干渉画像である。微分干渉画像D3は検光子42の回転角度が90°の時の微分干渉画像である。微分干渉画像D4は検光子42の回転角度が135°の時の微分干渉画像である。
【0095】
次に、本実施の形態にかかる測定方法について、
図11を用いて説明する。まず処理部60が検光子42を回転する(S301)。上記の通り、検光子42の回転角度が0°、45°、90°、135°として、それぞれj=1,2,3,4とする。
【0096】
処理部60がステージ31を上下に駆動して、Zスキャンを行う(S302)。これにより、処理部60が微分干渉画像Djを取得する。ここでは、j=1であるため、微分干渉画像D1が取得される。なお、S302は省略可能である。
【0097】
次に、処理部60は、j=4であるか否かを判定する(S303)。j=4ではない場合(S303のNO)、j=4となるまで、S301、S302の処理を繰り返す。第2の1/4波長板の回転角度が0°となっている。検光子42の回転角度が0°である場合、j=1であるため、回転角度45°にして、j=2とする。そして、処理部60がS302のZスキャンを行う。これにより、回転角度45°の微分干渉画像D2を取得することができる。
【0098】
同様に、処理部60が、回転角度を90°として、j=3の時の微分干渉画像D3を取得する。処理部60が、j=4として、j=4の時の微分干渉画像D4を取得する。もちろん、微分干渉画像D1、D2,D3、D4の取得順は特に限定されるものではない。
【0099】
j=4となると(S303のYES)、処理部60が位相シフト計算を行う(S304)。処理部60は、以下の式(7)を用いてαを算出する。
【数7】
【0100】
処理部60は、微分量を計算する(S305)。処理部60は、以下の式(8)により微分量Δh/ΔSを算出する。ΔSはノマルスキプリズム25によるシャー量である。表面の高さをh(x、y)とすると、そのシャーS方向の微分量はΔh/ΔSとなる。Sの向きはX方向でもXY対角線方向でもよい。
【数8】
【0101】
なお、λは照明光L1の波長である。微分量は表面高さの傾きに対応する。このようにすることで、エッジなどの段差を定量測定することができる。さらに、積分処理により表面形状の測定が可能である。
【0102】
なお、実施の形態1~3は適宜組み合わせることが可能である。例えば、第2の1/4波長板44が反射光の光路中に挿脱可能に配置することで、実施の形態1と実施の形態2の測定を切替えることができる。同様に、ノマルスキプリズム25を照明光L1及び反射光L2の光路中に挿脱可能に配置することで、実施の形態2と実施の形態3の測定を切替えることができる。
【0103】
処理部60は物理的に単一の装置に限られるものではない。つまり、処理部60における処理は、複数の装置に分散されて実施されていてもよい。例えば、光検出器43からの検出データを取得する処理部と、記憶する記憶装置は別体となっていてもよい。また、処理部60は、分散処理を行う複数の装置であってもよい。
【0104】
上記した処理部60の処理のうちの一部又は全部は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい。上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0105】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0106】
11 光源
12 フィルタ
13 偏光板
14 第1の1/4波長板
15 レンズ
16 スリット
21 ハーフミラー
22 スキャナ
23 レンズ
24 対物レンズ
25 ノマルスキプリズム
30 試料
30a 表面
30b 裏面
30c 金属膜
31 ステージ
41 レンズ
42 検光子
43 光検出器
44 第2の1/4波長板
60 処理部
100 測定装置
110 コンフォーカル光学系