(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069022
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】茶樹用被覆シート
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
A01G13/02 F
A01G13/02 E
A01G13/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177938
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000185178
【氏名又は名称】小泉製麻株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 政憲
(74)【代理人】
【識別番号】100187399
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 敏文
(72)【発明者】
【氏名】山澤 富雄
【テーマコード(参考)】
2B024
【Fターム(参考)】
2B024DA02
2B024DA04
2B024DB04
2B024DB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シート温度の上昇を抑制しつつ必要な遮光率を保持し、紫外光領域の波長を選択的に遮光し、棚施設内又は直掛け資材下の茶樹への通風性を改善することにより茶樹の生育環境を向上させる茶樹用被覆シートの提供。
【解決手段】内部に少なくとも1種類の白色顔料を含む1又は2以上の種類のフィラーを多数含有し、オレフィン系樹脂フィルムを延伸して薄肉化することにより両表面に前記フィラー及びその周囲に形成されたボイドをコアとした多数の突起部が形成された白色反射テープである経糸21と黒色素材である緯糸31の組み合わせにより形成されるシートであり、かつ、前記経糸を隙間なく並置して前記緯糸と製織した茶樹用被覆シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に少なくとも1種類の白色顔料を含む1又は2以上の種類のフィラーを多数含有し、オレフィン系樹脂フィルムを延伸して薄肉化することにより両表面に前記フィラー及びその周囲に形成されたボイドをコアとした多数の突起部が形成された白色反射テープである経糸と黒色素材である緯糸の組み合わせにより形成されるシートであり、かつ、前記経糸を隙間なく並置して前記緯糸と製織したことを特徴とする茶樹用被覆シート。
【請求項2】
前記白色反射テープのテープ幅とテープ厚みがアスペクト比で20:1ないし45:1であることを特徴とする請求項1に記載する茶樹用被覆シート
【請求項3】
前記フィラーの少なくとも1種類のフィラーが紫外光を吸収する物質であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する茶樹用被覆シート
【請求項4】
前記フィラーが複数種類であり、少なくとも紫外光を吸収する白色顔料であるフィラーと可視光及び赤外光の反射率が高いフィラーを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載する茶樹用シート
【請求項5】
前記緯糸がモノフィラメント、扁平モノフィラメントまたは撚糸テープであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載する茶樹用シート
【請求項6】
前記製織法を両面斜文織りとすることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載する茶樹用シート
【請求項7】
前記製織法を3/3,1/1の両面斜文織りとすることを特徴とする請求項6に記載する茶樹用シート
【請求項8】
前記製織法を両面斜文織りと平織りを一定間隔に配置する織りであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載する茶樹用シート
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に緑茶を製造するための茶樹を栽培する際に茶樹に被覆するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
一定期間遮光した状態で栽培する被覆栽培により、茶葉は、葉脈の分布が粗で柔らかく、葉厚が薄く、かつ、葉緑素の増加により緑が濃い茶葉になる。加えて、旨み成分であるテアニンがカテキンに変化することを防止する効果を有するため、被覆栽培は古くから旨み成分の多い高級茶の栽培法として用いられてきた。
【0003】
伝統的な被覆栽培法として本簾被覆による棚掛け被覆がある。本簾被覆は、茶園に2メートル程度の高さの被覆棚を設け、新葉が1~2枚開葉した時期に、60%程度の遮光率となるようによしずで茶園全体を覆って7~10日維持し、その後全体で95~98%の遮光率となるようによしずの上に稲わらをまいて10日間程度維持する被覆法である。
【0004】
本簾被覆による棚掛け被覆により栽培された茶葉は、蒸熱から揉み工程を経て高級茶である玉露となったり、揉まずにてん茶とされた後石臼で挽かれて抹茶となる。
【0005】
かかる本簾被覆は多大な労力と熟練を要し費用もかさむことから、その代替として黒色の化学繊維資材(以下、「黒色化繊」という。)を用いて2段の被覆を行なう棚掛け被覆(以下、「黒色化繊棚掛け被覆」という。)が開発され、最近では棚掛け被覆の大半は黒色化繊棚掛け被覆となっている。黒色化繊棚掛け被覆は、新葉が1枚開いた時期に、遮光率70%程度の黒色化繊のネットを上段及び側面に展張して7~10日間維持し、その後下段に遮光率90%程度のネットを展張して、二重被覆により併せて95~98%の遮光率として2週間程度維持する被覆法である。
【0006】
一方、棚掛け被覆法以外の被覆法として直掛け被覆法がある。直掛け被覆法は被覆資材を茶樹に直接被せる被覆法である。棚掛け被覆法は、黒色化繊棚掛け被覆であっても棚の設置費用等が高額であることから、より簡易・低コスト被覆法として直掛け被覆法の採用が増えている。直掛け被覆により栽培された茶葉は、棚掛け被覆には劣るものの、通常の露地栽培による煎茶と比べると鮮やかな色彩、旨み成分の多い味等品質に優れている。このため、高級煎茶として用いられる他、てん茶とされた後にボールミルで粉砕された広義の抹茶として用いられている。特に広義の抹茶が、食品向けとして近年輸出を含めた需要が急増している。
【0007】
直掛け被覆法は、製品の用途に基づく品質を考慮して60~90%程度の遮光率を有する黒色化繊を用い、新葉が2枚程度開いた時期から茶樹をすっぽり覆うように直接被せ、2~3週間維持する被覆法である。
なお、棚掛け被覆法の簡易版としてトンネル形状に非接触で茶樹を覆うトンネル被覆もある。
【0008】
ところで、棚掛け被覆でも直掛け被覆でも遮光資材として主に用いられる黒色化繊は、その光吸収作用により棚施設内又は直掛け資材下の茶樹への光照射を遮る効果を発揮する。その一方、光吸収作用により黒色化繊自体の温度は上昇するので、棚施設内又は直掛け資材下の茶樹に対し温度上昇をもたらすこととなる。高級茶の需要増に伴い夏場の被覆施設における茶生産が増えていることから、棚施設内の被覆茶生産を支えるための暑熱対策が不可欠となっている。また、直掛け被覆の場合は、黒色化繊が吸収した熱が茶樹に直に伝わるため悪影響はより大きく、葉焼け等の弊害をもたらすこととなる。したがって、黒色化繊と同等の遮光性を確保しつつ、黒色化繊よりも遮熱性の優れた被覆資材が求められる。
【0009】
また、棚掛け被覆においては、熟練や労力の還元からほとんど黒色化繊棚掛け被覆に代替されてきているが、品質の面からは黒色化繊棚掛け被覆は本簾被覆に比べて劣ると評価されている。この原因として、単なる遮光率ではなく、紫外光領域の遮光率の相違が指摘されている。例えば、「本ず被覆内の分光スペクトル特性と紫外線照射および除去が茶新芽の品質に及ぼす影響(茶業研究報告116号 2013年12月発行)では、本簾被覆の場合には紫外光領域に対して選択的に高い遮光率を有するのに対して、黒色化繊棚掛け被覆ではそのような選択的な遮光性がないことを指摘しつつ、本簾被覆と同等の高級茶を生産するためには、本簾被覆のような選択的な紫外光遮光性を有し、かつ、取扱いの簡便な資材が求められる旨記載している。
【0010】
また、被覆資材は遮光性を確保するためにシートの開口率を非常に低くせざるを得ず、そのため棚施設内又は直掛け資材下における通風性はほとんどない。このため上述のように棚施設内又は直掛け資材下の茶樹に対しもたらされた熱気がそのままこもりやすくなって葉焼けの原因になる。特に直掛けの場合は茶株面の温度が上昇しやすく葉焼けのおそれがより大きい。
【0011】
また、寒気による影響もある。多くの茶産地では霜害防止のために防霜ファンを設置しているが、循環する上空の比較的高い温度の空気は被覆資材で遮断され、棚施設内又は直掛け資材下の茶樹に届かないため、防霜ファンの効果が得られない。特に直掛け被覆では熱の伝達効率が高く放射冷却が促進されるため、霜害による葉焼けの大きな原因となる。
以上から、通風性を有する被覆資材が求められる。
【0012】
遮光シートとして、表面にアルミニウム蒸着による反射層を積層する技術の提案がある(特許文献1、2)。蒸着アルミニウム層による太陽光反射効果は非常に高いが、特許文献1に係る技術は被覆シート下方向への反射も同様に生じるため、かえって遮光効果を減じるという問題がある。また、特許文献2に係る技術は、特許文献1に係る技術のような問題点を克服しているが、被覆シートの緯糸として用いる場合、製織時のねじれにより反射層が上面となったり下面となったりする結果、十分に太陽光の反射効果を発揮できないという問題がある。
【0013】
また、内部にフィラーを含有したフィルムを延伸することにより、両表面に多数の凹凸形状を発生させたテープに係る技術の提案がある(特許文献3)。しかし、同発明は、テープ上方の周囲に広く拡散反射光を照射することにより植物の生長を促進することや、紫外光領域の拡散反射光を照射することによって飛来する害虫を錯乱させることを目的としている。それに対して本発明は、上記発明とは真逆の方向のテープ下方への作用を目的としており、かつ、高品質の茶樹栽培という限定された分野の課題に対するものである。また、構成についても、上記発明は、フィラーを表面及び内部の拡散反射を引き起こすための物質として位置付けているのみで、白色顔料としてのフィラーの存在を構成要件とはしていない。また、紫外光領域の光を吸収することにより選択的に遮光するとの観点もない。したがって、上記発明は本発明とは異なる発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実公平5-33339号公報
【特許文献2】特開2004-176210号公報
【特許文献3】特開2016-218449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、シート温度の上昇を抑制しつつ必要な遮光率を保持する茶樹用被覆シートの提供を目的とする。また、紫外光領域の波長を選択的に遮光する茶樹用被覆シートの提供を目的とする。さらに、棚施設内又は直掛け資材下の茶樹への通風性を改善することにより茶樹の生育環境を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明により、内部に少なくとも1種類の白色顔料を含む1又は2以上の種類のフィラーを多数含有し、オレフィン系樹脂フィルムを延伸して薄肉化することにより両表面に前記フィラー及びその周囲に形成されたボイドをコアとした多数の突起部が形成された白色反射テープである経糸と黒色素材である緯糸の組み合わせにより形成されるシートであり、かつ、前記経糸を隙間なく並置して前記緯糸と製織したことを特徴とする茶樹用被覆シートが提供される。
【0017】
従来の黒色化繊(経糸、緯糸共に黒色の素材)の課題である遮熱性を向上させつつ遮光性を保持するために、本発明では、平面視で隙間なく並置されている白色反射テープ(経糸)に対して黒色素材(緯糸)を織り込んで製織する。
【0018】
経糸は製織の際に平面視で隙間なく並置することが可能である。したがって、太陽光の大半は白色反射テープの上面に照射することとなり、その多くは白色反射テープにより上方に反射される。遮光性を損なわずに遮熱性を発揮できることとなる。
【0019】
しかし、隙間なく並置した経糸であっても、製織により経糸間に隙間や重なりが生じる場合がある。さらには、製織によって経糸と緯糸の交差部付近には立体視で隙間が生じることは避けられない。
【0020】
これらに基づく遮光性の不足の部分を補完して全体の遮光性を保持するためには緯糸の役割が重要である。また、緯糸は製織の際に隙間なく並置することはできず、緯糸間にはある程度の隙間が生じることから、その点も考慮して緯糸の素材、配置を決定することが好ましい。
【0021】
白色の素材と黒色の素材の遮光性を対比すると、白色素材は主に反射に基づく遮光性であり、黒色素地は主に吸収に基づく遮光性であるが、一般的にトータルの遮光性は黒色の素材の方が高い。茶樹用被覆材としては黒色化繊が一般的に用いられている所以である。黒色素材であれば、黒色素材間の隙間に照射する太陽光の一部は黒色素材の側面が吸収することにより遮光性向上に寄与できることとなる。白色反射テープの面で反射した太陽光も同様である。シート全体の高いレベルでの遮光率調整は緯糸の素材選択や緯糸どうしの間隔の粗密を調整することにより行う。
【0022】
なお、上記構成とは逆に経糸を黒色素材とし、緯糸を白色反射テープ等の白色素材とした場合は、遮光性レベルの不足、緯糸間の隙間に照射する太陽光を遮光できない等遮光率を保持できないこととなる。経糸、緯糸共に白色素材の場合も同様である。
【0023】
本発明においては、経糸の素材は白色の反射テープとした。テープであれば経糸間の重なりを含めて隙間なく並置することが容易である。経糸をモノフィラメントとした場合は隣接する経糸間の接触が点接触となり、滑りやすく、隙間のない状態で並置することが困難である。
【0024】
本発明において、白色反射テープは内部に多数のフィラーを包含するオレフィン系樹脂フィルムを延伸したテープであり、延伸によりオレフィン系樹脂が流動しフィルムが薄肉化する。包含されるフィラーはオレフィン系樹脂より比重が大きく剛性が高く、オレフィン系樹脂の流動にそのまま追随せず、又、変形しにくい。このため、フィラーの周囲にはオレフィン系樹脂とフィラーの流動性の差に基づくボイド(空隙)が発生すると共にフィラーの位置する延伸テープの表面部は延伸による流動力によって膨らんで突起部を形成することとなる。オレフィン系樹脂は合成樹脂の中でも比重が小さく(0.9程度)、射出流動性に優れている。
【0025】
オレフィン系樹脂に包含されるフィラーは充填材であり、主に粉末状の無機物であるが、それに限定されない。顔料とは、一定の色に着色する物質で、混合する物質と作用せず所定の色を呈する不透明物質を言う。上記フィラーの種類数は特に限定されず、1種類の場合、複数種類の場合がある。1種類の場合はそのフィラーは必ず白色顔料である。複数種類の場合は、全て白色顔料の場合、1又は複数の白色顔料と1又は複数の白色顔料以外の顔料の場合、1又は複数の白色顔料と1又は複数の白色顔料以外の物質の場合等がある。
【0026】
延伸テープの厚みに対するフィラーの粒径の比率により反射テープ表面の突起部の形成及び突起部の大きさが規定される。フィラーの粒径が一定である場合テープ厚みが薄いほど突起部が大きくなる。テープ厚みは、突起部の形成、テープ強度等の要素を勘案して適宜選択される。
【0027】
フィラーは、小さすぎるとボイドが発生しにくく表面の突起部が形成されにくい。極端に小さな粒径のフィラー(顔料)はシートが透明になり白色が薄れたり紫外光吸収性が低下することとなる。その一方、大きすぎると均等分散が困難となり、製膜が保てず未延伸フィルムに穴あき(フィッシュアイ)現象が生ずることとなる。複数のフィラーの場合、その種類により発揮すべき機能が異なる場合は各々の機能に対応した平均粒径が設定される。このように様々な観点からフィラーの粒径が設定されるが、表面突起の形成の観点からは平均粒径が2.5ないし6.0μmであることが好ましい。
【0028】
また、フィラーの配合比率に関しては、突起部を形成するためには10重量%以上であることが好ましい一方、フィルム状態のときにフィラーの配合比率が40重量%以上の場合にはフィルムが破れる等の不具合が発生したので、そのMAXは35重量%であることが好ましい。なお、オレフィン系樹脂フィルムに対する配合比率10ないし35重量%とは、オレフィン系樹脂の重量及びフィラーの重量の合計に対するフィラーの重量比率をいう。
【0029】
また、ボイドとは、空隙をいう。又、「剛性」とは、物体が曲げ・ねじれなどに対して破壊に耐える能力をいい、変形のしにくさを表す。又、「比重」とは真性比重をいい、例えば炭酸カルシウムの場合は約2.7であり、酸化チタンの場合は約4.2である。
【0030】
本発明に係るフィラーは、オレフィン系樹脂フィルムを製造する際にフィルム内に練り込まれるか、フィラーを含む材料の塗布や貼付によってフィルム表面にフィラー含有層を形成することによってフィルム内部に含有されることとなる。製造工程の簡便さや内部に略均一に含有することによる効果を得られる点から練り込みによる含有方法がより好ましい。
【0031】
また、前記白色反射テープのテープ幅とテープ厚みがアスペクト比で20:1ないし45:1であることを特徴とする茶樹用被覆シートが提供される。
【0032】
白色反射テープはフィラーを包含するため柔らかくなる。このため、経糸として採用した場合製織時に幅方向に折り畳まれやすくなるおそれが生じる。これを防止するために、テープ幅はテープ厚みに対して一定比率以下にすることが好ましい。一方、白色反射テープは薄肉化による突起部を形成することが特徴なので、一定枚数にスリットされた延伸テープ幅はテープ厚みに対して一定比率以上にすることが好ましい。これらの異なる要請を満たすため、白色反射テープのテープ幅とテープ厚みはアスペクト比で20:1ないし45:1であることが好ましい。なお、本発明の目的の1である通風性向上の観点からは、厚みのある嵩高のテープが好ましい。また、通風性向上の観点からは、柔らかすぎず一定の剛性を有することが好ましい。
なお、アスペクト比とは長辺と短辺の比率を言うが、本発明においては、製織のためにスリットされた経糸テープのテープ幅とテープ厚みの比率をいう。
【0033】
また、フィラーの少なくとも1種類のフィラーが紫外光を吸収する物質であることを特徴とする茶樹用被覆シートが提供される。
【0034】
上述の通り、一般的に被覆資材として用いられる黒色化繊は選択的遮光性がなく、高級茶としての品質が本簾被覆によるものと比べて劣るとされている。本願発明に係るフィラーの少なくとも1つは紫外光を吸収する性質を有する物質である。白色反射テープに照射される太陽光は反射されるが、一部の太陽光はテープ内に進入してテープを透過することとなる。含有するフィラー特有の吸収スペクトルに基づいて当該フィラーに到達した透過光のうち紫外光が吸収されるため、シート下への透過光のうち紫外光の透過が減少することとなる。フィラーが1種類であれば、当該フィラーは白色顔料であり、かつ紫外光を吸収する性質を有する物質である。2以上の種類のフィラーの場合、その内の1または2以上の種類が紫外光吸収性を有する物質であり、他の1または2以上の種類が白色顔料であって、フィラー全体で紫外光吸収性とシート白色化の機能を発揮するということでも良い。
紫外光を吸収するフィラーの種類は限定されないが、紫外光吸収性を有し、白色顔料でもある酸化チタンが好ましい。
【0035】
また、前記フィラーが複数種類であり、少なくとも紫外光を吸収する白色顔料であるフィラーと可視光及び赤外光の反射性が高いフィラーを含むことを特徴とする茶樹用シートが提供される。
【0036】
本発明の目的に照らし、遮光性について異なる性質を有する複数のフィラーを組み合わせることもできる。上述の紫外光吸収効果を有するフィラーに可視光・赤外光の反射性が高いフィラーを組み合わせることも有力な組み合わせである。
【0037】
また、前記緯糸がモノフィラメント、扁平モノフィラメントまたは撚糸テープであることを特徴とする茶樹用シートが提供される。
【0038】
上述のように、棚施設内又は直掛け資材下は熱気がこもりやすく通気性はほとんどない。特に直掛け被覆では熱の伝達効率が高いため、高温下及び低温下のいずれにおいても通気性不足による悪影響が大きい。本発明では、通気性を確保するために、織り込む黒色素材を嵩高形状を有するモノフィラメント、扁平モノフィラメントまたは撚糸テープとした。モノフィラメント、扁平モノフィラメントまたは撚糸テープにより織り込まれたシートの形状は立体的な形状となる。すなわち、経糸である白色反射テープは、平面視では隙間なく並置されているが、側面視では嵩高な緯糸との製織によって上下にうねった形状となる。このうねりにより白色反射テープの側面にスペースが生じる。このスペースによって白色反射テープの側面に吹く風は下方の茶樹に到達することとなる。
【0039】
なお、モノフィラメント、扁平モノフィラメント、撚糸テープ以外素材でかさ高形状を有する素材であれば緯糸として採用することができる。同様に通気性を向上させることができるからである。
【0040】
また、前記製織法を両面斜文織りとすることを特徴とする茶樹用シートが提供される。
【0041】
斜文織りは、平織りに比べ緯糸が経糸と交差する箇所が減少することによって、経糸と緯糸間のスペースが増大する。朱子織りや絡み織りはさらにスペースが増大してルーズ過ぎる組織となってしまうので適切ではない。なお、両面斜文織りとすることによっていずれを上面(下面)にしても同様の効果を得ることができる。
【0042】
前記製織法を3/3、1/1の両面斜文織りとすることを特徴とする茶樹用シートが提供される。
【0043】
シートに立体的な空隙を作ることと許容される組織のルーズさのバランスを考慮して3/3、1/1の両面斜文織りとした。なお、両面斜文織りとは、経糸が複数の緯糸をまたぎ、ずらして織る織り方(斜文織り)のうち、経糸がまたぐ(浮いている)緯糸の本数とその次にくぐる(沈んでいる)緯糸の本数が同一のものをいう。経糸と緯糸の現われ方が表裏同一になる。3/3とは、三枚斜文ともいい、経糸、緯糸がそれぞれ3本ずつの単位で浮き沈みを繰り返す斜文織りをいう。3/3,1/1とは、3/3の変形で、経糸が3本の緯糸をまたいだ後に3本の緯糸をくぐり、さらに、1本の緯糸をまたいだ後に1本の緯糸をくぐることを1単位として、当該単位を繰り返すパターンを意味する。
【0044】
前記製織法を両面斜文織りと平織りを一定間隔に配置する織りであることを特徴とする茶樹用シートが提供される。
【0045】
斜文織り部に対して一定間隔で平織りを挿入することによって、斜文織りの飛び糸が緩くなる。同一ビームから供給される経糸の消費量が斜文織りと平織りでは異なるからである。
【発明の効果】
【0046】
経糸を隙間なく並置した白色反射テープとし、緯糸を黒色素材とする組み合わせによって、遮光性と遮熱性を両立させた被覆シートの提供が可能になった。経糸が黒色素材で緯糸が白色反射テープの場合、経糸、緯糸共に黒色素材の場合、経糸、緯糸共に白色反射テープである場合は、いずれも本発明の目的を達成できない。本発明では緯糸である黒色素材の配置の粗密調整によって、黒色化繊と遜色のない遮光性を示すことができる。
【0047】
本発明に係る白色反射テープの表面は白色顔料に基づく白色であり、その光反射性により被覆シートの温度上昇が抑止される。被覆シート下の茶樹はシート温度上昇による葉焼け等の弊害を防止することができる。内部練り込みによる白色顔料の場合は、均一により安価に延伸反射テープ内部に含有される。
【0048】
本発明の構造により、延伸反射テープの両表面共に同様の白色となり、同様の表面凹凸形状を呈する。このため、製織過程で延伸反射テープが捻られ、上面と下面が入れ替わっても効果に相違はない。リバーシブルな素材として効果を発揮できる。
【0049】
また、本発明に係る茶樹被覆シートは、表面に多数の突起部が形成されると共にオレフィン系樹脂内部に多数の顔料が存在することとなり、その構造により表面反射率及びシート内部反射率が高くなる。
いったん内部に進入した入射光も、その一部は顔料表面における反射やボイドにおける屈折を経由した反射によりテープ表面から拡散反射光として出光するので、遮光性及び遮熱性を高めることとなる。なお、拡散反射光とは、反射光のうち鏡面反射光を除いたものをいう。これらの相乗効果により、本発明によるテープは単なる白色のテープに比べ反射率が高まり、シートの温度上昇、蓄熱効果を防止することができる。
【0050】
延伸テープを極力薄くすることによって、顔料及びボイドをコアとしたテープ表面の突起部の発生、突起部の大きさの増大を促進することができる。また、顔料の粒径をテープの穴あきが発生しない限度でできるだけ大きくすることにより、ボイドをより大きく発生させることとなり、オレフィン系樹脂テープ表面の突起部をさらに大きく、高くすることができる。
【0051】
また、オレフィン系樹脂中の顔料の重量%をできるだけ大きくすることによって、オレフィン系樹脂中に存在する顔料の密度が高まる。このことにより、テープ表面に発生する突起部の数が増え、拡散反射率が高まる。さらに、顔料密度が高まることによって、テープ表面に近い顔料のさらに内部に別の顔料が存在する可能性が高まり、オレフィン系樹脂の表面と表面付近の顔料及びボイドに当たらずに内部に進入した入射光も内部の顔料によって反射する可能性が高くなる。これらにより、全体の反射率はさらに高くなる。
【0052】
経糸のテープ幅とテープ厚みをアスペクト比で20:1ないし45:1とすることにより、薄肉化による突起部の形成を確保しつつ、製織時の幅方向へのテープの折り畳みを防止することができる。
【0053】
白色反射テープ中に紫外光を吸収する白色顔料であるフィラーを有することによって、選択的遮光性を発揮することが可能になる。上述のように、黒色化繊は特に波長による遮光率の差違はないのに対して本簾被覆の場合には紫外光領域に対して選択的に高い遮光率を有しており、このことが両者の品質の差違をもたらす旨の報告がある。本発明に係る被覆シートは、取り扱いが黒色化繊同様に簡便でありながら、紫外光に対して選択的な遮光性を有することにより、黒色化繊よりも高品質の茶葉を生産することが可能になる。
【0054】
複数の異なる性質を有するフィラーを含むことによって、紫外光領域に対して選択的に高い遮光率を有しつつ可視光や赤外光領域における遮光性をより高いレベルで保持することができる。
【0055】
緯糸がモノフィラメント、扁平モノフィラメントまたは撚糸テープという立体的な形状とすることにより、風をモノフィラメントまたは撚糸テープの側面から下方に誘導することが可能になり、茶樹への通気性を向上させる。このことにより、高温下、低温下における茶樹の葉焼け等の弊害を軽減することができる。
【0056】
両面斜文織りに基づく経糸と緯糸間のスペース増大により、シートの通気性を向上させることができる。通気性向上と遮光性はトレードオフの関係にはならない。斜文織りによるスペース増大というのは、経糸と緯糸が交差しない部分は緯糸が経糸とルーズに重なることとなってスペースが生じるというものである。この場合において、平面視では、斜文織りも平織りと同様に重なっており相違はない。したがって、上方から照射する太陽光に対しての遮光性の影響は軽微である。なお、両面斜文織りとすることにより、シートのいずれを上面としても同様の効果を得ることができる。
【0057】
3/3の両面斜文織りとすることにより、遮光性を考慮しつつ通気性を向上させるシートの提供が可能になる。通気性の向上は必要な遮光性を担保しつつ行う必要があるが、その観点から3/3、1/1が好ましい。なお、3/3のみではなく1/1を加えたパターンとしたのは、3/3のみの斜文織りパターンでは経糸と緯糸の交点が少なく、織目のズレ等が発生し形態安定性に欠けるからである。
【0058】
両面斜文織りと平織りを一定間隔に配置する織りとすることにより、全面的な斜文織りと同等の通気性向上効果を発揮することができる。また、平織りを含めることによって、全面斜文織りに比べてシートの形状安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明における実施例1に係る茶樹用被覆シートの部分平面画像である。
【
図2】本発明における実施例1に係る茶樹用被覆シートの部分斜面画像である。
【
図3】本発明における実施例2に係る茶樹用被覆シートの部分平面画像である。
【
図4】本発明における実施例2に係る茶樹用被覆シートの部分斜面画像である。
【
図5】本発明における比較例1に係る茶樹用被覆シートの部分画像1である
【
図6】本発明における比較例1に係る茶樹用被覆シートの部分画像2である
【
図7】本発明における比較例2に係る茶樹用被覆シートの拡大部分画像である
【
図8】本発明における実施例2に係る茶樹用被覆シートの部分画像である
【
図9A】本発明における両面斜文織の平面概念図である。
【
図9B】本発明における両面斜文織の意匠図である。
【
図9C】本発明における両面斜文織の断面概念図である。
【
図11】本発明における遮光率測定装置の概念図である。
【
図12】本発明における実施例及び比較例についての波長毎の遮光率である。
【
図13】本発明における実施例及び比較例についての波長毎の反射率である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に本発明をより詳細に説明する。本発明に係る茶樹用被覆シートは、本発明の目的を達成するために、黒色化繊に代表される従来の茶樹用一般遮光資材とは大きく異なる構造を採用した。
【0061】
従来は黒色の経糸を粗い密度で並置し、緯糸である黒色テープの並置の密度を変える事によって遮光率と通気性を調整・確保する構成であった。
【0062】
本発明においては、先ず、遮熱性を高めつつ遮光率を保持することとした。このため、経糸に白色の反射テープを採用して隙間なく並置して緯糸と製織することとし、さらに高遮光性を確保するために緯糸には黒色素材を採用して、黒色素材の粗密調整や繊度の選択によりシート全体の遮光率を高次元で調整することとした。
【0063】
経糸として使用する白色反射テープの素材としては、ポリオレフィン製延伸テープに用いられるポリオレフィン樹脂として高密度ポリエチレン、直鎖共重合体、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、エチレンープロピレンブロック共重合体、あるいはエチレンープロピレンランダム共重合体、またはそれらの混合物を使用することが出来る。これらの中で、延伸テープの強度等の機械的物性や、製造時の押出成形性、延伸性等を勘案すると高密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、メルトフローレートが高密度ポリエチレンで0.4~1.0g/10分、ポリプロピレンで0.8~6g/10分のものが好ましい。
【0064】
次に、緯糸として使用する黒色素材について説明する。緯糸として使用する黒色素材としては、ポリオレフィン製延伸モノフィラメント、テープに用いられるポリオレフィン樹脂として高密度ポリエチレン、直鎖共重合体、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、エチレンープロピレンブロック共重合体、あるいはエチレンープロピレンランダム共重合体、またはそれらの混合物を使用することが出来る。これらの中で、延伸モノフィラメント、テープの強度等の機械的物性や、製造時の押出成形性、延伸性等を勘案すると高密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、メルトフローレートが高密度ポリエチレンで0.4~1.0g/10分、ポリプロピレンで0.8~6g/10分のものが好ましい。緯糸である黒色素材はその立体構造を作る為に丸断面に近い形状を選択する。例えばモノフィラメント、モノフィラメントを潰した扁平モノフィラメント、及びテープを撚糸し、テープより嵩高な形状とする。この緯糸の粗密調整や繊度の選択により遮光性の調整を行う。
【0065】
本茶樹用被覆シートの白色反射テープに含ませるフィラーとしては、紫外光吸収性を有する白色顔料のみとすることもできる。被覆シートは遮光性、遮熱性が高く、かつ、選択的に紫外光領域の遮光性の高い性質を有することとなる。また、紫外光吸収性を有する白色顔料と可視光及び赤外光の反射性が高いフィラーの2種類とすることもできる。係る組み合わせにより、本茶樹用被覆シートはより遮熱性が高く、かつ、選択的に紫外光領域の遮光性の高い性質を有することとなる。白色反射テープに含まれるフィラーの種類、組み合わせはこれらに限定されるものではない。例えば、白色以外の赤外線反射顔料を含む場合、顔料以外の、可視光や赤外光の反射性が高い物質、紫外光吸収性を有する物質を含む場合も排除されない。
【0066】
フィラーについて具体的に説明する。本発明に係る白色反射テープ(組成物)において、前記ポリオレフィン樹脂と混合するフィラー(無機充填剤)は、従来からフィルムの製造において使用される公知のものが使用される。例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水和珪酸、無水珪酸、ソーダ灰、硫酸バリウム、その他無機物または無機物を主体とする有機金属塩等を挙げることができる。
【0067】
これらの例示のうち、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等が好ましく、粒径が小さく表面積の大きい酸化チタン、炭酸カルシウムが特に好ましい。
【0068】
本発明において前記無機充填剤、特に炭酸カルシウムの粒径は得られるポリオレフィン製テープの形成、及び反射に大きく影響することから0.1~15μmであり、平均粒径が3~6μmであることが好ましい。粒径が小さいとボイドの発生が難しく、またテープ表面のミクロな凹凸の形成ができない。また粒径が大きいもの、含有量が多い場合は、均等分散が難しく、製膜が保てず未延伸フィルムに穴あき(フィッシュアイ)現象を発生させ、延伸ができずテープ化が困難となる。
【0069】
酸化チタンは紫外光を吸収する性質を有するが可視光及び赤外光は反射するため、シート温度の上昇をもたらさず、被覆された茶葉に対する遮熱性を保持できる。酸化チタンの粒径は特に制限されないが本発明の反射・遮蔽の効果として一般的に顔料用に供される0.2~0.3μmの粒径が使用できる。
【0070】
更に本発明の組成には必要に応じて、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、界面活性剤、発泡剤、難燃剤、分散剤等の公知の各種添加剤が本発明の効果を阻害しない範囲で配合されてよい。
また、前記ポリオレフィン樹脂と前記無機充填剤とを混合する方法は特に限定されず、公知の方法が採用できる。
【0071】
本発明に係る白色反射テープの製造方法について説明する。製膜方法については公知の方法、例えばTダイ水冷方式、Tダイチルロール方式、水冷、及び空冷インフレーション方式等が挙げられる。次いで得られた未延伸フィルムを延伸後の繊度に応じた幅にスリットする。スリットは公知の方法、例えばスリットする幅に組まれたレザー刃、あるいはロータリーカッター(丸刃)等が挙げられる。次いでスリットされた未延伸テープを所定の倍率で熱を加えながら流れ方向に引き伸ばすことで織編布に適した、繊度(テープの太さ)、幅、厚み形状、更には機械的物性を付与するものである。
【0072】
一般に未延伸フィルムを延伸することでポリオレフィン樹脂と無機充填剤との界面にお
いて剥離が起こり空隙(ボイド)が出来ることが知られている。本発明の特徴である前記無機充填剤粒径添加の前記未延伸フィルムを延伸して薄くすることによってボイド発生と同時に内在した微粒子を延伸テープ表面に顕在化させることによって効果を得るものである。最終厚みが確保できれば延伸倍率は特に限定されないが好ましくは4~9倍の範囲である。
【0073】
次いで織編布の寸法安定性等の為に延伸によって発生した歪を加熱緩和して除去する。延伸テープの繊度(太さ)は特に限定されるものではないが織編布としての成形性から100~3000デシテックス(以下、dtと称す)であり、好ましくは200~2000dtの範囲である。
【0074】
製織法について説明する。先ず、「白色の反射テープを隙間なく並置して緯糸と製織するについて説明する。経糸の並びについて、織物の経密度を24本/2.54cmとすると、経テープを24目/2.54cmの筬(織物の経密度を規則的に並べるもの)に所要の織幅に応じた本数を通すことになる。この場合、2.54/24から算出された幅1.058mmテープを筬に通すことにより計算上隙間なく並置されたこととなるが、製織において、テープが折れずに若干の重なりが生ずるようにやや広いテープ幅(例えば幅1.2mm)を選択することが隙間の発生を防止する観点から、より好ましい。
【0075】
織り方は両面斜文織を採用し、側面視で空間のある立体構造とした。立体構造としたこと及び嵩高な緯糸を採用することによって通気性の改善を図ったものである。織り方は両面斜文織りに限定されず、両面斜文織りと平織りを一定間隔に配置する織り等他の立体構造を有する織り方でも良い。なお、立体構造とすることにより側面に若干の空間を形成しても、その空間の向きは上方から照射する照射光の角度とは一致しない。したがって、空間を形成したことは遮光性に多少の影響を与えるものの深刻な影響を与えることはない。なお、両面斜文織の場合、通気性改善と遮光性保持のバランスを考慮すると3/3,1/1の両面斜文織りが特に好ましい。
【実施例0076】
以下、実施例、及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、実施例、及び比較例に掲載した物性測定値は以下に示す方法によって行ったものである。
1)通気性測定
JIS L 1096 A法(フラジール形法)
2)拡散反射率、透過率
(株)島津製作所製 SolidSpec 3700DUV
3)遮熱試験
図11の遮熱試験の具体的作業を説明する。JIS L 1951 生地の遮熱性試験の場合、光源51としてレフランプを使用する。また、試料背面に受光体を非接触で配置し試料52を通過した日射の熱(放射熱)を受光体に吸収させる。任意の時間、光を照射して試料52を装着した受光体53の上昇温度を測定することとなる。
〔実施例1〕
【0077】
ポリプロピレン(MI=2.4g/10分、密度=0.9、融点=163℃)76重量%及びそれに加える平均粒径5μmの炭酸カルシウム24重量%を含んでなる組成物を100重量部に対して、酸化チタン6重量部と耐候剤を0.5重量部とを加える混合物であり、それらを重量式の自動原料混合装置を使用して混合した後、スクリュー65mmφ押出機のTダイで樹脂を押出し、チルロールで冷却して製膜した。
【0078】
その条件として、シリンダー温度240℃、ダイ温度225℃、引取り速度14m/minの条件にて厚み100μmの未延伸フィルムを成形、続いて未延伸フィルムを幅方向に3mm間隔に並べたカミソリ刃でスリットし100℃で縦方向に7倍で縦延伸して、幅1.2mm、厚み50μm、繊度580dtの延伸テープを得た。
【0079】
得られた延伸テープを経糸として密度を24本/2.54cmとし、緯糸にモノフィラメントの丸断面を扁平状にした黒色1600dtの糸を密度12本/2.54cmとして織り込んだ。織り方として3/3、1/1の両面斜文織で製織した。得られたシートの諸特性を前記方法で測定した。
【0080】
3/3、1/1の両面斜文織の平面図を
図9Aに、意匠図を
図9Bに、断面図を
図9Cに示す。また、平織りの平面図を
図10Aに、意匠図を
図10Bに、断面図を
図10Cに示す。両平面図及び両意匠図において各経糸2は上下方向に連なり、緯糸3は横方向に連なっている。両断面図において、中央部の黒丸は緯糸3を、点線又は実線は経糸2を示している。
【0081】
実施例1に係る被覆シートの部分平面図を
図1に示す。1は、本発明に係る茶樹用被覆シートの一部である。白色の経糸21は本発明に係る反射テープである。黒色の緯糸31は扁平モノフィラメントである。部分平面図では隙間なく並置された経糸によりシートの空隙部分は見当たらない。次に、同じ被覆シートの部分斜面図を
図2に示す。緯糸31が嵩高いため、経糸の浮き沈みの幅が大きく、緯糸と交差する部分の周辺に側面方向の空隙4が発生している。したがって、上方から照射する太陽光の遮光にはあまり影響はないが、通気性は大きく改善する。
〔実施例2〕
【0082】
経方向は糸の種類、密度ともに実施例1と同一条件とし、緯方向の糸も実施例1と同一糸を使用し密度のみ15本/2.54cmとした。製織方法も同じ3/3、1/1の両面斜文織とした。
【0083】
実施例2に係る被覆シートの部分平面図を
図1に、部分斜面図を
図2に示す。実施例1に比べ緯糸31を25%密に配置した。このため、実施例1と比べて側面方向の空隙4の幅が縮小し空隙面積は小さくなっている。
〔比較例1〕
【0084】
実施例に対し、一般的に使用される黒色化繊シート、詳細には経糸に相当する高密度ポリエチレン製カーボンブラックで調色されたモノフィラメントを約12mmピッチに配し、緯に相当のポリプロピレン製で黒に調色されたテープ幅2.3mm、厚み55μm、1100dtのテープ32(16本/2.54cm)をラッセル(経編)された遮光率85%品の比較試験を行った。
【0085】
比較例1に係る被覆シートの部分画像を
図5及び
図6に示す。
図5の横方向、
図6の縦方向に連なっているのが黒色に調色されたポリプロピレン製テープ32である。
〔比較例2〕
【0086】
実施例に対して現在高級お茶用の被覆遮光シートとの比較として、詳細には、経糸2として、高密度ポリエチレン(MI=0.6g/10分、密度=0.959、融点=134℃)製カーボンブラックで調色されたモノフィラメント310t(10.7本/吋)を1か所に4本集中して配置し、かつ、実施例1同様に当該モノフィラメント4本と4本の間を約1cm離した状態のところに前記片面がアルミ蒸着による反射性能を有し、片面がブラック色の複合スリットテープ22(幅7mm)を挿入したものを設け、緯糸3として、高密度ポリエチレン(MI=0.6g/10分、密度=0.959、融点=134℃)製カーボンブラックで調色されたモノフィラメント310t(14.4本/吋)を設けた平織り品を評価した。
【0087】
比較例2に係る被覆シートの部分画像を
図7及び
図8に示す。光沢を有しているのがアルミ蒸着複合スリットテープ22である。
【0088】
実施例1、2及び比較例1、2について計測した波長毎の遮光率を
図12に示す。実施例1に係る遮光率J1は実線、実施例2に係る遮光率J2は破線、比較例1(H1)は点線、比較例2(H2)は一点鎖線である。可視光及び近赤外光の領域では全体として見ると大きな差違はなく85%内外の数値となっている。波長毎に観察すると、実施例1及び実施例2では紫外光領域に近い波長では比較例1及び比較例2に対して10ポイント以上の高い遮光性を示している一方、それより長波長の領域ではやや右肩下がりとなっている。実施例1の場合は近赤外光領域の遮光性が5%程度低い。実施例2の場合は比較例1、比較例2と比べあまり遜色がなく、特に比較例1とはほぼ同等の遮光性をキープしている。
【0089】
紫外光領域では、実施例1、2と比較例1,2では際だった差違が示されている。実施例1及び実施例2では紫外光領域の全域でほぼ100%の遮光率であるのに対して、比較例1,及び比較例2では85%程度の遮光率であり、15ポイント程度の差がある。
【0090】
実施例1、2及び比較例1、2について計測した波長毎の反射率を
図13に示す。比較例1(H1)は全波長領域にわたりほとんど反射性を有さない。実施例1(J1),2(J2)比較例2(H2)は可視光領域及び近赤外光領域ではほぼ同様の遮光率を示すが、紫外光領域では比較例2が30~60%の反射率であるのに対して、実施例1,2は10%程度の反射率と大きく乖離している。
図12の紫外光領域の遮光率が、実施例1,2はほぼ100%、比較例2が85%程度であることを考慮すると、実施例1,2は紫外光吸収性によって極めて高い遮光性を獲得していることが推察される。
【0091】
実施例1、2及び比較例1、2について、遮光率・反射率のまとめ及び遮熱性・通気度の計測値を表1に示す。なお、遮光率、反射率の数値は、UVAは波長315~380nm、可視光は波長380~800nm、近赤外は波長800~2500nmのそれぞれの平均遮光率又は平均反射率を示す。
【表1】
【0092】
遮光率及び反射率については上述の通りである。遮熱性については、実施例1及び実施例2の場合、従来の一般的な被覆材である比較例1と比較して11℃の低下が認められ、遮熱性を有することが示されている。比較例2はアルミ蒸着の反射効果により遮熱性が高いことが一般に認識されているが、本発明に係る実施例1,2はそれと同等の値である。通気性については、配置密度の違いが影響している。粗に配置されている比較例1が通気性に優れ、密に配置した他の例に勝っている。しかし、実施例1,2を比較例2と対比すると実施例2で20%、実施例1で40%通気度が向上している。本発明に係る緯糸の選択、織り方の選択により、経糸を密に並置して製織した被覆シートであっても、通気性が改善されているものと推察される。
本発明は、棚掛け用及び直掛け用被覆シートとして有用なものである。日本茶の需要は急須で淹れる煎茶の需要が低迷している一方、食品に添加される広い意味の抹茶需要が輸出を含めて急増している。この需要増に対応するためには、被覆栽培をより効果的かつ効率よく改善していく必要がある。本発明はその必要性に応えるものであり、産業上の利用可能性が高い。