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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069036
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】送風装置およびこれを備えた燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20220428BHJP
   F23L 5/00 20060101ALN20220428BHJP
   F24H 1/12 20220101ALN20220428BHJP
【FI】
F04D29/28 J
F23L5/00
F24H1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177970
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】馬越 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】岩本 幹大
【テーマコード(参考)】
3H130
3K023
3L034
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB46
3H130AC27
3H130BA13C
3H130CB05
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130EA07C
3H130EA08C
3H130EB03C
3H130EB04C
3K023HA05
3K023HA16
3K023HA17
3L034BA22
3L034BB03
(57)【要約】
【課題】従来よりも騒音低減効果を高めることが可能な送風装置を提供する。
【解決手段】送風装置Aを構成する羽根車1の後側シュラウド13のうち、外周縁寄り領域の前面部には、半径方向外方側ほど前側に位置するように傾斜する第1の傾斜面部13aが形成されている一方、この第1の傾斜面部13aよりも中央寄り領域の前面部には、半径方向外方側ほど後側に位置するように傾斜する第2の傾斜面部13bが形成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空気を内部に流入させるための吸気口を形成している前側壁部、およびこの前側壁部に間隔を隔てて対向する後側壁部を備えているケーシングと、
前記前側壁部および前記後側壁部の相互間に位置するようにして前記ケーシング内に回転可能な状態で配されている羽根車と、
を備えており、
前記羽根車は、前側シュラウドおよび後側シュラウドの相互間に複数の羽根が周方向に間隔を隔てた配置で設けられ、かつ前記吸気口から内部に流入した空気を前記前側シュラウドと前記後側シュラウドとの相互間の領域からその外方に流出可能とされている、送風装置であって、
前記羽根車の前記後側シュラウドのうち、外周縁寄り領域の前面部には、半径方向外方側ほど前側に位置するように傾斜する第1の傾斜面部が形成されている一方、この第1の傾斜面部よりも中央寄り領域の前面部には、半径方向外方側ほど後側に位置するように傾斜する第2の傾斜面部が形成されていることを特徴とする、送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送風装置であって、
前記第1および第2の傾斜面部は、段差がない状態で互いに繋がっている、送風装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の送風装置であって、
前記後側シュラウドの中央部には、前記羽根車を支持して回転させるモータの駆動軸が連結される駆動軸連結用領域が、前記吸気口よりも狭い面積で設けられており、
前記第2の傾斜面部は、前記駆動軸連結用領域の前面部よりも後側に位置するようにして、前記駆動軸連結用領域の半径方向外方側に広がっている、送風装置。
【請求項4】
請求項3に記載の送風装置であって、
前記羽根車は、前記前側シュラウドおよび前記後側シュラウドのそれぞれの外周縁によって挟まれて形成され、かつ前記空気流路への空気流出を可能とする空気流出用の開口部を有しており、
この空気流出用の開口部の少なくとも1/2以上は、前記駆動軸連結用領域の前面部よりも前側に位置している、送風装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の送風装置であって、
前記前側シュラウドのうち、外周縁寄り領域の後面部には、半径方向外方側ほど前側に位置するように傾斜する第3の傾斜面部が形成されている一方、この第3の傾斜面部よりも中央寄り領域の後面部には、半径方向外方側ほど後側に位置するように傾斜する第4の傾斜面部が形成されている、送風装置。
【請求項6】
バーナと、このバーナに燃焼用空気を供給するための送風装置と、を備えている、燃焼装置であって、
前記送風装置として、請求項1ないし5のいずれかに記載の送風装置が用いられていることを特徴とする、燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心型送風装置などの送風装置、およびこれを備えた燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送風装置の具体例として、図7に示すようなものがある(たとえば、特許文献1,2を参照)。
同図の送風装置Aeにおいては、羽根車1Eがケーシング2内に収容され、かつモータMによって駆動回転自在とされている。ケーシング2は、吸気口24を有する前側壁部21、後側壁部22、および羽根車1Eの外周囲を囲む周壁部20を有し、この周壁部20と羽根車1Eとの相互間には、送風口4aに繋がった空気流路4が形成されている。羽根車1Eの駆動回転時においては、ケーシング2の外部の空気が吸気口24を介して羽根車1Eの内側の中心部に吸気されてから、羽根車1Eの外周囲の空気流路4に流出し、送風口4aから外部に吐出される。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次のように、改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、羽根車1Eからその外周囲の空気流路4に空気が流出する方向は、概略的には、矢印Neで示すように、羽根車1Eの半径方向外方とされているが、実際には、矢印Naで示すように、後側壁部22側に向かうように傾く。これは、ケーシング2の外部空気が吸気口24を介して羽根車1Eの中心部に吸気される際の矢印Nfで示す空気流れが、ケーシング2の後方側に向かう流れであり、その慣性が羽根車1Eから空気流路4への空気流出に影響を及ぼすからである。
一方、前記したように羽根車1Eから矢印Naで示すように傾いた角度で空気流出がなされると、この空気は、後側壁部22に強く衝突し、乱流となる。このような空気の乱流が発生したのでは、空気の流速の周期的な変動を生じ、空力音として、大きな騒音が発生する。送風装置には、静寂性が求められる場合が多く、前記したような騒音は、できる限り低減することが望まれる。
【0005】
なお、従来においては、図8に示すように、羽根車1Fの後側シュラウド13を、外周縁側に進むほどこの羽根車1Fの前側(図8の上側)に位置するように湾曲して傾斜させたものがある(特許文献3を参照)。このような構成によれば、羽根車1Fの内側の中心寄り部分から半径方向外方に流出する空気を、後側シュラウド13の前面部によってガイドし、矢印Ngで示すように、ケーシングの後側壁部22から離反する前側方向寄りに進行させることが可能である。
【0006】
ところが、この手段によれば、同図の矢印Nhで示すように、羽根車1Fの内側の中央部に、その前方から空気が流入してから、後側シュラウド13の前面部に沿って流れる場合に、空気の流れ方向が急変する。具体的には、同図の角度α2は鋭角となる。
送風装置における騒音を低減するには、空気の進行方向が急変することはできる限り回避することが望ましいが、図8の手段はそのようなことに対応しておらず、騒音を低減する上で、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-110526公報
【特許文献2】特開2017-150472号公報
【特許文献3】特開平3-18692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、従来よりも騒音低減を図ることが可能な送風装置、およびこれを備えた燃焼装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明の第1の側面により提供される送風装置は、外部空気を内部に流入させるための吸気口を形成している前側壁部、およびこの前側壁部に間隔を隔てて対向する後側壁部を備えているケーシングと、前記前側壁部および前記後側壁部の相互間に位置するようにして前記ケーシング内に回転可能な状態で配されている羽根車と、を備えており、前記羽根車は、前側シュラウドおよび後側シュラウドの相互間に複数の羽根が周方向に間隔を隔てた配置で設けられ、かつ前記吸気口から内部に流入した空気を前記前側シュラウドと前記後側シュラウドとの相互間の領域からその外方に流出可能とされている、送風装置であって、前記羽根車の前記後側シュラウドのうち、外周縁寄り領域の前面部には、半径方向外方側ほど前側に位置するように傾斜する第1の傾斜面部が形成されている一方、この第1の傾斜面部よりも中央寄り領域の前面部には、半径方向外方側ほど後側に位置するように傾斜する第2の傾斜面部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、羽根車が回転する際には、外部から吸気口を通過して羽根車の内側に流入した空気の一部は、後側シュラウドの前面部の第2の傾斜面部、および第1の傾斜面部に順次ガイドされ、羽根車の半径方向外方側に進行していく。ここで、前記第2の傾斜面部は、半径方向外方ほど後側に位置するように傾斜しているため、吸気口を通過してその前方側から後側シュラウドの内側に進入した空気が前記第2の傾斜面部に沿って流れる場合、その方向は急激(鋭角)には変化しないこととなり、空気の流れ方向の変更角度を緩やかな角度とすることができる。つまり、図8の矢印Nhで示した空気流れの鋭角な方向変更を生じないようにすることが可能である。
一方、後側シュラウドの第1の傾斜面部は、半径方向外方側ほど前側に位置するように傾斜しているため、この第1の傾斜面部にガイドされて羽根車の半径方向外方側に流出する空気を前側寄りに進行させることが可能となる。つまり、図7の矢印Naで示したケーシングの後側壁部に衝突し、乱流を生じさせる空気流れをなくし、または少なくすることが可能である。
このように、本発明によれば、空気の進行方向が急変すること、および羽根車から流出する空気がケーシングの後側壁部に強く衝突して乱流が発生することの双方を適切に防止または抑制することが可能であるため、それらに起因する騒音を低減し、従来技術と比較して静寂性を大幅に高めることが可能である。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の傾斜面部は、段差がない状態で互いに繋がっている。
【0013】
このような構成によれば、羽根車の中央寄り領域に進入した空気が、後側シュラウドの第2の傾斜面部および第1の傾斜面部に沿って順次流れる場合に、この空気流れを円滑なものとし、乱流を生じ難くすることができる。このことにより、静寂性をより高めることが可能となる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記後側シュラウドの中央部には、前記羽根車を支持し
て回転させるモータの駆動軸が連結される駆動軸連結用領域が、前記吸気口よりも狭い面積で設けられており、前記第2の傾斜面部は、前記駆動軸連結用領域の前面部よりも後側に位置するようにして、前記駆動軸連結用領域の半径方向外方側に広がっている。
【0015】
このような構成によれば、後側シュラウドの中央部の駆動軸連結用領域を利用して、羽根車をモータの駆動軸に適切に連結させること、および後側シュラウドに第2の傾斜面部を形成すること、の両立を適切に図ることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記羽根車は、前記前側シュラウドおよび前記後側シュラウドのそれぞれの外周縁によって挟まれて形成され、かつ前記空気流路への空気流出を可能とする空気流出用の開口部を有しており、この空気流出用の開口部の少なくとも1/2以上は、前記駆動軸連結用領域の前面部よりも前側に位置している。
【0017】
このような構成によれば、駆動軸連結用領域の前面部を基準として、羽根車の空気流出用の開口部がかなり前側に位置しているため、羽根車とモータとを接近させて、モータの駆動軸の寸法を短くし、その振動を抑制しつつ、羽根車の空気流出用の開口部を、ケーシングの後側壁部からその前方側に比較的大きな寸法で離間させた配置に設定することができる。したがって、羽根車が回転する際の騒音をより低減することが可能である。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記前側シュラウドのうち、外周縁寄り領域の後面部には、半径方向外方側ほど前側に位置するように傾斜する第3の傾斜面部が形成されている一方、この第3の傾斜面部よりも中央寄り領域の後面部には、半径方向外方側ほど後側に位置するように傾斜する第4の傾斜面部が形成されている。
【0019】
このような構成によれば、羽根車の前側シュラウドの第3および第4の傾斜面部は、後側シュラウドの第1および第2の傾斜面部に対応した構成とされており、吸気口から羽根車の内側の中央寄り領域に進入した空気が、羽根車の半径方向外方側に進行する場合に、この空気の流れが急変することは、より徹底して抑制される。また、羽根車の半径方向外方側の空気流路に空気が流出する際に、ケーシングの後側壁部に衝突することも、より徹底して抑制される。したがって、騒音を低減し、静寂性を優れたものとする上で、一層好ましい。
【0020】
本発明の第2の側面により提供される燃焼装置は、バーナと、このバーナに燃焼用空気を供給するための送風装置と、を備えている、燃焼装置であって、前記送風装置として、本発明の第1の側面により提供される送風装置が用いられていることを特徴としている。
【0021】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される送風装置について述べたのと同様な効果が得られる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る送風装置の一例を簡略化して示す正面断面図である。
図2】(a)は、図1のII-II断面図であり、(b)は、(a)の作用説明図である。
図3図2(a)の分解断面図である。
図4図1図3に示す送風装置の羽根車の要部分解断面図である。
図5図1図3に示す送風装置を備えて構成された燃焼装置およびこの燃焼装置を利用して構成された給湯装置の一例を示す要部断面図である。
図6】本発明の他の例を示す要部断面図である。
図7】従来技術の一例を示す断面図である。
図8】従来技術の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
なお、理解の容易ため、図7および図8に示した従来技術と同一または類似の要素には、図7および図8に示した符号と同一の符号を適宜用いることとする。
【0025】
図1図3に示す送風装置Aは、遠心型であり、図2および図3によく表われているように、羽根車1、この羽根車1を内部に収容するケーシング2、および羽根車1の駆動回転用のモータMを備えている。
【0026】
羽根車1は、前側シュラウド12、後側シュラウド13、および複数の羽根11を備えている。複数の羽根11は、図1に示すように、この羽根車1の周方向に間隔を隔てて並んだ放射状配列であって、半径方向に略直線状に延びており、本実施形態の送風装置Aは、ラジアルファンとして構成されている。前側シュラウド12は、中央部に吸気用の開口部14が形成された中空円板状であり、複数の羽根11の前側に位置する。後側シュラウド13は、前側シュラウド12と外径が略同一の円板状であり、複数の羽根11の後側に位置する。図4に示すように、前側シュラウド12および後側シュラウド13には、各羽根11の前部および後部にそれぞれ突設されたカシメ用の複数の凸部16aが挿入される複数の孔部16bが設けられている。凸部16aのカシメ加工により、前側シュラウド12および後側シュラウド13と複数の羽根11との連結が図られる。
前側シュラウド12および後側シュラウド13の詳細な形状については、後述する。
【0027】
図2および図3によく表れているように、ケーシング2は、前側壁部21、後側壁部22、および周壁部20を有している。周壁部20は、羽根車1の外周囲を囲み、かつ上部に送風口4aを有しており、羽根車1の外周先端部とケーシング2の周壁部20との相互間には、羽根車1から流出する空気を送風口4aに導く空気流路4が形成されている。前側壁部21は、吸気口24、およびこの吸気口24の周縁部に形成された内向き突出状の筒状ガイド部24aを有している。
【0028】
ケーシング2の後側壁部22は、周壁部20に繋がった主後側壁部22aと、これとは別体の補助後側壁部22bとが組み合わされて構成されている。主後側壁部22aには、羽根車1よりも大径の開口部25が形成されている。この開口部25は、送風装置Aの組み立て作業時やメンテナンス時における羽根車1の出し入れ口として利用される。補助後側壁部22bは、開口部25を塞ぎ、かつモータMを取付けるための取付け板としての役割を果たす部位であり、主後側壁部22aにビス5bを介して取付けられている。モータMは、ビス5を介して補助後側壁部22bに取付けられている。
【0029】
羽根車1の後側シュラウド13は、中央部に位置する駆動軸連結用領域13cの周囲領域が湾曲し、かつこの湾曲した領域の前面部は、第1および第2の傾斜面部13a,13bとして形成されている。
【0030】
後側シュラウド13の駆動軸連結用領域13cは、モータMの駆動軸30の連結に利用される領域であって、後側シュラウド13の中央部に、吸気口24(および吸気用の開口部14)の開口面積よりも狭い面積で位置する平板状の領域である。この駆動軸連結用領域13cには、モータMの駆動軸30が貫通し、かつこの駆動軸30に螺合するナット30aが締め付けられ、駆動軸30と後側シュラウド13との連結が図られている。このことにより、羽根車1はモータMの駆動軸30に支持されて回転可能である。
【0031】
後側シュラウド13の第2の傾斜面部13bは、駆動軸連結用領域13cの周囲に位置するようにして駆動軸連結用領域13cに繋がり、かつ第1の傾斜面部13aよりも後側シュラウド13の中央寄りに位置している。この第2の傾斜面部13bは、半径方向外方側に進むほど後側に位置するように傾斜している。このため、第2の傾斜面部13bは、送風装置Aの前後方向において、駆動軸連結用領域13cの前面部よりも後側に位置している。また、この第2の傾斜面部13bの一部(中央側部分)は、吸気口24(および吸気用の開口部14)に対向している。
【0032】
後側シュラウド13の第1の傾斜面部13aは、後側シュラウド13の外周縁寄りに設けられ、第2の傾斜面部13bの外周囲に位置するようにして第2の傾斜面部13bに繋がっている。この第1の傾斜面部13aは、第2の傾斜面部13bとは反対に、半径方向外方側に進むほど前側に位置するように傾斜している。
本実施形態においては、第1および第2の傾斜面部13a,13bは、ともに曲面状であって、段差がない状態で互いに繋がっており、これら全体として、後側に窪む1つの凹状曲面をなしている。
【0033】
前側シュラウド12は、後側シュラウド13の前記した湾曲領域と同様な形態に湾曲しており、この前側シュラウド12の後面部として、第3および第4の傾斜面部12a,12bを備えている。第3の傾斜面部12aは、前側シュラウド12の外周縁寄り領域の後面部であり、半径方向外方ほど前側に位置するように傾斜している。第4の傾斜面部12bは、第3の傾斜面部12aよりも前側シュラウド12の中央寄り領域の後面部であり、半径方向外方ほど後側に位置するように傾斜している。これら第3および第4の傾斜面部12a,12bは、ともに曲面状であって、段差がない状態で互いに繋がっており、かつこれら全体としては、後側に突出した形態の1つの凸状曲面をなしている。
【0034】
羽根車1の前側シュラウド12および後側シュラウド13のそれぞれの外周縁の相互間には、空気流出用の開口部15が形成されており、ケーシング2の外部から吸気口24を介して羽根車1の中央領域に進入した空気が開口部15から羽根車1の外周囲の空気流路4に流出するように構成されている。ここで、本実施形態においては、後側シュラウド13が前記した湾曲形状であることに基づき、前後幅Wの開口部15の略全体が、駆動軸連結用領域13cの前面部(前面部の延長線La)よりも前側に位置する構成に設定されている。
【0035】
前記した送風装置Aは、たとえば図5に示すような給湯装置WHを構成する燃焼装置Cの構成要素として用いられる。
同図に示す給湯装置WHは、燃焼装置Cと、熱交換器9とを備えており、燃焼装置Cは、ケース80内に配されたバーナ8を備え、送風装置Aは、このバーナ8に燃焼用空気を供給可能である。熱交換器9は、伝熱管90を備えており、バーナ8によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なうことにより、伝熱管90内を流れる湯水が加熱され、温水が生成される。
【0036】
次に、前記した送風装置Aの作用について説明する。
【0037】
まず、羽根車1の回転時においては、図2(b)の矢印N1で示すように、ケーシング2の外部の空気が、吸気口24から羽根車1の内側の中央部付近に流入し、かつその一部は、後側シュラウド13の前面部に沿って半径方向外方側に進行していく。その際、前記空気は後側シュラウド13の第2の傾斜面部13bによってガイドされるが、この第2の傾斜面部13bは、半径方向外方側ほど後側に位置しているため、前記空気の方向転換角度α1は、鋭角にならないようにし、空気の流れ方向が急変することを抑制する作用が得
られる。これは、騒音を低減する効果をもたらせる。
【0038】
次いで、前記した空気は、後側シュラウド13の第1の傾斜面部13aにガイドされた状態で開口部15から空気流路4に流出するが、この第1の傾斜面部13aは、既述したとおり、半径方向外方側ほど前側に位置するように傾斜している。このため、開口部15から空気流路4に流出する空気は、矢印N2で示すように、ケーシング2の後側壁部22から遠ざかる方向に進行する。その結果、後側壁部22に空気が強く衝突し、空気の乱流が生じることは適切に防止または抑制され、そのような空気の乱流に起因する空力音としての騒音を効果的に低減することができる。
【0039】
羽根車1の開口部15から空気流路4に空気が流出する場合、図2(b)の矢印N3で示すような向きの空気流も多く発生する。ただし、このような空気流は、ケーシング2の内側に形成されている比較的容積が大きい空間領域Saに向けて進行する。このため、前記した矢印N3の空気流が大きな騒音を生じさせることもない。
【0040】
吸気口24から羽根車1の内側の中央部領域に進行した空気の一部は、後側シュラウド13の第2の傾斜面部13bおよび第1の傾斜面部13aに沿って順次流れるが、これら第1および第2の傾斜面部13a,13bは、既述したように、段差のない滑らかな状態で繋がっている。このため、空気の前記した流れは円滑となり、騒音を低減する上で一層好ましいものとなる。
羽根車1の前側シュラウド12は、既述したように、後側シュラウド13の第1および第2の傾斜面部13a,13bと同様に傾斜した第3および第4の傾斜面部12a,12bを有している。したがって、吸気口24から羽根車1の内側の中央寄り領域に進入した空気が、羽根車1の半径方向外方側に進行する場合に、この空気の流れが急変すること、および羽根車1の半径方向外方側の空気流路4に空気が流出する際に、ケーシング2の後側壁部22に衝突することを、より徹底して防止することが可能となる。その結果、静寂性を一層優れたものとすることができる。
【0041】
本実施形態においては、羽根車1の空気流出用の開口部15の略全幅が、駆動軸連結用領域13cの前面部よりも前側に位置しているが、この構成によれば、モータMの駆動軸30を比較的短くした状態で羽根車1を支持し、羽根車1が回転する際の羽根車1の振動を抑制しつつ、空気流出用の開口部15を後側壁部22からその前側に適切に離間させ得ることとなる。開口部15を後側壁部22からその前側に離間させれば、その分だけ、後側壁部22に空気が強く当たることが回避され、騒音防止効果が高められる。
【0042】
図6は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0043】
図6に示す実施形態においては、羽根車1の駆動軸連結用領域13cの前面部の延長線Laが、空気流出用の開口部15を横切る位置にあるが、この開口部15の前後幅の少なくとも1/2以上は、前面部(その延長線La)よりも前側に位置している。つまり、同図におけるWa,Wbは、Wa≧Wbの関係にある。
このような構成によれば、駆動軸連結用領域13cの前面部を基準として、空気流出用の開口部15がかなり前側に位置していることとなる。したがって、前記した実施形態と同様に、モータMの駆動軸30の寸法を短くし、その振動を抑制しつつ、空気流出用の開口部15を、ケーシング2の後側壁部22からその前側に離間させた配置とする上で好ましいものとなる。
なお、本発明は、空気流出用の開口部15の全体が、駆動軸連結用領域13cの前面部よりも後側に位置する構成とすることも可能である。
【0044】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る送風装置、および燃焼装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0045】
上述の実施形態においては、羽根車1の後側シュラウド13の第1および第2の傾斜面部13a,13bは、ともに曲面状とされているが、これに代えて、それらの双方または一方を平面状の傾斜面部として構成することもできる。
また、上述の実施形態においては、第1および第2の傾斜面部13a,13bは、互いに隣接し、直接繋がった構成とされているが、これに限定されない。たとえば、第1および第2の傾斜面部13a,13bの相互間に、非傾斜状の中間領域が形成され、かつこの中間領域を介して第1および第2の傾斜面部13a,13bが繋がっている構成とすることもできる。
本発明でいう第1の傾斜面部は、後側シュラウドの外周縁寄りの領域に形成され、かつ第2の傾斜面部は、第1の傾斜面部よりも中央寄りの領域に形成されていればよく、それらの具体的なサイズ(面積)、およびその比率などは限定されない。それらの具体的な傾斜角度も限定されない。
このような点は、前側シュラウド12の第3および第4の傾斜面部12a,12bについても同様である。
【0046】
ケーシングの後側壁部は、上述した実施形態のように主後側壁部22aと補助後側壁部22bとを組み合わせた構成に限らず、たとえば補助後側壁部22bに相当する部材を用いることなく、1枚の板状部材のみを用いて形成した構成(主後側壁部22aにモータを直付けした構成)とすることも可能である。
上述の実施形態の送風装置Aは、複数の羽根11のそれぞれが半径方向に略直線状に延びたラジアルファンとして構成されているが、これに代えて、たとえば複数の羽根のそれぞれが湾曲した構成のターボファンなどとして構成することもできる。なお、ターボファンよりも、ラジアルファンの方が、本発明によって空気流れをより的確に制御することが可能であり、本発明をターボファンよりも、ラジアルファンに適用した場合の方が、優れた騒音低減効果を得ることが可能である。
【0047】
本発明に係る送風装置は、燃焼装置の構成要素として用いることに代えて、それ以外の用途に用いることも可能である。また、本発明に係る燃焼装置は、給湯装置用に限らず、たとえば暖房用などの燃焼装置として構成することも可能であり、燃焼の目的・用途は限定されない。
【符号の説明】
【0048】
A 送風装置
C 燃焼装置
M モータ
1 羽根車
11 羽根
12 前側シュラウド
12a 第3の傾斜面部
12b 第4の傾斜面部
13 後側シュラウド
13a 第1の傾斜面部
13b 第2の傾斜面部
13c 駆動軸連結用領域
15 空気流出用の開口部
2 ケーシング
20 周壁部(ケーシングの)
21 前側壁部(ケーシングの)
22 後側壁部(ケーシングの)
22a 主後側壁部(後側壁部)
22b 補助後側壁部(後側壁部)
24 吸気口
30 駆動軸(モータの)
4 空気流路
4a 送風口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8