(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069044
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20220428BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20220428BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H01F37/00 J ZNM
H01F37/00 M
H01F37/00 C
H01F37/00 A
H01F37/00 S
H01F1/153 108
H01F1/153 133
H01F1/26
H01F37/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020177981
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】玉城 克彰
(72)【発明者】
【氏名】新渡戸 祐二
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将寛
(72)【発明者】
【氏名】星 則光
(72)【発明者】
【氏名】早坂 秀明
【テーマコード(参考)】
5E041
【Fターム(参考)】
5E041AA11
5E041BD03
(57)【要約】
【課題】保持部材の内部に部分的に埋め込まれたコイルを備えるリアクトルであって比較的大きなインダクタンスを有するリアクトルを提供すること。
【解決手段】リアクトル10は、巻回部22を有するコイル20と保持部材40と磁気コア60とを備えている。巻回部22は、保持部材40の内部に部分的に埋め込まれており、上下方向(Z方向)において保持部材40から露出した上側露出部32及び下側露出部を有している。上側露出部32は、上側曲面部324を有している。上側曲面部324は、横方向(Y方向)の両側において保持部材40から露出している。磁気コア60は、2つの外脚66を有している。巻回部22は、横方向において2つの外脚66の間に位置している。保持部材40は、外脚66に夫々対応する2つの側壁44を有している。側壁44の夫々は、横方向において、対応する外脚66と巻回部22との間に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、保持部材と、磁気コアとを備えたリアクトルであって、
前記コイルは、巻回部を有しており、
前記巻回部は、前後方向に沿って延びる単一の中心軸の周りを巻回しており、
前記巻回部は、上側露出部と、下側露出部とを有しており、
前記上側露出部及び前記下側露出部は、前記前後方向と直交する上下方向において、前記巻回部の反対側に夫々位置しており、
前記巻回部は、前記保持部材の内部に部分的に埋め込まれており、
前記上側露出部及び前記下側露出部の夫々は、前記上下方向において前記保持部材から露出しており、
前記上側露出部は、上側曲面部を有しており、
前記上側曲面部は、前記前後方向及び前記上下方向の双方と直交する横方向の両側において前記保持部材から露出しており、
前記磁気コアは、中脚と、2つの外側部とを有しており、
前記外側部の夫々は、外脚と、2つの連結部とを有しており、
前記中脚は、前記前後方向と直交する垂直面において前記巻回部に囲まれており、
前記巻回部は、前記横方向において2つの前記外脚の間に位置しており、
前記外側部の夫々において、前記連結部は、前記外脚の前記前後方向における両端を、前記中脚の前記前後方向における両端に夫々連結しており、
前記保持部材は、前記外脚に夫々対応する2つの側壁を有しており、
前記側壁の夫々は、前記横方向において、対応する前記外脚と前記巻回部との間に位置している
リアクトル。
【請求項2】
請求項1記載のリアクトルであって、
前記磁気コアは、ギャップレスコアであり、少なくとも部分的に複合磁性体からなり、
前記複合磁性体は、バインダと、前記バインダに分散配置された磁性粉末とを含んでいる
リアクトル。
【請求項3】
請求項2記載のリアクトルであって、
前記磁気コアは、前記複合磁性体のみからなる
リアクトル。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のリアクトルであって、
前記側壁の夫々には、前記巻回部及び前記外脚の双方に向かって開口した孔が形成されていない
リアクトル。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のリアクトルであって、
前記下側露出部は、下側曲面部を有しており、
前記下側曲面部は、前記横方向の両側において前記保持部材から露出している
リアクトル。
【請求項6】
請求項5記載のリアクトルであって、
前記上側露出部は、上側平面部と、2つの前記上側曲面部とを有しており、
前記上側曲面部は、前記横方向において、前記上側平面部の反対側に夫々位置しており、
前記下側露出部は、下側平面部と、2つの前記下側曲面部とを有しており、
前記下側曲面部は、前記横方向において、前記下側平面部の反対側に夫々位置している
リアクトル。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載のリアクトルであって、
前記磁気コアは、前記上下方向において、前記上側露出部と前記下側露出部との間に位置している
リアクトル。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載のリアクトルであって、
前記保持部材は、下側支持部と、前方上側支持部と、後方上側支持部とを有しており、
前記下側支持部は、前記磁気コアの下面を支持しており、
前記前方上側支持部は、前記巻回部の前方に位置しており、且つ、前記磁気コアの上面と接触しており、
前記後方上側支持部は、前記巻回部の後方に位置しており、且つ、前記磁気コアの上面と接触している
リアクトル。
【請求項9】
請求項8記載のリアクトルであって、
前記保持部材には、前記リアクトルを対象物に締結するための締結部が設けられており、
前記下側支持部は、前記保持部材と一体に形成されており、
前記締結部は、前記下側支持部に取り付けられている
リアクトル。
【請求項10】
請求項9記載のリアクトルであって、
前記締結部の下面は、前記巻回部の底面と面一である
リアクトル。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかに記載のリアクトルであって、
前記保持部材は、外壁部を有しており、
前記外壁部は、前記上下方向と直交する水平面において、前記磁気コアの外周面と接触している
リアクトル。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれかに記載のリアクトルであって、
前記複合磁性体の前記磁性粉末は、不可避不純物を除き組成式FeX1BX2SiX3PX4CX5CuX6CrX7で表される合金粉末であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7=100at%、79≦X1≦86at%、4≦X2≦13at%、0≦X3≦8at%、1≦X4≦14at%、0≦X5≦5at%、0.4≦X6≦1.4at%、0≦X7≦3at%である
リアクトル。
【請求項13】
請求項12記載のリアクトルであって、
前記磁性粉末は、Feの一部をCo,Ni,V,Nb,Zr,Hf,Mo,Ta,W,Ag,Au,Pd,K,Ca,Mg,Sn,Zn,Ti,Al,Mn,S,O,N,Y及び希土類元素のうちの1種類以上の元素で置換した前記合金粉末であり、Co,Ni,V,Nb,Zr,Hf,Mo,Ta,W,Ag,Au,Pd,K,Ca,Mg,Sn,Zn,Ti,Al,Mn,S,O,N,Y及び希土類元素のうちの1種類以上の元素は組成全体の3at%以下であり、Co,Ni,V,Nb,Zr,Hf,Mo,Ta,W,Ag,Au,Pd,K,Ca,Mg,Sn,Zn,Ti,Al,Mn,S,O,N,Y及び希土類元素のうちの1種類以上の元素とFeとの合計はX1at%である
リアクトル。
【請求項14】
請求項12又は請求項13記載のリアクトルであって、
前記合金粉末は、αFeのナノ結晶を含んでおり、
前記ナノ結晶の平均粒径(D50)は、5nm以上かつ50nm以下である
リアクトル。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれかに記載のリアクトルであって、
前記リアクトルは、前記上下方向に沿って上方から見ると、180度回転対称な形状を有している
リアクトル。
【請求項16】
コイルと、保持部材と、磁気コアとを備えたリアクトルであって、
前記コイルは、巻回部を有しており、
前記巻回部は、前後方向に沿って延びる単一の中心軸の周りを巻回しており、
前記巻回部は、前記保持部材の内部に部分的に埋め込まれており、
前記磁気コアは、ギャップレスコアであり、
前記磁気コアは、中脚と、2つの外側部とを有しており、
前記外側部の夫々は、外脚と、2つの連結部とを有しており、
前記中脚は、前記前後方向と直交する垂直面において前記巻回部に囲まれており、
前記巻回部は、前記前後方向と直交する横方向において2つの前記外脚の間に位置しており、
前記外側部の夫々において、前記連結部は、前記外脚の前記前後方向における両端を、前記中脚の前記前後方向における両端に夫々連結しており、
前記保持部材は、前方上側支持部と、後方上側支持部と、外壁部とを有しており、
前記前方上側支持部は、前記巻回部の前方に位置しており、且つ、前記前後方向及び前記横方向の双方と直交する上下方向において前記磁気コアの上面と接触しており、
前記後方上側支持部は、前記巻回部の後方に位置しており、且つ、前記磁気コアの上面と接触しており、
前記外壁部は、前記上下方向と直交する水平面において、前記磁気コアの外周面と接触しており、
前記保持部材には、前記リアクトルを対象物に締結するための締結部が設けられており、
前記締結部は、前記保持部材と一体に形成されている
リアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持部材の内部に部分的に埋め込まれたコイルを備えるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのリアクトルは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、コイルと、一体化樹脂(保持部材)と、磁性コア(磁気コア)とを備えるリアクトルが開示されている。コイルは、保持部材の内部に部分的に埋め込まれており、これにより、保持部材に保持されている。コイルは、所謂メガネコイルである。詳しくは、コイルは、互いに連結された2つの巻回部を有している。巻回部の夫々は、貫通孔(中心孔)の周りを巻回しており、且つ、保持部材の内部に部分的に埋め込まれている。コイルの2つの中心孔は、互いに平行に延びている。磁気コアは、単一の環形状を有しており、2つの中心孔を通過している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようにコイルの巻回部を保持部材の内部に部分的に埋め込むことで、巻回部のターンがばらけることを防止できる。一方、特許文献1の磁気コアは、全体としてUUコアのような形状を有している。メガネコイルとUUコア形状の磁気コアとからリアクトルを形成した場合、磁路長が長くなり易く、且つ、磁路の断面積が小さくなり易い。即ち、特許文献1の構造によれば、インダクタンスを大きくするのが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、保持部材の内部に部分的に埋め込まれたコイルを備えるリアクトルであって比較的大きなインダクタンスを有するリアクトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
単一の巻回部を有するコイルと、EEコアのような形状の磁気コアとを使用することでリアクトルのインダクタンスを大きくできるはずである。より具体的には、このリアクトルのコイルは、前後方向に沿って延びる単一の中心孔を有している。コイルの巻回部は、中心孔の周りを巻回している。磁気コアは、中脚と、2つの外側部とを有している。中脚は、コイルの中心孔を通過している。2つの外側部は、前後方向と直交する横方向において巻回部を挟んでおり、中脚に繋がっている。即ち、磁気コアは、前後方向及び横方向によって規定される水平面においてEEコアのような形状を有している。この構造によれば、磁路長を短くでき、且つ、磁路の断面積を大きくできる。即ち、リアクトルのインダクタンスを大きくできる。
【0008】
上述のような構造のリアクトルは、容易に形成できるように思われる。しかしながら、このリアクトルによれば、磁気コアの外側部は、横方向において巻回部の側面を向くように配置される。仮に、巻回部の側面が磁気コアの外側部に向かって露出している場合、巻回部の側面が破損したような場合、巻回部の側面と磁気コアの外側部との間の絶縁性が低下するおそれがある。従って、保持部材は、巻回部の側面と磁気コアの外側部との間を完全に覆って絶縁する必要がある。即ち、保持部材は、巻回部の側面を保持部材に埋め込むようにして成型する必要がある。
【0009】
一方、保持部材をこのように成型する場合、コイルを、上下方向に加えて、水平面において移動しないように保持する必要がある。より具体的には、巻回部の側面を金型で抑えつけて保持する必要がある。金型による保持の結果、コイルを埋め込んだ保持部材の側部には、金型の跡が必然的に形成される。より具体的には、保持部材の側部には、巻回部の側面が磁気コアの外側部に向かって露出した部位が形成される。
【0010】
以上の説明から理解されるように、保持部材の内部に部分的に埋め込まれたコイルを備えるリアクトルにおいて、EEコアのような形状の磁気コアを備えることは難しい。本願発明の発明者は、この問題を解決するために研究を重ねた結果、コイルを埋め込んだ保持部材の新たな構造を発明した。この新たな構造によれば、保持部材の内部に部分的に埋め込まれたコイルを備えるリアクトルにEEコアのような形状の磁気コアを備えることができる。具体的には、本願発明は、以下のリアクトルを提供する。
【0011】
本発明は、第1のリアクトルとして、
コイルと、保持部材と、磁気コアとを備えたリアクトルであって、
前記コイルは、巻回部を有しており、
前記巻回部は、前後方向に沿って延びる単一の中心軸の周りを巻回しており、
前記巻回部は、上側露出部と、下側露出部とを有しており、
前記上側露出部及び前記下側露出部は、前記前後方向と直交する上下方向において、前記巻回部の反対側に夫々位置しており、
前記巻回部は、前記保持部材の内部に部分的に埋め込まれており、
前記上側露出部及び前記下側露出部の夫々は、前記上下方向において前記保持部材から露出しており、
前記上側露出部は、上側曲面部を有しており、
前記上側曲面部は、前記前後方向及び前記上下方向の双方と直交する横方向の両側において前記保持部材から露出しており、
前記磁気コアは、中脚と、2つの外側部とを有しており、
前記外側部の夫々は、外脚と、2つの連結部とを有しており、
前記中脚は、前記前後方向と直交する垂直面において前記巻回部に囲まれており、
前記巻回部は、前記横方向において2つの前記外脚の間に位置しており、
前記外側部の夫々において、前記連結部は、前記外脚の前記前後方向における両端を、前記中脚の前記前後方向における両端に夫々連結しており、
前記保持部材は、前記外脚に夫々対応する2つの側壁を有しており、
前記側壁の夫々は、前記横方向において、対応する前記外脚と前記巻回部との間に位置している
リアクトルを提供する。
【0012】
また、本発明は、第2のリアクトルとして、第1のリアクトルであって、
前記磁気コアは、ギャップレスコアであり、少なくとも部分的に複合磁性体からなり、
前記複合磁性体は、バインダと、前記バインダに分散配置された磁性粉末とを含んでいる
リアクトルを提供する。
【0013】
また、本発明は、第3のリアクトルとして、第2のリアクトルであって、
前記磁気コアは、前記複合磁性体のみからなる
リアクトルを提供する。
【0014】
また、本発明は、第4のリアクトルとして、第1から第3までのいずれかのリアクトルであって、
前記側壁の夫々には、前記巻回部及び前記外脚の双方に向かって開口した孔が形成されていない
リアクトルを提供する。
【0015】
また、本発明は、第5のリアクトルとして、第1から第4までのいずれかのリアクトルであって、
前記下側露出部は、下側曲面部を有しており、
前記下側曲面部は、前記横方向の両側において前記保持部材から露出している
リアクトルを提供する。
【0016】
また、本発明は、第6のリアクトルとして、第5のリアクトルであって、
前記上側露出部は、上側平面部と、2つの前記上側曲面部とを有しており、
前記上側曲面部は、前記横方向において、前記上側平面部の反対側に夫々位置しており、
前記下側露出部は、下側平面部と、2つの前記下側曲面部とを有しており、
前記下側曲面部は、前記横方向において、前記下側平面部の反対側に夫々位置している
リアクトルを提供する。
【0017】
また、本発明は、第7のリアクトルとして、第1から第6までのいずれかのリアクトルであって、
前記磁気コアは、前記上下方向において、前記上側露出部と前記下側露出部との間に位置している
リアクトルを提供する。
【0018】
また、本発明は、第8のリアクトルとして、第1から第7までのいずれかのリアクトルであって、
前記保持部材は、下側支持部と、前方上側支持部と、後方上側支持部とを有しており、
前記下側支持部は、前記磁気コアの下面を支持しており、
前記前方上側支持部は、前記巻回部の前方に位置しており、且つ、前記磁気コアの上面と接触しており、
前記後方上側支持部は、前記巻回部の後方に位置しており、且つ、前記磁気コアの上面と接触している
リアクトルを提供する。
【0019】
また、本発明は、第9のリアクトルとして、第8のリアクトルであって、
前記保持部材には、前記リアクトルを対象物に締結するための締結部が設けられており、
前記下側支持部は、前記保持部材と一体に形成されており、
前記締結部は、前記下側支持部に取り付けられている
リアクトルを提供する。
【0020】
また、本発明は、第10のリアクトルとして、第9のリアクトルであって、
前記締結部の下面は、前記巻回部の底面と面一である
リアクトルを提供する。
【0021】
また、本発明は、第11のリアクトルとして、第1から第10までのいずれかのリアクトルであって、
前記保持部材は、外壁部を有しており、
前記外壁部は、前記上下方向と直交する水平面において、前記磁気コアの外周面と接触している
リアクトルを提供する。
【0022】
また、本発明は、第12のリアクトルとして、第1から第11までのいずれかのリアクトルであって、
前記複合磁性体の前記磁性粉末は、不可避不純物を除き組成式FeX1BX2SiX3PX4CX5CuX6CrX7で表される合金粉末であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7=100at%、79≦X1≦86at%、4≦X2≦13at%、0≦X3≦8at%、1≦X4≦14at%、0≦X5≦5at%、0.4≦X6≦1.4at%、0≦X7≦3at%である
リアクトルを提供する。
【0023】
また、本発明は、第13のリアクトルとして、第12のリアクトルであって、
前記磁性粉末は、Feの一部をCo,Ni,V,Nb,Zr,Hf,Mo,Ta,W,Ag,Au,Pd,K,Ca,Mg,Sn,Zn,Ti,Al,Mn,S,O,N,Y及び希土類元素のうちの1種類以上の元素で置換した前記合金粉末であり、Co,Ni,V,Nb,Zr,Hf,Mo,Ta,W,Ag,Au,Pd,K,Ca,Mg,Sn,Zn,Ti,Al,Mn,S,O,N,Y及び希土類元素のうちの1種類以上の元素は組成全体の3at%以下であり、Co,Ni,V,Nb,Zr,Hf,Mo,Ta,W,Ag,Au,Pd,K,Ca,Mg,Sn,Zn,Ti,Al,Mn,S,O,N,Y及び希土類元素のうちの1種類以上の元素とFeとの合計はX1at%である
リアクトルを提供する。
【0024】
また、本発明は、第14のリアクトルとして、第12又は第13のリアクトルであって、
前記合金粉末は、αFeのナノ結晶を含んでおり、
前記ナノ結晶の平均粒径(D50)は、5nm以上かつ50nm以下である
リアクトルを提供する。
【0025】
また、本発明は、第15のリアクトルとして、第1から第14までのいずれかのリアクトルであって、
前記リアクトルは、前記上下方向に沿って上方から見ると、180度回転対称な形状を有している
リアクトルを提供する。
【0026】
また、本発明は、第16のリアクトルとして、
前記コイルは、巻回部を有しており、
前記巻回部は、前後方向に沿って延びる単一の中心軸の周りを巻回しており、
前記巻回部は、前記保持部材の内部に部分的に埋め込まれており、
前記磁気コアは、ギャップレスコアであり、
前記磁気コアは、中脚と、2つの外側部とを有しており、
前記外側部の夫々は、外脚と、2つの連結部とを有しており、
前記中脚は、前記前後方向と直交する垂直面において前記巻回部に囲まれており、
前記巻回部は、前記前後方向と直交する横方向において2つの前記外脚の間に位置しており、
前記外側部の夫々において、前記連結部は、前記外脚の前記前後方向における両端を、前記中脚の前記前後方向における両端に夫々連結しており、
前記保持部材は、前方上側支持部と、後方上側支持部と、外壁部とを有しており、
前記前方上側支持部は、前記巻回部の前方に位置しており、且つ、前記前後方向及び前記横方向の双方と直交する上下方向において前記磁気コアの上面と接触しており、
前記後方上側支持部は、前記巻回部の後方に位置しており、且つ、前記磁気コアの上面と接触しており、
前記外壁部は、前記上下方向と直交する水平面において、前記磁気コアの外周面と接触しており、
前記保持部材には、前記リアクトルを対象物に締結するための締結部が設けられており、
前記締結部は、前記保持部材と一体に形成されている
リアクトルを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、巻回部の上側露出部は、保持部材から上方に露出しており、巻回部の下側露出部は、保持部材から下方に露出している。この構造から理解されるように、保持部材を成型する際、上側露出部及び下側露出部を金型によって上下に挟むことができる。また、上側曲面部は、横方向の外側に露出している。この構造から理解されるように、保持部材を成型する際、上側曲面部を横方向において金型によって挟むことができ、これにより、水平面において移動しないように保持できる。即ち、本発明の保持部材は、巻回部が部分的に埋め込まれるようにして形成できる。
【0028】
本発明によれば、保持部材の側壁は、横方向において巻回部と外脚との間に夫々位置しており、巻回部を磁気コアから絶縁している。従って、保持部材の内部に部分的に埋め込まれたコイルを備えるリアクトルにEEコアのような形状の磁気コアを備えることができる。
【0029】
上述のように、本発明のリアクトルは、単一の巻回部を有するコイルと、EEコアのような形状の磁気コアとを使用して作製できる。即ち、本発明によれば、保持部材の内部に部分的に埋め込まれたコイルを備えるリアクトルであって比較的大きなインダクタンスを有するリアクトルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態によるリアクトルをブスバーとともに示す斜視図である。リアクトルには、ナットが取り付けられている。
【
図3】
図1のリアクトルを示す下面図である。隠れた磁気コアの輪郭を破線で描画している。
【
図5】
図1のリアクトルを示す前面図である。コイルの巻回部の隠れた輪郭の一部及び保持部材の隠れた輪郭の一部を破線で描画している。
【
図6】
図1のリアクトルに磁気コアを形成する前の中間構造体を示す斜視図である。中間構造体には、ナットが取り付けられていない。中間構造体のコイルの巻回部の仮想的な中心軸を破線で描画している。
【
図7】
図6の中間構造体を示す上面図である。磁気コアを形成した際の磁気コアの外周の輪郭を破線で描画している。
【
図8】
図6の中間構造体を示す下面図である。磁気コアを形成した際の隠れた磁気コアの輪郭を破線で描画している。
【
図9】
図6の中間構造体を示す側面図である。コイルの隠れた輪郭の一部を破線で描画している。
【
図10】
図6の中間構造体を示す前面図である。巻回部のターンの隠れた概略形状を破線で描画している。
【
図11】
図6の中間構造体のコイルを示す斜視図である。巻回部の仮想的な中心軸を破線で描画している。
【
図12】
図1のリアクトルの磁気コアを示す斜視図である。磁気コアの一部を拡大して複合磁性体の構造を模式的に描画している。
【
図13】
図12の磁気コアを示す上面図である。磁気コアの部位の間の仮想的な境界線を破線で描画している。
【
図14】
図1のリアクトルの変形例を示す側面図である。コイルの巻回部の隠れた輪郭の一部を破線で描画している。
【
図15】
図14のリアクトルを示す前面図である。コイルの巻回部の隠れた輪郭の一部を破線で描画している。
【
図16】
図1のリアクトルの別の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1を参照すると、本発明の実施の形態によるリアクトル10は、昇圧装置(図示せず)の単相リアクトルである。リアクトル10は、例えば、EV(Electric Vehicle)のモーター(図示せず)に供給する電流を昇圧するために使用される。即ち、リアクトル10は、比較的狭い空間内に配置されて高振動環境下で使用される。但し、本発明は、これに限られず、様々なリアクトルに適用可能である。
【0032】
本実施の形態のリアクトル10は、コイル20と、絶縁体からなる4つの締結部50を取り付けた絶縁体からなる保持部材40と、軟磁性体からなる磁気コア60とを備えている。特に、本実施の形態のリアクトル10は、上述した部材(コイル20、保持部材40、締結部50及び磁気コア60)のみを備えている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、リアクトル10は、上述した部材を収容するケース(図示せず)を更に備えていてもよい。
【0033】
図6を参照すると、コイル20は、締結部50が取り付けられた保持部材40とともに中間構造体12を形成している。中間構造体12において、コイル20は、保持部材40に保持されている。詳しくは、保持部材40は、コイル20の大部分を覆うようにしてモールド成型されている。コイル20は、保持部材40の内部に部分的に埋め込まれており、これにより、保持部材40は、コイル20を保持している。
【0034】
図1を
図6と併せて参照すると、磁気コア60は、中間構造体12に固定されている。磁気コア60は、中間構造体12とともにリアクトル10を形成している。中間構造体12は、磁気コア60を備えていないことを除き、リアクトル10と同じ構造を有している。即ち、中間構造体12のコイル20、保持部材40及び締結部50は、リアクトル10のコイル20、保持部材40及び締結部50と夫々同じ構造を有している。
【0035】
以下、本実施の形態のコイル20について説明する。
【0036】
図11を参照すると、本実施の形態のコイル20は、被覆電線を巻回して形成されている。被覆電線は、金属からなる導電体を、絶縁体からなる薄い絶縁皮膜によって覆ったものである。コイル20は、巻回部22と、2つの端子28とを有している。巻回部22は、前後方向(X方向)に沿って延びる単一の中心軸AXの周りを巻回している。巻回部22は、中心軸AXの周りを夫々一周程度巻回する複数のターン22Tの集合体である。2つの端子28は、先端において導電体を露出させつつ、巻回部22のX方向における両端のターン22Tに夫々繋がっている。
【0037】
本実施の形態の巻回部22は、平角状の被覆電線をエッジワイズ巻きして形成されている。巻回部22は、ターン22TがX方向において互いに密着するように巻回されている。即ち、本実施の形態の巻回部22は、ソレノイド形状を有している。このように巻回部22を形成することで、中心軸AXを含む平面におけるターン22Tの断面積を大きくしつつ、巻回部22の巻回数(即ち、ターン22Tの数)を大きくでき、これにより、大電流に適したリアクトル10が得られる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、巻回部22は、ターン22TがX方向において互いに離れるように疎らに巻回されていてもよい。また、巻回部22は、丸線を巻回して形成してもよい。
【0038】
巻回部22には、中心孔24が形成されている。中心孔24は、X方向と直交する垂直面(YZ平面)において巻回部22によって囲まれた空間である。中心孔24は、X方向両側に開口している。本実施の形態の中心孔24は、YZ平面において、ソレノイド形状の巻回部22によって完全に囲まれている。詳しくは、巻回部22は、YZ平面において、内周面222と、外周面224とを有している。内周面222は、YZ平面において中心孔24に面している。外周面224は、YZ平面における巻回部22の外周を規定している。
【0039】
巻回部22は、底面22Lを有している。底面22Lは、外周面224の一部であり、X方向と直交する上下方向(Z方向)における巻回部22の下端(-Z側の端)に位置している。本実施の形態の巻回部22は、YZ平面において角丸四角形状を有しており、これにより、底面22Lは、Z方向と直交する水平面(XY平面)に沿って延びている。本実施の形態の巻回部22は、以上に説明した形状を有している。但し、本発明の巻回部22の形状は、本実施の形態に限られない。例えば、巻回部22は、YZ平面において、トラック形状を有していてもよい。
【0040】
図11に示されるように、本実施の形態の2つの端子28のうちの一方は、巻回部22の前端(+X側の端)に位置するターン22Tに繋がっており、前方(+X方向)に延びている。本実施の形態の2つの端子28のうちの他方は、巻回部22の後端(-X側の端)に位置するターン22Tに繋がっており、後方(-X方向)に延びている。本実施の形態の端子28の夫々は、単一のコイル20の一部であり、巻回部22と一体の部材である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、端子28の夫々は、巻回部22と別体の部材であってもよく、溶接等によって巻回部22に接続されていてもよい。
【0041】
図6から
図10までから理解されるように、巻回部22は、保持部材40の内部に部分的に埋め込まれている。詳しくは、
図10を参照すると、巻回部22の内周面222は、保持部材40によって完全に覆われている。
図6及び
図10を参照すると、巻回部22の外周面224の大部分は、保持部材40によって覆われている。
図9及び
図10を参照すると、巻回部22の前面(+X側の面)及び後面(-X側の面)の大部分も、保持部材40によって覆われている。
【0042】
図9を参照すると、端子28の夫々におけるターン22Tとの接続部は、保持部材40によって覆われている。一方、端子28の夫々の先端は、保持部材40から露出している。即ち、端子28の夫々は、巻回部22から保持部材40の外部に引き出されており、X方向に沿って互いに離れるように延びている。但し、本発明において、巻回部22の端子28を引き出す部位及び端子28の夫々の形状は、特に限定されない。例えば、端子28の夫々は、巻回部22の上面から引き出されて上方に延びていてもよい。
【0043】
以上に説明したように、本実施の形態の巻回部22の大部分は、保持部材40の内部に埋め込まれている。この構造により、巻回部22のターン22Tがばらけることを防止できる。一方、巻回部22は、上側露出部32と、下側露出部34とを有している。上側露出部32及び下側露出部34は、保持部材40をモールド成型する際に使用した金型(図示せず)の跡である。上側露出部32及び下側露出部34は、Z方向において、巻回部22の反対側に夫々位置している。上側露出部32は、保持部材40から上方(+Z方向)に露出しており、下側露出部34は、保持部材40から下方(-Z方向)に露出している。即ち、上側露出部32及び下側露出部34の夫々は、Z方向において保持部材40から露出している。
【0044】
図6、
図7、
図9及び
図10を参照すると、本実施の形態の上側露出部32は、1つの上側平面部322と、2つの上側曲面部324とを有している。上側平面部322及び上側曲面部324の夫々は、巻回部22の外周面224の一部である。詳しくは、上側平面部322及び上側曲面部324は、上側露出部32の上面(+Z側の面)である。即ち、上側平面部322及び上側曲面部324の夫々は、巻回部22の上面の一部である。
【0045】
上側平面部322は、XY平面に沿って延びている。上側曲面部324は、X方向及びZ方向の双方と直交する横方向(Y方向)における上側平面部322の反対側に夫々位置している。詳しくは、上側曲面部324は、Y方向における上側平面部322の両縁に夫々繋がっている。上側曲面部324の夫々は、弧を描きつつY方向外側及び下方に延びている。即ち、上側曲面部324の夫々は、YZ平面において弧形状を有しており、保持部材40からY方向外側に露出している。
【0046】
図8から
図10までを参照すると、本実施の形態の下側露出部34は、1つの下側平面部342と、2つの下側曲面部344とを有している。下側平面部342及び下側曲面部344の夫々は、巻回部22の外周面224の一部である。詳しくは、下側平面部342及び下側曲面部344は、下側露出部34の下面(-Z側の面)である。即ち、下側平面部342及び下側曲面部344の夫々は、巻回部22の下面の一部である。
【0047】
本実施の形態の下側平面部342は、巻回部22の底面22Lであり、XY平面に沿って延びている。下側曲面部344は、下側平面部342のY方向における反対側に夫々位置している。詳しくは、下側曲面部344は、Y方向における下側平面部342の両縁に夫々繋がっている。下側曲面部344の夫々は、弧を描きつつY方向外側及び上方に延びている。即ち、下側曲面部344の夫々は、YZ平面において弧形状を有しており、保持部材40からY方向外側に露出している。
【0048】
図1を参照すると、以下、本実施の形態の保持部材40の一部及び磁気コア60について説明するとともに、本実施の形態の保持部材40の形成方法について説明する。
【0049】
図6及び
図7を参照すると、本実施の形態の保持部材40は、2つの側壁44を有している。
図6及び
図10を参照すると、側壁44の夫々は、XZ平面と平行に延びる平板形状を有している。側壁44は、Y方向において互いに離れており、且つ、XZ平面に沿って互いに平行に延びている。
【0050】
図12を参照すると、本実施の形態の磁気コア60は、複合磁性体60Mのみからなるギャップレスコアである。即ち、磁気コア60は、XY平面において切れ目なく連続して延びている。複合磁性体60Mは、熱硬化性樹脂等の絶縁体からなるバインダ60Bと、バインダ60Bに分散配置された磁性粉末60Pとを含んでいる。磁性粉末60Pは、軟磁性体からなり、バインダ60Bによって互いに結着されており、且つ、互いに絶縁されている。複合磁性体60Mは、バインダ60B及び磁性粉末60Pに加えて、非磁性フィラー等の他の材料を含んでいてもよい。このような複合磁性体60Mからなるギャップレスコアは、破損し難く、高振動環境下で使用されるリアクトル10(
図1参照)に適している。
【0051】
図12及び
図13を参照すると、磁気コア60は、中脚62と、2つの外側部64とを有している。外側部64の夫々は、外脚66と、2つの連結部68とを有している。外側部64の夫々において、連結部68は、外脚66のX方向における両端を、中脚62のX方向における両端に夫々連結している。本実施の形態において、これらの部位は互いにギャップなく連続している。また、磁気コア60は、上面60Uと、下面60Lと、外周面60Eとを有している。本実施の形態の上面60U及び下面60Lの夫々は、XY平面と平行な滑らかな平面であり、磁気コア60の全ての部位に亘って連続して延びている。外周面60Eは、磁気コア60のXY平面における外周を規定している。本実施の形態の外周面60Eは、Z方向と平行に延びる閉じた曲面である。
【0052】
図3を
図6と併せて参照すると、磁気コア60の中脚62は、中心孔24の内部に位置している。即ち、磁気コア60の中脚62は、YZ平面において巻回部22に囲まれている。巻回部22は、Y方向において2つの外脚66の間に位置している。また、保持部材40の2つの側壁44は、外脚66に夫々対応して設けられている。即ち、保持部材40は、外脚66に夫々対応する2つの側壁44を有している。側壁44の夫々は、Y方向において、対応する外脚66と巻回部22との間に位置している。
【0053】
図12を参照すると、本実施の形態の磁気コア60は、上述の構造を有しており、これにより、XY平面においてEEコアのような形状を有している。また、本実施の形態の磁気コア60は、XY平面について鏡対称な形状を有している。但し、本発明は、これに限られず、磁気コア60がXY平面においてEEコアのような形状を有している限り、磁気コア60の構造は、様々に変形可能である。例えば、上面60U及び下面60Lの夫々には、凹凸が形成されていてもよい。
【0054】
図1を
図6と併せて参照すると、本実施の形態のリアクトル10は、保持部材40の側壁44の周囲にEEコアのような形状の磁気コア60を形成することで作製されている。即ち、本実施の形態のリアクトル10は、単一の巻回部22を有するコイル20と、EEコアのような形状の磁気コア60とを備えている。この構造によれば、所謂メガネコイルと、UUコアのような形状の磁気コアとからなる従来のリアクトルに比べて、磁路長を短くでき、且つ、磁路の断面積を大きくできる。即ち、リアクトル10のインダクタンスを従来技術に比べて大きくできる。
【0055】
但し、このようなリアクトル10によれば、磁気コア60をどのように形成する場合にも、形成された磁気コア60の外側部64は、Y方向において巻回部22の側面を向くように配置される。仮に、巻回部22の側面が磁気コア60の外側部64に向かって露出している場合、例えば巻回部22の側面の絶縁皮膜(図示せず)が破損した場合、巻回部22の側面と外側部64の外側部64との間の絶縁性が低下するおそれがある。
【0056】
従って、保持部材40は、巻回部22の側面と磁気コア60との間を完全に覆って絶縁する必要がある。即ち、保持部材40は、巻回部22の側面を保持部材40に埋め込むようにして成型する必要がある。一方、保持部材40をこのように成型する場合、コイル20を、Z方向に加えて、XY平面において移動しないように保持する必要がある。より具体的には、巻回部22の側面を金型(図示せず)で抑えつけて保持する必要がある。金型による保持の結果、コイル20を埋め込んだ保持部材40の側壁44には、金型の跡が必然的に形成される。より具体的には、保持部材40の側壁44には、巻回部22の側面が磁気コア60に向かって露出した部位が形成される。
【0057】
以上の説明から理解されるように、保持部材40の内部に部分的に埋め込まれたコイル20を備えるリアクトル10において、EEコアのような形状の磁気コア60を備えることは難しい。一方、本実施の形態によれば、コイル20を埋め込んだ保持部材40は、従来なかった新たな構造を有している。この新たな構造によれば、以下に説明するように、上側露出部32及び下側露出部34を除いて、コイル20の巻回部22を保持部材40の内部に完全に埋め込むようにして、保持部材40を樹脂等の熱硬化性材料からモールド成型できる。
【0058】
図9及び
図10を参照すると、保持部材40を形成する際、まず、コイル20(
図11参照)を作製する。次に、巻回部22を金型(図示せず)の内部に配置し、コイル20の上側露出部32及び下側露出部34を、金型によって上下に挟む。例えば、下側露出部34を下側金型(図示せず)の上に配置する。次に、上側露出部32を上側金型(図示せず)によって下方に加圧し、これにより、下側露出部34を下側金型に押しつける。このとき、上側曲面部324をY方向の両側から上側金型によって挟む。巻回部22を上述のように金型で挟むことで、巻回部22をZ方向及びXY平面において位置決めできる。
【0059】
次に、巻回部22の中心孔24にスライド金型(図示せず)を挿入する。次に、金型の内部に熱硬化性材料を注入する。次に、熱硬化性材料を固化させる。次に、金型を外す。次に、締結部50を、固化した熱硬化性材料に取り付ける。この結果、保持部材40が形成される。即ち、中間構造体12が作製される。
【0060】
本実施の形態によれば、巻回部22を上述のように金型(図示せず)で挟むことで、巻回部22をZ方向及びXY平面において移動しないように保持できる。即ち、本実施の形態の保持部材40は、巻回部22が部分的に埋め込まれるようにして形成できる。但し、本発明は、これに限られず、保持部材40の形成方法は、必要に応じて様々に変形可能である。例えば、巻回部22を位置決めする際、上側曲面部324に加えて、下側曲面部344をY方向の両側から下側金型(図示せず)によって挟んでもよい。更に、下側露出部34の前面及び後面をX方向の両側から下側金型によって挟んでもよい。この方法によれば、巻回部22をXY平面において、より確実に位置決めできる。
【0061】
図9を参照すると、上側露出部32及び下側露出部34の夫々の構造は、保持部材40を形成する際にコイル20を位置決めできる限り、様々に変形可能である。
【0062】
例えば、上側露出部32の上面全体がYZ平面において上方に突出した円弧形状を有していてもよい。即ち、上側露出部32は、1つの上側曲面部324のみを有していてもよい。上側露出部32がどのような形状を有していても、上側曲面部324は、Y方向の両側において保持部材40から露出していればよい。また、下側露出部34の下面全体がYZ平面において下方に突出した円弧形状を有していてもよい。即ち、下側露出部34は、1つの下側曲面部344のみを有していてもよい。下側露出部34は、下側平面部342のみを有していてもよい。下側曲面部344が設けられている場合、下側露出部34がどのような形状を有していても、下側曲面部344は、Y方向の両側において保持部材40から露出していればよい。
【0063】
図9及び
図10を参照すると、本実施の形態によれば、上側露出部32の上端(+Z側の端)は、保持部材40の上端の下方に位置しており、下側露出部34の下端は、保持部材40の下端の下方に位置している。即ち、上側露出部32の前面及び後面は、保持部材40によって覆われており、下側露出部34の前面及び後面は、保持部材40から露出している。但し、本発明は、これに限られず、上側露出部32及び下側露出部34の夫々の保持部材40に対する位置関係は、必要に応じて様々に変形可能である。
【0064】
以下、本実施の形態の保持部材40及び締結部50について説明する。
【0065】
図6及び
図7を参照すると、本実施の形態の保持部材40は、2つの側壁44に加えて、下側支持部42と、上側支持部45と、2つの外壁部48と、2つの接続部54とを有している。本実施の形態の保持部材40は、上述の部位のみを有している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、保持部材40は、上述の部位に加えて、更に別の部位を有していてもよい。一方、上述の部位の夫々は、必要に応じて設ければよい。
【0066】
図6及び
図10を参照すると、本実施の形態の側壁44の夫々は、保持部材40と一体に形成されている。換言すれば、側壁44の夫々は、保持部材40の一部である。より具体的には、側壁44の夫々は、保持部材40のZ方向における中間部である。巻回部22を、Y方向における両側の部位、下側の部位及び上側の部位の4つの部位に分けたとき、側壁44は、巻回部22のY方向における両側の部位を、XY平面において夫々完全に覆っている。詳しくは、巻回部22のY方向における両側の部位のうち、内周面222及び外周面224は、2つの側壁44によって完全に覆われている。加えて、巻回部22のY方向における両側の部位のうち、前端及び後端は、2つの側壁44によって完全に覆われている。
【0067】
本実施の形態の側壁44の夫々は、上述の構造を有している。但し、側壁44が巻回部22のY方向における両側の部位を覆って絶縁している限り、側壁44の夫々の構造は、特に限定されない。
【0068】
図6及び
図8から
図10までを参照すると、本実施の形態の下側支持部42は、保持部材40と一体に形成されている。換言すれば、下側支持部42は、保持部材40の一部である。より具体的には、下側支持部42は、保持部材40の下側の部位(-Z側の部位)である。下側支持部42は、XY平面と平行に延びる平板形状を有している。
図6、
図9及び
図10を参照すると、側壁44の夫々は、下側支持部42から上方に延びている。即ち、下側支持部42は、側壁44を支持している。
【0069】
図8から
図10までを参照すると、下側支持部42は、巻回部22の下側の部位を、XY平面において部分的に覆っている。詳しくは、巻回部22の下側の部位のうち、内周面222は、下側支持部42によって完全に覆われている。一方、巻回部22の下側の部位のうち、外周面224、前端及び後端は、下側支持部42によって部分的に覆われている。
【0070】
より具体的には、
図8を参照すると、下側支持部42には、下側開口422が形成されている。下側開口422は、下方に開口した空間である。下側開口422は、XY平面において、下側支持部42の中間部に位置しており、且つ、下側支持部42の下面428に囲まれている。巻回部22の下側の部位である下側露出部34は、下側開口422から下方に突出して露出している。詳しくは、
図9及び
図10を参照すると、下側露出部34は、下側支持部42の下面428を超えて下方に突出している。
【0071】
本実施の形態の下側支持部42は、上述の構造を有している。但し、下側支持部42が巻回部22の下側の部位の内周面222を覆って絶縁しつつ下側露出部34を下方に露出させている限り、下側支持部42の構造は、特に限定されない。
【0072】
図6、
図7、
図9及び
図10を参照すると、本実施の形態の上側支持部45は、保持部材40と一体に形成されている。換言すれば、上側支持部45は、保持部材40の一部である。より具体的には、上側支持部45は、保持部材40の上側の部位(+Z側の部位)である。
図6、
図9及び
図10を参照すると、側壁44の夫々は、下側支持部42と上側支持部45との間を上下に延びている。即ち、上側支持部45は、側壁44によって支持されている。
【0073】
図6及び
図7を参照すると、上側支持部45は、全体として、XY平面と平行に延びる平板形状を有している。上側支持部45は、前方上側支持部46と、後方上側支持部47とを有している。即ち、本実施の形態の保持部材40は、前方上側支持部46と、後方上側支持部47とを有している。前方上側支持部46は、上側支持部45のうち部分的に前方に張り出した部位である。後方上側支持部47は、上側支持部45のうち部分的に後方に張り出した部位である。前方上側支持部46は、巻回部22の前方に位置しており、後方上側支持部47は、巻回部22の後方に位置している。前方上側支持部46及び後方上側支持部47の夫々は、下側支持部42の一部とZ方向において対向している。
【0074】
本実施の形態の上側支持部45は、前方上側支持部46及び後方上側支持部47に加えて、側壁44に夫々対応する2つの上側側壁456を有している。上側側壁456の夫々は、上側支持部45のうち部分的にY方向外側に張り出した部位であり、対応する側壁44の上端に繋がっている。
【0075】
図7、
図9及び
図10を参照すると、上側支持部45は、巻回部22の上側の部位を、XY平面において部分的に覆っている。詳しくは、巻回部22の上側の部位のうち、内周面222、前端及び後端は、上側支持部45によって完全に覆われている。一方、巻回部22の上側の部位のうち、外周面224は、上側支持部45によって部分的に覆われている。
【0076】
より具体的には、
図6及び
図7を参照すると、上側支持部45には、上側開口452が形成されている。上側開口452は、上方に開口した空間である。上側開口452は、XY平面において、上側支持部45の中間部に位置している。
図6及び
図9を参照すると、巻回部22の上側の部位の一部である上側露出部32は、上側開口452の内部に位置しており、且つ、上側支持部45から露出している。
【0077】
本実施の形態の上側支持部45は、上述の構造を有している。但し、本発明は、これに限られない。上側支持部45が巻回部22の上側の部位の内周面222を覆って絶縁しつつ上側露出部32を上方及びY方向両側に露出させている限り、上側支持部45の構造は、特に限定されない。
【0078】
図6、
図7及び
図9を参照すると、本実施の形態の外壁部48の夫々は、保持部材40と一体に形成されている。換言すれば、外壁部48の夫々は、保持部材40の一部である。外壁部48は、側壁44と夫々対応するようにして下側支持部42に設けられている。
【0079】
図6及び
図7を参照すると、外壁部48は、下側支持部42のY方向における両側に夫々位置している。外壁部48の夫々は、対応する側壁44をXY平面において部分的に囲みつつ、下側支持部42から上方に延びている。詳しくは、外壁部48の夫々は、XY平面における内周面482を有している。内周面482の夫々のX方向における中間部は、X方向に沿って直線状に延びている。内周面482の夫々のX方向における両端部は、弧を描きつつY方向内側に延びている。内周面482の夫々と、対応する側壁44との間には溝が形成されている。
【0080】
本実施の形態の外壁部48の夫々は、上述の構造を有している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、外壁部48の夫々は、下側支持部42と別体に形成した後に下側支持部42に取り付けられて固定されていてもよい。また、外壁部48の夫々は、必要に応じて設ければよい。
【0081】
図1を参照すると、本実施の形態の接続部54の夫々は、金属等の導電体からなるブスバー80を保持部材40に固定するための部位である。
図6及び
図7を参照すると、本実施の形態の接続部54の夫々は、保持部材40と一体に形成されている。換言すれば、接続部54の夫々は、保持部材40の一部である。本実施の形態の接続部54は、外壁部48と夫々対応するようにして設けられている。接続部54のうちの一方は、対応する外壁部48から前方に張り出しており、接続部54のうちの他方は、対応する外壁部48から後方に張り出している。接続部54の夫々には、接続穴56が形成されている。接続穴56の夫々は、下方に凹んだ底のある穴であり、上方に開口している。
【0082】
本実施の形態の接続部54の夫々は、上述の構造を有している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、接続部54の配置は、特に限定されない。また、接続部54の夫々は、必要に応じて設ければよい。
【0083】
図1を参照すると、本実施の形態の締結部50の夫々は、リアクトル10を回路基板等の対象物(図示せず)に固定するための部位である。
図6及び
図7を参照すると、本実施の形態の保持部材40には、リアクトル10を対象物に締結するための4つの締結部50が設けられている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、締結部50の数は、3以下であってもよいし、5以上であってもよい。また、締結部50は、必要に応じて設ければよい。
【0084】
図6及び
図7を参照すると、本実施の形態の締結部50は、巻回部22のX方向における外側に位置している。詳しくは、締結部50のうちの2つは、下側支持部42から前方に張り出しており、締結部50のうちの他の2つは、下側支持部42から後方に張り出している。
図8及び
図9を参照すると、締結部50の夫々の下面508は、Z方向において、下側支持部42の下面428と同じ位置にあり、下面428から連続して延びている。即ち、締結部50の下面508の夫々は、下側支持部42の下面428と面一である。また、
図6から
図8までを参照すると、締結部50の夫々には、締結孔52が形成されている。締結孔52の夫々は、締結部50をZ方向に貫通している。
【0085】
図6を参照すると、本実施の形態において、保持部材40の部位(下側支持部42、側壁44、上側支持部45、外壁部48及び接続部54)は、互いに一体に形成されている。一方、本実施の形態によれば、締結部50のうちの2つは、スライド金型(図示せず)のスライド経路の真下に位置している。このように配置された締結部50を保持部材40と同時に成型するのは難しい。このため、本実施の形態の締結部50の夫々は、保持部材40を互いに一体に形成した後に、下側支持部42に取り付けられている。
【0086】
一般的に、締結部50のような付加的部位を保持部材40と同時に形成できない場合、付加的部位を除くリアクトル10(
図1参照)を作製した後に、付加的部位を形成するためのモールド成型が行われる。一方、本実施の形態によれば、保持部材40が形成された後に、予め製造された締結部50の夫々を下側支持部42に取り付ける。この製造方法によれば、成型工程を増やすことなく、締結部50の夫々を、下側支持部42のX方向外側に配置できる。即ち、本実施の形態によれば、リアクトル10の製造コストを低減できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、締結部50の夫々を、下側支持部42のY方向外側に配置してもよい。この配置によれば、締結部50を保持部材40と同時かつ一体に形成でき、これにより、リアクトル10の製造コストを更に低減できる。
【0087】
以下、本実施の形態の磁気コア60(
図12参照)の形成方法について説明する。
【0088】
図1及び
図6を
図12と併せて参照すると、本実施の形態の磁気コア60は、中間構造体12に対して複合磁性体60Mからなる磁性スラリーを射出することによって形成されている。詳しくは、
図6を
図1と併せて参照すると、本実施の形態の磁気コア60は、中間構造体12の中心孔24の内部を埋め、且つ、中間構造体12の側壁44の夫々をXY平面において囲むようにして射出成型されている。即ち、本実施の形態のリアクトル10は、中間構造体12と、射出成型された磁気コア60とを備えている。
【0089】
仮に、磁性スラリーを射出する部位においてコイル20(特に、巻回部22)が露出している場合、巻回部22が磁性スラリーによって直接的に覆われるおそれがある。即ち、巻回部22は、形成された磁気コア60から絶縁されないおそれがある。
【0090】
一方、本実施の形態によれば、保持部材40の側壁44の夫々は、Y方向において巻回部22と磁気コア60との間に位置しており、巻回部22を磁気コア60から絶縁している。詳しくは、巻回部22のうち下側支持部42の上方に位置する部位は、上側露出部32を除いて、保持部材40によって完全に覆われており絶縁されている。上側露出部32は、磁性スラリーを射出する部位から死角になっている。加えて、下側支持部42は、巻回部22のうち下側支持部42の下方に位置する部位を、Z方向において覆い隠している。従って、保持部材40の内部に部分的に埋め込まれたコイル20を備えるリアクトル10にEEコアのような形状の磁気コア60を備えることができる。
【0091】
本実施の形態によれば、磁気コア60を射出成型する際、巻回部22は、磁性スラリーと接触しない。但し、磁気コア60の形成方法は、本実施の形態に限られない。例えば、磁気コア60は、注型コアであってもよい。
【0092】
以上に説明したように、本実施の形態のリアクトルは、単一の巻回部22を有するコイル20と、EEコアのような形状の磁気コア60とを使用して作製できる。即ち、本実施の形態によれば、保持部材40の内部に部分的に埋め込まれたコイル20を備えるリアクトル10であって比較的大きなインダクタンスを有するリアクトル10を提供できる。
【0093】
図12を参照すると、前述したように、本実施の形態の磁気コア60は、複合磁性体60Mのみから形成されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、磁気コア60は、複合磁性体60Mからなる部位に加えて、軟磁性体からなる圧粉コア(図示せず)を含んでいてもよい。即ち、磁気コア60は、少なくとも部分的に複合磁性体60Mから形成されていてもよい。例えば、複数の圧粉コアの小片を埋め込むようにして複合磁性体60Mからなる部位を形成してもよい。磁気コア60が圧粉コアを含むことで、リアクトル10(
図1参照)のインダクタンスを大きくできる。
【0094】
磁気コア60は、圧粉コアのみから形成されていてもよい。例えば、射出成型に代えて、複数の圧粉コアを接着剤によって互いに固定して磁気コア60を形成してもよい。即ち、磁気コア60は、複数の圧粉コアを互いに接合した組立体であってもよい。磁気コア60を圧粉コアのみから形成することで、リアクトル10(
図1参照)のインダクタンスを更に大きくできる。
【0095】
図1及び
図6を参照すると、本実施の形態の側壁44の夫々には、巻回部22及び外脚66の双方に向かって開口した孔が形成されていない。この構造により、巻回部22を磁気コア60から更に確実に絶縁できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、側壁44の夫々には、絶縁の妨げにならない程度の孔が形成されていてもよい。
【0096】
本実施の形態の上側露出部32は、Y方向に沿ってリアクトル10を見たときに視認可能である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、
図4及び
図5を参照すると、上側側壁456は、上側露出部32の下側曲面部344からY方向において離れつつ、上側露出部32全体のY方向外側に位置していてもよい。換言すれば、上側露出部32を、保持部材40によってXY平面において切れ目なく囲んでもよい。この変形例によれば、巻回部22を磁気コア60から更に確実に絶縁できる。
【0097】
図4を参照すると、本実施の形態の磁気コア60は、Z方向において、巻回部22の上側露出部32と下側露出部34との間に位置している。即ち、本実施の形態の磁気コア60は、磁気コア60のZ方向における位置が上側露出部32及び下側露出部34のZ方向における位置と重ならないように配置されている。この配置によれば、巻回部22を磁気コア60から更に確実に絶縁できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、上側露出部32を、保持部材40によってXY平面において切れ目なく囲んだ場合、磁気コア60のZ方向における位置は、上側露出部32のZ方向における位置と重なっていてもよい。
【0098】
図1を参照すると、本実施の形態の保持部材40の下側支持部42、前方上側支持部46、後方上側支持部47及び外壁部48は、以下のように設けられている。
図5を参照すると、下側支持部42は、磁気コア60の下面60Lと接触しており、下面60Lを支持している。
図1及び
図4を参照すると、前方上側支持部46及び後方上側支持部47の夫々は、磁気コア60の上面60Uと接触している。
図2を参照すると、外壁部48の夫々は、XY平面において、磁気コア60の外周面60Eと接触している。詳しくは、外壁部48の夫々の内周面482は、XY平面において、磁気コア60の外周面60Eと接触している。
【0099】
本実施の形態の下側支持部42、前方上側支持部46、後方上側支持部47及び外壁部48は、上述のように設けられているため、磁気コア60を、下側支持部42、前方上側支持部46、後方上側支持部47及び外壁部48によって規定される所定の位置に射出成型できる。
【0100】
また、本実施の形態の磁気コア60は、Z方向において前方上側支持部46及び後方上側支持部47と下側支持部42との間に挟み込まれており、X方向及びY方向の夫々において2つの外周面60Eの間に挟み込まれている。即ち、本実施の形態の磁気コア60は、Z方向及びXY平面において移動しないように確実に位置決めされている。この構造によれば、磁気コア60の位置ずれによるインダクタンスの変化を防止できるとともに、磁気コア60の破損が防止できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、前方上側支持部46、後方上側支持部47及び外壁部48は、必要に応じて設ければよい。
【0101】
以下、本実施の形態のリアクトル10について説明する。
【0102】
図1を参照すると、本実施の形態のリアクトル10は、使用時に、回路基板のような対象物(図示せず)に固定される。その際、リアクトル10の4つの締結部50の締結孔52に、4つのナット82を夫々取り付ける。ナット82の夫々は、締結孔52に圧入してもよいし、締結部50を成型する際に、締結部50にインサート成型してもよい。次に、ネジ(図示せず)をナット82にねじ込んで、締結部50を対象物に固定する。
【0103】
本実施の形態のリアクトル10は、対象物(図示せず)に固定された後、2つのブスバー80を使用して電源(図示せず)に接続される。その際、2つの接続部54の接続穴56に、2つのナット84を夫々取り付ける。ナット84の夫々は、接続穴56に圧入してもよいし、保持部材40を成型する際に、接続部54にインサート成型してもよい。次に、ブスバー80の上端を、溶接等によってコイル20の端子28に夫々固定し接続する。次に、ネジ(図示せず)をブスバー80の下端の通過孔(図示せず)及び導電体からなる導電部材(図示せず)の通過孔(図示せず)を介してナット84にねじ込んで、ブスバー80を2つの導電部材に夫々固定し接続する。この結果、リアクトル10を使用する際、電源から導電部材を介してコイル20に大電流が流れる。
【0104】
本実施の形態の磁気コア60は、複合磁性体60M(
図12参照)から形成されているため、コイル20に大電流が流れた場合にも磁気飽和し難い。従って、本実施の形態のリアクトル10は、磁気特性を維持しつつ小型化可能である。即ち、本実施の形態によれば、大電流に適合した小型のリアクトル10が得られる。
【0105】
一般に、複合磁性体60M(
図12参照)のみからなる磁気コア60を備えたリアクトル10は、圧粉コアを備えたリアクトルに比べて、コイル20に30~40A程度の比較的低い電流が流れたときの初期インダクタンスが低い。従って、必要な昇圧性能を得るために、電流を比較的長時間流す必要がある。しかしながら、電流を流すにつれてコアロスが増大する。一方、本実施の形態の磁気コア60は、以下に説明する低損失材料から形成されており、これにより、コアロスを低減できる。
【0106】
本実施の形態の磁気コア60に含まれる複合磁性体60M(
図12参照)の磁性粉末60P(
図12参照)は、不可避不純物を除き組成式Fe
X1B
X2Si
X3P
X4C
X5Cu
X6Cr
X7で表される合金粉末であり、X1+X2+X3+X4+X5+X6+X7=100at%、79≦X1≦86at%、4≦X2≦13at%、0≦X3≦8at%、1≦X4≦14at%、0≦X5≦5at%、0.4≦X6≦1.4at%、0≦X7≦3at%である。この組成によれば、磁気コア60のコアロスを小さくできる。但し、本発明は、これに限られず、磁性粉末60Pの組成は、リアクトル10に求められる様々な磁気特性を考慮して設定すればよい。
【0107】
磁性粉末60P(
図12参照)は、上述の組成式におけるFeの一部をCo,Ni,V,Nb,Zr,Hf,Mo,Ta,W,Ag,Au,Pd,K,Ca,Mg,Sn,Zn,Ti,Al,Mn,S,O,N,Y及び希土類元素のうちの1種類以上の元素で置換した前記合金粉末であってもよい。この場合、Co,Ni,V,Nb,Zr,Hf,Mo,Ta,W,Ag,Au,Pd,K,Ca,Mg,Sn,Zn,Ti,Al,Mn,S,O,N,Y及び希土類元素のうちの1種類以上の元素は組成全体の3at%以下である。また、Co,Ni,V,Nb,Zr,Hf,Mo,Ta,W,Ag,Au,Pd,K,Ca,Mg,Sn,Zn,Ti,Al,Mn,S,O,N,Y及び希土類元素のうちの1種類以上の元素とFeとの合計はX1at%である。
【0108】
磁気コア60のコアロスを更に小さくするという観点から、以上のような組成を有する合金粉末は、αFeのナノ結晶を含んでいることが好ましい。ナノ結晶の形状は、実質的に真球形状であることが好ましい。また、ナノ結晶を真球近似したときのナノ結晶の平均粒径(D50)は、5nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。
【0109】
図4を参照すると、リアクトル10の使用時に巻回部22に電流が流れると、巻回部22及び磁気コア60に熱が生じる。生じた熱が蓄積されると、リアクトル10が設計通りに動作しないおそれがある。更に、リアクトル10が破損するおそれがある。一方、本実施の形態の巻回部22の底面22Lは、保持部材40の下方に位置している。この配置によれば、リアクトル10を回路基板等の対象物(図示せず)に固定したとき、底面22Lを対象物に接触させて放熱させることができる。即ち、本実施の形態の底面22Lは、放熱部として機能する。また、
図1を参照すると、本実施の形態の上側露出部32は、空気中に熱を放射する放熱部として機能する。但し、本発明は、これに限られない。例えば、巻回部22の底面22LのZ方向における位置は、必要に応じて変形可能である。
【0110】
図2を参照すると、本実施の形態のリアクトル10は、Z方向に沿って上方から見ると、180度回転対称な形状を有している。特に、リアクトル10をZ方向と平行に延びる軸の周りに180度回転したときの形状は、公差を除き、回転させる前の形状と同じである。この構造により、2つのブスバー80として互いに同じ部品を使用でき、これにより、リアクトル10の製造コストを低減できる。加えて、リアクトル10の強度設計が容易になる。
【0111】
本実施の形態のリアクトル10は、巻回部22の上側露出部32を含めて、180度回転対称な形状を有している。詳しくは、上方に露出したターン22Tの夫々は、Y方向に沿って真っ直ぐ延びている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、ターン22Tの夫々は、Y方向と僅かに斜交していてもよい。即ち、リアクトル10は、Z方向に沿って上方から見ると、実質的に180度回転対称な形状を有していればよい。
【0112】
本実施の形態のリアクトル10は、既に説明した変形例に加えて、更に様々に変形可能である。以下、リアクトル10の2つの変形例について説明する。
【0113】
図14及び
図15を
図4及び
図5と比較すると、第1の変形例によるリアクトル10Aは、リアクトル10と同じコイル20、磁気コア60及び締結部50を備えており、リアクトル10の保持部材40と異なる保持部材40Aを備えている。保持部材40Aの下側支持部42は、保持部材40の下側支持部42に比べて下方に位置しており、保持部材40Aの外壁部48Aは、保持部材40の外壁部48に比べてZ方向において長く延びている。保持部材40Aは、この相違点を除いて、保持部材40と同じ構造を有している。
【0114】
本変形例によれば、締結部50の下面508を、巻回部22の底面22Lと面一にできる。即ち、締結部50の下面508を含む下側支持部42全体の下面を、巻回部22の底面22Lと面一にできる。本変形例によれば、リアクトル10Aを製造する際のリアクトル10Aの高さ管理が容易になり、これにより、リアクトル10Aの製造コストが低減できる。
【0115】
図16を
図1と比較すると、第2の変形例によるリアクトル10Bは、リアクトル10と同じコイル20、磁気コア60及び締結部50を備えており、リアクトル10の保持部材40と異なる保持部材40Bを備えている。保持部材40Bは、保持部材40が有していない上壁部454Bを有している。上壁部454Bは、上側支持部45の上側開口452を部分的に塞ぐようにして設けられている。詳しくは、上壁部454Bは、巻回部22の上側平面部322のY方向における中間部を覆うようにして、X方向に沿って上側開口452全体に亘って延びている。保持部材40Bは、この相違点を除いて、保持部材40と同じ構造を有している。
【0116】
本変形例によれば、保持部材40Bのモールド成型を可能にしたまま、巻回部22の上側露出部32を部分的に塞ぐことができ、これにより、巻回部22の絶縁性をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0117】
10,10A,10B リアクトル
12 中間構造体
20 コイル
22 巻回部
22L 底面
22T ターン
222 内周面
224 外周面
24 中心孔
28 端子
32 上側露出部
322 上側平面部
324 上側曲面部
34 下側露出部
342 下側平面部
344 下側曲面部
40,40A,40B 保持部材
42 下側支持部
422 下側開口
428 下面
44 側壁
45 上側支持部
452 上側開口
454B 上壁部
456 上側側壁
46 前方上側支持部
47 後方上側支持部
48,48A 外壁部
482 内周面
50 締結部
508 下面
52 締結孔
54 接続部
56 接続穴
60 磁気コア
60U 上面
60L 下面
60E 外周面
60M 複合磁性体
60B バインダ
60P 磁性粉末
62 中脚
64 外側部
66 外脚
68 連結部
AX 中心軸
80 ブスバー
82,84 ナット