(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069067
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】包装材料
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220428BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20220428BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20220428BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220428BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20220428BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B27/10
C08L9/06
C08K3/34
C08L33/00
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178019
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名越 応昇
(72)【発明者】
【氏名】池澤 善実
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB02
3E086BB05
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4F100AA19B
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4J002AC081
4J002BG031
4J002DJ036
4J002GF00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガスバリア性、水蒸気バリア性及びフレーバーバリア性を有し、なおかつ折り部の亀裂耐性、並びに引裂き耐性を有する包装材料を提供する。
【解決手段】紙支持体と、前記紙支持体の片面に第一層と、紙支持体を基準として前記第一層の外側に第二層と、紙支持体を基準として前記第二層の外側に第三層とを有し、前記第一層がカオリン及びバインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上又はアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上を含有し、前記第二層が水分散性樹脂を含有し、前記第三層が樹脂ラミネート層である包装材料とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙支持体と、前記紙支持体の片面に第一層と、紙支持体を基準として前記第一層の外側に第二層と、紙支持体を基準として前記第二層の外側に第三層とを有し、前記第一層がカオリン及びバインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上又はアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上を含有し、前記第二層が水分散性樹脂を含有し、前記第三層が樹脂ラミネート層である包装材料。
【請求項2】
上記第一層が、バインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第一層において前記スチレン-ブタジエン系共重合樹脂の合計含有量が、紙支持体の片面あたり第一層中のカオリン100質量部に対して40質量部以上400質量部以下である請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
上記第一層が、バインダーとしてアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第一層において前記アクリル系樹脂の合計含有量が、紙支持体の片面あたり第一層中のカオリン100質量部に対して40質量部以上400質量部以下である請求項1に記載の包装材料。
【請求項4】
上記水分散性樹脂は、樹脂の構成単位に塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系樹脂である請求項1~3のいずれかに記載の包装材料。
【請求項5】
上記ポリ塩化ビニリデン系樹脂において、樹脂中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下である請求項4に記載の包装材料。
【請求項6】
上記ポリ塩化ビニリデン系樹脂が、塩化ビニリデン単量体と、塩化ビニリデン単量体と共重合できるその他単量体の一種又は二種以上とが共重合した樹脂であって、前記その他単量体が、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから成る群から選ばれる一種又は二種以上である請求項4又は5に記載の包装材料。
【請求項7】
上記アクリル系樹脂が、スチレン-アクリル系共重合樹脂である請求項3に記載の包装材料。
【請求項8】
上記樹脂ラミネート層を形成する樹脂の少なくとも一種が、生分解性樹脂である請求項1~7のいずれかに記載の包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化粧品、衛生用品及び日用雑貨品などに使用する包装材料であって、支持体が紙である包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチックに起因する環境汚染問題の理由から、包装材料の分野においては、支持体をプラスチックフィルムから紙に置き換える傾向にある。例えば、坪量が25g/m2以上400g/m2以下の紙基材上に、水蒸気バリア層、及び水溶性高分子を含有するガスバリア層を有する紙製バリア原紙の少なくとも一方の面上に、更に保護層として生分解性を有する樹脂層を有し、前記樹脂層が樹脂ラミネート層であって、ガスバリア性と水蒸気バリア性とを併せ持つ紙製バリア材料が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装材料には、水蒸気、湿気及び酸素の透過を防ぎ食品などの収容物を劣化から守る水蒸気バリア性及びガスバリア性が必要である。また近年、香りに関する害を主張する世間の動向から、包装材料には、食品などの収容物から発生する香りが漏れることを軽減するフレーバーバリア性が必要である。
【0005】
包装材料の収容物が食品である場合、食品には冷凍物などの低温品又は加熱物などの高温品が存在する。特許文献1に記載された紙製バリア材料の様なバリア層を有する包装材料は、通常でガスバリア性及び水蒸気バリア性が良好である。しかしながら、該包装材料では、低温品を収容すると、包装材料に折れが生じる箇所においてガスバリア層及び/又は水蒸気バリア層に微細な亀裂が発生してガスバリア性及び/又は水蒸気バリア性が劣化する場合がある。
また、支持体が紙である包装材料は、取り扱い時にひねり、ねじれ及びよじれによって容易に破れることがない様に引裂き耐性を有する必要がある。
【0006】
以上のことから、本発明の目的は、ガスバリア性、水蒸気バリア性及びフレーバーバリア性を有し、なおかつ折り部の亀裂耐性、並びに引裂き耐性を有する包装材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明の目的は以下によって達成される。
【0008】
[1]紙支持体と、前記紙支持体の片面に第一層と、紙支持体を基準として前記第一層の外側に第二層と、紙支持体を基準として前記第二層の外側に第三層とを有し、前記第一層がカオリン及びバインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上又はアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上を含有し、前記第二層が水分散性樹脂を含有し、前記第三層が樹脂ラミネート層である包装材料。
【0009】
[2]上記第一層が、バインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第一層において前記スチレン-ブタジエン系共重合樹脂の合計含有量が、紙支持体の片面あたり第一層中のカオリン100質量部に対して40質量部以上400質量部以下である上記[1]に記載の包装材料。
【0010】
[3]上記第一層が、バインダーとしてアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第一層において前記アクリル系樹脂の合計含有量が、紙支持体の片面あたり第一層中のカオリン100質量部に対して40質量部以上400質量部以下である上記[1]に記載の包装材料。
【0011】
[4]上記水分散性樹脂が、樹脂の構成単位に塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系樹脂である上記[1]~[3]のいずれかに記載の包装材料。
【0012】
[5]上記ポリ塩化ビニリデン系樹脂において、樹脂中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下である上記[4]に記載の包装材料。
【0013】
[6]上記ポリ塩化ビニリデン系樹脂が、塩化ビニリデン単量体と、塩化ビニリデン単量体と共重合できるその他単量体の一種又は二種以上とが共重合した樹脂であって、前記その他単量体が、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから成る群から選ばれる一種又は二種以上である上記[4]又は[5]に記載の包装材料。
【0014】
[7]上記アクリル系樹脂が、スチレン-アクリル系共重合樹脂である上記[3]に記載の包装材料。
【0015】
[8]上記樹脂ラミネート層を形成する樹脂の少なくとも一種が、生分解性樹脂である上記[1]~[7]のいずれかに記載の包装材料。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ガスバリア性、水蒸気バリア性及びフレーバーバリア性を有し、なおかつ折り部の亀裂耐性、並びに引裂き耐性を有する包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
包装材料は、紙支持体と、前記紙支持体の片面に第一層と、紙支持体を基準として前記第一層の外側に第二層と、紙支持体を基準として前記第二層の外側に第三層とを有する。すなわち、包装材料は、紙支持体に近い側から第一層、第二層及び第三層を有する。包装材料は、紙支持体、第一層、第二層及び第三層の各々間に、ガスバリア性ないし水蒸気バリア性の向上あるいは層間の接着性の向上などを目的として中間層を有することができる。製造コストの観点から、包装材料は、紙支持体、第一層、第二層及び第三層の各々間に中間層を有しない構造が好ましい。包装材料の実施形態として、食品などの収容物と対向する包装材料の面は、包装材料の第一層、第二層及び第三層を有する側である。また、包装材料は、第一層、第二層及び第三層を有する側に対する紙支持体の反対側において、グラビア印刷機及び/又はデジタル印刷機への印刷適性を向上させる目的のためにあるいは包装材料の寸法安定性を向上させる目的のために、印刷用塗工層又はバックコート層を設けることができる。さらに、印刷用塗工層と紙支持体との間に第一層、第二層及び/又は第三層を設けることができる。印刷用塗工層又はバックコート層は、印刷用塗工紙分野で従来公知のものである。
【0018】
紙支持体は、木材パルプ及び/又は非木材パルプから成るスラリーに対して、填料、サイズ剤、バインダー、定着剤、歩留り剤及び紙力剤などの各種添加剤を必要に応じて添加した紙料を、酸性、中性又はアルカリ性の条件で、従来公知の抄紙方法によって抄造した原紙、前記原紙をサイズプレス液でサイズプレスした上質紙、前記原紙を表面処理液で表面処理した上質紙、又は前記原紙若しくは前記上質紙に対してカレンダー処理を施した上質紙である。
さらに、前記紙料には、その他の添加剤として、顔料分散剤、嵩高剤、増粘剤、流動性改良剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、保湿剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤及び乾燥紙力増強剤などから選ばれる一種又は二種以上を、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、適宜添加することができる。
【0019】
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性ないし厚みを平均化する処理である。カレンダー処理の装置としては、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダーなどを挙げることができる。
【0020】
木材パルプは、製紙分野で従来公知のものである。木材パルプは、例えば、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)及びNBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)などの化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)及びCGP(ChemiGroundwood Pulp)などの機械パルプ、並びにDIP(DeInked Pulp)などの古紙パルプを挙げることができる。
非木材パルプは、製紙分野で従来公知の非木材繊維からなるパルプである。非木材繊維の原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピなどの木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフなどの草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻などの葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルトなどの禾本科植物、並びにワタ及びリンターなどの種毛を挙げることができる。
木材パルプ及び/又は非木材パルプは、前記木材パルプ及び前記非木材パルプから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0021】
填料は、製紙分野で従来公知の顔料である。顔料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、各種カオリン、タルク、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、シリカ、珪酸アルミニウム、珪藻土、活性白土、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの無機顔料、さらにスチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂及びマイクロカプセルなどの有機顔料を挙げることができる。填料は、前記無機顔料及び前記有機顔料から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0022】
いくつかの実施態様において、包装材料は、紙支持体の灰分量が8質量%以下である。この理由は、紙支持体が、柔軟性を得ることができかつ紙力を低下しないからである。ここで、灰分量とは、燃焼処理前の紙支持体の絶乾質量に対する紙支持体を500℃で1時間燃焼処理を行った後の不燃物の質量の比率(質量%)である。灰分量は、紙支持体中の填料含有量を調整するなどの従来公知の方法で制御することができる。
【0023】
サイズ剤は、製紙分野で従来公知の内添サイズ剤である。内添サイズ剤は、例えば、酸性紙であればロジン系サイズ剤、中性紙であればアルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、中性ロジン系サイズ剤及びカチオン性スチレン-アクリル系サイズ剤などを挙げることができる。
また、サイズプレス液に用いる表面サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤は、例えば、澱粉系サイズ剤、セルロース系サイズ剤、ポリビニルアルコール系サイズ剤、スチレン-アクリル系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレン-マレイン酸系サイズ剤、及びアクリルアミド系サイズ剤などを挙げることができる。
【0024】
サイズプレスは、製紙分野で従来公知のサイズプレス装置で実施できる。サイズプレス装置は、例えば、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレスを、ロッドメタリングサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザーを、ロールメタリングサイズプレスとしてゲートロールコーター、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、及びカレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
【0025】
第一層は、カオリン、及びバインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上又はアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上を含有する。第一層は、紙支持体が有する空隙を塞ぐ被覆層として機能を有する。また、第一層は、紙支持体の裏面(第一層、第二層及び第三層を有する側に対すると紙支持体の反対側)から水分及び油分の透過を防止して第二層を保護する保護層として機能を有する。また、第一層は、紙支持体と第二層とを接着する接着層として機能する。包装材料は、第一層が被覆層、保護層及び接着層として機能することで結果的にガスバリア性及びフレーバーバリア性、並びに折り部の亀裂耐性を得ることができる。
【0026】
カオリンは、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイトなどの天然に産出されたカオリン原鉱を、工業的に精製及び加工したものであって、粉砕、洗浄、除鉄、及び分級などの工程を経て製造されるものである。また、カオリンには、アスペクト比を向上させるためにせん断力をかけて薄板状としたデラミネーティッドカオリン、粒度分布がシャープになるよう調整したエンジニアードカオリン、凝集性を高めた焼成カオリンといった加工性の高いものも含まれる。
【0027】
カオリンは、通常、平面部とエッジ部とで異なる電荷を帯びる。カオリンは、電荷を帯びるために他の顔料に比べてバインダーを吸着しやすい。そして、スチレン-ブタジエン系共重合樹脂は顔料に対する結合性が高い。アクリル系樹脂は、分子内に極性を有するために、カオリンに対して吸着に優れる。よって、カオリンと、スチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上又はアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上との組み合わせを含む第一層は、被膜形成に優れる。その結果、被覆層、保護層及び接着層としての機能を上手く発現する。
【0028】
いくつかの実施態様において、第一層は、バインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、なおかつ第一層において、前記スチレン-ブタジエン系共重合樹脂の合計含有量は、紙支持体の片面あたり第一層中のカオリン100質量部に対して40質量部以上400質量部以下である。この理由は、包装材料のガスバリア性、フレーバーバリア性、折り部の亀裂耐性及び/又は引裂き耐性が良化するからである。
【0029】
スチレン-ブタジエン系共重合樹脂は、スチレン系単量体とブタジエンとの共重合樹脂である。スチレン系単量体は、例えば、スチレン及びα-メチルスチレンなどのビニル基に置換基を有するスチレン誘導体、並びにビニルトルエン及びp-クロルスチレンなどのベンゼン環に置換基を有する誘導体を挙げることができる。いくつかの実施態様において、スチレン-ブタジエン系共重合樹脂は、共重合樹脂中のスチレン系単量体の含有質量比率が67質量%以上100質量%未満である。少なくとも一つの実施態様において、スチレン-ブタジエン系共重合樹脂は、共重合樹脂中のスチレン系単量体の含有質量比率が70質量%以上90質量%以下である。これらの理由は、包装材料のガスバリア性、フレーバーバリア性及び折り部の亀裂耐性が良化するからである。
【0030】
また、スチレン-ブタジエン系共重合樹脂は、スチレン系単量体及びブタジエン以外にスチレン系単量体及びブタジエンと共重合可能な単量体を有することができる。共重合可能な単量体の例としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン及びエチレンなどを挙げることができる。
【0031】
スチレン-ブタジエン系共重合樹脂は、公知の乳化重合法によって合成することができる。合成は、例えば、所定の反応容器に各単量体、乳化剤及び水を配合し、ラジカル重合開始剤を加えて撹拌及び加熱する方法である。共重合樹脂において各単量体の含有質量比率は、反応容器に配合する各単量体の配合量で調整できる。
【0032】
いくつかの実施態様において、第一層は、バインダーとしてアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、なおかつ第一層において、前記アクリル系樹脂の合計含有量は、紙支持体の片面あたり第一層中のカオリン100質量部に対して40質量部以上400質量部以下である。この理由は、包装材料のガスバリア性、折り部の亀裂耐性及び/又は引裂き耐性が良化するからである。
【0033】
アクリル系樹脂は、アクリル酸系単量体を樹脂中50質量%超で含有する樹脂である。
アクリル酸系単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを挙げることができる。(メタ)アクリル酸塩の例としては、(メタ)アクリル酸リチウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸カリウム及び2-スルホエチル(メタ)アクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ウンデシルなどを挙げることができる。さらに、アクリル酸系単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、モノ(メタ)アクリル酸グリセロール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,2-プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-プロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸テトラメチロールメタン、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸ジアセトン、(メタ)アクリル酸アセトニル、(メタ)アクリル酸2-アセトアセトキシエチル、並びに(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アセトニル、(メタ)アクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)エチル、及び(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルなどを挙げることができる。
【0034】
アクリル系樹脂は、アクリル酸系単量体以外にアクリル酸系単量体と共重合可能な他の単量体を含有することができる。他の単量体の例としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ジビニルベンゼン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニル硫酸ナトリウム、グリセリンモノアリルエーテルモノスルホコハク酸ナトリウム、(メタ)アクリルアミドステアリン酸ナトリウム、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリロイルオキシアルキルプロペナール、及びジアセトン(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
【0035】
いくつかの実施態様において、アクリル系樹脂は、上記アクリル酸系単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体を重合して成る樹脂である。また、いくつかの実施態様において、アクリル系樹脂は、上記アクリル酸系単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上の単量体と、上記アクリル酸系単量体以外の共重合可能な他の単量体から成る群から選ばれる一種又は二種以上とを共重合して成る樹脂である。
また、いくつかの実施態様において、アクリル系樹脂は、アクリル酸系単量体とスチレンとが共重合したスチレン-アクリル系共重合樹脂である。少なくとも一つの実施態様において、アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルから成る群から選ばれる一種又は二種以上のアクリル酸系単量体とスチレンとが共重合したスチレン-アクリル系共重合樹脂である。これらの理由は、包装材料のガスバリア性及びフレーバーバリア性が良化するからである。
【0036】
アクリル系樹脂は、公知の乳化重合法によって合成することができる。合成は、例えば、所定の反応容器に各単量体、乳化剤及び水を配合し、ラジカル重合開始剤を加えて撹拌及び加熱する方法である。共重合樹脂において各単量体の含有質量比率は、反応容器に配合する各単量体の配合量で調整できる。
【0037】
第一層は、カオリン、並びにバインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂及びアクリル系樹脂以外に、必要に応じて従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、カオリン以外の無機顔料、有機顔料、スチレン-ブタジエン系共重合樹脂及びアクリル系樹脂以外の各種バインダー、澱粉類及びセルロース類などの多糖類、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、及び耐水化剤などを挙げることができる。
【0038】
第二層は、水分散性樹脂を含有する。水分散性樹脂は、ガスバリア剤、水蒸気バリア剤及びフレーバーバリア剤として機能するものである。水分散性樹脂とは、水溶性ではないものの水中に分散することが可能な樹脂である。水分散性樹脂は、水分散状態から一旦乾燥した後は熱水にも実質的に溶解しない点で水溶性樹脂と区別される。水分散性樹脂は、例えば、スチレン-ブタジエン系共重合樹脂及びアクリロニトリル-ブタジエン系共重合樹脂などの共役ジエン系共重合樹脂、アクリル酸メチル系重合樹脂並びにスチレン-アクリル酸エチル系共重合樹脂及びメタクリル酸メチル-ブタジエン系共重合樹脂などのアクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂及び塩化ビニリデン-アクリロニトリル系共重合樹脂などのビニル系共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、並びにこれらの各種共重合樹脂のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性共重合樹脂、メラミン樹脂及び尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂、並びに天然ゴムなどを挙げることができる。水分散性樹脂は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
【0039】
いくつかの実施態様において、第二層は、水分散性樹脂が樹脂の構成単位に塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系樹脂である。少なくとも一つの実施態様において、第二層は、水分散性樹脂が樹脂の構成単位に塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系樹脂であって、第二層中のポリ塩化ビニリデン系樹脂の含有量が、紙支持体の片面あたり、第二層の乾燥固形分量に対して85質量%以上である。これらの理由は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂がバリア剤となって、包装材料のガスバリア性、水蒸気バリア性及びフレーバーバリア性が良化するからである。
【0040】
第二層は、水分散性樹脂以外に、必要に応じて従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、無機顔料、有機顔料、水分散性樹脂以外の各種樹脂、澱粉類及びセルロース類などの多糖類、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤などを挙げることができる。
【0041】
いくつかの実施態様において、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系樹脂は、樹脂中の塩化ビニリデン単量体が80質量%を超える。樹脂中の塩化ビニリデン単量体が100質量%にならない場合、ポリ塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン単量体と、塩化ビニリデン単量体と共重合できるその他単量体の一種又は二種以上とが共重合した樹脂である。
【0042】
また、いくつかの実施態様において、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系樹脂は、樹脂中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上である。この理由は、樹脂中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上であると、包装材料のガスバリア性及び水蒸気バリア性が良化するからである。また、いくつかの実施態様において、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系樹脂は、樹脂中の塩化ビニリデン単量体が95質量%以下である。この理由は、塩化ビニリデン単量体が95質量%以下であると、第二層の被膜形成時に速い結晶化を抑制できるために第二層が整地する時間を得ることができる。その結果、第二層における欠陥が軽減されて、包装材料のガスバリア性、水蒸気バリア性及び折り部亀裂耐性が良化するからである。少なくとも一つの実施態様において、樹脂の構成単位として塩化ビニリデン単量体を主成分に有するポリ塩化ビニリデン系樹脂は、樹脂中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下である。
【0043】
塩化ビニリデン単量体と共重合できる上記その他単量体は、塩化ビニリデン単量体と共重合できる単量体であれば特に限定されない。その他単量体は、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びスチレンなどを挙げることができる。
【0044】
いくつかの実施態様において、第二層のポリ塩化ビニリデン系樹脂は、上記その他単量体が(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。少なくとも一つの実施態様として、上記ポリ塩化ビニリデン系樹脂は、樹脂中、塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下、並びに(メタ)アクリロニトリルから成る群から選ばれる単量体が2質量%以上10質量%以下、並びに(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルから成る群から選ばれる単量体が0.5質量%以上5質量%以下である。いくつかの実施態様において、第二層のポリ塩化ビニリデン系樹脂は、上記その他単量体が(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。少なくとも一つの実施態様として、上記ポリ塩化ビニリデン系樹脂は、樹脂中、塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下、(メタ)アクリロニトリルから成る群から選ばれる単量体が2質量%以上10質量%以下、並びに(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから成る群から選ばれる単量体が0.5質量%以上5質量%以下である。これらの理由は、包装材料のガスバリア性及び水蒸気バリア性が良化するからである。
なお、ポリ塩化ビニリデン系樹脂中、塩化ビニリデン単量体と(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルから成る群から選ばれる一種又は二種以上との含有比率の合計が100質量%に満たない場合は、これら単量体と共重合可能な一種又は二種以上の別のその他単量体を含んでよい。
【0045】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂の分子量は、特に限定しない。いくつかの実施態様において、ポリ塩化ビニリデン系樹脂の分子量は、分子量既知のポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定された重量平均分子量で8万以上である。この理由は、前記分子量の範囲であると、ポリ塩化ビニリデン系重合樹脂の熱及び光に対する安定性が良くなるからである。
【0046】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂は、公知の乳化重合法によって合成することができる。合成は、例えば、所定の反応容器に各種単量体、乳化剤及び水を配合し、ラジカル重合開始剤を加えて撹拌及び加温する方法である。また、ポリ塩化ビニリデン系樹脂は、例えば、旭化成社などから市販される。
【0047】
第三層は、樹脂ラミネート層である。第三層は、ガスバリア性、水蒸気バリア性及びフレーバーバリア性を向上するためのバリア層として機能する。また、第三層は、第二層の物理的強度を補うための補強層として機能する。また、第三層は、第二層の温度変化に対する遮蔽層として機能する。第三層が、特に、前記補強層及び前記遮蔽層として機能することによって、包装材料は、折り部の亀裂耐性及び引裂き耐性を有することができる。
【0048】
樹脂ラミネート層を形成する樹脂は、ラミネート分野で従来公知の樹脂である。前記樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール系共重合樹脂、ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル系樹脂、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合樹脂、(メタ)アクリロニトリル-スチレン系共重合樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、並びに澱粉類及びセルロース類の多糖類などを挙げることができる。
【0049】
いくつかの実施態様において、樹脂ラミネート層を形成する樹脂の少なくとも一種が生分解性樹脂である。この理由は、生分解性樹脂の含有がマイクロプラスチック発生などの環境問題に結びつく樹脂の使用量を削減することができる。生分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸系樹脂(PLA)、ポリブチレンサクシネート系樹脂(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂(PBSA)、3-ヒドロキシブタン酸-3-ヒドロキシヘキサン酸系共重合樹脂(PHBH)などを挙げることができる。
なお、生分解性樹脂とは、微生物の働きにより、分子レベルまで分解され、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質の樹脂をいう。
【0050】
樹脂ラミネート層は、製法によって例えば、押し出しラミネート層、並びにバリアフィルム及び蒸着フィルムなどのフィルム貼合層を挙げることができる。
樹脂ラミネート層が押し出しラミネート層の場合、樹脂ラミネート層は、押し出しラミネート法により第二層に対して樹脂を積層して得ることができる。また、樹脂ラミネート層がフィルム貼合層の場合、樹脂ラミネート層は、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、無溶剤ラミネート法及びサンドラミネート法などにより第二層に対して樹脂から成るフィルムを貼合して得ることができる。
【0051】
フィルム貼合層には、上記樹脂を主成分としたフィルム、前記フィルムに更に別の前記樹脂のフィルムを積層した積層フィルム、前記フィルムにアルミニウムなどの各種金属からなる金属箔を貼合した貼合フィルム、前記フィルムにアルミニウムなどの各種金属又は酸化珪素若しくは酸化アルミニウムなどの無機酸化物を蒸着した蒸着フィルムなどが含まれる。また、フィルム貼合層には、これらのフィルムを一層又は二層以上を積層した積層体が含まれる。
【0052】
本発明の包装材料は、第一層がカオリン及びスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上又はアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上を含有し、第二層が水分散性樹脂を含有し、第三層が樹脂ラミネート層である。いくつかの実施態様において、包装材料は、第一層がカオリン及びスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上又はアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種若しくは二種以上を含有し、第二層が水分散性樹脂としてポリ塩化ビニリデン系重合樹脂を含有し、第三層が樹脂ラミネート層である。
【0053】
いくつかの実施態様において、包装材料は、第一がカオリン及びスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第二層が水分散性樹脂を含有し、第三層が樹脂ラミネート層である。少なくとも一つの実施態様において、包装材料は、第一層がカオリン及びスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第二層が水分散性樹脂としてポリ塩化ビニリデン系重合樹脂を含有し、第三層が樹脂ラミネート層である。
【0054】
いくつかの実施態様において、包装材料は、第一層がカオリン及びアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第二層が水分散性樹脂を含有し、第三層が樹脂ラミネート層である。少なくとも一つの実施態様において、包装材料は、第一層がカオリン及びアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第二層が水分散性樹脂としてポリ塩化ビニリデン系重合樹脂を含有し、第三層が樹脂ラミネート層である。
【0055】
紙支持体に対して第一層、第一層に対して第二層を設ける方法は、特に限定されない。例えば、塗工紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて、各層を形成するための塗工液を塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置の例としては、フィルムプレスコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、フィルムトランスファーコーターなどを挙げることができる。乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤーの熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波を利用した乾燥機などの各種乾燥装置を挙げることができる。
【0056】
第一層の塗工液がカオリンとバインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂又はアクリル系樹脂とを含有すること、第二層の塗工液が水分散性樹脂を含有することによって、第一層がカオリンとスチレン-ブタジエン系共重合樹脂又はアクリル系樹脂とを、第二層が水分散性樹脂を含有することができる。
【0057】
いくつかの実施態様において、第一層の塗工量は、紙支持体の片面あたり乾燥固形分量で3g/m2以上15g/m2以下である。この理由は、第一層の被覆層として及び保護層としての機能が良化するからである。いくつかの実施態様において、第二層の塗工量は、紙支持体の片面あたり乾燥固形分量で4g/m2以上15g/m2以下である。この理由は、第二層の材料コストが過剰にならずにガスバリア性、水蒸気バリア性及びフレーバーバリア性が良化するからである。いくつかの実施態様において、第三層の樹脂ラミネート層の厚さは10μm以上50μm以下である。この理由は、第三層の材料コストが過剰にならずにバリア層としての機能及び補強層としての機能が良化するからである。少なくとも一つの実施態様において、包装材料は、紙支持体の片面あたり、第一層の塗工量が乾燥固形分量で5g/m2以上10g/m2以下及び第二層の塗工量が乾燥固形分量で5g/m2以上10g/m2以下、並びに第三層の樹脂ラミネート層の厚さが15μm以上40μm以下である。
【実施例0058】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。各層の塗工量は乾燥固形分量を表す。
【0059】
<紙支持体>
以下の紙料を調成した。
LBKP(濾水度350~480mlcsf) 50質量部
NBKP(濾水度350~480mlcsf) 50質量部
硫酸バンド 2質量部
軽質炭酸カルシウム(TP121、奥多摩工業社) 7質量部
ロジン系サイズ剤(CC1404、星光PMC社) 0.3質量部
紙力剤 0.6質量部
【0060】
上記配合の紙料を長網抄紙機で抄造し、坪量40g/m2の原紙を得た。これに、マシンカレンダーを用いて温度60℃、処理速度500m/分の条件でカレンダー処理して紙支持体を得た。紙支持体の灰分量は5質量%であった。
【0061】
<第一層の塗工液>
水を媒体として以下の塗工液を調製した。
顔料 種類及び質量部は表1に記載
樹脂 種類及び質量部は表1に記載
【0062】
<第二層の塗工液>
水を媒体として以下の塗工液を調製した。
樹脂 種類は表1に記載/100質量部
【0063】
<第三層>
樹脂ラミネート層を形成する樹脂の種類及び樹脂ラミネート層の製法について、表1に記載する。
【0064】
【0065】
表1に記載する各材料は以下である。
カオリン :2μm以下の累積頻度97体積%のカオリン
炭酸カルシウム :2μm以下の累積頻度90体積%の重質炭酸カルシウム
スチレン-ブタジエン系:スチレン-ブタジエン共重合樹脂
アクリル系1 :ポリアクリル酸n-ブチル樹脂
アクリル系2 :スチレン-アクリル酸エチル-アクリロニトリル
共重合樹脂
アクリル系3 :スチレン-アクリル酸エチル共重合樹脂
PVDC1 :ポリ塩化ビニリデン系重合樹脂
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :80
メタクリロニトリル :15
アクリル酸エチル :5
PVDC2 :ポリ塩化ビニリデン系重合樹脂
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :85
メタクリロニトリル :10
アクリル酸エチル :5
PVDC3 :ポリ塩化ビニリデン系重合樹脂
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :90
アクリロニトリル :9
アクリル酸エチル :1
PVDC4 :ポリ塩化ビニリデン系重合樹脂
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :95
アクリロニトリル :3
アクリル酸エチル :2
PVDC5 :ポリ塩化ビニリデン系重合樹脂
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :98
メタクリロニトリル :1.5
アクリル酸エチル :0.5
PVDC6 :ポリ塩化ビニリデン系重合樹脂
(単量体の配合質量%比)
塩化ビニリデン :95
メタクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル
:5
PVA :ポリビニルアルコール樹脂
(無変性、完全ケン化、平均重合度1700)
澱粉 :酸化澱粉
ポリウレタン系 :ポリヒドロキシウレタン樹脂
ポリエチレン系1 :低密度ポリエチレン樹脂
(日本ポリエチレン社、ノバテック(登録商標)LD
LC602A)
ポリエチレン系2 :厚さ20μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム
(フタムラ化学社、LL-XMTN)
ポリエチレン系3 :水性ポリエチレンエマルション
(ユニチカ社、アローベース(登録商標)SE-1200)
ポリプロピレン系1 :ポリプロピレン樹脂
(日本ポリプロ社、ノバテックPP FL02A)
ポリプロピレン系2 :厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム
(フタムラ化学社、FOA)
生分解性樹脂1 :ポリ乳酸樹脂
(ユニチカ社、テラマック(登録商標)TP-4000)
生分解性樹脂2 :ポリブチレンサクシネート樹脂
(三菱ケミカル社、BioPBS(登録商標)-FZ91)
生分解性樹脂3 :ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂
(三菱ケミカル社、BioPBS-FD92)
【0066】
<塗工>
紙支持体の片面に、第一層の塗工液をロッドコーターで塗工及び乾燥した。塗工量は、10g/m2になるようコーター条件を調整した。次に、第一層に対して、第二層の塗工液をエアナイフコーターで塗工及び乾燥した。塗工量は10g/m2になるようにコーター条件を調整した。
続いて、第二層に対して、第三層の樹脂ラミネート層を積層した。押し出しラミネート法によるラミネート層の厚みは20μmになるように条件を調整した。なお、比較例8は、第二層に対して、ポリエチレン樹脂エマルションをエアナイフコーターで塗工及び乾燥して、樹脂ラミネート層に該当しない第三層とした。塗工量は20g/m2になるようにコーター条件を調整した。比較例9は、第三層を設けなかった。
【0067】
<ガスバリア性>
ガスバリア性の評価は、ISO15105-2:2003「Plastics-Film and sheeting - Determination of gas-transmission rate - Part2 : Equal-pressure method」(JIS K7126-2:2006「プラスチック -フィルム及びシート- ガス透過度試験方法-第2部:等圧法」)に準じて実施した測定結果から行った。測定は、第一層、第二層及び第三層を有する側を外側にして行った。ガスバリア性を、ガス透過度試験のガスに酸素ガスを用いた酸素透過度によって下記の基準で評価した。測定条件は、温度23±0.5℃及び相対湿度85±2%とした。
本発明において、包装材料は、A、B又はCの評価であればガスバリア性を有するものとする。
A:酸素透過度30cc/m2・24h・atm以下で、良好。
B:上記Aより劣るものの、
酸素透過度50cc/m2・24h・atm以下で、概ね良好。
C:上記Bより劣るものの、
酸素透過度100cc/m2・24h・atm以下で、実用可能。
D:上記Cより劣り、
酸素透過度100cc/m2・24h・atm超で、実用不可能。
【0068】
<水蒸気バリア性>
水蒸気バリア性の評価は、JIS Z0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法 (カップ法)」に準じて実施した測定結果から行った。測定は、第一層、第二層及び第三層を有する側を内側にして測定した。水蒸気バリア性を、水蒸気透過度によって下記の基準で評価した。測定条件は、温度40±0.5℃及び相対湿度90±2%とした。
本発明において、包装材料は、A、B又はCの評価であれば水蒸気バリア性を有するものとする。
A:水蒸気透過度20g/m2・24h以下で、良好。
B:上記Aより劣るものの、
水蒸気透過度50g/m2・24h以下で、概ね良好。
C:上記Bより劣るものの、
水蒸気透過度100g/m2・24h以下で、実用可能。
D:上記Cより劣り、
水蒸気透過度100g/m2・24h超で、実用不可能。
【0069】
<フレーバーバリア性>
香り発生物質として市販のレギュラーコーヒー粉末を使用した。ガラスコップにレギュラーコーヒー粉末を入れ、コップの開口部を包装材料で覆い、開口部の周囲をテープによって厳重に封をした。5人の被験者が、包装材料で封をしたコップの開口部に対して匂いを嗅ぎ、下記の基準で官能評価した。
3点:匂いを感じない。
2点:匂いを感じるような気がする。
1点:匂いを感じる。
5人の官能評価の結果を基にして下記の基準でフレーバーバリア性を評価した。本発明において、包装材料は、評価A又はBであればフレーバーバリア性を有するものとする。
A:評価3点が3人以上かつ評価1点が0人である。
B:評価2点が3人以上かつ評価1点が0人である。
C:評価1点が1人以上である。
【0070】
<折り部の亀裂耐性>
包装材料を折って冷凍保管された保冷剤を挟持した。次に、包装材料を一旦広げて再び冷凍保管された保冷剤を挟持した。さらに、包装材料を広げてから再び挟持し、挟持の操作を合計で3回行った。前記操作済み包装材料に対してガスバリア性及び水蒸気バリア性を評価した。ガスバリア性及び水蒸気バリア性は、上記した方法で行い、上記と同じ基準で評価した。ガスバリア性及び水蒸気バリア性の評価結果を基にし、折り部亀裂耐性を下記の基準で評価した。本発明において、包装材料は、A、B又はCの評価であれば折り部の亀裂耐性を有するものとする。
A:ガスバリア性がA及び水蒸気バリア性がA。
B:ガスバリア性及び水蒸気バリア性の一方がA又はBで他方がB。
C:ガスバリア性及び水蒸気バリア性の一方がA~Cで他方がC。
D:ガスバリア性及び水蒸気バリア性のいずれかがD。
【0071】
<引裂き耐性>
包装材料の引裂き耐性は、JIS P8116:2000「紙-引裂強さ試験方法-エルメンドルフ形引裂試験機法」(ISO1974:1990「Paper Determination of tearing resistance (Elmendorf method)」)に準じて測定した。測定は、包装材料の紙支持体のCD方向に対して行った。本発明において、包装材料は、A、B又はCの評価であれば引裂き耐性を有するものとする。
A:0.55N以上
B:0.49N以上0.55N未満
C:0.45N以上0.49N未満
D:0.45N未満
【0072】
評価結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
表2から、本発明に該当する実施例1~34は、ガスバリア性、水蒸気バリア性及びフレーバーバリア性を有し、なおかつ折り部の亀裂耐性及び引裂き耐性を有する包装材料であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~9は、これら効果の少なくとも一つを満足できない包装材料であると分かる。
主に、実施例1~6の間の対比から、第一層がバインダーとしてスチレン-ブタジエン系共重合樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第一層において、前記スチレン-ブタジエン系共重合樹脂の合計含有量が紙支持体の片面あたり第一層中のカオリン100質量部に対して40質量部以上400質量部以下であると、包装材料は、ガスバリア性、フレーバーバリア性、折り部の亀裂耐性及び/又は引裂き耐性が良化すると分かる。
【0075】
主に、実施例19~24の間の対比から、第一層がバインダーとしてアクリル系樹脂から成る群から選ばれる一種又は二種以上を含有し、第一層において前記アクリル系樹脂の合計含有量が紙支持体の片面あたり第一層中のカオリン100質量部に対して40質量部以上400質量部以下であると、包装材料は、ガスバリア性、折り部の亀裂耐性及び/又は引裂き耐性が良化すると分かる。
主に、実施例4及び22と実施例17、18、32、33の間の対比から、第二層において、水分散性樹脂は、樹脂の構成単位に塩化ビニリデン単量体を主成分として有するポリ塩化ビニリデン系樹脂であると、包装材料は、ガスバリア性、水蒸気バリア性及び/又はフレーバーバリア性が良化すると分かる。
主に、実施例4及び実施例7~10の間の対比から、第二層において樹脂中の塩化ビニリデン単量体が85質量%以上95質量%以下のポリ塩化ビニリデン系樹脂であると、包装材料は、ガスバリア性、水蒸気バリア性及び折り部亀裂耐性が良化することが分かる。
主に、実施例9と実施例34との対比から、ポリ塩化ビニリデン系樹脂が、塩化ビニリデン単量体と、塩化ビニリデン単量体と共重合できるその他単量体の一種又は二種以上とが共重合した樹脂であって、前記その他単量体が、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルから成る群から選ばれる一種又は二種以上であると、包装材料は、ガスバリア性及び水蒸気バリア性が良化すると分かる。
主に、実施例30と実施例31との対比から、第一層のバインダーとしてアクリル系樹脂がスチレン-アクリル系共重合樹脂であると、包装材料は、ガスバリア性及びフレーバーバリア性が良化すると分かる。
【0076】
また、実施例14、15、16、28、29、30及び31から、第三層が生分解性樹脂を含むことによって、本発明の効果を有しつつ、環境問題に結びつく樹脂の使用量を削減することができると分かる。