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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069131
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20220428BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220428BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20220428BHJP
【FI】
H02J50/05
H02M7/48 A
H02J50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178124
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】514038443
【氏名又は名称】株式会社ExH
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】原川 健一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 弘行
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770DA01
5H770DA11
5H770DA18
5H770DA20
5H770DA41
5H770DA44
5H770DA45
5H770DA46
5H770DA47
5H770EA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】急速充電可能な電池及びキャパシタに対する大電力急速充電や、ロボットなどの大きな負荷に対する送電を実現させる手法を提供する。
【解決手段】送電電極11から送電された電力を、接合容量C及びCを介して受電する受電電極12を有する受電側を含む電力供給システムにおいて、受電電極12は、ゴム121及び弾性接着層122からなる第1の層と、薄板電極123からなる第2の層と、第2の層の端部と受電電極12とを接続するバネ状導体124とを有する。第2の層のうち送電電極に対向する面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が配置されており、第2の層が送電電極11に接触又は近接すると、送電電極11からの電力が、第2の層とバネ状導体124とを介して受電電極12に送電される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力を送電する送電電極を有する送電側と、前記送電電極から送電された電力を、接合容量を介して受電する受電電極を有する受電側とを含む電力供給システムにおいて、
前記受電側は、
前記受電電極のうち前記送電電極に対向する面に、絶縁性の弾性体からなる第1の層と、屈曲性を有する薄板形状の導電体からなる第2の層と、当該第2の層の端部と前記受電電極とを接続する導電性の弾性体とを有し、
前記第2の層のうち前記送電電極に対向する面に絶縁性の膜が配置されており、
前記第2の層が前記送電電極に接触又は近接すると、当該送電電極からの電力が、前記第2の層と前記導電性の弾性体とを介して前記受電電極により受電する、
電力供給システム。
【請求項2】
前記第2の層は、前記第1の層の表面に複数配置され、
前記受電側が前記送電側に押圧されると、前記送電電極の表面の形状に合わせて、複数の前記第2の層の夫々が形状を変化させながら前記送電電極の表面に接触する、
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置されたFET(電界効果トランジスタ)と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
方形波を発振させるフライバックインバータとして動作し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段をさらに含む、
請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置されたFET(電界効果トランジスタ)と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
方形波を発振させるフォワードインバータとして動作し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段をさらに含む、
請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し、
前記送電側は、
疑似的な方形波を発振させる、4つのFET(電界効果トランジスタ)を含むフルブリッジ回路を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段をさらに含む、
請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置された、方形波を発振させる、4つのFET(電界効果トランジスタ)を有するフルブリッジ回路、及び共振回路と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段をさらに含む、
請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置された、疑似的な方形波を発振させる、2つのFET(電界効果トランジスタ)を有するプッシュプル回路と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段をさらに含む、
請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置された、疑似的な方形波を発振させる、2つのFET(電界効果トランジスタ)と2つのコンデンサとを有するハーフブリッジ回路と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段をさらに含む、
請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置された、方形波を発振させる、2つのFET(電界効果トランジスタ)、及び共振回路と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段をさらに含む、
請求項1又は2に記載の電力供給システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電界結合非接触方式の給電技術は、非接触の電極間の接合容量を介して電力を送電することができる優れた給電技術である(例えば特許文献1参照)。ただし、非接触である分、接合容量が小さくなるため、電圧を高めたり周波数を上げたりすることで接合容量を大きくする必要がある。
しかしながら、無暗に電圧を高めたり周波数を上げたりすると、接合容量から外部に放射される電磁界が大きくなるので好ましくない。このため、電界結合非接触方式の給電技術では、外部への電磁界の放射が比較的許容され、世界的にも認知された周波数である6.78MHzを含むISMバンドが利用される。なお、「ISMバンド」とは、無線周波数(RF)エネルギーを電気通信以外の工業、科学、医療の目的で使用するために国際的に確保された、免許不要で利用可能な周波数帯域のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6586460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電池及びキャパシタの発達に伴う急速充電の要請に応えるためには、大電力を短時間で送電できなければならない。これを電界結合非接触方式の給電技術で実現させようとすると、従来よりもさらに電圧を高めたり周波数を上げたりする必要がある。この場合、さらなる電磁波放射が生じることになる。周波数が上がることは、周波数と透磁率との関係におけるスネークの限界が示すように、磁性体の透磁率が低下するとともに損失も増大する。このため、大電力送電時にはコア材が熱を持ち共振回路の同調がずれる。その結果、電界結合非接触方式の給電技術を大電力送電に適用することが困難になることが予想される。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、急速充電可能な電池及びキャパシタに対する大電力急速充電や、ロボットなどの大きな負荷に対する送電を実現させる手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電力供給システムは、
電源からの電力を送電する送電電極を有する送電側と、前記送電電極から送電された電力を、接合容量を介して受電する受電電極を有する受電側とを含む電力供給システムにおいて、
前記受電側は、
前記受電電極のうち前記送電電極に対向する面に、絶縁性の弾性体からなる第1の層と、屈曲性を有する薄板形状の導電体からなる第2の層と、当該第2の層の端部と前記受電電極とを接続する導電性の弾性体とを有し、
前記第2の層のうち前記送電電極に対向する面に絶縁性の膜が配置されており、
前記第2の層が前記送電電極に接触又は近接すると、当該送電電極からの電力を、前記第2の層と前記導電性の弾性体とを介して前記受電電極により受電する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、急速充電可能な電池及びキャパシタに対する大電力急速充電や、ロボットなどの大きな負荷に対する送電を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】従来技術としての電界結合方式の非接触給電回路の概要を示す回路図である。
図2】送電電極と受電電極とがいずれも剛体金属である場合と、弾性体を裏打ちにした薄板金属を用いた場合とにおける接触給電の例を示す図である。
図3図2の内容を実証するために行われた3種類のケースについての実験結果を示す図である。
図4図3の実験結果に基づいて設計された電極構造の具体例を示す図である。
図5図4の電極構造が比較的大きなうねりに対応可能であることを示す図である。
図6】フライバックトランス用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
図7】フォワードインバータを用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
図8】フルブリッジ回路を用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
図9】フルブリッジ回路と共振回路とを用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
図10】プッシュプル回路を用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
図11】ハーフブリッジ回路を用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
図12】ハーフブリッジ回路と共振回路とを用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
図13】電界結合方式の非接触給電回路における通信制御のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電力供給システムの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
まず、図1を参照して、従来からある電界結合方式の非接触給電回路の問題点について詳しく説明する。
図1は、従来技術としての電界結合方式の非接触給電回路の概要を示す回路図である。
【0011】
従来技術としての電界結合方式の非接触給電回路は、外部に放射される電磁界の量や実用性の見地から、6.78MHzという高い周波数で動作させる必要がある。
しかしながら、回路のインダクタンスとして使用される磁性体の透磁率(μ’)は、磁性を発現させる周波数の限界(いわゆるスネークの限界)があるために小さい値しか得ることができず、損失(μ’’)が上がってしまうという問題がある。これは、コア中に磁束を閉じ込めることの限界とコアの発熱とを意味する。また、コイル電線自体が、表皮効果や近接効果により発熱するという問題もある。
このような状況の下では、大電力インバータを開発しようとしても、コイルLが発熱してしまう。また、コイルLとコンデンサCを用いて共振周波数に合わせたとしても、発熱によりインピーダンスが変化するため、共振がずれてしまう。
【0012】
図1の回路図には、3つの共振回路が設けられている。
第1の共振回路は、発振回路の一部を構成する回路であり、コイルL1とコンデンサC1とで共振している。第1の共振回路は、インバータのFET(電界効果トランジスタ)フルブリッジ回路で作られた方形波を共振によって正弦波にする。また、第1の共振回路は、フルブリッジ回路のFETに印加される電圧と流れる電流との関係を制御することで低損失化を図っている。この制御は、例えば電圧がゼロの状態で行なわれるZVS(ゼロボルトスイッチング)、又は電流がゼロの状態で行なうZCS(ゼロカレントスイッチング)により実現される。
【0013】
第2の共振回路は、接合容量・並列共振回路の一部を構成する回路であり、トランスT2の二次側インダクタンスとコンデンサC2とで共振している。接合容量を流れる電流を大きくするためには、電圧を高くする必要があるが、トランスT2は、電圧を高くするための昇圧を行う。これにより、第2の共振回路の電圧のQ倍(Qは1を超える整数値)昇圧させることができる。
【0014】
第3の共振回路は、接合容量・並列共振回路の一部を構成する回路であり、トランスT3の一次側インダクタンスとコンデンサC3とで共振している。第3の共振回路は、接合容量C及びCの後に並列共振回路として存在するため、共振時にはインピーダンスが高くなる。このため、接合容量C及びCの合成インピーダンスよりも第3の共振回路のインピーダンスの方が高ければ、効率的な電力送電が可能になる。さらに、昇圧された電圧をトランスT3で降圧する役割も果たす。
【0015】
接合容量C及びCが大きくなると、第2の共振回路及び第3の共振回路はトランスT及びTと共に不要になる。共振回路を有する製品は、出荷にあたり共振回路の調整が必要になる。さらに、出荷後に同調がずれると性能低下の原因になる。このため、共振回路を有する製品において、共振回路は、その存在そのものがコスト要因となる。
【0016】
このように、従来の電界結合方式の非接触給電回路には各種の問題がある。これに対して、本発明の一実施形態に係る電力供給システムによれば、上述の問題を解決することができる。
即ち、本発明の一実施形態に係る電力供給システムは、電極結合方式の電力供給システムであり、受電側となる移動体の停止時における短時間での大電力給電を実現させるシステムである。
【0017】
本発明の一実施形態に係る電力供給システムによれば、受電側となる移動体の停止時に、送電側の電極(以下、「送電電極」と呼ぶ)と、受電側の電極(以下、「受電電極」と呼ぶ)とを密着させる。これにより、送電電極と受電電極との結合による大きな接合容量を形成させることができるので、短時間で大電力の給電が可能となる。
その結果、移動体が搬送路を移動中に給電する必要がなくなるので、給電時に搬送路から電磁界が放射されることがなくなる。なお、給電場所からは電磁界が放射されるが、給電場所にのみシールドを設けるだけで、効率よく電磁界の放射量を低減させることができる。
【0018】
また、給電している間だけ送電電極と受電電極とを密着させればよいので、送電電極と受電電極とのうち少なくとも一方が可動するようにすることで、給電時のみ送電電極と受電電極とを密着させることができる。具体的には例えば、受電側としての移動体が給電場所に到着すると受電電極が降下して送電電極に密着し、給電完了後移動開始前に受電電極が上昇して送電電極から離隔するようにしてもよい。これにより、送電電極と受電電極との間で摩擦が生じることを回避することができるので、電極の損耗を防ぐことができる。
このように、電界結合方式の非接触給電ではなく、電極結合方式の接触給電とすることにより、インバータ回路や送電回路を簡素化させることもできる。以下、送電電極と受電電極とが密着することでつくられる大きな接合容量と、インバータ回路とについて説明する。
【0019】
図2は、送電電極と受電電極とがいずれも剛体金属である場合と、弾性体を裏打ちにした薄板金属を用いた場合とにおける接触給電の例を示す図である。
【0020】
図2の(A)には、送電電極11に対して、何ら加工を施していない受電電極12を押し付けた様子が示されている。この場合、送電電極11と受電電極12とが接する面の見かけの面積は大きくなるが、実際に接触が生じている点の合計面積(以下、「接触面積」と呼ぶ)は小さい。このため、送電電極11と受電電極12との接触時の抵抗を示す値(以下、「接触抵抗値」と呼ぶ)は低減化されない。
【0021】
図2の(B)には、接触面に加工が施された受電電極12を送電電極11に乗せた様子が示されている。具体的には、受電電極12の接触面には、ゴム121が貼付されている。そのゴム121の表面には、弾性接着層122を介して薄板電極123が貼付されている。薄板電極123の端部には、バネ状導体124が接続されている。バネ状導体124の端部はゴム121を貫通して受電電極12に接合されている。ただし、図2の(B)に示すように、単に送電電極11の上に受電電極12を乗せただけでは接触面積は大きくならない。
【0022】
図2の(C)には、図2の(B)の受電電極12が送電電極11に押し付けられたときの様子が示されている。図2の(C)に示すように、押圧力Pが加わると、ゴム121及び薄板電極123が変形して、対向する接触面を有する送電電極11の表面の凹凸形状に馴染んでくる。これにより、接触面積を大きくすることができる。その結果、接触抵抗値の低減化を実現させることができる。
【0023】
図3は、図2の内容を実証するために行われた3種類のケースについての実験結果を示す図である。
【0024】
実験の対象となった3種類のケース(実施ケースA乃至C)のうち、実施ケースAでは、剛体電極の板の上に、立方体形状の剛体電極を直置きして、所定の押圧力Pを加えた。具体的には、2mm厚のSUS(ステンレス鋼)板の上に、1cm立法の銅電極を置き、1.43kgの荷重をかけた。その結果、実施ケースAの接触抵抗値は200~600mΩとなった。
【0025】
実施ケースBでは、剛体電極の板の上に、薄板電極とゴムとを介して立方体形状の剛体電極を置き、所定の押圧力Pを加えた。具体的には、2mm厚のSUS(ステンレス鋼)板の上に、0.3mm厚の銅板と2.5mm厚(1cm平方)のゴムとを介して1cm立法の銅電極を置き、1.43kgの荷重をかけた。その結果、実施ケースBの接触抵抗値は約180mΩとなった。
【0026】
実施ケースCでは、実施ケースBと基本的に同一の実験であるが、銅板の厚さを薄く(0.1mm)した。その結果、実施ケースCの接触抵抗値は10mΩ前後となった。つまり、実施ケースBの触抵抵抗値よりも実施ケースCの接触抵抗値の方が低くなった。
【0027】
このように、図3の実験により図2の結果が実証された。なお、実施ケースB及びCでは1cm平方のゴムを使用した。このため、例えば縦10個、横10個の電極配列にすると、接触抵抗値は0.1mΩになる。つまり、100Aの電流を流したとても、電極部で消費される電力は1Wで済むことになる。
【0028】
図4は、図3の実験結果に基づいて設計された電極構造の具体例を示す図である。
【0029】
図3の実験結果から、実施ケースBや実施ケースCのような加工を受電電極に施すことで、電極間の密着精度を向上させることができることがわかった。そこで、この原理を電極結合方式の接触給電に適用することで接合容量を大きくすることができる。
【0030】
図4の(A)及び(B)には、図3の3種類の実施ケースのうち、実施ケースCをベースとした電極構造が示されている。以下、このような電極構造を、「ゴム裏打ち薄板電極が配列された電極構造」と呼ぶ。
図4の(A)に示すように、剛体金属である受電電極12は、ゴム121と、弾性接着層122と、薄板電極123と、絶縁膜125とを介して、図示せぬ送電電極11に密着する電極構造となっている。なお、図4の例では、図2の例のように薄板電極123とバネ状導体124とを異なる2つの部材とせずに一体成型された1つの部材(薄板電極123)としている。
【0031】
薄板電極123は、ゴム121と弾性接着層122とによって受電電極12に固定されており、ゴム121と弾性接着層122とを介して押圧力Pが伝達される。薄板電極123は、伸縮稼動し、抵抗を少なくすべく辺全体に広げた側面を介して受電電極12に固定されることで電極全体の接触抵抗を低減化している。薄板電極123は、薄くて面方向の抵抗が高いため、長さは10mm程度とする。
【0032】
絶縁膜125は、薄板電極123の表面(送電電極11に対向する面)に強固にコーティングされた、薄くて強度のある絶縁性の膜である。なお、図4では、絶縁膜125は表面のみに配置されているが、受電電極12との電気的接点が確保されれば、表面以外にコーティングされていてもよい。
【0033】
絶縁膜125を構成する絶縁材料としては、例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜が挙げられる。DLC膜は、例えばエンジンのピストンとシリンダーとの双方の表面にコーティングされても剥離しない強度を有する。このため、本実施形態のように静かに接触と離脱とを繰り返す程度の用途では問題なく採用することができる。
【0034】
また、薄板電極123を構成する材料としては、例えば界面処理を施すことでDLC膜(絶縁膜125)の付着強度を高めたリン青銅が挙げられる。この場合、薄板電極123が変形したとしても、DLC膜(絶縁膜125)が強固に付着した状態を保持することができる。なお、薄板電極123が変形すると、これに追随するようにDLC膜(絶縁膜125)も変形する。DLC膜(絶縁膜125)自身の比誘電率は約5、絶縁破壊電圧は5MV/cm程度、成膜されたときの厚さは2μm程度である。このため、大きな結合容量を得るためには最適な材料として採用し得る。
【0035】
図5は、図4の電極構造が比較的大きなうねりに対応可能であることを示す図である。
【0036】
「ゴム裏打ち薄板電極が配列された電極構造」は、例えば図2に示すように、対向する電極(即ち送電電極11及び受電電極12)の表面に微細な凹凸が形成されている場合であっても問題なく馴染む。また例えば、図5に示すように、対向する電極の表面に比較的大きなうねりが形成されている場合であっても問題なく馴染み、大きな接合容量を維持することができる。また、図示はしないが、対向する電極の表面にゴミ等が存在する場合であっても、押圧力Pを得ることでゴミ等を含む凹凸に馴染ませることができる。さらに、対向する電極の表面が酸化した場合であっても、接合容量が若干小さくなるが、依然として大きな接合容量を得ることができる。
なお、図5の例では、薄板電極123の端部が受電電極12にハンダHにより固定されている。
【0037】
なお、送電電極11に受電電極12を押し付ける際に必要となる押圧力Pをどのようにして得るのかについては特に限定されない。例えば次の手法により押圧力Pを得ることができる。
即ち、(1)受電電極12そのものの重さを利用する手法、(2)機械的な力(例えば空気や油を用いて加圧する等)を利用する手法、(3)磁力(例えば受電電極12を強磁性体にする等)を利用する手法、(4)吸引力(例えば電極間の空間に存在する空気を吸引する等)を利用する手法などが挙げられる。
【0038】
次に、図6乃至図12を参照して、インバータ回路について説明する。
図6は、フライバックトランス用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
【0039】
図6の(A)には、フライバックトランスとFET(電界効果トランジスタ)とを用いて方形波を発振させて、接合容量C及びCを介して整流と平滑とを行わせる回路が示されている。この回路は、大きな接合容量により、図6の(B)に示すように接合容量Cと接合容量Cとの夫々を分離させて任意に移動させることができる。
【0040】
送電電極11aと受電電極12aとが接合容量Cを介して組み合わされ、送電電極11bと受電電極12bとが接合容量Cを介して組み合わされている状態(例えば図6の(A)に示す状態)では、接合容量C及びCの夫々の密着度が高く大きくなっているため外部放射が無い。なお、図示はしないが、外部放射を完全に無くすためにはシールドを設けたり、オーバーハング構造を採用したりすることもできる。
図6に示すようなフライバックトランス用いた電界結合方式の非接触給電回路とすることで、任意の周波数及び波形でスイッチングを行うことが可能となる。
【0041】
図7は、フォワードインバータを用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
【0042】
図7の(A)には、フォワードインバータを用いて方形波を発振させて、接合容量C及びCを介して整流と平滑とを行わせる回路が示されている。この回路も、大きな接合容量により、図7の(B)に示すように接合容量Cと接合容量Cとの夫々を分離させて任意に移動させることができる。
【0043】
送電電極11aと受電電極12aとが接合容量Cを介して組み合わされ、送電電極11bと受電電極12bとが接合容量Cを介して組み合わされている状態(例えば図7の(A)に示す状態)では、接合容量C及びCの夫々の密着度が高く大きくなっているため外部放射が無い。なお、図示はしないが、外部放射を完全に無くすためにはシールドを設けたり、オーバーハング構造を採用したりすることもできる。
図7に示すようなフォワードインバータを用いた電界結合方式の非接触給電回路とすることで、任意の周波数及び波形でスイッチングを行うことが可能となる。
【0044】
図8は、フルブリッジ回路を用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
【0045】
図8の(A)には、FET(電界効果トランジスタ)のフルブリッジ回路によって疑似的に方形波を発振させて、接合容量C及びCを介して整流と平滑とを行わせる回路が示されている。この回路も、大きな接合容量により、図8の(B)に示すように接合容量Cと接合容量Cとの夫々を分離させて任意に移動させることができる。
【0046】
送電電極11aと受電電極12aとが接合容量Cを介して組み合わされ、送電電極11bと受電電極12bとが接合容量Cを介して組み合わされている状態(例えば図8の(A)に示す状態)では、接合容量C及びCの夫々の密着度が高く大きくなっているため、外部放射が無い。なお、図示はしないが、外部放射を完全に無くすためにはシールドを設けたり、オーバーハング構造を採用したりすることもできる。
【0047】
図8に示すようなフルブリッジ回路を用いた電界結合方式の非接触給電回路とすることで、任意の周波数及び波形でスイッチングを行うことが可能となる。
図8に示す回路には、ブリッジ整流回路が使用されているが、受電電極12aを送電電極11aに接続し、受電電極12bを送電電極11bに接続してもよいし、受電電極12aを送電電極11bに接続し、受電電極12bを送電電極11aに接続してもよい。また、図6のフライバックインバータ方式、図7のフォワードインバータ方式のいずれにおいても利用可能である。
なお、図示はしないが、三相送電を用いる場合には三段のフルブリッジを用いることで3組の接合容量C乃至Cを用いるものとする。それ以上の多相においても同様に増設することができる。この場合、受電電極12側は、相数に合わせてダイオードDの段数を増設する。
【0048】
図9は、フルブリッジ回路と共振回路とを用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
【0049】
図9の(A)には、FET(電界効果トランジスタ)のフルブリッジ回路と共振回路とによって正弦波を発振させて、接合容量C及びCを介して整流と平滑とを行わせる回路が示されている。この回路も、大きな接合容量により、図9の(B)に示すように接合容量Cと接合容量Cとの夫々を分離させて任意に移動させることができる。また、共振回路が設けられていることにより、FET(電界効果トランジスタ)のZVS(ゼロボルトスイッチング)又はZCS(ゼロカレントスイッチング)が可能となる。これにより、伝送効率を上げることができるとともに、FET(電界効果トランジスタ)の発熱を低減化させることができる。
【0050】
送電電極11aと受電電極12aとが接合容量Cを介して組み合わされ、送電電極11bと受電電極12bとが接合容量Cを介して組み合わされている状態(例えば図9の(A)に示す状態)では、接合容量C及びCの夫々の密着度が高く大きくなっているため、外部放射が無い。なお、外部放射を完全に無くすためにはシールドを設けたり、オーバーハング構造を採用したりすることもできる。また、送電側及び受電側からの放射も低減しなければならない。
【0051】
図9に示すようなフルブリッジ回路と共振回路とを用いた電界結合方式の非接触給電回路とすることで、任意の周波数及び波形でスイッチングを行うことが可能となる。なお、共振回路は同調されるものの、大電力送電時には主にインダクタンスの発熱による離調が起きる。そこで、自動同調機能を有するゲートドライブ回路を用いる。これにより、ZVS(ゼロボルトスイッチング)又はZCS(ゼロカレントスイッチング)が維持されて効率の良い発振が可能になる。なお、離調により、周波数がずれたとしても、密着した電極が用いられているため、外部放射が無く問題は無い。
なお、図9に示す回路も、上述の図8に示す回路と同様に、受電電極12aを送電電極11aに接続し、受電電極12bを送電電極11bに接続してもよいし、受電電極12aを送電電極11bに接続し、受電電極12bを送電電極11aに接続してもよい。また、三相送電を用いる場合には三段のフルブリッジを用いることで3組の接合容量C乃至Cを用いるものとし、それ以上の多相においても同様に増設することができる。この場合、受電電極12側は、相数に合わせてダイオードDの段数を増設する。
【0052】
図10は、プッシュプル回路を用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
【0053】
図10の(A)には、FET(電界効果トランジスタ)のプッシュプル回路によって疑似的に方形波を発振させて、接合容量C及びCを介して整流と平滑とを行わせる回路が示されている。この回路も、大きな接合容量により、図10の(B)に示すように接合容量Cと接合容量Cとの夫々を分離させて任意に移動させることができる。
【0054】
送電電極11aと受電電極12aとが接合容量Cを介して組み合わされ、送電電極11bと受電電極12bとが接合容量Cを介して組み合わされている状態(例えば図10の(A)に示す状態)では、接合容量C及びCの夫々の密着度が高く大きくなっているため、外部放射が無い。なお、図示はしないが、外部放射を完全に無くすためにはシールドを設けたり、オーバーハング構造を採用したりすることもできる。
図10に示すようなプッシュプル回路を用いた電界結合方式の非接触給電回路とすることで、任意の周波数及び波形でスイッチングを行うことが可能となる。
図10に示す回路には、ブリッジ整流回路が使用されているが、受電電極12aを送電電極11aに接続し、受電電極12bを送電電極11bに接続してもよいし、受電電極12aを送電電極11bに接続し、受電電極12bを送電電極11aに接続してもよい。
【0055】
図11は、ハーフブリッジ回路を用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
【0056】
図11の(A)には、FET(電界効果トランジスタ)のハーフブリッジ回路によって疑似的に方形波を発振させて、接合容量C及びCを介して整流と平滑とを行わせる回路が示されている。この回路も、大きな接合容量により、図11の(B)に示すように接合容量Cと接合容量Cとの夫々を分離させて任意に移動させることができる。
【0057】
送電電極11aと受電電極12aとが接合容量Cを介して組み合わされ、送電電極11bと受電電極12bとが接合容量Cを介して組み合わされている状態(例えば図10の(A)に示す状態)では、接合容量C及びCの夫々の密着度が高く大きくなっているため、外部放射が無い。なお、図示はしないが、外部放射を完全に無くすためにはシールドを設けたり、オーバーハング構造を採用したりすることもできる。
図11に示すようなFET(電界効果トランジスタ)のハーフブリッジ回路を用いた電界結合方式の非接触給電回路とすることで、任意の周波数及び波形でスイッチングを行うことが可能となる。
図11に示す回路には、ブリッジ整流回路が使用されているが、受電電極12aを送電電極11aに接続し、受電電極12bを送電電極11bに接続してもよいし、受電電極12aを送電電極11bに接続し、受電電極12bを送電電極11aに接続してもよい。また、図6のフライバックインバータ方式、図7のフォワードインバータ方式のいずれにおいても利用可能である。
【0058】
図12は、ハーフブリッジ回路と共振回路とを用いた電界結合方式の非接触給電回路の具体例を示す図である。
【0059】
図12の(A)には、FET(電界効果トランジスタ)のハーフブリッジ回路と共振回路とによって正弦波を発振させて、接合容量C及びCを介して整流と平滑とを行わせる回路が示されている。この回路も、大きな接合容量により、図12の(B)に示すように接合容量Cと接合容量Cとの夫々を分離させて任意に移動させることができる。また、共振回路が設けられていることにより、FET(電界効果トランジスタ)のZVS(ゼロボルトスイッチング)又はZCS(ゼロカレントスイッチング)が可能となる。これにより、伝送効率を上げることができるとともに、FET(電界効果トランジスタ)の発熱を低減化させることができる。
【0060】
送電電極11aと受電電極12aとが接合容量C及を介して組み合わされ、送電電極11bと受電電極12bとが接合容量Cを介して組み合わされている状態(例えば図12の(A)に示す状態)では、接合容量C及びCの夫々の密着度が高く大きくなっているため、外部放射が無い。なお、図示はしないが、外部放射を完全に無くすためにはシールドを設けたり、オーバーハング構造を採用したりすることもできる。
図12に示すようなハーフブリッジ回路と共振回路とを用いた電界結合方式の非接触給電回路とすることで、任意の周波数及び波形でスイッチングを行うことが可能となる。なお、共振回路は同調されるものの、大電力送電時には主にインダクタンスの発熱による離調が起きる。そこで、自動同調機能を有するゲートドライブ回路を用いる。これにより、ZVS(ゼロボルトスイッチング)又はZCS(ゼロカレントスイッチング)が維持されて効率の良い発振が可能になる。なお、離調により、周波数がずれたとしても、密着した電極が用いられているため、外部放射が無く問題は無い。
【0061】
次に、図13を参照して、電界結合方式の非接触給電回路における通信制御について説明する。
図13は、電界結合方式の非接触給電回路における通信制御のイメージを示す図である。
【0062】
図13には、図6乃至図12を参照して説明した分離可能な電力伝送系に付随する通信制御のイメージが示されている。
【0063】
図13に示すように、発振回路及び整流・平滑回路の外部には、制御回路が夫々設けられており、双方向の通信が実現されている。具体的には、送信側においては、送電側制御回路111が、発振回路の発振及び停止の制御を行い、受信側においては、受電側制御回路126が、受電状態のモニタリング(出力モニタリング)、及び負荷側の各種状況のモニタリング等を行う。
具体的には例えば、電池を充電しているときには、満充電になったことを知らせるとともに、送信側の発振を停止させる。
なお、発振回路と整流・平滑回路との間における通信手法として、どのようなものを採用するかは特に限定されず、例えば次のような通信手法を採用することができる。
【0064】
即ち、(1)送電電極11に高周波信号を重畳させる通信手法を採用することができる。ここで「高周波」とは、送電周波数よりも十分に高い周波数のことをいう。この場合、仮に送電にMHzが用いられているのであれば、通信にはGHzを用いる。(2)送電周波数を用いた通信手法を採用することができる。この場合、波形を変調させて送信側から受信側に伝達する。そして、受信側から送信側へは、負荷を変動させて電流値の変化を送信側に知らせる。(3)光通信を採用することができる。この場合、例えばLED(発光ダイオード)等を用いることができる。(4)磁気通信を採用することができる。この場合、送信側と受信側との双方にコイル(図示せず)を配置することで磁気的な通信を行う。(5)音響通信を採用することができる。この場合、対向する電極を介して超音波を伝達させることで通信を行う。また、接合容量C側と接合容量C側とを通信方向に応じて使い分ける。これにより、1つの電極であっても、周波数分割、時分割を用いて通信方向を切り替えることができる。
【0065】
以上をまとめると、本実施形態によれば、以下の効果が期待できる。
即ち、電界結合方式の非接触給電において、絶縁膜125を挟んで対向する送電電極11と受電電極12とを近接させることにより、大きな接合容量を得ることができるとともに、送電電極11と受電電極12とに簡易なシールドを設けたり、オーバーハング構造にしたりすることで、電磁波放射を低減化させることができる。
【0066】
このような条件の下では、以下に挙げる2つの手法を採用し得る。
1つ目の手法は、共振回路を使用しない方法である。この手法の場合、正弦波を送る必要が無く、また、電圧を昇圧すること無く送電が可能になる。これにより、共振回路を用いることなく送電が可能になる。また、チューニングの手間など時間的なコスト等を大幅に削減することができる。さらに、コイルLにおける損失に伴う同調のずれが生じる心配がなくなる。その結果、大電力給電が可能になる。また、共振回路を用いないことから、回路規模を小さくすることが可能になる。その結果、製作に要するコストを削減することが可能になる。
2つ目の手法は、自動同調機能を用いてスイッチングトランジスタのゲートをドライブさせる手法である。即ち、フルブリッジ型回路、ハーフブリッジ回路部に、大電力送電時において、主にインダクタンスの発熱に伴う共振回路の離調があっても、自動同調機能を用いてスイッチングトランジスタのゲートをドライブさせる。これにより、ZVS(ゼロボルトスイッチング)又はZCS(ゼロカレントスイッチング)を機能させて発振効率の向上を維持させることができる。
即ち、本実施形態によれば、近年発展が著しい急速充電電池又はリチウムイオンキャパシタが搭載された機器に対して容易に電界結合で送電可能な給電システムを構築することが可能になる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0068】
以上まとめると、本発明が適用される電力供給システムは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される電力供給システムは、
電源からの電力を送電する送電電極(例えば上述の送電電極11)を有する送電側と、前記送電電極から送電された電力を、接合容量(例えば上述の接合容量C及びC)を介して受電する受電電極(例えば上述の受電電極12)を有する受電側とを含む電力供給システムにおいて、
前記受電側は、
前記受電電極のうち前記送電電極に対向する面に、絶縁性の弾性体(例えば図2のゴム121及び弾性接着層122)からなる第1の層と、屈曲性を有する薄板形状の導電体(例えば図2の薄板電極123)からなる第2の層と、当該第2の層の端部と前記受電電極とを接続する導電性の弾性体(例えば図2のバネ状導体124)とを有し、
前記第2の層のうち前記送電電極に対向する面に絶縁性の膜が配置されており、
前記第2の層が前記送電電極に接触又は近接すると、当該送電電極からの電力が、前記第2の層と前記導電性の弾性体とを介して前記受電電極により受電する。
【0069】
また、前記第2の層は、前記第1の層の表面に複数配置され、
前記受電側が前記送電側に押圧されると、前記送電電極の表面の形状に合わせて、複数の前記第2の層の夫々が形状を変化させながら前記送電電極の表面に接触するようにすることができる。
【0070】
また、前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し(例えば上述の接合容量C及びC)、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置されたFET(電界効果トランジスタ)と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
方形波を発振させるフライバックインバータとして動作し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段(例えば図13の送電側制御回路111)をさらに含むようにすることができる。
【0071】
また、前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し(例えば上述の接合容量C及びC)、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置されたFET(電界効果トランジスタ)と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
方形波を発振させるフォワードインバータとして動作し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段(例えば図13の送電側制御回路111)をさらに含むようにすることができる。
【0072】
また、前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し(例えば上述の接合容量C及びC)、
前記送電側は、
疑似的な方形波を発振させる、4つのFET(電界効果トランジスタ)を含むフルブリッジ回路を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段(例えば図13の送電側制御回路111)をさらに含むようにすることができる。
【0073】
また、前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し(例えば上述の接合容量C及びC)、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置された、方形波を発振させる、4つのFET(電界効果トランジスタ)を有するフルブリッジ回路、及び共振回路と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段(例えば図13の送電側制御回路111)をさらに含むようにすることができる。
【0074】
また、前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し(例えば上述の接合容量C及びC)、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置された、疑似的な方形波を発振させる、2つのFET(電界効果トランジスタ)を有するプッシュプル回路と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段(例えば図13の送電側制御回路111)をさらに含むようにすることができる。
【0075】
また、前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し(例えば上述の接合容量C及びC)、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置された、疑似的な方形波を発振させる、2つのFET(電界効果トランジスタ)と2つのコンデンサとを有するハーフブリッジ回路と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段(例えば図13の送電側制御回路111)をさらに含むようにすることができる。
【0076】
また、前記接合容量を形成させる前記送電電極と前記受電電極との組み合わせを2組有し(例えば上述の接合容量C及びC)、
前記送電側は、
トランスと、
前記トランスの一次側に配置された、方形波を発振させる、2つのFET(電界効果トランジスタ)、及び共振回路と、
前記トランスの二次側に配置された2つの前記送電電極と、
を有し、
前記受電側は、
整流回路と、
平滑回路と、
を有し、
前記送電側の動作の制御を行う制御手段(例えば図13の送電側制御回路111)をさらに含むようにすることができる。
【符号の説明】
【0077】
11・・・送電電極、12・・・受電電極、111・・・送電側制御回路、121・・・ゴム、122・・・弾性接着層、123・・・薄板電極、124・・・バネ状導体、125・・・絶縁膜、126・・・受電側制御回路、L・・・コイル、C・・・コンデンサ、V・・・直流電源、T・・・トランス、C,C・・・接合容量、D・・・ダイオード、Q・・・FET(電界効果トランジスタ)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13