(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006921
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】リードフレーム及びその製造方法、並びにリードフレームパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
H01L23/50 K
H01L23/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109504
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】石橋 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平山 慎司
【テーマコード(参考)】
5F067
【Fターム(参考)】
5F067AA01
5F067AA09
5F067BA02
5F067BA08
5F067BC13
5F067DA16
(57)【要約】
【課題】微細な金属片の発生を抑制することが可能なリードフレーム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】リードフレーム100は、エッチングによって形成された厚さ方向に沿って貫通する貫通部を有する。長手方向に延びる一対の側面12は、厚さ方向に沿って隣り合う剪断面と破断面とを備える。リードフレーム100の製造方法は、エッチングによって厚さ方向に沿って貫通する貫通部が形成された帯状のリードフレーム基材の側部を金型で切断する切断工程を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングによって形成された厚さ方向に沿って貫通する貫通部を有するリードフレームであって、
長手方向に延びる一対の側面は、前記厚さ方向に沿って隣り合う剪断面と破断面とを備える、リードフレーム。
【請求項2】
長手方向に延びる前記一対の側面は、一方の主面から他方の主面に至る窪み部を有する、請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記厚さ方向に沿う、前記破断面の長さに対する前記剪断面の長さの比が1以上である、請求項1又は2に記載のリードフレーム。
【請求項4】
長手方向に延びる前記一対の側面における前記剪断面と前記破断面は、前記厚さ方向に沿って同じ順序で並んでいる、請求項1~3のいずれか一項に記載のリードフレーム。
【請求項5】
前記貫通部はパイロット穴を含み、
前記パイロット穴の内壁面は、厚さ方向に沿って隣り合う剪断面と破断面とを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のリードフレーム。
【請求項6】
エッチングによって厚さ方向に沿って貫通する貫通部が形成された帯状のリードフレーム基材の側部を、前記厚さ方向に沿って金型で切断する切断工程を有する、リードフレームの製造方法。
【請求項7】
前記貫通部とともに前記リードフレーム基材の側部の少なくとも一部をエッチングで除去するエッチング工程を有し、
前記切断工程では、エッチングによって露出した前記リードフレーム基材の前記側部を前記金型で切断する、請求項6に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項8】
前記リードフレーム基材の前記側部を前記金型で切断して得られる切断面は、厚さ方向に沿って隣り合う剪断面と破断面とを備える、請求項6又は7に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項9】
前記切断工程では、突出部を有する前記金型で切断して、切断面に一方の主面から他方の主面に至る窪み部を形成する、請求項6~8のいずれか一項に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項10】
前記貫通部はパイロット穴を含み、
前記切断工程では、前記金型で切断される前記リードフレーム基材の前記側部における前記パイロット穴で当該リードフレーム基材を位置決めして切断する、請求項6~9のいずれか一項に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載のリードフレーム、又は、請求項6~10のいずれか一項に記載の製造方法で得られるリードフレームに半導体素子を設置する工程と、
前記半導体素子を樹脂封止して樹脂封止体を作製する工程と、
前記樹脂封止体を個片化する工程と、を有する、リードフレームパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リードフレーム及びその製造方法、並びにリードフレームパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレーム基材は、レジスト膜を設けたうえでエッチングをすることによって、所定のパターンに加工される。リードフレーム基材をエッチング液に浸漬すると、側部の中心部が窪む現象が知られている。このような窪みが生じると、窪みを形成する突起が、搬送中及び後工程の際に破断して、金属片が発生し易くなる。このような金属片がリードフレーム、及び、このリードフレームを用いて形成されるリードフレームパッケージに付着すると、短絡発生の要因となり得る。このような事象を防止するため、特許文献1では、対向配置されたローラを用いて、エッチング処理後のリードフレーム基材の幅方向端部を押し潰す技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リードフレームパッケージは、微細化及び高性能化が進んでおり、これに伴って、リードフレームも一層高い信頼性を有することが求められる。このため、従来では問題とならなかったような微細な金属片の発生も抑制することが求められている。
【0005】
そこで、本開示は、微細な金属片の発生を抑制することが可能なリードフレーム及びその製造方法を提供する。また、本開示は、微細な金属片の発生を抑制することが可能なリードフレームを用いることによって信頼性に優れるリードフレームパッケージを製造することが可能な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、エッチングによって形成された厚さ方向に沿って貫通する孔部を有するリードフレームであって、長手方向に延びる一対の側面は、厚さ方向に沿って隣り合う剪断面と破断面とを備える、リードフレームを提供する。このリードフレームの長手方向に延びる一対の側面は剪断面と破断面とを備えるため、エッチングによって生じる突起が低減されている。このため、リードフレームを加工したり、リードフレームパッケージを製造したりする際に、突起が折れて微細な金属片が発生することを抑制することができる。
【0007】
上記リードフレームの長手方向に延びる一対の側面は、厚さ方向に沿って延びる窪み部を有していてよい。このような窪み部を有する側面は、同じ位置の切断の繰り返しを抑制することが可能となる。これによって、バリ及び切屑の発生、並びに、切断のし損ないに伴う変形等を抑制することができる。したがって、リードフレームの信頼性を一層高くすることができる。
【0008】
上記リードフレームの厚さ方向に沿う、破断面の長さに対する剪断面の長さの比が1以上であってよい。これによって、側面の寸法精度を十分に高くすることができる。
【0009】
長手方向に延びる一対の側面における剪断面と破断面は、厚さ方向に沿って同じ順序で並んでいてもよい。これによって、リードフレームを送りローラ等を用いて搬送する際に、リードフレームを円滑に搬送することができる。
【0010】
上記貫通部はパイロット穴を含んでいてもよい。パイロット穴の内壁面は、厚さ方向に沿って隣り合う剪断面と破断面とを有していてもよい。このようなパイロット穴は、エッチングで形成される場合に比べて、微細な金属片の発生の要因となる突起を低減することができる。このため、位置決めのためにパイロット穴にピンが挿入されたときに、内壁面が削り取られて微細な金属片が発生することを抑制できる。
【0011】
本開示は、エッチングによって厚さ方向に沿って貫通する貫通部が形成された帯状のリードフレーム基材の側部を、厚さ方向に沿って金型で切断する切断工程を有する、リードフレームの製造方法を提供する。
【0012】
リードフレーム基材のエッチングを行うと、側部に微細な金属片の要因となる突起が生じる。上記製造方法では、エッチングされたリードフレーム基材の側部を金型で切断していることから、側部における突起を除去することができる。したがって、このような製造方法で得られたリードフレームは、切断工程後の工程等において、突起が折れて微細な金属片が生じることを抑制できる。
【0013】
上記製造方法は、上記貫通部とともにリードフレーム基材の側部の少なくとも一部をエッチングで除去するエッチング工程を有し、切断工程では、エッチングによって露出したリードフレーム基材の側部を金型で切断してもよい。このような製造方法で得られたリードフレームは、切断工程後の工程等において、突起が折れて微細な金属片が生じることを抑制できる。
【0014】
リードフレーム基材の側部を金型で切断して得られる切断面は、厚さ方向に沿って隣り合う剪断面と破断面とを備えていてもよい。また、リードフレームの厚さ方向に沿う、破断面の長さに対する剪断面の長さの比が1以上であってよい。これによって、側面の寸法精度を十分に高くすることができる。
【0015】
上述の側部を切断する工程では、突出部を有する金型で切断して、切断面に一方の主面から他方の主面に至る窪み部を形成してもよい。これによって、複数回に分けて側部を金型で切断する場合に、二度切りによるバリ及び切屑の発生、及び、切断のし損ないに伴う変形等を抑制することができる。したがって、リードフレームの信頼性を一層高くすることができる。
【0016】
上記貫通部はパイロット穴を含み、上記切断工程では、金型で切断される上記リードフレーム基材の側部におけるパイロット穴で当該リードフレーム基材を位置決めして切断してもよい。このような側部であれば、リードフレームの構造の制約を受けることなく、パイロット穴の数及びサイズの高い自由度で設定することができる。これによって、リードフレーム基材の位置合わせ精度が向上し、加工精度を高めることができる。また、金型を有効利用して金型コスト及び設備コストを低減することができる。
【0017】
本開示は、上述のいずれかのリードフレーム又は上述のいずれかの製造方法で得られるリードフレームに半導体素子を設置する工程と、半導体素子を樹脂封止して樹脂封止体を作製する工程と、樹脂封止体を個片化する工程と、を有する、リードフレームパッケージの製造方法を提供する。
【0018】
上記製造方法は、上述のいずれかのリードフレームを用いることから、リードフレームパッケージを製造する際に微細な金属片が発生することを抑制できる。このため、例えば、微細な金属片が樹脂封止体の内部に混入することによって生じる短絡等の不具合の発生を低減することができる。したがって、信頼性に優れるリードフレームパッケージを製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、微細な金属片の発生を抑制することが可能なリードフレーム及びその製造方法を提供することができる。また、微細な金属片の発生を抑制することが可能なリードフレームを用いることによって信頼性に優れるリードフレームパッケージを製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態のリードフレームの斜視図である。
【
図2】一実施形態のリードフレームの一部の平面図である。
【
図3】一実施形態のリードフレームを厚さ方向に沿って切断して得られた切断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4】リードフレーム又はその加工品が収容される収容棚の一例を示す図である。
【
図5】一実施形態のリードフレームの製造方法における、エッチング工程後のリードフレーム基材の切断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図6】一実施形態のリードフレームの製造方法を説明するための図である。
【
図7】リードフレームの製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図8】リードフレームパッケージの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、場合により図面を参照して、幾つかの実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。なお、各部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
図1は、一実施形態に係るリードフレームの斜視図である。リードフレーム100は、直方体形状を有しており、矩形状の一対の主面10と、長手方向に延びる一対の側面12と、短手方向に延びる一対の側面14とを有する。主面10は、複数の単位フレームが形成された領域50を有する。本実施形態では領域50が3つに区画されているが、領域50の数は特に限定されず、1つであってもよいし、4つ以上であってもよい。長手方向に沿う側面12の長さは例えば200~400mmであってよい。また、短手方向に沿う側面14の長さは例えば40~150mmであってよい。リードフレーム100の厚さは0.05~1mmであってよい。
【0023】
リードフレーム100は、領域50の外側に貫通部に相当するパイロット穴20を有する。パイロット穴20は、リードフレーム100を製造する際、又は、リードフレーム100を加工する際の位置決めに用いられてよい。なお、パイロット穴20の数及び形状に特に限定はない。パイロット穴20は、リードフレーム100の厚さ方向に貫通している。別の幾つかの実施形態ではパイロット穴20はなくてもよい。
【0024】
図2は、リードフレーム100の一部の平面図である。領域50は、9個(3個×3個)の単位フレーム55を有する。各単位フレーム55は、一対の主面10が対向する方向、すなわち、リードフレーム100の厚さ方向に貫通する貫通部を有する。貫通部はエッチングによって形成される。なお、主面10における領域50の数、及び単位フレーム55の数は特に限定されない。隣り合う単位フレーム55は、タイバー56を介して互いに連結されている。
【0025】
単位フレーム55は、中央部に配置されるパッド51と、パッド51の周囲に配置され、インナーリードともいわれる複数の端子52と、パッド51を支持するサポートバー54とを備える。サポートバー54の先端はパッド51に連結され、サポートバー54の後端は端子52の周囲に配置されるタイバー56に連結されている。サポートバー54は、略矩形状のパッド51の四隅から放射状に延在してタイバー56に連結することによって、パッド51を支持している。単位フレーム55のうち、パッド51、端子52、サポートバー54及びタイバー56以外の部分は、エッチングによって形成された貫通部となっている。
【0026】
図3は、厚さ方向に沿って切断されたリードフレーム100の切断面の光学顕微鏡写真である。本開示における「厚さ方向」とは、リードフレームの主面に直交する方向をいう。
図3は、リードフレーム100の切断面のうち、リードフレーム100の側部付近の切断面を示している。
図3の写真に示されるように、リードフレーム100の側面12は、リードフレーム100の厚さ方向に沿って互いに隣り合う剪断面22と破断面24とを有する。互いに隣り合う剪断面22と破断面24は、リードフレーム基材を金型で切断することによって形成することができる。これによって、エッチングによってリードフレームの側部に生じる突起を十分に低減することができる。このため、リードフレームを加工したり、リードフレームパッケージを製造したりする際に、突起が折れて微細な金属片が生じることを抑制することができる。
【0027】
リードフレーム100の側面14も、側面12と同様に厚さ方向に沿って互いに隣り合う剪断面22と破断面24とを有してよい。すなわち、リードフレームの四方の側面の全てが厚さ方向に沿って互いに隣り合う剪断面22と破断面24とを有してよい。これによって、エッチングによってリードフレームの側部に生じる突起をより一層低減することができる。
【0028】
リードフレーム100の長手方向に延びる一対の側面12では、厚さ方向に沿って、剪断面22と破断面24が同じ順序で並んでいてもよい。これによって、リードフレーム100を送りローラ等を用いて搬送する際に、リードフレーム100を円滑に搬送することができる。同様の観点から、四方の側面における剪断面22と破断面24は厚さ方向に沿って同じ順序で並んでいてもよい。この場合、それぞれの主面10の四隅における形状が揃いやすくなり、形状の均一性を向上することもできる。
【0029】
図4は、リードフレーム100を用いてリードフレームパッケージを作製する際に、リードフレーム100又はその加工品が収容される収容棚の一例を示している。収容棚30は、ダイボンディング及びワイヤボンディング等の各工程の前後において、複数のリードフレーム100を収容する。収容棚30の内側壁には、リードフレーム100を支持する突起状の支持部32が設けられている。これによって、収容棚30は、複数のリードフレーム100が互いに接触することなく、上下方向に並べて収容することができる。
【0030】
リードフレームパッケージを製造する各工程において、リードフレーム100は収容棚30に収容される。収容棚30からA1方向に沿ってリードフレーム100を取り出す際、又は、A1方向とは逆方向に沿ってリードフレーム100を収容棚30に収容する際に、リードフレーム100の側面12と収容棚30の内側壁とが互いに擦り合うようにして接触する。このため、リードフレーム100の側面12に突起又はバリがあると、内側壁との接触によって微細な金属片が発生する。このような金属片が発生すると、下方のリードフレーム上に落下し、これがパッケージ化された後に短絡発生の要因となる。本実施形態のリードフレーム100では、このような金属片の発生を十分に抑制することができる。
【0031】
リードフレーム100における四方の側面の全体が、剪断面22と破断面24によって構成されていてもよく、一部に剪断面及び破断面とは異なる面を含んでいてもよい。そのような面としては、例えば、エッチングによって形成されるスリット(凹部)を構成する面が挙げられる。このようなスリットは、一方の主面から他方の主面に至るように形成されていてもよい。例えば、打ち抜き加工を行う前にスリットが形成されていれば、切断する部分を小さくすることができる。このため、小さなプレス機でも切断することが可能となるうえに、パンチの寿命も長くすることができる。スリットを構成する側面はエッチングによって形成される。このような側面は、通常、収容棚30及び組立装置等に接触しない。このため、この側面は、剪断面22及び破断面24の両方を有していなくてよい。
【0032】
図1,
図2に示すパイロット穴20は、側面12,14と同様に厚さ方向に沿って互いに隣り合う剪断面22と破断面24とを有していてもよい。このようなパイロット穴20は、金型による打ち抜き加工で形成することができる。このため、位置決めのためピンが挿入されたときに、内壁面が削り取られて微細な金属片が発生することを抑制できる。このようなパイロット穴20は、エッチングで形成される場合に比べて、内壁面に突起が形成されることを抑制できる。このため、位置決めのためパイロット穴20にピンが挿入されたときに、内壁面が削り取られて微細な金属片が発生することを抑制できる。
【0033】
リードフレーム100の厚さ方向に沿う、破断面24の長さに対する剪断面22の長さの比は1以上であってよく、2以上であってよく、3以上であってもよい。これによって、リードフレーム100の側面12,14における寸法精度を十分に高くすることができる。一方、金型による打ち抜きの不具合の発生を十分に抑制する観点から、破断面24の長さに対する剪断面22の長さの比は4以下であってよい。破断面24の長さに対する剪断面22の長さの比は、例えば、金型で切断する際のダイとパンチのクリアランスを変えることで調整することができる。
【0034】
リードフレーム100の剪断面22側の主面10の端部10A(
図3)は、他方の主面10側に向かうように曲がっていてもよい。これによって、リードフレーム100が後述する収容棚30に収容される際に、端部10Aが収容棚の内部に接触することを抑制することができる。これによって、微細な金属片が発生することを一層抑制することができる。リードフレームパッケージを作製する際、半導体素子は破断面24側の主面10に設置されてもよい。これによって、リードフレームパッケージを製造する一連の工程において端部10Aが下方側となり、送りローラ等で構成される搬送路上を滑らかに搬送することができる。
【0035】
リードフレーム100の破断面24側の主面10の周縁10Bは、剪断面22と破断面24の境界部26よりも凹んでいる。これによって、リードフレーム100が後述する収容棚30に収容される際に、周縁10Bが収容棚の内部に接触することを抑制することができる。これによって、微細な金属片が発生することを一層抑制することができる。
【0036】
リードフレーム100は、主面10にめっき膜を有していてもよい。めっき膜の厚みは、例えば0.2~3μmであってよい。めっき膜は、例えば、ニッケル、銅、パラジウム、銀、及び金からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属、又は当該金属の合金で構成される一つ又は複数の金属層で構成される。具体的には、銅めっき層のみの電解めっき膜、及び、ニッケル層、パラジウム層及び金層を含む積層構造を有する電解めっき膜が挙げられる。
【0037】
リードフレームの製造方法の一実施形態を説明する。本実施形態のリードフレームの製造方法は、帯状のリードフレーム基材をエッチングして、厚さ方向に沿って貫通する貫通部を形成するエッチング工程と、エッチングによって露出したリードフレーム基材の側部を金型で切断する切断工程と、を有する。
【0038】
エッチング工程では、レジストが塗布された銅製のリードフレーム基材をエッチング液に浸漬し、リードフレーム基材の所定の位置に貫通部を形成する。貫通部は所定形状の貫通穴である。このような貫通部を形成することによって、所定形状のパッド、端子、サポートバー及びタイバー等が形成される。このとき、リードフレーム基材の側面は通常レジスト膜で覆われていないため、リードフレーム基材の側部もエッチングされる。エッチング工程では、後工程で金型との位置合わせを行うためのパイロット穴を併せてエッチングで形成してもよい。
【0039】
図5は、エッチング工程後のリードフレーム基材110を、その厚さ方向(主面131に直交する方向)に沿って切断したときの切断面の一部(リードフレーム基材110の側部近傍)を示す走査型電子顕微鏡写真である。エッチング工程で、リードフレーム基材110の側面112の中央部はエッチングによって窪み、上端部112A及び下端部112Bに突起が形成されている。
【0040】
図6は、エッチング工程で得られたリードフレーム基材110の側部を切断する切断工程を説明するための図である。切断工程では、リードフレーム基材110の側部を金型で切断する。
図6に示すように、リードフレーム基材110(111)は、所定の送り幅で、進行方向A2に沿って移動する。切断域40には金型(不図示)が配置されており、リードフレーム基材111を切断線23に沿って切断する。これによって、リードフレーム基材110の側面112における突起状のバリ(
図5)が除去され、
図3に示すような剪断面22と破断面24を有する側面12を備えるリードフレーム基材111が得られる。リードフレーム基材110の側部を切断する金型としては、通常のパンチ及びダイを用いることができる。
【0041】
リードフレーム基材111の側部25を切断して除去する際、
図6に示すパイロット穴20にピンを挿入して、リードフレーム基材110(111)と金型との位置決めを行ってもよい。本実施形態では、パイロット穴20は、リードフレーム基材111の両側部に設けられているが、パイロット穴20の位置及び個数は特に限定されない。パイロット穴は、リードフレーム基材110の側部25に設けられていてもよい。
【0042】
このように、リードフレーム基材110のリードフレームとなる部分から切り離される側部25にパイロット穴を設ける場合、リードフレーム100の製品形状の制約を受けずにパイロット穴を設けることができる。このため、パイロット穴の数及びサイズを自由に設定することができる。したがって、リードフレーム基材110を切断する際、リードフレーム基材110と金型との位置決めに必要なパイロット穴を、側部25の適切な位置に適切な数で設けることが可能となる。したがって、高い位置精度で側部25を切断することができる。
【0043】
パイロット穴を側部25に設ける場合、同じ金型を用いて、複数種類のリードフレーム100を製造することが可能となる。その結果、種類の異なるリードフレームを製造する場合に、切断工程における金型を共有することが可能となり、金型の個数を低減することができる。したがって、リードフレームの製造コスト及び設備コストを低減することができる。
【0044】
別の実施形態では、パイロット穴20は、金型による打ち抜き加工で形成してもよい。このようなパイロット穴20は、エッチングで形成されるパイロット穴よりも、内壁面に生じる突起を低減することができる。これによって、位置決めのためにパイロット穴20にピンが挿入されたときに微小な金属片が生じることを抑制できる。そこで、例えば、リードフレーム基材111の側部25にエッチングでパイロット穴を形成し、当該パイロット穴を用いて位置決めを行い、金型を用いてパイロット穴20を設けてもよい。これによって、高い位置精度でパイロット穴20を設けることができる。金型を用いてパイロット穴20を設ける工程は、切断工程の前に行ってもよいし、切断工程の際に行ってもよい。
【0045】
図7は、リードフレームの製造方法の変形例を説明するための図である。この変形例では、切断域41に、平面視でL字形状を有するパンチ60が設けられている。L字型のパンチ60は、リードフレーム基材111の側面12に対向する方向に向かって突出する突出部61を有する。パンチ60の下方には突出部61とは相補的な形状の切り欠き部を有するダイ(不図示)が設けられる。切断域41に進入したリードフレーム基材110の側部25は、このような形状のパンチ60とダイを有する金型によって切断される。このとき、金型によって切断されたリードフレームの切断面(側面12)には、剪断面及び破断面とともに、突出部61によって、リードフレーム基材111Aの一方の主面10から他方の主面に至る窪み部90が形成される。窪み部90にも、剪断面及び破断面が形成されていてよい。
【0046】
リードフレーム基材110は、パンチ60よりも長いため、金型による切断は、リードフレーム基材110を、進行方向A2に沿って移動させながら、複数回繰り返して行う。すなわち、パンチ60とダイを用いて側部25を切断した後、リードフレーム基材110(111A)を、進行方向A2に沿って移動させる。このときの移動距離は、パンチ60の進行方向A2に沿う長さよりも若干短くする。
図7において点線で表されているパンチ跡60Aは、リードフレーム基材110(111A)が移動する前のパンチ60とリードフレーム基材111Aとの位置関係を示している。
【0047】
このようなミスマッチを設定することによって、移動後に側部25を切断する際、パンチ60の先端部62は、移動前に側部25を切断することによって形成された窪み部90の上(又は横)に位置することとなる。したがって、金型による側部25の切断を複数回に分けて行っても、切断が繰り返される部分を無くすことができる。これによって、二度切りによるバリ又は切屑の発生、及び、切断のし損ないに伴う変形等を抑制することができる。なお、窪み部90の大きさ及び間隔は特に限定されない。
【0048】
窪み部90が形成される一対の側面12では、厚さ方向に沿って、剪断面22と破断面24が同じ順序で並んでいてもよい。これによって、リードフレーム基材111A、及びこれを切断して得られるリードフレームを送りローラ等を用いて搬送する際に、窪み部90が送りローラに引っ掛かったり変形したりすることを抑制することができる。
【0049】
切断工程で側部25を切断して得られたリードフレーム基材111(111A)を、短手方向に沿って金型を用いて切断すれば、
図1に示すようなリードフレームが得られる。リードフレーム基材111Aから得られるリードフレームは、一対の側面に、一方の主面から他方の主面に至る窪み部90を有する。短手方向に沿って金型を用いて切断された切断面(側面14)にも、剪断面及び破断面が形成される。この切断面(側面14)にも窪み部90を有していてもよい。このようにして、四方の側面に剪断面及び破断面を有し、リードフレームパッケージを製造する際に微細な金属片の発生を十分に抑制することが可能なリードフレームを得ることができる。
【0050】
なお、リードフレームの製造方法は上述の実施形態に限定されない。例えば、リードフレーム基材110を短手方向に沿って切断した後に、長手方向に沿う側部を切断してリードフレームを得てもよい。また、エッチング工程と切断工程の間に、リードフレーム基材の表面にめっき膜を形成するめっき工程を行ってもよい。
【0051】
一実施形態に係るリードフレームパッケージの製造方法は、リードフレームに半導体素子を設置する工程と、半導体素子を樹脂封止して樹脂封止体を作製する工程と、樹脂封止体を個片化する工程と、を有する。
図8のリードフレームパッケージ300を製造する場合を例にして以下に説明する。
【0052】
半導体素子92を設置する工程では、リードフレーム100の各単位フレーム55のパッド51に、半導体素子92を、例えば銀ペースト等の金属ペーストを用いて接着する(ダイボンディング)。次に、半導体素子92の電極パッド(不図示)と端子52との間をボンディングワイヤ94で接続する(ワイヤボンディング)。続いて、単位フレーム55を含むリードフレーム100をモールド金型内に配置する。そして、樹脂組成物(例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂組成物)をモールド金型内に注入して加熱し、樹脂組成物を硬化させる。このようにして得られた樹脂封止体を個片化して、単位フレーム55(リードフレーム)上に搭載された半導体素子92、及び、半導体素子92と端子52とを接続するボンディングワイヤ94を封止する封止樹脂70を備えるリードフレームパッケージ300が得られる。
【0053】
リードフレームパッケージ300の製造方法では、ダイボンディングの前後、及び/又は、ワイヤボンディングの前後等に、リードフレーム100が
図4に示すような収容棚30に収容される。本実施形態の製造方法では、リードフレーム100を収容棚30に収容する際、及びリードフレーム100を収容棚30から取り出す際に発生する微細な金属片が低減できる。これによって、樹脂封止される金属片が低減され、製品化後に短絡等の不具合が発生することを十分に抑制することができる。
【0054】
以上、幾つかの実施形態を説明したが、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。例えば、リードフレームは、QFNタイプに限定されるものではなく、DFNタイプ又はQFPタイプであってもよい。すなわち、エッチングを経て得られるリードフレームであればよい。また、リードフレーム(リードフレーム基材)に形成される単位フレームの形状及び個数は特に限定されない。
【実施例0055】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
エッチングによって単位フレームが形成されたQFNタイプのリードフレーム基材(銅製)を準備した。このリードフレーム基材の表面にめっき膜を形成した後、リードフレーム基材の側部を、厚さ方向に沿って
図7に示すようなパンチ60を備える金型で切断した。その後、リードフレーム基材の主面に、領域50を覆うように樹脂漏れ防止テープを貼付した。そして、通常の金型でリードフレーム基材を幅方向に沿って切断して、
図1に示すようなリードフレーム(長さ:250mm、幅:70mm、厚さ0.2mm)を10個作製した。このリードフレームは、主面にエッチングで形成された単位フレーム55を含む領域50を有しつつ、4つの側面は、それぞれ、厚さ方向に沿って隣り合う剪断面と破断面とを備えていた。また、一方の主面には、領域50を覆うように樹脂漏れテープが貼付されていた。
【0057】
リードフレームを
図4に示すような収容棚に収容した後、ダイボンディングと、ワイヤボンディングの作業を2回繰り返して行った。各作業の開始前と終了後において、リードフレームを収容棚に収容した。すなわち、リードフレームを以下の一連の工程で処理した。
【0058】
収容棚→ダイボンディング(1回目)→収容棚→ワイヤボンディング(1回目)→収容棚→ダイボンディング(2回目)→収容棚→ワイヤボンディング(2回目)→収容棚
【0059】
各工程の終了時点で、各リードフレームの四隅と、長手方向の中心部において、金属片の有無を目視でチェックした。工程毎に発生した金属片の個数をカウントした。その結果は、表1に示すとおりであった。
【0060】
(比較例1)
リードフレーム基材の側部を金型で切断せずにリードフレームを作製した。なお、実施例1よりも幅の小さいリードフレーム基材を用いることによって、リードフレームのサイズは実施例1と同一とした(長さ:250mm、幅:70mm、厚さ:0.2mm)。このリードフレームを用いて実施例1と同じ一連の工程を行い、工程毎に発生した金属片の個数をカウントした。結果は表1に示すとおりであった。表1の数値は、金属片の個数を示している。
【0061】
【0062】
表1に示すとおり、側部を金型で切断した実施例1のリードフレームでは、金属片の発生を十分に低減することができた。一方、比較例1では、各工程において、金属片が発生することが確認された。
本開示によれば、微細な金属片の発生を抑制することが可能なリードフレーム及びその製造方法が提供される。また、微細な金属片の発生を抑制することが可能なリードフレームを用いることによって信頼性に優れるリードフレームパッケージを製造することが可能な製造方法が提供される。
10,131…主面,10A…端部,10B…周縁,12,14,112…側面,20…パイロット穴,22…剪断面,23…切断線,24…破断面,25…側部,26…境界部,30…収容棚,32…支持部,40,41…切断域,50…領域,51…パッド,52…端子,54…サポートバー,55…単位フレーム,56…タイバー,60…パンチ,60A…パンチ跡,61…突出部,62…先端部,70…封止樹脂,90…窪み部,92…半導体素子,94…ボンディングワイヤ,100…リードフレーム,110,111…リードフレーム基材,112A…上端部,112B…下端部,300…リードフレームパッケージ。