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特開2022-69213壁梁落込治具及びそれを用いた壁梁落込方法
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  • 特開-壁梁落込治具及びそれを用いた壁梁落込方法 図1
  • 特開-壁梁落込治具及びそれを用いた壁梁落込方法 図2
  • 特開-壁梁落込治具及びそれを用いた壁梁落込方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069213
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】壁梁落込治具及びそれを用いた壁梁落込方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
E04G21/12 105D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178276
(22)【出願日】2020-10-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】503289768
【氏名又は名称】大雅工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】松元 茂樹
(57)【要約】
【課題】 2列の櫛状に露出した鉄筋群の間に壁梁の吊り下げ落し込む作業を円滑に行うことができるとともに、複数の露出した複数の鉄筋の先端に同時に装着及び取り外しをすることでき、作業者の負担を減らして工期の短縮をすることが可能な壁梁落込治具及びそれを用いた壁梁落込方法を提供する。
【解決手段】 2列の櫛状に露出した鉄筋群3の先端に装着して使用する一対の案内部材10、10を備えてなり、案内部材10、10は、壁梁2の両側面に対して摺接する板状のガイド部11と、ガイド部11の裏面側に固定され、鉄筋群3の先端に装着する装着部12と、を有する壁梁落込治具1及びそれを用いた壁梁落込方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
櫛状に露出した鉄筋群の先端に装着して使用する一対の案内部材を備えてなり、
前記案内部材は、壁梁の両側面に対して摺接する板状のガイド部と、前記ガイド部の裏面側に固定され、鉄筋群の先端に装着する装着部と、を有し、
前記ガイド部は、板状体を折り曲げて断面略への字状に形成し、
前記装着部は、断面逆U字状のレール材から形成され、前記ガイド部の裏面側に固定される固定面と、鉄筋群の先端に載せる載置面と、前記固定面と対向する対向面と、を有することを特徴とする壁梁落込治具。
【請求項2】
ガイド部の載置面は、鉄筋の直径よりも大きい幅を有することを特徴とする請求項1記載の壁梁落込治具。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の壁梁落込治具を用いて櫛状に露出した鉄筋群の間に壁梁を落し込む壁梁落込方法であって、
前記壁梁落込治具の案内部材同士を相対するように鉄筋群の先端に装着する壁梁落込治具設置工程と、揚重機で吊り上げた壁梁を前記壁梁落込治具によって鉄筋群の間に吊り下げて落し込む壁梁吊下工程と、を備え、
前記壁梁落込治具設置工程は、前記案内部材同士を内側方向に近づくように傾斜した状態で設置することを特徴とする壁梁落込方法。
【請求項4】
壁梁吊下工程は、壁梁の側面を案内部材のガイド部に摺接しながら、前記案内部材同士を離間するように移動させて壁梁を落込位置まで落し込むことを特徴とする請求項3記載の壁梁落込方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造の建造物の建設において、耐震性を向上させつつ室内空間を確保するために壁部分を構成する鉄筋群の間に壁梁を落し込む壁梁落込治具及びそれを用いた壁梁落込方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁梁の組付作業は、壁部分を構成する垂直方向に露出した複数本の鉄筋群の間に、籠状に形成された鉄筋からなる壁梁を揚重機で吊り上げた後、複数の作業者によって壁梁に対して鉄筋が絡み合わないようにそれぞれの鉄筋群の位置を調整しながら吊り下げ作業を行っていたため手間の掛かるものであった。
【0003】
また、一般的な梁の組付作業において、梁と鉄筋群との絡み合いを防止するためのものが提案されており、例えば、特許文献1には、柱筋の先端に先細りのガイドキャップをかぶせることで、梁を上方から柱筋間の所定位置に挿入するものや、特許文献2には、梁の鉄筋籠を鉄筋群の上方からスライドさせるための鉄筋の先端に挿入する長筒状の案内部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-146065号公報
【特許文献2】実開平6-32594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の鉄筋コンクリート造の建造物の耐震性を向上するために、壁部分を構成する鉄筋群は、少なくとも2列の櫛状に複数本の鉄筋を露出させたものであり、より具体的には、一辺10m程度とする壁部分には100本以上の鉄筋が垂直方向に配筋されている。そのため、この鉄筋群に対して、上述したガイドキャップや案内部材などは、壁梁の落込作業を行う前に各々の鉄筋の先端に装着させることや、壁梁の落込作業が完了した際の取り外しに手間の掛かるものであった。
【0006】
上述した欠点に鑑み、本発明は、櫛状に露出した鉄筋群の間に壁梁の吊り下げて落し込む作業を円滑に行うことができるとともに、複数の露出した鉄筋の先端に同時に装着及び取り外しをすることでき、作業者の負担を減らして工期の短縮をすることが可能な壁梁落込治具及びそれを用いた壁梁落込方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、櫛状に露出した鉄筋群の先端に装着して使用する一対の案内部材を備えてなり、
前記案内部材は、壁梁の両側面に対して摺接する板状のガイド部と、前記ガイド部の裏面側に固定され、鉄筋群の先端に装着する装着部と、を有し、
前記ガイド部は、板状体を折り曲げて断面略への字状に形成し、
前記装着部は、断面逆U字状のレール材から形成され、前記ガイド部の裏面側に固定される固定面と、鉄筋群の先端に載せる載置面と、前記固定面と対向する対向面と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、上述した構成に加え、ガイド部の載置面は、鉄筋の直径よりも大きい幅を有することが好ましい。
【0009】
また、上述の壁梁落込治具を用いて櫛状に露出した鉄筋群の間に壁梁を落し込む壁梁落込方法であって、
前記壁梁落込治具の案内部材同士を相対するように鉄筋群の先端に装着する壁梁落込治具設置工程と、揚重機で吊り上げた壁梁を前記壁梁落込治具によって鉄筋群の間に吊り下げて落し込む壁梁吊下工程と、を備え、
前記壁梁落込治具設置工程は、前記案内部材同士を内側方向に近づくように傾斜した状態で設置することを特徴とするものである。
【0010】
また、上述した構成に加え、壁梁吊下工程は、壁梁の側面を案内部材のガイド部に摺接しながら、前記案内部材をやや垂直方向に立ち上げながら離間するように水平移動させて壁梁を落込位置まで落し込むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、壁梁の落し込み時に複数の作業者が鉄筋群の位置を調整しながら、櫛状に露出した鉄筋群の間に壁梁の落込作業を円滑に行うことができるとともに、複数の露出した複数の鉄筋の先端に同時に装着及び取り外しをすることでき、作業者の負担を減らして工期の短縮をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る壁梁落込治具の一例を示す斜視図である。
図2図1の壁梁落込治具を鉄筋群の先端に装着した状態の側面図である。
図3】壁梁落込治具によって鉄筋群の間に壁梁を吊り下げて落とし込む方法を示す側面からみた概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
本発明の壁梁落込治具1の実施形態の一例について図1-3に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態における鉄筋群3は、作業面4から垂直上方に向かって2列の櫛状に露出した壁立ち上がり鉄筋からなるものである。
【0014】
壁梁落込治具1は、2列の櫛状に露出した鉄筋群3の先端に装着して使用する一対の案内部材10、10を備えてなり、案内部材10、10は、壁梁の両側面に対して摺接する板状のガイド部11と、ガイド部11の裏面側に固定され、鉄筋群3の先端に装着する装着部12と、を有するものである。
【0015】
ガイド部11は、鉄筋群3の横幅方向と同程度の長さの幅広の板状体を折り曲げて断面略への字状に形成し、下方に下半面11aと、上方に上半面11bと、を備えるものである。このガイド部11の上半面11bは、下半面11aに対して約30度程度の鋭角で傾斜させることで、壁梁落込治具1を鉄筋群3の先端に装着した際に、上方に向かってガイド部11間を拡開するものである。
【0016】
また、このガイド部11は、持ち運びやすさなどを鑑みて、全体の横幅Wを最大で約3.6m程度、縦幅Lを25cm程度とし、このガイド部11の上半面11bは板状体の全体の縦幅Lのうち3分の1程度とし、かつ、下半面11aは板状体の全体の縦幅Lの3分の2程度をすることが好適である。なお、このガイド部11は、軽量であるとともに壁梁2に摺接しても破損せず繰り返し使用することが可能な耐久性を備えたものであればよく、アルミニウム合金などの金属材を主体として板状体が好適であり、また、ガイド部11の形状は、一人の作業者が持ち運びできる程度の大きさと重量であればよく、鉄筋群3の幅に応じて所望のサイズに短くするように変更することも可能である。
【0017】
装着部12は、金属材を主体とするレール材から形成されものであり、ガイド部11の裏面側に固定される固定面12aと、この固定面12aの上端から水平方向に形成された鉄筋群3の先端に載せる載置面12bと、載置面12bの端部から下方に垂設して固定面12aと対向する対向面12cと、を有する断面逆U字状に形成されたものである。
【0018】
装着部12の固定面12aは、ガイド部11の折曲位置近傍の下半面11aの裏面側にリベットやビスで固定されたものであり、対向面12cは、少なくとも鉄筋群3の先端付近の側面に当接することで案内部材10、10の脱落を防止するものであればよく、後述する壁梁落込治具設置工程(S2)において、案内部材10、10が内側方向に傾斜した状態において落下を防止するものである。
【0019】
また、この装着部12の載置面12bは、壁梁2の落し込み途中で鉄筋群3の先端に対して摺接して、鉄筋群3の動きを抑制しながら案内部材10、10同士を離間する方向に移動しうるようにするため、少なくとも鉄筋の直径よりも大きい幅であり、より具体的には、鉄筋の直径の約3倍程度の幅とすることが好適である。
【0020】
次に、本実施形態の壁梁落込治具1を用いた壁梁落込方法について図2、3に基づいて詳細に説明する。
【0021】
壁梁落込方法は、壁梁落込治具設置工程(S1)と、壁梁吊下工程(S2)と、を主要工程とするものである。なお、鉄筋群3の間に落し込まれる壁梁2は、建設現場の作業面において、所定の組立治具を用いて平行に配置された複数の主筋2a、2aに対してフープ筋2b、2bを組み付けることで籠状に組み立てたものである。
【0022】
壁梁落込治具設置工程(S1)は、壁梁落込治具1を相対して上方に向かって拡開するように装着部12を鉄筋群3の先端に装着する。このとき、壁梁落込治具1の装着部12の対向面12cに当接するように係合させるとともに、壁梁落込治具1の案内部材10、10同士(特に、ガイド部11の上半面11b同士)が近づくやや傾斜した状態で設置する。これによって、鉄筋群3の周囲に壁梁落込治具1が突出せずに、作業場所を狭めることなく周囲の作業者に接触しないようにすることが可能である。
【0023】
壁梁吊下工程(S2)は、図3に示すように、壁梁2を揚重機によって鉄筋群3の上方に吊り上げた後、壁梁2の側面に案内部材10のガイド部11を摺接させながら吊り下げて、鉄筋群3の間の落込位置5に壁梁2を落し込む。
【0024】
この壁梁吊下工程(S2)における吊り下げ途中において、壁梁2を一時的に鉄筋群3の間で止めて壁梁2の端部に柱筋に定着させる鉄筋を取り付けた後、壁梁2の落込位置5まで吊り下げる。このとき、壁梁落込治具1のガイド部11の上半面11bによって、壁梁2が鉄筋群3の間に案内されるとともに、案内部材10、10をやや垂直方向に立ち上がりながら離間するように水平移動させながら壁梁2を落込位置5まで落し込むものであり、鉄筋群3の動きを最小限に抑制しながら壁梁2を吊り下げて落し込む作業を円滑に行うことが可能である。
【0025】
上述した壁梁落込方法は、壁梁2を配置する場所に応じて工程(S1、S2)を繰り返し行うものである。
【0026】
したがって、上述した壁梁落込方法によって、壁梁2の落し込み時に複数の作業者が鉄筋群3の位置を調整することなく、櫛状に露出した鉄筋群3の間に壁梁2の落込作業を円滑に行うことができるとともに、露出した鉄筋群3の先端に同時に装着及び取り外しをすることでき、作業者の負担を減らすとともに工期の短縮をすることが可能である。
【0027】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、ガイド部11の板材体は、亜鉛メッキ銅板等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 壁梁落込治具、
10 案内部材、
11 ガイド部、11a 下半面、11b 上半面、W 横幅、L 縦幅、
12 装着部、12a 固定面、12b 載置面、12c 対向面、
2 壁梁、2a 主筋、2b フープ筋、
3 鉄筋群、4 作業面、5 落込位置。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
装着部の載置面は、鉄筋の直径よりも大きい幅を有することを特徴とする請求項1記載の壁梁落込治具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、上述した構成に加え、装着部の載置面は、鉄筋の直径よりも大きい幅を有することが好ましい。