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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069216
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/13 20190101AFI20220428BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20220428BHJP
   F26B 17/32 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C02F11/13 ZAB
F26B25/00 A
F26B17/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178280
(22)【出願日】2020-10-23
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】八木 翼
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 麻美
【テーマコード(参考)】
3L113
4D059
【Fターム(参考)】
3L113AA06
3L113AB05
3L113AC05
3L113AC16
3L113AC45
3L113AC48
3L113AC49
3L113AC68
3L113BA37
3L113CA02
3L113CA05
3L113CA15
3L113CB34
3L113DA24
4D059AA03
4D059BD12
4D059BD22
4D059CB09
4D059CB10
4D059EA01
4D059EA02
4D059EA20
4D059EB01
4D059EB02
4D059EB03
(57)【要約】
【課題】 横型連続伝導伝熱式乾燥機を用いて汚泥等を乾燥するにあたって、新たに見出された条件部及び結論部を有するファジィ推論を用いることにより、乾燥品の水分値が安定し、且つ乾燥品の排出量の変動を低減することのできる新規な横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法の開発を技術課題とした。
【解決手段】 本体シェル10内に多管式加熱管11が具えられ、多管式加熱管11を、その内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、本体シェル10内に汚泥ポンプ2によって被処理物Hを投入し、この被処理物Hを本体シェル10内に滞留させつつ多管式加熱管11に接触させて被処理物Hの乾燥品Dを得る横型連続伝導伝熱式乾燥機1の運転において、汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流、多管式加熱管負荷電流偏差、乾燥品水分及び乾燥品水分偏差のうちの一または複数とを条件部とし、汚泥ポンプ速度を結論部とするファジィ推論を行うことを特徴として成る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体シェル内に多管式加熱管が具えられ、この多管式加熱管を、その内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に汚泥ポンプによって被処理物を投入し、この被処理物を本体シェル内に滞留させつつ前記多管式加熱管に接触させて被処理物の乾燥品を得る横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転において、
汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流、多管式加熱管負荷電流偏差、乾燥品水分及び乾燥品水分偏差のうちの一または複数とを条件部とし、
汚泥ポンプ速度を結論部とするファジィ推論を行うことを特徴とする横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項2】
前記条件部を、汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流と、乾燥品水分とすることを特徴とする請求項1記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項3】
前記条件部を、汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流と、多管式加熱管負荷電流偏差とすることを特徴とする請求項1記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項4】
前記条件部を、汚泥ポンプ速度と、乾燥品水分偏差とすることを特徴とする請求項1記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【請求項5】
横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転状況に応じて、前記条件部を、
汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流と、乾燥品水分とする適合度と、
汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流と、多管式加熱管負荷電流偏差とする適合度と、
汚泥ポンプ速度と、乾燥品水分偏差とする適合度と、
の全ての適合度を用いてファジィ推論することを特徴とする請求項1記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は泥状・ケーク状・粉粒状等の材料の乾燥に好適な横型連続伝導伝熱式乾燥機に関するものであって、特に下水等の脱水汚泥のように性状変動が激しい被処理物を良好に乾燥処理することのできる横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、環境保全の取り組みが盛んになってきており、企業等にあっては、生ごみ、食品加工残渣等の一般廃棄物や、下水汚泥等を乾燥・濃縮して、減量・腐敗防止を図ったうえで再資源化や処分を行っている。
【0003】
このような汚泥等の乾燥に供される装置の一つとして、本出願人が開発し、製造販売している横型連続伝導伝熱式乾燥機1′(製品名:インナーチューブロータリー)がある。この装置は図13に示すように、本体シェル10′内に多管式加熱管11′が具えられ、この多管式加熱管11′を、その内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、このものに被処理物Hを接触させて水分を蒸発させる装置である(例えば特許文献1参照)。
そして投入口101′から本体シェル10′内に供給された被処理物Hは、リフタ117′によって掻き上げられ、乾燥が進行しながら溢出口102′側に移動するものであり、乾燥品Dとなった状態で溢出口102′からダクト107′を経由して外部に排出されることとなる。
【0004】
このような横型連続伝導伝熱式乾燥機1′の運転に際しては、本体シェル10′の容量の50%程度の中間製品H1(乾燥の進んだ被処理材H)を種材として本体シェル10′内に滞留させ、新たに投入された被処理材Hの含水率を低下させることにより、効率的な乾燥処理が行われることとなる。
このため本体シェル10′内における中間製品H1の滞留量を把握するとともに調節することが求められるが、ダストの付着等の問題があるためレベル計を設置することによる直接的な計測は現実的ではない。そこで多管式加熱管11′の負荷に応じて変動するモータM′の電流値を測定することにより、予め作成された検量線(滞留量-電流値曲線)に基づいて本体シェル10′内の中間製品H1の滞留量が求められている。
そして乾燥品Dの排出量をコントロールし、本体シェル10′内の滞留量の調整が行われている。
【0005】
しかしながら、横型連続伝導伝熱式乾燥機1′においては、本体シェル10′内への被処理物Hの供給量を変更したときに、中間製品H1の滞留量の指標となる多管式加熱管11′の負荷電流及び乾燥品Dの水分の変化は、それぞれが数時間程度のタイムラグをもって現れる。このため、オペレータの経験、判断により設定値の変更が行われており、オペレータが交代した際にはその判断も異なってしまうため、乾燥品Dの水分値が一定とならず、また乾燥品Dの排出量の変動も大きくなってしまうといったことが、未だ解決されずにいた。
【0006】
本願発明者は横型連続伝導伝熱式乾燥機1′について鋭意研究・開発を継続しており、横型連続伝導伝熱式乾燥機1′をファジィ制御よって制御することにより、本体シェル10′内における処理途中の中間製品H1(乾燥の進んだ被処理物H)の滞留量を好適なものとすることのできる技術の開発に着手し、上記課題の解決を試みるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-331210
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような背景からなされたものであって、横型連続伝導伝熱式乾燥機を用いて汚泥等の被処理物を乾燥するにあたって、新たに見出された条件部及び結論部を有するファジィ推論を用いることにより、本体シェル内における被処理物の滞留量を適切なものとして、乾燥品の水分値が安定し、且つ乾燥品の排出量の変動を低減することのできる新規な横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち請求項1記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、本体シェル内に多管式加熱管が具えられ、この多管式加熱管を、その内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に汚泥ポンプによって被処理物を投入し、この被処理物を本体シェル内に滞留させつつ前記多管式加熱管に接触させて被処理物の乾燥品を得る横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転において、汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流、多管式加熱管負荷電流偏差、乾燥品水分及び乾燥品水分偏差のうちの一または複数とを条件部とし、汚泥ポンプ速度を結論部とするファジィ推論を行うことを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項2記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記要件に加え、前記条件部を、汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流と、乾燥品水分とすることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項3記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項1記載の要件に加え、前記条件部を、汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流と、多管式加熱管負荷電流偏差とすることを特徴として成るものである。
【0012】
更にまた請求項4記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項1記載の要件に加え、前記条件部を、汚泥ポンプ速度と、乾燥品水分偏差とすることを特徴として成るものである。
【0013】
更にまた請求項5記載の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法は、前記請求項1記載の要件に加え、横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転状況に応じて、前記条件部を、汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流と、乾燥品水分とする適合度と、汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流と、多管式加熱管負荷電流偏差とする適合度と、汚泥ポンプ速度と、乾燥品水分偏差とする適合度と、の全ての適合度を用いてファジィ推論することを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0014】
まず請求項1記載の発明によれば、汚泥ポンプ速度を、本体シェル内における被処理物の滞留量を適切なものとすることができる値とし、乾燥品の水分値が安定し、且つ乾燥品の排出量の変動を低減することができる。
【0015】
また請求項2、3、4記載の発明によれば、汚泥ポンプ速度を結論部とするファジィ推論を好適なものとすることができる。
【0016】
更にまた請求項5記載の発明によれば、汚泥ポンプ速度を結論部とするファジィ推論の条件部を適宜選択することにより、乾燥品の水分値がよりいっそう安定し、且つ乾燥品の排出量の変動をよりいっそう低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用される横型連続伝導伝熱式乾燥機を示す骨格図である。
図2】横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部破断して示す側面図である。
図3】横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部透視して示す正面図及び背面図である。
図4】汚泥ポンプ速度、多管式加熱管負荷電流、乾燥品水分を条件部とし、汚泥ポンプ速度を結論部とするファジィ推論のルールを示す表である。
図5】汚泥ポンプ速度、多管式加熱管負荷電流、多管式加熱管負荷電流偏差を条件部とし、汚泥ポンプ速度を結論部とするファジィ推論のルールを示す表である。
図6】汚泥ポンプ速度、乾燥品水分偏差を条件部とし、汚泥ポンプ速度を結論部とするファジィ推論のルールを示す表である。
図7】多管式加熱管負荷電流のメンバーシップ関数を示すグラフである。
図8】多管式加熱管負荷電流偏差のメンバーシップ関数を示すグラフである。
図9】乾燥品水分のメンバーシップ関数を示すグラフである。
図10】乾燥品水分偏差のメンバーシップ関数を示すグラフである。
図11】汚泥ポンプ速度のメンバーシップ関数を示すグラフである。
図12】運転オペレータによる横型連続伝導伝熱式乾燥機の手動運転時の「被処理物投入量」、「多管式加熱管負荷電流」、「被処理物水分」、「乾燥品水分」を示すグラフ(a)及び本発明のファジイ制御による横型連続伝導伝熱式乾燥機の自動運転時の「被処理物投入量」、「多管式加熱管負荷電流」、「被処理物水分」、「乾燥品水分」を示すグラフ(b)である。
図13】背景技術の説明で用いる横型連続伝導伝熱式乾燥機を一部破断して示す側面図及び横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法の最良の形態は以下の実施例に示すとおりであるが、この実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0019】
以下、本発明の「横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法」について、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の構成を説明した後、その作動態様とともに詳しく説明する。
まず前記横型連続伝導伝熱式乾燥機1は、泥状・ケーク状・粉粒状等の被処理物Hの乾燥に好適な装置であって、被処理物Hに含まれる水分等の揮発分を蒸発させながら滞留させることにより乾燥品Dを得るための装置である。このものは図1~3に示すように、機枠F上に具えられた本体シェル10内に多管式加熱管11が具えられ、この多管式加熱管11を、その内部に加熱媒体たる蒸気を流すとともに回転させ、被処理物Hを本体シェル10内に滞留させつつ多管式加熱管11に接触させて乾燥を行う乾燥機である。
【0020】
前記本体シェル10は図3に示すように、一例として長楕円状の横断面を有する中空部材であり、投入口101、溢出口102、キャリヤガス口103、排気口104が形成される。
ここで前記投入口101は、本体シェル10上部の複数個所に形成されるものであり、まず図2中、左側上部に形成される排気口104付近に第一の投入口101aが形成される。また前記排気口104よりも中央寄りの部分に第二の投入口101bが形成され、更にこの第二の投入口101bと、図2中、右側上部に形成されるキャリヤガス口103との間に第三の投入口101cが形成される。なおこの実施例では投入口101を三カ所に形成するようにしたが、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の仕様に応じて一カ所、 二カ所または四カ所以上に投入口101を形成するようにしてもよい。
【0021】
また前記本体シェル10及び多管式加熱管11は、水平な状態で機枠Fに設置されるか、または排気口104側が、キャリヤガス口103側よりもいくぶんか高くなるように傾斜して機枠Fに設置される。
更にまた前記本体シェル10は二重ジャケット構造とされ、投入口101a付近に形成される蒸気供給口105から、溢出口102の下方に形成されるドレン口106に至る蒸気の通過経路が形成されるものであり、本体シェル10内を昇温することができるような構成が採られている。なお、このような二重ジャケット構造に替えてトレース配管等を設置することもできる。
【0022】
また前記溢出口102は図2、3に示すように、本体シェル10に形成された方形の開口部を、下部から上部に向かって順に、幅十数cm程度の複数の板材102bで塞ぐことにより、所望の高さ寸法で形成することができるものである。
このような構成が採られることから、板材102bを高く積み上げれば、溢出口102の開口は上部に狭くしか開かないため、本体シェル10内の被処理物Hの滞留量が大きくなる。逆に板材102bが少なければ開口は広くなり、本体シェル10内の被処理物Hの滞留量は少なくなる。
【0023】
また前記溢出口102を覆うようにダクト107が外装されるものであり、このダクト107の下部に形成される排出口107aの前段にロータリーバルブ108が具えられる。もちろんこのロータリーバルブ108に替えて二重ダンパ排出装置等を具えるようにしてもよい。
【0024】
また前記多管式加熱管11は、複数のチューブを円筒状に配して成る熱管束116の両側部に鏡板112を具えるとともに、この鏡板112の中心に軸体113を具えて成り、前記機枠Fに具えた軸受ブロック114によって軸体113を回転可能に支持して成るものである。なお多管式加熱管11を回転させるための駆動装置として機枠F上にモータMが具えられる。
そして前記軸体113の両端にはロータリージョイント115(115a、115b)が取り付けられ、熱管束116と接続される。また軸体113と本体シェル10との間には、外気との遮断のためのシール機構が設けられている。
なお熱管束116の側周部には、複数のリフタ117及び適宜の角度を持たせた送り羽根118が取り付けられたアングル111が多数(この実施例では12本)具えられるものであり、これらによって被処理物Hは掻き上げられて前記熱管束116に接触するとともに投入口101側から溢出口102側に進むこととなる。
【0025】
また図示は省略するが、横型連続伝導伝熱式乾燥機1には蒸気発生装置が併設されるものであり、U字形、直管形、ヘリカルコイル形等適宜の装置が適用される。そしてこの蒸気発生装置から前記横型連続伝導伝熱式乾燥機1におけるロータリージョイント115a及び蒸気供給口105に管路が接続される。
また、キャリアガスがキャリアガス口103より本体シェル10内に供給される。そして多管式加熱管11の加熱により被処理物Hから揮発する揮発成分は、前記キャリアガスにより排気口104を経て本体シェル10外に運び去られる。キャリアガスには、前記揮発成分の他に、被処理物Hから発生する微粉も含まれるため、排気口104以降のキャリアガスの流れる経路上に図示していない除塵装置を具えるようにしてもよい。
【0026】
そして投入口101に対して、被処理物Hを供給するための汚泥ポンプ2が接続されるものであり、この汚泥ポンプ2はインバータモータによって供給速度を変更することができるものである。
また前記排出口107aから排出された乾燥品Dの水分値を計測するための水分計4が具えられる。
【0027】
本発明を実施するための横型連続伝導伝熱式乾燥機1及び周辺機器は、一例として上述したように構成されるものであり、以下この装置の作動態様と併せて本発明の横型連続伝導伝熱式乾燥機の運転方法について説明する。
【0028】
(1)乾燥機の準備
まず被処理物Hの投入に先立って、横型連続伝導伝熱式乾燥機1における多管式加熱管11及び本体シェル10を昇温しておくものであり、モータMを起動して多管式加熱管11を回転させた状態で、ロータリージョイント115a及び蒸気供給口105に加熱用蒸気を供給する。そしてロータリージョイント115aに供給された加熱用蒸気は熱管束116を通過しながら多管式加熱管11を昇温し、やがてドレンとなって他端側のロータリージョイント115bから外部に排出される。また蒸気供給口105に供給された加熱用蒸気は本体シェル10を昇温し、やがてドレンとなってドレン口106から外部に排出される。
なお、ロータリージョイント115b側の鏡板112内には図示していないサイホン管が具えられ、ロータリージョイント115bから排出されるドレンの流れる経路には図示していないスチームトラップが具えられる。また、ドレン口106から排出されるドレンの流れる経路にも図示していないスチームトラップが具えられる。
【0029】
(2)被処理物の乾燥
次いで投入口101に被処理物Hを投入するものであり、このものは送り羽根118の作用によって投入口101側から溢出口102側に移動し、更にリフタ117によって掻き上げられて熱管束116等と接触し、この際、熱を受けて乾燥が進行するものである。このとき投入口101は多管式加熱管11の長手方向に沿って複数個所に形成されているため、多管式加熱管11の熱伝導面を有効に使用することができ、乾燥効率が高められる。
乾燥品Dとなった被処理物H(中間製品H1)は、溢出口102から流出し、排出口107aから外部に排出される。
【0030】
(3)滞留量の調節
そして本発明では、汚泥ポンプ2の速度(以下、「汚泥ポンプ速度」と称する。)、多管式加熱管11の負荷電流(以下、「多管式加熱管負荷電流」と称する。)、多管式加熱管11の負荷電流偏差(以下、「多管式加熱管負荷電流偏差」と称する。)、乾燥品Dの水分(以下、「乾燥品水分」と称する。)及び乾燥品Dの水分偏差(以下、「乾燥品水分偏差」と称する。)のうちの一または複数とを条件部とし、
「汚泥ポンプ速度」を結論部とするファジィ推論を行うことにより、
本体シェル10内における被処理物H(中間製品H1)の滞留量を適切なものとして、
乾燥品Dの水分値を安定したものとすることができる。
以下、ファジィ推論の条件部を異ならせた実施例毎に説明する。
【0031】
(3-1)〔条件部を「汚泥ポンプ速度」と、「多管式加熱管負荷電流」と、「乾燥品水分」とし、結論部を「汚泥ポンプ速度」とした実施例〕
この実施例は、 結論部である「汚泥ポンプ速度」の変更の必要性を、「汚泥ポンプ速度」と、「多管式加熱管負荷電流」と、「乾燥品水分」とを条件部として、If-Then形式の制御規則で表すものである。
なお前記「汚泥ポンプ速度」とは、汚泥ポンプ2による本体シェル1への被処理物Hの投入速度を決定するものであり、具体的には汚泥ポンプ2のインバータモータの周波数が該当するものである。
また前記「多管式加熱管負荷電流」とは、多管式加熱管11の負荷電流すなわちモータMに接続された電流計5の計測値が該当するものである。
また前記「乾燥品水分」とは、水分計4によって検出される乾燥品Dの水分値が該当するものである。
【0032】
上記ファジィ推論は具体的には一例として図4に示すルールに従うものであり、一例をあげると、「汚泥ポンプ速度」が「NL」であり、「多管式加熱管負荷電流」が「NL」、「乾燥品水分」が「NL」ならば、「汚泥ポンプ速度」を大きく上げることが行われる「PL」。
また「汚泥ポンプ速度」が「PL」であり、「多管式加熱管負荷電流」が「PL」、「乾燥品水分」が「ZR」ならば、「汚泥ポンプ速度」を少し下げることが行われる「NS」。
図中、条件部の「NL」は大きく減少、「ZR」は変化無し、「PL」は大きく増加を意味するものである
また図中、結論部の「NL」は大きく減ずる、「NS」は少し減ずる、「ZR」は変更しない、「PS」は少し増す、「PL」は大きく増すを意味するものである
【0033】
また図4中、「汚泥ポンプ速度」の属性を表す「NL」、「ZR」、「PL」は、図11に示すメンバーシップ関数によって決定される。
また図4中、「多管式加熱管負荷電流」の属性を表す「NL」、「ZR」、「PL」は、図7に示すメンバーシップ関数によって決定される。
また図4中、「乾燥品水分」の属性を表す「NL」、「ZR」、「PL」は、図9に示すメンバーシップ関数によって決定される。
このような属性の言語変数(ラベル)の数、及びこの言語変数に対するメンバーシップ関数は、経験則に基づいて決定されるものであり、被処理物Hの種類、物性、システムの規模や構成等によって、横型連続伝導伝熱式乾燥機1に最適となるよう、適宜チューニングが行われる。
【0034】
そして制御盤3に内蔵されるファジィ制御ユニットによって、汚泥ポンプ2、電流計5、水分計4から送られてくる信号をもとに上述のファジィ推論が一定時間毎に行われて、その結論に従った出力信号が汚泥ポンプ2の回転を制御するインバータモータに伝えられ、汚泥ポンプ2の排出速度が変更される
【0035】
(3-2)〔条件部を汚泥ポンプ速度と、多管式加熱管負荷電流と、多管式加熱管負荷電流偏差とし、結論部を汚泥ポンプ速度とした実施例〕
この実施例は、結論部である「汚泥ポンプ速度」の変更の必要性を、「汚泥ポンプ速度」と、「多管式加熱管負荷電流」と、「多管式加熱管負荷電流偏差」とを条件部として、If-Then形式の制御規則で表すものである。
なお前記「多管式加熱管負荷電流偏差」とは、「多管式加熱管負荷電流」の現在値と過去値(一例として10分前、20分前)との偏差が該当するものである。
【0036】
上記ファジィ推論は具体的には一例として図5に示すルールに従うものであり、一例をあげると、「汚泥ポンプ速度」が「NL」であり、「多管式加熱管負荷電流」が「NL」、「多管式加熱管負荷電流偏差」が「NL」ならば、「汚泥ポンプ速度」を大きく上げることが行われる「PL」。
また「汚泥ポンプ速度」が「PL」であり、「多管式加熱管負荷電流」が「PL」、「多管式加熱管負荷電流偏差」が「PL」ならば、「汚泥ポンプ速度」を大きく下げることが行われる「NL」。
【0037】
また図5中、「多管式加熱管負荷電流偏差」の属性を表す「NL」、「ZR」、「PL」は、図8に示すメンバーシップ関数によって決定される。
【0038】
(3-3)〔条件部を汚泥ポンプ速度と、乾燥品水分偏差とし、結論部を汚泥ポンプ速度とした実施例〕
この実施例は、結論部である「汚泥ポンプ速度」の変更の必要性を、「汚泥ポンプ速度」と、「乾燥品水分偏差」とを条件部として、If-Then形式の制御規則で表すものである。
なお前記「乾燥品水分偏差」とは、「乾燥品水分」の現在値と過去値(一例として10分前、20分前)との偏差が該当するものである。
【0039】
上記ファジィ推論は具体的には一例として図6に示すルールに従うものであり、一例をあげると、「汚泥ポンプ速度」が「NL」であり、「乾燥品水分偏差」が「NL」ならば、「汚泥ポンプ速度」を少し上げることが行われる「PS」。
また「汚泥ポンプ速度」が「PL」であり、「乾燥品水分偏差」が「PL」ならば、「汚泥ポンプ速度」を少し下げることが行われる「NS」。
【0040】
また図6中、「乾燥品水分偏差」の属性を表す「NL」、「ZR」、「PL」は、図10に示すメンバーシップ関数によって決定される。
【0041】
以上述べたように、横型連続伝導伝熱式乾燥機1を用いて汚泥等の被処理物Hを乾燥するにあたって、本出願人によって新たに見出された条件部及び結論部を有するファジィ推論を用いることにより、本体シェル10内における被処理物Hの滞留量を適切なものとして、乾燥品Dの水分値が安定し、且つ乾燥品Dの排出量の変動を低減することができる。
【0042】
図12に示すものは、運転オペレータによる横型連続伝導伝熱式乾燥機1の手動運転時の「被処理物投入量」、「多管式加熱管負荷電流」、「被処理物水分」、「乾燥品水分」を示すグラフ(a)と、本発明のファジイ制御(条件部:「汚泥ポンプ速度」、「多管式加熱管負荷電流」、「多管式加熱管負荷電流偏差」、「乾燥品水分」、「乾燥品水分偏差」 結論部:「汚泥ポンプ速度」)による横型連続伝導伝熱式乾燥機1の自動運転時の「被処理投入量」、「多管式加熱管負荷電流」、「被処理水分」、「乾燥品水分」を示すグラフ(b)である。
これらグラフから、本発明のファジイ制御による横型連続伝導伝熱式乾燥機1の自動運転時には、「被処理物投入量」の変動が抑えられるとともに、「乾燥品水分」の変動が抑えられていることが明確に確認できる。
なおこのファジイ制御にあたっては、横型連続伝導伝熱式乾燥機1の運転状況に応じて、前記条件部を、「汚泥ポンプ速度」と「多管式加熱管負荷電流」と「乾燥品水分」とする適合度と、「汚泥ポンプ速度」と「多管式加熱管負荷電流」と「多管式加熱管負荷電流偏差」とする適合度と、「汚泥ポンプ速度」と「乾燥品水分偏差」とする適合度との全ての適合度を用いてファジィ推論を行った。
具体的には、図4、5、6に示したルールNo.1~63の全てのルール毎のグレードと、グレードの大きさを求めて(もちろん該当しないルールは無関係)、これらの中から各グレード(NL、NS、ZR、PS、PL)での最大値を選択して重心の計算を行った。
【符号の説明】
【0043】
1 横型連続伝導伝熱式乾燥機
10 本体シェル
101 投入口
101a 投入口
101b 投入口
101c 投入口
102 溢出口
102b 板材
103 キャリヤガス口
104 排気口
105 蒸気供給口
106 ドレン口
107 ダクト
107a 排出口
108 ロータリーバルブ

11 多管式加熱管
111 アングル
112 鏡板
113 軸体
114 軸受ブロック
115 ロータリージョイント
115a ロータリージョイント
115b ロータリージョイント
116 熱管束
117 リフタ
118 送り羽根
2 汚泥ポンプ
3 制御盤
4 水分計
5 電流計

D 乾燥品
F 機枠
H 被処理物
H1 中間製品
M モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図13