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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069222
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】電磁ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/16 20060101AFI20220428BHJP
   F04B 17/04 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
F04B53/16 E
F04B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178291
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】庄司 幸広
【テーマコード(参考)】
3H069
3H071
【Fターム(参考)】
3H069AA01
3H069BB02
3H069CC04
3H069DD42
3H069DD44
3H069EE47
3H071AA07
3H071BB01
3H071CC25
3H071CC34
3H071DD02
3H071DD26
3H071DD35
(57)【要約】
【課題】オリフィスの微細化以外の対策により、一回あたりの吐出量を削減可能な電磁ポンプを提供する。
【解決手段】電磁ポンプ10は、プランジャ60を往動させることで、吸入ポート12からポンプ室62に吸入された流体を、プランジャ60と吐出ポート12の間に形成されるバッファ室110に流体を案内する。電磁ポンプ10は、プランジャ60を復動させることで、バッファ室110に溜まった流体を押し出して吐出ポート14に向けて吐出する。バッファ室110から吐出側の外部116までの流路上には、複数のオリフィス100,102,104が直列状に設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の吸入ポート及び吐出ポートが設けられるボディと、
流体が溜まるポンプ室を有し、かつ前記ボディの内部を摺動するプランジャと、
前記プランジャを往動させる電磁力を付与する第一付与手段と、
前記プランジャを復動させる弾性力を付与する第二付与手段と、
を備え、
前記第一付与手段が前記プランジャを往動させることで、前記吸入ポートから前記ポンプ室に吸入された流体を、前記プランジャと前記吐出ポートの間に形成されるバッファ室に案内し、
前記第二付与手段が前記プランジャを復動させることで、前記バッファ室に溜まった流体を押し出して前記吐出ポートに向けて吐出し、
前記バッファ室から吐出側の外部までの流路上には、複数のオリフィスが直列状に設けられる、電磁ポンプ。
【請求項2】
前記複数のオリフィスは、流体の吐出時にて、前記吐出側の外部に最も近い位置にあるオリフィスの差圧を低減するために設けられる、
請求項1に記載の電磁ポンプ。
【請求項3】
前記バッファ室に最も近い位置にあるオリフィスは、前記複数のオリフィスの間で最も小さい断面積を有する、
請求項1又は2に記載の電磁ポンプ。
【請求項4】
前記吐出側の外部に最も近い位置にあるオリフィスは、前記複数のオリフィスの間で最も小さい断面積を有する、
請求項1又は2に記載の電磁ポンプ。
【請求項5】
前記複数のオリフィスは、前記プランジャの移動軸上に設けられる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁ポンプ。
【請求項6】
前記吐出ポートは、オリフィスを有する筒状の取付け部を直列的に接続してなり、
前記取付け部は、接続部分に対して着脱可能に構成される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁ポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁力及び弾性力を利用してプランジャを往復動させることで、所望の流量にて流体を吐出する電磁ポンプが知られている。
【0003】
特許文献1には、吐出口本体にオリフィス(あるいは、絞り)が設けられた電磁ポンプが開示されている。このオリフィスは、プランジャから吐出口に流れる流体の流量を制御するとともに、プランジャが吐出口本体に当接する際の衝撃を緩和する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6003137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の電磁ポンプでは、一定の流速で流体を吐出しようとする場合、流体の吐出量が周期的に変動する「脈動」が起こり得る。この脈動の対策として、例えば、オリフィスの微細化により一回あたりの吐出量を減らす方法が挙げられる。しかしながら、この微細化を行うとその分だけ、加工コストの高騰や、目詰まりの発生頻度の増加などの問題が生じやすくなる。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、オリフィスの微細加工以外の対策によって、一回あたりの吐出量を削減可能な電磁ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様における電磁ポンプは、流体の吸入ポート及び吐出ポートが設けられるボディと、流体が溜まるポンプ室を有し、かつ前記ボディの内部を摺動するプランジャと、前記プランジャを往動させる電磁力を付与する第一付与手段と、前記プランジャを復動させる弾性力を付与する第二付与手段と、を備え、前記第一付与手段が前記プランジャを往動させることで、前記吸入ポートから前記ポンプ室に吸入された流体を、前記プランジャと前記吐出ポートの間に形成されるバッファ室に案内し、前記第二付与手段が前記プランジャを復動させることで、前記バッファ室に溜まった流体を押し出して前記吐出ポートに向けて吐出し、前記バッファ室から吐出側の外部までの流路上には、複数のオリフィスが直列状に設けられる。
【0008】
本発明の第二態様における電磁ポンプでは、前記複数のオリフィスは、流体の吐出時にて、前記吐出側の外部に最も近い位置にあるオリフィスの差圧を低減するために設けられる。
【0009】
本発明の第三態様における電磁ポンプでは、前記バッファ室に最も近い位置にあるオリフィスは、前記複数のオリフィスの間で最も小さい断面積を有する。
【0010】
本発明の第四態様における電磁ポンプでは、前記吐出側の外部に最も近い位置にあるオリフィスは、前記複数のオリフィスの間で最も小さい断面積を有する。
【0011】
本発明の第五態様における電磁ポンプでは、前記複数のオリフィスは、前記プランジャの移動軸上に設けられる。
【0012】
本発明の第六態様における電磁ポンプでは、前記吐出ポートは、オリフィスを有する筒状の取付け部を直列的に接続してなり、前記取付け部は、接続部分に対して着脱可能に構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オリフィスの微細化以外の対策によって、一回あたりの吐出量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における電磁ポンプの断面図である。
図2図1に示す吐出ポートの部分拡大図である。
図3】プランジャの往動後における電磁ポンプの断面図である。
図4】複数のオリフィスによる作用効果を示す模式図である。
図5】ソレノイドコイルの通電波形と流量の関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0016】
[電磁ポンプ10の構成]
図1は、本発明の一実施形態における電磁ポンプ10の断面図である。図2は、図1に示す吐出ポート14の部分拡大図である。電磁ポンプ10は、電磁力及び弾性力を利用して、吸入ポート12からの流体(液体又は気体)の吸入及び吐出ポート14への流体の吐出を逐次的に行う機器である。以下、流体が液体である場合を例に挙げて説明する。
【0017】
図1に示すように、電磁ポンプ10は、吸入ポート12を有するボディ16と、吐出ポート14を有する蓋部18と、を含んで構成される。つまり、電磁ポンプ10のボディ16には、吸入ポート12及び吐出ポート14がそれぞれ設けられる。なお、吸入ポート12は、図1のようにボディ16の一部として一体的に設けられてもよいし、これに代えて、別体としてボディ16に接続されてもよい。また、吐出ポート14は、図1のように別体としてボディ16と接続されてもよいし、これに代えて、ボディ16の一部として一体的に設けられてもよい。
【0018】
吸入ポート12は、外側に開口する有底の筒状部22と、筒状部22の底面中央部に形成されるストレーナ24と、ストレーナ24の略中心に設けられる流路孔26と、を備える。ここで、ストレーナ24は、概略円筒状の凹みからなり、吸入される液体に含まれる異物を捕捉する機能を発揮する。
【0019】
概略円筒状のボディ16には、吸入ポート12とは反対側(つまり、吐出ポート14側)から、電磁ポンプ10を構成する様々な部品を収容するための空間が設けられる。ボディ16の内壁底部には、磁性体からなる固定鉄心30が固定される。この固定鉄心30は、環状の基台部32と、基台部32の一面から法線方向に沿って延びる無底円筒状の受け部34と、を備える。吐出ポート14側からの平面視にて、受け部34の中心は、流路孔26の位置に略一致する。
【0020】
固定鉄心30の基台部32の上側には、ソレノイドコイル40と、ソレノイドコイル40の内側に設けられるボビン42(あるいは、ヨーク)と、後述するプランジャ60の往復動を案内するガイド部材44と、が収容される。ソレノイドコイル40の両端には、外部から供給される電力により通電制御を行う電気回路(不図示)が接続される。
【0021】
断面形状が略T字状のガイド部材44は、筒状のシリンダ46と、シリンダ46を保持する環状の保持部48と、を備える。ガイド部材44は、シリンダ46の外周面がボビン42の内周面に、保持部48の下面がボビン42の上面にそれぞれ接触した状態にてボディ16に固定される。
【0022】
固定鉄心30の受け部34の内側には、流路孔26への液体の逆流を防ぐための吸入用逆止弁50が設けられる。吸入用逆止弁50は、流路孔26を塞ぐように設けられるボール52と、一端を介してボール52を付勢するばね部材54と、ばね部材54の他端を固定するストッパ56と、から構成される。
【0023】
吸入用逆止弁50の上側には、磁性体からなるプランジャ60(あるいは、可動鉄心)が設けられる。プランジャ60は、ガイド部材44のシリンダ46内を摺動可能に介挿されており、開口側が吸入側に、底側が吐出側に向くように配置される。プランジャ60の内部空間は、液体が溜まるポンプ室62を構成する。プランジャ60の底部には、ポンプ室62内の液体を外側(後述する図3のバッファ室110)に案内するための流路孔64が設けられる。
【0024】
プランジャ60のポンプ室62には、吸入用逆止弁50のストッパ58に一端が固定された付勢ばね68と、流路孔64への液体の逆流を防ぐための吐出用逆止弁70と、が収容される。吐出用逆止弁70は、付勢ばね68の他端に接続される弁座72と、弁座72が有する孔部73を塞ぐように設けられるボール74と、一端を介してボール74を付勢するばね部材76と、ばね部材76の他端を固定するストッパ78と、から構成される。
【0025】
以下、プランジャ60が吐出側から吸入側に移動することを「往動」、吸入側から吐出側に移動することを「復動」という。ソレノイドコイル40は、プランジャ60を往動させる電磁力を付与する「第一付与手段」として機能する。付勢ばね68は、プランジャ60を復動させる弾性力を付与する「第二付与手段」として機能する。
【0026】
一方、蓋部18は、ボディ16の開口を覆う蓋本体80と、蓋本体80に対して着脱可能に設けられる取付け部82と、を含んで構成される。蓋本体80は、ボディ16と係合する概略円板状の係合部84と、係合部84の一面から法線方向に延びる筒状部86と、筒状部86の端部から外径方向に突出するフランジ部88と、を備える。
【0027】
取付け部82は、円筒状の本体部90と、本体部90の一端に設けられる接続部92と、本体部90の他端から外径方向に突出するフランジ部94と、を備える。本体部90と接続部92の間には、肩部96が形成される。取付け部82は、肩部96がフランジ部88に突き当たるまで筒状部86の内側に接続部92を差し込むことで、蓋本体80に取り付けられる。
【0028】
図2に示すように、蓋本体80(より詳しくは、係合部84)の中央には、直径D1(断面積S1)のオリフィス100が設けられる。また、取付け部82(より詳しくは、接続部92)の中央には、直径D2(断面積S2)のオリフィス104が設けられる。2つのオリフィス100,104は、距離Hだけ離れた位置に、同一線上(ここでは、プランジャ60の移動軸上)に設けられる。ここで、「断面積」とは、オリフィス100,104が延びる方向に垂直な断面の面積を意味する。
【0029】
直径D1,D2の大小関係は、[1]D1<D2、[2]D1>D2、[3]D1=D2、のいずれであってもよい。例えば、D1<D2とすることで、液体と一緒にポンプ室62に持ち込まれた異物が、吐出ポート14の内部に流入するのを防ぎやすくなる。あるいは、D1>D2とすることで、最下流側のオリフィス104からの一回あたりの吐出量を減らすことができる。なお、断面積S1,S2についても、直径D1,D2の場合と同様の大小関係があってもよい。
【0030】
なお、図1の例では、取付け部82の個数が1個であるが、2個以上の取付け部82を直列的に接続してもよい。この場合、第二の取付け部82は、第二の肩部96が第一のフランジ部94に突き当たるまで第一の本体部90の内側に第二の接続部92を差し込むことで、第一の取付け部82に取り付けられる。
【0031】
[電磁ポンプ10の動作]
この実施形態における電磁ポンプ10は、以上のように構成される。続いて、この電磁ポンプ10の動作について、図1図5を参照しながら説明する。
【0032】
<基本動作>
電磁ポンプ10の基本動作について、図1及び図3を参照しながら説明する。第一に、ソレノイドコイル40の通電状態が「OFF」である場合について説明する。この場合、付勢ばね68がプランジャ60を吐出側に付勢することで、プランジャ60は、蓋部18の一面に当接した状態を維持する(図1参照)。ここでは、ポンプ室62内に液体が既に溜まっている。
【0033】
第二に、ソレノイドコイル40の通電状態が「OFF」から「ON」に遷移された場合について説明する。この場合、固定鉄心30及びプランジャ60がそれぞれ磁化され、互いに吸引させる電磁力が作用する。その結果、プランジャ60は、付勢ばね68の弾発力に抗して、固定鉄心30の受け部34に当接するまで往動する(図3参照)。
【0034】
これと併せて、吐出用逆止弁70が「閉」状態から「開」状態になる。具体的には、ばね部材76の弾発力に抗してボール74が押され、塞がっていた弁座72の孔部73が開放される。その結果、ポンプ室62内に溜まっていた液体は、プランジャ60と吐出ポート14の間に一時的に形成される空間(以下、「バッファ室110」という)に案内される。
【0035】
第三に、ソレノイドコイル40の通電状態が「ON」である場合について説明する。この場合、ソレノイドコイル40の電磁力が付勢ばね68の弾発力に打ち勝つことで、プランジャ60は、固定鉄心30の受け部34に当接した状態を維持する(図3参照)。ここでは、ポンプ室62内に溜まっていた液体が既に排出されている。
【0036】
第四に、ソレノイドの通電状態が「ON」から「OFF」に遷移された場合について説明する。この場合、固定鉄心30及びプランジャ60を互いに吸引させる電磁力が消失し、プランジャ60は、付勢ばね68の弾発力を受けて、蓋部18の一面に当接するまで復動する(図1参照)。この時、バッファ室110に溜まっていた液体が、プランジャ60の底面によって押し出され、オリフィス100,104を通り吐出される。
【0037】
これと併せて、吸入用逆止弁50が「閉」状態から「開」状態になる。具体的には、ポンプ室62内の負圧を解消するためにボール52が押され、塞がっていた流路孔26が開放される。その結果、吸入ポート12の液体は、ポンプ室62内に吸入される。
【0038】
以上のようにして、電磁ポンプ10による一連の動作が終了する。電磁ポンプ10は、この動作を周期的に繰り返すことで、所望の流量にて流体を吐出することができる。
【0039】
<複数のオリフィスによる効果>
図4は、複数のオリフィス100,102,104による作用効果を示す模式図である。ここでは、バッファ室110から外部116までの流路上に、N個(N≧2)のオリフィス100,102,104が直列状に設けられる場合を想定する。図1図3の例では、N=2の場合に相当する。
【0040】
バッファ室110と外部116とは、(N-1)個の閉空間112及び1個の開空間114を経由して連通される。本図では、バッファ室110に最も近いオリフィス(i=1)を「オリフィス100」と、外部116に最も近いオリフィス(i=N)を「オリフィス104」と表記している。一方、それ以外のオリフィス(1<i<N)を「オリフィス102」と表記している。
【0041】
例えば、i番目の空間内における圧力は、P(i)と定義される。ここで、P(0)はプランジャ60の復動に伴い発生する圧力、P(N)は外気圧にそれぞれ相当する。P(N)=0と設定することで、P(i)は外部116の気圧に対する相対圧力として表現される。
【0042】
そうすると、i番目のオリフィスに作用する下流側の圧力はP(i-1)であり、上流側の圧力はP(i)である。すべての閉空間112に流体が充満している場合、各オリフィスの穴径(断面積)が同じとすると各々のオリフィスの前後に作用する圧力差(以下、単に、「オリフィスの差圧Δ」ともいう)は、いずれも同じ値であるとみなすことができる。そこで、
Δ=P(0)-P(1)=P(1)-P(2)=・・・=P(N-1)-P(N)
を解くことで、P(i)=(1-i/N)P(0)、Δ=P(0)/N、の計算結果がそれぞれ得られる。
【0043】
Δ=P(0)/Nの関係から理解されるように、バッファ室110と外部116の間の差圧であるP(N)が、オリフィスの個数(N)に応じてN等分に分配される。一回あたりの吐出量は、最下流側にあるオリフィス104の差圧Δの平方根に比例する。つまり、吐出ポート14に設けられるオリフィス100が1個(N=1)である場合と比べて、一回あたりの吐出量が(1/√N)倍に減少する。
【0044】
このようにして、オリフィスの微細化以外の対策により、一回あたりの吐出量を削減することができる。また、複数のオリフィス100,102,104を直列状に設けることで、上記した削減効果とは別の追加的な作用効果が得られる。
【0045】
図5は、ソレノイドコイル40の通電波形と流量の関係を示すタイムチャートである。本図における「比較例」とは、蓋部18の取付け部82を取り外した構成(つまり、N=1)を意味する。一方、「実施例」とは、蓋部18の取付け部82が装着された構成(つまり、N=2)を意味する。本図から理解されるように、実施例における流量の時間変動は、比較例の場合と比べて大幅に小さくなっている。その理由は、複数のオリフィスを直列状に設けることで、最上流側のオリフィス100から最下流側のオリフィス104までの距離H(図2参照)が長くなるからである。この長距離化により、液体の吐出応答性が低下する反面、時間的平滑化による脈動の抑制効果が生じたと考えられる。
【0046】
[実施形態のまとめ]
以上のように、電磁ポンプ10は、流体の吸入ポート12及び吐出ポート14が設けられるボディ16と、流体が溜まるポンプ室62を有し、かつボディ16の内部を摺動するプランジャ60と、プランジャ60を往動させる電磁力を付与するソレノイドコイル40と、プランジャ60を復動させる弾性力を付与する付勢ばね68と、を備える。
【0047】
電磁ポンプ10は、ソレノイドコイル40がプランジャ60を往動させることで、吸入ポート12からポンプ室62に吸入された流体を、プランジャ60と吐出ポート14の間に形成されるバッファ室110に案内する。電磁ポンプ10は、付勢ばね68がプランジャ60を復動させることで、バッファ室110に溜まった流体を押し出して吐出ポート14に向けて吐出する。バッファ室110から吐出側の外部116までの流路上には、流体の吐出時にて、外部116に最も近い位置にあるオリフィス104の差圧を低減するための複数のオリフィス100,102,104が直列状に設けられる。
【0048】
このように、複数のオリフィス100,102,104を直列状に設けることで、流体の吐出時にて、バッファ室110と外部116の間の差圧が、オリフィスの個数に応じて分配される。すなわち、流体の吐出量に影響を与える最下流側のオリフィス104の差圧Δが、オリフィスが1個である場合と比べて低くなる。これにより、オリフィスの微細化以外の対策により、一回あたりの吐出量を削減することができる。
【0049】
そして、複数のオリフィス100,102,104を直列状に設けることで、その分だけ、最上流側のオリフィス100と最下流側のオリフィス104の間の距離Hが長くなる。これにより、吐出応答性に対して時間的平滑化がなされ、脈動の抑制という追加的な効果が得られる。
【0050】
また、バッファ室110に最も近い位置にあるオリフィス100は、複数のオリフィス100,102,104の間で最も小さい断面積を有してもよい。これにより、流体と一緒にポンプ室62に持ち込まれた異物が、吐出ポート14の内部に流入するのを防ぎやすくなる。
【0051】
一方、外部116に最も近い位置にあるオリフィス104は、複数のオリフィス100,102,104の間で最も小さい断面積を有してもよい。これにより、一回あたりの吐出量を減らすことができる。
【0052】
また、複数のオリフィス100,102,104は、プランジャ60の移動軸上に設けられてもよい。これにより、流圧の作用方向が一致し、その分だけ流体の吐出性能が安定しやすくなる。
【0053】
また、吐出ポート14は、オリフィスを有する筒状の取付け部82を直列的に接続してなり、取付け部82は、接続部分(例えば、ボディ16又は別の取付け部82)に対して着脱可能に構成されてもよい。これにより、取付け部82の接続により形成される閉空間112に異物が混入した場合、取付け部82を取り外すことで、異物を簡単に除去することができる。
【0054】
[変形例]
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0055】
上記した実施形態では、N=2におけるオリフィスの断面積の大小関係について説明したが、N≧3の場合においても様々な大小関係を設定してもよい。例えば、[1]下流側に向かうにつれて断面積を徐々に小さくし、[2]下流側に向かうにつれて断面積を徐々に大きくし、あるいは[3]すべての断面積を等しくしてもよい。
【0056】
上記した実施形態では、複数のオリフィス100,102,104が同一線上(特に、プランジャ60の移動軸上)にある場合について説明したが、オリフィスの位置関係はこれに限られない。例えば、オリフィスの位置をずらすことで吐出応答性(特に、フィルタリング効果)を変調させることができる。
【0057】
上記した実施形態では、同一の構造を有する取付け部82を接続又は連結する場合について説明したが、これに限られない。例えば、構造が異なる複数種類の取付け部82を組み合わせて連結可能に構成されてもよい。ここで、「構造が異なる」とは、例えば、オリフィスの形状・サイズ・位置、内部空間の形状・サイズなど、流体の吐出特性に寄与し得る少なくとも1つの構造が異なることを意味する。
【符号の説明】
【0058】
10…電磁ポンプ、12…吸入ポート、14…吐出ポート、16…ボディ、40…ソレノイドコイル(第一付与手段)、60…プランジャ、62…ポンプ室、68…付勢ばね(第二付与手段)、100,102,104…オリフィス、110…バッファ室、116…外部(吐出側の外部)

図1
図2
図3
図4
図5