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特開2022-6923精子採取器駆動装置、及び精子採取システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006923
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】精子採取器駆動装置、及び精子採取システム
(51)【国際特許分類】
   A61H 19/00 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A61H19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109508
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】505167222
【氏名又は名称】株式会社典雅
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中村 健吾
【テーマコード(参考)】
4C074
【Fターム(参考)】
4C074AA01
4C074AA10
4C074BB10
4C074CC18
4C074CC20
4C074DD01
4C074EE01
4C074FF01
4C074GG01
(57)【要約】
【課題】精子採取器を用いて精子を効率よく採取する。
【解決手段】弾性素材によって構成されペニスの挿入空所214を内部に設けたコア部材210、及び基端に開口204bを備え、先部に通気孔204cを備えた中空部材によって構成され、コア部材210を内側空間に収容する容器202(容器本体204)を備えた精子採取器200を着脱自在に保持し、該精子採取器200を保持した状態で回転させる精子採取器駆動装置100であって、精子採取器200を着脱自在に保持する保持部120と、保持部120により保持した精子採取器200を軸中心に回転させ、且つ通気孔204cを通じて容器202内に負圧を導入する駆動機構DMと、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性素材によって構成されペニスの挿入空所を内部に設けたコア部材、及び軸方向一端に開口を備え、軸方向他部に通気孔を備えた中空部材によって構成され、前記コア部材を内側空間に収容する容器を備えた精子採取器を着脱自在に保持し、該精子採取器を保持した状態で回転させる精子採取器駆動装置であって、
前記精子採取器を着脱自在に保持する保持部と、
前記保持部により保持した前記精子採取器を軸中心に回転させ、且つ前記通気孔を通じて前記容器内に負圧を導入する負圧導入回転部と、を備えたことを特徴とする精子採取器駆動装置。
【請求項2】
前記負圧導入回転部は、
モータと、
負圧を生成するポンプと、
前記モータによって軸中心に回転され、軸方向一端に設けた一端開口と外周面に設けた外周面開口との間をシャフト内流路によって連通したシャフトと、
前記シャフトを回転自在に支持し、且つ前記外周面開口の周りに前記ポンプが生成した前記負圧が導入される調圧空間を形成する軸受け部と、を備え、
前記保持部は、
前記シャフトの一端部が固定されて前記シャフトとともに回転し、且つ前記精子採取器の前記他部を着脱自在に保持する回転ホルダと、
前記回転ホルダが前記精子採取器の前記他部を保持したときに、前記シャフトの前記一端開口と前記精子採取器の前記通気孔との間を気密状態で連通するホルダ側パッキンと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の精子採取器駆動装置。
【請求項3】
前記軸受け部は、
軸方向両端が開放されて前記シャフトが挿通される筒形状のスペーサ本体、及び前記スペーサ本体の外周面に設けられて内部流路が前記スペーサ本体の内側空所と連通した接続パイプを有するスペーサと、
前記スペーサ本体の一端開口に装着され、前記シャフトと前記スペーサ本体との間を、前記シャフトの回転は許容しつつ気密に封止する一端側パッキンと、
前記スペーサ本体の他端開口に装着され、前記シャフトと前記スペーサ本体との間を、前記シャフトの回転は許容しつつ気密に封止する他端側パッキンと、を備え、
前記調圧空間は、前記スペーサ本体、前記一端側パッキン、及び前記他端側パッキンによって形成され、
前記ポンプは、前記接続パイプに接続されることを特徴とする請求項2に記載の精子採取器駆動装置。
【請求項4】
前記負圧導入回転部は、
開放時において前記調圧空間に大気圧を導入するバルブを備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の精子採取器駆動装置。
【請求項5】
弾性素材によって構成されペニスの挿入空所を内部に設けたコア部材、及び軸方向一端に開口を備え、軸方向他部に通気孔を備えた中空部材によって構成され、前記コア部材を内側空間に収容する容器を備えた精子採取器と、
前記精子採取器を着脱自在に保持する保持部と、前記保持部により保持した前記精子採取器を軸中心に回転させ、且つ前記通気孔を通じて前記容器内に負圧を導入する負圧導入回転部と、を備えたことを特徴とする精子採取器駆動装置と、を具備することを特徴とする精子採取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性から精子を採取するための精子採取器による精子採取効率を高めることができる精子採取器駆動装置、及び精子採取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
研究、及び治療等の医学的な要請や、性犯罪防止、売春防止、及び性病の蔓延防止等の社会的な要請に基づいて、男性から精子を採取するための精子採取器(射精を促進するための射精促進器)が知られている。
例えば、精子採取器は、夫婦間の不妊の原因を究明するために採取した精子から夫の性機能を検査したり、性機能障害を治療したり、人工授精のために精子を確保、保管する等の医学的な要請に基づいて使用される。また、精子採取器は、個人的な性的欲求を解消させることによる性犯罪の予防、売春防止、性病感染者数の減少等の種々の社会的な要請に基づいて使用される。
【0003】
精子採取器の一種として、低廉に入手することができ、しかも使い捨てタイプ、或いは洗浄可能なタイプであるために衛生上、健康上の問題も惹起しない簡易な精子採取器が知られている。
例えば特許文献1には、ペニスが挿入可能な筒状の精子受けを挿着するための取り付け部、及びこの取り付け部と精子受けとの空隙を埋めるべくこの空隙に挿着される空気袋を有する精子受けの取り付け部と、さらにこの取り付け部を回転駆動する駆動装置を備えた精子受けの回転駆動装置が開示されている。
特許文献2には、筒形状の弾性素材によって作製され、挿入口に挿入されたペニスが相対移動する挿入空所を設けたコア部材と、基端が開口し、先端に通気穴を設け、且つコア部材を収容する内側空間を備えた容器と、を備え、コア部材の基端部を容器の開口に支持した精子採取器が開示されている。さらに、特許文献2には、精子採取器の先端側部分を保持し、抜気穴を通じて精子採取器の容器内を減圧自在な減圧装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に係る回転駆動装置は、ペニスを挿入する精子受け等を電動により回転、回動させてペニスを回転方向に摺擦して刺激を付与し、射精を促進するものである。
特許文献2に係る減圧装置は、抜気穴を通じて精子採取器の容器内を減圧することにより、コア部材の挿入空所を相対移動するペニスを摺擦したときの刺激を増大させて、射精を促進するものである。
しかし、特許文献1に係る回転駆動装置は、精子受け等を回転、回動させることはできるが、精子受けの内部を減圧することはできない。反対に、特許文献2に係る減圧装置は、精子採取器の容器内を減圧することはできるが、精子採取器を回転させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-209502公報
【特許文献2】国際公開2016/132462号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容器内を減圧した状態で精子採取器を回転させることができれば、容器内を減圧せずに精子採取器を回転させたときと比較して、ペニスを回転方向に摺擦したときにペニスに付与される刺激が増大するため、精子を効率よく採取することができる。しかし、これまで精子採取器を減圧しつつ回転させる機能を備えた手段は提案されていない。
仮に特許文献1に記載された精子採取器を回転させるための構成に対して、特許文献2に記載された精子採取器の容器内を減圧させる構成を単純に組み合わせたとしても、相対回転する2つの部位間に減圧のための抜気手段を当該部位間の相対回転を妨げることなく組み込むことは容易ではない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、精子を効率よく採取することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、弾性素材によって構成されペニスの挿入空所を内部に設けたコア部材、及び軸方向一端に開口を備え、軸方向他部に通気孔を備えた中空部材によって構成され、前記コア部材を内側空間に収容する容器を備えた精子採取器を着脱自在に保持し、該精子採取器を保持した状態で回転させる精子採取器駆動装置であって、前記精子採取器を着脱自在に保持する保持部と、前記保持部により保持した前記精子採取器を軸中心に回転させ、且つ前記通気孔を通じて前記容器内に負圧を導入する負圧導入回転部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、精子を効率よく採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)乃至(d)は本発明の一実施形態に係る精子採取器駆動装置の外観構成を示す正面図、平面図、底面図、背面図である。
図2】(a)乃至(e)は精子採取器駆動装置に保持される精子採取器の一例の構成を示す正面図、上面図、底面図、斜視図、及びB-B’断面図である。
図3】精子採取器の先端側部分を保持した精子採取器駆動装置のA-A’断面図である。
図4】(a)はポンプを動作させずにモータを回転させたときの要部拡大断面図、(b)はポンプを動作させ、且つモータを回転させたときの要部拡大断面図、(c)はポンプ及び電磁バルブを動作させ、且つモータを回転させたときの要部拡大断面図である。
図5】精子採取器駆動装置の斜視図である。
図6】精子採取器駆動装置を構成する各パーツの分解斜視図である。
図7】精子採取器駆動装置の縦断面図である。
図8】精子採取器駆動装置の軸受け部周辺の部分拡大断面図である。
図9】精子採取器駆動装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図10】(a)乃至(e)はバキュームスイッチの操作と制御内容を説明する図、リリーススイッチの操作と制御内容を説明する図、マニュアルスイッチの操作と制御内容を説明する図、ジャイロセンサの検出信号に基づく精子採取器駆動装置への操作と精子採取器の制御内容を説明する図、オートスイッチの操作と制御内容を説明する図である。
図11】精子採取システムの使用方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により説明する。なお、以下の説明において、精子採取器駆動装置100は駆動装置100と称する。
図1(a)乃至(d)は本発明の一実施形態に係る駆動装置100の外観構成を示す正面図、平面図、底面図、背面図、図2(a)乃至(e)は駆動装置100に保持される精子採取器200の一例の構成を示す正面図、上面図、底面図、斜視図、及びB-B’断面図、図3は精子採取器200の先部204aを保持した駆動装置100のA-A’断面図である。
図1に示す駆動装置100は、図2に例示した精子採取器200の先部204aを着脱自在に保持し、保持した精子採取器200を中心軸CLを中心に回転させ、且つ精子採取器200内(容器内)に負圧を導入することにより、精子を効率よく採取する手段である。図3に示すように、精子採取システム1は、精子採取器200の先部204aを駆動装置100に保持させることによって構成される。
【0011】
<精子採取器200>
駆動装置100の説明に先立ち、精子採取器200について説明する。図2(a)乃至(e)に示すように、精子採取器200は、エラストマー等の弾性素材によって構成され、ペニスの挿入口212、及び挿入口212から延びる挿入空所214を内部に設けた筒形状のコア部材210と、硬質プラスチック製の中空部材によって構成され、コア部材210を内側空間に収容した容器202と、コア部材210と容器202の間に配置され、通気性を備えた弾性部材(スポンジ等)によって作製されたクッション材220と、を備えている。
容器202は、基端(軸方向一端)に開口204bを備え、先部(軸方向他部)204aに通気孔204cを備えた容器本体204と、容器本体204の開口204bに着脱されるキャップ206と、を備えている。コア部材210は、ペニスの挿入口212を設けたフランジ部211と、挿入口212から伸びるペニスの挿入空所214を内部に設けた筒形状のコア本体213と、を備えている。フランジ部211は容器本体204の開口204bに対して固定的に、或いは着脱可能に支持されており、コア本体213は周囲に配置されたクッション材220によって容器202の内側空間に支持されている。フランジ部211(挿入口212)は、容器本体204にキャップ206が取り付けられるとキャップ206によって覆われて外部からは視認されなくなる。
【0012】
<駆動装置100の概略>
次に、駆動装置100の概略について説明する。図1(a)乃至(d)、及び図3に示す駆動装置100は、人手により把持可能であり、且つ基端110aに開口部110a’を有した略円筒形状のケーシング110と、ケーシング110の基端開口部110a’内に回転自在(且つ、脱落不能)に組み込まれて精子採取器200の先部204aを着脱自在に保持する保持部120と、ケーシング110内に収納されて保持部120に保持された精子採取器200を軸中心に回転させ、且つ精子採取器200の通気孔204cを通じて容器202内に負圧を導入する駆動機構(負圧導入回転部)DMと、を備えている。
ケーシング110は、比較的硬質のプラスチックから構成され、軸方向中間部にくびれ部111aを有している。ケーシング110の正面においてくびれ部111aには、駆動装置100の使用時に操作される4つの円形スイッチ114(114a乃至114d)が軸方向に間隔を空けて配置されている。なお、各円形スイッチ114については後で説明する。くびれ部111aの背面には、電力を供給する電源プラグ149(図7を参照)が着脱自在に嵌合される電源端子(雌型端子)116が設けられている。
【0013】
保持部120は、硬質のプラスチックによって作製され、精子採取器200の先部204aに整合した凹状内面を有するカップ形状の回転ホルダ121と、回転ホルダ121の内面中心部に取り付けられ、リング形状の弾性部材(例えばゴムや弾性樹脂)によって作製されたホルダ側パッキン122と、硬質のプラスチックによって作製されて回転ホルダ121の内周面の基端部寄り位置に取り付けられ、その内周面に精子採取器200の先部204aを係止する突条123aを形成した略円筒形状の係止リング123と、を備えている。
図3に示すように、精子採取器200の先部204aを回転ホルダ121の凹状内面に収納すると、係止リング123は精子採取器200の先部204aを係止する。これにより回転ホルダ121内には、精子採取器200の先部204aが着脱自在に、且つ回転ホルダ121とともに軸中心に回転可能な状態で保持される。
回転ホルダ121の先端側の内面にはホルダ側パッキン122が取り付けられており、精子採取器200の先部204aを保持したときに、ホルダ側パッキン122の内周側空所122aに精子採取器200の通気孔204cが連通した状態で、且つ外部とは気密状態で配置される。
【0014】
図3に示すように、ケーシング110の内部空間には、回転ホルダ121に保持した精子採取器200を軸中心に回転させ、且つ通気孔204cを通じて容器202内に負圧を導入する駆動機構(負圧導入回転部)DMを収納している。
駆動機構DMは、ケーシング110内の中央部に固定されたモータ131と、モータ131よりも先端側に固定されて負圧を生成するポンプ132と、モータ131の回転軸131bと回転ホルダ121のそれぞれに固定されて軸中心に回転され、且つ基端開口151a(一端開口)と外周面開口151bとの間をシャフト内流路151cによって連通した管体であるシャフト151と、シャフト151を回転自在に支持し、且つ外周面開口151bの周りに調圧空間RSを形成する軸受け部137と、を備えている。
ポンプ132と軸受け部137との間はポンプ用チューブ147によって接続されており、ポンプ132が生成した負圧は調圧空間RSに導入される。
【0015】
シャフト151の基端開口151aは、ホルダ側パッキン122の内周側空所122aと連通している。このため、ホルダ側パッキン122の内周側空所122aと軸受け部137の調圧空間RSとの間がシャフト内流路151cによって連通されている。
従って、回転ホルダ121が精子採取器200の先部204aを保持したときに、ポンプ132が生成した負圧は、軸受け部137の調圧空間RS、シャフト内流路151c、ホルダ側パッキン122の内周側空所122a、及び精子採取器200の通気孔204cを通じて精子採取器200の容器202内に導入される。その結果、容器202内に負圧を導入しなかったときと比較してペニスとコア部材210(コア本体213の内面)との密着度合いが高くなり、コア部材210によってペニスを回転方向に摺擦したときにペニスに付与される刺激が増大し、精子を効率よく採取することができる。
【0016】
また、駆動機構DMは、モータ131の左側に固定され、軸受け部137の調圧空間RSとバルブ用チューブ148を介して接続された電磁バルブ133を備えている。電磁バルブ133は、バルブ用チューブ148内の流路とケーシング110の内部空間とを連通したり遮断する。ケーシング110の内部空間は大気圧になっているため、ポンプ132の動作中に電磁バルブ133を開放すると、ポンプ132が生成した負圧と大気圧のそれぞれが軸受け部137の調圧空間RSに導入される。その結果、電磁バルブ133を閉止してポンプ132を動作させた時と比較して精子採取器200の容器202内に導入される負圧が弱まり、ペニスとコア部材210との密着度合いが低くなってペニスに付与される刺激が弱められる。
【0017】
図4(a)はポンプ132を動作させずにモータ131を回転させたときの要部拡大断面図、図4(b)はポンプ132を動作させ、且つモータ131を回転させたときの要部拡大断面図、図4(c)はポンプ132及び電磁バルブ133を動作させ、且つモータ131を回転させたときの要部拡大断面図である。
図4(a)に示すように、ポンプ132を動作させずにモータ131を回転させたときには、精子採取器200の容器202内に負圧が導入されずに回転ホルダ121、及び回転ホルダ121に保持された精子採取器200が軸中心に回転する。従って、精子採取器200の容器202内は常圧(大気圧)となり、コア部材210の挿入空所214に挿入されたペニスに対して回転方向の刺激が付与される。
【0018】
図4(b)に示すように、ポンプ132を動作させつつモータ131を回転させたときには、符号FL1の矢印で示す空気の流れが発生し、精子採取器200の容器202内に負圧が導入された状態で回転ホルダ121、及び回転ホルダ121に保持された精子採取器200が軸中心に回転する。従って、ポンプ132を動作させずにモータ131を回転させたときと比較して、ペニスとコア部材210との密着度合いが高くなり、ペニスに付与される刺激を高めることができる。
図4(c)に示すように、ポンプ132及び電磁バルブ133を動作させつつモータ131を回転させたときには、符号FL2の矢印で示すように、電磁バルブ133の開放によって軸受け部137の調圧空間RSに大気圧が導入されるため、電磁バルブ133を閉止した状態でポンプ132を動作させたときと比較して、ペニスとコア部材210との密着度合いが弱くなり、ペニスに付与される刺激を弱めることができる。
このように、本実施形態の駆動装置100を用いることにより、容器202内を減圧した状態で精子採取器200を回転させることができるため、容器202内を減圧せずに精子採取器200を回転させたときと比較して、ペニスを回転方向に摺擦したときにペニスに付与される刺激を増大させることでき、ひいては精子を効率よく採取することができる。
【0019】
<駆動装置100の詳細>
以下、駆動装置100について詳細に説明する。図5は駆動装置100の斜視図、図6は駆動装置100を構成する各パーツの分解斜視図である。
【0020】
<ケーシング110>
図5、及び図6に示すように、ケーシング110は、軸方向両端が開口し、軸方向中間部(くびれ部111a)が湾曲凹状にくびれた略円筒形状の中間ケース部111と、中間ケース部111の基端開口に整合状態で取り付けられる上下方向に貫通した円筒形状の基端ケース部113と、中間ケース部111の先端開口に整合状態で取り付けられて基端側のみが開口したシャーレ形状の先端ケース部112(蓋)と、を備え、各ケース部111、112、113は比較的硬質のプラスチックから構成されている。
中間ケース部111の基端開口と先端開口にはそれぞれ基端ケース部113と先端ケース部112の周縁部が整合した状態で組み付けられる。中間ケース部111に対する基端ケース部113の固定は、例えば基端ケース部113の先端側開口の周縁に沿って設けた係止凸片113aを中間ケース部111の基端開口側に設けた図示しない被係止凹所に嵌合させることによって行う。なお、中間ケース部111に対する先端ケース部112の固定構造も同様とする。
【0021】
ケーシング110(中間ケース部111)に設けたくびれ部111aは、ケーシング110を人手によって把持したときに、親指の腹が接する部分である。
図5に示すように、くびれ部111aには、駆動装置100の使用時に操作される4つの円形スイッチ114(114a乃至114d)が軸方向に間隔を空けて配置されている。2つの円形スイッチ114a、114bがくびれ部111aの底111bよりも先端側に配置され、2つの円形スイッチ114c、114dがくびれ部111aの底111bよりも基端側に配置されている。
【0022】
本実施形態において、くびれ部111aの底111bよりも先端側に配置された2つの円形スイッチ114a、114bは精子採取器200内への負圧の導入に係る操作をするときに使用され、基端側に配置された2つの円形スイッチ114c、114dは精子採取器200の回転に係る操作をするときに使用される。具体的には、軸方向の最も先端に配置された円形スイッチ114aはバキュームスイッチであり、ポンプ132の電源をオンオフしたり、バキュームモード(後述)を切り替えるときに操作される。バキュームスイッチ114aよりも基端側に配置された円形スイッチ114bはリリーススイッチ(バルブスイッチ)であり、ポンプ132の動作中に電磁バルブ133を開放してペニスに付与される刺激を弱めるときに操作される。
くびれ部111aの底111bを挟んでリリーススイッチ114bよりも基端側に配置された円形スイッチ114cはマニュアルスイッチであり、モータ131への通電をオンオフしたり、精子採取器200の回転速度を維持するときに操作される。マニュアルスイッチ114cよりも基端側に配置された円形スイッチ114dはオートスイッチであり、モータ131への通電をオンオフしたり、オートモード(後述)を切り替えるときに操作される。
【0023】
ケーシング110において、バキュームスイッチ114aよりも先端側にはポンプ132がオン状態であることを発光によって示す発光表示部115(第1発光表示部115a)が設けられており、オートスイッチ114dよりも基端側にはモータ131がオン状態であることを発光によって示す発光表示部115(第2発光表示部115b)が設けられている。
これらの発光表示部115a、115bは、例えばLED115cと導光部材115dの組(図7を参照)によって作製されており、発光色は例えば緑色であるが別の色であってもよい。
【0024】
<ケーシング110の内部構成>
次にケーシング110の内部構成について説明する。図7は、駆動装置100の縦断面図である。
図7に示すように、ケーシング110の内部空間には駆動機構DMが収納され、ケーシング110の基端開口部110a’内には保持部120が回転自在(且つ、脱落不能)に組み込まれている。
前述したように、保持部120は、精子採取器200の先部204aに整合した凹状内面を有するカップ形状の回転ホルダ121と、回転ホルダ121の内面中心部に取り付けられたホルダ側パッキン122と、回転ホルダ121の内周面の基端部寄り位置に取り付けられた略円筒形状の係止リング123と、を備えている。駆動機構DMは、上述したように、回転ホルダ121に保持した精子採取器200を軸中心に回転させ、且つ通気孔204cを通じて容器202内に負圧を導入する手段である。
【0025】
<駆動機構DM>
図6、及び図7に示すように、駆動機構DMは、ケーシング110の内部空間における中央部に回転軸131bを基端側に向けて固定配置されたモータ131と、モータ131よりも先端側に固定配置され、且つ負圧を生成するポンプ132と、モータ131と円形スイッチ114との間に固定配置された電磁バルブ133と、モータ131の回転軸131bと保持部120(回転ホルダ121)との間を連結してモータ131の回転を保持部120に伝達し、且つ基端に設けた基端開口151aと外周面に設けた外周面開口151bとの間をシャフト内流路151cによって連通した管体であるシャフト151と、シャフト151を回転自在に支持し、且つ外周面開口151bの周りにポンプ132が生成した負圧が導入される調圧空間RSを形成する軸受け部137と、を主な構成要素として備えている。
これらの他に、駆動機構DMは、モータ131の近傍に配置されて電源を供給するバッテリー134と、コントローラ135a(制御手段)やジャイロセンサ135b(図9を参照)が実装され、各円形スイッチ114に対する操作や駆動機構DMに対する回動操作に基づいて、モータ131、ポンプ132、及び電磁バルブ133の動作を制御する主基板135と、各円形スイッチ114(114a乃至114d)に対応して設けられて各円形スイッチ114に対する操作に基づいてオンオフ動作するスイッチ素子136a乃至136d、及びLED115c等の発光素子が実装されたスイッチ基板136と、を備えている。
【0026】
モータ131、電磁バルブ133、バッテリー134、及び主基板135は、内部ケース本体141に取り付けられている。内部ケース本体141の先端には内部ケース蓋体142が取り付けられており、ポンプ132はポンプホルダ143によって内部ケース蓋体142に取り付けられている。
モータ131は、モータ本体131aと、モータ本体131aの基端から突設された回転軸131bと、を備えている。モータ本体131aの基端部はモータホルダ145を介して内部ベース部材144に固定されている。回転軸131bは、シャフト151の先端に設けた取り付け孔151dに嵌合され、モータカラー152によって固定されてシャフト151と一体に回転する。
【0027】
シャフト151の基端側部分は、カップリング146を介して回転ホルダ121の先端に固定されている。シャフト151の基端は回転ホルダ121の先端を貫通しており、基端開口151aがホルダ側パッキン122の内周側空所122aに臨んでいる。シャフト151の基端にはOリング151eが取り付けられており、回転ホルダ121とシャフト151とを気密状態で封止している。シャフト151の軸方向中間位置における外周面には外周面開口151bが形成されており、基端開口151aと外周面開口151bとの間をシャフト内流路151cによって連通している。
シャフト151の周囲には、シャフト151を回転自在に支持し、且つ外周面開口151bの周りに調圧空間RSを形成する軸受け部137を設けている。従って、軸受け部137の調圧空間RSとホルダ側パッキン122の内周側空所122aとの間は、シャフト内流路151cによって連通されている。なお、軸受け部137については後で詳しく説明する。
調圧空間RSとポンプ132との間は、ポンプ用チューブ147を介して連通されている。従って、ポンプ132が生成した負圧は、ポンプ用チューブ147を通じて調圧空間RSに導入される。同様に、調圧空間RSと電磁バルブ133との間は、バルブ用チューブ148を介して連通されている。上述したように、電磁バルブ133は、ケーシング110の内部空間(大気圧)に配置され、且つバルブ用チューブ148の流路とケーシング110の内部空間とを連通したり遮断する。従って、電磁バルブ133の開放時において、調圧空間RSには、バルブ用チューブ148を通じて大気圧が導入される。
【0028】
<軸受け部137>
図8は、駆動装置100の軸受け部137周辺の部分拡大断面図である。
図6、及び図8に示すように、軸受け部137は、シャフト151が挿通されるスペーサ153と、スペーサ153内に配置されたベアリングカラー154と、シャフト151とスペーサ153との間をシャフト151の回転は許容しつつ気密に封止する一対のXリング155(155a、155b)と、シャフト151が内側空所に挿入され、基端側のXリング155aとカップリング146との間、及び先端側のXリング155bとモータカラー152との間のそれぞれに配置された一対のベアリング156と、スペーサ153、及び基端側のベアリング156を基端側から保持する基端側ベアリングホルダ157と、スペーサ153、及び先端側のベアリング156を先端側から保持する先端側ベアリングホルダ158と、を備えている。
【0029】
スペーサ153は、軸方向両端が開放されてシャフト151が挿通される円筒形状のスペーサ本体153aと、スペーサ本体153aの外周面に設けられて内部流路がスペーサ本体153aの内側空所と連通した一対の接続パイプ153b、153cと、を備えており、例えば硬質のプラスチックによって作製されている。
スペーサ本体153aは、内径がシャフト151の外径よりも大きな円筒形状をしているが、角筒形状であってもよい。接続パイプ153b、153cは、直径がスペーサ本体153aの軸方向高さよりも小さな円筒形状をしており、ポンプ用チューブ147の端部が接続されるポンプ用接続パイプ153bと、バルブ用チューブ148の端部が接続されるバルブ用接続パイプ153cと、を備えている。本実施形態において、バルブ用接続パイプ153cは、ポンプ用接続パイプ153bから軸中心に180度回転した位置に設けられているが、この角度に限定されない。
ベアリングカラー154は、一対のXリング155a、155bがスペーサ本体153aの軸方向両端に位置付けられるように、スペーサ本体153aの内側空所内に配置される部材であり、例えば一対のリング部154a、及びこれら一対のリング部154a同士の間隔を空けるための脚部154bを備えている。
【0030】
Xリング155(155a、155b)は、断面がX形状をしたリング体であり、例えばゴム等の気密性を有する弾性素材によって作製されている。Xリング155は、スペーサ本体153aの基端開口151aに装着された基端側Xリング155a(一端側パッキン)と、スペーサ本体153aの先端開口に装着された先端側Xリング155b(他端側パッキン)と、を備えている。
本実施形態では、スペーサ本体153aの内部空間にベアリングカラー154を配置しているため、基端側Xリング155aと先端側Xリング155bとを軸方向に間隔を空けて配置できる。これにより、各Xリング155a、155bが各接続パイプ153b、153cの内部流路を塞いでしまう不都合を抑制している。
ベアリング156は、シャフト151を回転自在に軸支する部材であり、基端側ベアリングホルダ157と先端側ベアリングホルダ158のそれぞれに保持されている。
【0031】
調圧空間RSは、スペーサ本体153a、基端側Xリング155a、及び先端側Xリング155bによって形成されている。シャフト151の外周面開口151bは、シャフト151が回転しても調圧空間RS内に位置付けられるため、シャフト151の回転時において調圧空間RSとホルダ側パッキン122の内周側空所122aとは、外周面開口151b、シャフト内流路151c、及び基端開口151aを通じて連通される。
前述したように、ポンプ用接続パイプ153bにはポンプ用チューブ147が接続されており、ポンプ132が生成した負圧は調圧空間RSに導入される。同様に、バルブ用接続パイプ153cにはバルブ用チューブ148が接続されており、電磁バルブ133の開放時において大気圧が調圧空間RSに導入される。
【0032】
保持部120(回転ホルダ121)に精子採取器200の先部204aを保持させると、シャフト151の基端開口151aと精子採取器200の通気孔204cとの間が外部とは気密状態で連通される。従って、ポンプ132を動作させることにより、ポンプ132が生成した負圧を精子採取器200の容器202内に導入することができる。これにより、負圧を精子採取器200の容器202内に導入しないときと比較して、ペニスに与える刺激を強くすることができる。同様に、ポンプ132の動作中に電磁バルブ133を開放させると、電磁バルブ133を閉止した状態でポンプ132を動作させたときと比較して、ペニスとコア部材210との密着度合いが弱くなる。
このように、本実施形態の駆動装置100は、モータ131、ポンプ132、及び電磁バルブ133により、ペニスに与える刺激を調整することができる。
【0033】
<制御系の構成>
図9は駆動装置100の制御系の構成を示すブロック図、図10(a)乃至(e)はバキュームスイッチ114aの操作と制御内容を説明する図、リリーススイッチ114bの操作と制御内容を説明する図、マニュアルスイッチ114cの操作と制御内容を説明する図、ジャイロセンサ135bの検出信号に基づく駆動装置100への操作と精子採取器200の制御内容を説明する図、オートスイッチ114dの操作と制御内容を説明する図、図11は精子採取システム1の使用方法を説明する斜視図である。
【0034】
図9に示すように、主基板135には、駆動装置100の制御の中心となるコントローラ135aと、ケーシング110の回動時における角速度に応じた検知信号を出力するジャイロセンサ135b(角速度センサ)と、が設けられている。
また、主基板135には、バキュームスイッチ114a(スイッチ素子136a)、リリーススイッチ114b(スイッチ素子136b)、マニュアルスイッチ114c(スイッチ素子136c)、オートスイッチ114d(スイッチ素子136d)、ポンプ132、電磁バルブ133、及びモータ131が電気的に接続されている。また、図示は省略したが、主基板135にはLED115cも電気的に接続されている。
コントローラ135aは、各スイッチ114a乃至114dに対する操作やジャイロセンサ135bからの検知信号に基づいて、ポンプ132、電磁バルブ133、及びモータ131の動作を制御する。コントローラ135aは、例えばプログラマブルコントローラ、ハードウェアロジック、或いはCPUとメモリのセットの何れか、又は組み合わせによって構成される。ジャイロセンサ135bは、ケーシング110の角速度を検知し、検知信号をコントローラ135aに出力する。
以下、各スイッチ114a乃至114dに対する操作とコントローラ135aによる制御内容との関係について説明する。
【0035】
<バキュームスイッチ114a>
バキュームスイッチ114aは、ポンプ132に対する電源をオンオフしたり、ポンプ132の動作モード(以下、バキュームモードという)を切り替えるときに操作される。
図10(a)に示すように、バキュームスイッチ114aを2秒間以上に亘って長押しすると、ポンプ132に対する電源のオンオフができる。例えば、コントローラ135aは、電源オフ状態のときにバキュームスイッチ114aが長押しされると電源オン状態に移行し、バッテリー134からの電力をポンプ132に供給できるようにする。同様に、コントローラ135aは、電源オン状態のときにバキュームスイッチ114aが長押しされると電源オフ状態に移行して、バッテリー134からポンプ132への電力供給を停止させる。
【0036】
また、電源オン状態のときに、バキュームスイッチ114aを2秒未満に亘って短押しすると、バキュームモードが切り替えられる。
例えば、コントローラ135aは、電源オン状態になった直後において、バキュームモード「Lo」に設定する。バキュームモード「Lo」において、ポンプ132は弱い負圧を生成し、この負圧が精子採取器200の容器202内に導入される。
コントローラ135aは、バキュームモード「Lo」の状態からバキュームスイッチ114aが1回短押しされると、コントローラ135aは、バキュームモード「Hi」に切り替える。バキュームモード「Hi」において、ポンプ132は強い負圧を生成し、この負圧が精子採取器200の容器202内に導入される。
【0037】
バキュームモード「Hi」の状態からバキュームスイッチ114aが1回短押しされると、コントローラ135aは、バキュームモード「P1」に切り替える。バキュームモード「P1」において、ポンプ132は予め決められたパターンで動作する。例えば、ポンプ132は、動作状態と停止状態とを規定の第一周期で繰り返す。これにより、ポンプ132は、第一周期で負圧を繰り返して生成し、この負圧が精子採取器200の容器202内に導入される。
バキュームモード「P1」の状態からバキュームスイッチ114aが1回短押しされると、コントローラ135aは、バキュームモード「P2」に切り替える。同様に、コントローラ135aは、バキュームスイッチ114aが1回短押しされる毎に、バキュームモード「P3」、及びバキュームモード「P4」に切り替える。
バキュームモード「P2」乃至「P4」において、ポンプ132は予め決められたパターンで動作する。例えば、ポンプ132は、バキュームモード「P2」において動作状態と停止状態とを第一周期よりも短い第二周期で繰り返し、バキュームモード「P3」において動作状態と停止状態とを第二周期よりも短い第三周期で繰り返し、バキュームモード「P4」において動作状態と停止状態とを第三周期よりも短い第四周期で繰り返す。
これにより、ポンプ132は、第二周期乃至第四周期で負圧を繰り返し生成し、この負圧が精子採取器200の容器202内に導入される。
【0038】
<リリーススイッチ114b>
リリーススイッチ114bは、ポンプ132の動作中に電磁バルブ133を開放させるときに操作される。
図10(b)に示すように、リリーススイッチ114bに対する操作を行わない非操作状態(オフ状態)では電磁バルブ133は閉止される。前述したように、電磁バルブ133の閉止状態では、軸受け部137の調圧空間RSに大気圧が導入されないため、ポンプ132が生成した負圧が調圧空間RSを通じて精子採取器200の容器202内に導入される。
リリーススイッチ114bに対して操作を行った操作状態(オン状態)では電磁バルブ133は開放される。前述したように、電磁バルブ133の開放状態では、軸受け部137の調圧空間RSに大気圧が導入されるため、電磁バルブ133を閉止してポンプ132を動作させた時と比較して精子採取器200の容器202内に導入される負圧が弱まる。
このように、ポンプ132の動作中にリリーススイッチ114bを操作することにより、容器202内に導入される負圧が弱まることから、ペニスに付与される刺激を調整できる。
【0039】
本実施形態の駆動装置100において、リリーススイッチ114bはペニスに付与される刺激を調整するときに操作するため、バキュームスイッチ114aと比較して操作頻度が多くなることを想定している。
例えば、ポンプ132に対する電源のオンオフ操作は駆動装置100の使用開始時と終了時に行われるものであり、バキュームモードの切り替え操作は使用するバキュームモードを決めてしまえばモードを変更するまで行われない。一方、リリーススイッチ114bに対する操作は、ペニスに付与される刺激に強弱をつけたいときに行われるため、駆動装置100の使用中において多数回行われることが想定されている。
従って、リリーススイッチ114bは、バキュームスイッチ114aと比較して操作頻度が多くなる。
【0040】
図11に示すように、本実施形態では、リリーススイッチ114bをバキュームスイッチ114aよりもくびれ部111aの底111bに近い場所に設けている。
駆動装置100を人手によって把持したときの親指の腹はくびれ部111aの底111bに位置することが想定されるため、バキュームスイッチ114aよりも使用頻度の高いリリーススイッチ114bをバキュームスイッチ114aよりもくびれ部111aの底111bに近い場所に設けることにより、リリーススイッチ114bの操作時における親指の移動量を短くすることができ、且つバキュームスイッチ114aに対する誤操作を抑制できる。
【0041】
<マニュアルスイッチ114c>
マニュアルスイッチ114cは、モータ131に対する電源をオンオフしたり、モータ131(精子採取器200)の回転モードを変更するときに操作される。
図10(c)に示すように、マニュアルスイッチ114cを2秒間以上に亘って長押しすると、モータ131に対する電源のオンオフができる。例えば、コントローラ135aは、電源オフ状態のときにマニュアルスイッチ114cが長押しされると電源オン状態に移行し、バッテリー134からの電力をモータ131に供給できるようにする。同様に、コントローラ135aは、電源オン状態のときにマニュアルスイッチ114cが長押しされると電源オフ状態に移行して、バッテリー134からモータ131への電力供給を停止させる。
【0042】
また、電源オン状態のときに、マニュアルスイッチ114cを2秒未満に亘って短押しすると、回転モードが切り替えられる。
回転モードには、一定の回転速度に維持されて駆動装置100(ケーシング110)の回動方向に対応して精子採取器200(モータ131)の回転方向を変更する維持モードと、駆動装置100の回動方向、及び回動角度の大きさに対応して精子採取器200の回転方向、及び回転速度を変更する可変モードと、がある。
コントローラ135aは、ジャイロセンサ135bの検知信号に基づいて、駆動装置100の回動方向、及び回動角度を検知する。例えば、コントローラ135aは、マニュアルスイッチ114cが長押しされて電源オン状態に移行した時点でジャイロセンサ135bの検知信号に基づく駆動装置100の回動角度を初期原点として取得し、駆動装置100が初期原点から一方向(例えば図11に符号Rで示す右方向)、又は他方向(例えば図11に符号Lで示す左方向)へ回動した場合に、初期原点からの回動方向を傾斜方向として取得し、回動後の初期原点との角度差を傾斜角度(回動角度)として取得する。
【0043】
本実施形態において、コントローラ135aは、マニュアルスイッチ114cに対する長押しによって電源オン状態になると可変モードを設定する。
図10(d)に示すように、可変モードにおいてコントローラ135aは、駆動装置100の傾斜方向が右方向であったときにモータ131を制御して精子採取器200を右方向に回転させ、駆動装置100の傾斜方向が左方向であったときにモータ131を制御して精子採取器200を左方向に回転させる。さらに、コントローラ135aは、傾斜角度が基準範囲内(例えば初期原点から±5度範囲内)にあるときは、精子採取器200の回転を停止させ、傾斜角度が基準範囲を超えたときには傾斜角度が大きくなるほどに精子採取器200の回転速度を上昇させる。
【0044】
コントローラ135aは、可変モードにおいてマニュアルスイッチ114cが短押しされると維持モードに移行し、短押しされた時点における回転速度を維持する。コントローラ135aは、維持モードにおいて、ジャイロセンサ135bからの検知信号を取得し、駆動装置100の傾斜角度に応じて精子採取器200の回転方向を定める。
例えば、図11に示すように、コントローラ135aは、駆動装置100の傾斜方向が右方向Rであったときに精子採取器200を右方向RCに回転させ、駆動装置100の傾斜方向が左方向Lであったときに精子採取器200を左方向LCに回転させる。
なお、コントローラ135aは、維持モードにおいてマニュアルスイッチ114cが短押しされると可変モードに移行する。
【0045】
<オートスイッチ114d>
オートスイッチ114dは、モータ131に対する電源をオンオフしたり、モータ131の動作モード(以下、オートモードという)を切り替えるときに操作される。
図10(e)に示すように、オートスイッチ114dを2秒間以上に亘って長押しすると、マニュアルスイッチ114cを長押ししたときと同様に、モータ131に対する電源のオンオフができる。
本実施形態において、コントローラ135aは、オートスイッチ114dに対する長押しによって電源オン状態になるとオートモードを設定する。オートモードにおいて、コントローラ135aは、ジャイロセンサ135bからの検知信号を使用せずに、予め定められた動作内容(回転方向、回転速度、及び回転時間の組み合わせ)に従って精子採取器200を回転させる。
【0046】
オートモードにおいて、コントローラ135aは、オートスイッチ114dが短押しされる毎にオートモードを切り替える。本実施形態において、オートモードは「P1」乃至「P4」の4種類が定められている。各オートモード「P1」乃至「P4」は、精子採取器200の回転方向、回転速度、及び回転時間の組み合わせが互いに相違しており、精子採取器200内に挿入されたペニスに対して異なった刺激を付与できる。
本実施形態において、コントローラ135aは、電源オン状態になるとオートモード「P1」を設定する。コントローラ135aは、オートスイッチ114dが短押しされる毎に、オートモード「P2」、オートモード「P3」、及びオートモード「P4」を順に切り替え、さらにオートモード「P4」においてオートスイッチ114dが短押しされるとオートモード「P1」に切り替える。
【0047】
オートモードにおいて、駆動装置100は、予め定められた動作内容に従って精子採取器200を回転させることから、使用者に対して特別な操作を要求することなくペニスに対して様々な種類の刺激を付与することができる。
【0048】
<変形例>
上述の実施形態にて例示した駆動機構DM(記負圧導入回転部)は、モータ131、ポンプ132、シャフト151、及び軸受け部137を備えていたが、保持部120に保持した精子採取器200を軸中心に回転させ、且つ精子採取器200の容器202に設けた通気孔204cを通じて容器202内に負圧を導入することができれば、他の構成を採ってもよい。
保持部120は、精子採取器200(容器本体204)の先部204aを着脱自在に保持する構成であったが、容器本体204における先部204a以外の部位を着脱自在に保持する構成にしてもよい。
【0049】
軸受け部137は、シャフト151が挿通されるスペーサ153と、スペーサ153内に配置されたベアリングカラー154と、シャフト151とスペーサ153との間をシャフト151の回転は許容しつつ気密に封止する一対のXリング155(155a、155b)と、を備え、スペーサ本体153aと一対のXリング155とにより調圧空間RSを形成したが、調圧空間RSを形成することができれば他の構成を採ってもよい。
【0050】
前述の実施形態では、電磁バルブ133によって調圧空間RSに大気圧を導入する構成を採っていたが、容器202内に導入される負圧を弱めることができれば他の構成を採ってもよい。例えば、ポンプ132を制御して生成する負圧を弱めてもよい。
【0051】
[本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ]
<第一の実施態様>
本態様は、弾性素材によって構成されペニスの挿入空所214を内部に設けたコア部材210、及び基端に開口204bを備え、先部に通気孔204cを備えた中空部材によって構成され、コア部材210を内側空間に収容する容器202(容器本体204)を備えた精子採取器200を着脱自在に保持し、該精子採取器200を保持した状態で回転させる駆動装置100であって、精子採取器200を着脱自在に保持する保持部120と、保持部120により保持した精子採取器200を軸中心に回転させ、且つ通気孔204cを通じて容器202内に負圧を導入する駆動機構DMと、を備えたことを特徴とする。
本態様に係る駆動装置100によれば、精子採取器200を用いて精子を効率よく採取することができる。
【0052】
<第二の実施態様>
本態様に係る駆動装置100において、駆動機構(負圧導入回転部)DMは、モータ131と、負圧を生成するポンプ132と、モータ131によって軸中心に回転され、軸方向一端に設けた基端開口151aと外周面に設けた外周面開口151bとの間をシャフト内流路151cによって連通したシャフト151と、シャフト151を回転自在に支持し、且つ外周面開口151bの周りにポンプ132が生成した負圧が導入される調圧空間RSを形成する軸受け部137と、を備え、保持部120は、シャフト151の基端部が固定されてシャフト151とともに回転し、且つ精子採取器200の先部204aを着脱自在に保持する回転ホルダ121と、回転ホルダ121が精子採取器200の先部204aを保持したときに、シャフト151の基端開口151aと精子採取器200の通気孔204cとの間を気密状態で連通するホルダ側パッキン122と、を備えたことを特徴とする。
本態様に係る駆動装置100によれば、簡単な構成によって保持部120に保持した精子採取器200を軸中心に回転させ、且つ通気孔204cを通じて精子採取器200の容器202内に負圧を導入することができる。
【0053】
<第三の実施態様>
本態様に係る駆動装置100において、軸受け部137は、軸方向両端が開放されてシャフト151が挿通される筒形状のスペーサ本体153a、及びスペーサ本体153aの外周面に設けられて内部流路がスペーサ本体153aの内側空所と連通した接続パイプ153b、153cを有するスペーサ153と、スペーサ本体153aの基端開口151aに装着され、シャフト151とスペーサ本体153aとの間を、シャフト151の回転は許容しつつ気密に封止する基端側Xリング155a(一端側パッキン)と、スペーサ本体153aの先端開口に装着され、シャフト151とスペーサ本体153aとの間を、シャフト151の回転は許容しつつ気密に封止する先端側Xリング155b(他端側パッキン)と、を備え、調圧空間RSは、スペーサ本体153a、基端側Xリング155a、及び先端側Xリング155bによって形成され、ポンプ132は、接続パイプ153b、153cに接続されることを特徴とする。
本態様に係る駆動装置100によれば、調圧空間RSに対して負圧を導入することにより、精子採取器200の容器202内に負圧を導入することができる。
【0054】
<第四の実施態様>
本態様に係る駆動装置100において、駆動機構(負圧導入回転部)DMは、開放時において調圧空間RSに大気圧を導入する電磁バルブ133を備えたことを特徴とする。
本態様に係る駆動装置100によれば、調圧空間RSに対して大気圧を導入することにより、精子採取器200の容器202内に導入する負圧を弱めることができる。
【0055】
<第五の実施態様>
本態様に係る精子採取システム1は、弾性素材によって構成されペニスの挿入空所214を内部に設けたコア部材210、及び基端に開口204bを備え、先部に通気孔204cを備えた中空部材によって構成され、コア部材210を内側空間に収容する容器202(容器本体204)を備えた精子採取器200と、精子採取器200の先部204aを着脱自在に保持する保持部120と、保持部120に保持した精子採取器200を軸中心に回転させ、且つ通気孔204cを通じて精子採取器200の容器202内に負圧を導入する駆動機構(負圧導入回転部)DMと、を備えた駆動装置100と、を具備することを特徴とする。
本態様に係る精子採取システム1によれば、精子を効率よく採取することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…精子採取システム、100…駆動装置、110…ケーシング、110a…基端、110a’…基端開口部、111…中間ケース部、111a…くびれ部、111b…くびれ部の底、112…先端ケース部、113…基端ケース部、113a…係止凸片、114…円形スイッチ、114a…バキュームスイッチ、114b…リリーススイッチ、114c…マニュアルスイッチ、114d…オートスイッチ、115…発光表示部、115a…第1発光表示部、115b…第2発光表示部、115c…LED、115d…導光部材、120…保持部、121…回転ホルダ、122…ホルダ側パッキン、122a…内周側空所、123…係止リング、131…モータ、131a…モータ本体、131b…回転軸、132…ポンプ、133…電磁バルブ、134…バッテリー、135…主基板、136…スイッチ基板、137…軸受け部、141…内部ケース本体、142…内部ケース蓋体、143…ポンプホルダ、144…内部ベース部材、145…モータホルダ、147…ポンプ用チューブ、148…バルブ用チューブ、149…電源プラグ、151…シャフト、151a…基端開口(一端開口)、151b…外周面開口、151c…シャフト内流路、151d…取り付け孔、151e…Oリング、152…モータカラー、153…スペーサ、153a…スペーサ本体、153b…ポンプ用接続パイプ、153c…バルブ用接続パイプ、154…ベアリングカラー、154a…リング部、154b…脚部、155…Xリング、155a…基端側Xリング、155b…先端側Xリング、156…ベアリング、157…基端側ベアリングホルダ、158…先端側ベアリングホルダ、200…精子採取器、202…容器、204…容器本体、204a…先部、204b…開口、204c…通気孔、206…キャップ、210…コア部材、211…フランジ部、212…ペニスの挿入口、213…コア本体、214…挿入空所、220…クッション材、DM…駆動機構(負圧導入回転部)、RS…調圧空間
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図11