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特開2022-69310偏光解消素子及びその製造方法ならびに該偏光解消素子を備えるローパスフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069310
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】偏光解消素子及びその製造方法ならびに該偏光解消素子を備えるローパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220428BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B27/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178424
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】酒井 丈也
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
【Fターム(参考)】
2H149AA17
2H149AA22
2H149AA25
2H149AB01
2H149AB23
2H149AB26
2H149BA06
2H149BA22
2H149BB28
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA12
2H149EA02
2H149EA10
2H149FA08W
2H149FA24W
2H149FA27W
2H149FA33W
2H149FA40W
2H199AB12
2H199AB23
2H199AB33
2H199AB47
2H199AB58
(57)【要約】
【課題】簡便かつ低いコストで、光学特性に優れた偏光解消素子およびこれを用いたローパスフィルタを提供する。
【解決手段】
液晶性材料からなるフィルムを有し、前記フィルムの光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する異方性構造を有し、前記フィルムの面内における、複屈折の大きさが一様である、偏光回折格子からなる、偏光解消素子とし、二枚の偏光解消素子を格子ベクトルが直交するように配置し、その間に複屈折を有する光学素子を挟んでローパスフィルタを構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性材料からなるフィルムを有し、
前記フィルムの光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する異方性構造を有し、
前記フィルムの面内における、複屈折の大きさが一様である、
偏光回折格子からなる、
偏光解消素子。
【請求項2】
請求項1に記載の偏光解消素子からなる第1の素子および第2の素子と、光学軸の方位が一定であり、複屈折を有する第3の素子とを備え、
前記第1の素子と第2の素子は、偏光回折格子の格子ベクトルが互いに直交するように配置されており、前記第3の素子は、前記第1の素子と第2の素子の間に配置されている、
光学的ローパスフィルタ。
【請求項3】
請求項1に記載の偏光解消素子の製造方法であって、
光配向性を有する液晶性材料を基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に左円偏光と右円偏光を照射して干渉露光する工程と、
露光後の前記塗膜を加熱・冷却して前記液晶性材料の配向を誘起する工程と、を含む、偏光解消素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の偏光解消素子の製造方法であって、
光配向性を有する液晶性材料を基材上に塗布し、第1の塗膜を形成する工程と、
前記第1の塗膜に左円偏光と右円偏光を照射して干渉露光し、前記第1の塗膜の光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する液晶配向性を付与する工程と、
干渉露光後の前記第1の塗膜に、重合性液晶化合物を塗布し、第2の塗膜を形成する工程と、
前記第1の塗膜および第2の塗膜を加熱・冷却後、非偏光の紫外線を照射することにより、前記重合性液晶化合物を重合させ、前記第2の塗膜に、前記第1の塗膜と同じ液晶配向性を付与する工程とを含む、
偏光解消素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光回折格子を利用した偏光解消素子及びその製造方法に関し、さらにその偏光解消素子を備える光学的ローパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光レーザーを光源とするプロジェクターにおいて、蛍光体を励起する光源部、照明光学系において投射画像の光量分布に偏りが生じ、輝度ムラや色ムラの発生の原因となることがある。このような光量分布の偏り、色ムラの改善には、偏光解消素子が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1(特許第6288739号明細書)には、プロジェクターに用いる偏光解消素子として、クサビ形の2つの水晶板を光学軸が45度の角度をなすように貼りあわせることにより、入射した光の偏光状態を変化させて、振動方向がランダムに変化する光を作り出す偏光解消部が記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2018-205431号公報)には、遅相軸の設定の異なる1/4位相差板を使用し、異なる偏光作用を与える微小な領域を2次元的に交互、あるいは不規則に配置した偏光解消板が提案されている。
【0005】
偏光作用の異なる部位を液晶分子の配向制御により形成することも提案されている。特許文献3(特許第4333914号明細書)には、複屈折誘起材料重合体に、直線偏光成分を含む光を照射して、分子配向方向が90°異なる周期的な分子配向構造を付与して偏光回折素子を製造することが記載されている。
【0006】
偏光解消素子の用途の一つには、ローパスフィルタがある。CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子、およびそれらを用いたディジタルカメラなどの撮像装置においては、高空間周波数成分に由来するモアレ状の擬似信号を減衰させるために、光学的ローパスフィルタが用いられる。
【0007】
このような光学ローパスフィルタには、水晶複屈折板同士、あるいは水晶複屈折板と水晶位相板を複数枚接着剤で貼り合わされたものがある。特許文献4(特開2016-45432号公報)には、水晶などからなる二枚の複屈折板により1/4波長板を挟持した構成を有する光学的ローパスフィルタが記載されている。
【0008】
回折格子の回折現象を利用した位相格子型のローパスフィルタも提案されている。例えば、特許文献5(特開2006-184890号公報)には、パルスレーザー光により透明材料内部を加工し、二次元的または三次元的に屈折率の異なる領域を配列させることにより形成された光学的ローパスフィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6288739号明細書
【特許文献2】特開2018-205431号公報
【特許文献3】特許第4333914号明細書
【特許文献4】特開2016-45432号公報
【特許文献5】特開2006-184890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の偏光解消素子の構成では、水晶をクサビ形に加工し、貼合する必要がある。そのため、製造工程が煩雑であり、製造コスト抑制も難しい。特許文献2に記載の素子では、位相差をパターニングすることにより、偏光解消機能を発揮させており、特許文献3に記載の素子でも、分子配向方向が不連続的に変化するが、これらの場合、パターンの境界付近では(不連続な)2つの領域での屈折率の差が生じるため、散乱等の光学的な問題が起きる。
【0011】
特許文献4に記載の水晶板を利用した光学的ローパスフィルタでは、精度よく研磨した水晶複屈折板と位相差板を複数貼り合わせる必要がある。そのため、薄型の素子を得ることは難しく、また製造コストを抑えることが難しい。また、特許文献5に記載されたような、従来の回折格子を利用した光学的ローパスフィルタでは、高次の回折光が生じるためローパス効果が低下し、全体として解像度を低下させてしまうなどの問題があった。
【0012】
本発明は、簡便な手法で製造でき、散乱の原因となる屈折率の不連続性もなく、薄型化も容易な偏光解消素子とその製造方法、ならびにそのような偏光解消素子を利用した光学的ローパスフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の構成は、偏光解消素子であって、
液晶性材料からなるフィルムを有し、
前記フィルムの光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する異方性構造を有し、
前記フィルムの面内における、複屈折の大きさが一様である、
偏光回折格子からなる、
偏光解消素子である。
【0014】
上記構成の偏光解消素子は、液晶性材料からなるフィルムを用いることから容易に薄型化でき、複屈折の大きさが一様となるフィルムにおいて、光学軸が連続的に回転する光学構造を備えることから、光学特性の不連続な界面の存在による散乱等の問題は生じない。
【0015】
本発明の第2の構成は、光学的ローパスフィルタであって、上記の偏光解消素子からなる第1の素子および第2の素子と、光学軸の方位が一定であり、複屈折を有する第3の素子とを備え、
前記第1の素子と第2の素子は、偏光回折格子の格子ベクトルが互いに直交するように配置されており、前記第3の素子は、前記第1の素子と第2の素子の間に配置されている、
光学的ローパスフィルタである。
【0016】
上記構成の光学的ローパスフィルタは、本発明の偏光解消素子を用いることから薄型化が容易であり、また0次(非回折)や高次の回折光の強度を抑え、モアレの解消などで優れた効果を得ることができる。
【0017】
本発明の第3の構成は、上記偏光解消素子の製造方法であって、
光配向性を有する液晶性材料を基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に左円偏光と右円偏光を照射して干渉露光する工程と、
露光後の前記塗膜を加熱・冷却して前記液晶性材料の配向を誘起する工程と、を含む、偏光解消素子の製造方法である。
上記の方法により、本発明の偏光解消素子を簡便なプロセスで製造することができる。
【0018】
本発明の第4の構成は、上記偏光解消素子の製造方法であって、
光配向性を有する液晶性材料を基材上に塗布し、第1の塗膜を形成する工程と、
前記第1の塗膜に左円偏光と右円偏光を照射して干渉露光し、前記第1の塗膜の光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する液晶配向性を付与する工程と、
干渉露光後の前記第1の塗膜に、重合性液晶化合物を塗布し、第2の塗膜を形成する工程と、
前記第1の塗膜および第2の塗膜を加熱・冷却後、非偏光の紫外線を照射することにより、前記重合性液晶化合物を重合させ、前記第2の塗膜に、前記第1の塗膜と同じ液晶配向性を付与する工程とを含む、
偏光解消素子の製造方法である。
上記方法によれば、本発明の偏光解消素子をさらに、コストを抑えながら製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フィルム状の光学素子に簡便な方法で偏光解消機能を付与することができる。またこれを用いて薄型で光学特性に優れた光学的ローパスフィルタを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る偏光解消素子の光学軸の分布を示す概念図である。
図2】本発明の偏光解消素子を偏光顕微鏡で撮像したクロスニコル像である。
図3A】本発明の偏光解消素子の構成の一例を説明するための模式断面図である。
図3B】本発明の偏光解消素子の構成の他の例を説明するための模式断面図である。
図4】偏光解消素子の製造に使用し得る光学系の一例を示す概略上面図である。
図5】円偏光の干渉露光による液晶性分子の配向を説明するための模式図である。
図6】本発明の一実施形態にかかるローパスフィルタの構成を説明するための概略図である。
図7】本発明の実施例において、偏光解消素子の機能を検証するために用いた光学系の構成を示す概略上面図である。
図8】本発明の実施例において、図6に示す構成のローパスフィルタにより点像が分離される状態を示した写真である。
図9図8に示すローパスフィルタからの出射光の相対強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1実施形態
[偏光解消素子]
図1は、本発明の1実施形態に係る光学素子1の光学軸の方向の分布を説明するための概念図である。光学素子1は、光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する異方性構造を有する。すなわち、本発明の光学素子1は、光学軸が一定の方向となる略線状の部位が、等間隔で周期的に配列する格子状の光学構造を呈し、その間の部位では、光学軸が上記格子状構造の格子ベクトルの方向に向かって連続的に回転している。このような光学構造を有する光学素子1は、入射光を右円偏光と左円偏光として出射する偏光回折格子として機能する。
【0022】
図2は、実施例1で作製した光学素子1の偏光顕微鏡によるクロスニコル像であり、上記の格子状の光学構造により、消光位となる部分(暗い部分)が周期的に(縞状に)現れている。互いに直交する光学軸方向が消光位となるので、同じ光学軸方向の消光位は、一つおきの暗い部位として現れる。消光位に対し、光学軸が回転している部位は、クロスニコル像では明るく見えている。このような光学構造を有する光学素子1は、偏光解消機能を有する回折格子として機能する。以下、これを偏光解消素子1と記述する。
【0023】
上記の偏光解消素子1は、液晶性を有する材料に対し、基板上で、光学軸が同一方向となる部位が周期的に等間隔で格子状に現れ、その格子ベクトル方向に向かって光学軸が連続的に回転するように配向させ、その配向(以下、周期的配向性と記載する)を固定することによって実現することができる。このような製法で形成された偏光解消素子は全領域で屈折率が同じである。すなわち、屈折率が不連続な領域が生じることがないため、散乱などの光学的な問題は生じない。
【0024】
[偏光解消素子の製造方法]
上記の光学構造を有する偏光解消素子は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
[方法1]
基材上に光配向性を有する液晶性材料を塗布し、その塗膜上に右回り円偏光と、左回り円偏光を照射し、二光束の干渉露光によって生じた配向性を固定することにより、光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する光学的異方性構造を有する偏光解消素子を作製する方法。
[方法2]
基材上に光配向性を有する液晶性材料を塗布し、その塗膜上に右回り円偏光と、左回り円偏光を照射し、二光束の干渉露光によって配向膜を形成し、その配向膜上に重合性液晶組成物などを塗布して配向膜の配向性に従って配向させ、その配向性を固定することにより、光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する光学的異方性構造を有する偏光解消素子を作製する方法。
【0025】
図3A、Bは、上記の方法に従って製造される偏光解消素子1の模式的断面図である。なお、これらの図で各層の厚みは実際の厚み比を限定するものではない。方法1で製造された場合、偏光解消素子1は、図3Aに示すように、基材1a上に、光配向性の液晶性材料が周期的配向性を示す層1bが形成される。方法2で製造された場合には、図3Bに示すように、基材1a上に、光配向性の液晶性材料が周期的配向性を示す配向膜1cが形成され、その上に重合性液晶組成物が、配向膜の配向性に従って周期的配向性を示す層1dが形成される。
【0026】
偏光解消素子1は、基材1aを備えた状態で使用してもよい。その場合、基材1aは光学的等方体であってもよく、あるいは、偏光解消素子1と組み合わせる別の光学部材であってもよい。必要に応じ、基材1aを剥離したものを偏光解消素子1として使用してもよい。本発明の偏光解消素子1の厚みは特に限定されないが、薄型化が容易であり、例えば、基材1a上のフィルムの膜厚が1mm以下、好ましくは50μm以下でも、偏光解消素子1として使用することができる。例えば、図3Aに示す偏光解消素子1では、層1bを1~30μm程度の厚みとしてもよく、図3Bに示す偏光解消素子1では、層1cを0.06~10μm程度、層1dを1~30μm程度の厚みとしてもよい。基材1aの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0027】
[干渉露光装置]
図4は、上記の製造方法において、干渉露光のために使用し得る装置の光学系を示す上面図である。図中、M1~M4は光路の方向調整のために設けられる全反射ミラーであり、これらについては簡略化のため、説明を省略する。光源10を出光した光は、偏光ビームスプリッタ20によって第1の光路P1を通るp波と、第2の光路P2を通るs波とに分離される。
【0028】
p波は、第1の光路P1に配置された1/2波長板30および1/4波長板40を通過して左回り円偏光に変換され、拡大光学系50で拡大されてサンプルSに照射される。s波は第2の光路P2に配置された1/2波長板60および1/4波長板70を通過して右回り円偏光に変換され、拡大光学系80で拡大されてサンプルSに照射される。この左回り円偏光LCPと、右回り円偏光RCPの干渉露光に対し、光配向性を示す液晶分子が図5に模式的に示すように方位を変えながら周期的に配列し、本発明の偏光解消素子1の光学特性を獲得する。
【0029】
光源10としては、例えば、紫外線レーザー光源を使用してもよい。光学系の寸法は特に限定されない。光学系を適宜調整することにより、干渉露光により形成される干渉縞の間隔を調整し、偏光解消素子における格子ベクトルの大きさを調整することができる。例えば、干渉露光を行う際に、全反射ミラーM3、M4とサンプルSの距離を変化させることにより、格子ベクトルの大きさを変化させることができる。
【0030】
なお、光配向性を示す液晶性材料に周期的配向性を付与する方法であれば、上記以外の方法を用いること可能である。例えば、図3Aに示す層1bまたは、図3Bに示す層1cを、直線偏光レーザー光を用い、偏光方向を変えながら走査する方法や、偏光の方向、およびマスク位置を変えながら、直線偏光をマスク露光する方法によって形成してもよい。
【0031】
[光配向性を示す液晶性材料]
上記の製造方法で使用される、光配向性を示す液晶性材料としては、例えば、少なくとも一部の側鎖に感光性基を含み、下記式1から3のいずれか一つの化学式で示される側鎖を有する重合体で少なくとも構成される、液晶性材料を用いることができる。
【化1】
【化2】
【化3】
前記化学式1、2のそれぞれにおいて独立に、nは1~12、mは1~12の整数をそれぞれ示し、X、Yは、none、-COO、-OCO-、-N=N-、-C=C-または-C4-をそれぞれ表し、W、Wはシンナモイルオキシ基、カルコン基、シンナミリデンキ基、ビフェニルアクリロイルオキシ基、フリルアクリロイルオキシ基、ナフチルアクリロイルオキシ基もしくはそれらの誘導体を表すか、または、-H、-OH、もしくは-CNを表し、前記化学式3において、sは0または1を表し、tは1~3の整数を表し、RはH、アルキル基,アルキルオキシ基またはハロゲンを表す。
【0032】
上記の液晶性材料を用いれば、感光性基を有する側鎖が、左円偏LCPと右円偏光RCPの干渉露光により、図5に示すように、周期的に配向方向を変化させながら配向する。液晶性材料が感光性基を持たない側鎖を含んでいても、これらは加熱・冷却の過程で、近傍の配向した側鎖に従って配向し、周期的配向性がサンプルに固定される。具体的な工程は、以下の条件で行うことができる。
【0033】
[塗膜の形成]
上記の化学式1~3で表わされる側鎖を有するモノマー単位から形成される液晶性ポリマー、必要により、上記の液晶性ポリマーに低分子化合物、その他の成分(重合触媒など)を加え、これらを適当な溶剤に溶解して調製される塗布液を基材上に塗布し、溶剤を除去することにより液晶性ポリマー層を基材上に形成することができる。
【0034】
溶剤としては、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、トルエン、テトラヒドロフラン、o-ジクロロベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられ、これらの溶媒は、単独または混合して用いられる。
【0035】
支持体は、ガラス基板の他、種々の高分子フィルムの中から適宜選択して用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどのセルロース系フィルム、ビスフェノールA・炭酸共重合体などのポリカーボネート系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン・プロピレン共重合体などの直鎖または分枝状ポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム、イミド系ポリマーフィルム、スルホン系ポリマーフィルムなどが挙げられる。
【0036】
[干渉露光]
塗布液を支持体上に塗布して溶剤が除去される程度に乾燥した後、例えば図4で説明した装置を使用して塗膜上に左円偏光と、右円偏光を結像することにより、周期的配向層を形成することができる。
【0037】
干渉露光は、乾燥途中(完全に乾燥する前)に行ってもよい。干渉露光後、試料を80~130℃、好ましくは100~120℃に加熱し、冷却することが好ましい。
【0038】
(重合性液晶性材料を用いた周期的配向層の形成)
場合により、上記化学式1~3で示される光配向性を有する液晶性材料に左円偏光と右円偏光を干渉露光して周期的配向性を誘起した後、これを下地の配向膜(図3Bの層1c)として、その上の重合性液晶性材料からなる周期的配向層(図3Bの層1d)を形成してもよい。本発明の説明において、重合性液晶性材料は、それ自体、光配向性を有する液晶性材料は含まないものとする。この周期的配向層は、配向膜上に、重合性液晶性材料を溶媒に溶解し溶液として、塗布し、塗布後乾燥し、加熱処理を行うことにより重合性液晶性材料の配向を誘起させ、ついで、非偏光性の紫外線を照射して、この配向を固定することにより形成することができる。
【0039】
[重合性液晶性材料]
本発明において、配向膜上で配向させる重合性液晶性材料は、液晶性ポリマーからなるものであっても、液晶性モノマーからなるものであってもよい。光や熱により重合する官能基を有する重合性液晶性材料や、イソシアネート材料、エポキシ材料などの架橋剤により、液晶性を損なわない程度に架橋構造を導入した液晶性ポリマーであっても、液晶性モノマーであってもよい。また、低分子材料として下記の2官能性の低分子材料を加えて塗布し、重合性液晶性材料を配向させた後、重合させ架橋性ポリマーを含有するようにしてもよい。必要に応じ、光重合開始剤、熱重合開始剤や増感剤を混合してもよい。このような液晶化性材料を配向膜上で配向させその配向を固定することにより、配向膜上に偏光回折格子の特性を有する光学異方性層を形成できる。
【0040】
重合性液晶としては、シッフ塩基系、ビフェニル系、ターフェニル系、エステル系、チオエステル系、スチルベン系、トラン系、アゾキシ系、アゾ系、フェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系、トリメシン酸系、トリフェニレン系、トルクセン系、フタロシアニン系、ポルフィリン系分子骨格を有する液晶化合物、またはこれら化合物の混合物等が挙げられ、架橋性基の導入あるいは適宜な架橋剤のブレンドによって、液晶状態あるいは液晶転移温度以下に冷却した状態で、熱架橋あるいは光架橋等の手段により配向固定化できるものが含まれる。重合性液晶としては、ネマチック性の液晶相を示す化合物を用いることが好ましい。
【0041】
また、重合性液晶は、架橋性基の導入あるいは適宜な架橋剤のブレンドによって、液晶状態あるいは液晶転移温度以下に冷却した状態で、熱架橋あるいは光架橋等の手段により配向固定化できる液晶ポリマーでもよく、メソゲン形成性基で構成されたユニットを有する限り特に限定されない。前記ユニットを液晶ポリマーの主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。主鎖型液晶ポリマーとしては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベ
ンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系、ポリエステルイミド系の液晶ポリマー、またはこれらの混合物等が挙げられる。また側鎖型液晶性ポリマーとしては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系等の直鎖状又は環状構造の骨格鎖を有する高分子に側鎖としてメソゲン基が結合した液晶ポリマー、またはこれらの混合物等が挙げられる。液晶ポリマーとしては、ネマチック性の液晶相を示すポリマーを用いることが好ましい。
【0042】
架橋性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0043】
重合性液晶としては、市販の液晶性化合物を用いることができる。例えばBASF社のLC242などを用いてもよい。これらの液晶化合物は、化学式1~3で示すような光配向性を有する液晶化合物に比して安価であるため、偏光解消素子を光配向性を有する液晶化合物のみを用いて形成した場合に比べ、偏光解消素子製造のコストを低減することができる。
【0044】
光重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン(株)製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬(株)製)、カヤキュアーUVI-6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP-152又はアデカオプトマーSP-170(以上、全て(株)ADEKA製)、TAZ-A、TAZ-PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)及びTAZ-104(三和ケミカル社製)など、市販の光重合開始剤も用いることができる。
【0045】
熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過酸化水素、過硫酸塩、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等が挙げられる。
重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物(または重合性液晶ポリマー)100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0046】
重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合、光増感剤を併用してもよい。光増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジン;ルブレン等が挙げられる。
【0047】
必要に応じ、配向層を形成するために用いられる重合性液晶性材料中に、該重合性液晶性材料の液晶性を乱さない程度の量で感光性を有する化合物を添加してもよい。この場合、感光性基は、下地となる配向膜を形成する感光性基を有する液晶性材料の感光性基と化学構造が同一または類似するものを用いることが好ましい。例えば、上記化学式1~3で示される光配向性を有するする液晶性材料を、重合性液晶化合物(または重合性液晶ポリマー)100質量部に対して、0.5~10質量部程度混合してもよい。
【0048】
[配向膜の形成]
配向膜の形成は、上記の光配向性を有する液晶性材料による周期的配向層の形成プロセスと同様にして行うことができる。すなわち、上記の化学式1~3で表わされる側鎖を有するモノマー単位から形成される液晶性ポリマー、必要により、上記の液晶性ポリマーに低分子化合物、その他の成分(重合触媒など)を加え、これらを適当な溶剤に溶解して調製される塗布液を基材上に塗布し、溶剤を除去することにより液晶性ポリマー層を基材上に形成する。ここで溶剤や、基材としては、上述の物を用いることができる。次いで、例えば図4で説明した装置を使用して塗膜上に左円偏光と右円偏光を干渉露光することにより、塗膜に周期的配向性を付与する。干渉露光後、試料を80~130℃、好ましくは100~120℃に加熱し、冷却してもよい。但し、試料の加熱・冷却は、重合性液晶性材料を塗布した後に行ってもよい。
【0049】
[重合性液晶性材料層の形成]
基材上に配向膜を形成した後、配向膜上に上記の重合性液晶性材料を塗布、乾燥することにより、下地の配向膜の配向性に従い、重合性液晶性材料に配向性が誘起される。
【0050】
[非偏光性の紫外線照射]
配向膜上に重合性液晶性材料を塗布、配向膜の配向性に従って配向させた後、非偏光性の紫外線を照射するのが好ましい。非偏光性紫外線を照射すると、重合性液晶性材料中の重合性基が反応して配向が固定され、安定した周期的配向層が形成されるともに、配向膜の配向性も固定される。また、配向膜と重合性液晶性材料層との界面において、配向膜を形成している液晶性材料の感光性基と重合性液晶性材料中に含まれる感光性基との間に光反応が生じ、両層間の高い密着性に寄与していると考えられる。
【0051】
以上のようにして、配向膜を利用して、その上に直接積層した重合性液晶性材料を配向させることにより、本発明の偏光解消素子を形成することができる。
【0052】
第2実施形態
[ローパスフィルタ]
本発明の一実施形態に係る光学的ローパスフィルタは、上記本発明の偏光解消素子(偏光回折格子)1を用いて形成することができる。図1に示すように、本発明の偏光解消素子1は、光学軸の方向が同じとなる部分が等間隔で周期的に表れる格子状の構造を示し、光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する異方性構造を有する。この素子は、偏光回折格子として機能し、入射した光を右回り円偏光、左回り円偏光として2方向に回折できる。図6は、この素子を利用した光学的ローパスフィルタ100の一例であり、本発明の偏光解消素子からなる第1の素子11及び第2の素子12の間に、複屈折を有する第3の素子2(例えば、1/4波長板)を挟んだ構造を有し、第2の素子12は、格子ベクトルの方向が、第1の素子11の格子ベクトルの方向に対し、90度回転した方向となるように配置されている。この構造を有する光学素子積層体に光を入射すると、後述の実施例で示すように、点像を4つに分離することができ、光学的ローパスフィルタ100として利用することができる。その際、素子11、12は、上述のように、基材上の塗膜を構成する液晶性材料の配向性を固定することにより形成し得るため、薄型化が容易であり、製造工程も簡便なものとすることができる。
【実施例0053】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。
【0054】
(単量体1)
p-クマル酸と6-クロロ-1-ヘキサノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)桂皮酸を合成した。この生成物にp-トルエンスルホン酸の存在下でメタクリル酸を大過剰加えてエステル化反応させ、下記化学式に示される単量体1を合成した。
【0055】
【化4】
【0056】
(単量体2)
4-ヒドロキシ安息香酸と6-クロロ-1-ヘキサノールを、アルカリ条件下で加熱することにより、4-(6-ヒドロキシヘキシルオキシ)安息香酸を合成した。次いでこの生成物にp-トルエンスルホン酸の存在下でメタクリル酸を大過剰加えてエステル化反応させ、下記化学式に示される単量体2を合成した。
【0057】
【化5】
【0058】
(共重合体1)
単量体1と単量体2のモル比が単量体1:単量体2=3:7となるように単量体1と単量体2をジオキサン中に溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して、70℃で24時間重合することにより共重合体1を得た。この共重合体1は液晶性を呈した。
【0059】
(共重合体1)
単量体1と単量体2のモル比が単量体1:単量体2=3:7となるように単量体1と単量体2をジオキサン中に溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して、70℃で24時間重合することにより共重合体1を得た。この共重合体1は液晶性を呈した。
【0060】
(共重合体2)
単量体1とメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)のモル比が単量体1:HEMA=75:25となるように単量体1とHEMAをジオキサン中に溶解し、反応開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を添加して、70℃で24時間重合することにより共重合体2を得た。
【0061】
(実施例1)
共重合体1と桂皮酸を重量比95:5の割合でテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、溶液を調製した。この溶液をカバーガラス基板上にスピンコーターを用いて3μmの厚さになるよう塗布して、25℃で乾燥させた。乾燥後の塗膜に、図4に示す干渉露光光学系で、光源に用いたDPSSレーザーから射出された360nmの紫外レーザー光を左円偏光と右円偏光として干渉露光(照射量200mJ/cm)した。続いて、130℃で3分間加熱し、室温まで冷却することにより配向を誘起した。この配向は、干渉露光により各領域に露光された光の偏光方向に伴い、塗膜内に軸選択的な光反応した側鎖が生成し、続く、加熱による分子運動によって、未反応の側鎖が反応した側鎖に沿って並ぶことによる。このようして得られた塗膜は、光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転するよう配向した塗膜とした。この方法により、本発明の光学素子が得られた。
【0062】
(実施例2)
共重合体2をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、溶液を調製した。この溶液をカバーガラス基板上にスピンコーターを用いて0.5μmの厚さになるよう塗布して、25℃で乾燥させた。乾燥後の塗膜に、図4に示す干渉露光光学系で、光源に用いたDPSSレーザーから射出された360nmの紫外レーザー光を左円偏光と右円偏光として干渉露光(照射量20mJ/cm)し、光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する液晶配向性を付与した塗膜を作製した。
【0063】
続いて、重合性液晶化合物(BASF社製、LC-242)、および光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、イガルキュア907)5重量部を混合し、トルエンに溶解し、溶液を準備した。
この溶液を、前述の塗膜上に、スピンコーターを用いて2μmの厚さになるよう塗布し、70℃まで加熱後、室温まで冷却し、さらに、非偏光性の紫外線を照射し(照射量280mJ/cm)、重合性液晶化合物を重合させることにより、光学軸が格子ベクトル方向に向かって連続的に回転する光学異方性層を形成した。この方法により、本発明の光学素子が得られた。
【0064】
(実施例3)
偏光解消効果を評価するために、簡易的な結像光学系を組んだ。図7に示すように、光源Lから順に、パターン(メタルマスク)3、第1偏光板4、拡大レンズ5、投射レンズ6、第2偏光板7、スクリーン8とした。ここで、第1偏光板4と第2偏光板7はクロスニコル配置とした。そのため、発明の偏光解消素子1を挿入していないときには、第1偏光板4を透過した光は、第2偏光板7に吸収され、スクリーン上にはパターンが投影されていないことを確認した。
【0065】
実施例1と同様の方法で作製した本発明の偏光解消素子1を、図7の結像光学系中に挿入し、偏光解消程度を確認した。挿入位置は、拡大レンズ5と第1偏光板の間の、パターン3に近接した位置S1、拡大レンズ5と投射レンズ6の間の位置S2、投射レンズ6とスクリーン8の間の位置の位置S3の三か所から選択し、偏光解消板1として異方性構造の周期ピッチが狭い素子を用いる場合には、パターン3近くに、周期ピッチが大きい素子を用いる場合には、パターン3から遠位側に挿入した。なお周期ピッチの異なる素子は、干渉露光時に全反射ミラーM3,M4からサンプルの設置位置までの距離を変えることにより作製した。
【0066】
本発明の偏光解消素子1のサンプルを挿入することにより、スクリーン上にパターンが投影されることを確認した。さらに、サンプルを360°回転させた場合、および、偏光板2を360°回転させた場合であっても、スクリーン上に投影されたパターンが消光することがないことを確認し、偏光解消されていることが確認できた。
【0067】
(実施例4)
実施例1と同様にして作製した偏光解消素子を2枚準備した。第1の素子、および第2の素子は、波長550nmの光に対し、それぞれ276.5nm、281.1nmの位相差値を示した。図6に示すように第1の素子11と第2の素子12を、互いの格子ベクトルの方向が90度異なるように配置し、その間に、波長550nmの光に対し、位相差が137nmとなる複屈折を有する第3の光学素子(1/4波長板)2を配置した。
【0068】
この三枚の光学素子の積層体に対し、偏光した波長532nmのレーザー光を照射し、出射した光の強度分布を測定した。図8に出射光分布の観察結果を、図9に強度分布の測定データを示す。この結果から、点像を±1次の回折光の4点に分離できることが確認された。他方、0次光の出射、および二次光などの高次回折光が抑えられていることが確認された。
【0069】
上記の結果より、本発明の光学的ローパスフィルタでは、0次光によるローパス効果の低下や高次回折光による解像度の低下を避けながら、ローパス効果が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の偏光解消素子とこれを使用したローパスフィルタは、従来よりも光学特性に優れ、かつ簡便な製法でコストを抑えつつ、薄型の光学素子、光学部材として提供できるので、産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0071】
1、11、12 偏光解消素子
1a 基材
1b 光配向性液晶性材料層
1c 配向膜
1d 重合性液晶性材料層
2 複屈折を有する素子
3 パターン
4 第1の偏光板
5 拡大レンズ
6 投影レンズ
7 第2の偏光板
8 スクリーン
10 光源
30,60 ビームスプリッタ
40,70 1/4波長板
50,80 拡大系
100 ローパスフィルタ
L 光源
M1,M2,M3,M4 全反射ミラー
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9