(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069315
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】分析用の音声アシストシステムとその試験評価方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/16 20060101AFI20220428BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20220428BHJP
【FI】
G06F3/16 650
G10L15/00 200L
G06F3/16 610
G06F3/16 620
G06F3/16 630
G06F3/16 690
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178430
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518310824
【氏名又は名称】株式会社シーネットコネクトサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 清人
(72)【発明者】
【氏名】高坂 昌信
(57)【要約】
【課題】製品の品質管理の信頼性を高める。
【解決手段】
試験員12は音声ガイダンス58に従って試験操作を進める。音声認識システムが試験員12の音声を自動認識して、試験操作記録36をリアルタイムで確認し記憶装置28に記憶する。これに加えて、試験で得られたデータについても、その値を復唱して確認し、写真撮影等を組み合わせて、読み誤りや記録ミスを排除する。操作手順68にもデータにも現れないが確認をすべき項目を含めて、自動的に質問と応答の記録を残す。試験操作記録36と試験結果38を試験員12のアクセスが認められていないサーバ54にアップロードして保存するので、試験結果38の信頼性を確保することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最適化した試験操作を予め定めた手順どおりに試験員に指示するための、音声ガイダンスと対応する求められる応答とを含むガイダンスデータと、上記試験員の試験操作の過程を示す試験操作記録と、試験操作により取得したデータを含む試験結果とを記憶する記憶装置と、
上記のガイダンスデータを試験操作の進行に合わせて順番に読み取って、発音制御部に上記の音声ガイダンスを発音させる制御装置と、
試験員の応答音声を認識処理して文字データに変換する音声認識エンジンとを備え、
上記の制御装置は、
上記の音声ガイダンスに対応する求められる応答と試験員の応答の内容を比較して、その内容が一致していれば上記の試験操作記録を生成し、取得したデータを試験結果として記憶装置に記憶させ、
試験員の測定値を含む応答音声を認識すると、その認識結果を復唱するように発音制御部に発音させて、復唱の内容が正しい旨の試験員の応答があったときに、その試験結果を確定させて、上記の記憶装置に記憶させ、
試験操作の過程で結果が確定し記憶装置に記憶させた試験操作記録と試験結果を、その確定処理のつど通信装置を制御して、試験員のアクセスが認められていないサーバにアップロードさせることを特徴とする分析用の音声アシストシステム
【請求項2】
上記の制御装置は、試験員から、上記の求められる応答が得られない場合には、該当する試験操作の結果を検証用データとして記憶装置に記憶させることを特徴とする請求項1に記載の分析用の音声アシストシステム。
【請求項3】
サーバにアップロードされた試験操作記録と試験結果は、サーバにネットワークを通じて接続された承認用コンピュータにより、試験操作の過程で取得されたデータと、撮影された写真と、試験操作の順序と、作業時間とに間違いが無いかと、過去に行われた試験結果とを比較して正常かどうかとが判断される処理が実行されてから、承認処理がされることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用の音声アシストシステムの試験評価方法。
【請求項4】
サーバにアップロードされた試験結果は、サーバにネットワークを通じて接続された承認用コンピュータにより、過去に行われた試験結果の、試験項目ごとの試験に要した時間及びトータル時間を標準時間と比較して、所定の許容範囲にないものがあるかどうかを判断する比較評価処理が実行されることを特徴とする構成1または2に記載の分析用の音声アシストシステムの試験評価方法。
【請求項5】
上記の管理用コンピュータの制御装置を、請求項1または2に記載の分析用の音声アシストシステムとして機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータで読みとり可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の品質管理の信頼性を高めるために音声認識システムを利用した分析用の音声アシストシステムとその試験評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
市場に提供される様々な製品はいずれも、要求される品質を満たすために信頼性の高い品質管理が求められる。これには、製品の生産過程で、あらかじめ定められた試験項目について、定められた手順を遵守した分析試験操作を行って評価管理をする必要がある。従来から、様々な作業手順をサポートするために音声認識システムを利用する技術が各種紹介されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1984-112396号公報
【特許文献1】特開1994-095683号公報
【特許文献1】特開2007-108077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料の分析試験操作に不慣れな試験員等には試験項目の見落としや試験データの記録ミスも生じうる。従来知られた音声認識システムによる試験操作の指示は、単純な操作ミスの防止に有用である。しかしながら、試験員の技量によって試験操作の内容に個人差が生じることがある。想定された試験結果が得られれば試験操作の細かい経過まで具体的に報告がなされないことも多い。試験結果のつじつまを合わせるために、データの改竄が行われたという事案も聞かれる。
【0005】
本発明はこうした従来の課題を解決し、製品の品質管理の信頼性を高めるために音声認識システムを利用した分析用の音声アシストシステムとその試験評価方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0007】
<構成1>
最適化した試験操作を予め定めた手順どおりに試験員に指示するための、音声ガイダンスと対応する求められる応答とを含むガイダンスデータと、上記試験員の試験操作の過程を示す試験操作記録と、試験操作により取得したデータを含む試験結果とを記憶する記憶装置と、
上記のガイダンスデータを試験操作の進行に合わせて順番に読み取って、発音制御部に上記の音声ガイダンスを発音させ、試験員の応答音声を認識処理する音声認識エンジンから変換された文字データを取得する制御装置とを備え、
上記の制御装置は、
上記の音声ガイダンスに対応する求められる応答と試験員の応答の内容を比較して、その内容が一致していれば上記の試験操作記録を生成し、取得したデータを試験結果として記憶装置に記憶させ、
試験員の測定値を含む応答音声を認識すると、その認識結果を復唱するように発音制御部に発音させて、復唱の内容が正しい旨の試験員の応答があったときに、その試験結果を確定させて、上記の記憶装置に記憶させ、
試験操作の過程で結果が確定し記憶装置に記憶させた試験操作記録と試験結果を、その確定処理のつど通信装置を制御して、試験員のアクセスが認められていないサーバにアップロードさせることを特徴とする分析用の音声アシストシステム
【0008】
<構成2>
上記の制御装置は、試験員から、上記の求められる応答が得られない場合には、該当する試験操作の結果を検証用データとして記憶装置に記憶させることを特徴とする構成1に記載の分析用の音声アシストシステム。
【0009】
<構成3>
サーバにアップロードされた試験操作記録と試験結果は、サーバにネットワークを通じて接続された承認用コンピュータにより、試験操作の過程で取得されたデータと、撮影された写真と、試験操作の順序と、作業時間とに間違いが無いかと、過去に行われた試験結果とを比較して正常かどうかとが判断される処理が実行されてから、承認処理がされることを特徴とする構成1または2に記載の分析用の音声アシストシステムの試験評価方法。
【0010】
<構成4>
サーバにアップロードされた試験結果は、サーバにネットワークを通じて接続された承認用コンピュータにより、過去に行われた試験結果の、試験項目ごとの試験に要した時間及びトータル時間を標準時間と比較して、所定の許容範囲にないものがあるかどうかを判断する比較評価処理が実行されることを特徴とする構成1または2に記載の分析用の音声アシストシステムの試験評価方法。
【0011】
<構成5>
上記の管理用コンピュータの制御装置を、構成1または2に記載の分析用の音声アシストシステムとして機能させるためのコンピュータプログラム。
<構成6>
構成5に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータで読みとり可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0012】
試験員は音声ガイダンスに従って試験操作を進める。音声認識システムが試験員の音声を自動認識して、試験経過を確認しリアルタイムで記録する。これに加えて、試験で得られたデータについても、その値を復唱して確認し、写真撮影等を組み合わせて、読み誤りや記録ミスを排除する。操作手順にもデータにも現れないが確認をすべき項目について、自動的に質問と応答の記録を残す。これらの試験結果の記録を書き換えができないようにリアルタイムでサーバに保存するので、試験結果の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明のシステムでアシストする試験設備のブロック図である。
【
図2】
図2は試験結果の記録を保存し検証をするネットワークの説明図である。
【
図3】
図3はアシストに使用するデータや出力データを例示する説明図である。
【
図4】
図4は制御装置のアシスト動作のためのコンピュータプログラム例フローチャートである。
【
図5】
図5は具体的なアシストのための試験手順例説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例0015】
図1は、分析試験設備を使用して製品の試験を行う試験員をアシストするための、本発明の分析用の音声アシストシステムの一例を示している。製品の試験を行う試験員12は、タブレット端末装置14を所持している。このタブレット端末装置14は発音と音声認識と試験操作のモニターに使用され、管理用コンピュータ26から送信されるアシストのための音声ガイダンスのデータや試験員12の応答の認識結果などを文字で表示する機能を持つ。この例では、例えば、タブレット端末装置14に発音制御部46と音声認識エンジン48とが内蔵されている。
【0016】
このほかに、例えば、試験員12はマイクを備えたヘッドセット13を装着している。タブレット端末装置14が充分な音声入出力機能を保有していれば、ヘッドセット13は不要である。音声ガイダンスは、例えば、タブレット端末装置14で発音処理されて、試験員12に伝えられる。また、試験員12の応答音声は、例えば、タブレット端末装置14で認識処理されて管理用コンピュータ26に送信される。
【0017】
この図に示した試験設備は、様々な試験設備のうちの一例であるが、テーブル16の上に、材料の試験機18、計量カップ20、分析装置22、計量器24等が設置されている。管理用コンピュータ26は試験員12の試験操作をアシストするためのコンピュータプログラムを制御し、取得したデータを処理する装置である。
【0018】
試験員12の使用するタブレット端末装置14や試験設備の一部は、有線または無線のネットワークで管理用コンピュータ26に接続されている。管理用コンピュータ26は、分析装置22等の測定データを直接取得する機能も持っている。
【0019】
管理用コンピュータ26は記憶装置28と演算処理装置30とを備えている。演算処理装置30は例えば、後で説明する制御装置50と通信装置51として機能する。なお、上記のタブレット端末装置14に内蔵された発音制御部46と音声認識エンジン48とは、この管理用コンピュータ26に設けられていてもよい。記憶装置28には、例えば、ガイダンスデータ32と応答音声認識結果34と試験操作記録36と試験結果38と撮影した写真40と作業時間42と標準時間44と試験員リスト45等が記憶される。
【0020】
図2は試験員12(
図1)により行われた試験の試験結果38をリアルタイムで記録し保存し検証をするための、ネットワーク構成の説明図である。このシステムにより、上記の管理用コンピュータ26が取得した試験操作記録36や試験結果38がリアルタイムでバックアップされる。
【0021】
図2に示したネットワーク52には、管理用コンピュータ26とタブレット端末装置14とサーバ54と承認用コンピュータ56とが接続されている。試験員12(
図1)による試験操作の過程で順次取得される試験操作記録36(
図1)は、まず、管理用コンピュータ26と試験員12とのやり取りによって内容が確定される。音声ガイダンスに従って試験員12が試験操作をした過程や試験員12の応答音声を、試験結果とともにリアルタイムで記録する。
【0022】
内容が確定した試験操作記録36や試験結果38は、管理用コンピュータ26の記憶装置28に記憶されるとともに、管理用コンピュータ26の通信装置51が動作して、試験員12のアクセスが認められていないサーバ54にアップロードされる。こうして、その後の修正ができない状態になる。承認用コンピュータ56は管理者が操作するもので、サーバ54にアップロードされた試験操作記録36や試験結果38の内容を管理者が承認するために使用される。サーバ54にアップロードされたデータは、承認用コンピュータ56によってのみ、修正等が可能なように設定される。承認をされたデータは、ホストシステム57において、製品の正式な検査結果として利用される。
【0023】
図1に示した管理用コンピュータ26の記憶装置28には、最適化した試験操作を予め定めた手順どおりに試験員12に指示するための、ガイダンスデータ32が記憶されている。このガイダンスデータ32は
図3(a)に示すように、音声ガイダンス58と求められる応答60を一組としたデータが、例えば、試験操作中に発音する順番にリストされている。その具体例は後で
図5を用いて説明する。
【0024】
また、管理用コンピュータ26には、ガイダンスデータ32を試験操作の進行に合わせて順番に読み取って、ガイダンスデータ32に含まれた音声ガイダンス58を発音制御部46に伝えて発音させる制御装置50とが設けられている。この制御装置50は、音声認識エンジン48が試験員12の応答音声を認識処理して文字データに変換したときに、そのデータを取得処理する機能を持つ。
【0025】
制御装置50は、ガイダンスデータ32に含まれた音声ガイダンス58に対応する求められる応答60と試験員12の応答の内容を比較して、一致していれば該当する音声ガイダンス58の操作が行われたと判断し、一致しなければやり直し等の制御をする機能を持つ。内容が一致しているかどうかは、応答文を構文解析してから実質的な内容を比較判断するようにしてもよい。即ち、物理的に文言が一致していなくても、内容が一致していればよい。
【0026】
制御装置50は、認識された試験員12の応答音声の内容が求められる応答60と一致していると、続いて発音する音声ガイダンス58の選択をする。さらに、そのときの試験操作の過程を試験操作記録36とし、取得したデータを試験結果38として、記憶装置28にそのつど記録する。こうした処理中に各種データがリアルタイムで管理用コンピュータ26の記憶装置28に記憶されるのは当然であるが、すくなくとも記録として残して承認を求めるべき部分を確実にサーバ54にアップロードする処理が必要になる。そのアップロードのタイミングを示すデータも、ガイダンスデータ32に含めるとよい。
【0027】
既に説明したように、試験員12は、この音声ガイダンス58を受信し応答音声を送信するための、音声入出力装置と、制御装置50が取得した試験操作の内容や試験結果38等を文字や画像で表示するための、ディスプレイを備えたタブレット端末装置14を所持している。
【0028】
試験員12は、音声ガイダンス58に従って試験操作を進める。管理用コンピュータ26の制御装置50は、試験員12の応答音声の認識結果をガイダンスデータ32と照合して、予め定めた手順どおりに試験が実行されているかどうかを判断する。これにより、ガイダンスデータ32どおりの手順で試験が実施されることを保証する。
【0029】
制御装置50は、全ての試験操作をリアルタイムに管理用コンピュータ26の記憶装置28に記録するとともに、試験操作の過程で結果が確定した部分をそのつどサーバ54にアップロードする。なお、試験操作記録36や試験結果38は全てログに残し、何時誰がどのような試験をしたかの履歴を管理用コンピュータ26の記憶装置28に記憶させるとよい。これらにより、システムおよび試験データの不正な改竄や、未実施の虚偽申告等を防止することができる。
【0030】
上記のように、試験結果38は、始めに管理用コンピュータ26の記憶装置28に記憶されるが、その後は、
図2に示すように、試験員12のアクセス権の無い、サーバ54の保存領域55に転送されて保存される。この保存領域55に記憶された試験結果38は、その後、承認用コンピュータ56による承認処理を経て、ホストシステム57の品質管理のためのデータベース59に登録される。
【0031】
なお、
図2に示したサーバ54と承認用コンピュータ56とは一体であっても構わない。承認用コンピュータ56から、管理用コンピュータ26を通じて試験員12の作業をリアルタイムで観察することもできる。さらに、関係者の操作する観察用端末53をネットワーク52に接続しておき、関係者がいつでも、試験員12の作業を観察したり、試験経過や試験結果を見ることができるようにしてもよい。これらにより、試験結果の信頼性をより高めることができる。
【0032】
管理用コンピュータ26の制御装置50は、例えば、試験員12の試験操作の応答音声を認識すると、その認識結果を発音制御部46に発音させて、復唱による試験員12の確認を促す。発音制御部46の復唱の内容が正しいときは試験員12が「よし」という応答音声を発し、この言葉を音声認識エンジン48が認識すると、制御装置50はその試験操作の結果を確定させることができる。また、操作手順にも試験データにも直接現れないが、確認をすべき項目について、自動的に質問と応答の記録を残すことができる。
【0033】
試験操作中は、音声ガイダンス58の内容をタブレット端末にも表示させる。試験員12は、耳だけでなく目視でもガイダンスの内容を確認できる。工程の区切りや、その工程に含まれた任意の試験操作の区切りごとに、制御装置50は試験操作の結果と試験データをタブレット端末装置14に表示する。こうして、試験データの誤入力や、試験結果38の誤記載等のヒューマンエラーを防止する。
【0034】
図3により、上記の記憶装置28に記憶されたデータの具体的な構造を説明する。
ガイダンスデータ32には、試験操作上の必須項目または基準について、進行状況確認のための音声ガイダンス58とこれに対する正常な回答になる求められる応答60とが含まれている。制御装置50は、この音声ガイダンス58を発音制御部46に発音させて、試験員12から求められる応答60が得られない場合には、該当する試験操作の結果を検証用データ61として記録する。
【0035】
例えば、タブレット端末装置14のディスプレイには、音声ガイダンス58内容と試験員12の回答とを表示する。試験員12は、どのように回答したのかを常に確認できる。試験操作の過程でチェックしなければならない項目や基準を自由に設定しておくことが出来る。そして、試験操作が間違いなく進んでいるかどうかを確認するための音声ガイダンス58や求められる応答60などをガイダンスデータ32に含めることができる。
【0036】
求められる応答が得られないときや、試験結果38が設定した基準から外れているような場合には、やり直しが求められ、管理用コンピュータ26に検証用データ61が生成されて記憶される。やり直し前の結果とやり直し後の結果の両方を記録しておくとよい。検証用データ61には、例えば、
図3に示すように、製品名62、ロット番号64、試験項目66、操作手順68等が含められる。この検証用データ61は、本人および第三者が後日その内容を確認できるように保存される。
【0037】
試験操作に使用する試験装置の試験データは、紙等に印字されたり、付属のディスプレイに表示される。試験員12は、その試験データを音声で読み上げる。音声認識エンジン48はその認識結果を記録する。印字されないデータは、タブレット端末装置14のカメラで撮影して記録する。このため、例えば、撮影指示と同時にタブレット端末装置14のカメラアプリ(撮影機能)を起動させる。タブレット端末装置14のディスプレイに表示されたデータや温度計に表示される温度や目視で得られる試料の色の番号等はこの方法で記録する。
【0038】
サーバ54にアップロードされた試験結果38は次の手順で承認処理される。即ち、試験操作の過程で取得されたデータと撮影された写真と、試験操作の順序と試験結果38と作業時間42とに間違いが無いかが確認される。さらに、過去に行われた試験結果38とを比較して、正常かどうかが判断され承認がされる。
【0039】
作業時間42(
図1)は試験操作の開始時刻から終了時刻までの間の時間である。この時間が正常な範囲にある場合に試験結果38の承認がされる。試験結果やガイダンスデータ32とその更新履歴とは、管理者がいつでも参照できるように、サーバ54の記憶装置28に記憶しておく。これにより全てのデータの見える化を実現している。
【0040】
試験の標準時間44を算出しておき、標準時間44と比較して作業時間42が大きく短縮されたり長くなったりした場合には承認が出来ない。これらの作業に疑義がないことを自動的に検証できる。試験員12以外も試験操作の内容をリアルタイムで確認可能なため、試験員12に対する不正等への抑止力が作用する。また試験操作が標準化され、試験結果38のバラツキが減少し精度向上に寄与する。試験員リスト45は、試験名称ごとに、その試験のできる試験員を記録したデータである。
【0041】
図4により、制御装置50がガイダンスデータ32を読み取ってアシスト動作をするときのコンピュータプログラムの具体的な基本動作例を説明する。まず、該当するガイダンスデータ32を開いて、ステップS11で音声ガイダンス58を読みとり、発音制御部46が発音をする。次に、ステップS12で、試験員12による応答音声を音声認識エンジン48が認識処理する。その結果は応答音声認識結果34として記憶される。
【0042】
ステップS13では、制御装置50が、応答音声認識結果34の解析をする。このとき、試験員12の応答の種類が、例えば、「よし」と「(測定結果は)・・です」の2種類あるとする。ステップS14では、制御装置50が、直前に発音した音声ガイダンス58が「復唱」をするためのものかどうかを判断する。この区別は、ガイダンスデータ32に予め表示されているとよい。
【0043】
この判断の結果がイエスのときはステップS15の処理に移行し、ノーのときはステップS18の処理に移行する。ステップS15では、制御装置50が応答音声から抜き出した復唱の要素(数値等)を含めた復唱文を編集し、発音制御部46が発音をする。ステップS16では、試験員12の応答音声が、「よし」かどうかという判断をする。
【0044】
この判断の結果がイエスのときはステップS17の処理に移行し、ノーのときはステップS18の処理に移行する。ステップS17では、試験データの読みとり誤りか、応答音声の認識誤りが生じたおそれがあると判断し、やり直し処理をする。このステップS17の処理は正常終了するまで繰り返されてステップS18に進むものとする。
【0045】
ステップS18では、試験員12の応答音声が、「求められる応答」かどうかという判断をする。復唱する対象以外の場合は、ガイダンスデータ32から読み出した音声ガイダンス58に対応する求められる応答60と応答音声の認識結果が一致しているかどうかの判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS20の処理に移行し、ノーのときはステップS19の処理に移行する。
【0046】
ステップS19では、ステップS17と同様の内容のやり直し処理をする。ステップS20では、試験操作記録36と試験結果38とを管理用コンピュータ26の記憶装置28に記録する。このとき、試験操作中に撮影した写真40も記録する。そして、ネットワーク52がこれらのデータをそのままサーバ54(
図2)にアップロードする。
【0047】
その後、ステップS21で、制御装置50がガイダンスデータ32の次の音声ガイダンス58を読み取るための動作に移る。ガイダンスデータ32に読み取るべき音声ガイダンス58が無くなればこのフローチャートの処理を終了する。
【0048】
図5により、本発明の分析用の音声アシストシステムによる具体的な試験員12のアシストのための試験手順例を説明する。なお、この
図5に示したデータはそのまま試験操作記録36の内容にすることができる。制御装置50がガイダンスデータ32の読みとり制御を開始して、試験操作の過程で試験員12との間でこのようなやりとりがおこなわれる。
【0049】
まず、制御装置50は、試験員リスト45を参照して、試験員がこれから行われる試験を行う資格があるかとうかを確認する。即ち、試験名称「・・・分析試験」を発音して、試験員の氏名あるいはコード番号の応答をさせる。この図の例では試験員は例えば、「1234」と応答した。試験員リスト45にそのコード番号があれば、「・・・分析試験」を開始しますと発音する。応答に「よし」が含まれていれば、次に進む。
【0050】
なお、ここで、自動的に試験開始時刻が記録される。次に、「試料容器を準備してください」と音声を発する。「よし」と応答するように決められているが、例えば、「準備よし」といった応答があったとしても、応答に「よし」が含まれていれば、求められる応答60であると判断して次の操作に進む。
【0051】
ここで、「採取前の試料の温度を測定してください」と音声を発した。この場合の応答は、測定値を含む。ここでは「摂氏35度」という応答を認識した。制御装置50はその測定値を含む部分を利用して、「摂氏35度ですね」という応答文を生成し音声を発する。
【0052】
試験員12が「よし」という応答を返したときは、制御装置50による測定値の認識処理が正しいと判断できる。このとき、「温度を確認しました」という音声を発して、その測定値を試験結果38に記録して、その内容を確定させる。既に説明したように、復唱により内容が確定したらただちにサーバにその確定分がアップロードされる。
【0053】
ここでさらに、測定温度の事後の確認が可能なように、「温度計をカメラで撮影してください」という音声を発する。そして、試験員12の所持するタブレット端末装置14の写真機能を起動する。試験員12が「よし」という応答を返したときは、管理用コンピュータ26に取り込まれた写真をタブレット端末装置14に転送して表示する。試験員がその画像を確認して「よし」という応答を返したときは、その結果が記憶装置28に記憶され、自動的にその写真をサーバにアップロードする。この処理も、対象が画像データであるが、広義の「復唱」に該当するものといえる。
【0054】
その後次の処理に移る。次は試料の分析のための定量採取処理である。まず、「試料を50ml容器に採取してください」と音声を発する。そして、試験員12が「よし」という応答を返したときは、「採取試料の量を確認してください」と音声を発する。求められる応答60は「・・・mlです」である。この応答を認識したら、上記の要領で復唱をする。これに対して試験員12が「よし」という応答を返したときは、その測定値を確定させる。
【0055】
その後「計量器24の零点調整をして下さい」という計量測定の準備を指示し、「採取資料と容器の計量をして下さい」と音声を発する。「63グラムです」という応答に対して上記の要領で復唱をする。このような要領で、例えば、「*」印をしたタイミングで、サーバに試験経過がそのつどサーバ54にアップロードされる。このタイミングは、予めガイダンスデータ32に含めておくとよい。
【0056】
上記の処理を繰り返して必要な試験が終了すると、試験時間が計算された後に、全ての試験結果38がその他のデータとともにサーバ54にアップロードされる。なお、同じ試験を行った場合でも、試験員によって個々の試験項目やトータル時間にばらつきが生じる。手順通り指示通りに試験を実施すれば標準的な時間内に試験が終了するはずである。トータル時間が標準的な時間より短い場合や長い場合には必ず何らかの問題があると判断できる。過去の同一の試験の正常なトータル時間から、予め適切な標準時間44とその許容範囲を計算しておくとよい。
【0057】
例えば試料の撹拌時間や計測前に状態の安定を待つ時間など、実際の測定結果には現れない個々の作業時間の積み重ねがトータル時間の差を生じさせる。従って、例えば、試験項目ごとの試験に要した時間及びトータル時間を標準時間と比較判断する。そして、所定の許容範囲にない場合には、その比較結果をホストシステム57のデータベース59に記録しておくとよい。この比較評価処理を自動的に演算する比較評価装置74を、例えば、管理用コンピュータ26に設けておくことが好ましい。これにより、分析試験の質がいっそう向上し、分析試験結果の信頼性を格段に向上させることが可能になる。