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特開2022-69317装置、センサ、センシング方法、センサシステム、及び発電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069317
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】装置、センサ、センシング方法、センサシステム、及び発電方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20220428BHJP
   H01M 14/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
G01N27/00 B
H01M14/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178432
(22)【出願日】2020-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】399131116
【氏名又は名称】トライポッド・デザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 聰
(72)【発明者】
【氏名】大井 寛崇
【テーマコード(参考)】
2G060
5H032
【Fターム(参考)】
2G060AA01
2G060AA05
2G060AA17
2G060AB02
2G060AC01
2G060AF15
2G060AG03
2G060AG15
2G060BB07
2G060JA02
2G060KA04
2G060KA08
5H032AA00
5H032AS01
5H032AS03
5H032AS05
5H032AS06
5H032AS09
5H032HH04
5H032HH08
(57)【要約】
【課題】
微量物質を検出すること及び微量物質の吸着によりエネルギーを発生させることを目的とする。
【解決手段】
第一の電極と第二の電極を備え、第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、第一の電極と第二の電極の表面の一部又は全部が露出している、装置。また、基材を備え、第一の電極と第二の電極が、基材を介して物理的に接続されている、装置。さらに、第一の電極と第二の電極との間の最短距離が10μm以下である、装置。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極と第二の電極を備え、
第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、
第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、
第一の電極と第二の電極の表面の一部又は全部が露出している、装置。
【請求項2】
基材を備え、
第一の電極と第二の電極が、基材を介して物理的に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第一の電極と第二の電極との間の最短距離が10μm以下である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
第一の電極及び第二の電極が、くし形の形状を有する、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
基材の表面上に第一の電極と第二の電極が形成された、請求項2~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
第一の電極が、金、銀、銅、白金又はカーボンを含む、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
第二の電極が、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、クロム、チタン、スズ、鉄、リチウム又はナトリウムを含む、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
第一電極及び/又は第二電極が複数の材料による積層構造を有する、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
第一電極及び/又は第二電極が、接着層を介して基材と接続されている、請求項2~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
第一電極と第二電極との間の電気抵抗が10kΩ以上である、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
基材の電気伝導度又はイオン伝導度が、1S/cm以下である、請求項2~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
基材の表面自由エネルギーが、32mJ/m以上、2,000mJ/m以下である、請求項2~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
基材の表面の水酸基量が、0.1atomic%以上、90atomic%以下である、請求項2~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
基材の表面自由エネルギーが、10mJ/m以上、2,000mJ/m以下である、請求項2~11のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
基材の表面に撥水性材料が形成された、請求項2~11及び14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
基材の表面の水の接触角が、90°以下である、請求項2~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
基材の表面の算術平均粗さRaが、0.001μm以上、1μm以下である、請求項2~16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
基材が、ガラス、ポリイミド、PET、PEN又はシリコンウェハである、請求項2~17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
第一の電極と第二の電極とを備え、
第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、
第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である、センサ。
【請求項20】
さらに第三の電極を備え、
第一の電極と第三の電極は電気的に接続されておらず、
第二の電極と第三の電極は電気的に接続されておらず、
第一の電極又は第二の電極と、第三の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第一の電極又は第二の電極の標準電極電位と、第三の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である、請求項19に記載のセンサ。
【請求項21】
第一の電極と第二の電極を備え、
第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、
第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である装置において、
100μm以下の径を有し、且つ、イオン化した分子を含む粒子が、第一の電極及び第二の電極に接触したことを検知する、センシング方法。
【請求項22】
前記粒子の径が、10μm以下である、請求項21に記載のセンシング方法。
【請求項23】
(複数のセンサからなるシステム、ピッチが異なる)
第一センサと第二センサとを備えるセンサシステムであって、
第一センサが、
第一の電極と第二の電極を備え、
第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、
第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、
第二センサが、
第三の電極と第四の電極を備え、
第三の電極と第四の電極は電気的に接続されておらず、
第三の電極と第四の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第三の電極の標準電極電位と第四の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、
第一の電極と第二の電極との間の最短距離と、第三の電極と第四の電極との間の最短距離が異なる、センサシステム。
【請求項24】
第一センサと第二センサとを備えるセンサシステムであって、
第一センサが、
第一の電極と第二の電極を備え、
第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、
第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、
第二センサが、
第三の電極と第四の電極を備え、
第三の電極と第四の電極は電気的に接続されておらず、
第三の電極と第四の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第三の電極の標準電極電位と第四の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、
第一の電極を構成する素材と第二の電極を構成する素材の組み合わせが、第三の電極を構成する素材と第四の電極を構成する素材の組み合わせと異なる、センサシステム。
【請求項25】
第一の電極と第二の電極を備え、
第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、
第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である装置において、
100μm以下の径を有し、且つ、イオン化した分子を含む粒子を、第一の電極及び第二の電極に接触させることで発電をする、発電方法。
【請求項26】
前記粒子の径が、10μm以下である、請求項25に記載の発電方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湿度計、露点計、グルコースセンサ、pHセンサ等、物質の濃度を測定するセンサは、電極間に付着した物質によって電極間の抵抗が変化することを利用し、電極間に流れる電流を測定することで電極間に付着した物質量を測定している。
【0003】
特許文献1には、一対の櫛歯電極と、櫛歯電極間に試薬層を備え、電極間に電圧を印加し、電極間の電流を測定することで試料中の対象物の濃度を算出するセンサが開示されている。しかしながら、この構成では電流測定回路を動作させるための電源のほかに、櫛歯電極間に流す電流が必要であり、消費電力が大きくなる問題があった。
【0004】
また、特許文献2には一対の電極と、電極間に水分を吸着することによって物理量が変化する感湿部材とを備え、電極間の容量を電圧に変換することで湿度を測定する湿度センサが開示されている。容量を電圧に変換する方法として、スイッチドキャパシタ回路を用いることが開示されている。しかしながら、この方法では、常に電極間に電流を流す必要があること及びスイッチドキャパシタ回路の駆動電力が必要であることから、消費電力が大きくなる問題があった。さらに、複雑な回路を用いなければならないこともコストの観点から問題である。
【0005】
また、特許文献3には、第一の電極及び第二の電極がそれぞれ櫛形形状として形成された櫛形電極及びそれを用いた二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6553554号公報
【特許文献2】特開2008-268025号公報
【特許文献3】国際公開第2014/038455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、微小の粒子により発電する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の[1]~[26]により、達成される。
[1]第一の電極と第二の電極を備え、第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、第一の電極と第二の電極の表面の一部又は全部が露出している、装置;
[2]基材を備え、第一の電極と第二の電極が、基材を介して物理的に接続されている、前記[1]に記載の装置;
[3]第一の電極と第二の電極との間の最短距離が10μm以下である、前記[1]又は[2]に記載の装置;
[4]第一の電極及び第二の電極が、くし形の形状を有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の装置;
[5]基材の表面上に第一の電極と第二の電極が形成された、前記[2]~[4]のいずれかに記載の装置;
[6]第一の電極が、金、銀、銅、白金又はカーボンを含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の装置;
[7]第二の電極が、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、クロム、チタン、スズ、鉄、リチウム又はナトリウムを含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載の装置;
[8]第一電極及び/又は第二電極が複数の材料による積層構造を有する、前記[1]~[7]のいずれかに記載の装置;
[9]第一電極及び/又は第二電極が、接着層を介して基材と接続されている、前記[2]~[8]のいずれかに記載の装置;
[10]第一電極と第二電極との間の電気抵抗が10kΩ以上である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の装置;
[11]基材の電気伝導度又はイオン伝導度が、1S/cm以下である、前記[2]~[9]のいずれかに記載の装置;
[12]基材の表面自由エネルギーが、32mJ/m以上、2,000mJ/m以下である、前記[2]~[11]のいずれかに記載の装置;
[13]基材の表面の水酸基量が、0.1atomic%以上、90atomic%以下である、前記[2]~[12]のいずれかに記載の装置;
[14]基材の表面自由エネルギーが、10mJ/m以上、2,000mJ/m以下である、前記[2]~[11]のいずれかに記載の装置;
[15]基材の表面に撥水性材料が形成された、前記[2]~[11]及び[14]のいずれかに記載の装置;
[16]基材の表面の水の接触角が、90°以下である、前記[2]~[15]のいずれかに記載の装置;
[17]基材の表面の算術平均粗さRaが、0.001μm以上、1μm以下である、前記[2]~[16]のいずれかに記載の装置;
[18]基材が、ガラス、ポリイミド、PET、PEN又はシリコンウェハである、前記[2]~[17]のいずれかに記載の装置;
[19]第一の電極と第二の電極とを備え、第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である、センサ;
[20]さらに第三の電極を備え、第一の電極と第三の電極は電気的に接続されておらず、第二の電極と第三の電極は電気的に接続されておらず、第一の電極又は第二の電極と、第三の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、
第一の電極又は第二の電極の標準電極電位と、第三の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である、前記[19]に記載のセンサ;
[21]第一の電極と第二の電極を備え、第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である装置において、100μm以下の径を有し、且つ、イオン化した分子を含む粒子が、第一の電極及び第二の電極に接触したことを検知する、センシング方法;
[22]前記粒子の径が、10μm以下である、前記[21]に記載のセンシング方法;
[23]第一センサと第二センサとを備えるセンサシステムであって、第一センサが、第一の電極と第二の電極を備え、第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、第二センサが、第三の電極と第四の電極を備え、第三の電極と第四の電極は電気的に接続されておらず、第三の電極と第四の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第三の電極の標準電極電位と第四の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、第一の電極と第二の電極との間の最短距離と、第三の電極と第四の電極との間の最短距離が異なる、センサシステム;
[24]第一センサと第二センサとを備えるセンサシステムであって、第一センサが、第一の電極と第二の電極を備え、第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、第二センサが、第三の電極と第四の電極を備え、第三の電極と第四の電極は電気的に接続されておらず、第三の電極と第四の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第三の電極の標準電極電位と第四の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、第一の電極を構成する素材と第二の電極を構成する素材の組み合わせが、第三の電極を構成する素材と第四の電極を構成する素材の組み合わせと異なる、センサシステム;
[25]第一の電極と第二の電極を備え、第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である装置において、100μm以下の径を有し、且つ、イオン化した分子を含む粒子を、第一の電極及び第二の電極に接触させることで発電をする、発電方法;
[26]前記粒子の径が、10μm以下である、前記[25]に記載の発電方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る電極の配置の例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電極の配置の例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電極の構造の例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る実施例の電極の配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について以下詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
(装置構成)
本実施形態の装置は、第一の電極と第二の電極を備え、第一の電極と第二の電極は電気的に接続されておらず、第一の電極と第二の電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極の標準電極電位と第二の電極の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、第一の電極と第二の電極の表面の一部又は全部が露出している。
【0012】
通常、電気的に絶縁された電極間に物質が吸着しても、電極間に電位差が発生することはない。これに対し発明者らは、電極間距離を極端に小さくすることで、物質の吸着によって電極間で化学反応が発生するようになり、電位差が生じることを発見した。
【0013】
(n個の電極を有する装置)
上述の装置は、n個の電極を有してもよい。ここで、nは、3以上の整数であることとする。第一の電極から第nの電極までのn個の電極は、それぞれ電気的には接続されていない。第kの電極と、他の少なくとも1つの電極との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下である。ここで、kは、1以上、n以下の整数であることとする。また、第kの電極の標準電極電位と、他の少なくとも1つの電極の標準電極電位との差の絶対値は、0.1V以上である。第一の電極から第nの電極までのn個の電極の表面の一部又は全部が露出している。
【0014】
第一の電極から第nの電極までのn個の電極のうち、2個以上、(n-1)個以下の電極が、同様の形状、材質、及び/又は物性を有してもよい。
【0015】
第一の電極から第nの電極までのn個の電極のうち、3個以上の電極が異なる材料から構成されてもよい。異なる材料の電極からは異なる情報を得ることができる。したがって、n個の電極を有する装置は、異なる材料の電極を3個以上有することが好ましい。例えば、第一の電極と第二の電極と第三の電極を有し、第一の電極の材料と第二の電極の材料と第三の電極の材料がそれぞれ異なる装置の場合、吸着した物質に対する応答が、第一の電極と第二の電極の組と、第一の電極と第三の電極の組とで異なるため、吸着した物質の特性について複数の情報を得ることができる。
【0016】
第kの電極と第jの電極との間の最短距離は、任意のk及びjについて一定でもよいし、異なっていてもよい。ここで、jは、kとは異なる、1以上、n以下の整数であることとする。電極間の最短距離の異なる電極の組からは、異なる情報を得ることができる。したがって、n個の電極を有する装置は、電極間の最短距離の異なる電極の組を複数有することが好ましい。例えば、第一の電極と第二の電極と第三の電極を有し、第一の電極と第二の電極との間の最短距離と、第一の電極と第三の電極との間の最短距離の値が異なる装置の場合、検出できる物質の大きさが、第一の電極と第二の電極の組と、第一の電極と第三の電極の組とで異なるため、吸着した物質の大きさ情報を得ることができる。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る電極の配置の例を示す図である。図1では、複数の電極が平面的に配置された場合における、電極の配置の例を示している。
【0018】
図1(a)は、第一の電極10から第五の電極10までの、5個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図1(a)では、各電極は、板状の四角形の形状をしている。そして、各電極は、各電極の表面積の大きい面が同一平面上に位置するよう、配置されている。また、第一の電極10を中心に、第二の電極10から第五の電極10までの4個の電極が、同心円上に配置されている。最も近い距離に配置されている電極10、つまり隣接している電極間の距離は、それぞれ異なっている。
【0019】
図1(b)は、第一の電極10から第六の電極10までの、6個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図1(b)では、第一の電極10は板状の円形の形状をしており、第二の電極10から第六の電極10までの5個の電極は、板状の、2つの円弧に囲まれた形状をしている。そして、各電極は、各電極の表面積の大きい面が同一平面上に位置するよう、配置されている。また、第一の電極10を中心に、第二の電極10から第六の電極10までの5個の電極が、同心円上に配置されている。隣接している電極間の距離は、それぞれ異なっている。
【0020】
図1(c)は、第一の電極10から第六の電極10までの、6個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図1(c)では、第一の電極10は板状の円形の形状をしており、第二の電極10から第六の電極10までの5個の電極は、板状の、2つの円弧に囲まれた形状をしている。そして、各電極は、各電極の表面積の大きい面が同一平面上に位置するよう、配置されている。また、第一の電極10を中心に、第二の電極10から第六の電極10までの5個の電極が、同心円上に配置されている。また、第一の電極10と、第二の電極10、第三の電極10、第四の電極10、第五の電極10、及び第六の電極10の、それぞれの電極間の距離は、等しくなっている。このような電極の配置にすることで電極間距離の等しい電極対の数を容易に増やすことができる。
【0021】
図1(d)は、第一の電極10、及び第二の電極10の、2個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図1(d)では、第一の電極10、及び第二の電極10は、板状のくし形の形状をしている。そして、第一の電極10、及び第二の電極10の、表面積の大きい面が同一平面上に位置するよう、かつ、くしの歯の部分がかみ合うように配置されている。第一の電極10、及び第二の電極10の、くしの歯の凸部分同士の電極間の距離は、等しいこととしてもよく、異なることとしてもよい。また、第一の電極10、及び第二の電極10の、くしの歯の凸部分と凹部分の電極間の距離は、等しいこととしてもよく、異なることとしてもよい。さらに、第一の電極10、及び第二の電極10の、くしの歯の凸部分同士の電極間の距離と、くしの歯の凸部分と凹部分の電極間の距離は、等しいこととしてもよく、異なることとしてもよい。このような電極の配置にすることで、電極同士が対向する部分の長さ、及び表面積を大きくすることができるため、後述するセンサの感度を高めることができる。くしの歯の凸部分の本数は、1本以上であればよい。くしの歯の凸部分の本数は、10本以上であることが好ましく、100本以上であることがさらに好ましい。また、くしの歯の凸部分の本数は、10,000本以下であることが好ましく、1,000本以下であることがより好ましく、500本以下であることがさらに好ましい。くしの歯の凸部分の本数が上記の範囲内にあることで、装置のセンサとしての感度を高め、かつ、加工時の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0022】
図1(e)は、第一の電極10から第四の電極10までの、4個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図1(e)では、各電極は、板状の四角形の形状をしている。そして、各電極は、同一平面上に表面積の大きい面が位置するように、横方向に一列に、つまり、一次元アレイ状に配置されている。また、隣接する電極間の距離は、等しくなっている。
【0023】
図1(f)は、第一の電極10から第nの電極10までの、n個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図1(f)では、各電極は、板状の円形の形状をしている。そして、各電極は、同一平面上に表面積の大きい面が位置するように、かつ、縦方向と横方向に規則的に配列されている。つまり、各電極は、二次元アレイ状に配置されている。また、隣接する電極間の距離は、等しくなっている。このような電極の配置にすることで、小さい面積に多数の電極を形成することができる。
【0024】
図1(g)は、第一の電極10から第nの電極10までの、n個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図1(g)では、各電極は、板状の正六角形の形状をしている。そして、各電極は、同一平面上に表面積の大きい面が位置するように、かつ、縦方向と横方向に間隙が均一になるように配列されている。つまり、各電極は、二次元アレイ状にハニカム構造となるよう、配置されている。また、隣接する電極間の距離は、等しくなっている。このような配置にすることで、任意の電極について、隣り合う電極との距離を一定にすることができる。電極の形状が、正三角形、正方形などの場合にも、同様の配置にすることができる。
【0025】
図1(h)は、第一の電極10から第nの電極10までの、n個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図1(h)では、各電極は、円錐の形状をしている。そして、各電極は、同一平面上に円錐の底面が位置するように、かつ、縦方向と横方向に規則的に配列されている。つまり、各電極は、二次元アレイ状に配置されている。また、隣接する電極間の距離は、等しくなっている。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態に係る電極の配置の例を示す図である。図2では、複数の電極が立体的に配置された場合における、電極の配置の例を示している。
【0027】
図2(a)は、第一の電極10、第二の電極10、及び第三の電極10の、3個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図2(a)では、各電極は、円柱の形状をしている。そして、各電極が、三角柱の高さ方向の辺に沿って配置されている。各電極が、正三角柱の高さ方向の辺に沿って配置される場合、隣接する電極間の距離は、等しくなる。
【0028】
図2(b)は、第一の電極10から第八の電極10までの、8個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図2(b)では、各電極は、球の形状をしている。そして、各電極が、直方体の各頂点の位置に配置されている。隣接する電極間の距離は、等しくなっている。
【0029】
図2(c)は、第一の電極10から第九の電極10までの、9個の電極を有する装置の、電極の配置の例を示す図である。図2(c)では、各電極は、板状の四角形の形状をしている。そして、各電極が、円柱の側面上に表面積の大きい面が位置するように、かつ、各電極の四角形の長辺が円柱の高さ方向と平行になるよう、横一列に配置されている。隣接する電極間の距離は、等しくなっている。
【0030】
図1、及び図2に示した例以外にも、装置は、様々な電極の配置を有することができる。例えば、体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造などの格子の各頂点に電極を配置することもできる。
【0031】
(3つの電極がある装置)
第一の電極10と第二の電極10とさらに第三の電極10とを備え、第一の電極10と第二の電極10は電気的に接続されておらず、第一の電極10と第三の電極10は電気的に接続されておらず、第二の電極10と第三の電極10は電気的に接続されておらず、第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極10の標準電極電位と第二の電極10の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である。
【0032】
第三の電極10と第一の電極10との間の最短距離及び第三の電極10と第二の電極10との間の最短距離に特に制限はないが、いずれか一方は0.001μm以上、100μm以下であることが好ましい。また、第三の電極10と第一の電極10との間の最短距離及び第三の電極10と第二の電極10との間の最短距離の両方が0.001μm以上、100μm以下であることとしてもよい。
【0033】
第三の電極10の標準電極電位と第一の電極10の標準電極電位の差の絶対値及び第三の電極10の標準電極電位と第二の電極10の標準電極電位の差の絶対値に特に制限はないが、いずれか一方は0.1V以上であることが好ましい。また、第三の電極10の標準電極電位と第一の電極10の標準電極電位の差の絶対値及び第三の電極10の標準電極電位と第二の電極10の標準電極電位の差の絶対値の両方が0.1V以上であることととしてもよい。
【0034】
3つの電極10がある装置は、図2(a)に示すような、三角柱の高さ方向の辺に沿って電極10が位置する構造であってもよい。正三角柱の高さ方向の辺に電極10が位置する構造の場合、第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離と、第一の電極10と第三の電極10との間の最短距離と、第二の電極10と第三の電極10との間の最短距離が等しくなる。
【0035】
(電極共通)
電極10の形状は特に指定されないが、一次元的、二次元的、三次元的な形状を有してもよい。一次元的な形状とは、直線状の形状を言う。二次元的な形状とは、平面上の二次曲線(例えば楕円、放物線、双曲線等)、二次曲線と直線の組み合わせで表される形状や、平面形状(多角形、楕円、円、扇形等)、それらの組み合わせで形成される形状等を言う。特に、くし型形状とハニカム形状であることが好ましく、くし型形状はセンサを高感度化できるためより好ましい。三次元的な形状とは、三次元ユークリッド空間内の二次曲線、二次曲線と直線の組み合わせで表される形状、曲面形状、立体形状(例えば多面体、錐体、双錐体、錐台、柱体、楕円体等)、それらの組み合わせで形成される形状等を言う。また、第一の電極10及び第二の電極10の形状は、規則性を有してもよいし、不規則でもよい。規則的な構造としてフラクタル構造等が例示される。また、バイオミメティックな形状を有してもよい。
【0036】
第一の電極10と第二の電極10の標準電極電位の差の絶対値は、0.1V以上であることが好ましく、0.2V以上であることがより好ましく、0.5V以上であることがさらに好ましく、微量成分を高感度に測定するために1.0V以上であることがとりわけ好ましい。第一の電極10と第二の電極10の標準電極電位の差の絶対値は、0.1V以上であればセンサとして利用可能となり、0.2V以上であれば昇圧回路と併用することで電源として利用することが可能となる。また、第一の電極10と第二の電極10の標準電極電位の差の絶対値は、0.5V以上であれば汎用的な測定回路で測定可能となり、1.0V以上であれば微量成分を高感度に測定することが可能となる。第一の電極10と第二の電極10の標準電極電位の差の絶対値は、5.0V以下であることが好ましく、2.5V以下であることがより好ましく、2.0V以下であることがさらに好ましい。
【0037】
n個の電極10を有する装置においては、任意のkについて、第kの電極10の標準電極電位と他の少なくとも1つの電極10の標準電極電位との差の絶対値が、上記条件を満たす。
【0038】
第一の電極10と第二の電極10とは電気的に接続されていない。第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離は、0.001μm以上であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離は、0.01μm以上であると歩留まりが向上し、0.1μm以上であると確実に絶縁することが可能となる。
【0039】
また、第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離は、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることがとりわけ好ましい。第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離は、100μm以下であると液滴が検出可能となり、80μm以下であると霧状の物質が検出可能となり、30μm以下であると呼気が検出可能となり、10μm以下であると高湿度な空気が検出可能となる。
【0040】
ここで、第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離とは、第一の電極10上の任意の点と、第二の電極10上の任意の点とを結ぶ線分の長さのうち、最小の長さのことをいう。
【0041】
n個の電極10を有する装置においては、任意のkについて、第kの電極10と他の少なくとも1つの電極10との間の最短距離が、上記条件を満たす。
【0042】
(電極の材料)
電極10の材料は、単一の材料であってもよく、複数の材料を複合化したものであってもよい。電極10の材料は、例えば、集電体、活物質、バインダー、導電助剤、電解質、溶媒、添加剤等であってもよい。
【0043】
(電極の構造)
電極10の構造に特に指定はないが、単一層から構成されてもよいし、複数の材料による積層構造を有してもよい。電極10の抵抗を下げることができるため、導電層の表面上に活物質の層、すなわち活物質層が形成された積層構造であることが好ましい。導電層としては、集電体を用いることができる。電極10は、製造が容易であるため、多孔質な導電層に活物質を担持した構造であることとしてもよい。
【0044】
また、第一の電極10及び/又は第二の電極10は、接着層を介して、後述する、基材と接続されていることが好ましい。この場合、第一の電極10及び/又は第二の電極10の導電層が、接着層を介して、基材と接続されていることが好ましい。第一の電極10及び/又は第二の電極10が、接着層を介して基材と接続されていることで、第一の電極10及び/又は第二の電極10と、基材との密着性を向上させることができる。接着層としては、粘着剤、接着剤を用いることとしてもよい。また、チタンやクロムといった金属を用いることとしてもよい。
【0045】
図3は、本発明の実施の形態に係る電極の構造の例を示す図である。図3では、基材の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10が形成されている。
【0046】
図3(a)は、基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10が形成されている、電極の構造の例を示す図である。第一の電極10及び第二の電極10は、基材100の表面上の、片面に形成されている。
【0047】
図3(b)は、基材100の表面上に、接着層20を介して第一の電極10及び第二の電極10が形成されている、電極の構造の例を示す図である。第一の電極10及び第二の電極10は、それぞれ、接着層20及び接着層20を介して基材100と接続されている。また、第一の電極10及び第二の電極10は、基材100の表面上の、片面に形成されている。
【0048】
図3(c)は、基材100の表面上に、接着層20を介して、積層構造を有する第一の電極10及び第二の電極10が形成されている、電極の構造の例を示す図である。第一の電極10は、導電層30の表面上に活物質層40が形成された積層構造を有している。活物質層40は、導電層30の、接着層20と反対の表面上に形成されている。また、第二の電極10も、第一の電極10と同様の積層構造を有している。そして、第一の電極10の導電層30及び第二の電極10の導電層30は、それぞれ、接着層20及び接着層20を介して基材100と接続されている。また、第一の電極10及び第二の電極10は、基材100の表面上の、片面に形成されている。
【0049】
(集電体)
集電体は、電極の活物質が酸化還元反応して生成したキャリアを伝導する役割を有するため、電気抵抗率の小さい材料を用いることが好ましい。集電体の電気抵抗率は、10mΩcm以下であることが好ましく、1mΩcm以下であることがより好ましく、100μΩcm以下であることがさらに好ましい。
【0050】
集電体の電気抵抗は、1kΩ以下であることが好ましく、100Ω以下であることがより好ましく、10Ω以下であることがさらに好ましい。
【0051】
集電体の材料としては、導電性があれば特に限定はなく、例えば炭素系材料、金属材料、導電性セラミックス、導電性プラスチックス等を用いることができる。
【0052】
炭素系材料としては、活性炭、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレンなどが例示される。金属材料としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ニオブ、モリブデン、パラジウム、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、ランタン、タンタル、タングステン、プラチナ、鉛等の金属及びこれら金属の酸化物、窒化物、炭化物、塩、合金などを用いることができる。
【0053】
導電性セラミックスとしては、インジウムースズ酸化物、インジウム―亜鉛酸化物、インジウム―ガリウム―亜鉛酸化物などが例示される。
【0054】
導電性有機物としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等のπ共役分子及びPEDOT/PSS等のπ共役分子とドーパントからなる材料、TTF-TCNQ等の電荷移動錯体等を用いることができる。
【0055】
集電体は、使用環境においてそれ自体酸化還元しない安定な材料又は安定な被膜を形成する材料であることが好ましく、特に炭素系材料、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン及びこれらの合金であることが好ましい。
【0056】
(導電助剤)
導電助剤は、導電性を有する粉体材料を用いることができる。
【0057】
導電助剤の材料としては、導電性があれば特に限定はなく、例えば炭素系材料、金属材料、導電性セラミックス、導電性プラスチックス等を用いることができる。
【0058】
炭素系材料としては、活性炭、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレンなどが例示される。
【0059】
金属材料としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ニオブ、モリブデン、パラジウム、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、ランタン、タンタル、タングステン、プラチナ、鉛等の金属及びこれら金属の酸化物、窒化物、炭化物、塩、合金などを用いることができる。
【0060】
導電性セラミックスとしては、インジウムースズ酸化物、インジウム―亜鉛酸化物、インジウム―ガリウム―亜鉛酸化物などが例示される。導電性有機物としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等のπ共役分子及びPEDOT/PSS等のπ共役分子とドーパントからなる材料等を用いることができる。
【0061】
導電助剤は、使用環境においてそれ自体酸化還元しない安定な材料又は安定な被膜を形成する材料であることが好ましく、特に炭素系材料、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン及びこれらの合金であることが好ましい。
【0062】
また、これら導電性の材料が、シリカやアクリルビーズ等の粉体材料の表面にコーティングされた材料を用いることもできる。
【0063】
導電助剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましい。また、導電助剤の平均粒子径は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0064】
導電助剤の形状は、特に限定はなく、球、多面体、円柱、円錐、円筒、角錐、角柱等であってもよい。
【0065】
導電助剤として、導電性繊維を用いることもできる。導電性繊維としては、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、繊維の中に導電性の金属や炭素系材料を分散させた導電性繊維、繊維表面に導電性材料をコーティングした導電性繊維等を用いることができる。
【0066】
(バインダー)
バインダーは、電極の活物質、導電助剤、集電体を結着固定することができれば特に限定されない。例えば、でんぷん、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン―ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸等)、ビニル樹脂(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネートなどを用いることができる。
【0067】
(第一の電極)
第一の電極10においては、電子を消費して還元反応が起こる。従って、第一の電極10自体は標準電極電位が大きいことが好ましい。また、第一の電極10の標準電極電位は、第二の電極10の標準電極電位よりも大きいことが好ましい。第一の電極10の標準電極電位は、―300mV以上であることが好ましく、0V以上であることがより好ましく、+200mV以上であることがさらに好ましい。また、第一の電極10の標準電極電位は、3.5V以下であることが好ましく、2.5V以下であることがより好ましく、1.5V以下であることがさらに好ましい。
【0068】
第一の電極10の電気抵抗率は、微小な信号を高感度に電圧に変換するために、100kΩcm以下であることが好ましく、1kΩcm以下であることがより好ましく、10Ωcm以下であることがさらに好ましい。
【0069】
(第一の電極の活物質)
第一の電極10において、第一の電極10の活物質の還元が起こる。
【0070】
第一の電極10の活物質の標準電極電位は、-300mV以上であることが好ましく、0mV以上であることがより好ましく、+200mV以上であることがさらに好ましい。また、第一の電極10の活物質の標準電極電位は、3.5V以下であることが好ましく、2.5V以下であることがより好ましく、1.5V以下であることがさらに好ましい。
【0071】
第一の電極10の活物質としては、上記標準電極電池を有する材料であれば特に限定されないが、有機材料、無機材料、有機無機複合を用いることができる。具体的な材料は、論文、特許、電気化学便覧等、既報文献に記載の材料の中から適切な標準電極電位を有する物質を選んで用いることができる。
【0072】
特に、酸化マンガン(MnO、Mn、MnO(OH)、MnO、Mn、MnO、Mn等)、酸化銀(AgO等)、酸素、オゾン、酸化鉛(PbO等)、酸化ニッケル(Ni等)、水酸化ニッケル(Ni(OH)等)、オキシ水酸化ニッケル(NiO(OH)等)、酸化銅(CuO、CuO等)、酸化クロム(CrO、Cr、CrO、CrO等)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe等)は空気中で安定して存在するため好ましい。
【0073】
また、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カルシウムイオン電池、マグネシウム電池等に使用される第一の電極10の活物質を用いることができる。具体的には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属とそれ以外の金属(Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Alなど)とで構成される金属酸化物が例示される。
【0074】
第一の電極10としては、空気中での化学的安定性の高さから金、銀、銅、白金又はカーボンを含む材料を用いることが好ましい。
【0075】
(第二の電極)
第二の電極10においては、第二の電極10の活物質が酸化され、電子を放出する。従って、第二の電極10には標準電極電位が小さい物質を用いることが好ましい。また、第二の電極10の標準電極電位は、第一の電極10の標準電極電位よりも小さいことが好ましい。第二の電極10の標準電極電位は、-200mV以下であることが好ましく、-500mV以下であることがより好ましく、-700mV以下であることがさらに好ましい。また、第二の電極10の標準電極電位は、-3.5V以上であることが好ましく-2.5V以上であることがより好ましく、-1.5V以上であることがさらに好ましい。
【0076】
第二の電極10の電気抵抗率は、微小な信号を高感度に電圧に変換するために、100kΩcm以下であることが好ましく、10kΩcmであることがより好ましく、1kΩcmであることがさらに好ましい。
【0077】
(第二の電極の活物質)
第二の電極10では、第二の電極10の活物質の還元が起こる。
【0078】
第二の電極10の活物質の標準電極電位は、-200mV以下であることが好ましく、-500mV以下であることがより好ましく、-700mVmV以下であることがさらに好ましい。また、第二の電極10の活物質の標準電極電位は、-3.5V以上であることが好ましく、―2.5V以上であることがより好ましく、―1.5V以上であることがさらに好ましい。第二の電極10の活物質の標準電極電位が―1.5V以上であれば、水をほぼ電気分解することなく利用できる。
【0079】
第二の電極10の活物質としては、上記標準電極電池を有する材料であれば特に限定されないが、有機材料、無機材料、有機無機複合を用いることができる。具体的な材料は、論文、特許、電気化学便覧等、既報文献に記載の材料の中から適切な標準電極電位を有する物質を選んで用いることができる。
【0080】
特に、Zn、Pb、Cd、Mg、水素吸蔵合金、メタノール、ヒドラジン、水素、一酸化炭素、ギ酸、アミノカルボン酸系キレート剤(エチレンジアミンテトラ酢酸等)等は空気中での化学的安定性が高いため好ましい。
【0081】
また、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カルシウムイオン電池、マグネシウム電池等に使用される活物質を用いることができる。具体的には、炭素系材料(ハードカーボン、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体、コークス類、炭化ケイ素等)、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等)、金属(Li、Sn、Si、Al、Zr、Mg、Ti等)及びこれらの合金、金属酸化物(酸化チタン、リチウム―チタン酸化物、ケイ素酸化物等)、これらとアルカリ金属又はアルカリ土類金属とを複合化した材料等は高い反応性を有するため好ましい。
【0082】
第二の電極10としては、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、クロム、チタン、スズ、鉄、リチウム又はナトリウムを含む材料(例えばリチウム又はナトリウムを担持したカーボン等)等を好適に用いることができる。
【0083】
(その他電極材料)
電極10の活物質として、色素を用いることもできる。色素としては天然色素と合成色素を用いることができ、環境負荷の小さい天然色素がより好ましい。色素としては、例えば、アゾイック染料、アゾ染料、アクリジン、アニリンブラック、インダンスレン、エオシン、コンゴーレッド、ジヒドロイントール、メチレンブルー、フェナジン誘導体色素、ニュートラルレッド、フェノールフタレイン、フクシン、フルオレセイン、パラレッド、モーブ、カロチノイド(カロチン、キサントフィル、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、フコキサンチン、リコピン、ルテインなど)、フラボノイド(フラボン類、フラバノン、アントクロール、アントシアン、カテキン等)、キノン類(メラニンなど)、ポルフィリン系色素(クロロフィル、クロロフィリド、バクテリオクロロフィル、チトクロム、フェオホルビド、フェオポルフィリン、ヘムエリトリン、ヘモグロビン、ヘモバナジン、ヘモシアニン、ポルフィリン、プルフィン、ミオグロビン等)、フィコビリン系色素(フィコシアニン、フィコビリン、フィコエリスリン、フィトクロム、ビリベルジン、ビリルビン等)、アリザリン、アントシアン、アントラキノン、インジディゴ、ウロビリン、エリトロクルオリン、カルタミン、キサントンマチン、クルクミン、クロセチン、クロリン、クロロクルオリン、ゲニステイン、コチニール、ゴッシポール、コンメリニン、シコニン、ステルコピリン、タンニン、ツラシン、ビキシン、ヒペリシン、ピンナグロビン、ブラジリン、プルプリン、ベタシアニン、ベルベリン、ホルビリン、マンゴスチンモリンジン、ラミナラン、レグヘモグロビン、リトマス、ロドプシン、ロドキサンチン、ロドマチン等が例示される。
【0084】
(n個の電極の装置の材料)
n個の電極10を有する装置において、第三の電極10から第nの電極10については、上記した任意の材料を使用することができる。
【0085】
(電極間)
第一の電極10と第二の電極10の間の電気抵抗は、10kΩ以上であることが好ましく、100kΩ以上であることがより好ましく、1MΩ以上であることがさらに好ましい。第一の電極10と第二の電極10の間の電気抵抗は、10kΩ以上であれば物質が吸着した際に起電力を発生させることが可能となり、100kΩ以上であれば導電性の低い物質を検知することが可能となり、1MΩ以上であれば微量な物質を検知することが可能となる。
【0086】
n個の電極10を有する装置においては、任意の2つの電極10の間の電気抵抗は、第一の電極10と第二の電極10の間の電気抵抗に関する記載を必要な範囲で採用できる。
【0087】
電極間の抵抗は、例えばポテンショスタットやガルバノスタットを用いて、交流抵抗法等を用いて測定することができる。
【0088】
任意の2つの電極間は、真空であってもよいし、気体、液体、固体等の物質で充填されていてもよい。電極間の距離を一定に保ち、測定値を安定化するために、基材100の表面上に電極10が形成されていることが好ましい。
【0089】
(基材)
第一の電極10と第二の電極10は、基材100の表面上に形成されてもよいし、基材100の内部に形成されてもよいし、空中に自立して存在してもよい。第一の電極10と第二の電極10を基材100の表面上、あるいは内部に形成することで、第一の電極10と第二の電極10の距離が一定となる。第一の電極10と第二の電極10が基材100の表面上、あるいは内部に形成されている場合、第一の電極10と第二の電極10は、基材100を介して物理的に接続されている。
【0090】
n個の電極を有する装置においても、第一の電極10から第nの電極10までのn個の電極10は、基材100の表面上に形成されてもよいし、基材100の内部に形成されてもよいし、空中に自立して存在してもよい。電極10を基材100の表面上、あるいは内部に形成することで、電極10同士の距離が一定となる。
【0091】
基材100としては、電極10を支持できれば特に限定されないが、有機材料、無機材料、有機無機複合材料を用いることができる。
【0092】
有機材料として具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリイミド(PI)、シリコーン、紙フェノール、紙エポキシ、テフロン(登録商標)、等を用いることができる。特にPET及びPENは低コストで入手可能であり、事業の観点から有意であり好ましい。また、ポリイミドは耐熱性や耐薬品性が高いため、フォトリソグラフィーやはんだ付け等の工程にも利用できるため好ましい。
【0093】
無機材料としては、アルミナ、セラミックス、コンポジット、ガラス、薄膜ガラス、表面に酸化膜を形成した金属箔、表面に酸化膜を形成したシリコンウェハ等を用いることができる。特にガラスとシリコンウェハは表面に金属を加工しやすいため好適に用いることができる。
【0094】
有機無機複合材料として例えば、ガラスエポキシ、ガラスコンポジット、無機フィラーを分散した有機材料、表面に無機層コーティングした有機材料等を用いることができる。無機層のコーティング方法としては、ゾルゲル法、蒸着法、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等が挙げられる。
【0095】
基材100として、親水性の材料を用いることもできる。親水性の材料を用いた基材100は、空気中の水や水溶性成分を吸着しやすいため、水や水溶性の成分を高感度に検出することができる。
【0096】
親水性の材料を用いた基材100の表面自由エネルギーは、32mJ/m以上であることが好ましく、40mJ/m以上であることがより好ましく、45mJ/m以上であることがさらに好ましい。基材100の表面自由エネルギーが上記範囲内であることで、水や水溶性成分を検出することが可能となる。また、親水性の材料を用いた基材100の表面自由エネルギーは、2,000mJ/m以下であることが好ましく、1,400mJ/m以下であることがより好ましく、70mJ/m以下であることがさらに好ましい。基材100の表面自由エネルギーが上記範囲内であることで、一度吸着した水や水溶性成分を脱吸着することが可能となる。
【0097】
基材100の表面に親水性の官能基(水酸基、アミノ基、イミノ基、チオール基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、スクシンイミド骨格を有する官能基、ピロリドン骨格を有する官能基、セレノール基、ポリスルフィド基、ポリセレニド基、カルボキシ基、酸無水物骨格を有する官能基、ニトロ基、シアノ基等)があると、水や水溶性成分を高感度に検出できる。
【0098】
基材100の表面の親水性の官能基の濃度は、0.1atomic%以上であることが好ましく、1.0atomic%以上であることがより好ましく、10atomic%以上であることがさらに好ましい。また、基材100の表面の親水性の官能基の濃度は、90atomic%以下であることが好ましく、50atomic%以下であることがより好ましく、40atomic%以下であることがさらに好ましい。基材100の表面の親水性の官能基の濃度が上記範囲内であることで、第一の電極10と第二の電極10の短絡を防止することができる。基材100の表面の親水性官能基濃度は、気相化学修飾法によるESCA分析により定量できる。
【0099】
基材100として、撥水性の材料を用いることもできる。また、基材100として、基材100の表面に撥水性の材料が形成されたものを用いることもできる。撥水性の
材料は、基材全面に形成されてもよいし、電極近傍のみ形成されてもよい。撥水性の材料を用いた基材100は、空気中の有機溶剤や脂溶性成分を吸着しやすいため、有機溶剤や脂溶性成分を高感度に検出することができる。
【0100】
撥水性の材料を用いた基材100の表面自由エネルギーは、10mJ/m以上であることが好ましく、20mJ/m以上であることがより好ましく、25mJ/m以上であることがさらに好ましい。基材100の表面自由エネルギーが上記範囲内にあることで、一度吸着した脂溶性成分を脱吸着することが可能となる。また、撥水性の材料を用いた基材100の表面自由エネルギーは、2,000mJ/m以下であることが好ましく、1,400mJ/m以下であることがより好ましく、70mJ/m以下であることがさらに好ましい。基材100の表面自由エネルギーが上記範囲内にあることで、脂溶性成分を検出することが可能となる。
【0101】
基材100に対する水の接触角としては、90度以下であることが好ましく、85度以下であることがより好ましく、75度以下であることがさらに好ましい。
【0102】
基材100の表面の算術平均粗さRaは、小さいほど第一の電極10と第二の電極10との実効的な距離が小さくなるため、感度が向上する。基材100の表面の算術平均粗さRaは、1.0μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることがより好ましく、0.010μm以下であることがさらに好ましい。また、基材100の表面の算術平均粗さRaは、大きいほど他の層との密着性が向上する。基材100の表面の算術平均粗さRaは、1nm以上であることが好ましい。
【0103】
基材100の厚みに特に制限はない。基材100の厚みは、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、基材100の厚みは、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。1μm以上であれば自立膜として利用可能となり、10μm以上であれば高強度な膜が得られハンドリングが容易となる。5mmより厚いとデバイス重量が大きくなり装着感が悪くなってしまうため5mm以下とすることが好ましい。1mm以下であれば軽量な素子を形成できるため好ましく、200μm以下であれば柔軟性が高くなり曲げで破壊されてにくくなるため好ましい。
【0104】
基材100の電気伝導度又はイオン伝導度に特に制限はない。基材100の電気伝導度又はイオン伝導度は、1S/cm以下であることが好ましく、10-3S/cm以下であることがより好ましく、10-5S/cm以下であることがさらに好ましい。基材100の電気伝導度又はイオン伝導度が1S/cm以下であれば物質が吸着した際に起電力を発生させることが可能となり、10-3S/cm以下であれば導電性の低い物質を検出することが可能となり、10-5S/cm以下であれば微量な物質を検出することが可能となる。
【0105】
(センサ)
上述の装置をセンサとして用いることができる。上述の装置は、物質の吸着によって第一の電極10と第二の電極10との間に電位差が発生する。この電位差を電圧計で測定することで物質の吸脱着を検出することができる。
【0106】
物質の吸着により発生する電荷量は非常に少ないため、電圧計は高い入力インピーダンスを有することが好ましい。具体的には、10MΩ以上であることが好ましく、100MΩ以上であることがより好ましく、10GΩ以上であることがさらに好ましい。
【0107】
(n個の電極を有するセンサ)
上述の3個の電極10を有する装置及びn個の電極10を有する装置をセンサとして用いることができる。
【0108】
第kの電極10と第jの電極10との間の電位差を、電圧計によって測定することで物質の吸脱着をセンシングすることができる。
【0109】
n個の電極10を有するセンサを用いて、任意の2つの電極間の電圧を測定することで、{n(n-1)/2}次元のデータを得られるため、吸脱着した物質についてより多くの情報を得ることができる。
【0110】
第一の電極10から第nの電極10までのn個の電極10のうち、3個以上の電極10が異なる材料から構成されてもよい。異なる材料の電極10からは異なる情報を得ることができる。したがって、n個の電極10を有するセンサは、異なる材料の電極10を3個以上有することが好ましい。例えば、第一の電極10と第二の電極10と第三の電極10を有し、第一の電極10の材料と第二の電極10の材料と第三の電極10の材料がそれぞれ異なるセンサの場合、吸着した物質に対する応答が、第一の電極10と第二の電極10の組と、第一の電極10と第三の電極10の組とで異なるため、吸着した物質の特性について複数の情報を得ることができる。例えば、第一の電極10と第二の電極10との間に物質が吸着し、吸着した物質がこれらの両方の電極と接触した場合に発生する電流、電圧等と、第一の電極10と第三の電極10との間に物質が吸着し、吸着した物質がこれらの両方の電極と接触した場合に発生する電流、電圧等を測定することで、吸着した物質をより正確に特定することが可能となる。
【0111】
第kの電極10と第jの電極10との間の最短距離は、任意のk及びjについて一定でもよいし、異なっていてもよい。電極間の最短距離の異なる電極10の組からは、異なる情報を得ることができる。したがって、n個の電極10を有するセンサは、電極間の最短距離の異なる電極10の組を複数有することが好ましい。例えば、第一の電極10と第二の電極10と第三の電極10を有し、第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離と、第一の電極10と第三の電極10との間の最短距離の値が異なるセンサの場合、検出できる物質の大きさが、第一の電極10と第二の電極10の組と、第一の電極10と第三の電極10の組とで異なるため、吸着した物質の大きさ情報を得ることができる。
【0112】
第一の電極10から第nの電極10までのn個の電極10のうち、2個以上(n-1)個以下の電極10が、同様の形状、材質、物性を有してもよい。
【0113】
(複数のセンサからなるシステム)
複数のセンサからなるシステムについて説明する。センサシステムは、少なくとも2つのセンサから構成され、第一のセンサが、第一の電極10と、第二の電極10とを備え、第一の電極10と第二の電極10は電気的に接続されておらず、第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極10の標準電極電位と第二の電極10の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上であり、第二のセンサが、第三の電極10と、第四の電極10とを備え、第三の電極10と第四の電極10は電気的に接続されておらず、第三の電極10と第四の電極10との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第三の電極10の標準電極電位と第四の電極10の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である。
【0114】
センサシステムは、第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離と、第三の電極10と第四の電極10との間の最短距離が異なっていてもよい。
【0115】
センサシステムは、第一の電極10を構成する材料と第二の電極10を構成する材料の組み合わせが、第三の電極10を構成する材料と第四の電極10を構成する材料の組み合わせと異なっていてもよい。
【0116】
(センシング方法)
イオン化した分子を含む粒子が第一の電極10及び第二の電極10に接触することで、第一の電極10及び第二の電極上10で酸化還元反応が起こり、微小な電位差が発生する。この電位差を測定することで第一の電極10と第二の電極10に物質が吸着したかどうかを検知することができる。
【0117】
n個の電極10を有する装置の場合、任意の2つの電極10にイオン化した分子を含む粒子が接触することでセンシングすることができる。
【0118】
前記イオン化した分子を含む粒子は固体、液体、エアロゾル、気体であってもよい。従来のセンサ素子は大きな固体又は液滴を電極間に接触させることで物質の検出を行っていたが、本実施形態のセンサを用いれば100μm以下という極めて微小な固体粒子、液滴、エアロゾル、気体をも検知することができる。
【0119】
イオン化した分子を含む粒子は、自身よりも大きい分子を含むことができないため、イオン化した分子を含む粒子よりも小さい分子を選択的にセンシングすることができる。
【0120】
イオン化した分子を含む粒子の粒子径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることがとりわけ好ましく、1μm以下であることが特に好ましく、0.8μm以下であることが特別に好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。イオン化した分子を含む粒子の粒子径は、100μm以下であれば花粉などのアレルゲンを検出でき、10μm以下であればPM10等の有害なエアロゾルを選択的に検出でき、1μm以下であれば人体に有害なナノ粒子を選択的に検出することができる。
【0121】
(発電方法)
本実施形態の装置は、イオン化した分子を含む粒子の接触により起電力を発生する。この起電力をエネルギーとして利用することができる。具体的には、第一の電極10と、第二の電極10とを備え、第一の電極10と第二の電極10は電気的に接続されておらず、第一の電極10と第二の電極10との間の最短距離が0.001μm以上、100μm以下であり、第一の電極10の標準電極電位と第二の電極10の標準電極電位の差の絶対値が0.1V以上である装置において、100μm以下の径を有し、且つ、イオン化した分子を含む粒子を、第一の電極10及び第二の電極10に接触させることで発電することができる。
【0122】
発電方法に関するイオン化した分子を含む粒子の粒子径については、前述の、センシング方法に関する記載を必要な範囲で採用できる。
【0123】
(複数の装置を用いた発電方法)
上述の装置を複数用いることでより大きなエネルギーを発生させることができる。a個の装置を用い、第bの装置の第二の電極と第(b+1)の装置の第一の電極とを短絡させることで、イオン化した分子を含む粒子が接触した際の起電力を大きくすることができる。ここで、aは、2以上の整数であり、bは、1以上、(a-1)以下の整数であることとする。
【0124】
(電極の形成方法)
電極の形成方法に特に制限はないが、例えば蒸着、電解メッキ、無電解メッキ、塗布、レーザーアブレーション、切削加工、印刷、フォトリソグラフィー、インプリント、貼合等、種々の方法を用いることができる。
【実施例0125】
図4は、本発明の実施の形態に係る実施例の電極の配置を説明するための図である。図4は、第一の電極10、及び第二の電極10の、2個の電極を有する装置の、電極の配置を示している。
【0126】
図4に示すように、第一の電極10及び第二の電極10は、くし形の形状を有している。そして、第一の電極10及び第二の電極10の形状は、合同の関係にある。
【0127】
第一の電極10、及び第二の電極10は、くしの歯の部分がかみ合うように配置されている。図示するように、第一の電極10と第二の電極10の、くしの歯の凸部分同士の電極間の距離を、電極間距離dとする。そして、第一の電極10と第二の電極10の、くしの歯の凸部分と凹部分の電極間の距離を、電極間距離dとする。
【0128】
第一の電極10と第二の電極10のくしの歯がかみ合っている部分においては、電極間距離dは一定であることとする。また、第一の電極10と第二の電極10のくしの歯がかみ合っている部分においては、電極間距離dは一定であることとする。
【0129】
図示するように、第一の電極10の、くしの歯の向きと垂直な方向の長さを、第一の電極10の長さLとする。そして、第一の電極10の、くしの歯の向きと平行な方向の、くしの歯でない部分の長さを、第一の電極10の幅Wとする。以下、電極10の、くしの歯の向きと垂直な方向の長さを、電極10の長さLという。また、電極10の、くしの歯の向きと平行な方向の、くしの歯でない部分の長さを、電極10の幅Wという。
【0130】
また、図示するように、第一の電極10のくしの歯の凸部分50の、くしの歯の向きと平行な方向の長さを、第一の電極10のくしの歯の凸部分50の長さlとする。そして、第一の電極10のくしの歯の凸部分50の、くしの歯の向きと垂直な方向の長さを、第一の電極10のくしの歯の凸部分50の幅wとする。以下、電極10のくしの歯の凸部分50の、くしの歯の向きと平行な方向の長さを、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlという。そして、電極10のくしの歯の凸部分50の、くしの歯の向きと垂直な方向の長さを、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wという。
【0131】
実施例1~6、及び8、並びに比較例1~2においては、図4に示すような電極の配置を有する装置を作成した。以下、くし形の電極がかみ合った構造の装置を、くし形電極構造の装置という。
【0132】
(評価方法)
作成した装置に、霧吹き、加湿器の蒸気、吐息、湿度90%の空気をあてた際の、電極間の電位差を入力インピーダンス10MΩのオシロスコープで測定した。
【0133】
(実施例1)
ガラスからなる基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10を形成し、くし形電極構造の装置を作成した。基材100の厚さは700μmであった。基材100と、第一の電極10の導電層30との間には、チタンからなる接着層20を形成した。また、基材100と、第二の電極10の導電層30の間には、チタンからなる接着層20を形成した。接着層20、及び接着層20の厚さは、10nmであった。第一の電極10の導電層30、及び第二の電極10の導電層30の材料には、金を用いた。第二の電極10の導電層30の、接着層20と反対の表面上には、亜鉛からなる活物質層40を形成した。活物質層40の厚さは0.5μmであった。電極10の長さLは4mm、電極10の幅Wは1.5mm、電極10の厚さは0.1μm、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlは4mm、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wは10μmであった。また、電極間距離dは5μm、電極間距離dは500μmであった。第一の電極10及び第二の電極10のくしの歯の凸部分50の本数は、各66本であった。装置の詳細を、表1、及び表2に示す。
【0134】
霧吹きに対して0.6V、加湿器の蒸気に対して0.6V、吐息に対して0.6V、湿度90%の空気に対して0.6Vの電圧が観察された。評価結果を表2に示す。
【0135】
(実施例2)
エポキシガラスからなる基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10を形成し、くし形電極構造の装置を作成した。基材100の厚さは1600μmであった。第一の電極10の導電層30、及び第二の電極10の導電層30の材料には、銅を用いた。第二の電極10の導電層30の、接着層20と反対の表面上には、亜鉛からなる活物質層40を形成した。活物質層40の厚さは0.5μmであった。電極10の長さLは5mm、電極10の幅Wは4mm、電極10の厚さは17μm、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlは2.5mm、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wは100μmであった。また、電極間距離dは100μm、電極間距離dは100μmであった。第一の電極10及び第二の電極10のくしのくしの歯の凸部分50の本数は、各10本であった。装置の詳細を、表1、及び表2に示す。
【0136】
霧吹きに対して0.7V、加湿器の蒸気に対して0V、吐息に対して0V、湿度90%の空気に対して0Vの電圧が観察された。評価結果を表2に示す。
【0137】
(実施例3)
エポキシガラスからなる基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10を形成し、くし形電極構造の装置を作成した。基材100の厚さは1600μmであった。第一の電極10の導電層30、及び第二の電極10の導電層30の材料には、銅を用いた。第二の電極10の導電層30の、接着層20と反対の表面上には、亜鉛からなる活物質層40を形成した。活物質層40の厚さは0.5μmであった。電極10の長さLは5mm、電極10の幅Wは4mm、電極10の厚さは17μm、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlは2.5mm、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wは100μmであった。また、電極間距離dは75μm、電極間距離dは100μmであった。第一の電極10及び第二の電極10のくしのくしの歯の凸部分50の本数は、各10本であった。装置の詳細を、表1、及び表2に示す。
【0138】
霧吹きに対して0.7V、加湿器の蒸気に対して0.7V、吐息に対して0V、湿度90%の空気に対して0Vの電圧が観察された。評価結果を表2に示す。
【0139】
(実施例4)
ポリイミドからなる基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10を形成し、くし形電極構造の装置を作成した。基材100の厚さは75μmであった。基材100と、第一の電極10の導電層30との間には、ニクロムからなる接着層20を形成した。また、基材100と、第二の電極10の導電層30の間には、ニクロムからなる接着層20を形成した。接着層20、及び接着層20の厚さは、10nmであった。第一の電極10の導電層30、及び第二の電極10の導電層30の材料には、銅を用いた。第二の電極10の導電層30の、接着層20と反対の表面上には、亜鉛からなる活物質層40を形成した。活物質層40の厚さは0.5μmであった。電極10の長さLは4mm、電極10の幅Wは4mm、電極10の厚さは2μm、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlは2mm、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wは100μmであった。また、電極間距離dは10μm、電極間距離dは100μmであった。第一の電極10及び第二の電極10のくしのくしの歯の凸部分50の本数は、各10本であった。装置の詳細を、表1、及び表2に示す。
【0140】
霧吹きに対して0.7V、加湿器の蒸気に対して0.7V、吐息に対して0.7V、湿度90%の空気に対して0.7Vの電圧が観察された。評価結果を表2に示す。
【0141】
(実施例5)
ポリイミドからなる基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10を形成し、くし形電極構造の装置を作成した。基材100の厚さは75μmであった。基材100と、第一の電極10の導電層30との間には、ニクロムからなる接着層20を形成した。また、基材100と、第二の電極10の導電層30の間には、ニクロムからなる接着層20を形成した。接着層20、及び接着層20の厚さは、10nmであった。第一の電極10の導電層30、及び第二の電極10の導電層30の材料には、銅を用いた。第二の電極10の導電層30の、接着層20と反対の表面上には、亜鉛からなる活物質層40を形成した。活物質層40の厚さは0.5μmであった。電極10の長さLは4mm、電極10の幅Wは4mm、電極10の厚さは2μm、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlは2mm、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wは100μmであった。また、電極間距離dは20μm、電極間距離dは100μmであった。第一の電極10及び第二の電極10のくしのくしの歯の凸部分50の本数は、各10本であった。装置の詳細を、表1、及び表2に示す。
【0142】
霧吹きに対して0.7V、加湿器の蒸気に対して0.7V、吐息に対して0.7V、湿度90%の空気に対して0Vの電圧が観察された。評価結果を表2に示す。
【0143】
(実施例6)
ポリイミドからなる基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10を形成し、くし形電極構造の装置を作成した。基材100の厚さは75μmであった。基材100と、第一の電極10の導電層30との間には、ニクロムからなる接着層20を形成した。また、基材100と、第二の電極10の導電層30の間には、ニクロムからなる接着層20を形成した。接着層20、及び接着層20の厚さは、10nmであった。第一の電極10の導電層30、及び第二の電極10の導電層30の材料には、銅を用いた。第二の電極10の導電層30の、接着層20と反対の表面上には、亜鉛からなる活物質層40を形成した。活物質層40の厚さは0.5μmであった。電極10の長さLは4mm、電極10の幅Wは4mm、電極10の厚さは2μm、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlは2mm、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wは100μmであった。また、電極間距離dは50μm、電極間距離dは100μmであった。第一の電極10及び第二の電極10のくしのくしの歯の凸部分50の本数は、各10本であった。装置の詳細を、表1、及び表2に示す。
(実施例7)
【0144】
霧吹きに対して0.7V、加湿器の蒸気に対して0.7V、吐息に対して0V、湿度90%の空気に対して0Vの電圧が観察された。評価結果を表2に示す。
【0145】
(実施例7)
第一の電極10の導電層30の材料として銅を用い、第二の電極10の導電層30の材料として亜鉛を用いた。第一の電極10及び第二の電極10は、共に縦10mm、横10mm、厚さ100μmの板状であり、表面積の大きい面同士が向かい合うように、かつ、第一の電極と第二の電極が接触しないよう平行に積層され、装置が形成された。第一の電極10及び第二の電極10の距離は10μmであった。装置の詳細を、表1、及び表2に示す。
【0146】
霧吹きに対して0.7V、加湿器の蒸気に対して0.7V、吐息に対して0.7V、湿度90%の空気に対して0Vの電圧が観察された。評価結果を表2に示す。
【0147】
(比較例1)
エポキシガラスからなる基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10を形成し、くし形電極構造の装置を作成した。基材100の厚さは1600μmであった。第一の電極10の導電層30、及び第二の電極10の導電層30の材料には、銅を用いた。第二の電極10の導電層30の、接着層20と反対の表面上には、亜鉛からなる活物質層40を形成した。活物質層40の厚さは0.5μmであった。電極10の長さLは5mm、電極10の幅Wは4mm、電極10の厚さは17μm、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlは2.5mm、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wは100μmであった。また、電極間距離dは150μm、電極間距離dは100μmであった。第一の電極10及び第二の電極10のくしのくしの歯の凸部分50の本数は、各10本であった。装置の詳細を、表1、及び表2に示す。
【0148】
霧吹き、加湿器の蒸気、吐息、湿度90%の空気の、いずれに対しても電圧は観察されなかった。評価結果を表2に示す。
【0149】
(比較例2)
ポリイミドからなる基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10を形成し、くし形電極構造の装置を作成した。基材100の厚さは75μmであった。基材100と、第一の電極10の導電層30との間には、ニクロムからなる接着層20を形成した。また、基材100と、第二の電極10の導電層30の間には、ニクロムからなる接着層20を形成した。接着層20、及び接着層20の厚さは、10nmであった。第一の電極10の導電層30、及び第二の電極10の導電層30の材料には、銅を用いた。第二の電極10の導電層30の、接着層20と反対の表面上には、ニッケルからなる活物質層40を形成した。活物質層40の厚さは2μmであった。電極10の長さLは4mm、電極10の幅Wは4mm、電極10の厚さは2μm、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlは2mm、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wは100μmであった。また、電極間距離dは10μm、電極間距離dは100μmであった。第一の電極10及び第二の電極10のくしのくしの歯の凸部分50の本数は、各10本であった。装置の詳細を、表1、及び表2に示す。
【0150】
霧吹き、加湿器の蒸気、吐息、湿度90%の空気の、いずれに対しても電圧は観察されなかった。評価結果を表2に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
(実施例8)
ガラスからなる基材100の表面上に、第一の電極10及び第二の電極10を形成し、くし形電極構造の装置を作成した。基材100の厚さは700μmであった。基材100と、第一の電極10の導電層30との間には、チタンからなる接着層20を形成した。また、基材100と、第二の電極10の導電層30の間には、チタンからなる接着層20を形成した。接着層20、及び接着層20の厚さは、10nmであった。第一の電極10の導電層30、及び第二の電極10の導電層30の材料には、金を用いた。第二の電極10の導電層30の、接着層20と反対の表面上には、亜鉛からなる活物質層40を形成した。活物質層40の厚さは0.5μmであった。電極10の長さLは4mm、電極10の幅Wは1.5mm、電極10の厚さは0.1μm、電極10のくしの歯の凸部分50の長さlは4mm、電極10のくしの歯の凸部分50の幅wは10μmであった。また、電極間距離dは5μm、電極間距離dは500μmであった。第一の電極10及び第二の電極10のくしの歯の凸部分50の本数は、各66本であった。
【0154】
この装置を4つ作成し、第一の装置、第二の装置、第三の装置、第四の装置とした。そして、第一の装置の第一の電極と第二の装置の第二の電極を電気的に接続し、第二の装置の第一の電極と第三の装置の第二の電極を電気的に接続し、第三の装置の第一の電極と第四の装置の第二の電極を電気的に接続した。その状態で、第一の装置の第二の電極と、第四の装置の第一の電極との間の電位差を測定した。
【0155】
霧吹きに対して2.4V、加湿器の蒸気に対して2.4V、吐息に対して2.4V、湿度90%の空気に対して2.4Vの電圧が観察された。さらに、第一の装置の第二の電極と、第四の装置の第一の電極との間にLEDを接続したところ、霧吹きの霧を電極間に当てることでLEDが点灯した。
【産業上の利用可能性】
【0156】
センサ及び発電素子として利用できる。
【符号の説明】
【0157】
10・・・電極
20・・・接着層
30・・・導電層
40・・・活物質層
50・・・電極のくしの歯の凸部分
100・・基材

図1
図2
図3
図4