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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069346
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】麦飯製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20220428BHJP
【FI】
A23L7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178489
(22)【出願日】2020-10-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】520416886
【氏名又は名称】ミエハク工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】小林 福弥
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE26
4B023LG06
4B023LK01
4B023LK04
4B023LK07
4B023LK13
4B023LK15
4B023LK16
4B023LK20
4B023LL01
4B023LP02
4B023LP07
4B023LP19
4B023LQ01
(57)【要約】
【課題】加圧加熱殺菌をしつつ全体として簡単な工程ながら、大麦の粒が立って粒の食感も残り、米飯に似た食感を有する麦飯を製造する。
【解決手段】精麦したもち種大麦及び水を原料として、前記原料を容器に入れて密閉する充填工程と、前記容器を加圧加熱殺菌する加熱工程と、を含み、前記容器が缶であり、前記容器の内部にて、前記原料の上に空気層が設けられている。さらに、前記もち種大麦と前記水との重量比率が、前記もち種大麦1に対して前記水が1.2~2.0である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精麦したもち種大麦及び水を原料として、前記原料を容器に入れて密閉する充填工程と、
前記容器を加圧加熱殺菌する加熱工程と、
を含むことを特徴とする麦飯製造方法。
【請求項2】
前記容器が缶である請求項1に記載の麦飯製造方法。
【請求項3】
前記充填工程において、前記容器の内部にて前記原料の上に空気層が設けられている請求項2に記載の麦飯製造方法。
【請求項4】
前記もち種大麦と前記水との重量比率が、前記もち種大麦1に対して前記水が1.2~2.0である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の麦飯製造方法。
【請求項5】
前記もち種大麦と前記水との重量比率が、前記もち種大麦1に対して前記水が1.6~1.8である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の麦飯製造方法。
【請求項6】
前記原料に調味料が添加されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の麦飯製造方法。
【請求項7】
前記調味料が少なくとも酢、砂糖、及び塩である請求項6に記載の麦飯製造方法。
【請求項8】
前記調味料が少なくとも醤油、及び砂糖である請求項6に記載の麦飯製造方法。
【請求項9】
前記原料に少なくとも野菜、魚介又は肉のいずれかを含む具材、及び調味料が添加されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の麦飯製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるレトルト殺菌による加熱を用いて作られる麦飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大麦の粒の型くずれがなく、粒同士がほぐれた状態のレトルト大麦加工食品を得ることを目的として、特開2016-165258号公報に、原料大麦を水に浸漬した後、茹で処理し、次いで茹でた大麦を水洗し、水を切り、所定の温度条件下で所定時間静置した後、水分量が60~80重量%の大麦を容器に充填し、適度に空間を残して密封し、加圧・加熱処理を施すレトルト大麦加工食品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-165258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、加圧加熱殺菌をする前に、原料大麦を水に浸漬させる工程、茹でる工程、茹でた大麦を水洗いして水を切る工程、水を切った大麦を所定の温度条件下で所定時間静置させる工程が必要になる。このような多くの工程を経ると、加工時間が長くなるばかりか、作業工数も増加して製造原価の上昇を招く恐れがあった。
【0005】
また、特許文献1には、比較例6として、搗精した大麦の穀粒と共に水を加えて密封し、レトルト食品用オートクレーブを使用し、浸漬方式により121℃、1.8kgf/cm2で30分間レトルト処理を行い、その結果得られたレトルト大麦加工食品は、大麦の粒が型くずれし、粒同士が結着した状態で、硬めの食感であった旨が記載されている(特許文献1の明細書段落番号0030参照。)。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、加圧加熱殺菌をしつつ全体として簡単な工程ながら、大麦の粒が立って粒の食感も残り、米飯に似た食感を有する麦飯製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の麦飯製造方法は、
精麦したもち種大麦及び水を原料として、前記原料を容器に入れて密閉する充填工程と、
前記容器を加圧加熱殺菌する加熱工程と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の麦飯製造方法によれば、もち種大麦(以下、「もち麦」と称することがある。)を用いることで、全体として簡単な工程ながら、大麦の粒が残り米飯に似た食感を有する麦飯とすることができる。また、加圧加熱殺菌をしているため、保存性に優れる。ここで加圧加熱殺菌とは、いわゆるレトルト殺菌による加圧加熱殺菌を意図しており、例えば121℃で30分等の条件が採用できる。
【0009】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例は、
前記容器が缶である。
【0010】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例によれば、容器が缶であるため消費期限を長く設定することができる。
【0011】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例は、
前記充填工程において、前記容器の内部にて前記原料の上に空気層が設けられている。
【0012】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例によれば、容器が缶であるとともに原料の上に空気層が設けられている。このため、加熱工程において、水の中でもち種大麦の粒が撹拌されやすくなる。これにより、添加する水の量にもよるが、出来上がりがまるで米飯における米粒が立った状態のようにできる。
【0013】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例は、
前記もち種大麦と前記水との重量比率が、前記もち種大麦1に対して前記水が1.2~2.0である。
【0014】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例は、
前記もち種大麦と前記水との重量比率が、前記もち種大麦1に対して前記水が1.6~1.8である。
【0015】
これらの本発明の麦飯製造方法の好ましい例によれば、水分量が適切な範囲にあるため、見た目や食感を米飯のようにすることができる。
【0016】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例は、
前記原料に調味料が添加されている。
【0017】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例は、
前記調味料が少なくとも酢、砂糖、及び塩である。
【0018】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例は、
前記調味料が少なくとも醤油、及び砂糖である。
【0019】
これらの本発明の麦飯製造方法の好ましい例によれば、麦飯に味を付けることで、麦飯がより美味なものとなる。
【0020】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例は、
前記原料に少なくとも野菜、魚介又は肉のいずれかを含む具材、及び調味料が添加されている。
【0021】
本発明の麦飯製造方法の好ましい例によれば、炊き込みご飯や丼物のような麦飯とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
上述したように、本発明の麦飯製造方法によれば、加圧加熱殺菌をしつつ全体として簡単な工程ながら、大麦の粒が立って粒の食感も残り、米飯に似た食感を有する麦飯を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る麦飯製造方法を用いた、もち麦浸漬なし加水量60グラム缶詰の麦飯の上面である。
図2図1における麦飯の断面である。
図3図1における麦飯の底面である。
図4】本発明の一実施形態に係る麦飯製造方法を用いた、もち麦浸漬なし加水量70グラム缶詰の麦飯の上面である。
図5図4における麦飯の断面である。
図6図4における缶詰の麦飯の断面である。
図7】本発明の一実施形態に係る麦飯製造方法を用いた、もち麦浸漬なし加水量80グラム缶詰の麦飯の上面である。
図8図7における麦飯の断面である。
図9図7における麦飯の底面である。
図10】本発明の一実施形態に係る麦飯製造方法を用いた、もち麦浸漬なし加水量90グラム缶詰の麦飯の上面である。
図11図10における麦飯の断面である。
図12図10における麦飯の底面である。
図13】本発明の一実施形態に係る麦飯製造方法を用いた、もち麦浸漬なし加水量100グラム缶詰の麦飯の上面である。
図14図13における麦飯の断面である。
図15図13における麦飯の底面である。
図16】本発明の一実施形態に係る麦飯製造方法を用いた、もち麦浸漬あり加水量80グラム缶詰の麦飯の上面である。
図17図16における麦飯の断面である。
図18図16における麦飯の底面である。
図19】本発明の一実施形態に係る麦飯製造方法を用いた、もち麦浸漬なし加水量80グラム酢飯缶詰の麦飯の上面である。
図20図19における麦飯の断面である。
図21図19における麦飯の底面である。
図22】比較例としての押麦浸漬なし加水量80グラム缶詰の麦飯の上面である。
図23図22における麦飯の断面である。
図24図22における麦飯の底面である。
図25】比較例としての丸麦浸漬なし加水量80グラム缶詰の麦飯の上面である。
図26図25における麦飯の断面である。
図27図25における麦飯の底面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の麦飯製造方法の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。本発明の麦飯製造方法は、充填工程と加熱工程とを含む。充填工程は、精麦したもち種大麦及び水を原料として、これらの原料を容器に入れて密閉するものである。
【0025】
ここで、本実施形態に用いられるもち種大麦とは、アミロペクチン、アミロースというデンプンを含有しているが、概ねこれらの比率が、アミロースの含有量が0%~10%、アミロペクチンが90%~100%の大麦である。食感は粘り気があり、もちもち、プチプチとしている。このもち種大麦の品種として、はねうまもち、キラリモチ、ダイシモチ、ホワイトファイバー、きはだもち、くすもち二条等がある。
【0026】
一方、うるち種大麦とはアミロペクチン、アミロースというデンプンを含有しているが、概ねこれらの比率が、アミロースが20%前後、アミロペクチンが80%前後のものである。食感は、粘り気が少なく、パラリとしている。このうるち種大麦の品種としては、ファイバースノウ、シュンライ、カシマゴール、イチバンボシ、サチホゴールデン等がある。
【0027】
この充填工程の際、上記の原料には、必要に応じて醤油、砂糖、塩、香辛料、甘味料、みりん、日本酒等の各種調味料を添加することができる。また、この調味料に少なくとも酢、砂糖、及び塩を用いて、酢飯にした麦飯とすることができる。また、調味料に少なくとも醤油、及び砂糖を用いた麦飯とすることができる。さらには、調味料とともに、少なくとも野菜、魚介、又は肉のいずれかを含む具材を加えて、炊き込みご飯風の麦飯や丼もの風の麦飯とすることができる。なお、水分を含む調味料や具材を添加するときは、これらに含まれている水分量に応じて、水の量を加減することが好ましい。
【0028】
また、充填工程の際、原料の水の量であるが、もち種大麦と水との重量比率が、もち種大麦1に対して水が1.2~2.0倍が好ましく、1.4~1.8倍がより好ましく、さらに1.6~1.8倍がより好ましい。これは、水の量が少なすぎると出来上がった麦飯が硬くなるからであり、水の量が多すぎると柔らかくなり過ぎるからである。
【0029】
また、充填工程に用いられる容器は、いわゆるレトルト加熱と呼ばれる加圧加熱処理に耐えうるものであればよい。この容器として、例えばレトルトパウチ食品に用いられるプラスチック又は金属のフィルムで構成される容器や、缶詰用の缶などが採用され、本実施形態では缶を採用している。
【0030】
また、本実施形態の麦飯製造方法では、図1に示すように、容器の内部にて原料の上に空気層が設けられている。この容器として缶を用いていることは既に述べているが、原料を缶に充填する充填工程のとき、原料を缶の縁まで入れずに少なめに充填するのである。この空気層の高さとして、缶の大きさにもよるが例えば1人用の缶であれば3~15mmが採用できる。これは、空気層の高さが足りないと、加熱工程のとき容器内で加熱によるもち種大麦の撹拌を妨げてしまい、出来上がりにおいて麦粒が立った状態になりにくいからである。一方、空気層の高さが高すぎると、内容量に対して缶が大きくなり過ぎるからである。
【0031】
加熱工程は、密閉された容器ごと原料を加圧加熱殺菌する工程である。本実施形態では、121℃で30分の加熱条件としているが、この加熱条件はもち種大麦や具材の状態、求められる加圧加熱殺菌のF値等によって適宜変更することができる。
【0032】
また、原料を缶に充填した後、もち種大麦を水に浸漬させる時間であるが、これは特にこだわらない。例えば、充填工程の後、直ぐに加熱工程に移ることができる。一方、製造途中の仕掛り品の状態によっては浸漬させる時間を設けてもよい。
【0033】
次に、麦飯製造方法及び麦飯製造方法によって製造された麦飯の実施例を説明する。下記の実施例では、もち種大麦のうち、はねうまもちという品種を用いた。
[実施例1 もち麦浸漬なし 常温]
先ず、図1図15を参照して、もち種大麦を缶に充填する充填工程の後、水に浸漬させる時間を特に設けず直ぐに加熱工程をした実施例を説明する。ここでは、もち種大麦50グラムに対して水を1.2倍の60グラム入れたもの(加水量1.2)、1.4倍の70グラム入れたもの(加水量1.4)、1.6倍の80グラム入れたもの(加水量1.6)、1.8倍の90グラム入れたもの(加水量1.8)、2.0倍の100グラム入れたもの(加水量2.0)を実施している。これらの缶詰を約20℃の常温(以下、「常温」と記載するときは同様の温度である。)で開封して食したときの評価を表1及び表2に記載した。
【表1】

【表2】
【0034】
表1及び表2に示すように、加水量1.2から2.0まで、特に問題なく美味しく食することができた。全体的な傾向として、出来上がった麦飯の上面近傍は硬めであり、底面近傍は柔らかめとなる。また、加水量が多くなるにつれて、底面近傍には加熱工程のときにもち種大麦から出てきた粘りが見られるが、この粘りによる粘着成分は柔らかく、口の中で直ぐに溶けて気になるものではない。また、麦粒同士は底面近傍においても一体化しておらず、麦粒の食感を感じることができた。これらの結果から、加水量1.2~2.0が好ましく、加水量1.4~1.8がより好ましく、加水量1.6~1.8がさらに好ましいといえる。
【0035】
[実施例2 もち麦浸漬あり 常温]
次に、図16図17を参照して、充填工程の後、12時間放置して、もち種大麦を水に浸漬させた実施例を説明する。この缶詰の常温での評価を表3及び表4に記載した。
【表3】

【表4】
【0036】
表3及び表4に示すように、実施例1と比較して、麦飯の上面の色がやや黒くなっていること以外は、見た目及び食感ともに差が無かった。従って、もち種大麦を水に浸漬させない方が、麦飯の色の黒ずみが防止できてよいといえる。しかしながら、食感及び味の観点からすると差がないため、浸漬させなくても、させてもどちらでもよいと考えられる。
【0037】
[実施例3 もち麦浸漬なし 冷蔵]
次に、実施例1で用いた麦飯の缶詰を冷蔵庫に入れて、約5℃に冷蔵(以下、「冷蔵」と記載するときは全て同様の温度である。)した缶詰の状態を見てみる。これは、缶詰の麦飯は非常食として用いられることが多く、係る場合、冬季には冷たくなり温める手段もないことが多い。この様な状況での麦飯の状態を確認するために当該評価を行なった。この冷蔵した缶詰の評価を表5及び表6に記載する。
【表5】

【表6】
【0038】
表5及び表6に示すように、見た目は常温のものと変わらない。また、食感も常温のものと比較してやや硬くなる程度であり、冷たくなっても問題なく食することができる。
【0039】
[実施例4 もち麦浸漬なし 酢飯 常温]
次に、図19図21を参照して、充填工程において原料に調味料として酢、砂糖、及び塩を添加して酢飯にした麦飯の実施例を説明する。これらの調味料の添加量は、もち種大麦50グラムに対して、酢6ミリリットル、砂糖3グラム、塩1.5グラムである。もっとも、一般的に酢飯として採用される範囲であれば、上記の添加量に限られない。この缶詰の常温での評価を表7及び表8に記載する。
【表7】

【表8】
【0040】
表7及び表8に示すように、実施例1の同じ加水量のものと比較して、底面の粘着がなく、底面においても麦粒が立ち美味である。また、全体的に汁気が感じられ艶があるとともに、底面の粘着成分がないため、実施例1と比較してより美味である。
【0041】
[実施例5 もち麦浸漬なし 酢飯 冷蔵]
次に、実施例4の酢飯の麦飯を冷蔵した缶詰を評価する。この缶詰の評価を表9及び表10に記載する。
【表9】

【表10】
【0042】
表9及び表10に示すように、見た目は常温の酢飯の麦飯と変わらない。また、食感も常温のものと比較してやや硬くなる程度であり、冷たくなっても十分に食することができる。さらに、味は酸味が薄まって食べやすくなっている。
[実施例6 もち麦浸漬なし 醤油砂糖 常温]
次に、充填工程において、原料に調味料として醤油、砂糖を添加して、炊き込みご飯風にした麦飯の実施例を説明する。これらの調味料の添加量は、もち種大麦50グラムに対して、醤油6ミリリットル、砂糖3グラムである。もっとも、一般的に炊き込みご飯として採用される範囲であれば、上記の添加量に限られない。また、砂糖の代わりに甘味料、日本酒、みりん等を用いることもできる。この缶詰の常温での評価を表7及び表8に記載する。なお、見た目は図19図21に示した、酢飯の麦飯に似ている。
【表11】

【表12】
【0043】
表11及び表12に示すように、実施例1の同じ加水量のものと比較して、底面の粘着がなく、底面においても麦粒が立ち美味である。また、全体的に汁気が感じられ艶があるとともに、底面の粘着成分がないため、実施例1と比較してより美味である。
【0044】
[実施例7 もち麦浸漬なし 醤油砂糖 冷蔵]
次に、実施例6の炊き込みご飯風の麦飯を冷蔵した缶詰を評価する。この缶詰の評価を表13及び表14に記載する。
【表13】

【表14】
【0045】
表13及び表13に示すように、見た目は常温のものと変わらない。また、食感も常温のものと比較してやや硬くなる程度であり、冷たくなっても十分に食することができる。さらに、冷やすことで味が薄まって食べやすくなっている。
【0046】
次に、比較例として、実施例1と同じ条件で製造した、うるち種大麦の押麦と丸麦の缶詰を説明する。このうるち種大麦として押麦はファイバースノウ、丸麦はイチバンボシという品種を用いた。
[比較例1 押麦浸漬なし 常温]
図22図24を参照して、うるち種大麦の押麦を用いた麦飯の比較例を説明する。この缶詰の常温での評価を表15及び表16に記載する。
【表15】

【表16】
【0047】
表15及び表16に示すように、押麦を用いた缶詰の麦飯では、上面近傍は硬い。一方、底面近傍はねちゃ付き感があって粒の食感が感じられず、不味い。このねちゃ付き感があるのは、図23の楕円で囲った部分において、粒同士がくっついて一体化していることからもわかる。
【0048】
[比較例2 押麦浸漬なし 冷蔵]
次に、比較例1で用いた押麦の缶詰を冷蔵して状態を見てみる。この冷蔵した缶詰の評価を表17及び表18に記載する。
【表17】

【表18】
【0049】
表17及び表18に示すように、押麦で製造された缶詰の麦飯では、冷蔵した状態で全体が硬くなり、食感もベタベタ感が強くあってさらに不味いものとなった。底面近傍では、硬すぎて箸を刺して捻ると麦飯全体が浮かび上がり、食する部分を箸で掴むのに苦労するほどであった。
【0050】
[比較例3 丸麦浸漬なし 常温]
図25図27を参照して、うるち種大麦の丸麦を用いた麦飯の比較例を説明する。この缶詰の常温での評価を表19及び表20に記載する。
【表19】

【表20】
【0051】
表19及び表20に示すように、押麦を用いた缶詰の麦飯では、上面近傍は麦粒が立って綺麗に見えるが、食感は硬い。一方、底面近傍は見た目から麦粒同士がくっついている。食感もねちゃ付き感があって粒の食感が感じられず、不味い。このねちゃ付き感があるのは、図26の楕円で囲った部分において、粒同士がくっついて一体化していることからもわかる。
【0052】
[比較例4 丸麦浸漬なし 冷蔵]
次に、比較例3で用いた丸麦の缶詰を冷蔵して状態を見てみる。この冷蔵した缶詰の評価を表21及び表22に記載する。
【表21】

【表22】
【0053】
表21及び表22に示すように、丸麦で製造された缶詰の麦飯では、押麦よりも酷く、冷蔵した状態で全体が硬くなり、食感もベタベタ感が強くあって非常に不味いものとなった。底面近傍では、硬すぎて箸を刺して捻ると麦飯全体が浮かび上がり、食する部分を箸で掴むのに苦労するのは押麦同様である。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態の麦飯製造方法で製造された麦飯によれば、原料にもち種大麦を用いており、容器に入れて加圧加熱殺菌したときに、麦飯の上面近傍も粒が立って柔らかく、底面近傍にも不快な粘り気が出ず美味なものとなる。加水量が多いものについては、麦飯の底面近傍において多少の粘りが見られるが、この粘り自体が柔らかく口の中で直ぐに溶け、さらに麦粒同士が分離して粒の食感を感じることができるため、気にならない。また、低温時においても硬くならず、普通に食することができるため、非常食として有用である。
【0055】
また、もち種大麦を水に浸漬させずに加圧加熱殺菌することができるため、製造時間の短縮と製造工程の省略を図ることができる。さらに、もち種大麦を水に浸漬させても、品質上大きな差異がないため、仕掛かり品の管理に特に気をつかわなくとも済み、ここでも工数の削減を図ることができる。
【0056】
また、酢飯や炊き込みご飯としたときには、麦飯に多少の汁気が見られるものの、その汁気が艶を出し、さらに麦飯の底面近傍においても粘りが出ず、粒同士がきちんと分離され、大変美味なものとなる。
【0057】
なお、上述の麦飯製造方法は本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17
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