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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069372
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】中継切替装置、構内通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/46 20060101AFI20220428BHJP
   G06F 3/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H04L12/46 100M
G06F3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041031
(22)【出願日】2021-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020177734
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520414468
【氏名又は名称】コムフィット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】河村 一利
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA02
5K033AA06
5K033CB02
5K033CB15
5K033DA05
5K033DB18
5K033EA02
5K033EB02
5K033EB06
(57)【要約】
【課題】より高い信頼性とリアルタイム性を提供する。
【解決手段】本発明の中継切替装置は、中継側物理層手段、端末側物理層手段、メディアアクセス制御部を備える。中継側物理層手段は以下の構成部を有する。第1媒体接続部は、第1の伝送媒体との間で授受する信号である第1媒体信号と第1の伝送媒体用の信号である第1依存信号との変換を行う。第1変換部は、第1依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う。第2媒体接続部は、第2の伝送媒体との間で授受する信号である第2媒体信号と第2の伝送媒体用の信号である第2依存信号との変換を行う。第2変換部は、第2依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う。切替部は、メディアアクセス制御部から中継側物理層手段へのデータを第1変換部と第2変換部の両方に送り、第1変換部からのデータまたは第2変換部からのデータをメディアアクセス制御部側に送る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信用の中継切替装置であって、
第1媒体接続部、第1変換部、第2媒体接続部、第2変換部、切替部を有する中継側物理層手段と、
端末側の伝送媒体との間で授受する信号である端末側媒体信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う端末側物理層手段と、
データの授受を実行するメディアアクセス制御部と、
を備え、
前記第1媒体接続部は、第1の伝送媒体との間で授受する信号である第1媒体信号と第1の伝送媒体用の信号である第1依存信号との変換を行い、
前記第1変換部は、第1依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行い、
前記第2媒体接続部は、第2の伝送媒体との間で授受する信号である第2媒体信号と第2の伝送媒体用の信号である第2依存信号との変換を行い、
前記第2変換部は、第2依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行い、
前記切替部は、前記メディアアクセス制御部から前記中継側物理層手段へのデータを前記第1変換部と前記第2変換部の両方に送り、前記第1変換部からのデータまたは前記第2変換部からのデータを前記メディアアクセス制御部側に送る
を備える中継切替装置。
【請求項2】
請求項1記載の中継切替装置であって、
前記切替部は、
前記第1変換部からのデータおよび前記第2変換部からのデータに基づいて、前記第1変換部からのデータまたは前記第2変換部からのデータを選択して前記メディアアクセス制御部に送る
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項3】
請求項2記載の中継切替装置であって、
前記切替部は、現在前記メディアアクセス制御部に送っているデータが示す状態が、現在前記メディアアクセス制御部に送っていないデータが示す状態よりも、あらかじめ定めた程度以上に悪い場合に、前記メディアアクセス制御部に送るデータの選択を変更する
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項4】
請求項1記載の中継切替装置であって、
前記切替部は、
前記第1依存信号の状態および前記第2依存信号の状態に基づいて、前記第1変換部からのデータまたは前記第2変換部からのデータを選択して前記メディアアクセス制御部に送る
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項5】
請求項4記載の中継切替装置であって、
前記切替部は、現在前記メディアアクセス制御部に送っているデータに対応する記第1依存信号または前記第2依存信号の状態が、他方の状態よりもあらかじめ定めた程度以上に悪い場合に、前記メディアアクセス制御部に送るデータの選択を変更する
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載の中継切替装置であって、
前記切替部は、前記メディアアクセス制御部へ送るデータの選択を変更した後、あらかじめ定めた時間内は前記選択の変更は行わない
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の中継切替装置であって、
前記切替部は、
前記第1変換部からのデータを蓄積する第1バッファと、
前記第2変換部からのデータを蓄積する第2バッファと、
前記第1バッファまたは前記第2バッファからデータを取得して前記メディアアクセス制御部に送るタイミング調整部も
有し、
前記タイミング調整部は、前記メディアアクセス制御部に送るデータの選択を変更したときの前記メディアアクセス制御部に送るデータのタイミングを変更前と整合させる
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の中継切替装置であって、
前記切替部は、
前記メディアアクセス制御部からのデータを蓄積する送信用バッファと、
対向する中継切替装置に第1の伝送媒体を介してデータが到達するタイミングと第2の伝送媒体を介してデータが到達するタイミングが所定の範囲になるように、あらかじめ設定したそれぞれのタイミングで前記送信用バッファからデータを取得して前記第1変換部と前記第2変換部に送る送信調整部も
を有する
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項9】
請求項8記載の中継切替装置であって、
管理制御部も備え、
前記管理制御部は、第1の伝送媒体を介してデータを受信したタイミングと第2の伝送媒体を介してデータを受信したタイミングの差を検出し、差の情報を送信する機能と、
対向する中継切替装置が第1の伝送媒体を介してデータを受信したタイミングと第2の伝送媒体を介してデータを受信したタイミングの差の情報を受信する機能を有し、
前記のあらかじめ設定したそれぞれのタイミングは、前記管理制御部が受信した差の情報に基づいて定められている
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の中継切替装置であって、
前記中継側物理層手段は、さらに、第3媒体接続部、第3変換部、予備切替部も備え、
前記第3媒体接続部は、第3の伝送媒体との間で授受する信号である第3媒体信号と第3の伝送媒体用の信号である第3依存信号との変換を行い、
前記第3変換部は、第3依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行い、
前記予備切替部は、前記切替部と前記メディアアクセス制御部との間に配置され、前記メディアアクセス制御部から前記中継側物理層手段へのデータを前記切替部と前記第3変換部に送り、前記第1変換部からのデータ、前記第2変換部からのデータ、前記第3変換部からのデータのいずれかを前記メディアアクセス制御部に送る
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の中継切替装置であって、
さらに、前記メディアアクセス制御部へ送るデータの選択を変更したときは、前記メディアアクセス制御部から前記中継側物理層手段へ送るデータに、選択を変更したことを示すデータを含める管理部も備える
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の中継切替装置であって、
前記中継側物理層手段を2つ以上備える
ことを特徴とする中継切替装置。
【請求項13】
請求項12記載の中継切替装置を複数用いた構内通信システムであって、
前記中継切替装置同士の前記第1媒体接続部同士を第1の伝送媒体で接続し、前記第2媒体接続部同士を第2の伝送媒体で接続した
構内通信システム。
【請求項14】
請求項10記載の中継切替装置を複数用いた構内通信システムであって、
前記中継側物理層手段を2つ以上備え、
対向する中継切替装置との間で前記第1媒体接続部同士を第1の伝送媒体で接続し、前記第2媒体接続部同士を第2の伝送媒体で接続し、
前記の対向する中継切替装置が対向する別の中継切替装置との間で前記第3媒体接続部同士を第3の伝送媒体で接続した
構内通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLAN(Local Area Network)などの通信に用いる中継切替装置、構内通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワークにおける中継技術としては、例えば特許文献1に示された技術などが従来技術として知られている。また、近年、IoT(Internet of Things)の有効性が世間に知られ、IoTを活用する場面が増加している。IoTを活用する社会では、人が快適にそして豊かに生活するために、すべてのモノをインターネットにつなげることで、様々なモノの管理(監視と制御)を随意に行う。モノには、例えば人が普通に生活する住空間だけを見ても、人が操作する端末だけでなく、人に取り付けられて体調に関するデータ(体温、血圧、心拍、発汗量、活動量など)を収集するヘルスケアセンサ、部屋に取り付けられて環境のデータ(温湿度、照度、騒音、人やペットの動き、煙など)を収集するセンサ、部屋のドアと窓の開閉及び施錠、カーテンの開閉の制御、エアコンなどの機器の制御などを行う機器などがある。これらのモノは、事務所、病院、工場、学校、商業施設などの様々な場所において人の生活に有効なモノとして設置され、管理するサーバもしくは相互に接続され、人工知能なども活用することで有用に働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-022100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状の構内通信技術は、従前の人が操作する端末を前提としたネットワークを構築する技術であり、上述のモノをつなぐことを前提としたネットワークを構築する技術としては十分ではなかった。特に、端末でのデータ通信の場合よりも高い信頼性とリアルタイム性が求められるモノとの通信を行う技術としては十分ではなかった。特許文献1の技術は、ネットワーク障害時の通信不可能時間を短縮することを目的とした中継装置に関する技術であり、信頼性とリアルタイム性の向上を目指したものと言える。しかしながら、ネットワークのレイヤ2、レイヤ3での処理では、通信経路を二重化していたとしても通信が切れたときの復旧までの時間が長くなってしまう。本発明は、より高い信頼性とリアルタイム性を提供できる中継切替装置、構内通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の中継切替装置は、中継側物理層手段、端末側物理層手段、メディアアクセス制御部を備える。メディアアクセス制御部は、データの授受を実行する。端末側物理層手段は、端末側の伝送媒体との間で授受する信号である端末側媒体信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う。中継側物理層手段は、第1媒体接続部、第1変換部、第2媒体接続部、第2変換部、切替部を有する。第1媒体接続部は、第1の伝送媒体との間で授受する信号である第1媒体信号と第1の伝送媒体用の信号である第1依存信号との変換を行う。第1変換部は、第1依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う。第2媒体接続部は、第2の伝送媒体との間で授受する信号である第2媒体信号と第2の伝送媒体用の信号である第2依存信号との変換を行う。第2変換部は、第2依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う。切替部は、メディアアクセス制御部から中継側物理層手段へのデータを第1変換部と第2変換部の両方に送り、第1変換部からのデータまたは第2変換部からのデータをメディアアクセス制御部側に送る。
【発明の効果】
【0006】
本発明の中継切替装置によれば、中継側物理層手段で二重化された伝送媒体のどちらを使って信号を伝送するのかを選択するので、伝送媒体の状態が悪くなったときに短時間で切替できる。よって、より高い信頼性とリアルタイム性を提供できる。また、本発明の中継切替装置を用いて構築した構内通信システムであれば、より高い信頼性とリアルタイム性を実現したネットワークにできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の中継切替装置の機能構成例を示す図。
図2】実施例1の構内通信システムの構成例を示す図。
図3】2つの中継切替装置を接続したときの例を示す図。
図4】変形例1の中継切替装置の機能構成例を示す図。
図5】実施例2の中継切替装置の機能構成例を示す図。
図6】実施例2の構内通信システムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0009】
図1に実施例1の中継切替装置の機能構成例を、図2に実施例1の構内通信システムの構成例を、図3に2つの中継切替装置を接続したときの例を示す。実施例1の通信用の中継切替装置100は、中継側物理層手段105,205、端末側物理層手段410,…,410、メディアアクセス制御部300を備える。ただし、Nは1以上の整数であり、接続したい端末等510,…,510の数に応じてNの値は定めればよい。中継切替装置100は、管理部190も備えてもよい。「端末等」とは、パソコン、携帯電話などの人が操作する端末だけでなく、センサ、機器なども含む意味である。
【0010】
中継切替装置100-(m-1)の第1媒体接続部210と中継切替装置100-mの第1媒体接続部110を第1の伝送媒体610-mで接続し、中継切替装置100-(m-1)の第2媒体接続部230と中継切替装置100-mの第2媒体接続部130を第2の伝送媒体630-mで接続することで、中継切替装置100-(m-1)と中継切替装置100-mを接続できる。mは任意の整数であり、図3はm=2の場合を示している。このように、中継切替装置100は、2つの中継側物理層手段105,205を備えれば、上流側の別の中継切替装置100から下流側の別の中継切替装置100に信号を繰り返し中継できるので、構内通信システム10を構築しやすい。ただし、例えば、図2の中継切替装置100-5,100-10のように複数の中継切替装置で構成された構内通信システムの末端に位置する場合は、1つの中継側物理層手段105だけを備えてもよい。また、分岐する場合は、3つ以上の中継側物理層手段を備えてもよい。構内通信システム10では、図2に示すように、ルータ800と中継切替装置100-1を伝送媒体610-1で接続し、ルータ800と中継切替装置100-6を伝送媒体610-6で接続すればよい。
【0011】
メディアアクセス制御部300は、伝送媒体に依存しないデータの授受を実行する。メディアアクセス制御部300は、LANのデータリンク層(レイア2)のMAC(Media Access Control)副層の処理を行う構成部に相当し、上位層データのMACフレームによるカプセル化とアンカプセル化、物理アドレスの割り当て、エラー検査などを行えばよい。例えば、本願出願時のLANに関する技術では、メディアアクセス制御部300は、ブリッジもしくはスイッチングハブと呼ばれる装置の役割を果たせばよい。ただし、本願出願時のLANに関するレイア2の処理を行う構成部に限定するものではなく、中継側物理層手段105,205および端末側物理層手段410,…,410などと伝送媒体に依存しないデータの授受を実行する構成部であればよい。伝送媒体に依存しないデータとは、例えば、本願出願時のMII(Media Independent Interface)信号であるが、他の伝送媒体に依存しないデータでもよい。なお、伝送媒体には、メタルケーブル、光ケーブル、無線などがあり、メタルケーブルでも心線の数などに依存して授受する信号は異なる。中継用の伝送媒体610,630には、メタルケーブルまたは光ケーブルを用いた方が高速で安定した通信を実現しやすい。
【0012】
端末側物理層手段410,…,410は、端末側の伝送媒体710,…,710との間で授受する信号である端末側媒体信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う。つまり、本願出願時の一般的なLANの物理層に相当する処理を行う構成部である。ただし、出願時の一般的なLANの物理層に相当する処理を行う構成部に限定するものではない。
【0013】
中継側物理層手段105,205は、第1媒体接続部110,210、第1変換部120.220、第2媒体接続部130,230、第2変換部140,240、切替部150,250を有する。第1媒体接続部110,210は、第1の伝送媒体610との間で授受する信号である第1媒体信号と第1の伝送媒体用の信号である第1依存信号との変換を行う。第2媒体接続部130,230は、第2の伝送媒体630との間で授受する信号である第2媒体信号と第2の伝送媒体用の信号である第2依存信号との変換を行う。「第1の伝送媒体用の信号である第1依存信号」および「第2の伝送媒体用の信号である第2依存信号」とは、伝送媒体の特性を考慮して、「第1の伝送媒体610との間で授受する信号である第1媒体信号」および「第2の伝送媒体630との間で授受する信号である第2媒体信号」との変換が容易になるように準備した信号である。例えば、4心のメタルケーブルが伝送媒体であれば、それぞれの心線と信号を授受する信号に変換しやすいように心線ごとの信号に分けた状態の信号である。光ケーブルが伝送媒体であれば、光信号に変換しやすい信号である。無線が伝送媒体であれば、搬送波に重畳しやすい信号である。
【0014】
第1変換部120,220は、第1依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う。第2変換部140,240は、第2依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う。第1変換部120,220と第2変換部140,240は、レイヤ2(データリンク層)とのインターフェースとなるレイヤ1(物理層)の処理を行う構成部である。
【0015】
切替部150は、メディアアクセス制御部300から中継側物理層手段105へのデータを第1変換部120と第2変換部140の両方に送り、第1変換部120からのデータまたは第2変換部140からのデータをメディアアクセス制御部300に送る。同様に、切替部250は、メディアアクセス制御部300から中継側物理層手段205へのデータを第1変換部220と第2変換部240の両方に送り、第1変換部220からのデータまたは第2変換部240からのデータをメディアアクセス制御部300に送る。なお、第1変換部からのデータを選択するか第2変換部からのデータを選択するかは、中継側物理層手段ごとに独立して決める。切替部150,250は状態の良い伝送媒体610,630を利用して通信を行うため、メディアアクセス制御部300からのデータは伝送媒体610,630の両方に送り、メディアアクセス制御部300へ送るデータは伝送媒体610,630のデータから一方(原則は状態の良い方)を選択する。なお、必ず状態の良い方を選択すると頻繁に選択が変更になる問題が生じる可能性があるため、例外的に状態の悪い方の選択を続ける場合がある。そのため、「原則」としている。この問題を解決するため、切替部150,250は、メディアアクセス制御部300へ送るデータの選択を変更した後、あらかじめ定めた時間内は選択の変更は行わないようにしてもよい。あるいは、切替部150,250は、現在選択されている方の状態が選択されていない方の状態よりもあらかじめ定めた程度以上に悪い場合に選択を変更してもよい。
【0016】
例えば、伝送媒体に依存しないデータ(第1変換部120,220からのデータおよび第2変換部140,240からのデータ)に通信状態を示す情報が含まれている場合は、切替部150,250は次のように処理を行えばよい。切替部150,250は、第1変換部120,220からのデータおよび第2変換部140,240からのデータに基づいて、第1変換部120,220からのデータまたは第2変換部140,240からのデータを選択してメディアアクセス制御部300に送る。この際に、切替部150,250は、現在メディアアクセス制御部300に送っているデータが示す状態が、現在メディアアクセス制御部300に送っていないデータが示す状態よりも、あらかじめ定めた程度以上に悪い場合に、メディアアクセス制御部300に送るデータの選択を変更すればよい。
【0017】
例えば、第1依存信号の状態および第2依存信号の状態を確認することで通信状態を確認できる場合は、切替部150,250は次のように処理を行えばよい。切替部150,250は、第1依存信号の状態および第2依存信号の状態に基づいて、第1変換部120,220からのデータまたは第2変換部140,240からのデータを選択してメディアアクセス制御部300に送る。この際に、切替部150,250は、現在メディアアクセス制御部300に送っているデータに対応する1依存信号または第2依存信号の状態が、他方の状態よりもあらかじめ定めた程度以上に悪い場合に、メディアアクセス制御部300に送るデータの選択を変更すればよい。
【0018】
また、切替部150,250は、第1変換部からのデータを蓄積する第1バッファ151,251、第2変換部からのデータを蓄積する第2バッファ152,252、第1バッファ151,251または第2バッファ152,252からデータを取得してメディアアクセス制御部に送るタイミング調整部153,253を備えてもよい。タイミング調整部153,253は、メディアアクセス制御部300に送るデータの選択を変更したときのメディアアクセス制御部300に送るデータのタイミングを変更前と整合させる。少なくとも選択を変更したときのタイミング調整を行えば十分だが、タイミング調整部153,253が行うタイミングの調整は、同期制御などの技術を利用して常時行っておいてもよい。なお、伝送媒体610と伝送媒体630に、同じ長さの同じ有線の伝送媒体を用いれば、2つの経路の選択を変更したときのタイミングを整合させやすい。
【0019】
上述の説明では、上り方向の信号と下り方向の信号で伝送媒体が異なることがあり得る。全二重方式の通信であれば、伝送媒体が異なっても通信できていれば問題ない。しかし、伝送媒体を交換したい場合など、上り方向の信号と下り方向の信号の伝送媒体を同じにする方が望ましい場合もある。そこで、中継切替装置100は、メディアアクセス制御部300へ送るデータの選択を変更したときは、メディアアクセス制御部300から中継側物理層手段105,205へ送るデータに、選択を変更したことを示すデータを含める管理部190も備えてもよい。そのうえで、中継切替装置100の切替部150,250は、対向している中継切替装置100からメディアアクセス制御部300へ送るデータの選択を変更したことを示すデータを受信したときは、同じ伝送媒体を介して受信したデータをメディアアクセス制御部300へ送るデータに選択するようにしてもよい。なお、管理部190は、選択を変更したときに常に変更したことを示すデータを含めてもよいし、操作者からの指示があったときにだけ変更したことを示すデータを含めてもよい。
【0020】
本発明の中継切替装置100によれば、中継側物理層手段105,205で二重化された伝送媒体のどちらを使って信号を伝送するのかを選択するので、伝送媒体の状態が悪くなったときに短時間で切替できる。よって、より高い信頼性とリアルタイム性を提供できる。また、中継切替装置100を用いて構築した構内通信システム10であれば、より高い信頼性とリアルタイム性を実現したネットワークにできる。
[変形例1]
【0021】
図4に、変形例1の中継切替装置の機能構成例を示す。中継切替装置101は、切替部150,250が、送信用バッファ154,254と送信調整部155,255を備えている。なお、中継切替装置101は、その他はすべて中継切替装置100と同じである。また、切替部150,250は、第1バッファ151,251、第2バッファ152,252、タイミング調整部153,253も一緒に備えてもよいし、備えなくてもよい。送信用バッファ154,254は、メディアアクセス制御部300からのデータを蓄積する。送信調整部155,255は、対向する中継切替装置101に第1の伝送媒体610を介してデータが到達するタイミングと第2の伝送媒体630を介してデータが到達するタイミングが所定の範囲になるように、あらかじめ設定したそれぞれのタイミングで送信用バッファ154,254からデータを取得して第1変換部120,220と第2変換部140,240に送る。なお、第1変換部120に送るタイミング、第1変換部220に送るタイミング、第2変換部140に送るタイミング、第2変換部240に送るタイミングはそれぞれ異なるので、「それぞれのタイミング」と表現している。送信用バッファ154,254は、第1変換部120,220用のメモリと第2変換部140,240用のメモリを別々に備え、あらかじめ定めたタイミングでそれぞれのメモリから送信調整部155,255がデータを読み出す構成としてもよい。あるいは、1つのメモリにデータを蓄積し、送信調整部155,255が読み出すタイミングを変えるだけでもよい。このように送信側でタイミングを調整しておけば、2つの経路の選択を変更したときのタイミングを整合させやすい。
【0022】
中継切替装置101は、管理制御部195を備えてもよい。管理制御部195は、次の2つの機能を有する。1つの機能は、第1の伝送媒体610を介してデータを受信したタイミングと第2の伝送媒体630を介してデータを受信したタイミングの差を検出し、差の情報を送信する機能である。もう1つの機能は、対向する中継切替装置100が第1の伝送媒体610を介してデータを受信したタイミングと第2の伝送媒体630を介してデータを受信したタイミングの差の情報を受信する機能である。前記のあらかじめ設定したそれぞれのタイミングは、前記管理制御部が受信した差の情報に基づいて定められている。例えば、図示していない上位管理制御装置に、対向する中継切替装置100の管理制御部195が差の情報を送信する。上位管理制御装置は、差の情報を中継切替装置100の管理制御部195に送信する。中継切替装置100の管理制御部195は、受信した差の情報に基づいて、送信調整部155,255が送信用バッファ154,254からデータを読み出すタイミングを決める。1回の差の情報の送受信では「所定の範囲」に設定できない場合は、繰り返し処理を行えばよい。このような構成なので、中継切替装置101は、中継切替装置100と同様の効果を得られる。
【実施例0023】
図5に実施例2の中継切替装置の機能構成例を、図6に実施例2の構内通信システムの構成例を示す。実施例2の中継切替装置102は、実施例1の中継切替装置100もしくは変形例1の中継切替装置101に、第3媒体接続部160,260、第3変換部170,270、予備切替部180,280を備えている。その他の構成は、中継切替装置100,101と同じである。第3媒体接続部160,260は、第3の伝送媒体650との間で授受する信号である第3媒体信号と第3の伝送媒体用の信号である第3依存信号との変換を行う。「第3の伝送媒体用の信号である第3依存信号」とは、伝送媒体の特性を考慮して、「第3の伝送媒体650との間で授受する信号である第3媒体信号」との変換が容易になるように準備した信号である。第3変換部170,270は、第3依存信号と伝送媒体に依存しないデータとの変換を行う。第3変換部170,270は、レイヤ2(データリンク層)とのインターフェースとなるレイヤ1(物理層)の処理を行う構成部である。
【0024】
予備切替部180は、切替部150とメディアアクセス制御部300との間に配置される。予備切替部180は、メディアアクセス制御部300から中継側物理層手段105へのデータを切替部150と第3変換部170に送る。切替部150はメディアアクセス制御部300から中継側物理層手段105へのデータを第1変換部120と第2変換部140の両方に送るので、メディアアクセス制御部300から中継側物理層手段105へのデータは、第1変換部120、第2変換部140、第3変換部170のすべてに送られる。また、予備切替部180は、第1変換部120からのデータ、第2変換部140からのデータ、第3変換部170からのデータのいずれかをメディアアクセス制御部300に送る。より具体的には、切替部150が、第1変換部120からのデータまたは第2変換部140からのデータを、メディアアクセス制御部300側に送るので、予備切替部180は、切替部150から第1変換部120からのデータまたは第2変換部140からのデータを受け取る。「メディアアクセス制御部300側に送る」とは、中継切替装置100のように予備切替部180がない場合は直接「メディアアクセス制御部300に送る」という意味であり、中継切替装置102のように予備切替部180がある場合は「メディアアクセス制御部300との間に存在する予備切替部180に送る」という意味になる。そして、予備切替部180は、切替部150から受け取った第1変換部120からのデータまたは第2変換部140からのデータと、第3変換部170からのデータのいずれかをメディアアクセス制御部300に送る。
【0025】
同様に、予備切替部280は、切替部250とメディアアクセス制御部300との間に配置される。予備切替部280は、メディアアクセス制御部300から中継側物理層手段205へのデータを切替部250と第3変換部270に送る。切替部250はメディアアクセス制御部300から中継側物理層手段205へのデータを第1変換部220と第2変換部240の両方に送るので、メディアアクセス制御部300から中継側物理層手段205へのデータは、第1変換部220、第2変換部240、第3変換部270のすべてに送られる。また、予備切替部280は、第1変換部220からのデータ、第2変換部240からのデータ、第3変換部270からのデータのいずれかをメディアアクセス制御部300に送る。より具体的には、切替部250が、第1変換部220からのデータまたは第2変換部240からのデータを、メディアアクセス制御部300側に送るので、予備切替部280は、切替部250から第1変換部220からのデータまたは第2変換部240からのデータを受け取る。そして、予備切替部280は、切替部250から受け取った第1変換部220からのデータまたは第2変換部240からのデータと、第3変換部270からのデータのいずれかをメディアアクセス制御部300に送る。
【0026】
予備切替部180,280は、次のように動作すればよい。第1変換部120,220と第2変換部140,240の両方、もしくはいずれか一方との間でデータを正常に授受しているときは、予備切替部180,280は、第1変換部120,220からのデータまたは第2変換部140,240からのデータをメディアアクセス制御部300側に送る。また、第1変換部120,220と第2変換部140,24の両方とデータを正常に授受できなくなったときは、予備切替部180,280は、第3変換部170,270からのデータをメディアアクセス制御部300に送る。予備切替部180,280はこのように動作するので、第3の伝送媒体650は、バックアップ用の伝送媒体である。なお、中継切替装置102は、定期的に、予備切替部180,280を第3変換部170,270からのデータをメディアアクセス制御部300に送る状態に変更し、正常に動作することを確認することが望ましい。
【0027】
図6の構内通信システム12の構成例では、端末等510は省略しているが、図2と同様に各中継切替装置102-1,…,102-10には端末等510が接続されている。中継切替装置102を複数用いた構内通信システム12では、端に位置していない中継切替装置102は、中継側物理層手段を2つ以上備える。そして、対向する中継切替装置102との間で第1媒体接続部同士を第1の伝送媒体610で接続し、第2媒体接続部同士を第2の伝送媒体630で接続する。この接続は中継切替装置100,101と同じである。中継切替装置102の場合は、対向する中継切替装置102が対向する別の中継切替装置102との間で第3媒体接続部同士を第3の伝送媒体650で接続する。なお、対向する別の中継切替装置が2つ以上ある場合は、すべての対向する別の中継切替装置との間で第3媒体接続部同士を第3の伝送媒体650で接続すればよい。図6の場合、例えば、中継切替装置102-1は、対向する中継切替装置102-2と、第1の伝送媒体610-2、第2の伝送媒体630-2で接続されている。そして、対向する中継切替装置102-2が対向する別の中継切替装置102-3と、第3の伝送媒体650-2で接続されている。このように、第3の伝送媒体は、カスケード接続された中継切替装置102の列において、1つ飛ばしで中継切替装置102同士を接続する。
【0028】
中継切替装置100,101,102は、同じデータが伝搬する第1の伝送媒体と第2の伝送媒体を用いる。中継側物理層手段105,205で二重化された伝送媒体のどちらを使って信号を伝送するのかを選択するので、伝送媒体の状態が悪くなったときに短時間で切替できる。よって、より高い信頼性とリアルタイム性を提供できる。また、中継切替装置100、101,102を用いて構築した構内通信システム10,12であれば、より高い信頼性とリアルタイム性を実現したネットワークにできる。しかし、構内通信システム10の場合、いずれかの中継切替装置が故障した場合、故障した中継切替装置よりもルータ800から遠い中継切替装置(以下、下流側の中継切替装置と呼ぶ)は、ルータ800と通信できなくなってしまう。つまり、構内通信システム10は、伝送媒体の状態が悪くなったときには、より高い信頼性とリアルタイム性を提供できるが、中継切替装置の故障に対する信頼性は、従来のカスケード接続している構内通信システムと同様である。
【0029】
構内通信システム12の場合、例えば、図6の中継切替装置102-3が故障してしまうと、中継切替装置102-4,102-5は、第1の伝送媒体610-3,610-4および第2の伝送媒体630-3,630-4を介してルータ800と通信できなくなる。この場合、中継切替装置102-2と中継切替装置102-4は、対向する中継切替装置102-3との通信が遮断したことを検知する。そして、中継切替装置102-3との通信を行っている中継側物理層手段の予備切替部が、第3変換部からのデータをメディアアクセス制御部300に送るようにする。これにより、中継切替装置102-2と中継切替装置102-4は、第3の伝送媒体650-3を介して通信できる状態になる。中継切替装置102によれば、中継切替装置の故障に対する信頼性の向上の効果も得られる。また、これらの信頼性向上は物理層(レイヤ1)で行われるので、レイヤ2、レイヤ3で行うよりも復旧時間を短くできる。
【符号の説明】
【0030】
10,12 構内通信システム 100,101,102 中継切替装置
105,205 中継側物理層手段 110,210 第1媒体接続部
120,220 第1変換部 130,230 第2媒体接続部
140,240 第2変換部 150,250 切替部
151,251 第1バッファ 152,252 第2バッファ
153,253 タイミング調整部 154,254 送信用バッファ
155,255 送信調整部 160,260 第3媒体接続部
170,270 第3変換部 180,280 予備切替部
190 管理部 195 管理制御部
300 メディアアクセス制御部
610,630,650,710 伝送媒体
800 ルータ 410 端末側物理層手段
510 端末等
図1
図2
図3
図4
図5
図6