(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069386
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】電解質および該電解質に用いる化合物ならびにコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/035 20060101AFI20220428BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/145
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125649
(22)【出願日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】109136848
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】潘 哲威
(72)【発明者】
【氏名】王 邱董
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗端
(57)【要約】 (修正有)
【課題】市場の応用が制限されない電解質及び該電解質に用いたアルミニウム電解コンデンサを提供する。
【解決手段】アルミニウム電解コンデンサは、アノードアルミニウム箔、カソードアルミニウム箔及びアノードアルミニウム箔とカソードアルミニウム箔との間に挟まれたセパレータを含むコンデンサ素子と、電解質と、を含む。電解質は、下記の化学構造を有する化合物を含む。
式中、R1はC1-8アルキル基、C1-8アルケニル基、C1-8アルキニル基、または芳香族基であり;R2は-(CnH2n)-OHであり、nは2から8の整数である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学構造を有する、電解質に用いる化合物。
【化1】
(式中、R
1はC
1-8アルキル基、C
1-8アルケニル基、C
1-8アルキニル基、または芳香族基であり;R
2は-(C
nH
2n)-OHであり、nは2から8の整数である。)
【請求項2】
R1がメチル基またはtert-ブチル基であり、nが2である、請求項1に記載の電解質に用いる化合物。
【請求項3】
電解質であって、
有機溶媒と、
(1)化合物およびそのアンモニウム塩、(2)二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)これらの組み合わせと、
を含み、
前記化合物が下記の化学構造を有し、
【化2】
(式中、R
1はC
1-8アルキル基、C
1-8アルケニル基、C
1-8アルキニル基、または芳香族基であり;R
2は-(C
nH
2n)-OHであり、nは2から8の整数である。)
前記二酸は下記の化学構造を有する、
【化3】
(式中、R
3はC
1-8アルキル基、C
1-8アルケニル基、C
1-8アルキニル基、または芳香族基である。)
電解質。
【請求項4】
(3)前記これらの組み合わせにおいて、(1)前記化合物およびそのアンモニウム塩と(2)前記二酸およびそのアンモニウム塩との重量比が0.01:1から1.5:1である、請求項3に記載の電解質。
【請求項5】
(3)前記これらの組み合わせにおいて、(1)前記化合物およびそのアンモニウム塩と(2)前記二酸およびそのアンモニウム塩との重量比が0.02:1から0.45:1である、請求項3に記載の電解質。
【請求項6】
ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアルコール、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドエーテル、重合脂肪酸、二酸化ケイ素、ポリグリセリド、重クロム酸アンモニウム、クエン酸、またはこれらの組み合わせをさらに含む請求項3に記載の電解質。
【請求項7】
(1)前記化合物およびそのアンモニウム塩、(2)前記二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)前記これらの組み合わせの重量と、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアルコール、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドエーテル、重合脂肪酸、二酸化ケイ素、ポリグリセリド、重クロム酸アンモニウム、クエン酸,またはこれらの組み合わせの重量との比が、1:0.01から1:0.5である、請求項6に記載の電解質。
【請求項8】
前記有機溶媒には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセロール、N,N-ジメチルホルムアミド、ガンマブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ガンマバレロラクトン、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項3に記載の電解質。
【請求項9】
(1)前記化合物およびそのアンモニウム塩、(2)前記二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)前記これらの組み合わせの重量と、前記有機溶媒の重量との比が、1:6から1:10である、請求項8に記載の電解質。
【請求項10】
コンデンサであって、
アノードアルミニウム箔、
カソードアルミニウム箔、および、
前記アノードアルミニウム箔と前記カソードアルミニウム箔との間に挟まれたセパレータを含むコンデンサ素子と、
電解質と、
を含み、
前記コンデンサ素子が前記電解質に含浸されているコンデンサ。
【請求項11】
前記電解質が、有機溶媒と、(1)化合物およびそのアンモニウム塩、(2)二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)これらの組み合わせと、を含み、
前記化合物が下記の化学構造を有し、
【化4】
(式中、R
1はC
1-8アルキル基、C
1-8アルケニル基、C
1-8アルキニル基、または芳香族基であり;R
2は-(C
nH
2n)-OHであり、nは2から8の整数である。)
前記二酸が下記の化学構造を有する、
【化6】
(式中、R
3はC
1-8アルキル基、C
1-8アルケニル基、C
1-8アルキニル基、または芳香族基である。)
請求項10に記載のコンデンサ。
【請求項12】
(3)前記これらの組み合わせにおいて、(1)前記化合物およびそのアンモニウム塩と(2)前記二酸およびそのアンモニウム塩との重量比が0.01:1から1.5:1である、請求項11に記載のコンデンサ。
【請求項13】
(3)前記これらの組み合わせにおいて、(1)前記化合物およびそのアンモニウム塩と(2)前記二酸およびそのアンモニウム塩との重量比が0.02:1から0.45:1である、請求項11に記載のコンデンサ。
【請求項14】
ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアルコール、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドエーテル、重合脂肪酸、二酸化ケイ素、ポリグリセリド、重クロム酸アンモニウム、クエン酸、またはこれらの組み合わせをさらに含む請求項11に記載のコンデンサ。
【請求項15】
(1)前記化合物およびそのアンモニウム塩、(2)前記二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)前記これらの組み合わせの重量と、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアルコール、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドエーテル、重合脂肪酸、二酸化ケイ素、ポリグリセリド、重クロム酸アンモニウム、クエン酸、またはこれらの組み合わせの重量との比が、1:0.01から1:0.5である、請求項14に記載のコンデンサ。
【請求項16】
前記有機溶媒には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセロール、N,N-ジメチルホルムアミド、ガンマブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ガンマバレロラクトン、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項11に記載のコンデンサ。
【請求項17】
(1)前記化合物およびそのアンモニウム塩、(2)前記二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)前記これらの組み合わせの重量と、前記有機溶媒の重量との比が、1:6から1:10である、請求項16に記載のコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月23日に出願された台湾特許出願第109136848号の優先権利益を主張する。上記特許出願の全体が参照することにより本明細書に援用される。
【0002】
本開示はコンデンサに関し、より詳細にはコンデンサの電解質の組成に用いられる化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム電解コンデンサは、電源フィルタコンデンサとしてよく用いられるエネルギー貯蔵デバイスである。アルミニウム電解コンデンサの主な構造は、コンデンサ素子、電解質、ケース、およびラバーシールを含む。コンデンサ素子は、アノードアルミニウム箔およびカソードアルミニウム箔ならびにこれらの間に挟まれたセパレータを巻回してなる。コンデンサ素子に電解質を含浸させた後、そのコンデンサ素子をケース内に組み込み、ラバーシールで封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6307732号明細書
【特許文献2】米国特許第7485240号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルミニウム電解コンデンサの高耐電圧特性を維持するため、二酸およびそのアンモニウム塩を有機溶媒中に溶解して電解質を調製するということがよく行われている。しかしながら、(車両の電源および家電に応用可能な)アルミニウム電解コンデンサの動作電圧および動作温度はより高い作動可能範囲が求められており、標準的な電解質では最早、中電圧および高電圧のそれらアルミニウム電解コンデンサへの要求、例えば高耐電圧、高導電性、および高火花電圧等を満たせなくなってきているため、アルミニウム電解コンデンサの市場の応用が制限されてしまっている。故に、上記問題を解決するため、新たな電解質の組成が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態によれば、電解質に用いられる化合物は次の化学構造を有する。
【0007】
【0008】
式中、R1はC1-8アルキル基、C1-8アルケニル基、C1-8アルキニル基、または芳香族基であり;R2は-(CnH2n)-OHであり、nは2から8の整数である。
【0009】
本開示の実施形態によれば、電解質は、有機溶媒と、(1)化合物およびそのアンモニウム塩、(2)二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)上記(1)および(2)の組み合わせと、を含み、該化合物は次の化学構造を有する。
【0010】
【0011】
式中、R1はC1-8アルキル基、C1-8アルケニル基、C1-8アルキニル基、または芳香族基であり;R2は-(CnH2n)-OHであり、nは2から8の整数である。
【0012】
該二酸は次の化学構造を有する。
【0013】
【0014】
式中、R3はC1-8アルキル基、C1-8アルケニル基、C1-8アルキニル基、または芳香族基である。
【0015】
本開示の実施形態によれば、コンデンサはコンデンサ素子および上述した電解質を含み、該コンデンサ素子は、アノードアルミニウム箔およびカソードアルミニウム箔、ならびにアノードアルミニウム箔とカソードアルミニウム箔との間に挟まれたセパレータを含む。該コンデンサ素子には電解質が含浸されている。
【発明の効果】
【0016】
電解質のパフォーマンス、例えば30℃における導電性および85℃における火花電圧、ならびにコンデンサのパフォーマンス、例えば容量、損失係数(DF)、等価直列抵抗(ESR)、および漏れ電流が改善され得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な記述では、説明の目的で、本開示の実施形態がより十分に理解されるよう、多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、これら特定の詳細なしに1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であるということは明らかであろう。また、図を簡潔とするため、既知の構造およびデバイスは概略的に示される。
【0018】
本開示の実施形態によれば、電解質に用いられる化合物は次の化学構造を有する。
【0019】
【0020】
式中、R
1はC
1-8アルキル基、C
1-8アルケニル基、C
1-8アルキニル基、または芳香族基であり;R
2は-(C
nH
2n)-OHであり、nは2から8の整数である。いくつかの実施形態において、R
1はメチルまたはtert-ブチルであり、nは2である。R
1がHであるか、またはR
1が他の位置において置換されている、例えば
である場合、その化合物は電解質に適さない、という点に注目すべきである。また、nが小さすぎる(例えば1)または大きすぎる(例えば9)場合、その化合物は電解質に適さない。
【0021】
本開示の実施形態によれば、電解質は、有機溶媒と、(1)化合物およびそのアンモニウム塩、(2)二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)上記(1)および(2)の組み合わせと、を含む。該化合物は次の化学構造を有する。
【0022】
【0023】
式中、R1はC1-8アルキル基、C1-8アルケニル基、C1-8アルキニル基、または芳香族基であり;R2は-(CnH2n)-OHであり、nは2から8の整数である。R1が他の位置において置換されている場合、その化合物およびそのアンモニウム塩は電解質に適さない。nが小さすぎるまたは大きすぎる場合、その化合物は電解質に適さない。
【0024】
該二酸は次の化学構造を有する。
【0025】
【0026】
式中、R
3はC
1-8アルキル基、C
1-8アルケニル基、C
1-8アルキニル基、または芳香族基である。またはR
3がHであるか、またはR
3が他の位置で置換されている(例えば
場合、その二酸およびそのアンモニウム塩は電解質に適さない。
【0027】
いくつかの実施形態において、(1)化合物およびそのアンモニウム塩を形成する方法は次のとおりである。化合物を適量のアンモニア水、例えば一級アミン、二級アミン、三級アミン、またはこれらの組み合わせに加える。その後の中和において、化合物の一部(全部ではない)がアンモニウム塩を形成する。中和された混合物のpHは約6から7である(弱酸性)。次いで、混合液をろ過し、化合物およびそのアンモニウム塩の混合物を含むろ過ケークを得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、(2)二酸およびそのアンモニウム塩を形成する方法は次のとおりである。二酸を適量のアンモニア水、例えば一級アミン、二級アミン、三級アミン、またはこれらの組み合わせに加える。その後の中和において、二酸の一部(全部ではない)がアンモニウム塩を形成する。中和された混合物のpHは約6から7である(弱酸性)。次いで、混合液をろ過することで、二酸およびそのアンモニウム塩の混合物を含むろ過ケークを得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、(3)上記の組み合わせ(例えば、(1)化合物およびそのアンモニウム塩と、(2)二酸およびそのアンモニウム塩との組み合わせ)は次のように形成される。化合物および二酸を適量のアンモニア水、例えば一級アミン、二級アミン、三級アミン、またはこれらの組み合わせに加える。その後の中和において、化合物および二酸の一部(全部ではない)がアンモニウム塩を形成する。中和された混合物のpHは約6から7である(弱酸性)。次いで、混合液をろ過することで、(1)化合物およびそのアンモニウム塩と、(2)二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、電解質は、(1)化合物およびそのアンモニウム塩のみを含む。いくつかの実施形態において、電解質は(2)二酸およびそのアンモニウム塩のみを含む。いくつかの実施形態において、電解質は、(3)上述の組み合わせ、つまり(1)化合物およびそのアンモニウム塩と、(2)二酸およびそのアンモニウム塩との組み合わせを含み得る。例えば、(3)上述の組み合わせにおいて、(1)化合物およびそのアンモニウム塩と(2)二酸およびそのアンモニウム塩との重量比は0.01:1から1.5:1、または0.02:1から0.45:1である。上述の組み合わせにおける重量比によって、電解質のパフォーマンス、例えば30℃下での導電性および85℃下での火花電圧、ならびにコンデンサのパフォーマンス、例えば容量、損失係数(DF)、等価直列抵抗(ESR)、漏れ電流がさらに改善され得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、電解質およびコンデンサのパフォーマンスが改善されるよう、電解質は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアルコール、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドエーテル、重合脂肪酸、二酸化ケイ素、ポリグリセリド(polyglyceride)、重クロム酸アンモニウム、クエン酸、または上述の組み合わせをさらに含んでいてよい。例えば、コロイダルシリカのようなシリカを加えてもよく、該シリカの粒径は10nmから200nm、例えば10nmから100nmであってよい。いくつかの実施形態において、(1)化合物およびそのアンモニウム塩、(2)二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)これらの組み合わせの重量と、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアルコール、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドエーテル、重合脂肪酸、二酸化ケイ素、ポリグリセリド、重クロム酸アンモニウム、クエン酸、またはこれらの組み合わせの重量との比は、1:0.01から1:0.5である。
【0032】
いくつかの実施形態において、有機溶媒には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1、4-ブタンジオール、グリセロール、N、N-ジメチルホルムアミド、ガンマブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ガンマバレロラクトン、またはこれらの組み合わせが含まれる。例えば、(1)化合物およびそのアンモニウム塩、(2)二酸およびそのアンモニウム塩、または(3)これらの組み合わせの重量と、有機溶媒の重量との比は1:6から1:10である。有機溶媒の量が少なすぎると、電解質が粘稠になり、コンデンサ素子の含浸性に影響する。有機溶媒の量が多すぎると、電解質の導電度が低くなり、コンデンサのパフォーマンスに悪影響を与える。
【0033】
本開示の実施形態によれば、コンデンサはコンデンサ素子および上述の電解質を含み、該コンデンサ素子は、アノードアルミニウム箔、カソードアルミニウム箔、およびアノードアルミニウム箔とカソードアルミニウム箔との間に挟まれたセパレータを含む。該コンデンサ素子には電解質が含浸されている。コンデンサおよびコンデンサ素子の詳細についてはWO2017/170169A1を参照とされたく、ここに詳述はしない。
【0034】
前述した本開示の特徴および長所を理解し易くするために、いくつかの実施例を以下に詳細に説明する。
【0035】
作製例1
【0036】
反応温度を70℃に保ちながら、硝酸ナトリウム30.21g(0.438mole)、脱イオン水63g(3.5mole)、および硝酸350mLを十分に混合した。30分反応させた後、反応時間を5時間70℃に維持し、4-tert-ブチルシクロヘキサノール27.37g(0.175mole)を上述の混合物に滴下して加えた。次いで、その混合液を減圧下で濃縮し、さらに抽出および精製して、化合物1a(26.8g)を得た。その水素スペクトルは次のとおりであった:1HNMR(CDCl3-d1,500MHz):δ2.52(1H,dd,J=16.32Hz,4.1Hz),2.48-2.35(2H,m),2.10(1H,ddJ=7.71Hz,16.27Hz),1.96-1.91(1H,m),1.75-1.70(1H,m),1.45-1.38(1H,m),0.91(9H,s)。上述の反応は次のとおりであった。
【0037】
【0038】
生成物1a(30g)をエチレングリコール(120g)中に溶解し、9日間反応させて、化合物1aおよび化合物1cの混合物(モル比=1:1)を得た。混合物1aおよび1cの水素スペクトルは次のとおりであった:1HNMR(D2O-d2,500MHz):δ4.04(1H,br),3.64(1H,br),2.41-2.00(4H,m),1.79(1H,br),1.47(1H,br),1.22(1H,br),0.74(9H,br)。上述の反応は次のとおりであった。
【0039】
【0040】
作製例2
【0041】
反応温度を70℃に保ちながら、硝酸ナトリウム30.21g(0.438mole)、脱イオン水63g(3.5mole)および硝酸350mLを十分に混合した。30分反応させた後、反応時間を5時間70℃に維持し、4-メチルシクロヘキサノール20g(0.175mole)を上述の混合物に滴下して加えた。次いで、その混合液を減圧下で濃縮し、さらに抽出および精製して、化合物1b(21g)を得た。その水素スペクトルは次のとおりであった:1HNMR(CDCl3-d1,500MHz):δ2.45-2.18(4H,m),2.04-1.6(1H,m),1.77-1.96(1H,m),1.57-1.50(1H,m),0.98(3H,d,J=6.68Hz)。上述の反応は次のとおりであった。
【0042】
【0043】
生成物1b(30g)をエチレングリコール(120g)中に溶解し、5日間反応させて、化合物1dの混合物を得た。その水素スペクトルは次のとおりであった:1HNMR(D2O-d2,500MHz):δ4.04(2H,br),3.64(2H,br),2.34-2.05(4H,m),1.78(1H,br),1.52(1H,br),1.39(1H,br),0.80(3H,br)。上述の反応は次のとおりであった。
【0044】
【0045】
以下の実施形態において、電解質の30℃における導電度および85℃における火花電圧の測定方法についてはWO2017/170169A1を参照にされたい。
【0046】
以下の実施例において、コンデンサを次のステップで作製した。先ず、エッチング(粗化)処理によりアルミニウム箔の面積を拡大し、次いで、化成処理により酸膜層を有するアノード箔を作製した。同じ手法で、エッチング処理により別のアルミニウム箔の面積を拡大し、カソード箔を形成した。それらの箔を、それらの間に挟んだセパレータと共に巻回し、コンデンサ素子を形成した。アノード箔およびカソード箔はリード線引出し部と接続させた。次いで、そのコンデンサ素子に、下記する実施例で調製した電解質を含侵させ、底部の開放端がラバー樹脂で封止された円筒形アルミニウムケース中に実装し、定格電圧450V、定格容量2.2μFのラジアルリード型電解コンデンサを得た。コンデンサのサイズは、直径8mm、長さ11.5mmであった。その電解コンデンサの電気特性を、コンデンサ容量、損失係数(DF)、等価直列抵抗および漏れ電流の測定方法を開示するCN110199367Aに記載された方法により測定した。
【0047】
当該分野において通常の知識を有する者がより容易に理解できるよう、以下に例示的な実施例を詳細に記載する。本発明概念は、ここに記載される例示的な実施例に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。明確とするために既知の部分についての記載は省き、かつ全体を通し、類似する参照番号は類似する構成要素を指すものとする。
【0048】
実施例1
【0049】
作製例1で合成された1.8重量部の化合物1cおよび8.2重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部をアンモニウム塩に変換した。中和された混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.22:1で得た。上記二酸の化学構造は次のとおりであった。
【0050】
【0051】
上述の混合物および2.5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm、Alfa Aesarより購入、酸化シリコン(IV)(Silicon (IV) oxide)、0.1ミクロンの粒子、液体中(in liquid))を87.5重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.04mS/cm、85℃における火花電圧456Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.33μF、損失係数(DF)は3.82%、等価直列抵抗(ESR)は9043mΩ、漏れ電流は5.6μAであった。また、コンデンサの製品歩留りは100%であった。
【0052】
実施例2
【0053】
実施例1の混合物、および粒径約100nmの5重量部のコロイダルシリカを85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.12mS/cm、85℃における火花電圧470Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.33μF、損失係数(DF)は3.78%、等価直列抵抗(ESR)は8620mΩ、漏れ電流は8.1μAであった。また、コンデンサの製品歩留りは100%であった。その電解コンデンサを温度125℃に1000時間曝露し、信頼度テストを行った後、その容量値は2.34μF、損失係数(DF)は4.94%、等価直列抵抗変化(ΔESR)は53%、漏れ電流は0.38μAであった。ΔESRの定義は次のとおりとした。
【0054】
【0055】
実施例3
【0056】
実施例1の混合物、および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約10nm、Nissan Chemicalより購入、ORGANOSILICASOL)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.05mS/cm、85℃における火花電圧474Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.33μF、損失係数(DF)は3.63%、等価直列抵抗(ESR)は8678mΩ、漏れ電流は3.8μAであった。また、コンデンサの製品歩留りは100%であった。その電解コンデンサを温度125℃に1000時間曝露し、信頼度テストを行った後、その容量値は2.34μF、損失係数(DF)は4.90%、等価直列抵抗変化(ΔESR)は50%、漏れ電流は0.56μAであった。
【0057】
実施例4
【0058】
10重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、二酸およびそのアンモニウム塩の混合物を含むろ過ケークを得た。上記二酸の化学構造は次のとおりであった。
【0059】
【0060】
上述の混合物および粒径約100nmの5重量部のコロイダルシリカを85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.12mS/cm、85℃における火花電圧453Vの電解液を形成した。
【0061】
実施例5
【0062】
10重量部の作製例2の化合物1dを適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1dの一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1dおよびそのアンモニウム塩の混合物を含むろ過ケークを得た。
【0063】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.01mS/cm、85℃における火花電圧474Vの電解液を形成した。
【0064】
実施例6
【0065】
作製例1で合成した1.35重量部の化合物1c、および実施例1に開示した6.15重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.22:1で得た。
【0066】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を87.5重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度1.93mS/cm、85℃における火花電圧468Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.32μF、損失係数(DF)は3.84%、等価直列抵抗(ESR)は9602mΩ、漏れ電流は14.1μAであった。
【0067】
実施例7
【0068】
作製例1で合成した2.25重量部の化合物1c、および実施例1で開示した10.25重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.22:1で得た。
【0069】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を82.5重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.34mS/cm、85℃における火花電圧459Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.33μF、損失係数(DF)は3.75%、等価直列抵抗(ESR)は8563mΩ、漏れ電流は7.5μAであった。
【0070】
実施例8
【0071】
作製例1で合成した2.7重量部の化合物1c、および実施例1で開示した12.3重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.22:1で得た。
【0072】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を80重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.45mS/cm、85℃における火花電圧458Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.33μF、損失係数(DF)は3.62%、等価直列抵抗(ESR)は8963mΩ、漏れ電流は5.9μAであった。
【0073】
実施例9
【0074】
作製例1で合成した0.2重量部の化合物1c、および実施例1で開示した9.8重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.02:1で得た。
【0075】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.10mS/cm、85℃における火花電圧466Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.33μF、損失係数(DF)は3.80%、等価直列抵抗(ESR)は8932mΩ、漏れ電流は12.2μAであった。
【0076】
実施例10
【0077】
作製例1で合成した0.5重量部の化合物1c、および実施例1で開示した9.5重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.05:1で得た。
【0078】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.10mS/cm、85℃における火花電圧466Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.33μF、損失係数(DF)は3.63%、等価直列抵抗(ESR)は8151mΩ、漏れ電流は11.1μAであった。その電解コンデンサを温度125℃に1000時間曝露し、信頼度テストを行った後、その容量値は2.34μF、損失係数(DF)は4.84%、等価直列抵抗変化(ΔESR)は55%、漏れ電流は0.40μAであった。
【0079】
実施例11
【0080】
作製例1で合成した3重量部の化合物1c、および実施例1で開示した7重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.43:1で得た。
【0081】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.03mS/cm、85℃における火花電圧465Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.33μF、損失係数(DF)は4.02%、等価直列抵抗(ESR)は9528mΩ、漏れ電流は11.7μAであった。その電解コンデンサを温度125℃に1000時間曝露し、信頼度テストを行った後、その容量値は2.34μF、損失係数(DF)は5.33%、等価直列抵抗変化(ΔESR)は55%、漏れ電流は0.63μAであった。
【0082】
実施例12
【0083】
作製例1で合成した3.8重量部の化合物1c、および実施例1で開示した6.2重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.61:1で得た。
【0084】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度1.76mS/cm、85℃における火花電圧464Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.32μF、損失係数(DF)は4.69%、等価直列抵抗(ESR)は10887mΩ、漏れ電流は11.7μAであった。その電解コンデンサを温度125℃に1000時間曝露し、信頼度テストを行った後、その容量値は2.31μF、損失係数(DF)は6.27%、等価直列抵抗変化(ΔESR)は61%、漏れ電流は0.62μAであった。
【0085】
実施例13
【0086】
作製例1で合成した4.5重量部の化合物1c、および実施例1で開示した5.5重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.82:1で得た。
【0087】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度1.64mS/cm、85℃における火花電圧468Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.31μF、損失係数(DF)は5.16%、等価直列抵抗(ESR)は12308mΩ、漏れ電流は4.7μAであった。その電解コンデンサを温度125℃に1000時間曝露し、信頼度テストを行った後、その容量値は2.3μF、損失係数(DF)は6.52%、等価直列抵抗変化(ΔESR)は61%、漏れ電流は0.46μAであった。
【0088】
実施例14
【0089】
作製例1で合成した6重量部の化合物1c、および実施例1で開示した4重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比1.5:1で得た。
【0090】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度1.56mS/cm、85℃における火花電圧473Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.30μF、損失係数(DF)は6.02%、等価直列抵抗(ESR)は16177mΩ、漏れ電流は3.9μAであった。
【0091】
実施例15
【0092】
実施例1で開示した10重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、二酸およびそのアンモニウム塩を含むろ過ケークを得た。
【0093】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.08mS/cm、85℃における火花電圧464Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.32μF、損失係数(DF)は4.27%、等価直列抵抗(ESR)は9303mΩ、漏れ電流は8.1μAであった。その電解コンデンサを温度125℃に1000時間曝露し、信頼度テストを行った後、その容量値は2.33μF、損失係数(DF)は5.59%、等価直列抵抗変化(ΔESR)は67%、漏れ電流は1.80μAであった。
【0094】
実施例16
【0095】
作製例1で合成した1.8重量部の化合物1c、および実施例1で開示した8.2重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.22:1で得た。
【0096】
上述の混合物を90重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度1.73mS/cm、85℃における火花電圧393Vの電解液を形成した。
【0097】
実施例17
【0098】
作製例1で合成した1.8重量部の化合物1c、および実施例1で開示した8.2重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.22:1で得た。
【0099】
上述の混合物および1.5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を88.5重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度1.78mS/cm、85℃における火花電圧446Vの電解液を形成した。
【0100】
実施例18
【0101】
作製例1で合成した1.8重量部の化合物1c、および実施例1で開示した8.2重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、化合物1cおよび二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との混合物を含むろ過ケークを、化合物1cおよびそのアンモニウム塩と二酸およびそのアンモニウム塩との重量比0.22:1で得た。
【0102】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約200nm、Alfa Aesarより購入、酸化シリコン(IV)(Silicon (IV) oxide)、0.2ミクロンの粒子、液体中(in liquid))を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.08mS/cm、85℃における火花電圧462Vの電解液を形成した。上述にて調製した電解質を用いてラジアルリード型電解コンデンサを作製した。その容量は2.32μF、損失係数(DF)は3.92%、等価直列抵抗(ESR)は10032mΩ、漏れ電流は4.7μAであった。そのコンデンサの製品歩留りは80%であった。
【0103】
比較例1
【0104】
10重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、二酸およびそのアンモニウム塩の混合物を含むろ過ケークを得た。本例における二酸の化学構造は次のとおりであった。
【0105】
【0106】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度3.48mS/cm、85℃における火花電圧177Vの電解液を形成した。この電解液を用いて作製したラジアルリード型電解コンデンサは、耐電圧が不十分であった。
【0107】
比較例2
【0108】
10重量部の二酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、二酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、二酸およびそのアンモニウム塩の混合物を含むろ過ケークを得た。本例における二酸の化学構造は次のとおりであった。
【0109】
【0110】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加え、30℃における導電度2.08mS/cm、85℃における火花電圧241Vの電解液を形成した。この電解液を用いて作製したラジアルリード型電解コンデンサは、耐電圧が不十分であった。
【0111】
比較例3
【0112】
10重量部の安息香酸を適量のアンモニア水に加えて溶液を中和し、安息香酸の一部(全部ではない)をアンモニウム塩に変換した。中和した混合物のpHは約6から7であった(弱酸性)。次いで、その混合液をろ過し、安息香酸およびそのアンモニウム塩の混合物を含むろ過ケークを得た。本例における安息香酸の化学構造は次のとおりであった。
【0113】
【0114】
上述の混合物および5重量部のコロイダルシリカ(粒径約100nm)を85重量部のエチレングリコールに加えた。この混合物は溶解せず、電解質として用いることができない。
【0115】
上述した好ましい実施形態により本発明を説明したが、本発明の応用はこれら実施形態に限定されることはない。当業者には、本開示の範囲または精神を逸脱することなく、様々な変更および変化を加え得ることは明らかであろう。明細書および実施例は単に例示と見なされるよう意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示される。