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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069425
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】地形参照ナビゲーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/20 20060101AFI20220428BHJP
   B64D 47/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
G01C21/20
B64D47/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172773
(22)【出願日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】20275164
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508296554
【氏名又は名称】アトランティック・イナーシャル・システムズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Atlantic Inertial Systems Limited
【住所又は居所原語表記】Clittaford Road, Southway, Plymouth, PL6 6DE, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー プライス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ヘンダーソン
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA11
2F129BB07
2F129BB22
2F129BB26
2F129CC06
2F129CC14
2F129CC15
2F129EE78
2F129GG18
2F129HH20
2F129HH21
(57)【要約】
【課題】 改善された地形参照ナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】 地形参照ナビゲーションシステムであって、ナビゲーションシステムの現在の位置の下の地形の高度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、地形高度データを各々が含む複数のマップポストを含む地形高度マップと、地形高度マップの少なくとも一部の地形高度データに基づき、前述の地形高度マップの前述の一部の陸及び/または水の割合を計算するように構成された陸-水検出ユニットと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地形参照ナビゲーションシステムであって、
前記ナビゲーションシステムの現在の位置の下の地形の高度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、
地形高度データを各々が含む複数のマップポストを含む地形高度マップと、
前記地形高度マップの少なくとも一部の前記地形高度データに基づき、前記地形高度マップの前記一部の陸及び/または水の割合を計算するように構成された陸-水検出ユニットと、
を備えている、地形参照ナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記ナビゲーションシステムの位置の概算を判定するように構成された反復アルゴリズムユニットであって、反復の各々において、前記反復アルゴリズムユニットが、
前記測定された地形高度データを受領することと、
前記陸-水検出ユニットから前記地形高度マップの少なくとも一部の陸及び/または水の前記割合を受領することと、
前記陸-水検出ユニットから受領した陸及び/または水の前記割合に基づき、前記ナビゲーションシステムの前記現在の位置の概算が、陸-水の変化の上にあるかどうかを判定することと、
前記現在の位置の概算、前記測定された地形高度データ、前記貯蔵された地形高度データ、及び、前記ナビゲーションシステムの前記現在の位置の概算が陸-水の変化の上にあるかどうかに基づき、次の反復に関する前記位置の概算をアップデートすることと、
を行うように構成される、前記反復アルゴリズムユニットをさらに備える、請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記反復アルゴリズムユニットが、測定された地形高度データと、前記地形高度マップ内の貯蔵された地形高度データとの間の相関関係に基づき、前記次の反復に関する前記位置の概算をアップデートするように構成される、請求項2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
慣性ナビゲーションシステムをさらに備え、前記反復アルゴリズムユニットが、前記慣性ナビゲーションシステムによって出力された信号(複数可)にさらに基づき、前記次の反復に関する前記位置の概算をアップデートするように構成される、請求項2または3に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記ナビゲーションシステムが陸-水の変化の上に位置していると前記反復アルゴリズムユニットが判定するときに、前記反復アルゴリズムユニットが、前記測定された地形高度データに関連する不確実性を増大させるように構成される、請求項2~4のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記ナビゲーションシステムが陸-水の変化の上に位置していると前記反復アルゴリズムユニットが判定するときに、前記反復アルゴリズムユニットが、前記反復アルゴリズムユニットの高さの状態にQブーストを適用するように構成される、請求項2~5のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【請求項7】
前記高さの状態に適用される前記Qブーストが、所定の量に等しい、請求項6に記載のナビゲーション。
【請求項8】
前記所定の量が(0.5m)2より大であり、好ましくは前記所定の量が(1m)2より大であり、より好ましくは前記所定の量が(2m)2より大であり、より好ましくは前記所定の量が(3m)2以上である、請求項7に記載のナビゲーションシステム。
【請求項9】
前記陸-水検出ユニットが、前記地形高度マップのある部分に関し、各マップポストを陸または水として分類するように構成されており、各マップポストを陸または水として分類するプロセスが、
前記地形高度マップの前記部分内のすべてのマップポストに水と最初にラベルを付すことと、
前記地形高度マップの前記部分内の前記マップポストの第1のパス内の、より低い高度にある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストの前記ラベルを陸に変更することと、
繰り返しのパスにおいて、陸としてラベルが付された同じ高度にある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストの前記ラベルを陸に変更し、どのラベルも変更されない結果となる前記第1のパスの最後に終了することと、
を含む、請求項1~8のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【請求項10】
前記陸-水検出ユニットが、
前記現在の位置の概算を囲む所定のエリアに対応する前記地形高度マップの第1の部分に関し、陸または水として各マップポストを分類することと、
前記現在の位置の概算を囲む第2のエリアに対応する前記地形高度マップの第2の部分の陸及び/または水の割合を計算することであって、前記地形高度マップの前記第2の部分が、前記地形高度マップの前記第1の部分のサブセットである、前記計算することと、
を行うように構成される、請求項1~9のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【請求項11】
前記地形高度マップの前記第1の部分が、前記現在の位置の概算を囲むマップポストの所定の数のキャッシュを含み、前記地形高度マップの前記第2の部分のサイズが、前記現在の位置の概算における前記不確実性に依存する、請求項10に記載のナビゲーションシステム。
【請求項12】
前記反復アルゴリズムユニットが、陸としてラベルが付された前記地形高度マップの前記第2の部分内のマップポストの前記割合が、第1の所定の閾値より上かつ第2の所定の閾値より下にあるときに、前記ナビゲーションシステムが陸-水の変化の上に位置していると判定し、陸としてラベルが付された前記マップポストの前記割合が、前記第1の所定の閾値より上かつ前記第2の所定の閾値より下にないときに、前記ナビゲーションが陸-水の変化の上に位置していないと判定するように構成される、請求項10または11に記載のナビゲーションシステム。
【請求項13】
前記第1の所定の閾値が5%以下であり、前記第2の所定の閾値が95%以上である、請求項12に記載のナビゲーションシステム。
【請求項14】
前記反復アルゴリズムユニットが、カルマンフィルタである、請求項1~13のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【請求項15】
地形高度データを各々が含む複数のマップポストを含む地形高度マップの少なくとも一部の陸対水の割合の計算方法であって、前記方法が、
前記地形高度マップの前記部分内のすべてのマップポストに水と最初にラベルを付すことと、
より低い高度にある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストの前記ラベルを陸に変更することと、
陸とラベルが付された同じ高度にある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストの前記ラベルを陸に変更することと、
前記地形高度マップの前記部分内にある、陸及び/または水とラベルが付されたマップポストの前記割合を計算することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地形参照ナビゲーションシステムの分野に関する。より詳細には、本開示は、地形参照ナビゲーションシステムの陸/水の変化の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
地形参照ナビゲーション(TRN:Terrain Referenced Navigation)システムが、多くの機上プラットフォームで利用されており、ナビゲーションの解決策を生成するために、航空機のナビゲーションデータ、レーダーの高度計データ、及び蓄積された地形の高度データを統合する。TRNシステムは、しばしば、慣性ナビゲーションシステム(INS:Inertial Navigation System)に関して使用される。この慣性ナビゲーションシステムは、慣性測定センサ(たとえば、ジャイロスコープ、加速度計など)を使用して、ナビゲーションの解決策を提供する。そのようなシステムは、慣性参照ユニット(IRU:Inertial Reference Unit)と呼ばれることがある。ナビゲーションの解決策は、しばしば、TRN及びINSによって提供されたナビゲーションの解決策を統合する手段として、INSの誤差を較正するカルマンフィルタを使用する。
【0003】
慣性ナビゲーションシステムから得られた位置の概算は、通常、経時的に加速度計及びジャイロスコープによって生じる誤差の蓄積に起因して、毎時約2海里の割合で変動する。ナビゲーションシステムは、GPS、GNSSなどの衛星ベースのナビゲーションの解決策を含む、位置の概算のさらなるソースを使用することにより、これら誤差をある程度まで修正することができる。しかし、衛星ベースのナビゲーションの解決策は、信頼性が低い。信号は、ジャミングされる、妨害される、ブロックされるなどされ得、このことは、これら衛星ベースのナビゲーションの解決策に過度に依存するナビゲーションシステムにおける問題に繋がり得る。TRNシステムは、ナビゲーションシステムがINS誤差を経時的に修正することを可能にし得るさらなるナビゲーションの解決策を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のTRNシステムは、航空機の下方の地形高度を概算するために、気圧-慣性の混合の高度及びレーダー高度計を利用する。測定された地形高度の概算は、次いで、ナビゲーションの解決策を提供するために、航空機の移動経路に沿う、地形高度マップに貯蔵された地形高度データに相関される。すなわち、航空機の位置を概算する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様から見ると、本開示は、地形参照ナビゲーションシステムであって、ナビゲーションシステムの現在の位置の下の地形の高度を測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、地形高度データを各々が含む複数のマップポストを含む地形高度マップと、前述の地形高度マップの少なくとも一部の地形高度データに基づき、地形高度マップの前述の一部の陸及び/または水の割合を計算するように構成された陸-水検出ユニットと、を備える、地形参照ナビゲーションシステムを提供する。
【0006】
地形マップは、通常、地表の陸のエリアと水のエリアとの両方に対応するエントリを含む、各エントリに関し決まった高度を貯蔵している。しかし、水の本体の高度は、(たとえば、潮流、湖が季節的に満たされること及び蒸発することなどの結果として)経時的に上昇及び下降する。このことは、水の実際の高度を、地形マップ内の蓄積された標高値とは異なるものとし得、このことは、地形参照ナビゲーションシステムが実際の高度の測定値を蓄積されたマップの高度と相関させることを試みる場合に、そのようなシステムから得られた位置の概算における誤差を生じ得る。
【0007】
水のエリア上での、正確ではない地形高度データの影響は、陸と水との間の変化のエリア上において特に問題である。地形参照ナビゲーションシステムを備えた航空機が陸から水へ(またはその逆に)通過する場合、変化にわたる高度の測定された差異は、地形高度マップ内の蓄積された標高値に基づく高度の予想された差異とは異なり得る。実際の値と予測された値との間の相違は、数メートルである場合がある。実際、このことは、TRNが不正確な位置の概算及び/または(たとえば、位置、速度、姿勢などの)状態の誤差の概算を出力することに繋がり得る。この理由は、測定されたデータが正確であると想定し、したがって、航空機の位置をマップ上の正確な位置と相関させることに失敗する場合がある(不正確な位置にマッチするか、マッチしない)ためである。このことは、陸と水との間の変化の上でのナビゲーションの誤差における鋭いスパイクを生じることに繋がり得る。本明細書に開示にTRNシステムは、陸-水検出ユニットを備えている。この陸-水検出ユニットは、内部に蓄積された地形高度データを使用して、地形高度マップのある部分の陸及び/または水の割合を概算する能力をナビゲーションシステムに提供する。陸-水検出ユニットは、ナビゲーションシステムが、陸と水との間の変化を包含する地形マップのエリアを検出し、それに応じて、TRNシステムに、これらエリアを通過する際に補整することを可能にする。それにより、ナビゲーションの誤差におけるこれら変化の影響を低減させる。
【0008】
実施例のあるセットでは、ナビゲーションシステムは、ナビゲーションシステムの位置の概算を判定するように構成された反復アルゴリズムユニットであって、反復の各々において、反復アルゴリズムユニットが、測定された地形高度データを受領することと、陸-水検出ユニットから地形高度マップの少なくとも一部の陸及び/または水の割合を受領することと、陸-水検出ユニットから受領した陸及び/または水の割合に基づき、ナビゲーションシステムの現在の位置の概算が、陸-水の変化の上にあるかを判定することと、現在の位置の概算、測定された地形高度データ、貯蔵された地形高度データ、及び、ナビゲーションシステムの現在の位置の概算が陸-水の変化の上にあるかに基づき、次の反復に関する位置の概算をアップデートすることと、をするように構成されている、反復アルゴリズムユニットをさらに備えている。反復アルゴリズムは、様々な観測値を得るため、及び/またはこれら観測値を概算し、最適な解決策へと組み合わせるために、しばしばナビゲーションシステムにおいて使用される。そのような反復アルゴリズムの実施例には、カルマンフィルタなどの最小二乗推定量が含まれる。陸-水の変化が存在することの追加の情報を考慮することにより、反復アルゴリズムユニットは、位置の向上された概算を提供することができる。具体的には、陸-水の変化が存在するか存在しないかは、最適な解決策を形成するために、他の情報が組み合わせられるか処理される方法を変更するために使用される場合がある。
【0009】
反復アルゴリズムユニットは、測定された地形高度データと、地形高度マップ内の貯蔵された地形高度データとの間の相関関係に基づき、次の反復に関する位置の概算をアップデートするように構成されている場合がある。実施例のあるセットでは、地形参照ナビゲーションシステム(TRN)は、慣性ナビゲーションシステム(INS)をさらに備え、反復アルゴリズムユニットが、INSによって出力された信号(複数可)にさらに基づき、次の反復に関する位置の概算をアップデートするように構成されている。このことは、次の反復に関する位置の概算をアップデートする際に反復アルゴリズムユニットが考慮することができるさらなる入力を提供し、地形参照ナビゲーションシステムがより正確なナビゲーションの解決策を提供することを可能にする。いくつかの実施例では、INSは、純粋に地形ベースの位置の概算とは独立した位置の概算を生成することができる。そのような実施例では、INSは、経時的に、IMU(加速度計及びジャイロ)の出力を統合することに基づいてその位置の概算を生成し、一方、純粋に地形ベースの位置の概算は、地形高度の測定値を、地形高度の蓄積されたマップと相関させて、現在の位置の最適な概算を与えることにより、生成される。実際には、これら位置の概算の両方が、INSからの入力、地形高度の蓄積されたマップ、及び地形高度センサに基づき、IAUによって計算及び統合される場合がある。これら2つの概算が組み合わせられる方法は、反復アルゴリズムユニットによって判定される。この反復アルゴリズムユニットは、各概算の変化及び信頼性に基づき、その最適な解決策を調整する場合がある。陸-水の変化が検出された場合、反復アルゴリズムユニットは、現在の測定値への依存度を低くする場合がある。この理由は、TRNの概算が、そのようなエリアにおける予期されない水位によって退けられ得るためである。したがって、IAUは、予期されない水位を、重要性がより低いものとして効果的に扱い、その最適な位置の解決策を、その予期されない水位に応じてはそれほど調整しない。
【0010】
実施例のあるセットでは、反復アルゴリズムユニットは、測定された地形高度データに関連する不確実性を増大させることにより、現在の位置の概算(すなわち、前の反復の概算)が、陸-水の変化の上に位置しているかどうかに基づき、次の反復に関する位置の概算をアップデートするように構成されている。そのようにする中で、反復アルゴリズムユニットは、そのユニットが陸と水との間の変化のエリアの上にあるとき、通常のメカニズムによって計算されたよりも大である誤差を、測定された地形高度データが有することを効果的に想定する。このことは、陸-水の変化の上を通る際に、反復アルゴリズムユニットに、ナビゲーションの他のソース(たとえば、INS)により大きく基づいて、次の反復に関する位置の概算をアップデートさせ、こうして、水のエリアの、測定された高度データと、蓄積された高度データとの間の相違によって生じるナビゲーションの誤差を防止する助けになる。測定された地形高度データに関連する不確実性を増大させることにより、測定されたデータと蓄積されたマップデータとの間のあらゆる相違が、予期される不確実性の内にある傾向が高く、したがって、反復アルゴリズムユニット内に誤差を生じない傾向にある。この反復アルゴリズムは、そのような状況では収束性のままである傾向が強い。
【0011】
実施例のあるセットでは、反復アルゴリズムユニットはカルマンフィルタを備えている。反復アルゴリズムユニットは、反復アルゴリズムユニットが、ナビゲーションシステムが陸-水の変化の上に位置していると判定するときに、反復アルゴリズムユニットの高さの状態のその知識のモデル化された不確実性(当業者には「Q」ブーストとしても知られている)を増大させることにより、測定された地形高度データの重みを下げるように構成されている場合がある。カルマンフィルタなどの反復アルゴリズムユニットは、通常、利用可能なシステムの状態の変数の各々の誤差の概算の共分散を保持する「P」行列を利用する。反復アルゴリズムユニットは、通常、システムノイズ及び他の影響をモデル化するために、各伝播サイクルにおけるP行列に付加される不確実性のレベルを保持する「Q」行列をも利用する。状態ベクトルは、P行列及びQ行列におけるその関連するエントリとともに、1つまたは複数の高さの誤差の状態を含む場合がある。高さの状態は、したがって、測定された地形高度データと関連している。この理由は、このデータが、ナビゲーションシステムの少なくとも1つのセンサによって取られた高さの測定値に基づいて計算されるためである。この理論上のノイズを状態に追加することにより、反復アルゴリズムユニットは、前述の状態が、Qブーストを適用しない場合よりも大である誤差を有することを想定し、したがって、次の反復に関して位置の概算をアップデートするときに、その状態に関連する測定値を、他の測定値ほど重要には考慮しない。換言すると、反復アルゴリズムユニットは、次の反復に関する位置の概算をアップデートするときに、高さの状態に関する測定値(すなわち、測定された地形高度データ)に関連する不確実性を増大させる(または、重みを低減させる)。重み付け(または重みの低減)に関するとき、情報の様々な断片が、そのそれぞれの重要性または正確さを示す重み付け関数と合わせられる場合があることを理解されたい。これをする1つの方法は、測定値の概算された不確実性に応じて、測定値に重み付けすることであり、より不確実な測定値には、不確実性が低い測定値よりも低い重み付けがされる。
【0012】
実施例のあるセットでは、反復アルゴリズムユニットは、ナビゲーションシステムが陸-水の変化の上に位置していると反復アルゴリズムユニットが判定したときに、反復アルゴリズムユニットの高さの状態に、所定の量に等しいQブーストを適用するように構成されている。いくつかの実施例では、所定の値は、(0.5m)2より大である場合があり、好ましくは(1m)2より大である場合があり、より好ましくは(2m)2より大である場合があり、さらにより好ましくは(3m)2より大である場合がある。
【0013】
実施例のあるセットでは、反復アルゴリズムユニットは、他の変数に基づく反復アルゴリズムによって動的に判定された量に等しいQブーストを適用するように構成されている。そのような変数には、局所的な傾斜、潮流の時間、飛行フェイズなどが含まれる場合がある。
【0014】
実施例のあるセットでは、陸-水の検出ユニットが陸または水の割合を計算する地形高度マップの一部が、ナビゲーションシステムの現在の概算位置を囲む(また、任意選択的には中心とする)エリアに対応するマップポストの数(すなわち、個別の位置のデータポイント)を含んでいる。陸-水検出ユニットが陸または水の割合を計算するエリアのサイズ及び形状、そしてひいては、マップポストの対応する数は、現在の位置の概算における不確実性に依存する場合がある。陸と水との検出ユニットが陸または水の割合を計算する地形高度マップの一部は、現在の位置の概算を囲むエリアに対応する所定の数のマップポストを含む、より大であるキャッシュのサブセットを含む場合がある。
【0015】
多くの異なるアルゴリズムが、地形高度マップから、マップポストが陸であると思われるかと、水であると思われるかと、を判定するために使用され得る。しかし、実施例のあるセットでは、陸-水検出ユニットは、マップポストを、地形高度マップの少なくとも一部の、おそらく陸、またはおそらく水として分類するように構成されている。この地形高度マップは、40000(たとえば、200対200)未満のマップポストのエリア、好ましくは10000(たとえば、100対100)未満のマップポストのエリア、より好ましくは2500(たとえば、50対50)未満のマップポストのエリア、さらにより好ましくは1000(たとえば、30対30)以下のマップポストのエリアを含む場合がある。いくつかの実施形態では、各マップポストは、地表の40000m2(たとえば、200m対200m)のエリア、好ましくは10000m2(たとえば、100m対100m)未満のエリア、より好ましくは2500m2(たとえば、50m対50m)未満のエリア、さらに好ましくは1000m2(たとえば、30m対30m)以下のエリアに関する地形高度データを含んでいる。データポイントの解像度と、データポイントの数と、分類プロセスの正確さと、相関関係プロセスを実施するために必要な処理力との間に、トレードオフが存在することを理解されたい。
【0016】
実施例のあるセットでは、陸-水検出ユニットは、地形高度マップのある部分に関し、各マップポストを陸または水として分類するように構成されており、各マップポストを陸または水として分類するプロセスが、地形高度マップの部分内のすべてのマップポストに水と最初にラベルを付すことと、地形高度マップの部分内のマップポストの第1のパス内の、より低い高度にある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストのラベルを陸に変更することと、繰り返しのパスにおいて、陸としてラベルが付された同じ高度にある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストのラベルを陸に変更し、どのラベルも変更されない結果となる第1のパスの最後に終了することと、を含んでいる。このアルゴリズムは、陸-水検出ユニットが、内部に蓄積された地形高度データのみを使用して、地形高度マップの一部を陸または水として分類することを可能にし、このユニットが機能するために単に地形高度データを必要とすることから、陸-水検出ユニットを、様々な異なる既存の地形高度マップ、たとえばDTED(デジタル地形標高データ)、DTED2などと互換性があるものとすることを可能にしている。このアルゴリズムは、水が通常は、可能な限りもっとも低い位置にスロープを流れ落ちる原理において作動する。したがって、地形における極小部は、水と解される場合がある。より低い高度にある隣接するマップポストを有する任意のマップポストは、不安なく陸であると想定することができる。この理由は、陸がスロープのより高い領域にあり、それにより、水がスロープを流れ落ちるようになっているためである。すべてのスロープ状の陸がこの方法で分類されると、隣接する陸と同じ高さにあるあらゆる地形も、局所的な水位がより低いことが確定されていることから、陸と想定することができる。このため、残っているものはいずれも水と想定される。このアプローチは、いくらかの小さいフラットな陸のエリア(たとえば、フラットな谷床)を水として検出する場合があるが、このアプローチは、本物の水のエリアを確実に検出する。実際の陸-水の変化を検出し、補うことが可能であることには、陸の小さいフラットなエリアに関連する場合がある、時折増大する誤差(この理由は、これらエリアが不正確に水と識別されるためである)が、システムの正確さにわずかに不利益な影響があることがわかっているが、重大な利点がある。
【0017】
より低い隣接するポストが存在するときに陸としてマップポストを識別する理論は、大きい川の流れ及び滝に関しては、崩れる場合があることに留意されたい。しかし、実際には、このことは問題ではない。本開示は、湖、海、貯水池などの、より大である水の比較的静的な本体の境界の識別に主として関連する。同様に、データベースのクリエータは、通常、より高い地形(たとえば、滝の上)がない場合の水の本体の周りに高さ1メートルの人工のリップを置き、それにより、アルゴリズムが依然として正常に機能するようにしている。
【0018】
実施例のあるセットでは、陸-水検出ユニットは、現在の位置の概算を囲む所定のエリアに対応する地形高度マップの第1の部分に関し、陸または水として各マップポストを分類することと、現在の位置の概算を囲む第2のエリアに対応する地形高度マップの第2の部分の陸及び/または水の割合を計算することであって、地形高度マップの第2の部分が、第1の部分のサブセットである、計算することと、を行うように構成される。陸/水の分類が実施される地形高度の第1の部分は、アクセスを容易にするためにキャッシュが付される場合がある。
【0019】
実施例のあるセットでは、反復アルゴリズムユニットは、陸としてラベルが付された地形高度マップの第2の部分内のマップポストの割合が、第1の所定の閾値より上かつ第2の所定の閾値未満にあるときに、ナビゲーションシステムが陸と水との間の変化の上に位置していると判定し、陸としてラベルが付されたマップポストの割合が、第1の所定の閾値より上かつ第2の所定の閾値未満にないときに、ナビゲーションシステムが陸-水の変化の上に位置していないと判定するように構成されている。同じプロセスが、陸の割合の代わりに、水の割合で使用される場合があることを理解されたい。いくつかの実施例では、第1の所定の閾値は、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下である。いくつかの実施例では、第2の所定の閾値は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。第1の所定の閾値及び第2の所定の閾値に関するそのような値は、陸-水の変化の偽検出の発生を低減しつつ、陸と水との間の変化を容易に検出することを可能にする。
【0020】
陸または水としてのマップポストの判定が、地形マップの全体、または大部分に関して前もって計算され得、ラベルが、即座に参照するための高度データとともに貯蔵されていることを理解されたい。しかし、マップデータを修正することは、ソフトウェア及び規制の観点から事項を複雑にする場合があり、したがって、特定の実施例では、標準的な地形マップを変化されないままとし、地形ベースのナビゲーションのため(すなわち、位置の概算のため)に現在使用されている地形マップのキャッシュが付された部分において、リアルタイムで陸及び水のラベル(そしてひいては、陸-水の変化)を計算することが有利である。このキャッシュが付された部分は、乗り物が新たな(キャッシュが付されていない)地形上を移動する際に、地形マップから新たなマップポイントがキャッシュにロードされ、位置が変化するにつれて、ローリング方式でアップデートされ、一方、もはや必要ではないとき(乗り物がこれらマップポイントから十分に離れて移動する場合)、より古いマップポイントは廃棄される。
【0021】
第2の態様から見ると、本開示は、地形高度データを各々が含む複数のマップポストを含む地形高度マップの少なくとも一部の陸及び/または水の割合の計算方法であって、方法が、地形高度マップの部分内のすべてのマップポストに水と最初にラベルを付すことと、より低い高度にある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストのラベルを陸に変更することと、陸とラベルが付された同じ高さにある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストのラベルを陸に変更することと、地形高度マップの部分内にある、陸及び/または水とラベルが付されたマップポストの割合を計算することと、を含む、方法を提供する。
【0022】
第3の態様から見ると、本開示は、地形高度マップの一部の各マップポストを陸または水と分類する方法であって、地形高度マップが、地形高度データを各々が含む複数のマップポストを含み、方法が、地形高度マップの部分内のすべてのマップポストに水と最初にラベルを付すことと、地形高度マップの部分内のマップポストの第1のパス内の、より低い高度にある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストのラベルを陸に変更することと、繰り返しのパスにおいて、陸としてラベルが付された同じ高度にある隣接するマップポストを有するすべてのマップポストのラベルを陸に変更し、どのラベルも変更されない結果となる第1のパスの最後に終了することと、を含んでいる、方法を提供する。
【0023】
本開示の第1の態様に関して上述したオプションの特徴のすべてが、同様に等しく第2の態様に適用される場合があることを理解されたい。
【0024】
1つまたは複数の非限定的な実施例が、添付図面を参照して、ここで記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示によるナビゲーションシステムの概略ブロック図である。
図2】本開示によるナビゲーションシステムのハードウェア構成要素を示す概略ブロック図である。
図3】本開示による、陸/水の分類プロセスの第1の段階の後の地形高度マップの一部の可視化を示す図である。
図4】本開示による、陸/水の分類プロセスの第2の段階の後の地形高度マップの一部の可視化を示す図である。
図5】本開示による、陸/水の分類プロセスの第2の段階の後の地形高度マップの一部の可視化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、ナビゲーションシステム1を概略的に示している。ナビゲーションシステム1は、航空機、ヘリコプターなどの乗り物に適している。図1に示すナビゲーションシステム1は、反復アルゴリズムユニット(IAU)2と、地形高度マップ4と、陸-水計算ユニット6と、慣性ナビゲーションシステム(INS)7と、レーダー高度計(RADALT)8と、気圧高度計10と、を備えている。IAU2は、地形高度マップ4、陸-水計算ユニット6、INS7、RADALT8、及び気圧高度計10からの入力を使用して、乗り物の現在の位置22の概算を得る。IAU2は、次いで、この概算を位置の出力12として出力する。位置の出力12は、ナビゲーションシステム1が取り付けられた乗り物のさらなるシステム、たとえば、ナビゲーションディスプレイ、オートパイロットシステム、飛行記録システムなどを備えている場合がある。
【0027】
地形高度マップ4は複数のマップポストを備え、各マップポストは、地表のあるエリアに関する地形高度データ(すなわち、海水面からの高さ)を含んでいる。この実施例では、各マップポストは、地表の30m対30mのエリアに関する地形高度データを含んでいる。地形高度マップ4は、限定ではないが、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などを含む、任意の適切な不揮発性貯蔵手段を使用して貯蔵される場合がある。地形高度マップ4は、地形高度データ14を、IAU2と陸-水計算ユニット6との両方に出力するように構成されている。地形高度マップ4は、乗り物22の現在の概算位置に応じて、局所的な地形高度データ14を、IAU2及び陸-水計算ユニット6に出力するように構成されている。
【0028】
INS7は、1つまたは複数の慣性測定ユニット、たとえば、加速度計及びジャイロスコープを備えている。この慣性測定ユニットは、位置の概算を計算することを可能にするために、ナビゲーションシステム1が取り付けられた乗り物の移動を測定する。この実施例では、INS7は、3つの直交する加速度計と、3つの直交するジャイロスコープと、を備えている。INS7は、これら加速度計及びジャイロスコープを使用して得られた測定値を、INS測定値17の形態でIAU2に出力する。INS測定値17は、加速度計及びジャイロスコープによる出力としての信号、または、加速度計とジャイロスコープとの各々の出力のデジタルサンプルのシークエンスを含む場合がある。
【0029】
レーダー高度計8は、任意の一時点における、乗り物と、この乗り物の下の陸との間の距離を測定するように構成されたレーダーシステムを備えている。この実施例では、レーダー高度計8は、乗り物に搭載されたアンテナから放出され、陸から反射された後に乗り物で検出される電波の、飛行時間の測定値を使用する。レーダー高度計8は、陸の上の乗り物の高さの測定値18をIAU2に出力する。
【0030】
気圧高度計10は、空気圧を経時的に測定するように構成された空気圧センサ(気圧計)を備えている。気圧高度計がこれら測定値をIAU2に直接出力する場合があるが、この実施例では、気圧高度計は、空気圧の測定値を使用して計算された、乗り物の高度20(すなわち、海水面からの高さ)の概算をIAUに出力するように構成されている。
【0031】
陸-水計算ユニット6は、地形高度マップ4のある領域に関するマップポストを、陸または水として分類し、乗り物22の現在の概算位置を囲む領域に関するマップポストの分類から、陸及び/または水の割合を計算するように構成されている。陸-水計算ユニット6は、16において、乗り物22の現在の概算位置の周りの領域に関し、陸としてラベルが付されたマップポストの割合を、IAU2に出力するように構成されている。陸-水計算ユニット6は、現在の概算位置22をIAU2から受領する。IAU2は、この出力を使用して、地形マップ4のどのマップポストが、現在の概算位置22を囲む領域に対応するかを計算する。陸-水計算ユニット6の動作は、図3から図5を参照してより詳細に記載される。
【0032】
この実施例では、IAU2は、複数のシステムの変数に関する誤差の概算を含む、システムの誤差の状態を繰り返しアップデートするように構成されたカルマンフィルタを備えている。複数のシステムの変数には、たとえば、高さの状態、ピッチの状態、ヨーの状態、ロールの状態などが含まれる。IAU2は、地形高度マップ4、陸-水計算ユニット6、INS7、レーダー高度計8、及び気圧高度計10からの入力に応じてシステムの誤差の状態を繰り返しアップデートし、当該技術ではよく知られている標準的なカルマンフィルタのアルゴリズムの変数を使用して、現在のシステムの状態及び前の反復での位置の概算に基づき、現在の位置の概算22を出力するように構成されている。この実施例では、IAU2は、利用可能なシステムの状態の変数の各々の誤差の概算の共分散を保持する「P」行列と、システムノイズ及び他の影響をモデル化するために、各反復におけるP行列に付加される不確実性のレベルを保持する「Q」行列と、を保持している。IAU2が、システムの状態の変数に対応するQ行列内の値を増大させるとき、このことを考慮するために、P行列内の対応する誤差が、それに応じて増大する。換言すると、システムの誤差の状態及び位置の概算をアップデートするときに、IAU2に、特定の状態の変数に対応する測定値により少ない重みを適用させるために、IAU2は、P行列内に貯蔵されたその状態の変数の概算された誤差に「Qブースト」を適用することができる。
【0033】
この実施例では、IAU2は、地形ベースの位置の概算を計算するように構成されている。IAU2は、この位置の概算を使用して、次の反復に関するシステムの誤差の状態及び位置の概算22をアップデートする。IAU2は、レーダー高度計8、気圧高度計10、及びINS7からの測定値を使用して得られた地形高度の概算を相関させることにより、地形ベースの位置の概算を計算する。より具体的には、IAU2は、INS7からの測定値と、気圧高度計10からの測定値とを組み合わせることにより、気圧-慣性の混合の高度を計算する。気圧-慣性の混合の高度は、任意の所与の時点における乗り物の高度(すなわち、海水面からの高さ)の概算を含んでいる。IAU2は、次いで、乗り物の下の地形の高さの概算を得るために、気圧-慣性の混合の高度から、レーダー高度計8から得られた乗り物の下の陸の上の乗り物の高さの測定値を減じる。ある期間にわたってこれをすることにより、IAU2は、地形の高さの測定値の跡を計算することができる。IAU2は、地形の高さの測定値の跡を、地形高度マップ4から得られた局所的な地形高度データ14と相関させ、各反復における、より正確な位置の概算22を提供するために、前述の相関関係を使用するように構成されている。具体的には、地形の高さの測定値と、貯蔵された地形高度データとの間のこの相関を実施することにより、IAU2によって出力された乗り物の位置の概算は、経時的に、より低いレベルの変動を受ける。
【0034】
図2は、ナビゲーションシステム1のハードウェア構成要素を示す概略ブロック図である。図示されているのは、IAU2のハードウェア構成要素を形成する、(たとえばメモリバスによって)メモリ26に結合されたプロセッサ24である。プロセッサ24は、任意の適切な処理用ハードウェア、たとえば、中央処理ユニット(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などを備えている場合がある。メモリ26は、任意の適切なコンピュータ可読メモリ、たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリなどを備えている場合がある。この実施例では、プロセッサ24及びメモリ26は、IAU2の機能の実施とともに、図1に示す陸-水計算ユニット6の機能をも実施する。プロセッサ24は、IAU2及び図1を参照して前述したような、システムの誤差の状態及び位置の概算をアップデートし、位置の出力12の現在の位置の概算を出力するように構成されている。この位置の概算は、ナビゲーションシステム1が取り付けられた乗り物のさらなるシステム(たとえば、ナビゲーションディスプレイ)に通信される場合がある。
【0035】
プロセッサ24に同様に(たとえばメモリバスによって)結合されているのは、ストレージ28である。ストレージ28に貯蔵されているのは、地形高度マップ4である。ストレージ28は、限定ではないが、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などを含む、任意の適切な不揮発性コンピュータメモリを含む場合がある。ストレージ28は、地形高度データをプロセッサ24に出力し、プロセッサ24が、IAU2と陸-水計算ユニット6との両方としてのその機能を実施することを可能にする。
【0036】
同様にプロセッサ24に結合されているのは、INS7であり、この実施例では、3つの直交する加速度計21と、3つの直交するジャイロスコープ23と、レーダー高度計8と、気圧高度計10とを備えている。レーダー高度計8、気圧高度計、及びINS7の動作は、図1を参照してより詳細に上述されている。
【0037】
陸-水計算ユニット6の動作は、ここで図3から図5を参照して詳細に記載される。図3から図5は、3つの主要な段階を示しており、これら段階により、陸-水計算ユニット6が、陸と思われるもの、または水と思われるものとして、地形マップ4の一部内にあるマップポストを分類するように構成されている。図3は、地形高度マップ4の一部30の可視化を示している。地形高度マップ4は実際には、図3から図5に示すような視覚的なマップではないが、本来は複数のデータエントリ(マップポスト)を含み、その各々が、地表の特定のエリアに対応し、各々が、そのエリアに関する地形の高度を含んでいることを理解されたい。陸-水計算ユニット6の動作の理解を助けるために、図3から図5に示す地形マップ4の部分30のみが図示され、提供されている。
【0038】
地形マップ4の部分30は、正方形に配置された16のマップポスト32を含んでいる。各マップポスト32は、後述の記載を補助するために任意のラベル34であって、各ラベル34がIからXVIまでのローマ数字を含む、ラベル34と、メートル単位での標高値36と、陸/水ラベル38と、を含んでいる。この陸/水ラベル38は、対応するマップポストが水としてラベルが付されていることを示す「W」、または対応するマップポストが陸としてラベルが付されていることを示す「L」を含む場合がある。この実施例では、部分30は、地形マップ4の任意の部分を含むが、ナビゲーションシステム1の通常の動作では、以下の動作が実施される地形マップ4の部分は、乗り物の現在の概算位置22を囲む局所的な地形高度データ14のキャッシュを含んでいる。局所的な地形高度データ14のキャッシュは、乗り物の概算位置が経時的に変化するにつれて、乗り物の概算位置に追従するように、かつ、陸-水計算ユニット6及びIAU2が局所的な地形高度データ14に迅速かつ効果的にアクセスすることを可能にするように、継続的にアップデートされる。
【0039】
図3は、プロセスの第1の段階を示しており、これにより、陸-水計算ユニット6が地形マップ4の部分30内のマップポスト32を、陸と思われるか、水と思われるものとして分類する。このプロセスは、水の本体に関する地形高度データが、地形マップ4の所与の部分内における地形高度データの局所的な最小値であること、及び、水の本体に隣接する陸のエリアが、それにより、より高い高度にあることの原則の上で動作する。最初に、陸水計算ユニット6は、図3のラベル38によって示されるように、部分30のすべてのマップポスト32を水として分類する(これらの各々は、「W」とラベルが付される)。
【0040】
図4は、陸/水分類プロセスにおける第2の段階を示している。この段階の間、陸-水計算ユニット6は、より低い高度にある隣接するマップポストを有する、部分30内のすべてのマップポスト32の分類を、水から陸に変更する。この実施例では、陸-水計算ユニット6は、マップポストVII、VIII、IX、X、XI、XII、XIV、及びXVを、これらの各々がより低い高さに隣接するマップポストを有することから、陸として分類する(黒色、及びラベル「L」によって示されている)。たとえば、マップポストVII(2mの高度を有する)は、マップポストIII及びVIに隣接している(これらの両方が1mの高度を有している)。マップポストIII及びVIの高度は、したがって、マップポストVIIの高度より低く、したがって、陸-水計算ユニット6は、マップポストVIIのラベルを陸に変更する。
【0041】
図5は、陸/水分類プロセスにおける第3の段階を示している。この段階の間、陸-水計算ユニット6は、すでに陸としてラベルが付された、同じ高さにある隣接するマップポスト32を有する、部分30内のすべてのマップポスト32を陸に分類する。この実施例では、陸-水計算ユニット6は、このことを繰り返し行う。この繰り返しは、どのマップポスト32のラベルも変化されないパスの完了まで、一連の繰り返しのパスにわたり、このポイントでは、陸-水計算ユニット6は、陸/水の分類プロセスを終了する。マップポスト32のラベルが水から陸に変化した各パスが、水から陸へとそのラベルが変化するさらなるマップポスト32に関する変更が可能にされないことを確実にするために、さらなるパスが完了することを必要とするため、この動作は繰り返し実施される。
【0042】
図5に示す実施例では、2つのパスが完了している。第1のパスでは、陸-水計算ユニット6がマップポストXIII及びXVIのラベルを、これらマップポストの両方が、すでに陸とラベルが付されている、同じ高さにある少なくとも1つのマップポストに隣接していることから、陸に変化させている。たとえば、マップポストXIIIは、マップポストIX及びXIVに隣接している。マップポストIXとマップポストXIVとの両方は、(図2に示される)陸/水の分類プロセスの第2の段階の間に陸とラベルが付され、これらの両方は、マップポストXIIIと同じ高度(3m)を有している。同様に、マップポストXVIは、4mの同じ高さにあるマップポストXII及びXVに隣接している。第2のパスでは、陸-水計算ユニットは、部分30内のいずれのマップポスト32のラベルも変化させない。この理由は、すでに陸とラベルが付された、同じ高さにある隣接するマップポストを有する、すでに陸とラベルが付されていないマップポストが残っていないためである。したがって、第2のパスの後に、陸-水計算ユニット6は、地形マップ4のこの部分30に関する陸/水の分類プロセスが完了したと判定する。
【0043】
陸-水計算ユニット6は、次いで、陸/水の分類プロセスが実施されたマップポスト32の部分のサブセットに関し、陸とラベルが付されたマップポスト32の割合16を計算し出力するように構成されている(このことは、この実施例では、地形高度マップ4のキャッシュが付された部分を含んでいる)。ナビゲーションシステム1の通常の動作の間は、陸-水計算ユニット6が、地形高度マップ4のキャッシュが付された部分のサブセットの、陸とラベルが付されたマップポスト32の割合16を計算する。このサブセットは、現在の位置の概算22を囲むエリアに対応している。サブセットは、現在の位置の概算22の中心にあるエリアに対応する、所定の数のマップポスト32である場合があるか、サブセットは、現在の位置の概算22の中心にあるエリアに対応する、動的な数のマップポスト32である場合があり、マップポスト32の数(そしてひいては、対応するエリアのサイズ)は、現在の位置の概算22における、現在概算される不確実性に依存する。たとえば、現在の位置の概算22において概算された不確実性が大である場合、割合16を計算するために陸-水計算ユニット6が使用するキャッシュが付された部分のサブセットは、それに応じてサイズが増大される場合がある。
【0044】
この実施例では、IAU2は、陸-水計算ユニット6によって出力された、陸とラベルが付されたマップポスト32の割合16が、地形マップ4のキャッシュが付された部分のサブセットに関して5%から95%の間であるとき、高さのバイアスの状態に、Qブーストを適用するように構成されている。地形マップ4の局所的な部分(すなわち、サブセット)に関し、陸とラベルが付されたマップポスト32の割合16が、5%から95%の間である場合、このことは、乗り物が、陸と水との間の変化の上にあり、したがって、IAU2が、システムの誤差の状態及び位置の概算をアップデートするときに、このことを考慮するべきであることを示している。
【0045】
この方法でQブーストを高さのバイアスの状態に適用することにより、IAU2に、高さのバイアスの状態に関連する不確実性を増大させる。このことは、システムの誤差の状態及び位置の概算22をアップデートするときに、IAU2に、高さのバイアスの状態に適用される重みを低減させ、こうして、(前に説明したように)陸から水への変化を含むエリアにわたって通過することから生じる誤差の影響を低減する助けになる。
【0046】
本開示の実施例は、こうして、乗り物が陸と水との間の変化の上を通過するときに、この変化を検出し、この変化に対処する能力を提供することにより、向上された地形参照ナビゲーションシステムを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5