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  • 特開-積層体及び粘着ラベル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069465
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】積層体及び粘着ラベル
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/22 20180101AFI20220428BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220428BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220428BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220428BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220428BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C09J7/22
B32B27/00 M
C09J7/38
C09D175/04
C09D7/61
G09F3/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022317
(22)【出願日】2022-02-16
(62)【分割の表示】P 2020511053の分割
【原出願日】2019-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2018068719
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 大介
(72)【発明者】
【氏名】座間 高広
(57)【要約】
【課題】本発明は、粘着ラベルとした際に、電子写真印刷に適合でき、BS5609:1986年において求められる優れた耐摩耗性を有する積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ポリウレタン樹脂を66~99質量%及び金属酸化物を有する微粒子を1~34質量%含有する表面コート層と、オレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂フィルム層とを含み、前記熱可塑性樹脂フィルム層への前記表面コート層の適用量が、単位面積当たりの乾燥後固形分換算で0.07~20g/mである積層体に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体の一方の表面上に粘着剤層が設けられた粘着ラベルであって、
前記積層体が表面コート層及び熱可塑性樹脂フィルム層を含み、
前記表面コート層が、ポリウレタン樹脂を70質量%超99質量%以下、及び金属酸化物を有する微粒子を1質量%以上30質量%未満含有し、
前記熱可塑性樹脂フィルム層への前記表面コート層の適用量が、単位面積当たりの乾燥後固形分換算で0.07~20g/mであり、
且つ、前記熱可塑性樹脂フィルム層がオレフィン系樹脂を含み、
前記表面コート層、前記熱可塑性樹脂フィルム層、及び前記粘着剤層をこの順に含む粘着ラベル。
【請求項2】
前記金属酸化物が酸化ケイ素を含む、請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項3】
前記表面コート層の前記熱可塑性樹脂フィルム層と対向していない側の表面上に、電子写真印刷またはインクジェット印刷によって表示された印刷層が設けられ、
前記印刷層の黒色の印刷部分に対してBS5609:1986年に準拠して測定した耐摩耗性が、グレースケール評価で2以上である請求項1又は2に記載の粘着ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層体、及び前記積層体を用いた粘着ラベルに関する。より詳細には、表面に印字された情報の耐擦過性に優れた積層体、及びこれを用いた粘着ラベルに関し、中でも国際連合で制定されたGHSに基づくラベル情報が印字された粘着ラベル(GHSラベル)に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷を施したラベルを容器に設けるに際し、求められる性質に合わせて種々のラベルが研究されている。ラベル用の基材としては、例えば、熱により活性化するエチレン共重合体接着層(ヒートシール層)を含む共押出プラスチックフィルムからなるインモードラベル(特許文献1参照)、ヒートシール性樹脂層にエンボス加工を施したインモールラベル(特許文献2参照)ポリエチレンイミンを主成分とする表面コートされた印刷性に優れた可塑性樹脂フィルム(特許文献3参照)、熱定着式電子写真プリンター又は熱定着式電子写真複写機での印刷が可能な電子写真ラベル(特許文献4参照)、帯電防止性に優れ、かつ印刷性又は耐水性にも優れた熱可塑性樹脂フィルム層(特許文献5参照)等が挙げられる。
【0003】
一方、化学品の分類や化学品を収容する容器におけるラベル表示に関し、従来その表示方法や取扱い上の注意事項等の内容は各国に委ねられており、国によって大きく相違している状況にあった。しかし近年、このような化学品は国を超えて輸出入がされている。
これに対し、国に依らずに化学物質を安全に製造、使用、輸送、処理、廃棄するために、国際的に調和された化学物質の分類及び表示方法が必要であると認識されるようになり、国際連合(国連)で国連GHS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)文書が制定された。
【0004】
このGHS文書に基づくGHSラベルでは、例えば危険有害性があると判断(分類)された物質や混合物について、危険有害性などの情報を表示する必要がある。そのため、GHSラベルには、例えば防錆性能が求められ、特許文献6では、防錆効果に優れ、内容物が外部から視認可能な防錆フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4837075号明細書
【特許文献2】日本国実開平1-105960号公報
【特許文献3】日本国特開2000-290411号公報
【特許文献4】日本国特開2003-345052号公報
【特許文献5】国際公開第2015/072331号
【特許文献6】日本国特開2016-169311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GHSラベルには、上記の他にも様々な性質が求められる。そのような性質のひとつとして、英国規格であるBS5609:1986年が挙げられ、3か月の海水浸漬試験におけるラベル材質と接着剤の永続性及び耐久性に関するラベル性能(セクション2)や、人工風化、テープ剥離試験及び耐摩耗性試験といった印刷性能(セクション3)が求められる。
【0007】
そこで本発明では、粘着ラベルとした際に、電子写真印刷に適合でき、同印刷情報がBS5609:1986年において求められる優れた耐摩耗性を有する積層体、及び粘着ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、表面コート層と熱可塑性樹脂フィルム層とを具備する積層体であって、表面コート層を構成する成分及びその含有量等を特定のものにすることにより、粘着ラベルとして電子写真印刷等による印刷層を設けた際の印刷性能として、耐水性(水への浸漬時の密着性)及び耐摩耗性に優れた積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の<1>~<4>を特徴とする。
<1> 表面コート層及び熱可塑性樹脂フィルム層を含む積層体であって、
前記表面コート層が、ポリウレタン樹脂を66~99質量%、及び金属酸化物を有する微粒子を1~34質量%含有し、
前記熱可塑性樹脂フィルム層への前記表面コート層の適用量が、単位面積当たりの乾燥後固形分換算で0.07~20g/mであり、
且つ、前記熱可塑性樹脂フィルム層がオレフィン系樹脂を含む積層体。
<2> 前記金属酸化物が酸化ケイ素を含む前記<1>に記載の積層体。
<3> 積層体の一方の表面上に粘着剤層が設けられた粘着ラベルであって、
前記積層体が表面コート層及び熱可塑性樹脂フィルム層を含む前記<1>または<2>に記載の積層体であり、
前記表面コート層、前記熱可塑性樹脂フィルム層、及び前記粘着剤層をこの順に含む粘着ラベル。
<4> 前記表面コート層の前記熱可塑性樹脂フィルム層と対向していない側の表面上に、電子写真印刷またはインクジェット印刷によって表示された印刷層が設けられ、
前記印刷層の黒色の印刷部分に対してBS5609:1986年に準拠して測定した耐摩耗性が、グレースケール評価で2以上である前記<3>に記載の粘着ラベル。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る積層体及び粘着ラベルは電子写真印刷及び/またはインクジェット印刷に適合でき、耐水性や耐摩耗性といった印刷性能に優れる。中でも、BS5609:1986年に準拠した耐摩耗性を有することから、GHSラベル用途として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の粘着ラベルの構成の一様態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<積層体>
本発明に係る積層体は、表面コート層及び熱可塑性樹脂フィルム層を含み、前記表面コート層が、ポリウレタン樹脂を66~99質量%、及び金属酸化物を有する微粒子を1~34質量%含有し、前記熱可塑性樹脂フィルム層への前記表面コート層の適用量が、単位面積当たりの乾燥後固形分換算で0.07~20g/mであり、且つ、前記熱可塑性樹脂フィルム層がオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする。
【0013】
(表面コート層)
表面コート層は熱可塑性樹脂フィルム層上に設けられた層であり、粘着ラベルとした際には、印刷層が電子写真印刷またはインクジェット印刷によって表示された際のトナーまたはインクの受理層として機能する。
表面コート層の性質により、印刷層の耐摩耗性や、粘着ラベルとしての帯電防止性、印刷性、耐水性、保管安定性等の各特性を調整することができる。
【0014】
表面コート層はポリウレタン樹脂を65質量%超含有することにより、熱可塑性樹脂フィルム層や印刷層に対して化学的親和性が高く、より強固に結びつく。そのため、それら層との密着性が向上する。また、表面コート層そのものが、被膜として凝縮力が高く、耐擦過性に優れ、耐水性にも優れることから、良好な耐摩耗性をも実現する。ポリウレタン樹脂の含有量は66質量%以上が好ましく、70質量%超がより好ましい。
一方、表面コート層に、さらに後述する金属酸化物を有する微粒子を含有させる場合に、帯電防止性能を向上し、電子写真印刷を施す際の通紙性を改善することができるという観点から、ポリウレタン樹脂の含有量は99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0015】
なお、本明細書において、印刷層の密着性とはセロハンテープで180度剥離を行った際の密着性を意味し、ドライ条件及び/又は浸水条件での密着性を意味する。印刷層の耐摩耗性とは、後述する擦過試験における印刷層(印刷)の剥がれを意味する。
【0016】
ポリウレタン樹脂は溶媒に分散させた溶媒分散体(ポリウレタン樹脂エマルション)として熱可塑性樹脂フィルム層上に設けることが好ましい。
ポリウレタン樹脂エマルションは、ノニオン性であってもよく、表面コート層が金属酸化物を有する微粒子を含有する場合には、前記微粒子と同種のイオン性であってもよく、塗布剤と同種のイオン性であってもよい。これにより、表面コート層を形成するための塗布剤中における金属酸化物を有する微粒子の凝集を防止することができる。その結果、金属酸化物を有する微粒子を塗布剤中で安定的に分散させることができる。
例えば、金属酸化物を有する微粒子がカチオン性である場合、ポリウレタン樹脂エマルションもカチオン性であることが好ましく、塗布剤に配合する材料をすべてカチオン性の物質から選択することがより好ましい。逆にポリウレタン樹脂エマルション及び金属酸化物を有する微粒子がノニオン性である場合には、塗布剤に配合する材料をすべてノニオン性の物質から選択することがより好ましい。
【0017】
表面コート層が金属酸化物を有する微粒子を含有する場合、前記微粒子を熱可塑性樹脂フィルム層の表面に接着固化しやすいことから、ポリウレタン樹脂エマルションにおけるポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましい。
【0018】
ポリウレタン樹脂エマルションがカチオン性である場合、前記エマルションは、ポリウレタン樹脂骨格にカチオン性基を導入した共重合体を溶剤に分散したものである。
ポリウレタン系樹脂エマルション中の前記共重合体の濃度は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、前記共重合体の濃度は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0019】
前記共重合体は例えば、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られる3級アミノ基含有ポリオールを、さらにポリイソシアネートと反応させてウレタン樹脂を得て、前記ウレタン樹脂を前記4級化剤で4級化することにより生成することができる。
ポリオールの一部にN,N-ジアルキルアルカノールアミン類;N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N-ブチル-N,N-ジエタノールアミン等のN-アルキル-N,N-ジアルカノールアミン類;及び、トリアルカノールアミン類からなる群から選択される1種以上を添加して、ポリイソシアネートと反応して得られるウレタン樹脂を前記4級化剤で4級化して生成してもよい。
【0020】
ポリウレタン樹脂エマルションに用いる溶媒は、水可溶性の溶媒を含むことが好ましく、水を含むことがより好ましく、水を90質量%以上含むことがさらに好ましい。これにより、ポリウレタン樹脂の溶媒への溶解を抑制することができ、分散体の安定性が向上する。また、金属酸化物を有する微粒子の表面に、電荷二重層が安定的に形成される。その結果、金属酸化物を有する微粒子の分散体の安定性が向上する。
【0021】
分子内に4級アンモニウム塩構造を有するポリウレタン樹脂骨格にカチオン性の親水性基を導入した共重合体を水に分散させてエマルションにする方法としては、目的の重合体を構成するモノマーを水に乳化分散させて重合させる方法、塊状重合等により目的の重合体を得たのち、二軸押出機を使用して原料樹脂の溶融混練と乳化を逐次行う方法等が挙げられる。
【0022】
分子内に4級アンモニウム塩構造を有するポリウレタン樹脂骨格にカチオン性の親水性基を導入した共重合体に導入されるカチオンの量は、ポリウレタン樹脂エマルションのポリビニル硫酸カリウム溶液によるコロイド滴定法で得られるコロイド当量で評価する。
表面コート層塗布剤において金属酸化物を有する微粒子が分散して安定に存在するためには、ポリウレタン樹脂エマルションのコロイド当量は0.002meq/g以上が好ましく、0.006meq/g以上がより好ましく、0.01meq/g以上がさらに好ましい。
一方、分子内に4級アンモニウム塩構造を有するポリウレタン樹脂骨格にカチオン性の親水性基を導入した共重合体のカチオンの量が多すぎると表面コート層の水への再溶解率が上昇する傾向がある。そこで、ポリウレタン樹脂エマルションのコロイド当量は0.05meq/g以下が好ましく、0.04meq/g以下がより好ましく、0.03meq/g以下がさらに好ましい。
【0023】
表面コート層にはさらに、ポリウレタン樹脂以外の有機高分子を含んでいてもよく、例えばビニル系樹脂が挙げられる。ビニル系樹脂の前駆体となるビニル系モノマーは、オレフィン類;ビニルエステル類;不飽和カルボン酸類及びそれらのアルカリ金属塩若しくは酸無水物;炭素数12までの分岐または環状構造を有してよいアルキル基のエステル;(メタ)アクリルアミド、炭素数1~4のアルキル基及び炭素数1または2のアルキレン基を同時に有する誘導体;及び、ジメチルジアリルアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上等が挙げられる。なお、前記塩は酸残基であり、かかる酸イオンとしてはメチル硫酸イオン、塩化物イオンが好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリルアミドとはアクリルアミド及びメタクリルアミドの少なくともいずれか一方の化合物を意味し、他のポリ(メタ)アクリル酸等といった記載についても同様に、アクリル系の化合物とメタクリル系の化合物の少なくともいずれか一方であることを意味する。
【0024】
表面コート層には、金属酸化物を有する微粒子を含むことが、帯電防止性、及び熱可塑性樹脂フィルム層への接着性等の点から好ましく、表面に金属酸化物の層を有する無機物粒子のゾル及び金属酸化物ゾルの少なくとも一方を含むことがより好ましく、前記金属酸化物が酸化ケイ素であることが帯電防止性の点からさらに好ましい。
【0025】
無機物粒子のゾルは、例えば、コロイダルシリカの表面に金属酸化物層を有するコロイダルシリカゾルを挙げることができる。
コロイダルシリカゾルの製造方法としては、特に限定されるものではないが、ケイ酸アルカリ金属塩水溶液(例えば水ガラス)を原料とし、イオン交換樹脂または電気泳動法等でアルカリ金属塩を除去して無水ケイ酸ゾルとし、さらに酸またはアルカリを添加してpHを調整し安定化する方法、オルトケイ酸テトラエトキシド(TEOS)等のアルコキシドを酸またはアルカリで加水分解する方法(いわゆるゾルゲル法)、四塩化ケイ素等の有機ケイ素化合物を水素等の火炎に導入して合成する方法(いわゆる気相法)等が挙げられる。
【0026】
コロイダルシリカゾルは、カチオン性コロイダルシリカゾルであってもよく、アニオン性コロイダルシリカゾルであってもよく、さらにはアニオン性コロイダルシリカの表面をカチオン性化合物で被覆したカチオン性化合物被覆コロイダルシリカゾルであってもよい。カチオン性化合物被覆コロイダルシリカゾルは、アニオン性のコロイダルシリカの表面を金属酸化物で被覆した金属酸化物被覆コロイダルシリカゾルであってもよい。
【0027】
カチオン性化合物被覆コロイダルシリカゾルは、例えば、シリカを分散媒に分散させる分散工程以降の工程において、コロイダルシリカゾルに、カチオン性化合物またはその前駆体を添加することによって得られる。
金属酸化物被覆コロイダルシリカゾルは、例えば、シリカの分散工程以降の工程において、コロイダルシリカゾルに、金属酸化物またはその前駆体を添加することによって得られる。例えば、コロイダルシリカゾルにアルミニウム水溶性塩を添加してコロイダルシリカの表面を処理することで、アルミナ被覆コロイダルシリカゾルが得られる。
金属酸化物を有する微粒子としてカチオン性のアルミナ被覆コロイダルシリカゾルを用いることで、アニオン性のコロイダルシリカゾルを用いた場合と比較して、帯電防止性及び一般的な商業印刷機による印刷適性の少なくとも一方が向上する。
【0028】
コロイダルシリカゾルに含まれるコロイダルシリカ粒子は、表面にシラノール基(≡Si-OH)を有していてもよい。また、前記粒子は単分散微粒子であってもよい。
前記粒子のCV値(Coefficient of Variation)[%]は、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。前記粒子は、長鎖状であってもよい。
【0029】
金属酸化物ゾルとしては、酸化ケイ素ゾル、酸化ハフニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化チタンゾル、酸化イットリウムゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化銅ゾル、酸化ゲルマニウムゾル、酸化タングステンゾル、酸化インジウムゾル、酸化スズゾル等が挙げられる。
金属酸化物ゾルとして、例えば酸化アルミニウムゾルを製造する方法としては、アルミニウムイソプロポキシド等のアルコキシドを酸で加水分解して製造する方法、塩化アルミニウムを水素等の火炎中に導入して合成する方法(いわゆる気相法)等が挙げられる。
【0030】
金属酸化物ゾルに含まれる粒子は単分散微粒子であってもよい。前記粒子のCV値(Coefficient of Variation)[%]は、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。前記粒子は、長鎖状であってもよい。
【0031】
コロイダルシリカの表面に金属酸化物の層を有するコロイダルシリカゾル及び金属酸化物ゾルに用いられる金属酸化物は、アルミニウム、亜鉛、スズ、及びインジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、アルミニウムを含むことがより好ましい。
金属酸化物がアルミナである場合、コロイダルシリカの表面に金属酸化物の層を有するコロイダルシリカゾル及び金属酸化物ゾルの表面がカチオン性になり、帯電防止性及び一般的な商業印刷機による印刷適性の少なくとも一方が向上する。
【0032】
金属酸化物を有する微粒子の平均一次粒子径は200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、25nm以下がさらに好ましい。金属酸化物を有する微粒子の平均粒子径が200nm以下になると、熱可塑性樹脂フィルム層の表面光沢性が発現しやすくなり、熱可塑性樹脂フィルム層の帯電防止性が発現しやすくなる。また、塗膜の強度がより向上する。
一方、金属酸化物を有する微粒子の平均一次粒子径は1nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、7nm以上がさらに好ましい。前記平均一次粒子径が1nm以上になると、粒子の製造がより容易になる。なお、前記金属酸化物を有する微粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察された粒子の面積円相当径の平均値として算出する。
【0033】
表面コート層は、金属酸化物を有する微粒子を、前記表面コート層全体に対して1質量%以上含むことが、帯電防止性及び熱可塑性樹脂フィルム層への接着性が向上することから好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、印刷ヘッドを有する印刷機を利用した印刷方式における印刷ヘッドへのゴミの付着を抑制したり、熱定着プロセスを有する印刷方式における、表面コート層の熱ローラーへの融着を抑制したりすることができる。
【0034】
一方、表面コート層は、金属酸化物を有する微粒子を、前記表面コート層全体に対して34質量%以下含むことが好ましく、30質量%未満含むことがより好ましく、25質量%未満含むことがさらに好ましい。金属酸化物を有する微粒子の含有量を34質量%以下とすることにより、印刷層の密着性が向上する。同様の理由により、表面コート層を形成するための塗布剤中における金属酸化物を有する微粒子の質量と、ポリウレタン樹脂の質量との比率は、好ましくは1:99~29:71であり、より好ましくは1:99~34:66又は10:90~29:71であり、さらに好ましくは10:90~34:66である。
【0035】
表面コート層には、さらには水溶性ポリマーに由来する成分が含まれていてもよい。水溶性ポリマーは、表面コート層材料を含む塗布剤中では水に溶解し、前記塗布剤が熱可塑性フィルム層の表面に塗工され、乾燥された後には水に再溶解しない性質を有することが好ましい。
【0036】
水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン等のビニル系共重合体;部分ケン化のポリビニルアルコール(以下、「PVA」と称することがある。)、完全ケン化のPVA、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等のビニル系共重合体加水分解物;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体;変性ポリアミド;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール等の開環重合系高分子またはそれらの変性物;ゼラチン、澱粉等の天然系高分子等またはそれらの変性物が挙げられる。
これらの中でも、部分ケン化のPVA、完全ケン化のPVA、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン変性物を使用することが好ましい。
【0037】
表面コート層にはポリウレタン樹脂エマルション、その他の有機高分子エマルション及び金属酸化物を有する微粒子の合計100質量部に対して、水溶性ポリマーを0質量部以上、30質量部以下配合することが好ましい。金属酸化物を有する微粒子が熱可塑性樹脂フィルム層表面から脱落しにくくする観点から、水溶性ポリマーを1質量部以上配合することがより好ましく、3質量部以上配合することがさらに好ましい。一方、熱可塑性樹脂フィルム層表面の印刷性や加工性を好適なものにする観点から、水溶性ポリマーを20質量部以下配合することがより好ましく、10質量部以下配合することがさらに好ましい。
【0038】
また、完全ケン化PVA以外の水溶性ポリマーは、塗布剤として塗布・乾燥された後に水に再溶解することから、架橋剤を添加することが好ましい。前記架橋剤としては、塗布剤に使用する水溶性ポリマーと反応する物質であれば特に限定されず、カルボジイミド類;ジイソシアネート類;ジグリシジルエーテル類等が挙げられる。
架橋剤は、水溶性ポリマー100質量部に対し、0.1質量部以上配合することが好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、架橋剤は、水溶性ポリマー100質量部に対し、200質量部以下配合することが好ましく、180質量部以下がより好ましく、160質量部以下がさらに好ましい。また架橋剤は、水溶性ポリマー100質量部に対し、50~150質量部配合されてもよい。
【0039】
熱可塑性樹脂フィルム層上に表面コート層を設ける場合、少なくともポリウレタン樹脂エマルションと金属酸化物を有する微粒子とを含む塗布剤を塗工したのちに乾燥することが好ましい。前記塗布剤は、その配合及び塗工が容易であり、経時的に変質(特に粘弾性、腐敗)しにくいことが好ましい。
【0040】
塗布剤の製造工程において、例えば、ポリウレタン樹脂エマルション及び金属酸化物を有する微粒子の固形濃度が高い場合、塗布剤のpHがポリウレタン樹脂の等電点近くにある場合、ポリウレタン樹脂エマルションと金属酸化物を有する微粒子とのゼータ電位が逆符号の関係にある場合、または、価数の高いイオン性物質(特に、官能基を有するポリマー)を添加した場合に、ポリウレタン樹脂エマルション及び金属酸化物を有する微粒子の少なくとも一方が凝集することがある。
そこで、塗布剤の製造工程において、各材料を希釈水に順次投入したり、投入する順番や投入する速度を適宜調節することにより、各材料の濃度が局所的に高くならないようにすることが好ましい。また、塗布剤の製造工程において、塗布剤のpHを調節したり、分散剤を添加したりして、粒子同士の反発力を高めてもよい。これらにより、凝集を抑制することができる。
【0041】
塗布剤における表面コート層材料の固形分濃度は、表面コート層の乾燥後塗工量と塗布剤の塗工方法に応じて適宜調整できるが、0.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、35質量%以下であることが好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
また、表面コート層の厚さが厚すぎると、外力が加わった時に表面コート層の内部で表面コート層の成分が凝集破壊を起こす場合がある。その結果、熱可塑性樹脂フィルム層と表面コート層との密着性が低下し、印刷層の耐水性や耐摩耗性が低下する場合がある。そこで、熱可塑性樹脂フィルム層への表面コート層の適用量(「塗工量」と称する場合がある。)は、単位面積当たりの乾燥後固形分換算で、20g/m以下であることが好ましく、5g/m以下であることがより好ましく、3g/m以下であることが特に好ましく、さらには1g/m以下であってもよい。
【0043】
一方、塗工により形成された表面コート層の厚さが薄すぎると、表面コート層の成分が熱可塑性樹脂フィルム層の表面に均質に存在することができず、十分な被膜が得られないために、印刷層の耐水性や耐摩耗性が不足する場合がある。そこで、塗工量は、0.07g/m以上であることが好ましく、0.1g/m以上であることがより好ましく、0.15g/m以上であることが特に好ましい。
【0044】
なお、表面コート層の塗工量は、熱可塑性樹脂フィルム層に塗布剤を塗工した直後のウエットフィルム質量から、塗布剤を塗工する前のフィルム質量を差し引いてウエット塗工量を算出し、これに塗布剤の固形分濃度を乗じて乾燥後の塗工量を決定する。ただし、やむを得ない場合は熱可塑性樹脂フィルム層から表面コート層を剥離してこの質量を測定することにより乾燥後の塗工量を直接決定してもよく、試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察して表面コート層の厚さを決定して、これに塗布剤固形分の密度を乗じて乾燥後の塗工量を算出してもよい。
【0045】
塗布剤のpHは、塗布剤に含まれる各材料が凝集しないことが必要であるが、作業者の安全性や機械の腐食を防止する観点から、pH3~11であることが好ましく、pH4以上がより好ましく、また、10以下がより好ましい。
【0046】
(熱可塑性樹脂フィルム層)
熱可塑性樹脂フィルム層は、単層構成でも2層以上の複層構成であってもよく、後述する基材層に使用し得る熱可塑性樹脂を含んでなることが、紙基材と比べて耐水性及び耐久性に非常に優れることから好ましく、オレフィン系樹脂を含むことがより好ましい。
熱可塑性樹脂フィルム層は、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、またはポリプロピレンフィルムを含むことが好ましい。これにより、成形性又は耐久性に優れた熱可塑性樹脂フィルム層が得られる。
【0047】
熱可塑性樹脂フィルム層は、少なくとも一軸方向に延伸されていることが好ましく、二軸方向に延伸された層を少なくとも1層有していることも好ましく、また、カレンダー成形で得られた層を少なくとも1層有していることも好ましい。
【0048】
一実施形態において、熱可塑性樹脂フィルム層は、少なくともフロント面、熱可塑性樹脂を含む基材層及びバック面をこの順で備える。この場合、熱可塑性樹脂フィルム層は、フロント面の側にポリウレタン樹脂を含む表面コート層を有し、バック面の側に、後述する粘着剤層を有する。
【0049】
他の実施形態において、熱可塑性樹脂フィルム層は、少なくともフロント面、基材層、強度付与層及びバック面をこの順で備える。この場合、熱可塑性樹脂フィルム層はフロント面の側に、前記表面コート層を有し、バック面の側に粘着剤層を有する。
強度付与層は、熱可塑性樹脂フィルム層が、バック面の側において外部の物体に付着するときに、外部の物体に強力に付着する機能を有し、本実施形態によれば、外部の物体に付着するのに適した熱可塑性樹脂フィルム層が提供される。
【0050】
他の実施形態において、熱可塑性樹脂フィルム層は、少なくともフロント面、高平滑層、基材層及びバック面をこの順で備える。この場合、熱可塑性樹脂フィルム層はフロント面の側に前記表面コート層を有し、バック面の側に粘着剤層を有する。
高平滑層は、熱可塑性樹脂フィルム層のフロント面の光沢を高める機能を有し、本実施形態によれば、表面に光沢を有するのに適した熱可塑性樹脂フィルム層が提供される。
【0051】
以下、熱可塑性樹脂フィルム層を構成する各層の好ましい態様について説明する。しかし、熱可塑性樹脂フィルム層はこれらに限定されるものではない。
【0052】
・基材層
基材層は1層構成であってもよく、2層構成であってもよく、3層以上の多層構成であってもよい。また、基材層が2層以上の層構成である場合、それらは対称の層構成であってもよく、非対称の層構成であってもよい。
【0053】
基材層は、熱可塑性樹脂を含む。基材層に用いられる熱可塑性樹脂は、フィルム成形が可能であればその種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系共重合樹脂、ポリメチル-1-ペンテン、エチレン・環状オレフィン共重合体等のオレフィン系樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、スチレン-マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリ乳酸等のエステル系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6等のアミド系樹脂;及びポリカーボネート等が挙げられる。これらの樹脂の中から、1種類もしくは2種類以上を混合して使用することができる。
【0054】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、フィルムの加工性に優れる観点から、オレフィン系樹脂または官能基含有オレフィン系樹脂が好ましく、オレフィン系樹脂を用いることがより好ましい。オレフィン系樹脂の中でも、耐薬品性、加工性、低コストの観点から、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂が好ましい。
【0055】
エチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン等のα-オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
プロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体であってアイソタクティック、シンジオタクティック、アタクティック等の立体規則性を示すポリプロピレン;プロピレンを主成分とし、これとエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンの1種以上とを共重合させた共重合体等が挙げられる。さらに、共重合体としては、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0056】
前記オレフィン系樹脂または官能基含有オレフィン系樹脂をグラフト変性することもできる。グラフト変性は、例えば、過酢酸、過硫酸、過硫酸カリウム等の過酸及びその金属塩;オゾン等の酸化剤の存在下で不飽和カルボン酸またはその誘導体を反応させる方法が挙げられる。
グラフト変性率は、オレフィン系樹脂または官能基含有オレフィン系樹脂に対して、通常0.005~10質量%であり、好ましくは0.01質量%以上、また、好ましくは5質量%以下である。
【0057】
基材層の成形時における延伸が一軸方向の延伸倍率として3倍を超える場合、延伸の安定性の観点から、基材層は、熱可塑性樹脂を75質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。また、基材層の成形時における延伸が一軸方向の延伸倍率として3倍以下の場合、基材層は、熱可塑性樹脂を20質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましい。
一方、基材層の不透明度や白色度を高くする観点から、基材層は、熱可塑性樹脂を99質量%以下含むことが好ましく、95質量%以下含むことがより好ましい。
【0058】
基材層は、熱可塑性樹脂に加え、無機微細粉末を含有することが好ましい。基材層が無機微細粉末を含有することにより、白色化及び不透明化を達成し、ラベル上に設ける印刷(印刷層)の視認性を向上させることができる。
【0059】
無機微細粉末の粒子径は、レーザー回折法によって測定された体積平均粒子径によって表され、前記体積平均粒子径は、基材層の白色化及び不透明化を達成する観点から、好ましくは0.01μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上である。
一方、前記体積平均粒径は、熱可塑性樹脂フィルム層表面の外観を良好にする観点から、好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。
【0060】
基材層に用いる無機微細粉末の種類としては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、珪藻土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバー等が挙げられる。中でも、白色化、不透明化及び樹脂成形性等の観点から、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンが好ましく、炭酸カルシウム、酸化チタンが更に好ましい。
【0061】
これらの無機微細粉末の表面には、事前に親水性処理または疎水性処理を施してもよい。これらの表面処理により、基材層に印刷適性、塗工適性、耐擦過性、二次加工適性等の様々な性質を付与することができる。
【0062】
基材層の不透明度や白色度を高くする観点から、基材層は、無機微細粉末を1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましい。
一方、延伸が一軸方向の延伸倍率として3倍を超える場合、基材層の成形時における延伸の安定性を向上させる観点から、基材層は無機微細粉末を25質量%以下含むことが好ましく、20質量%以下含むことがより好ましい。また、基材層の成形時における延伸が一軸方向の延伸倍率として3倍以下の場合、基材層は、無機微細粉末を80質量%以下含むことが好ましく、70質量%以下含むことがより好ましい。
【0063】
基材層には、必要に応じて有機フィラー、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤または滑剤、帯電防止剤等を含有することができる。
基材層が有機フィラーを含有する場合は、有機フィラーの機能を発現する観点から、有機フィラーを0.01質量%以上含有することが好ましい。
一方、熱可塑性樹脂フィルム層の外観を良好にする観点から、有機フィラーを20質量%以下含有することが好ましく、10質量%以下含有することがより好ましい。
【0064】
有機フィラーとしては、基材層の主成分である熱可塑性樹脂と異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。中でも、主成分である熱可塑性樹脂よりも高い融点及び/又はガラス転移点を示す樹脂を選択することがより好ましい。
【0065】
例えば、基材層の主成分である熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂(融点が80~160℃)の場合は、有機フィラーの融点は170~300℃であることが好ましく、有機フィラーのガラス転移点は170~280℃であることが好ましい。
このような融点またはガラス転移点を示す有機フィラーとしては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6等が挙げられる。
【0066】
一方、有機フィラーとして基材層の主成分である熱可塑性樹脂と相溶しない樹脂を選択することがより好ましい。基材層の主成分である熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合は、有機フィラーとしては、前記列挙した樹脂に加えてポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられ、主成分である熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂の場合は、有機フィラーとしては、前記列挙した樹脂に加えて高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0067】
基材層が熱安定剤を含有する場合は、熱安定剤の機能を発現する観点から、熱安定剤を0.001質量%以上含有することが好ましい。
一方、熱可塑性樹脂フィルム層の外観を良好にする観点や経済性の観点から、熱安定剤を1質量%以下含有することが好ましく、0.5質量%以下含有することがより好ましい。
熱安定剤としては、通常知られているヒンダードフェノール系、リン系、アミン系等の熱安定剤(酸化防止剤)の中から1種または2種以上を適宜使用することができる。
【0068】
基材層が光安定剤を含有する場合は、光安定剤の機能を発現する観点から、光安定剤を0.001質量%以上含有することが好ましい。
一方、熱可塑性樹脂フィルム層の外観を良好にする観点や経済性の観点から、光安定剤を1質量%以下含有することが好ましく、0.5質量%以下含有することがより好ましい。
光安定剤としては、通常知られているヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の光安定剤の中から1種または2種以上を適宜使用することができる。また、光安定剤と前記熱安定剤を併用することも好ましい。
【0069】
基材層が分散剤または滑剤を含有する場合は、分散剤または滑剤の機能を発現する観点から、分散剤または滑剤を0.01質量%以上含有することが好ましい。
一方、熱可塑性樹脂フィルム層の成形性や印刷適性を良好にする観点から、分散剤または滑剤を4質量%以下含有することが好ましく、2質量%以下含有することがより好ましい。
分散剤または滑剤としては、通常知られているシランカップリング剤;オレイン酸やステアリン酸等の炭素数8~24の脂肪酸及びその金属塩、アミド、炭素数1~6のアルコールとのエステル等;ポリ(メタ)アクリル酸及びその金属塩の中から1種または2種以上を適宜使用することができる。
【0070】
基材層が帯電防止剤を含有する場合は、帯電防止剤の機能を発現する観点から、帯電防止剤を0.5質量%以上含有することが好ましく、1質量%以上含有することがより好ましい。
一方、熱可塑性樹脂フィルム層の成形性や印刷適性を良好にする観点から、帯電防止剤を10質量%以下含有することが好ましく、5質量%以下含有することがより好ましい。
帯電防止剤としては、通常知られているシランカップリング剤;オレイン酸、ステアリン酸等の炭素数8~24の脂肪酸、並びに、その金属塩、そのアミド及び炭素数1~6のアルコールとのエステル等;ポリ(メタ)アクリル酸及びその金属塩の中から選択される1種または2種以上を適宜使用することができる。
【0071】
・強度付与層
強度付与層は、熱可塑性樹脂フィルム層の粘着剤層側に設ける層であって、熱可塑性樹脂フィルム層が、粘着剤層によって外部の物体に付着するときに、熱可塑性樹脂フィルム層の凝集破壊(内部破壊)によって物体から粘着ラベルが容易に剥がれないよう、ラベルに強度を付与する機能を有する。
【0072】
強度付与層を構成する樹脂は、基材層に含まれる樹脂と同種であってもよく、異種であってもよい。
強度付与層を構成する樹脂は、融点が105~280℃の範囲の熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、プロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられるが、これらのうち1種でも2種以上の樹脂を含んでいてもよい。
強度付与層を構成する樹脂は、プロピレン系樹脂または高密度ポリエチレンを主成分として含んでいてもよい。これにより、耐水性、耐薬品性、経済性などに優れた強度付与層が得られる。
【0073】
強度付与層は、無機微細粉末を含んでいてもよい。強度付与層が無機微細粉末を含む場合、基材層における無機微細粉末の含有率は、強度付与層における無機微細粉末の含有率よりも大きいことが好ましい。これにより、基材層の密度を、強度付与層の密度よりも小さくすることができる。その結果、熱可塑性樹脂フィルム層の物理的強度を強度付与層により担保しつつ、熱可塑性樹脂フィルム層の白色度若しくは不透明度を大きくしつつも、又は、熱可塑性樹脂フィルム層を軽量化しつつも、強度付与層の層内強度、並びに、基材層及び強度付与層の層間強度を高めることができる。また、熱可塑性樹脂フィルム層と外部の物体とを強固に付着させることができる。
強度付与層に含まれる無機微細粉末は、基材層に含まれる無機微細粉末と同種であってもよく、異種であってもよい。
【0074】
強度付与層は、無機微細粉末を1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましい。これにより、強度付与層の不透明度が大きくなる。
強度付与層は無機微細粉末を20質量%以下含むことが好ましく、18質量%以下含むことがより好ましい。これにより、強度付与層の層内強度、並びに、基材層及び強度付与層の層間強度が向上する。
【0075】
外部の物体との接着を阻害しない範囲で、強度付与層に、公知の他の樹脂用添加剤を任意に添加してよい。
他の樹脂用添加剤としては、例えば染料、核剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。他の樹脂用添加剤の添加量は、強度付与層全体に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。これにより、フィルムの連続製造時にダイスに添加剤が堆積する現象を抑制することができる。
【0076】
強度付与層を有するフィルムの製造方法は、特に限定されない。例えば、フィードブロック、マルチマニホールド等を使用した多層ダイス方式を用いて基材層の成形と同時に強度付与層をダイスから共押し出しすることで製造してもよく、複数のダイスを使用して、基材層の上に強度付与層を押出ラミネーションすることで製造してもよく、フィルム状に成形された強度付与層を基材層に貼り合わせることで製造してもよい。
【0077】
・高平滑層
高平滑層は、熱可塑性樹脂フィルム層のフロント面の光沢を高める機能を有し、本実施形態によれば、表面に光沢を有するのに適した熱可塑性樹脂フィルム層が提供される。これにより、熱可塑性樹脂フィルム層のフロント面の表面コート層上に情報を印刷して印刷層を設けた際に、印刷された情報に光沢感を与えることができる。熱可塑性樹脂フィルム層の内部に入射した光を、基材層と高平滑層との界面で正反射させることにより、より効率的に光沢を高めることができる。
【0078】
高平滑層は熱可塑性樹脂を40~100質量%含有することが好ましく、50~100質量%含有することがより好ましい。また、高平滑層は無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方を0~60質量%含有することが好ましく、0~50質量%含有することがより好ましい。これにより、表面の平滑性が高くなり、20°光沢を向上させることができる。20°光沢は、JIS Z8741:1997年に定められた手順に従って測定される。
また、高平滑層の不透明度は30%以下であることが好ましい。これにより、高平滑層の透明性が高くなり、熱可塑性樹脂フィルム層の内部に入射した光を効率よく取り出すことができる。その結果、全光線反射率を向上させることができる。
【0079】
高平滑層は延伸されていることが好ましい。これにより、高平滑層が無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方を含有する場合に、高平滑層の内部に、無機微細粉末又は有機フィラーを核とした空孔が形成される。その結果、全光線反射率を向上させることができる。
また、延伸により、高平滑層の表面平滑度が向上する。その結果、20°光沢が向上する。高平滑層が無機微細粉末及び有機フィラーの少なくとも一方を含有しない場合、延伸により高平滑層の表面平滑度はより一層高くなる。
【0080】
光沢感の向上を目的とする場合、高平滑層の延伸は二軸方向で行われることがより好ましい。
高平滑層の延伸が一軸延伸の場合、高平滑層中の空孔はラグビーボール状となり、高平滑層での光反射は入射光に対して指向性が少なく、いわゆる乱反射となる。その結果、白色度が向上するが光沢度は抑えられる。
一方、高平滑層の延伸が二軸延伸の場合、高平滑層中の空孔はより扁平な円盤状となり、高平滑層での光反射における正反射の割合が多くなる。その結果、目視での光沢感が向上する。
【0081】
・熱可塑性樹脂フィルム層の物性
熱可塑性樹脂フィルム層の厚みは、JIS K 7130:1999年に従い、定圧厚さ測定器を用いて測定する。粘着ラベルとした際にシワを生じさせにくくする観点から、熱可塑性樹脂フィルム層の厚みは20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、60μm以上がさらに好ましい。
一方、粘着ラベルの取り扱いを容易にする観点から、熱可塑性樹脂フィルム層の厚みは、250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0082】
熱可塑性樹脂フィルム層の密度は、JIS K 7112:1999年に記載されている方法に従い、前記測定により得られた厚みの値と、試料を10cm×10cmサイズに打ち抜いて質量を測定して得られた坪量の値から、下記の計算式によって算出する。
ρ=Wf/Tf
ただし、ρ、Wf及びTfはそれぞれ下記を意味する。
ρ:熱可塑性樹脂フィルム層の密度(g/cm)、
Wf:熱可塑性樹脂フィルム層の坪量(g/cm)、
Tf:熱可塑性樹脂フィルム層の厚み(cm)。
【0083】
熱可塑性樹脂フィルム層の密度は、粘着ラベルとした際の粘着ラベル表面強度維持の観点から0.5g/cm以上が好ましく、0.6g/cm以上がより好ましい。一方、ヒートシール強度付与の観点から、熱可塑性樹脂フィルム層の密度は、1.3g/cm以下が好ましく、1.0g/cm以下がより好ましい。
【0084】
熱可塑性樹脂フィルム層の空孔率は、前記測定によって得られた密度ρと、前記フィルムのシート成形に用いる樹脂組成物の密度測定によって得られた真密度ρを用いて次の式により算出する。
空孔率(%)={(ρ-ρ)/ρ}×100
ただし、ρ及びρはそれぞれ下記を意味する。
ρ:熱可塑性樹脂フィルム層の真密度、
ρ:熱可塑性樹脂フィルム層の密度。
【0085】
熱可塑性樹脂フィルム層の空孔率は、粘着ラベルとした際に、粘着ラベルへの不透明性付与の観点から1%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。
一方、粘着ラベルの強度維持の観点から、熱可塑性樹脂フィルム層の空孔率は、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。
【0086】
<粘着ラベル>
本発明に係る粘着ラベルは、前記表面コート層及び前記熱可塑性樹脂フィルム層を含む前記積層体の一方の表面上に粘着剤層が設けられたものであり、前記表面コート層、前記熱可塑性フィルム層、及び前記粘着剤層をこの順に含む。
本発明に係る粘着ラベルの一態様として、例えば図1に示すように、印刷層2、表面コート層3、熱可塑性樹脂フィルム層4及び粘着剤層5をこの順に含むものが挙げられる。前記表面コート層の、前記熱可塑性樹脂フィルム層と対向していない側の表面上に、電子写真印刷又はインクジェット印刷によって表示された印刷層が設けられ、前記印刷層の黒色の印刷部分に対してBS5609:1986年に準拠して測定した耐摩耗性がグレースケール評価で2以上であることが好ましい。
以下、表面コート層と熱可塑性樹脂フィルム層以外の各層について説明する。
【0087】
(印刷層)
印刷層は粘着ラベルの最表面に位置する層であり、レーザープリンター等を用いた電子写真印刷やインクジェット印刷により可変情報が表示された層である。したがって、印刷層は表面コート層の少なくとも一部の領域を覆っていればよく、すべての領域を覆っていなくともよい。
【0088】
印刷層の黒色の印刷部分に対して英国規格であるBS5609:1986年に準拠して測定した耐摩耗性がグレースケール評価で2以上であることが好ましい。
【0089】
粘着ラベルをGHSラベルとして用いる際には、少なくとも黒色と赤色が印字されることから、前記カラーチャートのうち黒色及び赤色の印刷部分に対して、BS5609:1986年に準拠して測定したグレースケールでの耐摩耗性の評価がいずれも2以上であることが好ましく、さらに緑色、青色、シアン色、マゼンタ色及び黄色の印刷部分に対して、前記評価が2以上となる色が多いほど好ましい。
また、前記評価は2以上であれば耐摩耗性が良好であることを意味するが、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。
【0090】
印刷層が所望の密着性や耐水性、耐摩耗性を得るためには、下記表面コート層のポリウレタン樹脂の含有量を65質量%超、好ましくは66~99質量%とすることが必要であり、さらには、表面コート層の構成等を前記(表面コート層)に記載したように、適切なものとすることで、さらなる耐摩耗性等を実現することができる。
【0091】
(粘着剤層)
前記熱可塑性樹脂フィルム層の表面コート層とは反対側(バック面側)の表面に粘着剤層を設けることにより、前記熱可塑性樹脂フィルム層のバック面が前記粘着剤層を介して外部に付着することができるようになる。これにより、ラベル表示すべき容器等に対して、粘着ラベルと強固に結びつけることができるようになる。
【0092】
粘着剤層に用いる粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤が挙げられ、溶液型、エマルション型、ホットメルト型等の各種形態を使用することができる。
ゴム系粘着剤としては、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、及びこれらの混合物、或いはこれらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したもの等を挙げることができる。
アクリル系粘着剤としては、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n-ブチル共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等のガラス転移点が-20℃以下のものが挙げられる。
シリコーン系粘着剤としては、白金化合物等を触媒とする付加硬化型粘着剤、過酸化ベンゾイル等によって硬化させる過酸化物硬化型粘着剤等が挙げられる。
これらの中でも、BS5609:1986年のセクション2に合致できるような粘着剤を選定し、用いることが好ましい。
【0093】
(離型紙)
離型紙は、粘着剤表面を保護する目的で、粘着剤層の熱可塑性樹脂フィルム層とは反対側の面に、必要に応じて設けることができる。
離型紙としては、上質紙やクラフト紙をそのまま、あるいは上質紙やクラフト紙にカレンダー処理、樹脂コート、フィルムラミネートをしたもの、またはグラシン紙、コート紙、プラスチックフィルム等にシリコーン処理を施したもの等を使用することができる。このうち、粘着剤層との剥離性が良好であることから、粘着剤層に接触する面にシリコーン処理を施したものを用いることが好ましい。
【0094】
<<積層体の製造方法>>
<熱可塑性樹脂フィルム層の製造>
熱可塑性樹脂フィルム層は、その層構成によらず、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。またその成形は押し出し成形によることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルム層の成形法としては、熱可塑性樹脂フィルム層を構成する熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移点より高い温度に設定した押出機でフィルムの原料を溶融混練し、TダイやIダイなどを使用してシート状に押し出し、金属ロール、ゴムロール、金属ベルト等で冷却するキャスト成形、円形のダイを使用してチューブ状に押し出し、チューブ内圧力により一定の倍率に膨らませながら空気や水で冷却するインフレーション成形、混練された材料を複数の熱ロールで圧延しシート状に加工するカレンダー成形、圧延成形等を挙げることができる。
【0095】
熱可塑性樹脂フィルム層は、カレンダー成形法又はキャスト成形法により形成されることが好ましい。
カレンダー成形法によれば、熱可塑性樹脂フィルム層を構成する熱可塑性樹脂組成物を加熱ロールで混練しながら、二本のロールの間から熱可塑性樹脂組成物を押し出し、二本のロールの間で圧延を繰り返す。各ロールの回転速度と引き取り速度を制御することで熱可塑性樹脂フィルム層の厚さを制御しつつ、熱可塑性樹脂フィルム層を冷却ロールに押し当て冷却することで、熱可塑性樹脂フィルム層が得られる。
キャスト成形法によれば、熱可塑性樹脂フィルム層を構成する熱可塑性樹脂組成物を押出機に供給して溶融し、押出機に接続されたTダイを使用して、熱可塑性樹脂組成物をシート状に押し出し、押し出された熱可塑性樹脂組成物を冷却ロールに押し当て冷却することで、熱可塑性樹脂フィルム層が得られる。
【0096】
熱可塑性樹脂フィルム層を多層構成にする場合は、公知の方法が適宜使用できるが、具体的には、フィードブロック、マルチマニホールド等を使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出ラミネーション方式等が挙げられ、両者を単独で、または組み合わせて使用することができる。
例えば、熱可塑性樹脂フィルム層のうちの1層を前記キャスト成形で形成し、必要に応じてロール周速差を利用して延伸を行った後、または、熱可塑性樹脂フィルム層のうちの1層を前記カレンダー成形法で得た後、熱可塑性樹脂フィルム層の他の層を構成する樹脂組成物を溶融ラミネートして積層体としてもよい。
【0097】
熱可塑性樹脂フィルム層は2層以上の多層構成であってもよい。熱可塑性樹脂フィルム層を構成するいずれかの層を延伸する場合において、延伸方法は特に限定されず、公知の種々の方法を使用することができる。
具体的には、各層の延伸は一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよく、無延伸であってもよい。また、延伸の方向は縦方向でも、横方向でもよい。さらに、二軸延伸の場合は、同時に延伸してもよく、逐次延伸してもよい。
【0098】
延伸方法としては、キャスト成形フィルムを延伸する場合は、ロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを使用した横延伸法、圧延法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、インフレーションフィルムを延伸する場合は、チューブラー法による同時二軸延伸法が挙げられる。
【0099】
熱可塑性樹脂フィルム層の延伸条件は特に限定されず、用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。
例えば、延伸倍率は、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用する時には一方向に延伸する場合は約1.2~12倍、好ましくは2倍以上であり、また、好ましくは10倍以下である。二軸延伸の場合の延伸倍率は面積倍率で1.5~60倍、好ましくは4倍以上であり、また、好ましくは50倍以下である。
熱可塑性樹脂としてエチレン系樹脂を使用し、かつ無機微細粉末を45%以上含有するときには、一方向に延伸する場合の延伸倍率は約1.2~5倍、好ましくは2倍以上であり、また、好ましくは4倍以下である。二軸延伸の場合の延伸倍率は面積倍率で1.5~15倍、好ましくは2倍以上であり、また、好ましくは10倍以下である。
その他の熱可塑性樹脂を使用する時には一方向に延伸する場合の延伸倍率は1.2~10倍、好ましくは2倍以上、また、好ましくは5倍以下である。二軸延伸の場合の延伸倍率は面積倍率で1.5~20倍、好ましくは4倍以上、また、好ましくは12倍以下である。
【0100】
延伸温度はガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で行うことができる。具体的には、熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155~167℃)の場合の延伸温度は100~164℃、高密度ポリエチレン(融点121~134℃)の場合の延伸温度は70~133℃であり、融点より1~70℃低い温度である。また、ポリエチレンテレフタレート(融点246~252℃)は結晶化が急激に進まない温度を選択する。また、延伸速度は20~350m/分が好ましい。
【0101】
さらに、延伸後には熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は、延伸温度以上、延伸温度より30℃高い温度以下が好ましい。
熱処理を行うことにより、延伸方向の熱収縮率が低減し、製品保管時の巻き締まりや、熱及び溶断シール時の収縮による波打ち等が少なくなる。熱処理の方法はロール及び熱オーブンで行うのが一般的であるが、これらを組み合わせてもよい。熱処理は、高い処理効果が得られる観点から、延伸したフィルムを緊張下に保持された状態において行うことが好ましい。
【0102】
上記のようにして得られた熱可塑性樹脂からなるフィルムは、表面が疎水性で塗布剤等をはじきやすいため、表面コート層や粘着剤層を積層する前に、フィルム表面を酸化処理することが好ましい。フィルム表面に酸化処理を施すことにより、フィルム表面に塗布剤及び粘着剤を均一に塗布しやすくなるだけでなく、表面コート層と熱可塑性樹脂フィルム層とが、及び熱可塑性樹脂フィルム層と粘着剤層とが、それぞれ強固に接着する。その結果、後述する印刷層の耐久性や、粘着ラベルとして使用する際の粘着剤の耐久性を高めやすくなる。
【0103】
表面酸化処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等を挙げることができる。中でもコロナ放電処理、プラズマ処理を用いることが好ましい。
【0104】
酸化処理量は、コロナ放電処理の場合には10W・分/m(600J/m)以上であることが好ましく、20W・分/m(1,200J/m)以上であることがより好ましい。酸化処理量を20W・分/m(1,200J/m)以上にすることにより、安定で効果的な酸化処理を行うことができる。
また、酸化処理量は、コロナ放電処理の場合には200W・分/m(12,000J/m)以下であることが好ましく、180W・分/m(10,800J/m)以下であることがより好ましい。
【0105】
<表面コート層の製造>
表面コート層は、例えば、熱可塑性樹脂フィルム層の一方の表面(フロント面側の表面)に、前記成分を含む塗布剤を塗布・乾燥することで形成される。塗布剤の塗工方法としては、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター等による塗工、または浸漬等により行われる。
【0106】
塗工のプロセスは、熱可塑性樹脂フィルム層の成形ライン中で熱可塑性樹脂フィルム層成形と併せて実施されてもよく、熱可塑性樹脂フィルム層の成形ラインとは別のラインにおいて、前記成形ラインで成形された熱可塑性樹脂フィルム層に対して、塗工プロセスが実施されてもよい。
また、前記支持層の成形が延伸法による場合は、延伸工程の前に塗工を行ってもよく、延伸工程の後に塗工を行ってもよい。必要に応じてオーブン等を用いた乾燥工程を経て余分な溶媒を除去し、表面コート層を形成してよい。
上記により、表面コート層及び熱可塑性樹脂フィルム層を含む積層体を得ることができる。
【0107】
<<粘着ラベルの製造方法>>
<粘着剤層の製造>
粘着剤層は、上記で得られる積層体における熱可塑性樹脂フィルム層のもう一方の表面(表面コート層と対向していない側の表面、バック面側の表面)に、前記粘着剤を塗布・乾燥することで形成される。粘着剤は熱可塑性樹脂フィルム層の表面に直接塗工して形成してもよいし、前記離型紙の表面に粘着剤を塗工して粘着剤層を形成した後、これを熱可塑性樹脂フィルム層の表面に適用してもよい。
【0108】
粘着剤の塗工装置としては、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等を挙げることができる。
これらの塗工装置によって塗工された粘着剤等の塗膜を、必要に応じてスムージングし、乾燥工程を行うことで粘着剤層が形成される。
粘着剤の塗工量は、特に限定されないが、乾燥後の固形分量で3g/m以上であることが好ましく、10g/m以上がより好ましい。また、塗工量は乾燥後の固形分量で60g/m以下が好ましく、40g/m以下がより好ましい。
【0109】
また、熱可塑性樹脂フィルム層と粘着剤層との接着力が小さく、両者の接着界面で剥離が生じてしまうような場合には、粘着剤を設ける前に熱可塑性樹脂フィルム層のバック面側の表面に、アンカーコート剤を塗布することが好ましい。
アンカーコート剤としては、ポリウレタン、ポリイソシアネート・ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート・ポリエステルポリオール・ポリエチレンイミン、アルキルチタネート等を挙げることができる。これらのアンカーコート剤は、例えばメタノール、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン等の有機溶剤、または水に溶解した溶液として熱可塑性樹脂フィルム層の表面に塗工することができる。
アンカーコート剤の塗工量は、乾燥後の固形分量で0.01g/m以上であることが好ましく、0.02g/m以上がより好ましい。また、塗工量は乾燥後の固形分量で5g/m以下が好ましく、2g/m以下がより好ましい。
【0110】
<印刷層の製造>
印刷層は、上記で得られた積層体における前記表面コート層上に、レーザープリンター等を用いた電子写真印刷手法又はインクジェット印刷手法により形成される。
電子写真印刷手法において印刷層(印刷トナー層)は、カラーレーザープリンタ(商品名:CASIO SPEEDIA GE5000、カシオ社製)及び前記カラーレーザープリンタに付属のカラートナーを用いて、ユポラベル厚手モードで印刷して形成したものを主として用いた。しかし、本発明の粘着ラベルの印刷層の製造に用いるプリンター、トナー、印刷設定、及び印刷内容は特に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更することができる。
例えばプリンターとして、カラー複合機DocuCentre-IV(富士ゼロックス社製)、カラー複合機DocuCentre-V(富士ゼロックス社製)、フルカラーラベルプリンターJP725-LC(日本エレクトロニクス工業社製)、カラー複合機e-STUDIO2505AC(東芝テック社製)、及びこれらに付属のカラートナーを用いて製造した粘着ラベルにおいても、前記カラーレーザープリンタを用いて製造した粘着ラベルと同等の印刷品質、印刷層(トナー)の密着性、及び印刷層(トナー)の耐擦過性が得られることが分かった。
【0111】
また、インクジェット印刷手法において印刷層は、カラーインクジェットプリンタ(商品名:Label Мeister EM-250A、岩崎通信社製)及び前記インクジェットプリンタに付属のカラーインクを用いて、印刷速度25m/min、UV照射量160Wで印刷して形成したものを主として用いた。
しかし、本発明に係る粘着ラベルの印刷層の製造に用いるプリンター、インク、印刷設定、及び印刷内容は特に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更することができる。
例えばプリンターとして、ULF-3042FX(ミマキエンジニアリング社製)、OceArizona250GT(Oce社製)、及びこれらに付属のカラーインクを用いて製造した粘着ラベルにおいても、前記インクジェットプリンタを用いて製造した粘着ラベルと同等の印刷品質、印刷層(インク)の密着性、及び印刷層(インク)の耐擦過性が得られることが分かった。
【0112】
<GHSラベル>
本発明に係る粘着ラベルは、国際連合で制定されたGHSに基づくラベル情報が印字されたGHSラベルとして用いることが好ましい。
GHSでは物理化学的危険性、健康に対する有害性、及び環境に対する有害性に関してそれぞれ危険有害性クラスが設定されており、分類基準に従って決定する危険有害性区分に応じてラベル要素が決められる。
【0113】
GHSラベルは、化学品の危険有害性に関する情報がまとめて記載されている書面、印刷、又はグラフィックであり、危険有害性がある物質の容器又はその外部梱包に貼付されたり印刷されたりする。
ラベル要素には製品特定名、注意喚起語、絵表示、危険有害性情報、注意書き、及び供給者の特定があり、絵表示は、黒色の絵が赤色の四角い枠で囲まれた表示が定められている。
【0114】
国際水域で危険物質を輸送する化学物質製造業者は、このGHSラベルに関し、BS5609:1986年の仕様を満たすことが要求されており、その基準として、ラベル性能と印刷性能の2つの重要なセクションが存在する。
【0115】
ラベル性能のセクションであるセクション2においては、ラベル材料と接着剤の永続性と耐久性について、海洋曝露、温度変化、風化、及び海水噴霧と日光への曝露の条件下で試験が行われる。この試験は、ラベル材質と接着剤の永続性と耐久性を決定するため接着剤を塗布したブランク材料に対して行われる。
印刷性能のセクションであるセクション3においては、ラベルに印刷されたものの耐摩耗性と永続性について、人工風化(海水噴霧と日光)、テープ剥離試験、及び耐摩耗性試験が行われる。
【0116】
印刷性能に関する試験は、試料を人工海水と砂の混合物の中で転がすことによって行われるが、本発明に係る粘着ラベルにおいては、下記印刷条件にて電子写真印刷された印刷層を含む粘着ラベルについて、下記試験条件にて擦過試験を行うことで、耐摩耗性の評価を行う。
【0117】
印刷条件;
電子写真印刷の場合には、カラーレーザープリンタ(商品名:CASIO SPEEDIA GE5000、カシオ社製)及び前記カラーレーザープリンタに付属のカラートナー(純正トナー)を用いてユポラベル厚手モードでカラーチャートの印刷を行う。印刷は少なくとも黒色を用いて行い、グレースケール評価を行う。
黒色に加えて赤色を用いた印刷を行うことが好ましく、さらに緑色、青色、シアン、マゼンタ及び/又は黄色についても印刷を行うことがより好ましい。なお、黒色(墨)の印刷部分は、他色の印刷部分に比べてより印刷層(トナー)の剥がれが起きやすい傾向がある。
【0118】
インクジェット印刷の場合には、カラーインクジェットプリンタ(商品名:Label Мeister EM-250A、岩崎通信機社製)及び同機種に付属のカラーインクを用いて、印刷速度25m/min、UV照射量160Wでカラーチャートの印刷を行う。印刷は少なくとも黒色を用いて行い、グレースケール評価を行う。
黒色に加えて紅(マゼンダ)、藍(シアン)、黄色についても印刷を行うことがより好ましい。なお、黒色(墨)の印刷部分は、他色の印刷部分に比べてより印刷層(インク)の剥がれが起きやすい傾向がある。
【0119】
試験条件;
擦過試験機(商品名:Model QT12、LORTONE社製)を用い、BS5609:1986年に準拠した耐摩耗性の評価を行う。
具体的には、直径170mm、高さ195mmのタンブラー(ドラム)に海砂(粒径300~500μm)442g及び上水1770gを入れ、中空SUS(ステンレススチール)304の棒(長さ190mm、直径25mm)に印刷物(粘着ラベル)を巻きつけ、試験機にセットする。25rpm/分で500回転(20分間)させた後、印刷物を回収し、砂を洗い流して水分を拭き取り、評価に供する。
【0120】
印刷層の密着性(耐摩耗性)の評価は、ブランクとの対比において、色ごとに印刷層の剥がれからグレースケール評価を行うが、その基準はBS1006-A02C:1978年に基づき、以下のとおりである。
5:印刷の剥がれは確認できない、
4:わずかに印刷が剥がれている、
3:いくらか印刷が剥がれているが、判別は可能である、
2:ひどく印刷が剥がれているが、判別は可能である、
1:大変ひどく印刷が剥がれている。
前記基準において、1が不合格であり、2~5が合格であるが、3以上がより好ましい。
【実施例0121】
以下に実施例、比較例及び試験例を記載して本発明をさらに具体的に説明する。以下の例に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、以下に記載される%は、特記しない限り質量%を意味する。
【0122】
[表面コート層の塗布剤1]
表1に記載のポリエチレンイミン(商品名:サフトマー AC72、三菱ケミカル社製、固形分濃度:32質量%)0.69質量部、ポリアミドエピクロロヒドリン(商品名:湿潤紙力剤 WS4082、星光PMC社製、固形分濃度:25質量%)0.88質量部、及び水を混合し、5分間撹拌を行った。その後、10%濃度の酢酸を用いて、前記混合物のpHが4.5~5.5になるようにpHを調整した。
次に、pH調整を行った混合液に、ポリウレタン樹脂としてカチオン系のウレタン樹脂水分散体(商品名:ハイドラン CP7050、DIC社製、固形分濃度:25質量%)40質量部、及び金属酸化物を有する微粒子(金属酸化物粒子)としてアルミナ表面処理コロイダルシリカの水分散液(商品名:スノーテックスAK、日産化学工業社製、固形分濃度:23質量%)14.33質量部を添加し、更に水を添加して最終的な混合物の全固形分濃度が11.2質量%となるように調整し、5分間撹拌して、表面コート層の塗布剤1を調製した。
表面コート層の塗布剤1、すなわち表面コート層の全固形分におけるポリウレタン樹脂の含有率は72.8質量%であり、同層における金属酸化物粒子の含有率は24質量%である。
【0123】
[表面コート層の塗布剤2]
表1に記載のポリエチレンイミン(商品名:サフトマー AC72、三菱ケミカル社製、固形分濃度:32質量%)2.06質量部、ポリアミドエピクロロヒドリン(商品名:湿潤紙力剤 WS4082、星光PMC社製、固形分濃度:25質量%)2.64質量部、及び水を混合し、5分間撹拌を行った。その後、10%濃度の酢酸を用いて、前記混合物のpHが4.5~5.5になるようにpHを調整した。
次に、pH調整を行った混合液に、ポリウレタン樹脂としてカチオン性のウレタン樹脂水分散体(商品名:ハイドラン CP7050、DIC社製、固形分濃度:25質量%)21質量部、及び金属酸化物粒子としてアルミナ表面処理コロイダルシリカの水分散液(商品名:スノーテックスAK、日産化学工業社製、固形分濃度:23質量%)30質量部を添加し、更に水を添加して最終的な混合物の全固形分濃度が11.2質量%となるように調整し、5分間撹拌して、表面コート層の塗布剤2を調製した。
表面コート層の塗布剤2、すなわち表面コート層の全固形分におけるポリウレタン樹脂の含有率は39質量%であり、同層における金属酸化物粒子の含有率は51.2質量%である。
【0124】
[表面コート層の塗布剤3]
上記の表面コート層の塗布剤1の調製方法と同様にして、表1に記載の材料を全て添加した後、更に水及びエチルアルコールを添加して最終的な混合物の全固形分濃度が1質量%、エチルアルコール濃度が10質量%となるように調整し、5分間撹拌して、表面コート層の塗布剤3を調製した。
表面コート層の塗布剤3、すなわち表面コート層の全固形分におけるポリウレタン樹脂の含有率は72.8質量%であり、同層における金属酸化物粒子の含有率は24質量%である。
【0125】
[表面コート層の塗布剤4]
上記の表面コート層の塗布剤1の調製方法と同様にして、表1に記載の材料を全て添加した後、更に水及びエチルアルコールを添加して最終的な混合物の全固形分濃度が4質量%、エチルアルコール濃度が10質量%となるように調整し、5分間撹拌して、表面コート層の塗布剤4を調製した。
表面コート層の塗布剤4、すなわち表面コート層の全固形分におけるポリウレタン樹脂の含有率は72.8質量%であり、同層における金属酸化物粒子の含有率は24質量%である。
【0126】
[表面コート層の塗布剤5]
上記の表面コート層の塗布剤1の調製方法と同様にして、表1に記載の材料を全て添加した後、更に水を添加して最終的な混合物の全固形分濃度が18.7質量%となるように調整し、5分間撹拌して、表面コート層の塗布剤5を調製した。
表面コート層の塗布剤5、すなわち表面コート層の全固形分におけるポリウレタン樹脂の含有率は72.8質量%であり、同層における金属酸化物粒子の含有率は24質量%である。
【0127】
[表面コート層の塗布剤6]
表2に記載のポリエチレンイミン(商品名:サフトマー AC72、三菱ケミカル社製、固形分濃度:32質量%)0.68質量部、ポリアミドエピクロロヒドリン(商品名:湿潤紙力剤 WS4082、星光PMC社製、固形分濃度:25質量%)0.87質量部、及び水を混合し、5分間撹拌を行った。その後、10%濃度の酢酸を用いて、前記混合物のpHが4.5~5.5になるようにpHを調整した。
次に、pH調整を行った混合液に、ポリウレタン樹脂としてカチオン系のウレタン樹脂水分散体(商品名:ハイドラン CP7050、DIC社製、固形分濃度:25質量%)33質量部、及び金属酸化物粒子としてアルミナ表面処理コロイダルシリカの水分散液(商品名:スノーテックスAK、日産化学工業社製、固形分濃度:23質量%)21.3質量部を添加し、更に水及びエチルアルコールを添加して最終的な混合物の全固形分濃度が4質量%、エチルアルコール濃度が10質量%となるように調整し、5分間撹拌して、表面コート層の塗布剤6を調製した。
表面コート層の塗布剤6、すなわち表面コート層の全固形分におけるポリウレタン樹脂の含有率は60.7質量%であり、同層における金属酸化物粒子の含有率は36.1質量%である。
【0128】
[表面コート層の塗布剤7]
表2に記載のポリエチレンイミン(商品名:サフトマー AC72、三菱ケミカル社製、固形分濃度:32質量%)0.68質量部、ポリアミドエピクロロヒドリン(商品名:湿潤紙力剤 WS4082、星光PMC社製、固形分濃度:25質量%)0.87質量部、及び水を混合し、5分間撹拌を行った。その後、10%濃度の酢酸を用いて、前記混合物のpHが4.5~5.5になるようにpHを調整した。
次に、pH調整を行った混合液に、ポリウレタン樹脂としてカチオン系のウレタン樹脂水分散体(商品名:ハイドラン CP7050、DIC社製、固形分濃度:25質量%)37質量部、及び金属酸化物粒子としてアルミナ表面処理コロイダルシリカの水分散液(商品名:スノーテックスAK、日産化学工業社製、固形分濃度:23質量%)17質量部を添加し、更に水及びエチルアルコールを添加して最終的な混合物の全固形分濃度が4質量%、エチルアルコール濃度が10質量%となるように調整し、5分間撹拌して、表面コート層の塗布剤7を調製した。
表面コート層の塗布剤7、すなわち表面コート層の全固形分におけるポリウレタン樹脂の含有率は68質量%であり、同層における金属酸化物粒子の含有率は28.8質量%である。
【0129】
[表面コート層の塗布剤8]
上記の表面コート層の塗布剤7の調製方法と同様にして、表2に記載の材料を全て添加した後、更に水を添加して最終的な混合物の全固形分濃度が11.2質量%となるように調整し、5分間撹拌して、表面コート層の塗布剤8を調製した。
表面コート層の塗布剤8、すなわち表面コート層の全固形分におけるポリウレタン樹脂の含有率は68質量%であり、同層における金属酸化物粒子の含有率は28.8質量%である。
【0130】
[表面コート層の塗布剤9]
表2に記載のポリエチレンイミン(商品名:サフトマー AC72、三菱ケミカル社製、固形分濃度:32質量%)0.69質量部、ポリアミドエピクロロヒドリン(商品名:湿潤紙力剤 WS4082、星光PMC社製、固形分濃度:25質量%)0.88質量部、及び水を混合し、5分間撹拌を行った。その後、10%濃度の酢酸を用いて、前記混合物のpHが4.5~5.5になるようにpHを調整した。
次に、pH調整を行った混合液に、ポリウレタン樹脂としてカチオン系のウレタン樹脂水分散体(商品名:ハイドラン CP7050、DIC社製、固形分濃度:25質量%)52質量部、及び金属酸化物粒子としてアルミナ表面処理コロイダルシリカの水分散液(商品名:スノーテックスAK、日産化学工業社製、固形分濃度:23質量%)1.2質量部を添加し、更に水を添加して最終的な混合物の全固形分濃度が11.2質量%となるように調整し、5分間撹拌して、表面コート層の塗布剤9を調製した。
表面コート層の塗布剤9、すなわち表面コート層の全固形分におけるポリウレタン樹脂の含有率は94.8質量%であり、金属酸化物粒子の含有率は2質量%である。
【0131】
[熱可塑性樹脂フィルム層]
以下の手順で、フロント面側から高平滑層/基材層/強度付与層の3層構造からなる熱可塑性樹脂フィルム層を成形した。
先ず、基材層の材料として、表3に記載のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)14質量部、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP EA8、日本ポリプロ社製)60質量部、高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ360、日本ポリエチレン社製)10質量部、重質炭酸カルシウム微粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)15質量部、及びルチル型二酸化チタン微粒子(商品名:タイペーク CR60、石原産業社製)1質量部を混合し、これをシリンダー温度260℃に設定した押出機に供給して溶融混練した後、260℃に設定したTダイに供給してシート状に押し出し、得られたシートを冷却ロールにて約70℃まで冷却して、無延伸シートを得た。
次いで、得られた無延伸シートを、140℃に再加熱した後、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、冷却ロールにて約60℃まで冷却して5倍縦延伸シートを得た。
【0132】
次に、高平滑層の材料として、表3に記載のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)20質量部、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP EA8、日本ポリプロ社製)30質量部、高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ360、日本ポリエチレン社製)4.5質量部、重質炭酸カルシウム微粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)45質量部、及びルチル型二酸化チタン微粒子(商品名:タイペーク CR60、石原産業社製)0.5質量部を混合し、これをシリンダー温度260℃に設定した押出機に供給して溶融混練した後、260℃に設定したTダイに供給してシート状に押し出し、先で得られた前記5倍縦延伸シートの片面上にラミネートした。次いで両者を2本の金属冷却ロールの間に導き、挟圧して接合し、冷却ロールにて室温まで冷却して、高平滑層/基材層の2層構造を有する積層樹脂シートを得た。
【0133】
次に、強度付与層の材料として、表3に記載のプロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)14質量部、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP EA8、日本ポリプロ社製)60質量部、高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHD HJ360、日本ポリエチレン社製)10質量部、重質炭酸カルシウム微粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)15質量部、及びルチル型二酸化チタン微粒子(商品名:タイペーク CR60、石原産業社製)1質量部を混合し、これをシリンダー温度260℃に設定した押出機に供給して溶融混練した後、260℃に設定したTダイに供給してシート状に押し出し、先で得られた前記積層樹脂シートの基材層側の表面上にラミネートした。次いで両者を2本の金属冷却ロールの間に導き、挟圧して接合し、冷却ロールにて室温まで冷却して、高平滑層/基材層/強度付与層の3層構造を有する積層樹脂シートを得た。
【0134】
先で得られた前記3層構造の積層樹脂シートを、テンターオーブンを用いて155℃に再加熱し、テンターを用いて横方向に9倍延伸した後、更に160℃に調整した熱セットゾーンによりアニーリング処理を行った。次いで冷却ロールにて約60℃まで冷却し、耳部をスリットして、全体厚み:80μm(各層厚み:20μm(高平滑層)/40μm(基材層)/20μm(強度付与層))、全体密度:0.83g/cm、不透明度:89%の延伸樹脂フィルムを得て、これを実施例及び比較例の熱可塑性樹脂フィルム層として用いた。
なお、厚み、密度及び不透明度は後述する方法によりそれぞれ求めた。
【0135】
<積層体>
[実施例1-1、参考例1-5、実施例1-6及び比較例1-1]
先で得られた前記熱可塑性樹脂フィルム層の両面に、それぞれ60W・min/mのワット密度でコロナ放電処理を行った。
次いで、コロナ放電処理された前記熱可塑性樹脂フィルム層の高平滑層側の面に、表面コート層の塗布剤1、8、9又は2をそれぞれ、ウエット塗工量が5g/mとなるようにバーコーターを用いて塗工し、70℃のオーブン中で1分間乾燥させることにより、表面コート層/熱可塑性樹脂フィルム層の二層構造からなる積層体をそれぞれ得た(実施例1-1、参考例1-5、実施例1-6及び比較例1-1)。得られた積層体における、熱可塑性樹脂フィルム層表面上への表面コート層の適用量(ドライ塗工量)は、単位面積当たりの乾燥後固形分換算で、いずれも0.56g/mである。
【0136】
[比較例1-2]
同様に、コロナ放電処理された前記熱可塑性樹脂フィルム層の高平滑層側の面に、表面コート層の塗布剤3をウエット塗工量が5g/mとなるようにバーコーターを用いて塗工し、70℃のオーブン中で1分間乾燥させることにより、表面コート層/熱可塑性樹脂フィルム層の二層構造からなる積層体を得た。得られた積層体におけるドライ塗工量は0.05g/mである。
【0137】
[実施例1-2、参考例1-4及び比較例1-3]
先で得られた前記熱可塑性樹脂フィルム層の両面に、それぞれ60W・min/mのワット密度でコロナ放電処理を行った。
次いで、コロナ放電処理された前記熱可塑性樹脂フィルム層の高平滑層側の面に、表面コート層の塗布剤4、7又は6をそれぞれ、ウエット塗工量が5g/mとなるようにバーコーターを用いて塗工し、70℃のオーブン中で1分間乾燥させることにより、表面コート層/熱可塑性樹脂フィルム層の二層構造からなる積層体をそれぞれ得た(実施例1-2、参考例1-4及び比較例1-3)。得られた積層体におけるドライ塗工量はいずれも0.2g/mである。
【0138】
[実施例1-3]
同様に、コロナ放電処理された前記熱可塑性樹脂フィルム層の高平滑層側の面に、表面コート層の塗布剤5をウエット塗工量が80g/mとなるようにバーコーターを用いて塗工し、70℃のオーブン中で10分間乾燥させることにより、表面コート層/熱可塑性樹脂フィルム層の二層構造からなる積層体を得た。得られた積層体におけるドライ塗工量は15g/mである。
【0139】
[実施例2-1~2-3、参考例2-4、参考例2-5、実施例2-6及び比較例2-1~2-3]
[粘着ラベル]
シリコーン処理を施したグラシン紙(商品名:G7B、王子タック社製)を剥離シートとして用い、前記剥離シートのシリコーン処理面に溶剤系アクリル系粘着剤(商品名:オリバイン BPS1109、トーヨーケム社製)、イソシアネート系架橋剤(商品名:オリバイン BHS8515、トーヨーケム社製)、及びトルエンを質量比で100:3:45の割合で混合した混合液を、乾燥後の坪量が25g/mとなるようにコンマコーターで塗工し、乾燥することにより粘着剤層を形成した。
次いで粘着剤層と、先で得られた実施例1-1~1-3、参考例1-4、参考例1-5、実施例1-6又は比較例1-1~1-3の積層体とを、粘着剤層と熱可塑性樹脂フィルム層(強度付与層側)とが接するように積層して二本の圧着ロール間に導き、表面コート層とグラシン紙とを加圧接着して、熱可塑性樹脂フィルム層の強度付与層側の表面(バック面側の表面)上に、粘着剤層を形成し、表面コート層/熱可塑性樹脂フィルム層/粘着剤層の三層構造からなる粘着ラベルをそれぞれ得た。
【0140】
[印刷層]
カラーレーザープリンタ(商品名:CASIO SPEEDIA GE5000、カシオ社製)及び同機種に付属のカラートナーを用いて、先で得られた粘着ラベルの各表面コート層上に、赤、緑、青、紅(マゼンタ)、藍(シアン)、黄、黒(墨)の7色のカラーチャート、及び国際連合から勧告されたGHSに基づくピクトグラム情報を含むテスト画像を、ユポラベル厚手モードで印刷を行い、印刷層を設けて、印刷層/表面コート層/熱可塑性樹脂フィルム層/粘着剤層をこの順に含む粘着ラベルをそれぞれ得た。
得られた粘着ラベルにおいて、下記手順で印刷層の密着性(ドライ条件、浸水条件)及び印刷層の耐摩耗性の評価を行った。結果を表4及び表5にまとめて示す。
【0141】
また、カラーインクジェットプリンタ(商品名:Label Мeister EM-250A、岩崎通信機社製)及び同機種に付属のカラーインクを用いて、先で得られた実施例2-1の粘着ラベルの表面コート層上に、紅(マゼンタ)、藍(シアン)、黄、黒(墨)の4色のカラーチャート、及び国際連合から勧告されたGHSに基づくピクトグラム情報を含むテスト画像を、印刷速度25m/min、UV照射量160Wで印刷を行い、印刷層を設けて、印刷層/表面コート層/熱可塑性樹脂フィルム層/粘着剤層をこの順に含む粘着ラベルを得た。
得られた粘着ラベルにおいて、下記手順で印刷層の密着性(ドライ条件、浸水条件)及び印刷層の耐摩耗性の評価を行った。結果を表6に示す。
【0142】
<印刷性能評価>
(印刷層の密着性:ドライ条件)
得られた粘着ラベルの印刷層上(テスト画像上)にセロハンテープ(商品名:セロテープ(登録商標) LP-18、ニチバン社製)を貼りつけ、指圧により両者を密着させた後に、表面コート層や熱可塑性樹脂フィルム層の内部破壊が起きない速度でセロハンテープの180度剥離を行い、粘着ラベル上に残存した印刷画像から印刷層の密着性を下記の基準で判定した。
◎:印刷の剥がれは認められない、
○:印刷面積の10%未満に剥がれが認められるが、剥がれるときの剥離強度が高く、実用上問題ない、
△:印刷面積の10%以上50%未満に剥がれが認められるが、剥がれるときの剥離強度が高く、実用に耐え得る、
×:印刷の剥がれが認められ、剥がれるときの剥離強度が低く、実用に適さない。
【0143】
(印刷層の密着性:浸水条件)
得られた粘着ラベルを、バットに充満させた水(イオン交換水)の中に浮かない様に24時間浸漬した後に取り出し、ティッシュで水分を拭き取り、前記(印刷層の密着性:ドライ条件)と同じ手順、同じ基準で、印刷層の密着性(浸水条件)の評価を行った。
【0144】
(印刷層の耐摩耗性)
得られた粘着ラベルの印刷層の耐摩耗性を、英国規格BS5609:1986年のセクション3に従い、以下の手順で擦過試験を行い、試験後の粘着ラベルにおける印刷層の剥がれ具合をグレースケールで判定した。
擦過試験条件;
得られた粘着ラベルからテスト画像を含むように150mm×75mmサイズのサンプルを切り出し、これを中空のステンレス棒(SUS304製、190mm長さ×25mm径、質量:500g)の胴部に巻きつけるように貼り付けた。
次いで、タンブラー(195mm高さ×170mm径の中空容器)の外蓋及び内蓋を外し、タンブラー内に海砂(和光純薬工業社製、粒径:300~500μm)442g、及び上水(神栖市水道水)1770gを入れ、タンブラー内に前記サンプルを巻き付けたステンレス棒、及びブランクのステンレス棒を、ブランクのステンレス棒が回転方向の先に来るようにセットし、タンブラーに内蓋、外蓋を取り付け、留め具で固定した。
【0145】
擦過試験機(商品名:Model QT12、LORTONE社製)の回転台の上に前記タンブラーをセットし、タンブラーを周方向に毎分25回転の速度で20分間、計500回転させた。
その後、回転台からタンブラーを降ろし、タンブラーからサンプル付きのステンレス棒を取り出して砂を洗い流し、ティッシュで水分を拭き取ることでサンプルを採取した。
【0146】
擦過試験後のサンプルと、擦過試験をしていないブランクとを横並びにして対比し、擦過試験後のサンプルの印刷層の、カラーチャート部分の剥がれ具合を、BS1006-A02C:1978年に基づき、下記の5段階でグレースケール判定した。
なお、BS5609:1986年規格上は、グレースケール判定が2以上で合格であり、3以上であることが好ましい。また、黒(墨)の印刷部分は、他色の印刷部分に比べてより印刷の剥がれが起きやすい部分である。
5:印刷の剥がれは確認できない、
4:わずかに印刷が剥がれている、
3:いくらか印刷が剥がれているが、判別は可能である、
2:ひどく印刷が剥がれているが、判別は可能である、
1:大変ひどく印刷が剥がれている。
【0147】
<ドライ塗工量>
得られた粘着ラベルにおける表面コート層のドライ塗工量は、表面コート層の塗布剤を塗工する際、塗工直後の二層積層体の質量から塗工前の熱可塑性樹脂フィルム層の質量を差し引くことでウエット塗工量を求め、これに表面コート層の塗布剤の固形分濃度を乗じて、乾燥後の塗工量を求めたものである。
【0148】
<厚み>
熱可塑性樹脂フィルム層全体の厚みは、JIS K7130:1999年「プラスチック-フィルム及びシート-厚さ測定方法」に基づき、定圧厚さ測定器(機器名:PG-01J、テクロック社製)を用いて測定した。
熱可塑性樹脂フィルム層における各層の厚みは、測定対象試料を液体窒素にて-60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(商品名:プロラインブレード、シック・ジャパン社製)を直角に当てて切断して断面測定用の試料を作製し、得られた試料を走査型電子顕微鏡(機器名:JSM-6490、日本電子社製)を用いて断面観察を行い、組成外観から各層の境界線を判別して、全体の厚みと観察される層厚み比率を乗算して求めた。
【0149】
<坪量>
熱可塑性樹脂フィルム層の坪量は、JIS P8124:2011年「紙及び板紙-坪量の測定方法」に基づき、100mm×100mmサイズに打抜いたサンプルを電子天秤で秤量して求めた質量を、面積で除すことにより求めた。
【0150】
<密度>
熱可塑性樹脂フィルム層の密度は、前記坪量を、全体の厚みで除した値を用いた。
【0151】
<不透明度>
熱可塑性樹脂フィルム層の不透明度は、ISO 2471:1998年(JIS P8149:2000年)「紙及び板紙 不透明度試験方法(紙の裏当て)-拡散照明法」に準拠し、測定背面に黒色筒を当てて測定した単一シート視感反射率及び同じ試料の測定背面に白色標準板を当てて測定した固有視感反射率の比(単一シート視感反射率/固有視感反射率)を百分率で示した値として求めた。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
以上の結果から、本発明に係る粘着ラベルは、ドライ条件のみならず浸水条件においても印刷層の密着性に優れ、また、BS5609:1986年という厳しい評価試験においても、優れた耐摩耗性を示すことが分かった。
【0159】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2018年3月30日出願の日本特許出願(特願2018-068719)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明に係る粘着ラベルは、GHSラベルに求められる厳しい印刷性能を満たすことから、GHSラベルの素材としても非常に有用である。
【符号の説明】
【0161】
1 粘着ラベル
2 印刷層
3 表面コート層
4 熱可塑性樹脂フィルム層
5 粘着剤層
図1