(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069483
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】スパイラル巻き要素のための非ネスティング、非変形パターン
(51)【国際特許分類】
B01D 63/10 20060101AFI20220428BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B01D63/10
B01D63/00 510
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022027288
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2019554564の分割
【原出願日】2018-04-12
(31)【優先権主張番号】62/487,970
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519350775
【氏名又は名称】アクア メンブレインズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロデリック,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ヘリントン,ロドニー
(57)【要約】
【課題】 要素巻き上げ中の隣接スペーサ層のネスティング及び供給スペースの閉塞を防ぐ。
【解決手段】 スパイラル巻き透過膜システムで使用するための膜は、膜の表面に堆積された離間特徴物を有し、離間特徴物が、渦巻き状に巻き上げられる際のスペーサのネスティングを生じさせないように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル巻き透過膜システムで使用するための膜であって、膜の表面に堆積された離間特徴物を有する前記膜を含み、前記離間特徴物が、渦巻き状に巻き上げられる際のスペーサのネスティングを生じさせないように構成される、膜。
【請求項2】
前記離間特徴物が、前記膜が渦巻き状に巻き上げられる際に重なるように配置される、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記離間特徴物が、不均一な離間距離で相互に離間する実質的に平行な複数の線分を含む、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
前記複数の線分の第1の部分が、不均一な離間距離で相互に離間されることによってパターンを形成し、前記複数の線分の他の部分が前記パターンの繰り返しを含む、請求項3に記載の膜。
【請求項5】
前記第1の部分が、最初の線分から最後の線分まで計測して少なくとも6インチに及ぶ、請求項4に記載の膜。
【請求項6】
前記第1の部分が、前記最初の線分から前記最後の線分まで計測して少なくとも12インチに及ぶ、請求項5に記載の膜。
【請求項7】
前記離間の変化量が、隣接する離間特徴物間の平均距離の15%未満である、請求項4に記載の膜。
【請求項8】
前記離間特徴物が、相互に離間され、且つ不均一な角度で相互に非平行に方向付けされた複数の線分を含む、請求項1に記載の膜。
【請求項9】
前記複数の線分の第1の部分が、相互に対して不均一な角度で方向付けされてパターンを形成し、前記複数の線分の他の部分が前記パターンの繰り返しを含む、請求項8に記載の膜。
【請求項10】
前記パターンが、最初の線分から最後の線分まで計測して少なくとも6インチに及ぶ、請求項9に記載の膜。
【請求項11】
前記パターンが、前記最初の線分から前記最後の線分まで計測して少なくとも12インチに及ぶ、、請求項10に記載の膜。
【請求項12】
前記角度の変化量が、前記パターンに対する前記特徴物の平均角度の15%未満である、請求項9に記載の膜。
【請求項13】
前記離間特徴物が、前記表面の上に、相互に平行に、第1のグリッドに配置された第1の複数の線分と、前記表面の上に、相互に平行に、第2のグリッドに配置された第2の複数の線分と、を含み、前記第1の複数の線分が、前記第2の複数の線分と交差せず、前記第1の複数の線分が前記第2の複数の線分に対して0度以外の角度で配置される、請求項1に記載の膜。
【請求項14】
前記角度が、少なくとも1度であるが45度以下である、請求項13に記載の膜。
【請求項15】
前記角度が45度である、請求項14に記載の膜。
【請求項16】
前記第1の複数の各離間特徴物が、前記第1の複数の隣接する離間特徴物から1インチの4分の1以下離れている、請求項13に記載の膜。
【請求項17】
前記第1の複数の各離間特徴物が、前記第1の複数の隣接する離間特徴物から1インチの10分の1以下離れている、請求項16に記載の膜。
【請求項18】
前記離間特徴物が、前記離間特徴物を横断する少なくとも1つの経路に沿って定められて計測された不均一な離間距離で相互に離間する複数の曲線状セグメントを含む、請求項1に記載の膜。
【請求項19】
前記離間特徴物が、前記膜が前記透過膜システムの中に作られる際に前記離間特徴物が隣接する層の上のこれらの離間特徴物を少なくとも部分的に支持するように構成される、請求項1に記載の膜。
【請求項20】
前記離間特徴物が、前記膜の縁辺の近くに配置される、請求項1に記載の膜。
【請求項21】
前記離間特徴物が、前記膜の前記表面全体に配置される、請求項1に記載の膜。
【請求項22】
前記離間特徴物が、前記膜の前記縁辺から離れた部分におけるよりも前記膜の前記縁辺の近くにおける方がより近接して離間している、請求項21に記載の膜。
【請求項23】
前記膜の前記縁辺が、前記膜の前記縁辺の3インチ以内の領域として範囲を定められている、請求項22に記載の膜。
【請求項24】
前記膜の前記縁辺が、前記膜の前記縁辺の1インチ以内の領域として範囲を定められている、請求項23に記載の膜。
【請求項25】
前記離間特徴物が、熱可塑性プラスチック、反応性ポリマ、ワックス、又は樹脂のうち1つ以上で作られ、前記膜表面に直接堆積される、請求項1に記載の膜。
【請求項26】
前記離間特徴物が、高温熱可塑性プラスチック、金属、又はセラミックのうち1つ以上で作られ、前記膜表面から離れて形成され、その後前記膜表面に接着される、請求項1に記載の膜。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか1項に記載の膜を含む、透過膜システム。
【請求項28】
請求項27に記載の1つ以上の透過膜システムを含む、水処理施設。
【請求項29】
請求項27に記載の透過膜システムを提供することと、被処理水に前記透過膜システムを通過させることと、を含む水処理方法。
【請求項30】
請求項1~26のいずれか1項に記載の膜を提供することと、前記膜を渦巻き状に巻き上げることと、を含む透過膜システムを作る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01] 技術分野
[02] 本発明は、流体成分の分離に利用される透過膜システムに関し、特に、スパイラル巻き透過膜要素に関する。
【背景技術】
【0002】
[03] 背景技術
[04] 当該技術分野で知られているスパイラル巻き膜濾過要素は、多孔質の透過キャリアに又はその周囲に密着された膜シートを含む積層構造を含み、これは膜を通過した流体を中心管へと移動させるための経路を作り、一方で、この積層構造は中心管の周囲に渦巻き状に巻かれ、それ自体が多孔質の供給スペーサによって離間され、流体が要素を通って軸方向に流れるようになっている。この供給スペーサは積層構造内の自由で均一な軸方向の流れを維持するために必要であるが、これは軸方向の流路内の流れの制限と圧力降下の原因にもなり、また、流れを制限し、膜に接触する領域を生じさせ、これが生体成長、スケール形成、及び粒子捕捉を通じた膜の閉塞に大きく寄与する。
【0003】
[05] スパイラル巻き要素の設計に対する改良が、Bargerら及びBradfordらにより開示されており、それによれば、供給スペーサの代わりに膜の外側、即ち作用面の上に直接堆積されるか又はエンボス加工されるアイランド又は突起が使用される。この構成は、要素を通る軸方向の流れのための空間を保持しながら、流路内の障害を最小化するという点で有利である。また、これによって別の構成部品としての多孔質供給スペーサが不要になるため、要素の製造が単純化される。「改良されたスパイラル巻き要素の構成」という名称の米国特許出願公開第2016-0008763-A1号が、膜シートの作用面の裏面又は透過キャリアの表面に直接、プリントパターンを塗布することを教示している。
【0004】
[06] 参照によって各々が本願に援用される以下の参考文献は、本発明の理解を容易にし得る。米国特許第3962096号、米国特許第4476022号、米国特許第4756835号、米国特許第4834881号、米国特許第4855058号、米国特許第4902417号、米国特許第4861487号、米国特許第6632357号、及び米国特許出願公開第2016-0008763-A1号。
【発明の概要】
【0005】
[07] 発明の開示
[08] 本発明の実施形態は、膜の表面に堆積された離間特徴物を有する膜を含むスパイラル巻き透過膜システムで使用するための膜を提供し、離間特徴物は、渦巻き状に巻き上げられる際のスペーサのネスティングを生じさせないように構成される。離間特徴物は、膜が渦巻き状に巻き上げられる際に重なるように配置され得る。
【0006】
[09] 一部の実施形態では、離間特徴物は、不均一な離間距離で相互に離間する実質的に平行な複数の線分を含み得る。複数の線分の第1の部分が、不均一な離間距離で相互に離間されることによってパターンを形成し、複数の線分の他の部分がパターンの繰り返しを含み得る。第1の部分は、最初の線分から最後の線分まで計測して少なくとも6インチに及び得る。第1の部分は、最初の線分から最後の線分まで計測して少なくとも12インチに及び得る。離間の変化量は、隣接する離間特徴物間の平均距離の15%未満であり得る。
【0007】
[10] 一部の実施形態では、離間特徴物は、相互に離間され、且つ不均一な角度で相互に
非平行に方向付けされた複数の線分を含み得る。複数の線分の第1の部分が、相互に対して不均一な角度で方向付けされてパターンを形成し、複数の線分の他の部分がパターンの繰り返しを含む。パターンは、最初の線分から最後の線分まで計測して少なくとも6インチに及び得る。パターンは、最初の線分から最後の線分まで計測して少なくとも12インチに及び得る。角度の変化量は、パターンに対する特徴物の平均角度の15%未満であり得る。
【0008】
[11] 一部の実施形態では、離間特徴物は、表面の上に、相互に平行に、第1のグリッドに配置された第1の複数の線分と、表面の上に、相互に平行に、第2のグリッドに配置された第2の複数の線分とを含み得、第1の複数の線分は、第2の複数の線分と交差せず、第1の複数の線分が第2の複数の線分に対して0度以外の角度で配置される。角度は、少なくとも1度であるが45度以下であり得る。角度は45度であり得る。第1の複数の各離間特徴物は、第1の複数の隣接する離間特徴物から1インチの4分の1以下離れ得る。第1の複数の各離間特徴物は、第1の複数の隣接する離間特徴物から1インチの10分の1以下離れ得る。
【0009】
[12] 一部の実施形態では、離間特徴物は、離間特徴物を横断する少なくとも1つの経路に沿って定められて計測された不均一な離間距離で相互に離間する複数の曲線状セグメントを含み得る。
【0010】
[13] 一部の実施形態では、離間特徴物は、膜が透過膜システムの中に作られる際に離間特徴物が隣接する層の上のこれらの離間特徴物を少なくとも部分的に支持するように構成され得る。
【0011】
[14] 一部の実施形態では、離間特徴物は、膜の縁辺の近くに配置され得る。
【0012】
[15] 一部の実施形態では、離間特徴物は、膜の表面全体に配置され得る。
【0013】
[16] 一部の実施形態では、離間特徴物は、膜の縁辺から離れた部分におけるよりも膜の縁辺の近くにおける方がより近接して離間し得る。膜の縁辺は、膜の縁辺の3インチ以内の領域として範囲を定められ得る。膜の縁辺は、膜の縁辺の1インチ以内の領域として範囲を定められ得る。
【0014】
[17] 一部の実施形態では、離間特徴物は、熱可塑性プラスチック、反応性ポリマ、ワックス、又は樹脂のうち1つ以上で作られ、膜表面に直接堆積され得る。
【0015】
[18] 一部の実施形態では、離間特徴物は、高温熱可塑性プラスチック、金属、又はセラミックで作られ、膜表面から離れて形成され、その後膜表面に接着され得る。
【0016】
[19] 本発明の実施形態は、ここに説明した膜を含む透過膜システムを提供する。
【0017】
[20] 本発明の実施形態は、ここに説明した1つ以上の透過膜システムを含む水処理施設を提供する。
【0018】
[21] 本発明の実施形態は、ここに説明した透過膜システムを提供すること、被処理水に透過膜システムを通過させることを含む水処理方法を提供する。
【0019】
[22] 本発明の実施形態は、ここに説明した膜を提供すること、膜を渦巻き状に巻き上げることを含む透過膜システムを作る方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
[23] 図面の簡単な説明
【
図1】スパイラル巻き要素の巻き上げ中のネスティングを防ぐために離間に変化を付けた平行線分の配列の図である。
【
図2】スパイラル巻き要素の巻き上げ中のネスティングを防ぐために様々な角度で線分を配列した図である。
【
図3A】スパイラル巻き要素の巻き上げ中のネスティングを防ぐために設計した近接離間パターンの構造の図である。
【
図3B】スパイラル巻き要素の巻き上げ中のネスティングを防ぐために設計した近接離間パターンの構造の図である。
【
図3C】スパイラル巻き要素の巻き上げ中のネスティングを防ぐために設計した近接離間パターンの構造の図である。
【
図4A】さらなる一例の特徴物の実施形態の図である。
【
図4B】さらなる一例の特徴物の実施形態の図である。
【
図4C】さらなる一例の特徴物の実施形態の図である。
【
図4D】さらなる一例の特徴物の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[28] 発明を実施するための形態及び産業上の利用可能性
[29] スパイラル巻き要素の膜シートの表面の上、又は透過キャリアシートの上若しくは中に、特徴物をエンボス加工するか又は堆積させて隣接する膜シートを離間させると、供給スペーサメッシュと比較していくつかの利点が得られるものであり、これには、より開けた流路、より低い圧力降下、より低減した汚染、及びメッシュを用いて実用的と思われていたものよりもより薄い供給スペースを生み出す能力が含まれる。膜シート自体は、多孔質のポリプロピレン層で作られ得るものであり、多孔質のポリスルホン層に鋳造された膜ポリマ材料によってポリスルホン層に接着される。膜シートを作るために様々な他の材料及び方法が使用可能である。様々な程度の除去効率を提供する膜シートが作成可能である。精密濾過膜は、産業利用において、バクテリア及び原生動物では典型である約0.1ミクロンほどの小さい物質、又はこのようなサイズの他の汚染物質を除去し得るのが典型である。限外濾過膜は、約0.01ミクロンほどの小さい孔径を有し得るものであり、例えば、流体源からウイルスを除去し得る。ナノ濾過膜は、二価イオンを除去するのに十分に小さい孔径を有し得るが、ナトリウム及び塩化物などの一価イオンを通すと思われる。ナノ濾過の利用の一例は、例えば炭酸カルシウムを除去する軟水化である。逆浸透が、典型では最小の孔径であり、一価塩を除去するのに十分であり、典型では脱塩の利用で用いられる。このようなスペーサ特徴物の様々な構造がBargerらによって開示されており、参照によって本願に援用されるBradfordらの国際出願PCT/US14/18813号は、膜シートに離間特徴物を堆積するのに適した様々な方法及び材料を開示している。このような方法及び材料は、本発明の実施形態を実行するのに有用であり得る。
【0022】
[30] 膜表面に直接エンボス加工するか又は堆積させたスペーサ特徴物は、従来のメッシュ供給スペーサと比較して、スパイラル巻き要素の製造中に相違を示す。スペーサ特徴物は、押し出されるか又は織られたメッシュ材料によって達成可能なものよりも多種多様な形状及びパターンで作成可能であり、これらの離間及び方向も同様に多種多様になり得る。エンボス加工するか又は堆積させた特徴物を用いてスパイラル巻き濾過要素を典型的に製造する際、膜シートの半分に特徴物を有する膜シートを折り畳んでリーフとし、一方の面が特徴物を含み、他方の面は何もなく、ここで相互に対向する両面は作用膜面である。スペーサは、供給溶液が作用膜面間を流れるのを可能にし、膜の全作用面が濾過に利用されることができることになる。これらの2枚の膜シートの外側に透過キャリアシートが差し込まれる。作用膜シートを通って流れる流体は透過キャリアと接触し、透過キャリア内の流体は中央管に運ばれる。中央管の周囲に巻き上げられる前に接着剤が塗布され、完成
要素を作る。接着剤の線が、中央管の一端から開始して、織り重ねられた膜リーフの裏(非作用)面、又は当該リーフ上方の透過キャリアメッシュの上のいずれかに、このシートの外周の3辺を周り堆積され、中央管に戻って接触する。接着剤の線は、透過キャリアを密閉し供給流/リジェクト流から離す役割がある。このプロセスは、要素の作成に使用される各リーフで繰り返される。
【0023】
[31] プリントされた特徴物は、スパイラル巻き要素の注入口領域及び排出口領域において特に重要であり、ここで特徴物間の領域は、要素の中に給水を流入させて要素からリジェクト水を流出させる離間を形成しており、且つ要素の巻き上げ中に粘性の接着剤の線を圧縮することにより発生する力に抵抗する必要がある。プリントされた特徴物が単に規則的に離間する繰り返しのパターンの線、線分又は支柱であった場合、これらは、巻き上げ中に接着剤への力によって隣接の膜シートを供給スペースの中に変形させ、流路を閉塞させ得る。同様に、特徴物の数個のパターン及び離間が、膜の全隣接層、透過キャリア及び接着剤を変形させて特徴物の間でネスティングし得る。
【0024】
[32] 本発明の一例の実施形態は、膜フィルム及び隣接層の崩壊及び変形を防ぐ特徴物の離間及びパターンを提供することにより、スパイラル巻き要素の製造中の供給路の閉塞を防ぐことができる。また、巻き上げ中の膜シートへの追加の支持を提供してネスティングを防ぐことにより、本発明の一例の実施形態は、スパイラル巻き要素の巻き上げに用いられる標準のプロセスに変更を必要とすることなく、供給路の閉塞を防ぐことができる。
【0025】
[33] 本発明の実施形態の利益は、スパイラル巻き要素の層間の供給スペースの閉塞の低減により、流れの抵抗が低減し、これにより要素の注入口から排出口への圧力降下が低減し、濾過効率が改善されてエネルギー所要量が低減することである。
【0026】
[34] 本発明の一例の実施形態はまた、要素中のより均一な流れを促進し、不均一な流れによる潜在的な汚染を防ぐことにより、利益を提供し得る。従来の特徴物間の隣接層のネスティングによって生じ得たように、供給スペースの数個の部分が不規則に閉塞されると、不規則な流れが要素内に発生し得る。不規則な流れは、生物学的汚染及びスケール堆積を生じさせる停滞箇所を作ることで知られている。
【0027】
[35]
図1を参照すると、本発明の一例の実施形態において、隣接する特徴物間の均一な離間よりもむしろ、隣接する特徴物間の離間は、要素内を横断する流れに対して垂直方向にわずかに変化を付けたものである。この変化を付けた離間は周期的であり、設定した変化付け離間が規則的に発生し、全体にネスティングの可能性をより低くさせるより長い周期を有する。一部のスパイラル巻き要素の構造では、パターン繰り返し前の周期が少なくとも6インチ(6”)であるのが好ましく、少なくとも12インチ(12”)であるのがより好ましい。一部のスパイラル巻き要素の構造では、要素中の流れの特徴に著しく影響しないように、離間の変化量が、隣接する特徴物間の平均距離の15%未満であることが好ましい。特徴物の離間の変化付けにより、スパイラル巻き要素内の連続層間のパターンのネスティングの可能性が低減する。
【0028】
[36]
図2を参照すると、本発明の別の一例の実施形態では、スペーサ特徴物を提供する線分の配列が、相互平行位置から相互に僅かに変化をつけて各々の角度を有している。この角度の変化付けは周期的であり、設定した変化付けした角度が規則的に発生し、全体にネスティングの可能性をより低くさせるより長い周期を有する。一部のスパイラル巻き要素の構造では、パターン繰り返し前の周期が少なくとも6インチ(6”)であることが好ましく、少なくとも12インチ(12”)であることがより好ましい。一部のスパイラル巻き要素の構造では、角度の変化量は、要素中の流れの特徴に著しく影響しないように、全体のスペーサ特徴物の配列の平均角度の15%未満であることが好ましい。特徴物の角
度の変化付けにより、スパイラル巻き要素の連続的層間のパターンのネスティングの可能性が低減する。
【0029】
[37] 同様に、特徴物又は相対角度の変化付けが曲線などの他の形状で実行可能であり、又はジグザグにパターン化された特徴物もまた連続層のネスティングを防ぐために周期的に変化させた角度で配列可能である。このような変化付けの例を
図4に表す。
図4aは、特徴物毎に内角を変化させたジグザグパターンの図であり、
図4Bは、相互に非平行に配置した同種のジグザグ要素の図である。
図4Cは、特徴物毎に曲線形状を変化させた曲線状特徴物の図であり、
図4Dは、同種の形状であるが相互に非平行に配置した曲線状特徴物の図である。
図4における特徴物間の離間は一貫性をもって図示されているが、特徴物は、
図1のものと同様に、特徴物間の離間を変化させて配置することも可能である。本発明は、このような様々な特徴物の形状及び構造を意図したものであり、それぞれ、要素が巻き上げられ接着される際に隣接層上の特徴物を少なくとも部分的に支持するような特徴物を提供するものである。
【0030】
[38] 従来の押し出しメッシュスペーサを用いたスパイラル巻き要素は一般に、メッシュ繊維が非常に近接して離間していたために、繊維が、膜フィルム又は膜、透過キャリア、及び接着剤の全体の層が変形して供給スペースを閉塞させることがないため、隣接層間のネスティングに関する問題がない。典型では、最大メッシュ離間はインチあたり8本の繊維であるが、大きい要素ではインチあたり10~12本の繊維であるのがより一般的であり、より小さい要素ではより密集させた離間である。したがって、本発明により取り組む問題は、従来にない堆積離間特徴物が配置されるまで明らかでなかった。
【0031】
[39]
図3を参照すると、本発明のさらなる一例の実施形態が、従来のメッシュ供給スペーサと離間が同様であり、且つ供給流れを最小限に妨げるパターンに配列した、エンボス加工の特徴物又は堆積させた特徴物のパターンを採用している。これらの特徴物は、円形の支柱又は多角形の支柱、シェブロン、曲線状線分又は他の形状などの形状を規則的に配列したものであり、相互にずらし、流体の横断する流れの方向から2つの異なる角度に設定された線分を配列したものを含み得る。これらの角度は同一であるが方向が反対、例えば、+45°及び-45°であり(
図3A)、+/-1°から+/-45°までのいかなる角度でもあり得る(
図3A、3B)。一部のスパイラル巻き要素の構造では、このような特徴物の任意部分の最も近い隣接の特徴物への最大離間は、1インチの4分の1(0.25”)未満又はこれと同等であるのが好ましく、1インチの10分の1(0.10”)未満又はこれと同等であるのがより好ましい。別の実施形態では、特徴物は、ずれて対向する角度を付けた線分の配列を含み、特徴物間に離間する円形支柱を有する(
図3C)。このように近接して離間する特徴物は、特徴物及びこれらを取り囲む膜シートが、接着剤が膜フィルムに接触する巻き上げプロセス中の変形の影響を実質的に受けにくくなるという点で有益であり、このため、流れの制限を低減するために膜シートの他の位置でそれ程密集させず離間させたパターンが採用された時でさえも、接着剤が塗布される膜シートの外周に沿ってこれらの密集して離間するパターンを有することは有益であり得る。
【0032】
[40] 例としての実施形態ではそれぞれ、特徴物は、膜リーフのプリント面の全体にわたり連続してエンボス加工するか又は堆積し得るものであり、接着剤が塗布される領域を支持するために膜の注入口縁辺部及び排出口縁辺部に沿ってのみ、例えば1~3インチの幅で、エンボス加工するか又は堆積することも可能であり、又は接着剤が塗布される領域の全域を支持するために、膜の注入口縁辺部及び排出口縁辺部、並びに端部に沿ってのみ、例えば1~3インチの幅で、エンボス加工するか又は堆積させることも可能である。
【0033】
[41] 特徴物は、限定しないが、熱可塑性プラスチック、反応性ポリマ、ワックス、又は樹脂を含む、分離流体及び透過キャリアと適合可能な様々な材料を含み得る。また、限定
しないが、高温熱可塑性プラスチック、金属、又はセラミックを含む、分離流体と適合可能であるが透過キャリアへの直接堆積には適合可能でない材料を、適切な寸法に予め形成し、鋳造し、又は切断して、透過キャリアと適合可能な接着剤で透過キャリアの表面に接着可能である。
【0034】
[42] 本発明は、様々な例としての実施形態と関連させて説明した。上の説明は、本発明の原理の適用を単に例示したものであり、その範囲は、明細書を考慮した請求項によって定まることが理解されるものと思われる。本発明の他の変形及び変更は、当業者には明らかであると思われる。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル巻き透過膜システムであって、
中央管の周囲に渦巻き状に巻き上げられる膜であって、前記膜は、前記膜の表面に堆積された離間特徴物を有する、膜を備え、
前記離間特徴物は、不均一な離間距離で相互に離間する実質的に平行な複数の線分を含み、
各スペーサは、前記スパイラル巻きの方向とは非平行に方向付けされた長軸を含む、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項2】
請求項1に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記複数の線分は、線分の複数のグループを含み、
各グループは、隣り合う線分を含み、
第1のグループの線分は、前記第1のグループの他の線分から不均一な離間距離で離間することによって、線分のパターンを形成し、
前記グループの残りは、前記パターンの繰り返しである、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項3】
請求項2に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記第1のグループが、最初の線分から最後の線分まで計測して少なくとも6インチに及ぶ、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項4】
請求項3に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記第1のグループが、前記最初の線分から前記最後の線分まで計測して少なくとも12インチに及ぶ、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項5】
請求項2に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記離間の変化量が、隣接する離間特徴物間の平均距離の15%未満である、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項6】
スパイラル巻き透過膜システムであって、
中央管の周囲に渦巻き状に巻き上げられる膜であって、前記膜は、前記膜の表面に堆積された離間特徴物を有する、膜を備え、
前記離間特徴物が、相互に離間され、且つ不均一な角度で相互に非平行に方向付けされた複数の線分を含み、
前記線分は、相互平行位置から相互に周期的な変化をつけられた各々の角度を有する、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項7】
請求項6に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記複数の線分の第1の部分が、相互に対して不均一な角度で方向付けされてパターンを形成し、前記複数の線分の他の部分が前記パターンの繰り返しを含む、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項8】
請求項7に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記パターンが、最初の線分から最後の線分まで計測して少なくとも6インチに及ぶ、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項9】
請求項8に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記パターンが、前記最初の線分から前記最後の線分まで計測して少なくとも12インチに及ぶ、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項10】
請求項7に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記角度の変化量が、前記パターンに対する前記特徴物の平均角度の15%未満である、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項11】
スパイラル巻き透過膜システムであって、
中央管の周囲に渦巻き状に巻き上げられる膜であって、前記膜は、前記膜の表面に堆積された離間特徴物を有する、膜を備え、
前記離間特徴物が、前記離間特徴物を横断する少なくとも1つの経路に沿って定められて計測された不均一な離間距離で相互に離間する複数の曲線状セグメントを含む、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項12】
スパイラル巻き透過膜システムであって、
膜の表面に堆積された離間特徴物を有する前記膜を含み、前記離間特徴物が、前記膜の前記表面全体に配置され、前記離間特徴物が、前記膜の前記縁辺から離れた部分におけるよりも前記膜の前記縁辺の近くにおける方がより近接して離間している、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項13】
請求項12に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記膜の前記縁辺が、前記膜の前記縁辺の3インチ以内の領域として範囲を定められている、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項14】
請求項13に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記膜の前記縁辺が、前記膜の前記縁辺の1インチ以内の領域として範囲を定められている、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項15】
請求項1に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記離間特徴物が、熱可塑性プラスチック、反応性ポリマ、ワックス、又は樹脂のうち1つ以上で作られ、前記膜表面に直接堆積される、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項16】
請求項1に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記離間特徴物は、高温熱可塑性プラスチック、金属、又はセラミックのうち1つ以上で作られ、前記膜表面に接着される、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項17】
請求項6に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記離間特徴物は、熱可塑性プラスチック、反応性ポリマ、ワックス、又は樹脂のうち1つ以上で作られ、前記膜表面に直接堆積される、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項18】
請求項8に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記離間特徴物が、高温熱可塑性プラスチック、金属、又はセラミックのうち1つ以上で作られ、前記膜表面から離れて形成され、前記膜表面に接着される、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項19】
請求項11に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記離間特徴物は、熱可塑性プラスチック、反応性ポリマ、ワックス、又は樹脂のうち1つ以上で作られ、前記膜表面に直接堆積される、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項20】
請求項11に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記離間特徴物が、高温熱可塑性プラスチック、金属、又はセラミックのうち1つ以上で作られ、前記膜表面から離れて形成され、前記膜表面に接着される、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項21】
請求項1に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
隣り合う前記離間特徴物の離間は周期的に変化する、スパイラル巻き透過膜システム。
【請求項22】
請求項11に記載のスパイラル巻き透過膜システムであって、
前記曲線状セグメントは、相互平行位置から相互に周期的な変化をつけられた各々の角度を有する、スパイラル巻き透過膜システム。
【外国語明細書】