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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069550
(43)【公開日】2022-05-11
(54)【発明の名称】注入システム、シリンジ及びアダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
A61M5/145 506
A61M5/145 508
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038844
(22)【出願日】2022-03-14
(62)【分割の表示】P 2020560051の分割
【原出願日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2018229264
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518234173
【氏名又は名称】株式会社サーキュラス
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
(72)【発明者】
【氏名】吹越 由美子
(57)【要約】
【課題】フランジとアダプタとの間に隙間が生じることを防止する。
【解決手段】注入システム100は、薬液が充填されるシリンダ92と、シリンダ92から側方に突出するフランジ91と、薬液を押し出すときに、薬液が通る端部94と、端部94とは反対側に形成されたシリンジネジ部93とを有するシリンジ90と、シリンジ90を保持するためのアダプタ8であって、シリンダ92を受け入れるための受け部81と、フランジ91と当接するための規制壁84と、シリンジネジ部93と係合するアダプタネジ部83とを有するアダプタ8と、アダプタ8が取り付けられるホルダー22が設けられた注入装置2とを備え、シリンジネジ部93及びアダプタネジ部83による締め付け方向は、端部94に向かう方向に設定されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が充填されるシリンダと、前記シリンダから側方に突出するフランジと、前記薬液を押し出すときに前記薬液が通る端部と、前記端部とは反対側に形成されたシリンジネジ部とを有するシリンジと、
前記シリンジを保持するためのアダプタであって、前記シリンダを受け入れるための受け部と、前記フランジと当接するための規制壁と、前記シリンジネジ部と係合するアダプタネジ部とを有するアダプタと、
前記アダプタが取り付けられるホルダーが設けられた注入装置とを備え、
前記シリンジネジ部及び前記アダプタネジ部による締め付け方向は、前記端部に向かう方向に設定されている、注入システム。
【請求項2】
前記フランジの前記端部側の面に形成された凸部をさらに備える、請求項1に記載の注入システム。
【請求項3】
前記凸部を受け入れるように、前記規制壁に形成された凹部をさらに備える、請求項2に記載の注入システム。
【請求項4】
前記規制壁に形成された湾曲溝をさらに備え、
前記凹部は、前記湾曲溝の延在方向において前記湾曲溝から離間した位置に形成されている、請求項3に記載の注入システム。
【請求項5】
前記湾曲溝は、前記フランジの外形に沿って湾曲している、請求項4に記載の注入システム。
【請求項6】
薬液が充填されるシリンダと、
前記シリンダから側方に突出するフランジと、
前記薬液を押し出すときに、前記薬液が通る端部と、
前記端部とは反対側に形成されたシリンジネジ部とを備え、
前記シリンジネジ部による締め付け方向は、前記端部に向かう方向に設定されている、シリンジ。
【請求項7】
前記フランジの前記端部側の面に形成された凸部をさらに備える、請求項6に記載のシリンジ。
【請求項8】
薬液が充填されるシリンジを保持するためのアダプタであって、
前記シリンジのシリンダを受け入れるための受け部と、
前記シリンジのフランジと当接するための規制壁と、
前記受け部とは反対側に形成されたアダプタネジ部とを備え、
前記アダプタネジ部による締め付け方向は、前記受け部に向かう方向に設定されている、アダプタ。
【請求項9】
前記規制壁に形成された凹部をさらに備える、請求項8に記載のアダプタ。
【請求項10】
前記規制壁に形成された湾曲溝をさらに備え、
前記凹部は、前記湾曲溝の延在方向において前記湾曲溝から離間した位置に形成されている、請求項9に記載のアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液が充填されるシリンジ、当該シリンジを保持するアダプタ、及び当該シリンジ及びアダプタを備える注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンジを薬液の自動注入装置の注入ヘッドに装着するためのシリンダホルダ(アダプタ)が開示されている。このアダプタには、シリンジのフランジを保持するフランジ挿入溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-38644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフランジ挿入溝は、シリンジのフランジをスムーズにはめ込むためにフランジよりも厚く形成されている。すなわち、このフランジ挿入溝の開口幅は、フランジの厚み方向の長さよりも長く設定されている。したがって、アダプタに搭載されたフランジとフランジ挿入溝の内面との間には、わずかに隙間が存在する。そのため、薬液を注入する際にシリンジがわずかに前進して、シリンジのピストンの移動距離に誤差が生じる。これにより、注入ヘッドの押圧部の移動距離からピストンの移動距離を正確に算出することが阻害されてしまう。その結果、薬液の注入量の算出精度が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一例としての注入システムは、薬液が充填されるシリンダと、前記シリンダから側方に突出するフランジと、前記薬液を押し出すときに前記薬液が通る端部と、前記端部とは反対側に形成されたシリンジネジ部とを有するシリンジと、前記シリンジを保持するためのアダプタであって、前記シリンダを受け入れるための受け部と、前記フランジと当接するための規制壁と、前記シリンジネジ部と係合するアダプタネジ部とを有するアダプタと、前記アダプタが取り付けられるホルダーが設けられた注入装置とを備え、前記シリンジネジ部及び前記アダプタネジ部による締め付け方向は、前記端部に向かう方向に設定されていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の他の例としてのシリンジは、薬液が充填されるシリンダと、前記シリンダから側方に突出するフランジと、前記薬液を押し出すときに、前記薬液が通る端部と、前記端部とは反対側に形成されたシリンジネジ部とを備え、前記シリンジネジ部による締め付け方向は、前記端部に向かう方向に設定されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の例としてのアダプタは、薬液が充填されるシリンジを保持するためのアダプタであって、前記シリンジのシリンダを受け入れるための受け部と、前記シリンジのフランジと当接するための規制壁と、前記受け部とは反対側に形成されたアダプタネジ部とを備え、前記アダプタネジ部による締め付け方向は、前記受け部に向かう方向に設定されていることを特徴とする。
【0008】
これにより、アダプタに搭載されたシリンジのフランジは、アダプタの規制壁と密接する。そのため、薬液を注入する際にシリンジが前進することを防止できる。
【0009】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】注入ヘッドの概略斜視図である。
図2】注入システムの概略ブロック図である。
図3】アダプタの概略斜視図である。
図4】シリンジの概略斜視図である。
図5図5Aは移動前のシリンジの概略後面図であり、図5Bは移動後のシリンジの概略後面図である。
図6】アダプタに取り付けたシリンジの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、上下とは重力方向における上方向と下方向とにそれぞれ対応する。また、前側は注入ヘッド2に対してシリンジ90の端部94が位置する側に対応し、後側は前側とは反対側に対応する。
【0012】
[実施形態]
図1は、薬液を注入する注入装置(注入ヘッド)2の概略斜視図であり、図2は注入システム100の概略ブロック図である。図1及び図2に示すように、薬液を注入するための注入システム100は、薬液が充填されるシリンジ90と、シリンジ90が搭載される注入ヘッド2と、注入ヘッド2に設けられ、シリンジ90に挿入されるピストン99(図6)の後端を押す押圧部4とを備える。また、注入システム100は、シリンジ90を保持するためのアダプタ8と、アダプタ8が取り付けられるホルダー22(図1)と、注入ヘッド2を制御する制御部50(図2)とを備える。
【0013】
押圧部4は、シリンジ90内の薬液を送り出すために、制御部50によってシリンジ90のピストン99の後端を押圧して前進するように制御される。具体的に、制御部50は、モーター3が正転するときに押圧部4が前進し且つモーター3が逆転するときに押圧部4が後進するように、注入ヘッド2が有するモーター3を制御する。また、注入ヘッド2は、シリンジ90を注入ヘッド2に搭載するためのアダプタ8を備える。このアダプタ8は、注入ヘッド2のホルダー22に取り付けられる。
【0014】
また、注入システム100は、撮像装置(不図示)に有線又は無線接続されている。そして、薬液の注入時及び画像の撮影時には、撮像装置と注入システム100との間で各種データが送受信される。このような撮像装置としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、及び血管撮像装置がある。
【0015】
さらに、注入システム100は、薬液の注入状況が表示される表示部としてのタッチパネルを有するコンソール10と、制御部50及び電源55を有する制御装置(不図示)とを備えている。このコンソール10と注入ヘッド2とは、互いに有線接続又は無線接続することができる。また、電源55は、注入ヘッド2又はコンソール10に設けることもでき、独立した電源55を別途設けることもできる。さらに、電源55はバッテリーに代えることもできる。
【0016】
さらに、ハンドスイッチ等の遠隔操作装置が、コンソール10に有線又は無線接続されてもよい。この遠隔操作装置により、薬液注入をスタート又はストップさせることもできる。なお、注入ヘッド2と制御装置は、キャスタースタンド(不図示)と一体的に構成できる。代替的に、注入ヘッド2と制御装置をばらばらに設け、キャスタースタンドに搭載することもできる。
【0017】
制御装置には、動作パターン(注入プロトコル)のデータ、及び薬液のデータが予め記憶されている。患者に薬液を注入する場合、オペレーターは、コンソール10のタッチパネルを操作して、注入速度、注入量、注入時間、体重、身長、体表面積、心拍数、及び心拍出量などの患者の身体的データと、薬液の種類のデータとを入力する。そして、制御装置は、入力されたデータと予め記憶されているデータに応じて、最適な注入条件を算出する。その後、制御装置は、算出された注入条件に基づいて、患者に注入する薬液の量及び注入プロトコルを決定する。
【0018】
さらに、制御装置は、薬液の量及び注入プロトコルを決定すると、所定のデータ又はグラフをコンソール10のタッチパネル又は注入ヘッド2のヘッドディスプレイに表示させる。これにより、オペレーターは、表示されたデータ又はグラフを確認することができる。動作パターン(注入プロトコル)のデータ及び薬液のデータは、外部の記憶媒体から入力することもできる。また、制御装置の制御部50は、モーター3に接続されており、モーター3にはエンコーダー39が接続されている。そして、エンコーダー39は、モーター3の回転速度に対応する周波数のパルス信号を制御部50に送信している。
【0019】
図1に示す押圧部4は、不図示の駆動機構を有する。駆動機構は、モーター3のシャフトに接続された伝達機構と、伝達機構に接続されたボールネジ軸と、ボールネジ軸に取り付けられたボールネジナットと、ボールネジナットに接続されたアクチュエーターとを備える。また、伝達機構は、シャフトに接続されたピニオンギアと、ボールネジ軸に接続されたスクリューギアとを有している。そして、伝達機構は、モーター3からの回転をボールネジ軸に伝達する。そのため、モーター3のシャフトの回転は、ピニオンギア及びスクリューギアを介してボールネジ軸に伝達される。これにより、ボールネジ軸は、伝達された回転に従って回転する。そして、ボールネジナットは、ボールネジ軸の回転に伴い前進方向又は後進方向に摺動する。このボールネジナットの摺動に伴い、押圧部4の前端部分が前進又は後進する。
【0020】
シリンジ90には、シリンジ90内において摺動可能であるピストン99が取り付けられる。そして、ピストン99の後端が押圧部4に当接した状態でモーター3が正転すると、押圧部4はピストン99を前進方向に押す。そして、ピストン99が前進すると、シリンジ90内の薬液が端部94(図4)を通って押し出され、端部94に接続される延長チューブを介して患者の体内に注入される。このとき、制御部50は、エンコーダー39から送信されるパルス信号に基づいて、押圧部4の移動距離を算出する。そして、制御部50は、押圧部4の移動距離に基づいて、薬液の注入量を算出することができる。また、モーター3が後転すると、押圧部4がピストン99を後退方向に引くことになる。
【0021】
薬液が充填されたシリンジ90は、プレフィルシリンジであってもよい。また、薬液は、手動でシリンジ90に充填されてもよく、注入システム100又は充填器によってシリンジ90に充填されてもよい。さらに、シリンジ90には、RFID又はバーコード等のデーターキャリアを設けることができる。このデーターキャリアには、充填された薬液の情報が記録されている。そして、注入システム100は、注入ヘッド2を介してデーターキャリアから記録された情報を読み取り、薬液の注入量を制御することができる。例えば、制御装置は、読み取った薬液の情報(ヨード量)に基づいて、体重当たりの最適な注入量を計算してコンソール10のタッチパネルに表示させることができる。
【0022】
薬液を注入する場合、オペレーターは注入システム100の電源をオンにし、シリンジ90を注入ヘッド2に搭載する。その後、オペレーターは、タッチパネルに表示された注入ボタンを押す。また、注入ヘッド2に操作パネルが設けられている場合には、オペレーターはこの操作パネルの注入ボタンを押すこともできる。さらに、オペレーターは、ハンドスイッチのボタンを押して注入を開始することもできる。代替的に、オペレーターは、シリンジ90を搭載した後に、注入システム100の電源をオンしてもよい。
【0023】
注入ボタンが押されると、制御部50はモーター3に駆動電圧として正転信号を送る。この正転信号に応じて、モーター3のシャフトが正転すると、エンコーダー39は回転を検出して制御装置にパルス信号を送る。その後、注入が終了しシリンジ90を取り外す場合、ピストン99を後進させるために、制御部50はモーター3に駆動電圧として逆転信号を送る。この逆転信号に応じてモーター3のシャフトが逆転する。
【0024】
制御部50は記憶部としてのメモリ部53を有し、メモリ部53には予め注入プロトコルが記憶されている。薬液の注入は、この注入プロトコルに従って自動的に行われる。この注入プロトコルには、例えば、注入時間、注入速度、注入量及び注入圧力リミット値が設定されている。この注入プロトコルの内容はコンソール10に表示されるので、オペレーターはコンソール10を見て注入プロトコルの内容を確認できる。また、制御部50は、タイマー(不図示)を利用して注入時間を制御すると共に、薬液の注入圧力等の注入状況を監視している。なお、制御装置に注入プロトコルが記憶された記憶媒体を接続して、当該記憶媒体から読み込んだ注入プロトコルに従って薬液を注入してもよい。
【0025】
図2に示すように、制御部50はモーター3を制御し、電源55は制御部50及び注入ヘッド2に電力を供給する。また、制御部50のメインCPU(Central Processing Unit)51は、コンソール10と信号の送受信を行う。このメインCPU51は、ワンチップマイコンからなり、予めメモリ部53に記憶されたプログラムに応じて、モーター3の制御、所定の演算、制御及び判別等の処理動作を実行する。メモリ部53は、メインCPU51が動作するためのシステムワークメモリであるRAM(Random Access Memory)、プログラム若しくはシステムソフトウェアを格納するROM(Read Only Memory)、又はハードディスクドライブを備える。
【0026】
メインCPU51は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)56との間で信号の送受信を行う。このFPGA56は、ドライブ回路52に接続され、ドライブ回路52は、モーター3に接続されている。そして、モーター3のローターには、モーター3の回転速度に対応するパルス信号を出力するエンコーダー39が接続されている。このエンコーダー39は、FPGA56にパルス信号を出力する。さらに、メインCPU51は、電源制御信号を電源55に送信し、電源55が供給する電力を制御する。なお、モーター3と制御部50とが一体的に設けられた駆動装置を注入システム100が備え、この駆動装置によって押圧部4を駆動することもできる。また、制御部50は、コンソール10と一体的に設けることもできる。
【0027】
[アダプタ及びシリンジ]
図1のホルダー22には、シリンジ90を注入ヘッド2に搭載するためのアダプタ8が取り付けられる。このアダプタ8は、ホルダー22に上方から挿入される。シリンジ90は、製造会社毎に異なる外形を有することがある。そのため、複数種類の外形のシリンジ90を注入ヘッド2に搭載させるために、アダプタ8が用いられる。このアダプタ8は、アダプタ8の外形と相補的な形を有するホルダー22に取り付けられる。そして、取り付けられたアダプタ8にシリンジ90が搭載されることにより、シリンジ90が注入ヘッド2に搭載される。シリンジ90の外形に応じて異なるアダプタ8を用いることにより、複数種類のシリンジ90を注入ヘッド2に搭載することができる。
【0028】
以下、図3図6を参照して、アダプタ8及びシリンジ90について説明する。図3は上方後側から見たアダプタ8の概略斜視図であり、図4は側方後側から見たシリンジ90の概略斜視図である。また、図5A図5Bは、アダプタ8へのシリンジ90の取り付けを説明する概略図である。説明の便宜上、回転するシリンジ90は、図5A図5Bにおいて点線で図示している。図6は、アダプタ8に取り付けたシリンジ90を前側から見た場合の概略斜視図である。
【0029】
図3に示すアダプタ8は、シリンジ90のシリンダ92を受け入れる湾曲した受け部81と、略U字状に湾曲し且つシリンジ90のフランジ91が挿入される溝82とを有する。また、アダプタ8の後部、すなわち受け部81とは反対側には、アダプタネジ部(ネジ溝)である螺旋溝83が形成されている。さらに、アダプタ8は、フランジ91と当接してシリンジ90の移動を規制する規制壁84と、溝82の内面、すなわち規制壁84に形成された一対の湾曲溝85A,85Bと一対の凹部86A,86Bとを有している。なお、図3においては、凹部86Aのみが図示されている。
【0030】
図4に示すシリンジ90は、薬液が充填されるシリンダ92と、シリンダ92から側方に突出するフランジ91とを有する。また、シリンジ90は薬液を押し出すときに薬液が通る端部94を備えており、端部94とは反対側(シリンジ90の後部)にはシリンジネジ部(ネジ山)である螺旋条93が形成されている。この螺旋条93は、螺旋溝83に係合される。さらに、シリンジ90は、フランジ91の前面、すなわち端部94側の面に形成された凸部95A,95Bを有している(図4においては、凸部95Aのみが図示されている)。この凸部95Aは、フランジ91の前面に形成されているが、説明の便宜上点線で示している。また、シリンジ90は、シリンダ92に挿入されたピストン99(図6)を備えている。
【0031】
シリンジ90を注入ヘッド2に搭載する場合、図5Aに示すように、移動前(前進前)のシリンジ90は、フランジ91の長手方向がアダプタ8の長手方向に直交するようにアダプタ8の溝82に挿入される。その後、オペレーターは、シリンジ90を後側から見た場合に、反時計回り(図5A中矢印D方向)にシリンジ90を90°回転させてアダプタ8にねじ込む。すなわち、締め付け方向(シリンジ90の移動方向)において、反時計回りにシリンジ90を回転させる。これにより、シリンジ90はアダプタ8にねじ込まれながら、前方向に移動する。代替的に、シリンジ90を90°よりも大きい角度(例えば270°)で回転させてもよい。
【0032】
このとき、フランジ91の前面に形成された凸部95Aは、溝82の前側(規制壁84)に形成された湾曲溝85Aに受け入れられる。そして、凸部95Aは、湾曲溝85A内を移動した後に、凹部86Aまで規制壁84上を摺動する。その後、凸部95Aは、溝82の内の前側に形成された凹部86A内に受け入れられる。ここで、湾曲溝85Aは、フランジ91の外形に沿って湾曲している。そして、凹部86Aは、湾曲溝85Aの延在方向において湾曲溝85Aから離間した位置に形成されている。つまり、凹部86Aは、湾曲溝85Aを含む円弧の上に位置している。さらに、湾曲溝85Aと凹部86Aとの間には段差が存在する。そのため、当該段差を凸部95Aが乗り越えた際に、凸部95Aが凹部86Aの内面と衝突し衝突音が生じ、又はオペレーターはクリック感を得ることができる。この衝突音又はクリック感を確認することにより、オペレーターはシリンジ90が正常に取り付けられたことを確認できる。
【0033】
同様に、フランジ91の前面に形成された凸部95Bは、溝82の前側(規制壁84)に形成された湾曲溝85Bに受け入れられる。そして、凸部95Bは、湾曲溝85B内を移動した後に、凹部86Bまで溝82の内面上を摺動する。その後、凸部95Bは、溝82の内の前側に形成された凹部86B内に侵入する。ここで、湾曲溝85Bは、フランジ91の外形に沿って湾曲している。そして、凹部86Bは、湾曲溝85Bの延在方向において湾曲溝85Bから離間した位置に形成されている。つまり、凹部86Bは、湾曲溝85Bを含む円弧の上に位置している。さらに、湾曲溝85Bと凹部86Bとの間には段差が存在する。そのため、当該段差を凸部95Bが乗り越えた際に、凸部95Bが凹部86Bの内面と衝突し衝突音が生じ、又はオペレーターはクリック感を得ることができる。この衝突音又はクリック感を確認することにより、オペレーターはシリンジ90が正常に取り付けられたことを確認できる。
【0034】
シリンジ90の移動及び回転は、フランジ91の前面が規制壁84に当接することによって規制される。その結果、シリンジ90が搭載された状態において、フランジ91は、規制壁84に当接する。そして、図5Bに示すように、移動後(前進後)のシリンジ90は、フランジ91の長手方向がアダプタ8の長手方向に平行となるようにアダプタ8に保持される。また、フランジ91の凸部95A,95Bは、凹部86A,86B内に位置している。
【0035】
シリンジ90は、反時計回りにシリンジ90を回転させることによって、締め付け方向に移動する。すなわち、シリンジ90の螺旋条93は、シリンジ90の締め付け方向において左回転する螺旋状の突条である。そして、シリンジ90の螺旋条93と、アダプタ8の螺旋溝83とは、互いに相補的な形状を有している。そのため、螺旋溝83は、シリンジ90の締め付け方向において左回転する螺旋状の溝である。
【0036】
代替的に、時計回りにシリンジ90を回転させることによって、シリンジ90を移動させることもできる。この場合、シリンジ90の螺旋条93は、シリンジ90の締め付け方向において右回転する螺旋状の突条である。そして、アダプタ8の螺旋溝83は、シリンジ90の締め付け方向において右回転する螺旋状の溝である。
【0037】
シリンジ90を注入ヘッド2から取り外す場合には、搭載時とは逆に、時計回りにシリンジ90を90°回転させる。そして、図5Aに示すように、シリンジ90は、フランジ91の長手方向がアダプタ8の長手方向に直交するように、アダプタ8の溝82から抜き出される。
【0038】
上記のように、本実施形態の締め付け方向(螺進方向)は、前方に設定されている。具体的に、アダプタ8の螺旋溝83による締め付け方向は、シリンダ92が載置される受け部81に向かう方向に設定されている。また、シリンジ90の螺旋条93による締め付け方向は、シリンジ90の端部94に向かう方向に設定されている。そのため、シリンジ90を回転させると、シリンジ90のフランジ91の前面が、アダプタ8の螺旋溝83と受け部81との間に位置する規制壁84に押し付けられる。これにより、シリンジ90がアダプタ8に固定され、シリンジ90のガタつきが防止される。
【0039】
図6に、アダプタ8に取り付けられたシリンジ90に示す。この図6に示すように、前進後のシリンジ90のシリンダ92は、アダプタ8の受け部81から前方に突出している。また、シリンジ90のピストン99は、アダプタ8から後方に突出している。このピストン99の前端はシリンダ92内に挿入されており、ピストン99の後端は押圧部4(図1)によって押圧される。すなわち、シリンジ90がアダプタ8に取り付けられると、ピストン99は、シリンジ90のシリンダ92と押圧部4との間に位置する。押圧部4がピストン99の後端を押すと、ピストン99の前端がシリンダ92内を前進する。その結果、シリンジ90の端部94から、ピストン99に押された薬液が排出される。
【0040】
本実施形態に係るシリンジ90及びアダプタ8によれば、アダプタ8に搭載されたシリンジ90のフランジ91がアダプタ8の規制壁84と密接する。そのため、フランジ91とアダプタ8との間に隙間が生じることを防止できる。これにより、薬液を注入する際にシリンジ90がわずかに前進することを防止できる。その結果、注入ヘッド2の押圧部4の移動距離、及び薬液の注入量を正確に算出できる。さらに、アダプタ8に取り付けられたシリンジ90のガタつきも防止できる。また、凸部95A,Bが、凹部86A,Bに受け入れられることによって、薬液の注入中にシリンジ90が浮き上がることを抑制できる。
【0041】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上記各実施形態及び各変形例は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0042】
例えば、アダプタ8は、注入ヘッド2と一体的に構成されていてもよく、注入ヘッド2から取外し不能であってもよい。また、フランジ91に一対の凹部を形成し、アダプタ8に当該一対の凹部と対応する一対の凸部を形成してもよい。さらに、凸部95A,Bの一方を省略してもよい。すなわち、一つの凹部、一つの湾曲溝、及び一つの凸部が形成されていてもよい。この場合、一対の湾曲溝85A,Bと一対の凹部86A,Bのうち、省略された凸部に対応する湾曲溝と凹部も省略される。さらに、三つ以上の凹部、三つ以上の湾曲溝、及び三つ以上の凸部が形成されてもよい。また、フランジ91に凸部及び凹部を形成し、アダプタ8に当該凸部及び凹部と対応する凹部及び凸部を形成してもよい。この場合、アダプタ8に、フランジ91の凸部に対応する湾曲溝をさらに形成してもよい。凸部に対応する湾曲溝及び凹部とは、両方が形成されてもよく、湾曲溝及び凹部の一方が省略されてもよい。
【0043】
さらに、アダプタ8は、シリンジ90の少なくとも一部、特にフランジ91の少なくとも一部と嵌合する段差部を有していてもよい。そして、アダプタ8にシリンジ90を搭載した後に、シリンジ90を回転させると、段差部とシリンジ90の少なくとも一部とが嵌合する位置において、シリンジ90が固定される。これにより、搭載したシリンジ90を安定させることができる。また、オペレーターは、嵌合する際にクリック感を得ることができ、正しく装着されたことを認識できる。一例として、段差部は、フランジ91が挿入される溝82、又は当該溝82の前側(規制壁84)に形成された凹部若しくは凸部によって構成される。
【0044】
また、アダプタネジ部として、ネジ溝に代えてネジ山を形成するとともに、シリンジネジ部として、ネジ山に代えてネジ溝を形成してもよい。さらに、アダプタ8は、受け部81を有する前部と、当該前部とは別体であり且つアダプタネジ部が形成されている後部とを有していてもよい。この場合、湾曲溝85A,85Bと、凹部86A,86Bとは、前部の後端面に形成できる。さらに、アダプタ8の前部を、アダプタ8の後部よりも硬い材料で形成してもよい。これにより、アダプタ8の前部が、シリンジ90の凸部95A,95Bによって削られることを抑制できる。
【0045】
この出願は2018年12月6日に出願された日本国特許出願第2018-229264号からの優先権を主張し、その全内容を引用してこの出願の一部とする。
【符号の説明】
【0046】
2:注入装置、8:アダプタ、22:ホルダー、81:受け部、83:螺旋溝、84:規制壁、90:シリンジ、91:フランジ、92:シリンダ、93:螺旋条、94:端部、100:注入システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6