(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069704
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】ドアボトム装置
(51)【国際特許分類】
E06B 7/18 20060101AFI20220502BHJP
E06B 7/21 20060101ALI20220502BHJP
E06B 7/215 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
E06B7/18 D
E06B7/21
E06B7/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178499
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000130639
【氏名又は名称】株式会社サヌキ
(74)【代理人】
【識別番号】100084098
【弁理士】
【氏名又は名称】浅谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】柳原 彰
【テーマコード(参考)】
2E036
【Fターム(参考)】
2E036AA02
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EB02
2E036FA02
2E036FA04
2E036FA06
2E036FA09
2E036FB02
2E036GA02
2E036HB11
2E036HB14
2E036HC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パッキンの昇降のタイミングが適切で、床面に傷をつける虞れがなく、扉の開閉がスムーズで、磁力による吸引でパッキンが昇降するため復帰バネや縦枠などの損傷の虞れがないドアボトム装置を提供する。
【解決手段】扉Aに固定されるケース体1と、ケース体1内に配備され復帰バネ5で吊元縦枠E方向へ付勢される水平動可能なスライドプレート2と、直交部31がケース体1に回動可能に軸承され、直交部に連続する長片部32にパッキン6を取付けると共に、短片部33がスライドプレート2に連繋配備される可動アーム3と、スライドプレート2に備えるマグネット41に対応して戸先縦枠Bに固定磁石42を備え、扉Aが閉じたときスライドプレート2を吸引する吸引手段4とから成る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に固定されるケース体と、ケース体に配備され復帰バネで吊元縦枠方向へ付勢される水平動可能なスライドプレートと、直交部がケース体に回動可能に配備され、直交部に連続する長片部にパッキンを取り付けると共に、短片部がスライドプレートに連繋配備される可動アームと、スライドプレートに備えるマグネットに対応して戸先縦枠に固定磁石を備え、扉が閉じたときスライドプレートを吸引する吸引手段とからなることを特徴とするドアボトム装置。
【請求項2】
前記スライドプレートに窓孔を開口した矩形平板部を設け、この窓孔に嵌合する可動アームの短片部の突軸部をバネ付勢して、扉が開いた状態において長片部を上向き状に保持させることを特徴とする請求項1記載のドアボトム装置。
【請求項3】
前記スライドプレートは、扉が開いた状態において先端のマグネットの磁極面がケース体の開口端面に保持され、扉が閉じたとき固定磁石との対向間が接近して固定磁石に吸引されることを特徴とする請求項1記載のドアボトム装置。
【請求項4】
前記スライドプレートが吸引手段の吸引により戸先縦枠側へ移動するとき、可動アームが回動して長片部が下向き状に変位し、パッキンが降下することを特徴とする請求項1記載のドアボトム装置。
【請求項5】
前記パッキンは、左右2分割し、各パッキンを対応する個別の可動アームで昇降動させることを特徴とする請求項1記載のドアボトム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扉例えば開き戸や引戸などに使用するドアボトム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、開き戸に従来のドアボトム装置を取り付けた状態を示す説明図。
このドアボトム装置は、扉Aに固定されたケース体78と、ケース体78内に配備される板バネ71と、常態において、板バネ71の曲率半径を大きく設定し、扉が閉じた状態で板バネ71の曲率半径を小さく変化させる曲率変化手段と、この曲率変化手段に連繋しケース体78に対し出没する気密パッキン77を備えている。
【0003】
曲率変化手段は、板バネ71の一端をケース体78内壁に固定するバネ固定板73と、板バネ71の他端を止着する取付板72と、この取付板72に復帰パネ74を介して配備され、常態において扉A外へ突出する出没子75とから構成される。
【0004】
扉Aが開いている状態では、板バネ71の湾曲度合いは緩やかで、支持体76を介して板バネ71に取付られる気密パッキン(パッキン枠77a)77と、床面Dとの間に隙間がある。
図5に示すとおり、扉Aを閉じると、出没子75が縦枠(吊元縦枠)Eに当たりケース体78へ押し込まれる。
【0005】
これにより、復帰パネ74が圧縮され、取付板72が戸先方向へ動き、取付板72と固定板73との距離が縮まる。この結果、板バネ71の曲率半径が小さくなり(湾曲程度が大きくなり)、一体の気密パッキン(パッキン枠77a)77が降下し、床面Dとの間の隙間を閉塞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
出没子の出没で気密パッキンを昇降させるドアボトム装置では、扉が閉まりきる手前(例えば、扉開き角度20度乃至30度程度)から出没子を押し込む。このため、気密バッキンが床面に接触しながら扉が閉じる。従って、床面に擦り傷が付いたり、扉の開閉が重くなる不利がある。
【0008】
また、扉を誤って勢いよく閉じたり、風圧など意に反して扉が強く閉じられた場合など、出没子との衝突で縦枠を傷つける許かりでなく、出没子自体の毀損や出没子に連繋する復帰バネが損傷する等の欠点がある。
【0009】
つまり、気密パッキンの昇降を担う曲率変化手段が不安定な許かりでなく、吊り式引き戸等では出没子の反発力で扉が開いてしまう欠点や、出没子の反発力と気密パッキンの摩擦力でソフトクローザーを併用し得ない等の不利がある。
【0010】
この発明は、以上のような課題を解消させ、パッキンの昇降のタイミングが適切で、床面に傷をつける虞れがなく、扉の開閉がスムーズで、しかも磁力による吸引でパッキンが昇降するため、復帰バネや縦枠などの損傷のおそれがないドアボトム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成させるために、この発明のドアボトム装置では,次のような構成としている。ドアボトム装置は、扉Aに固定されるケース体1と、ケース体1内に配備され復帰バネ5で吊元縦枠E方向へ付勢される水平動可能なスライドプレート2と、直交部31がケース体1に回動可能に軸承され、直交部に連続する長片部32にパッキン6を取りつけると共に、短片部33がスライドプレート2に連繋配備される可動アーム3と、スライドプレート2に備えるマグネット41に対応して戸先縦枠Bに固定磁石42を備え、扉Aが閉じたときスライドプレート2を吸引する吸引手段4とから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有するドアボトム装置では、吸引手段は扉が閉じたときに作動してパッキンを降下させることとしたから、扉の開閉途中においてパッキンは動作しない。従って、パッキンによる床面への擦り傷が発生する虞れがなく、且つスムーズな扉の開閉を実現し得る。
【0013】
更に、スライドプレート先端のマグネットを戸先縦枠の固定磁石で吸引することで、スライドプレート及び可動アームを連繋動作させてパッキンを降下させることとしたから、縦枠の損傷やスライドプレートを付勢する復帰バネを損傷させる虞れがなく、構造の安定性が確保される。
【0014】
また、パッキンの昇降を担う吸引手段の安定性が高い許りでなく、吊り式引き戸等では出没子の反発力で扉が開いてしまう欠点や、出没子の反発力と気密パッキンの摩擦力でソフトクローザーを併用し得ない等の不利が解消される等の優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明に係るドアボトム装置の具体的な実施の形態を説明する。
ドアボトム装置は、
図1で示すように扉Aに固定されるケース体1と、ケース体1内に配備され復帰バネ5で吊元縦枠E方向へ付勢される水平動可能なスライドプレート2と、直交部31がケース体1に回動可能に軸承され、直交部に連続する長片部32にパッキン6を取りつけると共に、短片部33がスライドプレート2に連繋配備される可動アーム3と、スライドプレート2のマグネット41に対応して固定磁石42を戸先縦枠Bに配備する吸引手段4とから成る。
【0016】
このケース体1は、プラスチック、例えば ABS樹脂材で天板1aと両側板1b、1cとから成る両端面開口1dの断面コ字状に成型される。
図1では、ケース体1は扉Aの底面に設けた戸先側の端面が開口する角型溝に埋設状に配備される。尚、
図4ではケース体1は扉Aの下部外面(床面に近い高さ位置)に貼設した例を示している。
【0017】
図2は、ドアボトム装置の要部を示す拡大斜視図で、ケース体1内のスライドプレート2と可動アーム3とパッキン6の関係を示している。
ケース体1の奥側の側板1cには、内方向へ軸受け筒11を突設し、後述する可動アーム3の中央直交部31を軸12止めする。更に、この側板1cの内面には後述するスライドプレート2の水平移動をガイドする上片13aと下片13bから成るガイドバ-13を設けている。
【0018】
上記可動アーム3は、長片部32と短片部33とが直交部31を介して連続するL字状のプラスチック製平板で、直交部31は円筒体で大径筒部31aと小径筒部31bが段状に連続している。この小径筒部31b端面が、ケース体1の軸受け筒11の端面11bと接面するとき、大径筒部31a、小径筒部31b、軸受け筒11の軸穴11aが連通する。
【0019】
この状態で、軸12を大径筒部31a側から嵌入させ、軸先端部12bを軸穴11aに嵌合するとき、軸頭部12aが大径筒部31aに内嵌して、可動アーム3がケース体(側板1c内面)1に回動可能に取付けられる。実施の形態では、可動アーム3は、適当間隔を開いて2つ配備している(
図1)。また、
図3に示すようにパッキン取付け枠61或いは気密パッキン部62を含むパッキン6全体を左右2分割し、それぞれ個別の可動アーム3で昇降させることで、昇降動作の精度を高め得る。
【0020】
また、この可動アーム3の長片部32の先端面内には、取付用孔32aを開口し、後述するパッキン6を取付ける。また、可動アーム3の短片部33の先端部には、小径の突軸部33aを内向きに突設し、後述するスライドプレート2に連繋させている。
【0021】
上記スライドプレート2は、プラスチック製の長尺な矩形平板で、裏面側が本体ケース1の側板1cに滑動するようにガイドバ-(上・下片13a、13b)13で支承される。スライドプレート2は、復帰バネ5によって常態において、吊元縦枠E側へ付勢され、スライドプレート2の先端のマグネット41は、ケース体1の開口端面1dに定位している。
【0022】
スライドプレート2には、面内に窓孔22を開口した矩形平板部21を側板1b側へ突設している。この窓孔22は、基端側が垂直壁22aで、先端側が湾曲壁22bに形成されている。バネ23の一端を垂直壁22aに止着し、バネ23の他端を可動アーム3の前記突軸部33aに止着している。突軸部33aはバネ23で湾曲壁22bに押圧され、常態において長片部32の上向き状(仰角状)を保持する。
【0023】
前記パッキン6は、扉(ケース体1)Aと略同様な幅を有するプラスチック製取付けプレート61と、この取付けプレート61の下端に連続するゴム製の気密パッキン部62とから成る。取付けプレート61の上辺部には、取付用軸部61aが内向きに突設され、前記可動アーム3の取付用孔32aに嵌着して吊り下げ状に取付ける。
【0024】
前記吸引手段4は、
図1で示すように、スライドプレート2の先端の樹脂枠部内のマグネット41と、戸先縦枠Bに設けられる固定磁石42とで構成される。
扉Aが開いた状態で、スライドプレート2先端のマグネット41の磁極面は、ケース体1の開口端面1dに略面一に揃っている。
【0025】
扉Aが閉じた状態でマグネット(磁極N極面)41と固定磁石(磁極S極面)42が近接対応し且つ吸引動作する。
図1では、マグネット(N極面)41に対応して、固定磁石42は戸先縦枠Bに凹部42aを設けて、磁石42面(S極面)を縦枠B面と面一状に揃えて配備している。また、
図4の例では扉A外面のケース体1に対応して、固定磁石42は戸先縦枠Bの戸当りCに貼設している。
【0026】
マグネット41及び固定磁石42は、フェライト磁石やネオジム磁石などが使用される。実施の形態では、磁力が3800G(380mT)で、形状が22mm×5mm×4mmの永久磁石(ネオジム磁石)を使用している。つまり、スライドプレート2を吸引し、且つ子供が比較的容易に吸着を引き離せる程度の磁力強さのものが使用される。
【0027】
このような構成を有するドアボトム装置は、
図1で示すように、扉Aが少し開いた状態では、スライドプレート2は復帰バネ5で引っ張られて、先端のマグネット41端面はケース体1の開口端面1dに面一状に揃っている。
ここにおいて、マグネット41と固定磁石42とは少し間隔が開いており、磁力は作用せずスライドプレート2は移動しない。
【0028】
この状態において、可動アーム3の短片部33の突軸部33aはバネ23で先端方向へ付勢され、長片部32は上向き状に保持されている。パッキン(気密パッキン部62)6は、ケース体1内に引き上げ状に仕舞い込まれている。従って、扉Aが完全に閉まり切るまでの間、パッキン6は動作せず扉Aの開閉はスムーズに行われる。
【0029】
扉Aを完全に閉じると、
図3で示すように、対応するマグネット41と固定磁石42との間隔が狭まり、近接して互いに引き合う。この磁力でスライドプレート2が復帰バネ5に抗して前進し、吸引されるマグネット41の端面はケース体1開口端1dより突出する。
【0030】
ここにおいて、可動アーム3が回動し長片部32が下降することで、連繋するパッキン6が降下する。つまり、連続する下部の気密パッキン部62が床面Dに接地する。尚、パッキン6が降下線上の障害物(例えば硬貨など)に当たると、バネ23に圧縮力が作用し、可動アーム3の回動を制御してパッキン6位置を停止させ、装置の破損の防止など安全性を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施の形態のドアボトム装置を示す説明図である。
【
図2】ドアボトム装置の要部を示す拡大斜視図である。
【
図3】ドアボトム装置の作用状態を示す説明図である。
【
図4】扉にドアボトム装置を取付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ケース体
2 スライドプレート
3 可動アーム
4 吸引手段
5 復帰バネ
6 パッキン
11 軸受け筒
12 軸
13 ガイドバ-
21 矩形平板部
22 窓孔
23 バネ
31 直交部
32 長片部
33 短片部
41 マグネット
42 固定磁石
A 扉(開き戸)
B 戸先縦枠
C 戸当り
D 床面
E 吊元縦枠
71 板バネ
72 取付け板
73 固定板
74 復帰バネ
75 出没子
77 パッキン