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特開2022-69723焼却炉閉塞危険性評価方法および焼却炉閉塞防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022069723
(43)【公開日】2022-05-12
(54)【発明の名称】焼却炉閉塞危険性評価方法および焼却炉閉塞防止方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/06 20060101AFI20220502BHJP
   F23G 7/00 20060101ALI20220502BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
C02F11/06 Z ZAB
F23G7/00 104A
F23G5/50 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020178526
(22)【出願日】2020-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397028016
【氏名又は名称】株式会社日水コン
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大貴
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 朋哉
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 和真
(72)【発明者】
【氏名】村田 道拓
(72)【発明者】
【氏名】上野 孝司
(72)【発明者】
【氏名】岸本 長
【テーマコード(参考)】
3K062
3K161
4D059
【Fターム(参考)】
3K062AA24
3K062AB01
3K062AC02
3K062DA31
3K062DB02
3K161AA21
3K161AA22
3K161BA08
3K161CA01
3K161DB32
3K161EA32
3K161JA15
4D059AA30
4D059BK11
4D059DA23
4D059EA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】焼却炉閉塞を効果的に防止する焼却炉閉塞危険性評価方法及び焼却炉閉塞防止方法を提供する。
【解決手段】焼却炉に供給前の汚泥から評価対象の疑似焼却灰PASHを作製する疑似焼却灰作製ステップ(S100)と、疑似焼却灰PASHのRGB値を取得する色データ取得ステップ(S110)と、RGB値からR/(R+G+B)値を算出する算出ステップ(S120)と、疑似焼却灰の閉塞抑制指標と当該疑似焼却灰のR/(R+G+B)値との相関関係に基づき閉塞危険性を評価する評価ステップ(S150)と、を含み、評価ステップ(S150)は、R/(R+G+B)値を相関関係に代入した閉塞抑制指標が第1閾値を下回る場合又は当該R/(R+G+B)値が第2閾値を下回る場合、閉塞危険性があると評価する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥を焼却する焼却炉の閉塞危険性を評価する焼却炉閉塞危険性評価方法であって、
前記焼却炉に供給される前の前記下水汚泥の一部を取り出し、当該下水汚泥に疑似焼却処理を行って、評価対象となる疑似焼却灰を作製する疑似焼却灰作製ステップと、
評価対象となる前記疑似焼却灰の色データとしてRGB値を取得する色データ取得ステップと、
評価対象となる前記疑似焼却灰の前記RGB値からR/(R+G+B)の値を算出する算出ステップと、
予め複数サンプリングされた前記疑似焼却灰に含まれ、前記焼却炉の燃焼温度よりも高い融点のりん化合物を形成可能な複数の高融点金属元素が結合可能なりんの結合可能量と、当該疑似焼却灰に含まれるりんの包含量と、の比である閉塞抑制指標と、当該複数サンプリングされた疑似焼却灰の前記RGB値から得られたR/(R+G+B)の値との相関関係に基づいて、前記焼却炉の閉塞の危険性を評価する評価ステップと、
を含み、
前記評価ステップは、前記算出ステップにより算出された前記R/(R+G+B)の値を前記相関関係に代入して決定された前記閉塞抑制指標が第1閾値を下回っている場合、または、当該R/(R+G+B)の値が前記相関関係に前記閉塞抑制指標としての前記第1閾値を代入して決定された前記R/(R+G+B)の値である第2閾値を下回っている場合に、前記焼却炉の閉塞の危険性があると評価することを特徴とする焼却炉閉塞危険性評価方法。
【請求項2】
前記評価ステップに先立ち、
前記焼却炉に供給される前の前記下水汚泥に前記疑似焼却処理を行い作製された複数の前記疑似焼却灰のサンプルの前記色データを取得するサンプル色データ取得ステップと、
前記サンプルの成分分析の実測値に基づいて前記閉塞抑制指標を取得するサンプル指標取得ステップと、
前記サンプルから得られた前記閉塞抑制指標と前記サンプルから得られた前記色データとを用いて、前記相関関係を作成する相関関係作成ステップと、
を行うことを特徴とする請求項1に記載の焼却炉閉塞危険性評価方法。
【請求項3】
前記疑似焼却灰作製ステップは、前記下水汚泥を脱水した脱水汚泥の一部を取り出し、疑似燃焼装置により当該脱水汚泥を燃焼させて前記疑似焼却灰を作製することを特徴とする請求項1または2に記載の焼却炉閉塞危険性評価方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の焼却炉閉塞危険性評価方法による評価に基づいて焼却炉の閉塞を防止する焼却炉閉塞防止方法であって、
前記評価ステップの結果に基づき、前記焼却炉の閉塞の危険性がある場合には、前記焼却炉における灰付着を抑制するための所定の金属元素を含む薬剤を前記下水汚泥に添加する添加ステップを行うことを特徴とする焼却炉閉塞防止方法。
【請求項5】
前記添加ステップは、汚泥脱水機へ投入する前の前記下水汚泥に前記薬剤を添加することを特徴とする請求項4に記載の焼却炉閉塞防止方法。
【請求項6】
前記疑似焼却灰は前記高融点金属元素としての鉄を含み、前記薬剤はポリ硫酸第二鉄を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の焼却炉閉塞防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥を焼却する焼却炉における閉塞の危険性を評価する焼却炉閉塞危険性評価方法およびその評価に基づいて焼却炉の閉塞を防止するための焼却炉閉塞防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場において下水を浄化する際に発生する下水汚泥は、脱水等された後、焼却炉で焼却されて処理される。しかし、近年、下水汚泥を焼却した焼却灰が煙道に付着し、煙道が閉塞する現象(焼却炉の閉塞)も多く報告されている。焼却炉の閉塞は、焼却炉に投入される下水汚泥のりんと金属類との存在量のバランスによっては焼却炉の燃焼温度よりも低い融点のりん化合物が形成され、かかる低融点のりん化合物を含む焼却灰が煙道に融着することが主な原因となって惹き起こされると推測されている。このような現象を防止するため、焼却炉の燃焼温度よりも高い融点のりん化合物を形成可能な複数の高融点金属元素が結合可能なりんの結合可能量と、下水汚泥を焼却した焼却灰に含まれるりんの包含量と、の比からなる「閉塞抑制指標X」という指標を導入し、下水汚泥および焼却灰の成分分析の結果から閉塞抑制指標(閉塞抑制指標値)を求め、当該閉塞抑制指標値に基づいて焼却炉における灰付着を抑制するための薬剤(例えば、焼却炉の燃焼温度よりも高い融点のりん化合物を形成可能な高融点金属元素を含む薬剤の一種であるポリ硫酸第二鉄「=ポリ鉄」)の添加を制御する焼却炉閉塞危険性評価方法および焼却炉閉塞防止方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、焼却灰の色と閉塞抑制指標値との相関関係を利用し、焼却灰の色に基づいて焼却炉の閉塞危険性を評価し、下水汚泥への薬剤の添加を制御する焼却炉閉塞危険性評価方法および焼却炉閉塞防止方法も知られている(例えば、特許文献1を参照)。具体的には、焼却炉の閉塞を防止する基準とする閉塞抑制指標に対応する焼却灰の色である基準色と、焼却炉で焼却された焼却灰の色とに基づいて、焼却炉の閉塞危険性を評価し、焼却前の下水汚泥への薬剤の添加を制御する。このような従来の方法によれば、焼却灰の成分分析を待たずとも、焼却炉で焼却された焼却灰の色を検査するだけで、焼却炉の閉塞危険性の評価が可能となり、下水汚泥への薬剤の添加を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5881260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような従来の方法では、焼却炉で焼却された焼却灰の色に基づいて評価された閉塞危険性に基づいて焼却前の下水汚泥への薬剤の添加を制御するが、下水汚泥の性状は刻々と変化しているため、評価に使用する焼却灰の性状と薬剤を添加する下水汚泥の性状とが一致しない虞がある。かかる場合、焼却炉の閉塞危険性評価の精度が低下し、下水汚泥への薬剤の添加の制御が難しくなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡便かつ迅速な手法にて、高精度に下水汚泥を焼却する際における焼却炉の閉塞の危険性を評価し、その評価に基づいた焼却炉の閉塞を効果的に防止することができる焼却炉閉塞危険性評価方法および焼却炉閉塞防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法は、下水汚泥を焼却する焼却炉の閉塞危険性を評価する焼却炉閉塞危険性評価方法であって、前記焼却炉に供給される前の前記下水汚泥の一部を取り出し、当該下水汚泥に疑似焼却処理を行って、評価対象となる疑似焼却灰を作製する疑似焼却灰作製ステップと、評価対象となる前記疑似焼却灰の色データとしてRGB値を取得する色データ取得ステップと、評価対象となる前記疑似焼却灰の前記RGB値からR/(R+G+B)の値を算出する算出ステップと、予め複数サンプリングされた前記疑似焼却灰に含まれ、前記焼却炉の燃焼温度よりも高い融点のりん化合物を形成可能な複数の高融点金属元素が結合可能なりんの結合可能量と、当該疑似焼却灰に含まれるりんの包含量と、の比である閉塞抑制指標と、当該複数サンプリングされた疑似焼却灰の前記RGB値から得られたR/(R+G+B)の値との相関関係に基づいて、前記焼却炉の閉塞の危険性を評価する評価ステップと、を含み、前記評価ステップは、前記算出ステップにより算出された前記R/(R+G+B)の値を前記相関関係に代入して決定された前記閉塞抑制指標が第1閾値を下回っている場合、または、当該R/(R+G+B)の値が前記相関関係に前記閉塞抑制指標としての前記第1閾値を代入して決定された前記R/(R+G+B)の値である第2閾値を下回っている場合に、前記焼却炉の閉塞の危険性があると評価する。
(2)別の実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法では、好ましくは、前記評価ステップに先立ち、前記焼却炉に供給される前の前記下水汚泥に前記疑似焼却処理を行い作製された複数の前記疑似焼却灰のサンプルの前記色データを取得するサンプル色データ取得ステップと、前記サンプルの成分分析の実測値に基づいて前記閉塞抑制指標を取得するサンプル指標取得ステップと、前記サンプルから得られた前記閉塞抑制指標と前記サンプルから得られた前記色データとを用いて、前記相関関係を作成する相関関係作成ステップと、を行っても良い。
(3)別の実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法では、好ましくは、前記疑似焼却灰作製ステップは、前記下水汚泥を脱水した脱水汚泥の一部を取り出し、疑似燃焼装置により当該脱水汚泥を燃焼させて前記疑似焼却灰を作製しても良い。
(4)一実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法は、上述のいずれかの焼却炉閉塞危険性評価方法による評価に基づいて焼却炉の閉塞を防止する焼却炉閉塞防止方法であって、前記評価ステップの結果に基づき、前記焼却炉の閉塞の危険性がある場合には、前記焼却炉における灰付着を抑制するための所定の金属元素を含む薬剤を前記下水汚泥に添加する添加ステップを行う。
(5)別の実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法では、好ましくは、前記添加ステップは、汚泥脱水機へ投入する前の前記下水汚泥に前記薬剤を添加しても良い。
(6)別の実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法では、好ましくは、前記疑似焼却灰は前記高融点金属元素としての鉄を含み、前記薬剤はポリ硫酸第二鉄を含んでも良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便かつ迅速な手法にて、高精度に下水汚泥を焼却する際における焼却炉の閉塞の危険性を評価し、その評価に基づいた焼却炉の閉塞を効果的に防止することができる焼却炉閉塞危険性評価方法および焼却炉閉塞防止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る処理場の下水処理システムの一部の構成図を示す。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法のフローチャートを示す。
図3図3は、疑似焼却灰の閉塞抑制指標とR/(R+G+B)の値との相関関係を表すグラフの一例を示す。
図4図4は、焼却灰の閉塞抑制指標とR/(R+G+B)の値との相関関係を表すグラフの一例を示す。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法のフローチャートを示す。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法のフローチャートを示す。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
1.下水処理システム
最初に、一実施形態に係る処理場の下水処理システムについて説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る処理場の下水処理システムの一部の構成図を示す。なお、図1に示す構成図は、処理場の下水処理システムのうち、本発明に係る焼却炉閉塞危険性評価方法および焼却炉閉塞防止方法に関連する一部分を図示したものである。本実施形態において、当該処理場の下水処理システムのうち、本発明に係る焼却炉閉塞危険性評価方法および焼却炉閉塞防止方法の説明に不要な構成については、図示および説明を省略する。
【0013】
下水処理システム1は、好ましくは、濃縮汚泥貯留槽10と、濃縮汚泥供給ポンプ12と、汚泥脱水機14と、脱水ケーキ搬送コンベヤ16と、ケーキ貯留槽18と、ケーキ供給ポンプ20と、焼却炉22と、空気予熱器24と、ろ過式集塵機26と、灰移送コンベヤ28と、灰ホッパ30と、を備える。また、下水処理システム1は、好ましくは、焼却炉22に供給される前の下水汚泥の一部から疑似焼却灰PASHを作製する疑似焼却装置32を備える。
【0014】
濃縮汚泥貯留槽10は、濃縮槽(不図示)および/または濃縮機(不図示)により濃縮された液体状の汚泥(「濃縮汚泥」ともいう。)を受け取って貯留する槽である。濃縮槽は、好ましくは、第1沈殿池(「下水道施設計画・設計指針と解説(後編)2009年版」(社団法人日本下水道協会)における最初沈殿池に相当)(不図示)にて沈殿した汚泥を濃縮する槽である。濃縮機は、好ましくは、第2沈殿池(「下水道施設計画・設計指針と解説(後編)2009年版」(社団法人日本下水道協会)における最終沈殿池に相当)(不図示)から排出された余剰汚泥を濃縮する装置である。濃縮汚泥供給ポンプ12は、濃縮汚泥貯留槽10に貯留された汚泥を汚泥脱水機14へ供給するポンプである。濃縮汚泥貯留槽10に貯留される濃縮汚泥は、好ましくは、焼却炉22の閉塞の危険性がある場合に、焼却炉22における灰付着を抑制するための薬剤Mが添加される。薬剤Mの添加については、詳細を後述する。
【0015】
汚泥脱水機14は、濃縮汚泥供給ポンプ12から供給された汚泥に対して脱水処理を行う装置である。汚泥脱水機14は、濃縮汚泥供給ポンプ12から供給された液体状の汚泥に対して脱水処理を行うことにより、粘土状の脱水された汚泥(「ケーキ」または「脱水ケーキ」ともいう。)を生成する。脱水ケーキは、脱水ケーキ搬送コンベヤ16へ送られる。脱水ケーキ搬送コンベヤ16は、汚泥脱水機14から送られた脱水ケーキをケーキ貯留槽18へ搬送するコンベヤである。ケーキ貯留槽18は、脱水ケーキ搬送コンベヤ16から送られた脱水ケーキを貯留する槽である。ケーキ貯留槽18は、脱水ケーキを、好ましくは1~10時間、より好ましくは5時間貯留する。ケーキ貯留槽18は、好ましくは、定量フィーダ(不図示)を備える。貯留されている脱水ケーキは、好ましくは、定量フィーダを介して一定量ずつケーキ供給ポンプ20へ送られる。ケーキ供給ポンプ20は、ケーキ貯留槽18から一定量ずつ送られる脱水ケーキを焼却炉22へ供給するポンプである。
【0016】
焼却炉22は、ケーキ供給ポンプ20から供給された脱水ケーキを焼却するものである。焼却炉22による燃焼温度は、例えば、700度以上900度以下、好ましくは、850度以上900度以下である。空気予熱器24は、焼却炉22から排出される高温の排ガスを用いて空気を予熱する装置である。予熱された空気は、焼却炉22内の燃焼用に戻される等して活用される。ろ過式集塵機26は、排ガスをろ過して煙と灰(焼却灰)ASHとに分離する装置である。分離された焼却灰ASHは、灰移送コンベヤ28へ送られる。灰移送コンベヤ28は、ろ過式集塵機26から送られた焼却灰ASHを移送して灰ホッパ30へ送るコンベヤである。灰ホッパ30は、焼却灰ASHの一時的な保管を行う槽である。
【0017】
疑似焼却装置32は、汚泥脱水機14で脱水処理された脱水ケーキの一部を焼却して疑似焼却灰PASHを作製する装置である。疑似焼却装置32は、例えば、ガスバーナ等、脱水ケーキを燃焼して疑似焼却灰PASHを作製可能な装置であれば、特に制約されない。疑似焼却装置32による燃焼温度は、例えば、600度以上900度以下、好ましくは、700度以上800度以下である。疑似焼却灰PASHの作製については、詳細を後述する。
【0018】
2.焼却炉閉塞危険性評価方法
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法について説明する。
【0019】
図2は、本発明の第1実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法のフローチャートを示す。図3は、疑似焼却灰の閉塞抑制指標とR/(R+G+B)の値との相関関係を表すグラフの一例を示す。図4は、焼却灰の閉塞抑制指標とR/(R+G+B)の値との相関関係を表すグラフの一例を示す。
【0020】
第1実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法は、下水汚泥を焼却する焼却炉22の閉塞危険性を評価する方法である。この実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法は、疑似焼却灰作製ステップ(S100)と、色データ取得ステップ(S110)と、算出ステップ(S120)と、閉塞抑制指標決定ステップ(S130)と、第1判断ステップ(S140)と、第1評価ステップ(S150)と、第2評価ステップ(S160)と、を含む。以下、各工程について説明する。なお、閉塞抑制指標決定ステップ(S130)、第1判断ステップ(S140)、および第1評価ステップ(S150)は、本発明の評価ステップの一例である。
【0021】
2.1 疑似焼却灰作製ステップ(S100)
疑似焼却灰作製ステップは、焼却炉22に供給される前の下水汚泥を脱水した脱水汚泥の一部を取り出し、当該脱水汚泥に疑似焼却処理を行って、評価対象となる疑似焼却灰PASHを作製するステップである。疑似焼却処理は、疑似焼却装置32により下水汚泥を燃焼させる処理である。より具体的には、疑似焼却灰作製ステップは、まず、汚泥脱水機14から脱水ケーキ搬送コンベヤ16へ送られる脱水ケーキの一部を取り出し、ミキサー(不図示)を用いて粉砕する。そして、疑似焼却灰作製ステップは、粉砕された脱水ケーキを疑似燃焼装置32で燃焼させ、疑似焼却灰PASHを作製する。粉砕と燃焼とを逆順にしても良い。疑似燃焼装置32としては、例えば、マッフル炉を用いることができる。燃焼対象物は、磁性皿内に敷かれたけい砂の上に供され、その上からけい砂をかぶせて燃焼される。すなわち、燃焼対象物は、その周囲をけい砂で覆われた状態で疑似燃焼装置32内に供される。この結果、疑似焼却灰を、焼却炉22に近い環境下で得ることができる。疑似焼却灰PASHをミキサーで粉砕して疑似燃焼装置32で燃焼するまでの時間は、好ましくは、ケーキ貯留槽18での貯留から脱水ケーキを焼却炉22にて焼却するまでの時間よりも短い。
【0022】
2.2 色データ取得ステップ(S110)
色データ取得ステップは、評価対象となる疑似焼却灰PASHの色データとしてRGB値を取得するステップである。より具体的には、色データ取得ステップは、まず、評価対象となる疑似焼却灰PASHを撮影容器に入れてデジタルカメラで撮影する。そして、色データ取得ステップは、デジタルカメラで撮影した疑似焼却灰PASHの画像からRGB値を取得する。疑似焼却灰PASHのRGB値の取得方法は、特に制約されないが、例えば、公知の画像編集ソフト(例えば、Microsoft Paint)を使用して、デジタルカメラで撮影した疑似焼却灰PASHの画像の任意の点のRGB値を取得しても良い。かかる場合、色データ取得ステップは、疑似焼却灰PASHの画像の任意の点を複数選択し、選択した複数の点におけるRGB値の平均値を色データとして取得しても良い。RGB値は、色を指定するための数値であり、例えば、R値、G値、およびB値がそれぞれ0~255の範囲内で指定された値である。なお、色データ取得ステップにおいて、評価対象となる疑似焼却灰PASHの撮影手段は、画像データを取得可能な手段であれば特に制約されず、例えば、スマートフォン、ビデオカメラ等であっても良い。また、撮影容器は、疑似焼却灰PASHを入れて撮影手段により撮影可能な容器であれば、特に制約されない。
【0023】
2.3 算出ステップ(S120)
算出ステップは、評価対象となる疑似焼却灰PASHのRGB値からR/(R+G+B)の値を算出するステップである。
【0024】
2.4 閉塞抑制指標決定ステップ(S130)
閉塞抑制指標決定ステップは、算出ステップ(S120)により算出されたR/(R+G+B)の値を、後述する相関関係作成ステップ(D120)により作成された相関関係を表す式(図3を参照)に代入して、閉塞抑制指標Xを決定するステップである。
【0025】
閉塞抑制指標Xは、閉塞抑制指標値とも称し、下水汚泥を焼却する焼却炉22の煙道等に焼却灰が付着する危険性(ひいては焼却炉22の閉塞の危険性(焼却炉閉塞危険性))を定量的に表す指標である。閉塞抑制指標は、疑似焼却灰PASHに含まれ焼却炉22の燃焼温度よりも高い融点のりん化合物を形成可能な複数の高融点金属元素が結合可能なりんの結合可能量と、当該疑似焼却灰PASHに含まれるりんの包含量と、の比によって算出することができる(下記の式(1)を参照)。ここで、「高融点金属元素」は、焼却炉22の燃焼温度よりも高い融点のりん化合物を形成可能な金属をいい、好適には、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)を例示できる。式(1)において、Feは疑似焼却灰PASHのFeの質量分率であり、Alは疑似焼却灰PASHのAlの質量分率であり、CaOは疑似焼却灰PASHのCaOの質量分率であり、MgOは疑似焼却灰PASHのMgOの質量分率であり、Pは疑似焼却灰PASHのPの質量分率である。また、M(i)は、化合物i、又は元素iの分子量又は原子量[g/mol]である。
【0026】
【数1】
【0027】
式(1)の分子は、特定した複数の金属元素と結合可能なりんの量(結合可能量)を示している。式(1)では、結合可能量は、疑似焼却灰PASHを100[g]とした場合における結合可能なりんのモル数を示している。ここで、分子における化合物の質量分率を、その化合物の分子量で除算した各項は、疑似焼却灰PASH全体を100[g]とした場合における各化合物のモル数を示し、これら各項に乗じている係数は、各項に対応する化合物1molに含まれる金属元素がりんと結合する際に必要となるりんのmol数を示している。例えば、Feに対応する項については、1molのFe中には、2molのFeが存在し、想定されるりん化合物(FePO)を生成する場合には、2molのりんが必要であるので、係数を2としている。同様に、CaOに対応する項については、1molのCaO中には、1molのCaが存在し、想定されるりん化合物(Ca(PO)を生成する場合には、2/3molのりんが必要であるので、係数を2/3としている。また、式(1)の分母は、下水汚泥に包含されるりんの量(包含量)を示している。式(1)では、包含量は、疑似焼却灰PASHを100[g]とした場合におけるりんのモル数を示している。
【0028】
ここで、閉塞抑制指標Xが大きい値ほど、結合可能量が包含量よりも相対的に多く、りんは高融点金属元素と結合する可能性が高く、融点の低いりん化合物を形成する可能性が低くなる。このことは、焼却炉22で下水汚泥が焼却された際に、融点の低いりん化合物が液体状となって、焼却炉22の各部に付着等する可能性が低くなることを意味している。したがって、閉塞抑制指標Xを焼却炉22の閉塞危険性の評価に用いることができる。
【0029】
以上のように、閉塞抑制指標Xを基準とすれば、疑似焼却灰PASHを成分分析して把握したAl、Fe、Ca、Mg及びりん(P)のそれぞれのモル数から鑑みて、高融点金属がりんに対して過剰に存在する場合には(閉塞抑制指標Xが大きいとき)焼却炉閉塞の危険性が低いと評価することができ、逆にこれら高融点金属がりんに対して少ない存在である場合には(閉塞抑制指標Xが所定の基準値よりも小さいとき)焼却炉閉塞の危険性が高いと評価することができる。例えば、閉塞抑制指標Xが1.0未満か否かによって焼却炉閉塞の危険性を評価することができる。
【0030】
2.5 第1判断ステップ(S140)
第1判断ステップは、閉塞抑制指標決定ステップ(S130)により決定された閉塞抑制指標Xが第1閾値を下回っているか否かを判断するステップである。この実施形態では、第1判断ステップは、閉塞抑制指標Xが第1閾値としての1.0未満であるか否かを判断する。なお、第1閾値は、1.0に制約されず、例えば、0.95、1.12等のように適宜設定できる。
【0031】
2.6 第1評価ステップ(S150)
第1評価ステップは、閉塞抑制指標Xが1.0未満である場合に(S140:Yes)、焼却炉22の閉塞の危険性があると評価するステップである。
【0032】
2.7 第2評価ステップ(S160)
第2評価ステップは、閉塞抑制指標Xが1.0未満でない場合に(S140:No)、焼却炉22の閉塞の危険性が低いと評価するステップである。
【0033】
この実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法は、好ましくは、疑似焼却灰作製ステップ(S100)に先立ち、サンプル色データ取得ステップ(D100)と、サンプル指標取得ステップ(D110)と、相関関係作成ステップ(D120)と、を行う(図2を参照)。以下、各工程について説明する。なお、この実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法において、サンプル色データ取得ステップ(D100)、サンプル指標取得ステップ(D110)、および相関関係作成ステップ(D120)は、少なくとも閉塞抑制指標決定ステップ(S130)に先立って行われれば、そのタイミングに特に制約はなく、例えば、疑似焼却灰作製ステップ(S100)と同時に実行されても良いし、算出ステップ(S120)と閉塞抑制指標決定ステップ(S130)との間に実行されても良い。また、サンプル色データ取得ステップ(D100)およびサンプル指標取得ステップ(D110)は、相関関係作成ステップ(D120)に先立って行われれば、そのタイミングおよび順序に特に制約はなく、例えば、同時に実行されても良い。
【0034】
この実施形態では、サンプル色データ取得ステップ(D100)およびサンプル指標取得ステップ(D110)に先立って、疑似焼却灰作製ステップ(S100)と同様の工程によりm個(ただし、mは2以上の整数)の疑似焼却灰PASHのサンプルが作製される。なお、疑似焼却灰PASHを複数個サンプリングする際には、後述のサンプル指標取得ステップ(D100)により取得される閉塞抑制指標Xが互いにある程度ばらついている複数のサンプルを作製することが好ましい。
【0035】
2.8 サンプル色データ取得ステップ(D100)
サンプル色データ取得ステップは、焼却炉22に供給される前の下水汚泥に疑似焼却処理を行い作製された複数の疑似焼却灰PASHのサンプルの色データを取得するステップである。より具体的には、サンプル色データ取得ステップは、色データ取得ステップ(S110)と同様の工程により、m個の疑似焼却灰PASHのサンプルそれぞれのRGB値を取得する。また、サンプル色データ取得ステップは、好ましくは、m個の疑似焼却灰PASHのサンプルそれぞれのRGB値からR/(R+G+B)の値をそれぞれ算出する。
【0036】
2.9 サンプル指標取得ステップ(D110)
サンプル指標取得ステップは、疑似焼却灰PASHのサンプルの成分分析の実測値に基づいて閉塞抑制指標Xを取得するステップである。より具体的には、サンプル指標取得ステップは、m個の疑似焼却灰PASHのサンプルそれぞれについて成分分析を行い、当該成分分析の実測値および式(1)に基づいて当該サンプルそれぞれの閉塞抑制指標Xを算出する。疑似焼却灰PASHのサンプルの成分分析としては、例えば、蛍光X線解析による構成成分分析方法を用いることができる。
【0037】
2.10 相関関係作成ステップ(D120)
相関関係作成ステップは、疑似焼却灰PASHのサンプルから得られた閉塞抑制指標Xと当該サンプルのRGB値から算出されたR/(R+G+B)の値とを用いて、疑似焼却灰PASHにおける閉塞抑制指標とR/(R+G+B)の値との相関関係を作成するステップである(図3を参照)。例えば、相関関係作成ステップは、図3に示すように、当該相関関係を表す式およびグラフを作成する。
【0038】
図4に示すように、焼却灰ASHの成分分析の実測値に基づく閉塞抑制指標と当該焼却灰ASHのRGB値から算出されたR/(R+G+B)の値との間には、良好な相関関係を示すことが知られている。この相関関係によると、R/(R+G+B)の値が小さいほど、閉塞抑制指標が小さくなる。よって、焼却灰ASHのR/(R+G+B)の値に基づいて、閉塞危険性を評価することができる。また、発明者らの試験研究によると、図3に示すように、疑似焼却灰PASHの成分分析の実測値に基づく閉塞抑制指標と当該疑似焼却灰PASHのRGB値から算出されたR/(R+G+B)の値との間には、焼却灰ASHの場合(図4を参照)と同様の相関関係を示すことが見出された。この相関関係によると、焼却灰ASHの場合と同様に、R/(R+G+B)の値が小さいほど、閉塞抑制指標が小さくなる。よって、焼却灰ASHの場合と同様に、疑似焼却灰PASHのR/(R+G+B)の値に基づいて、閉塞危険性を評価することができる。
【0039】
このような焼却炉閉塞危険性評価方法によれば、焼却炉22に供給される前の下水汚泥の一部から疑似焼却灰PASHを作製し、当該疑似焼却灰PASHのR/(R+G+B)の値を、疑似焼却灰PASHにおける閉塞抑制指標とR/(R+G+B)の値との相関関係を表す式(図3を参照)に代入して、当該疑似焼却灰PASHの閉塞抑制指標Xを決定する。上述のように、疑似焼却灰PASHにおける閉塞抑制指標とR/(R+G+B)の値との間には、焼却灰ASHにおける閉塞抑制指標とR/(R+G+B)の値との相関関係と同様の良好な相関関係を示す。このため、焼却炉閉塞危険性評価方法によれば、疑似焼却灰PASHにおける閉塞抑制指標とR/(R+G+B)の値との相関関係を用いることにより、疑似焼却灰PASHの成分分析を待たずとも、疑似焼却灰PASHのRGB値を取得してR/(R+G+B)の値を算出するだけで、高精度に当該疑似焼却灰PASHの閉塞抑制指標Xを決定することができ、焼却炉22の閉塞危険性を評価することができる。
【0040】
また、下水汚泥の性状は刻々と変化し、特に、ケーキ貯留槽18で所定時間貯留される間に下水汚泥(脱水ケーキ)の性状が変化する虞がある。例えば、灰ホッパ30から取り出した焼却灰ASHは、薬剤Mが添加される濃縮汚泥貯留槽10に貯留していた時点から少なくとも所定時間以上経過したものであるため、焼却灰ASHの性状と当該焼却灰ASHが灰ホッパ30から取り出されるときに濃縮汚泥貯留槽10に貯留されている下水汚泥の性状とは異なる虞がある。しかしながら、焼却炉閉塞危険性評価方法によれば、評価対象の疑似焼却灰PASHはケーキ貯留槽18に供給される前の脱水ケーキの一部から作製されるため、当該疑似焼却灰PASHの性状は、焼却灰ASHの性状に比べ、薬剤Mが添加される下水汚泥(濃縮汚泥貯留槽10内の濃縮汚泥)の性状と近似する。よって、焼却炉閉塞危険性評価方法によれば、簡便かつ迅速な手法にて、高精度に下水汚泥を焼却する際における焼却炉22の閉塞の危険性を評価することができる。すなわち、従来のように焼却炉22を通過した焼却灰ASHから色データを取得して、それを焼却灰の色データと閉塞抑制指標との相関関係(図4を参照)に当てはめて、焼却炉閉塞危険性を評価するのに比べ、本実施形態のように脱水ケーキを疑似焼却装置32にて焼却して疑似焼却灰PASHを用意し、その色データを取得して、それを疑似焼却灰の色データと閉塞抑制指標との相関関係(図3を参照)に当てはめて、焼却炉閉塞危険性を評価する方が、短時間にて焼却炉閉塞危険性を把握できる。これは、以後の各実施形態についても同様である。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法について説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0042】
図5は、本発明の第2実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法のフローチャートを示す。
【0043】
第2実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法は、第1実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法と類似の工程を有するが、閉塞抑制指標決定ステップ(S130)および第1判断ステップ(S140)に代えて、第2判断ステップ(S240)を含む点において、第1実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法と異なる。
【0044】
第2判断ステップ(S240)は、算出ステップ(S120)により算出されたR/(R+G+B)の値が第2閾値を下回っているか否かを判断するステップである。第2閾値は、相関関係作成ステップ(D120)により作成された相関関係を表す式(図3を参照)に、閉塞抑制指標Xとしての第1閾値を代入して決定されるR/(R+G+B)の値である。この実施形態では、第2閾値は、0.37とする。すなわち、第2判断ステップは、算出ステップ(S120)により算出されたR/(R+G+B)の値が0.37未満であるか否かを判断する。第2閾値は、0.37に制約されず、第1閾値および相関関係に基づいて、例えば、0.35、0.40等のように適宜設定できる。この実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法において、サンプル色データ取得ステップ(D100)、サンプル指標取得ステップ(D110)、および相関関係作成ステップ(D120)は、少なくとも第2判断ステップ(S240)に先立って行われれば、そのタイミングに特に制約はない。ただし、この実施形態では、第2判断ステップ(S240)に先立って、相関関係作成ステップ(D120)により作成された相関関係に基づいて第2閾値が決定されていることが好ましい。なお、閉塞抑制指標決定ステップ(S130)、第2判断ステップ(S240)、および第1評価ステップ(S150)は、本発明の評価ステップの一例である。
【0045】
このような焼却炉閉塞危険性評価方法においても、先述の実施形態と同様の効果を奏する。また、この実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法によれば、相関関係作成ステップ(D120)により作成された相関関係と第1閾値に基づいて第2閾値を決定しておけば、評価対象となる疑似焼却灰PASHの閉塞抑制指標Xを決定することなく、評価対象となる疑似焼却灰PASHのR/(R+G+B)の値から閉塞危険性を評価することができる。
【0046】
3.焼却炉閉塞防止方法
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法について説明する。
【0047】
図6は、本発明の第1実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法のフローチャートを示す。
【0048】
第1実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法は、先述の第1実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法(図2を参照)による閉塞危険性の評価に基づいて、焼却炉22の閉塞を防止する方法である。この実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法は、先述の第1実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法(図2を参照)に加え、添加ステップ(S170)を行う。
【0049】
3.1 添加ステップ(S170)
添加ステップは、第1評価ステップ(S150)により焼却炉22の閉塞の危険性があると判断される場合に、薬剤Mを下水汚泥に添加するステップである。薬剤Mは、焼却炉22における灰付着を抑制するための所定の金属元素を含む薬剤であって、好ましくは、先述の高融点金属元素のうち少なくとも1つを含む薬剤である。この実施形態では、高融点金属元素を鉄として、薬剤Mには、その鉄を含むポリ硫酸第二鉄(「ポリ鉄」ともいう。)を含むものが好ましい。この場合の薬剤Mとしては、ポリ鉄そのものであっても良いし、一部にポリ鉄が含まれるものであっても良い。ポリ鉄は、比較的安価で入手が容易であり取り扱いも良いである。このため、経済面においても合理的に焼却炉閉塞防止を図ることができる
【0050】
添加ステップは、薬剤Mを、汚泥脱水機14へ投入する前の下水汚泥に添加することが好ましく、濃縮汚泥貯留槽10に貯留されている濃縮汚泥に添加することがより好ましい。この場合、焼却炉22に対し、考えられる最も近い位置で薬剤Mを添加することになるため、薬剤Mの添加による効果を直に享受することができる。汚泥脱水機14に近い濃縮汚泥貯留槽10にて薬剤Mを投入することにより、焼却炉22までの距離をできる限り短くでき、もって、薬剤投入効果の応答時間を短くすることができる。また、例えば、薬剤Mとしてポリ鉄等を用いた場合には、設備が酸により腐食する可能性が生じるところ、汚泥脱水機14へ投入する直前の濃縮汚泥貯留槽10に貯留されている濃縮汚泥に薬剤Mを添加すれば、薬剤Mの添加位置から焼却炉22の区間を最も短くすることができるため、上述の腐食の可能性がある区間を最も短くすることができる。以上のような理由から、薬剤Mは、汚泥脱水機14へ投入する直前の濃縮汚泥貯留槽10にて添加されることがより好ましい。
【0051】
このような焼却炉閉塞防止方法によれば、先述の第1実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法(図2を参照)により閉塞の危険性がある場合に、汚泥脱水機14へ投入する直前の濃縮汚泥貯留槽10にて薬剤Mを添加する。よって、簡便かつ迅速な手法にて、高精度に下水汚泥を焼却する際における焼却炉22の閉塞を防止することができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法について説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0053】
図7は、本発明の第2実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法のフローチャートを示す。
【0054】
第2実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法は、先述の第2実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法(図5を参照)による閉塞危険性の評価に基づいて、焼却炉22の閉塞を防止する方法である。この実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法は、先述の第2実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法(図5を参照)に加え、添加ステップ(S170)を行う。添加ステップ(S170)は、第1実施形態に係る焼却炉閉塞防止方法の添加ステップ(S170)と同様のため、詳細な説明を省略する。このような焼却炉閉塞防止方法によれば、先述の第2実施形態に係る焼却炉閉塞危険性評価方法(図5を参照)により閉塞の危険性がある場合に、汚泥脱水機14へ投入する直前の濃縮汚泥貯留槽10にて薬剤Mを添加する。よって、簡便かつ迅速な手法にて、高精度に下水汚泥を焼却する際における焼却炉22の閉塞を防止することができる。
【0055】
4.その他の実施形態
上述のように、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0056】
例えば、先述の各実施形態では、疑似焼却灰作製ステップ(S100)において、評価対象となる疑似焼却灰PASHを作製するために脱水ケーキの一部を取り出す作業は、人間が行うことを前提としている(図1においては動線を破線で示している)。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、人間が関与せずに機械化・自動化しても良い。
【0057】
また、先述の焼却炉閉塞防止方法の各実施形態では、添加ステップ(S170)における薬剤Mの添加は、人間が行うことを前提としている(図1においては動線を破線で示している)。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、人間が関与せずに機械化・自動化しても良い。
【0058】
また、先述の各実施形態において、相関関係作成ステップ(D120)により作成された相関関係は、RAM(Random Access Memory)等の記憶手段(不図示)に記憶させておいても良い。かかる場合、サンプル色データ取得ステップ(D100)、サンプル指標取得ステップ(D110)、および相関関係作成ステップ(D120)は省略されても良い。すなわち、評価対象となる疑似焼却灰PASHを作製する度に、当該評価対象となる疑似焼却灰PASHの閉塞危険性の評価に先立って、当該相関関係が作成されなくても良い。また、相関関係作成ステップ(D120)により相関関係が作成されてから所定期間経過する度に、新たにサンプル色データ取得ステップ(D100)、サンプル指標取得ステップ(D110)、および相関関係作成ステップ(D120)を実行し、記憶手段に記憶される相関関係を随時更新しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、焼却炉の閉塞の危険性を評価するために利用可能である。また、本発明は、焼却炉の閉塞を防止するために利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・下水処理システム、14・・・汚泥脱水機、22・・・焼却炉、32・・・疑似焼却装置、M・・・薬剤、PASH・・・疑似焼却灰、X・・・閉塞抑制指標。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7